説明

土壌消毒方法及び土壌消毒装置

【課題】消毒作業性を高めることができるとともに、消毒作業時の刺激臭を比較的弱くすることができる土壌消毒方法及び土壌消毒装置を提供する。
【解決手段】消毒液タンク2内の消毒液を非拡散流で噴射すべきノズル7を用い、該ノズル7を土壌表面よりも上方に配置して該ノズル7から消毒液を非拡散流で連続して噴射することにより消毒液が土壌表面に付着する間の空気接触面積を較的少なくし、消毒作業時の刺激臭を比較的弱くすることがでるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消毒液を土壌に散布することにより、土壌を消毒する土壌消毒方法及び土壌消毒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場等の土壌を消毒し、土壌中の病原菌、害虫を駆除する土壌消毒液はガス化した臭化メチル剤が使用されていた。しかし、この臭化メチル剤はオゾン層を破壊する物質であるとしてオゾン層保護法により規制対象に指定されたため、近年は代替剤として、薬効が比較的高く、土壌中からのガス抜けも比較的早いクロルピクリン剤が使用されている。
【0003】
クロルピクリン剤は刺激臭が比較的強く、原液も比較的高価であるため、土壌中にクロルピクリン剤を間歇的に注入することにより土壌を消毒している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−75462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、土壌中に土壌消毒液を間歇的に注入する土壌消毒装置にあっては、ダイヤフラムポンプ等の特殊のポンプ及び液注入爪が必要であり、コスト高となるし、また、土壌中に間歇的に注入されるため作業性も悪かった。
【0005】
ところで、消毒作業性を高めるには土壌表面に土壌消毒液を扇状又は円錐状に拡散して噴霧することが考えられる。しかし、このように土壌消毒液を扇状又は円錐状に拡散して噴霧する場合、ノズルから噴霧された土壌消毒液が土壌表面に付着する間の空気接触面積が比較的多いため、消毒作業時の刺激臭が比較的強く、作業者が刺激臭の環境にさらされることになり、健康上好ましくない。
【0006】
本発明出願人は、刺激臭が比較的弱く、原液も比較的安価で、安全性のある(人畜毒性は普通物、魚毒性はA類)カーバムナトリウム塩液剤の土壌消毒液が最近開発された点に着目し、この土壌消毒液を、水で希釈することなく、扇状又は円錐状に拡散させることなく、また、土壌中に注入することなく、非拡散流で連続して土壌表面に噴射することにより、消毒作業の進行を早め、消毒作業性を高めることができるとともに、土壌消毒液が土壌表面に付着する間の空気接触面積を比較的少なくすることができる土壌消毒装置を提供する。
【0007】
即ち、本発明の主たる目的は消毒液を非拡散流で噴射すべきノズルを用い、該ノズルを土壌表面よりも上方に配置して該ノズルから消毒液を非拡散流で連続して噴射することにより、消毒作業性を高めることができ、しかも、消毒作業時の刺激臭を比較的弱くすることができる土壌消毒方法、及び土壌消毒装置を提供することにある。
【0008】
また、他の目的は土壌表面に消毒液を噴射した後、ロータリにより土壌を耕耘することにより、土壌表面に非拡散流で噴射された消毒液を土壌に良好に混和することができる土壌消毒方法を提供することにある。
【0009】
また、他の目的は消毒液が収容されている消毒液タンクと、該消毒液タンク内の消毒液を吸込んで吐出するポンプと、該ポンプが吐出する消毒液を土壌表面に向けて非拡散流で連続して噴射すべきノズルとを備えることにより、消毒作業性を高めることができ、しかも、消毒作業時の刺激臭を比較的弱くすることができる土壌消毒装置を提供することにある。
【0010】
また、他の目的は土壌表面に消毒液を噴射した後、土壌を耕耘するロータリを備えることにより、土壌表面に非拡散流で噴射された消毒液を土壌に良好に混和することができる土壌消毒装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る土壌消毒方法は、消毒液タンク内の消毒液を土壌表面に散布することにより土壌の消毒を行う土壌消毒方法において、前記消毒液を非拡散流で噴射すべきノズルを用い、該ノズルを土壌表面よりも上方に配置して該ノズルから消毒液を非拡散流で連続して噴射することにより土壌の消毒を行うことを特徴とする。
【0012】
第1発明にあっては、消毒液を非拡散流で噴射すべきノズルが土壌表面よりも上方に配置され、該ノズルから非拡散流で連続して消毒液が噴射されるため、消毒作業の進行を早くすることができ、消毒作業性を高めることができる。また、消毒液は土壌表面よりも上方のノズルから非拡散流で噴射されるため、消毒液が土壌表面に付着する間の空気接触面積を較的少なくすることができ、消毒作業時の刺激臭を比較的弱くすることができる。
【0013】
第2発明に係る土壌消毒方法は、土壌表面に消毒液を噴射した後、ロータリにより土壌を耕耘することを特徴とする。
【0014】
第2発明にあっては、土壌表面に非拡散流で噴射された消毒液を、土壌に良好に混和することができ、薬効をより一層高めることができる。
【0015】
第3発明に係る土壌消毒装置は、消毒液が収容されている消毒液タンクと、該消毒液タンク内の消毒液を吸込んで吐出するポンプと、該ポンプが吐出する消毒液を散布する散布部とを備える土壌消毒装置において、前記散布部は、土壌表面に向けて非拡散流で連続して噴射すべきノズルを有することを特徴とする。
【0016】
第3発明にあっては、消毒液を非拡散流で噴射すべきノズルが土壌表面よりも上方に配置され、該ノズルから非拡散流で連続して消毒液が噴射されるため、消毒作業の進行を早くすることができ、消毒作業性を高めることができる。また、消毒液は土壌表面よりも上方のノズルから非拡散流で噴射されるため、消毒液が土壌表面に付着する間の空気接触面積を比較的少なくすることができ、消毒作業時の刺激臭を比較的弱くすることができる。
【0017】
第4発明に係る土壌消毒装置は、土壌表面に消毒液を噴射した後、土壌を耕耘するロータリを備えることを特徴とする。
【0018】
第4発明にあっては、土壌表面に非拡散流で噴射された消毒液を、土壌に良好に混和することができ、薬効をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
第1発明及び第3発明によれば、土壌表面よりも上方に配置されたノズルから非拡散流で連続して消毒液が噴射されるため、消毒作業の進行を早くすることができ、消毒作業性を高めることができる。しかも、消毒液はノズルから非拡散流で噴射されるため、消毒液が土壌表面に付着する間の空気接触面積を比較的少なくすることができ、消毒作業時の刺激臭を比較的弱くすることができる。
【0020】
第2発明及び第4発明によれば、土壌表面に非拡散流で噴射された消毒液を、土壌に良好に混和することができ、薬効をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係る土壌消毒装置の構成を示す概略側面図、図2は土壌消毒装置の構成を示す模式図、図3はノズルの構成を示す分解斜視図、図4はノズルの配置構成を示す模式図である。
【0022】
この土壌消毒装置は、運転席1aを有し、前後左右の車輪1b,1cにより支持された機体1と、該機体1の前部に第1の支持台3を介して搭載された二つの消毒液タンク2,2(若しくは一つの大型のタンク)と、機体1の後部に装着される第2の支持台3aと、第2の支持台3aに搭載され、吸込管4を介して消毒液タンク2内の消毒液を吸込むポンプ5と、該ポンプ5の吐出路に送液管6により接続され、圃場等の土壌に消毒液を散布する複数のノズル(散布部)7とを備える。さらに、第2の支持台3aには、ノズル7から消毒液が散布された土壌を耕耘して前記消毒液を土壌に混和するロータリ8と、該ロータリ8が混和した混和土壌部の高さに第2の支持台3aを支持する左右一対のゲージ輪9,9と、該ゲージ輪9,9間の耕耘土壌部を被覆するマルチシートのロール10と、該ロール10から引出されたマルチシートの幅方向両側部を押さえる左右一対のシート押え輪11,11と、該シート押え輪11,11が押さえたマルチシートの両側部に土寄せする左右一対の土寄輪12,12とを、この順序で機体1の進行方向前方から順次配設されている。
【0023】
二つの消毒液タンク2は上部の天壁に入出口を有し、該入出口を閉塞する蓋体を備える密閉構造の円筒形をなしており、臭化メチル剤の代替剤として開発されたカーバムナトリウム塩液剤からなる土壌消毒液、詳しくはキルパー(登録商標)剤の原液が収容されている。この土壌消毒液はナトリウム=メチルジチオカルバマ−トを有効成分とし、刺激臭が比較的弱く、原液も比較的安価であり、また、人畜毒性は普通物、魚毒性はA類であり安全性が高い。そして、消毒液タンク2がポンプ5の吸込口に接続されるとき、二つの消毒液タンク2の前記蓋体を取外し、第1及び第2の挿通孔を有する管保持具13が前記入出口の夫々に嵌着され、一方の管保持具13の第1の挿通孔から一方の消毒液タンク2内に第1の吸込管4aが挿通され、第2の吸込管4bの一端部が第2の挿通孔に挿通される。また、他方の消毒液タンク2の管保持具13の第1の挿通孔に第2の吸込管4bの他端部が挿通され、第2の貫通孔に吸気管14が挿通される。
【0024】
機体1には後側の車輪1c,1cを駆動するエンジンが搭載されており、該エンジンの出力軸にクラッチを介してDCモータ付のポンプ5及びロータリ8が連動連結されている。ロータリ8は、耕耘爪部8a及び該耕耘爪部8aの上側を覆うカバー体8bとを備え、該カバー体8bの前部で、土壌表面よりも上方となる位置に、その長手方向が左右方向となるノズル保持管15が装着されている。
【0025】
ノズル保持管15は一端、中途又は両端に送液管6が接続され、また、長手方向に離隔して複数のノズル7が並設されている。ノズル保持管15のノズル保持部は貫通孔が開設され、該貫通孔に連通する連通孔を有する保持体16が取付けられ、該保持体16の連通孔に連なる噴射路を有するノズル7及びノズルキャップ17が保持体16に取付けられている。
【0026】
ノズル7は消毒液を非拡散流で噴射する噴射路を有し、ポンプ5からノズル保持管15内に供給された消毒液を土壌表面に向けて連続して非拡散流で噴射することができるように構成されている。非拡散流はノズル側の流径よりも土壌表面側の流径が若干大きくなるが、円錐形に拡散する従来の拡散流と比較すると殆ど拡散していない。
【0027】
ポンプ5はプランジャが往復動する往復動型、ギヤポンプ又は3連ダイヤフラムポンプであり、駆動により消毒液を連続してノズル保持管15に供給することができるように構成されている。
【0028】
以上のように構成された土壌消毒装置は、エンジンにより後輪1c,1c、ポンプ5及びロータリ8が駆動され、運転席1aに搭乗した作業者が機体1を走行させつつノズル7から消毒液を散布することにより土壌の消毒作業を行う。
【0029】
ノズル7は土壌表面よりも上方に配置されており、該ノズル7から非拡散流で連続して消毒液が噴射される。因って、ノズル7から噴射された消毒液が土壌表面に付着する間の空気接触面積を比較的少なくすることができ、消毒作業時の刺激臭を比較的弱くすることができる。
【0030】
ノズル7から噴射された消毒液が付着した土壌はロータリ8により耕耘され、消毒液が土壌に混和される。このように消毒液の原液が土壌表面に噴射され、土壌に付着した消毒液が土壌に混和されるため、複数のノズルの離隔距離を比較的長くすることができる。次に、ロータリ8が混和した混和土壌部にマルチシートが敷設される。
【0031】
尚、二つの消毒液タンク2,2を備える土壌消毒装置にあっては、ポンプ5の駆動により一方の消毒液タンク2内の消毒液が第1の吸込管4aを経てポンプ5に吸込まれつつ一方の消毒液タンク2内の上部の空気溜りが負圧となり、二つの消毒液タンク2,2の間で差圧が発生し、この差圧(負圧による吸込作用)により他方の消毒液タンク2内の消毒液が第2の吸込管4bを経て一方の消毒液タンク2内に流入し、経時に伴い他方の消毒液タンク2内の消毒液がなくなり、続いて一方の消毒液タンク2内の消毒液が第1の吸込管4aを経てポンプ5に吸込まれ、一方の消毒液タンク2内の消毒液がなくなるまで連続して土壌消毒を行うことができる。このように途中で消毒液タンク2,2を交換することなく、二つの消毒液タンク2,2内の消毒液がなくなるまで連続して土壌消毒を行うことができるため、連続消毒作業時間を長くすることができ、また、二つの消毒液タンク2,2間で吸込みが途切れることなく、連続して吸込むことができるため、途中で空気がポンプ5に吸込まれるのを防ぐことができ、また、二つの消毒液タンク2,2間で消毒液タンク2,2を交換する必要がないため、消毒液タンク2の交換時機に気配りする必要がなく、消毒作業性を向上できる。
【0032】
また、本発明に係る土壌消毒装置は作業者が搭乗して作業を行う走行型である他、作業者が歩行して作業を行う歩行型であってもよい。また、歩行型の場合、ロータリ8、ゲージ輪9、ロール10、シート押え輪11及び土寄輪12を備える構成であってもよい。また、走行型の場合、ロータリ8、ゲージ輪9、ロール10、シート押え輪11及び土寄輪12は必ずしも必要でない。
【0033】
また、以上説明した実施の形態ではノズル保持管15をロータリ8のカバー体8bに装着したが、その他、ノズル保持管15は機体1に装着する構成としてもよく、ノズル7の配置は特に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る土壌消毒装置の構成を示す概略側面図である。
【図2】本発明に係る土壌消毒装置の構成を示す模式図である。
【図3】本発明に係る土壌消毒装置のノズルの構成を示す分解斜視図である。
【図4】本発明に係る土壌消毒装置のノズルの配置構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0035】
2 消毒液タンク
7 ノズル
8 ロータリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消毒液タンク内の消毒液を土壌表面に散布することにより土壌の消毒を行う土壌消毒方法において、前記消毒液を非拡散流で噴射すべきノズルを用い、該ノズルを土壌表面よりも上方に配置して該ノズルから消毒液を非拡散流で連続して噴射することにより土壌の消毒を行うことを特徴とする土壌消毒方法。
【請求項2】
土壌表面に消毒液を噴射した後、ロータリにより土壌を耕耘する請求項1記載の土壌消毒方法。
【請求項3】
消毒液が収容されている消毒液タンクと、該消毒液タンク内の消毒液を吸込んで吐出するポンプと、該ポンプが吐出する消毒液を散布する散布部とを備える土壌消毒装置において、前記散布部は、土壌表面に向けて非拡散流で連続して噴射すべきノズルを有することを特徴とする土壌消毒装置。
【請求項4】
土壌表面に消毒液を噴射した後、土壌を耕耘するロータリを備える請求項3記載の土壌消毒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−283904(P2008−283904A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132109(P2007−132109)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000250007)有光工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】