説明

土壌消臭材および土壌消臭施工方法

【課題】食品残さ等の有機性廃棄物処理、畜産廃棄物処理に関わる土壌消臭、口蹄疫対策の殺処分後の埋め立て処分地の臭気など腐敗、腐乱臭の爆発的な発生を抑えることが課題である。
【解決手段】多孔質材料の1種または複数材料に抗菌剤、防カビ剤の単体あるいは複数成分を担持させ長期的な抗菌、防カビ効果を持続させ、また、土壌中で有機性廃棄物、家畜糞、殺処分による家畜殺処分体の腐敗、腐乱を制御するためスラグ、石炭灰、石灰石などを使用し、土壌中でアルカリ分を放出することにより、降雨によるアルカリの流出を補う副成分により抗菌剤、防カビ剤の効果を助ける土壌消臭材を構成し、当該土壌消臭材を表土にすき込むことにより、長期的な土壌中の無菌環境を確保し、爆発的な有機物の腐敗および腐乱を抑え、よって臭気の発生を根本的に抑える土壌消臭施工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品残さ等の有機性廃棄物処理、畜産廃棄物処理に関わる土壌消臭、口蹄疫対策の殺処分後の埋め立て処分場などの臭気対策に係り、特に土壌消臭材および土壌消臭施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耕地において肥料成分の効果(薬効)を長期間にわたり発揮させる目的と、急激な栄養塩の供給により作物に障害を起こさない目的で、遅効性肥料、緩効性肥料あるいは徐放性肥料と呼ばれる肥料が知られている。
【0003】
これら肥料の製造方法を支える技術には特許文献1から4に見られるように3大栄養素のうち、特にカリウムに着目し、スラグなどをケイ酸の供給源として結合させ、ケイ酸カリウム化合物を得、ケイ酸カリウムの溶解度の低さを利用して遅効性を獲得しているものがある。
【0004】
また、特許文献5のように高分子化合物皮膜を形成し、その皮膜自体に炭酸アルカリ土類金属塩を含有させたものもある。
【0005】
本発明に関連する抗菌効果を長期間発現させる技術的思想としては特許文献6および7のようにスラグ由来のアルカリによって抗菌効果を持続する着色砂、特許文献8および9のように抗菌塗料やセメントを基材として抗菌成分を添加したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−170686号公報
【特許文献2】特開2003−226589号公報
【特許文献3】特開2003−155486号公報
【特許文献4】特開2003−048793号公報
【特許文献5】特開2002−321994号公報
【特許文献6】特開2010−137210号公報
【特許文献7】特開2008−201999号公報
【特許文献8】特開2006−327866号公報
【特許文献9】特開2006−315883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
食品残さ等の有機性廃棄物処理、畜産廃棄物処理に関わる土壌消臭、口蹄疫対策の殺処分後の埋め立て処分地の臭気など腐敗、腐乱臭の爆発的な発生を抑えることが課題である。
【0008】
本発明は、上記問題を解決することを課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、多孔質材料の1種または複数材料に抗菌剤、防カビ剤の単体あるいは複数成分を担持させ長期的な抗菌、防カビ効果を持続させ、また、土壌中で有機性廃棄物、家畜糞、殺処分による家畜殺処分体の腐敗、腐乱を制御するためスラグ、石炭灰、石灰石などを使用し、土壌中でアルカリ分を放出することにより、降雨によるアルカリの流出を補う副成分により抗菌剤、防カビ剤の効果を助ける土壌消臭材を構成し、当該土壌消臭材を表土にすき込むことにより、長期的な土壌中の一定部位の無菌環境を確保し、爆発的な有機物の腐敗および腐乱を抑え、よって臭気の発生を根本的に抑える土壌消臭施工を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明の土壌消臭材はゼオライト、シリカゲル、パーライト、珪藻土、軽石、活性炭、木炭などの多孔質材料に抗菌剤、防カビ剤を担持、またはコーティングして形成され、広い表面積によって抗菌効果を高めていることをひとつの特徴とするが、土壌消臭の目的としては完全な抗菌、滅菌環境を土壌中に構成することが有利な訳ではない。
【0011】
本発明は優れた抗菌、防カビ効果を持った土壌消臭材を土壌の適切な部位に施工することで腐敗菌の爆発的な繁殖を抑えながら、一方で土壌表層近傍には無菌あるいは好気性菌の生息しやすい層を構成することによって一般の好気性土壌菌の働きを活かして消臭を効果を最大にするものである。
【0012】
本発明により土壌中に構成する土壌消臭環境は土壌層すべてを無菌状態にするものではないため、悪臭成分の種類の変化や発生量変動に対して必要な菌が比較的生息しやすい土壌環境を用意する結果となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る土壌消臭施工断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る土壌消臭施工断面図である。同図では、有機性廃棄物あるいは殺処分体を投入した対策土壌表面から2mの部分に土壌消臭材を混入した土壌およびアルカリ材を厚さ1m分覆土し、さらにその上1mを未加工の土壌で覆土した状態を示す。
【0015】
土壌消臭材としては、ゼオライト、シリカゲル、パーライト、珪藻土、軽石、活性炭、木炭を含む多孔質材料の少なくとも一つに抗菌剤、防カビ剤の単体あるいは複数成分を担持させ、長期間の抗菌、防カビ効果を持たせたものとするのがよい。
【0016】
新規に土壌中に殺処分に付した動物死骸などを埋設する際には通常のブルーシートなどで死骸を覆い、消石灰などの散布を行い、通常の土壌でほとんどの埋設口を埋め戻す。さらに埋め戻さずに残した表層2m分の土壌のうち、その半分に本発明の土壌消臭材を土壌体積の(略)5%から(略)75%の容積部を土壌にすき込むように加え、十分に撹拌、均一な状態にして埋設口を埋める。最後に土壌消臭材を含んだ土壌の最表面に加工していない土壌を覆土し施工を完了する。
【0017】
好適には、こうした土壌消臭施工方法による施工完了した土壌のさらに表層に一般土を盛り、好気性微生物の活動層を作る。
【0018】
すでに有機性廃棄物等の埋設が完了、覆土し、腐敗臭などの悪臭を発している土壌では表層土壌の掘削だけでもさらに悪臭を放散することになるので、この場合には土壌表面に本発明の土壌消臭材をmあたり10kg散布し2週間ほど放置し、表層土壌を抗菌状態に変えたのちに、あらためて表層から50cm程度を掘削し、土壌消臭剤をmあたり20kgから80kgの範囲で散布し、最後に表層土で覆い施工を完了する。
【0019】
上記の施工に際して土壌消臭材の散布に加えてさらにスラグ、石炭灰、消石灰、サンゴ化石、石灰石などのアルカリ材を適宜加えてもよい。
【0020】
また、上記において、土壌消臭材を造粒及び/もしくは固化してもよい。
【0021】
上記説明したように、多孔質材料の1種または複数材料に抗菌剤、防カビ剤の単体あるいは複数成分を担持させ長期的な抗菌、防カビ効果を持続させ、また、土壌中で有機性廃棄物、家畜糞、殺処分による家畜殺処分体の腐敗、腐乱を制御するためスラグ、石炭灰、石灰石などを使用し、土壌中でアルカリ分を放出することにより、降雨によるアルカリの流出を補う副成分により抗菌剤、防カビ剤の効果を助ける土壌消臭材を構成し、当該土壌消臭材を表土にすき込むことにより、長期的な土壌中の無菌環境を確保し、爆発的な有機物の腐敗および腐乱を抑え、よって臭気の発生を根本的に抑える土壌消臭施工を行う。
【実施例】
【0022】
BET値50から70m/gを示す多孔質ケイ酸カルシウム系水和物であるトバモライト1tを温風乾燥し、株式会社ウイズユー社製抗菌・防カビ剤プロモール20Lを同社エアミスティノズルより噴霧、撹拌を繰り返し、全面に薬剤を担持、乾燥させ土壌消臭材を作る。
【0023】
調製した土壌消臭材10gを精秤し精製水500mLを加えて6時間撹拌、溶出試験を行った。プロモール成分のひとつであるTBZを溶出液中濃度を測定した結果、3ppm以下であった。比較試験としてシリカゲルに同様の担持操作を行い、溶出試験を行ったが200ppm以上の溶出試験結果となり、プロモールとの組み合わせでは溶出が大きく長期間の消臭性能は得られないと判断した。
【0024】
乾燥シリカゲル1tに対して株式会社モルテック社製防カビコート剤モルシール10kgを担持させた結果、溶出試験においても成分の溶出は確認できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
水処理プラントに併設した土壌消臭プラントなど好気性菌類の働きに多くを期待した消臭システムでは通常と異なる性状の廃水混入や想定以上の大きな負荷によって、微生物群あるいは栄養のバランスが崩れ、十分な消臭効果が得られないことが多い。また、一度ダメージを受けた土壌消臭システムでは回復に長い時間を必要とした。そのような土壌消臭システムの能力拡大に本発明の土壌消臭材および土壌消臭施工方法は絶大な効果を発揮する。したがって、本発明は経済的価値を有するとともに産業上利用することができる発明である。
【符号の説明】
【0026】
1 対策土壌表面
2 土壌消臭材混合土層
3 有機性廃棄物、殺処分体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト、シリカゲル、パーライト、珪藻土、軽石、活性炭、木炭を含む多孔質材料の少なくとも一つに抗菌剤、防カビ剤の単体あるいは複数成分を担持させ、長期間の抗菌、防カビ効果を持たせたことを特徴とする土壌消臭材。
【請求項2】
請求項1記載の土壌消臭材において、さらに土壌をアルカリ性にする材料としてスラグ、石炭灰、サンゴ化石、石灰石のうちの少なくとも一種以上を混合してなることを特徴とする土壌消臭材。
【請求項3】
請求項1あるいは2記載の土壌消臭材であって、造粒及び/もしくは固化してなることを特徴とする土壌消臭材。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか1項記載の土壌消臭材を施工するにあたり、土壌消臭機能を付与する土壌の略5%から略75%の容積部を土壌にすき込むことを特徴とした土壌消臭施工方法。
【請求項5】
請求項4記載の土壌消臭施工方法による施工完了した土壌のさらに表層に一般土を盛り、好気性微生物の活動層を作ることを特徴とした土壌消臭施工方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−233122(P2012−233122A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103918(P2011−103918)
【出願日】平成23年5月8日(2011.5.8)
【出願人】(510024064)株式会社エコファースト (3)
【出願人】(511112191)
【出願人】(511112179)
【Fターム(参考)】