説明

土砂沈殿用構造物、沈殿池施工方法、及び水路回復方法

【課題】仮設の沈殿池を設置するための敷地の確保が容易であり、設置及び撤去を容易且つ安価に行うことができる土砂沈殿用構造物を提供する。
【解決手段】地盤内に設置されて恒久的には水路として利用され、一時的には流入してくる土砂を含んだ濁水を受け入れて土砂を沈殿させる沈殿池として利用される土砂沈殿用構造物1であって、水路、及び沈殿池を兼ねる溝11と、溝を沈殿池として利用する際に溝の下流端に配設されて溝内を流下する濁水中の土砂の流出を阻止する仕切壁30と、溝を構成する側壁13上部に貫通形成されて濁水中の土砂から分離された上澄み液を溝外部に排出させる越流口30と、溝を水路として使用する際に、越流口を閉止する越流口閉止部材と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、林地の開発や敷地造成等の工事を行う際に発生する濁水から土砂を分離する沈殿池に関し、より詳しくは、恒久的には水路として利用される構造物を一時的に沈殿池として利用するための土砂沈殿用構造物、沈殿池施工方法、及び水路回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開発中の林地や造成中の土地に多量の雨が降ると、雨水と土砂が混合された濁水が発生する。多量の土砂を含む濁水を直接河川や海等に排水すると水質汚染を招くので、濁水が発生する虞のある間は、工事現場内に仮設の沈殿池(沈砂池)を設置し、濁水から土砂を分離して河川等に排水する。
従来の仮設沈殿池は、地盤を掘削して形成した凹部内に濁水を流入させた池状であり、仮設沈殿池の上部空間を利用することができない。そのため、仮設沈殿池は工事対象となっている敷地内、且つ工事の支障とならない箇所に設置する必要があった。また、工事の進行に応じて、仮設沈殿池を設置していた箇所に何らかの構造物を新設する必要が生じた場合、仮設沈殿池を新たな場所に設置するとともに、これまで使用していた仮設沈殿池を埋め戻す等の措置をとる必要があった。
上記事情から、工事終盤になると仮設沈殿池を設置するための敷地確保が困難になるという問題があった。また、池状の仮設沈殿池設置箇所においては、その上に構造物の設置工事等を行うことができないため、該設置箇所の敷地整備工事が遅延するという問題があった。
上記問題を解決しうる発明として特許文献1には、ボックスカルバートにて構成した河川等の汚水浄化装置が記載されている。この発明では、ボックスカルバートを用いた暗渠内に汚水浄化装置を設置するので、汚水浄化装置を設置するための敷地を容易に確保できる。また、汚水浄化装置が埋設された箇所の地上部に構造物を設置することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−135001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載された汚水浄化装置は、恒久的に利用されることを前提とした設備であるため、装置規模が大きく、仮設備として使用するにしては、設置・撤去の労力が膨大になるという問題がある。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、仮設の沈殿池を設置するための敷地の確保が容易であり、沈殿池設置等に係る費用及び労力を最小限に抑えることができる土砂沈殿用の構造物、沈殿池の施工方法、及び沈殿池の撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、地盤内に設置されて恒久的には水路として利用され、一時的には流入してくる土砂を含んだ濁水を受け入れて土砂を沈殿させる沈殿池として利用される土砂沈殿用構造物であって、前記水路、及び前記沈殿池を兼ねる溝と、該溝を沈殿池として利用する際に該溝の下流端に配設されて該溝内を流下する濁水中の土砂の流出を阻止する仕切壁と、該溝を構成する側壁上部に貫通形成されて濁水中の土砂から分離された上澄み液を前記溝外部に排出させる越流口と、前記溝を水路として使用する際に、前記越流口を閉止する越流口閉止部材と、を備えた土砂沈殿用構造物を特徴とする。
請求項1の発明では、恒久的に設置される水路の一部を仮設の沈殿設備として利用する。溝の下流端に配置された仕切壁によって濁水中の土砂をせき止めて溝内に堆積させ、堆積した土砂の上に貯まった上澄み液を側壁上部に貫通形成された越流口から横越流によって取り出す。
請求項2に記載の発明は、前記越流口から排出された上澄み液を受け入れる上澄み液排出部を備えた請求項1に記載の土砂沈殿用構造物を特徴とする。
上澄み液は、上澄み液排出部にてさらに下流へと流下されるか、一時的に貯留される。
【0006】
請求項3に記載の発明は、前記上澄み液排出部は、前記上澄み液を流入させる中空部を有する筒状体を備えた請求項2に記載の土砂沈殿用構造物を特徴とする。
筒状体に導入された上澄み液は地盤内へ漏出せず、さらに下流へと流下されるか、一時的に貯留される。
請求項4に記載の発明は、前記筒状体が地中に埋設されている請求項3に記載の土砂沈殿用構造物を特徴とする。
請求項4の発明では、上澄み液排出部の筒状体を地中に埋設することで、地上部の敷地を有効活用することができる。
請求項5に記載の発明は、前記上澄み液排出部は、前記溝周辺の地盤を掘削することにより形成される請求項2に記載の土砂沈殿用構造物を特徴とする。
請求項5の発明では、容易且つ安価に上澄み液排出部を形成することができる。
【0007】
請求項6に記載の発明は、前記仕切壁の上部に前記上澄み液を越流させる正面越流口を形成した請求項1乃至5の何れか一項に記載の土砂沈殿用構造物を特徴とする。
越流口からの横越流、仕切壁上部からの正面越流を併用することで、溝から上澄み液の排出を効率よく行うことができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の土砂沈殿用構造物を用いた沈殿池施工方法であって、前記溝を構成する側壁上部に濁水中の土砂から分離された上澄み液を前記溝外部に排出させる越流口を貫通形成する工程を有する沈殿池施工方法を特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の沈殿池施工方法により施工された沈殿池を水路に回復させる水路回復方法であって、前記溝内に堆積した土砂を除去する工程と、前記越流口を越流口閉止部材により閉止して前記側壁を復元する工程と、を有する水路回復方法を特徴とする。
本発明にて仮設される沈殿池では溝内に土砂を堆積させ、横越流によって上澄み液を取り出すために、溝を構成する側壁上部を加工して越流口を形成する。恒久的に設置される水路であれば、新設の水路であっても既設の水路であっても沈殿池に加工することができる。また、沈殿池として使用した後は、溝内を清掃し越流口を閉止することで、再び水路として機能させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、恒久的に設置される水路を仮設の沈殿池として利用する。つまり、水路用地を含む敷地を沈殿池として利用するので、沈殿池を設置するための敷地の確保が容易である。また、既に水路として整備されている箇所を沈殿池として利用するため、沈殿池設置箇所の敷地整備工事が遅延しない。また、水路に回復可能、且つ簡易な加工を施して沈殿池とするので、沈殿池設置等に係る費用及び労力を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る土砂沈殿用構造物を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)はX−X断面図であり、(c)はY−Y断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、仕切壁の例を示す図である。
【図3】(a)、(b)は、越流口を示した要部斜視図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る土砂沈殿用構造物を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)はX−X断面図であり、(c)はY−Y断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第一の実施形態〕
以下、本発明の第一の実施形態に係る土砂沈殿用構造物を図1に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る土砂沈殿用構造物を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)はX−X断面図であり、(c)はY−Y断面図である。本実施形態に係る土砂沈殿用構造物は、恒久的に水路として利用される構造物に加工を施して一時的に沈殿池として利用可能とした点に特徴があり、沈殿池として使用した後は水路に回復させることができる。
土砂沈殿用構造物1は、地盤内に設置されて恒久的には水路として利用される構造物であるが、一時的には流入してくる土砂を含んだ濁水を受入れて土砂を沈殿させる沈殿池として利用される。
土砂沈殿用構造物1は、水路、及び沈殿池を兼ねる溝11を備えた側溝10と、溝11を沈殿池として利用する際に溝11の下流端に配設されて溝11内を流下する濁水中の土砂の流出を阻止する仕切壁20と、溝11を構成する側壁13上部に貫通形成されて濁水中の土砂から分離された上澄み液を溝11外部に排出させる越流口30と、溝11を水路として使用する際に、越流口30を閉止する越流口閉止部材40(図3参照)と、越流口30から排出された上澄み液を受け入れる上澄み液排出部50と、を備えている。
【0011】
恒久的に水路として利用される部位について説明する。土砂沈殿用構造物1のうち、側溝10と、側溝10の下流端に配置されて上澄み液排出部50の一部を構成する集水桝60は、恒久的に設置され、水路として利用される部位である。なお、図中矢印Aは溝11内を流れる濁水又は排水の流れ方向を示している。
側溝10は、開発や造成が行われた敷地内の降雨を安全に流下させ、最終的には河川や海へ放流する等の目的で恒久的に設置されるものである。もちろん、他の用途に用いられる水路であってもよい。また、土地の開発時に新設されたものであっても良いし、既設のものであってもよい。
本発明に係る側溝10は、水路として使用されるだけではなく、土砂を沈殿させる沈殿池としても使用されるため、沈殿池として使用する際に土砂等を堆積させるに十分な容積を確保できる深さを有していることと、構造上、強度的に支障のない箇所に越流口30を貫通形成できることが必要である。一例を挙げれば、側溝10の設置箇所が車両の通行路上となる場合は、車両が通過しても側溝10が破壊しない強度を確保した状態で越流口30を貫通形成できることが必要である。
【0012】
側溝10は、側壁13及び底面15によって形成される溝11を備えている。本実施形態の側溝10には自由勾配側溝を用いており、上面の一部が開口し、上面の他部が蓋材によって閉止されている。土砂沈殿用構造物に用いられる側溝としては、上面の一部又は全部が開口した側溝を用いても良いし、上面が全面的に閉止された側溝を用いても良い。上面が全面的に閉止された側溝を利用した場合は、沈殿池として使用する際に、側溝10を含む沈殿池全体を完全に地中に埋設することができ、沈殿池の上部空間を有効活用することができる。
なお、本実施形態において、側溝10にはセメント系材質のものを用いたため、沈殿池への加工と水路への回復において必要な開口部の閉止(充填)や各部材の接着には、同質系材料の無収縮モルタルを使用した。もちろん、セメント系材質以外の側溝を利用するとともに、その材質に適した材料を用いて必要な加工を行うようにしても良い。
【0013】
集水桝60は、水路の合流地点や水路の延長が長い場合などに、水路の中間地点に設けられる部材であり、側溝の一般的な付属物である。集水桝60の側壁61下部には、集水桝60に集められた排水をさらに下流側へと排出する排出口63が貫通形成されている。本実施形態においては側溝10と集水桝60の双方を沈殿池として利用するが、側溝10のみを沈殿池として利用することも可能である。
【0014】
沈殿池として使用するために一時的に設置される部位について説明する。
仕切壁20は、濁水中の土砂をせき止める部位であり、少なくとも濁水中の土砂の流出を防ぐことができ、溝11を沈殿池として機能させることができる位置及び高さにて設置される。本実施形態において仕切壁20は、側溝10と集水桝60の境界部分に設置されている。仕切壁の具体例について図2に基づいて説明する。図2(a)〜(d)は、仕切壁の例を示す図である。
(a)は、図1に示す仕切壁20を示しており、側溝10と集水桝60との境界部分に、所定の厚さ及び高さにてモルタルを充填したものである。側溝10と集水桝60は、仕切壁20上部の正面越流口21にて連通しており、濁水中の土砂から分離された上澄み液を仕切壁20の上端縁から正面越流させることができる。なお、越流口30では、横越流によって上澄み液を取り出す。越流口30による横越流と、正面越流口21による正面越流とを併用することで、上澄み液の排出を効率よく行うことができる。
(b)は、側溝10と集水桝60との境界部分に土嚢を積んで仕切壁23とした例である。なお、上澄み液排出部50を設置する際に掘削した部位の土を土嚢として使用し、仕切壁23を形成することができる。また、土嚢として使用した後に乾燥させて埋め戻しに利用することもできる。このように利用することで、掘削部位の土を有効に利用することができる。(a)と同様に、仕切壁23の上部は正面越流口21となっている。
【0015】
(c)は、側溝10と集水桝60との境界部分に板を配置して仕切壁25とした例である。仕切壁25の上部は(a)と同様に正面越流口21となっている。濁水流の流れ方向を基準として、仕切壁25の下流側には、仕切壁25の傾倒を防止するサポートバー26が配置されている。サポートバー26は、仕切壁25と集水桝60の下流端側に位置する側壁61の双方に接触することで、仕切壁25の傾倒を防止する。なお、仕切壁25の傾倒を防止するために、土嚢などの重しを併用してもよい。
(d)は、集水桝60の下流端側の側壁61自体を仕切壁として利用する例である。つまり、側溝10の溝11と集水桝60とを合わせて沈殿池として利用する。この場合、集水桝60に集められた排水をさらに下流側へと排出する排出口65にモルタルを充填して一時的に閉止し、側溝10及び集水桝60外部への土砂の流出を阻止する。
【0016】
(a)乃至(c)については、側溝10と集水桝60との境界部分に仕切壁を設けた例であるが、図の集水桝部分が側溝であっても実施することができる。言い換えれば、水流方向(矢印A方向)を基準として側溝10の中間部に仕切壁を配置してもよい。なお、(c)については、板状の仕切壁25が濁水流により下流側へ押し流されることを防止するために、土嚢等の重しを併用する必要がある。
また、正面越流口21に落ち葉等を捕捉する網を設置してもよい。
また、側溝10の底面15から側壁13の最上部の位置まで(側溝10の上面17まで)を仕切壁によって完全に閉鎖し、濁水中の土砂及び上澄み液の双方が仕切壁の下流側に移動することを阻止する構成としても構わない(第二の実施形態参照)。
【0017】
越流口30(図1)は、溝11内に流入した濁水中から分離された清澄な上澄み液を横越流させる部位である。上述のとおり、構造上、側溝10の強度的に支障のない箇所に貫通形成する。仕切壁20の説明において述べたように、正面越流口21と併用することができる。越流口30に、落ち葉等を捕捉する網を設置してもよい。越流口の具体例について図3に基づいて説明する。図3(a)、(b)は、越流口を示した要部斜視図である。
(a)は、図1に示す越流口30を示しており、側溝10の側壁13上部に円形の越流口30を貫通形成した例である。図3(a)では、側溝10の上面が閉止されているが、上面が開口されたU字状側溝の側壁上部に同様の越流口を貫通形成することもできる。越流口30形成時には、越流口30に略嵌合する越流口閉止部材31が側壁13から分離される。越流口閉止部材31は、沈殿池として利用された側溝10を水路に回復させる際に、越流口30を閉止するために使用する。なお、越流口の形状は上記形状に限らず、多角形状、その他の形状として良い。
(b)は、上面が開口されたU字形側溝33の側壁34上端縁に越流口35を形成した例である。このように、切欠き状の越流口としてもよい。(a)と同様に、越流口35形成時に、越流口35と略嵌合する越流口閉止部材36が側壁34から分離される。越流口閉止部材36は越流口35を閉止する際に使用する。なお、越流口の形状は上記形状に限らず、多角形状、その他の形状として良い。
【0018】
上澄み液排出部50(図1)は、越流口30から排出された上澄み液を流下させ、又は一時的に貯留する部位であり、一端部51aにおいて越流口30と連通する複数の第一排出管51と、各第一排出管51の他端部51bにおいて各第一排出管51と連通する第二排出管53と、第二排出管53の上澄み液流下方向(図中矢印B方向)下流端53aにおいて排出口63を介して連通する集水桝60と、を備えている。第一排出管51及び第二排出管53は、地表面よりも低い位置に配置されている。
第一排出管51は、越流口30から排出された上澄み液を流下させる横越流経路である。
第二排出管53は、上澄み液流下方向の中間部適所にて各第一排出管51と接続され、各第一排出管51から排出された上澄み液を集水するとともに、上澄み液を更に下流側の集水桝60へと流下させる。
第一排出管51及び第二排出管53は、それぞれ上澄み液を流入させる中空部を備えた筒状体であり、例えばポリエチレン製の波状管から構成される。図示する第一排出管51及び第二排出管53は、概略円筒形であるが、その他の形状の筒状体(例えば角筒等)を用いてもよい。また、図3(b)に示した切欠き状の越流口35に筒状の第一排出管を接続する構成としても良い。
【0019】
本実施形態において、越流口30、第一排出管51、第二排出管53、及び排出口63の各接続部分にはそれぞれコーキング処理が施され、また第二排出管53の上澄み液の流れ方向上流端53bは閉止されており、地盤内へ上澄み液が漏出しない構成となっている。そのため、第一排出管51と第二排出管53の全体を地中に埋設することができる(図1(c))。従って、土砂沈殿用構造物1を一時的に沈殿池として利用する際に、地上部の敷地を有効活用することができる。例えば、第一排出管51及び第二排出管53を道路用地内に埋設することにより、土砂沈殿用構造物1を沈殿池として機能させながら、地上部を車両等が通行する道路として使用できる。
【0020】
以上説明した土砂沈殿用構造物1を沈殿池として機能させる場合、溝11への濁水の導入には、仮設排水路(排水管)を利用する方法と、溝11の上流側を利用する方法がある。前者の場合、土砂沈殿用構造物1の他に別途ポリエチレン製の波状管等から構成された仮設排水路を設置し、ポンプを用いて仮設排水路に濁水を導入して土砂沈殿用構造物1の溝11に流入させる。後者の場合、土砂沈殿用構造物1の上流側の溝11を濁水の導入路として利用する。後者の方法によれば仮設排水路を設置する必要がない。
また、本実施形態において上澄み液は集水桝に集められる。集められた上澄み液は揚水ポンプを用いてくみ上げられ、最終的には海や河川等に排出される。
【0021】
恒久的に設置される水路を、一時的に図1に示すような土砂沈殿用構造物1に改造する方法について簡単に説明する。
まず、水路用設備として側溝10と集水桝60を設置する。なお、既設の水路用設備を利用しても良い。既設の水路用設備を利用する場合は、予め側溝の側壁に沿って地盤を掘削し、上澄み液排出部を設置可能な空間を確保しておく。
次に、溝11の下流端に仕切壁20を設置する。本実施形態においては、底面15から所定高さまでモルタルを充填した。仕切壁20に必要な高さは、溝11内に堆積させる土砂の容量に基づいて算出する。また、仕切壁20の上部から上澄み液を正面越流させるため、上部を開口部(正面越流口21)とした。
【0022】
続いて、溝11を構成する側壁13上部に越流口30を貫通形成する。越流口30は、溝11を沈殿池として使用するとき、及び越流口30を補修して水路として使用するときに、強度上、支障のない位置に形成する。本実施形態においては、側壁13の一部を円形状にくり抜いて越流口30とした。なお、越流口30形成時に側壁13から分離された円柱状の部材は、土砂沈殿用構造物1を水路に回復させる際に越流口30を閉止する越流口閉止部材31として使用する。
上澄み液排出部50を設置する。第一排出管51の一端部51aを越流口30と連通させる。同様に、第一排出管51の他端部51bを第二排出管53と連通させる。第二排出管53の上流端53bを閉止し、53a下流端を集水桝60の排出口63と連通させる。なお、各部を連通させる際は、水漏れを起こさないようにコーキング処理を行う。
この状態で溝11の上流側から濁水を流入させることで、沈殿池として使用することができる。必要に応じて第一排出管51及び第二排出管53を地中に埋設する。
【0023】
続いて、上述の方法により沈殿池に改造された土砂沈殿用構造物1を水路に回復させる方法について説明する。土砂沈殿用構造物1の全部又は一部が地中に埋設されている場合は、当該箇所を予め掘削して露出させておく。
まず、溝11内に堆積した土砂を撤去し、清掃する。土砂の撤去は作業員の手作業によるものでもよいし、バキューム車等を用いて機械的に行ってもよい。なお。取り出した土砂を乾燥させて、上澄み液排出部50設置部分の地盤の埋め戻しに使用してもよい。
次に、上澄み液排出部50を撤去する。越流口30から第一排出管51を切り離し、排出口63から第二排出管53を切り離す。排出口63に、恒久的に使用する他の水路を接続する。
続いて越流口30を閉止する。越流口30形成時に発生した越流口閉止部材31にて越流口30を閉止すると共に、無収縮モルタルにて接着させる。なお、無収縮モルタルを充填して越流口30を閉止してもよい。
さらに、仕切壁20を取り除いて、溝11から集水桝60に向けて排水が流下するように補修する。
最後に、上澄み液排出部50設置箇所の地盤を埋め戻す。
なお、水路を新設する場合には、予め越流口30が開口された側溝10を利用しても良い。現場における越流口30の開口作業を省略することができ、沈殿池の施工を効率よく行うことができる。
【0024】
以上のように、本実施形態によれば、恒久的に設置される水路を仮設の沈殿池として利用する。つまり、水路用地を含む敷地を沈殿池として利用するので、沈殿池を設置するための敷地の確保が容易である。また、既に水路として整備されている箇所を沈殿池として利用するため、沈殿池設置箇所の敷地整備工事が遅延しない。また、水路に回復可能、且つ簡易な加工を施して沈殿池とするので、沈殿池設置等に係る費用及び労力を最小限に抑えることができる。また、上澄み液排出部を地中に埋設することができるので、沈殿池として使用しながら、地上部の敷地を有効に活用することができる。
【0025】
〔第二の実施形態〕
本発明の第二の実施形態に係る土砂沈殿用構造物について図4に基づいて説明する。図4は、本発明の第二の実施形態に係る土砂沈殿用構造物を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)はX−X断面図であり、(c)はY−Y断面図である。本実施形態においては、上澄み液排出部として、側溝の側壁に隣接した部位の地盤を掘削して水路を形成した点に特徴がある。以下、第一の実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
土砂沈殿用構造物2の上澄み液排出部80は、側溝10の側壁13に隣接した部位の地盤を掘削して形成されている。掘削により露出した地盤面は、ポリエチレン等の合成樹脂製シート(浸透防止シート81)により被覆され、上澄み液が地中に浸透することを防止している。なお、樹脂散布等、他の浸透防止手段を用いて上澄み液の地中への浸透を防止してもよい。越流口30から流出した上澄み液は、上澄み液排出部80を矢印B方向に流下して、集水桝60の第一排出口67から集水桝60内に流入する。なお、上澄み液排出部80には、上澄み液が第一排出口67に向けて流れるように傾斜が付けられている。
【0026】
図示する集水桝60は、側溝10との接続面以外の2面に第一排出口67と第二排出口69とを備えている。第一排出口67は、上澄み液排出部80の下流端と接続されており、越流口30から流出した上澄み液が第一排出口67から集水桝60内に流入する。第二排出口69は、第一排出口67と対向する側壁61に形成されており、集水桝60内に流入した上澄み液を集水桝60から排出する。
第二排出口69には、恒久的に使用される排水路90の一端部が接続されており、第二排出口69から流出した上澄み液は、排水路90を矢印C方向に流下して、最終的には海や河川に流れ込む。
側溝10と集水桝60の境界部分には仕切壁28が設置されている。本実施形態に係る仕切壁28は、側溝10の上面17と接している。言い換えれば、仕切壁28は、側溝10の側壁13と同一の高さを有しており、正面越流口21(図1(b)参照)が形成されていない。なお、仕切壁には図2(a)〜(c)のいずれの形式のものを用いてもよい。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、恒久的に設置される水路を仮設の沈殿池として利用する。つまり、水路用地を含む敷地を沈殿池として利用するので、沈殿池を設置するための敷地の確保が容易である。また、既に水路として整備されている箇所を沈殿池として利用するため、沈殿池設置箇所の敷地整備工事が遅延しない。また、水路に回復可能、且つ簡易な加工を施して沈殿池とするので、沈殿池設置等に係る費用及び労力を最小限に抑えることができる。また、上澄み液排出部が、側溝脇の地盤を掘削して上澄み液の浸透防止措置を講ずるだけであり、容易且つ安価に作成することができる。
以上説明した2つの実施形態は本発明の一実施形態に過ぎない。本発明は、上述した技術的思想の範囲内で多くの変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1、2…土砂沈殿用構造物、10…側溝、11…溝、13…側壁、15…底面、17…上面、20…仕切壁、21…正面越流口、23…仕切壁、25…仕切壁、26…サポートバー、28…仕切壁、30…越流口、31…越流口閉止部材、33…U字形側溝、34…側壁、35…越流口、36…越流口閉止部材、40…越流口閉止部材、50…液排出部、51…第一排出管、53…第二排出管、60…集水桝、61…側壁、63…排出口、65…排出口、67…第一排出口、69…第二排出口、80…液排出部、81…浸透防止シート、90…排水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内に設置されて恒久的には水路として利用され、一時的には流入してくる土砂を含んだ濁水を受け入れて土砂を沈殿させる沈殿池として利用される土砂沈殿用構造物であって、
前記水路、及び前記沈殿池を兼ねる溝と、該溝を沈殿池として利用する際に該溝の下流端に配設されて該溝内を流下する濁水中の土砂の流出を阻止する仕切壁と、該溝を構成する側壁上部に貫通形成されて濁水中の土砂から分離された上澄み液を前記溝外部に排出させる越流口と、前記溝を水路として使用する際に、前記越流口を閉止する越流口閉止部材と、を備えたことを特徴とする土砂沈殿用構造物。
【請求項2】
前記越流口から排出された上澄み液を受け入れる上澄み液排出部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の土砂沈殿用構造物。
【請求項3】
前記上澄み液排出部は、前記上澄み液を流入させる中空部を有する筒状体を備えたことを特徴とする請求項2に記載の土砂沈殿用構造物。
【請求項4】
前記筒状体が地中に埋設されていることを特徴とする請求項3に記載の土砂沈殿用構造物。
【請求項5】
前記上澄み液排出部は、前記溝周辺の地盤を掘削することにより形成されることを特徴とする請求項2に記載の土砂沈殿用構造物。
【請求項6】
前記仕切壁の上部に前記上澄み液を越流させる正面越流口を形成したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の土砂沈殿用構造物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の土砂沈殿用構造物を用いた沈殿池施工方法であって、
前記溝を構成する側壁上部に濁水中の土砂から分離された上澄み液を前記溝外部に排出させる越流口を貫通形成する工程を有することを特徴とする沈殿池施工方法。
【請求項8】
請求項7に記載の沈殿池施工方法により施工された沈殿池を水路に回復させる水路回復方法であって、
前記溝内に堆積した土砂を除去する工程と、前記越流口を越流口閉止部材により閉止して前記側壁を復元する工程と、を有することを特徴とする水路回復方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−22552(P2013−22552A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162037(P2011−162037)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】