説明

圧力センサー素子、圧力センサー

【課題】加速度感度を低減した圧力センサー素子、圧力センサーを提供する。
【解決手段】パッケージ44と、前記パッケージ44の一面に設けられた第1ダイアフラム46と、前記パッケージ44の前記一面に対向する面に設けられた第2ダイアフラム48と、前記パッケージ44内部に配置された感圧素子32と、を有し、前記感圧素子32は、長手方向の一端に形成された第1基部34と、前記一端の前記長手方向の反対側の他端に形成された第2基部38と、前記第1基部34及び前記第2基部38との間に形成された振動部36と、を有し、前記長手方向が各ダイアフラムの変位の方向に対して垂直に配置され、前記第1基部34は前記第1ダイアフラム46に接続され、前記第2基部38は前記第2ダイアフラム48に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧素子、及びダイアフラムを用いた圧力センサー素子、及び圧力センサーに関し、特に圧力測定値の加速度変化による誤差を減少させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水圧計、気圧計、差圧計などとして圧電振動素子を感圧素子として使用した圧力センサーが知られている。前記圧電振動素子は、例えば、板状の圧電基板上に電極パターンが形成され、力の検出方向に検出軸を設定しており、前記検出軸の方向に圧力が加わると、前記圧電振動子の共振周波数が変化し、前記共振周波数の変化から圧力を検出する。
【0003】
このような圧力センサーをより高精度にするための従来技術が開示されている。図13は、特許文献1に開示された第1の従来技術に係る圧力センサー素子を示す。図13に示すように圧力センサー素子220は、ダイアフラム212を有する圧力センサー210における前記ダイアフラム212に形成された対をなす支持部218に載置される圧力センサー素子220であって、前記圧力センサー素子220は前記支持部218に固定される2つの基部222と前記基部間に位置する振動部224とを有し、前記基部222の固定部から前記振動部224までの間に切欠き222a、222bを設けた構成が開示されている。これによりダイアフラム212による振動部224に対する曲げ変形、すなわち厚み方向の変位は前記切欠き222a、222bの形成箇所に集中するため、振動部224に対して作用する非線形的な力を抑制し、圧力センサー素子220の振動部224に対する悪影響を低減している。
【0004】
また図14は、特許文献2に開示された第2の従来技術に係る圧力センサー素子を示す。図14(a)は正面から見た模式図、図14(b)は図14(a)のA−A線断面図である。図14に示すように圧力センサー素子320は、感圧素子として圧電振動片330を搭載する圧力センサー素子320であって、可撓部となる薄肉部322の一方の面に、前記圧電振動片330を固定するための対を成す支持部324を有し、対を成す前記支持部324間に厚肉化するための突出部326を有する構成が開示されている。これにより支持部324間に形成した突出部326はその変形が抑制され、当該箇所が円弧状に変形するということを避けることができる。このため、圧力負荷による突出部326の変形により、支持部324間に位置する突出部326が圧電振動片330の振動部に接触することがなくなる。よって当該接触に伴う周波数変化量の検出精度、すなわち圧力検出の精度の劣化を抑制することができる。
【0005】
さらに図15は、特許文献3に開示された第3の従来技術に係る圧力センサー素子を示す。図15に示すように圧力センサー素子は、振動腕434、435の両端に基部436、437を有する圧電振動片431と、前記両端の基部436、437の其々が接合された台座部444、445を有するとともに、周縁部442が固定されるようにした薄板状のダイアフラム440とを備えた圧力センサー素子であって、前記ダイアフラム440は、全体外形が略長方形又は略正方形に形成されており、前記台座部444、445は、前記ダイアフラム440の中央部440bを挟んだ両側に配置され、前記中央部440bに向かうに従って、その向かう方向と直交する幅方向の寸法を小さくするように形成された構成を有している。これにより、ダイアフラム440は中央部440bに向かうに従って撓みやすくなるため、圧力を受けた場合、中央部440bに向かうほど変位量が大きくなる。したがって、中央部440bを挟んで両側に配置された台座部444に基部436、437が接合された圧電振動片431は変形しやすくなるため、感度よく圧力を測定できる圧力センサー素子となる。
【0006】
これらの圧力センサーの構成要素は、ダイアフラムの変位量を双音叉素子等の感圧素子に伝える構造であることから、受圧する被測定圧力に対する変位量が大きいほうが、より高い感度を得ることができる。
そして最近では、このように高精度化された構成要素を包含した圧力センサーを、自動車のTPMS(Tire Pressure Monitoring System)やカーナビゲーション用高低差検出装置などに利用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−333452号公報
【特許文献2】特開2007−327922号公報
【特許文献3】特開2008−241287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、自動車が走行中、特に高速道路などで高速走行しているとき、段差に乗り上げた瞬間等に加速度が生じ、圧力センサーのダイアフラムに被測定圧力を受圧したときの撓みに更に前記加速度による撓み分が付加されてしまうので、感圧素子の共振周波数に前記加速度に起因した余計な撓み分だけ変動が生じることにより、圧力センサーで検出される圧力検出値に誤差が生じてしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に着目し、高感度な圧力センサーであって、圧力センサーに生じる加速度による圧力検出値の誤差の発生を防止することを可能とする圧力センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]パッケージと、前記パッケージの一面に設けられた第1ダイアフラムと、前記パッケージの前記一面に対向する面に設けられた第2ダイアフラムと、前記パッケージ内部に配置された感圧素子と、を有し、前記感圧素子は、長手方向の一端に形成された第1基部と、前記一端の前記長手方向の反対側の他端に形成された第2基部と、前記第1基部及び前記第2基部との間に形成された振動部と、を有し、前記長手方向が各ダイアフラムの変位の方向に対して垂直に配置され、前記第1基部は前記第1ダイアフラムに接続され、前記第2基部は前記第2ダイアフラムに接続されたことを特徴とする圧力センサー素子。
【0011】
上記構成により、圧力センサー素子は第1ダイアフラム及び第2ダイアフラムからの変位を感圧素子が力として受けることにより絶対圧を測定することができる。ここで第1ダイアフラム及び第2ダイアフラムは外部から圧力を受けると、第1ダイアフラム及び第2ダイアフラムが互いに接近する方向に変位するため、感圧素子は第1基部及び第2基部が互いに離間する方向に変位して引張り応力をうけ、これにより圧力を検出することができる。
【0012】
一方、圧力センサー素子が加速度を受けた場合、第1ダイアフラム及び第2ダイアフラムの変位方向が一致し第1基部及び第2基部の変位の方向はほぼ一致する。よって、これによる感圧素子への応力は殆どないため加速度に起因する圧力測定値の誤差を低減することができる。
【0013】
[適用例2]力を受けて変位する第1層及び第2層と、前記第1層及び第2層の間に形成され前記変位を検出する感圧素子層と、を有する圧力センサー素子であって、前記感圧素子層は、前記変位を検出する振動部と、前記振動部の長手方向の一端に形成された第1基部と、前記一端の前記長手方向の反対側の他端に形成された第2基部と、前記振動部、前記第1基部、及び前記第2基部を囲む感圧素子枠と、前記感圧素子枠と前記第1基部とを連結する第1連結部と、前記感圧素子枠と前記第2基部とを連結する第2連結部と、を有し、前記第1層は、前記感圧素子層に対向する面に形成された第1周縁部と、前記第1周縁部の内側に形成され、前記力を受けて変位する第1凹部と、前記第1凹部の前記第1基部に対向する位置に形成された第1凸部と、を有し、前記第2層は、前記感圧素子層に対向する面に形成された第2周縁部と、前記第2周縁部の内側に形成され、前記力を受けて変位する第2凹部と、前記第2凹部の前記第2基部に対向する位置に形成された第2凸部と、を有し、前記第1周縁部、前記感圧素子枠、前記第2周縁部の順に積層するとともに、前記第1基部は、前記第1凸部と接続され、前記第2基部は、前記第2凸部と接続されたことを特徴とする圧力センサー素子。
上記構成により、適用例1に係る圧力センサー素子を簡易な構成の部材を積層して量産することができる。
【0014】
[適用例3]前記第1連結部及び前記第2連結部は、前記長手方向に対して垂直に延びる成分を有することを特徴とする適用例2に記載の圧力センサー素子。
これにより、第1連結部及び第2連結部がそれぞれ第1基部及び第2基部の動きを妨げることを抑制して圧力センサー素子の感度を向上させることができる。
【0015】
[適用例4]前記第1層は、第1ダイアフラム層と第1支持部層との積層構造を有し、前記第2層は、第2支持部層と第2ダイアフラム層との積層構造を有し、前記第1支持部層は、第1支持部と、前記第1支持部を囲む第1支持部枠と、前記第1支持部枠から延出し前記第1支持部に接続する第1梁と、を有し、前記第1支持部は、前記第1ダイアフラム層と接続して前記第1凸部を形成し、前記第1支持部枠は、前記第1ダイアフラム層と接続して前記第1周縁部及び前記第1凹部を形成し、前記第2支持部層は、第2支持部と、前記第2支持部を囲む第2支持部枠と、前記第2支持部枠から延出し前記第2支持部に接続する第2梁と、を有し、前記第2支持部は、前記第2ダイアフラム層と接続して前記第2凸部を形成し、前記第2支持部枠は、前記第2ダイアフラム層と接続して前記第2周縁部及び前記第2凹部を形成することを特徴とする適用例2または3に記載の圧力センサー素子。
【0016】
上記構成により、適用例2、3の場合より積層構造が複雑になるが、第1ダイアフラム層及び第2ダイアフラム層はフォトリソ・エッチング、サンドブラスト等により掘り込む工程が不要であるので、各ダイアフラム層においてフォトリソ・エッチングによるエッチパイプが形成され、またサンドブラストによるクラックや割れが形成されることを回避することができる。
【0017】
[適用例5]前記第1梁及び前記第2梁は、前記長手方向に対して垂直に延びる成分を有することを特徴とする適用例4に記載の圧力センサー素子。
これにより、第1梁及び第2梁がそれぞれ第1支持部及び第2支持部の動きを妨げることを抑制して圧力センサー素子の感度を向上させることができる。
【0018】
[適用例6]適用例1乃至5のいずれか1例に記載の圧力センサー素子と、前記圧力センサー素子を搭載する基板と、前記基板の前記圧力センサー素子の当接する位置に設けられ前記圧力センサーと前記基板との間に隙間を形成するバンプと、前記圧力センサー素子と電気的に接続され前記圧力センサーを駆動する駆動回路と、を有することを特徴とする圧力センサー。
【0019】
これにより、圧力センサー素子と基板との間に隙間が形成されているため、基板に対向するダイアフラムの圧力に対する応答が劣化したり、加速度による基板側への変位が妨げられるのを防ぐことができる圧力センサーとなる。
【0020】
[適用例7]適用例1乃至5のいずれか1例に記載の圧力センサー素子と、前記圧力センサー素子を搭載する基板と、前記圧力センサー素子と電気的に接続され前記圧力センサーを駆動する駆動回路と、を有し、前記圧力センサー素子は、前記圧力センサー素子の側面のいずれか一面を前記基板に接着したことを特徴とする圧力センサー。
【0021】
これにより、第1ダイアフラム層及び第2ダイアフラム層は圧力測定において基板から干渉をうけることはなく。圧力測定値の加速度による誤差を低減し、かつ低背化した圧力センサーとなる。
【0022】
[適用例8]前記駆動回路は前記圧力センサー素子とワイヤーボンディングにより電気的に接続されたことを特徴とする適用例6または7に記載の圧力センサー。
これにより、駆動回路や圧力センサー素子の基板上での配置の自由度が向上する。
【0023】
[適用例9]前記駆動回路は前記圧力センサー素子と前記バンプを介して電気的に接続されたことを特徴とする適用例7に記載の圧力センサー。
これにより、実装に必要な面積及び体積を削減することができるので小型化した圧力センサーを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る圧力センサー素子の模式図である。
【図2】第1実施形態に係る圧力センサー素子の積層構造を示す図である。
【図3】第1実施形態を構成する第1連結部、第2連結部の模式図である。
【図4】第1実施形態を構成する第1連結部、第2連結部の模式図である。
【図5】比較例となる圧力センサーの動作を示す図である。
【図6】第1実施形態に圧力センサーの動作を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る圧力センサー素子の積層構造を示す図である。
【図8】第2実施形態を構成する第1梁、第2梁の模式図である。
【図9】第2実施形態を構成する第1梁、第2梁の模式図である。
【図10】第3実施形態に係る圧力センサーの模式図である。
【図11】第4実施形態に係る圧力センサーの模式図である。
【図12】感圧素子の変形例を示す模式図である。
【図13】第1の従来技術に係る圧力センサー用圧電振動片の模式図である。
【図14】第2の従来技術に係る圧力センサー用のダイアフラムの模式図である。
【図15】第3の従来技術に係る圧力センサー用の感圧素子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0026】
第1実施形態に係る圧力センサー素子を図1に示す。図1(a)は真上(XY平面)からみた模式図、図1(b)は正面(XZ平面)から見た模式図である。第1実施形態に係る圧力センサー素子10は、パッケージ44と、前記パッケージ44の一面に設けられた第1ダイアフラム46と、前記パッケージ44の前記一面に対向する面に設けられた第2ダイアフラム48と、前記パッケージ44内部に配置された感圧素子32と、を有し、前記感圧素子32は、長手方向の一端に形成された第1基部34と、前記一端の前記長手方向の反対側の他端に形成された第2基部38と、前記第1基部34及び前記第2基部38との間に形成された振動部36と、を有し、前記長手方向が各ダイアフラムの変位の方向に対して垂直に配置され、前記第1基部34は前記第1ダイアフラム46に接続され、前記第2基部38は前記第2ダイアフラム48に接続された構成を有し、真空を基準として絶対圧を測定するものである。なお図1を含む以下の図については直交座標系(X軸、Y軸、Z軸)を用いる。
【0027】
パッケージ44は、±X方向を長辺とし、±Y方向を短辺とする矩形の筐体であり、±Z方向に向く面を外部からの圧力をうける受圧面とし、内部を真空に封止して後述の感圧素子32等を収容するものである。これにより圧力センサー素子10は、感圧素子32のQ値を高め、安定した共振周波数を確保することができるので、圧力センサー素子10の長期安定性を確保することができる。またパッケージ44は中心線Cを基準として線対称な形状を有している。
【0028】
パッケージ44の一面(−Z方向側の面)には第1ダイアフラム46が形成され、パッケージ44の一面に対向する面(+Z方向側の面)に第2ダイアフラム48が形成されている。パッケージ44、第1ダイアフラム46、第2ダイアフラム48は中心線Cを基準として線対称な形状を有している。第1ダイアフラム46及び第2ダイアフラム48はパッケージ44の一部を薄肉にした態様で形成され、外部から圧力を受けるとパッケージ44の内側に向けて撓み変形しつつ変位する。なお第1ダイアフラム46は外部からの圧力により+Z方向に変位し、第2ダイアフラム48の場合は−Z方向に変位するため、圧力による変位の方向は互いに反対方向となるが平行な関係を有している。そして第1ダイアフラム46及び第2ダイアフラム48は同一の圧力に対して同一の変位量を有するものとする。
【0029】
また第1ダイアフラム46のパッケージ44内側には第1支持部50が形成され、第2ダイアフラム48のパッケージ44内側には第2支持部52が形成されている。そして、第1支持部50及び第2支持部52は互いに同一の寸法を有するものであり、中心線Cからの第1支持部(−X方向)までの距離、及び中心線から第2支持部(+X方向)までの距離が共に等しくなるように配置されている。
【0030】
感圧素子32は、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電材料を用い、双音叉型圧電振動子、シングルビーム型圧電振動子、SAW共振子、厚みすべり振動子等として形成されたものである。感圧素子32は、中心線Cを基準として線対称な形状を有し、その長手方向が第1ダイアフラム46、第2ダイアフラム48の変位方向に対して垂直(±X方向)となるように配置し、その長手方向を検出軸としている。そして感圧素子32は、長手方向の一端にある第1基部34が第1支持部50に固定され、第1基部34の振動部36を挟んだ反対側にある第2基部38が第2支持部52に固定されている。 よって感圧素子32は第1支持部50を介して第1ダイアフラム46に接続され、第2支持部52を介して第2ダイアフラム48に接続される。したがって第1支持部50及び第2支持部52が互いに接近する方向に変位すると振動部36は圧縮応力を受け、逆に互いに離れる方向に変位すると振動部36は伸長応力を受けることになる。
【0031】
感圧素子32は発振回路(不図示)と電気的に接続され、発振回路(不図示)から供給される交流電圧により、固有の共振周波数で振動するものである。特に本実施形態で用いられている双音叉型圧電振動片は、厚みすべり振動子などに比べて、伸長・圧縮応力に対する共振周波数の変化が極めて大きく共振周波数の可変幅が大きいので、わずかな圧力差を検出するような分解能力に優れる圧力センサーにおいては好適である。双音叉型圧電振動子は、伸長応力を受けると振動部36の振幅幅が小さくなるので共振周波数が高くなり、圧縮応力を受けると振動部36の振幅幅が大きくなるので共振周波数は低くなる。なお、双音叉型圧電振動子の圧電基板としては温度特性に優れた水晶が望ましい。
【0032】
図2に第1実施形態に係る圧力センサー素子の積層構造を示す。上記構成を有する圧力センサー素子10は第1層12、感圧素子層28、第2層20による積層構造を有し、これらはいずれも水晶等の圧電材料を用い、各層を同一材料で形成することが好適である。なお、第1層12、感圧素子層28、第2層20はフォトリソ・エッチング加工により形成可能であり、さらに第1層12及び第2層20はサンドブラストによって形成することも可能である。
【0033】
第1層12は、一定の厚みを有する矩形の板に第1周縁部14、第1凹部16、第1凸部18を形成したものであり、同様に第2層20は、一定の厚みを有する矩形の板に第2周縁部22、第2凹部24、第2凸部26を形成したものである。
【0034】
また感圧素子層28は、感圧素子枠30、感圧素子32(第1基部34、振動部36、第2基部38)、第1連結部40、第2連結部42を有する。ここで第1周縁部14、感圧素子枠30、第2周縁部22の内周の寸法は全て同じとなるように設計されている。
【0035】
よって、第1周縁部14、感圧素子枠30、第2周縁部22の順に積層することによりパッケージ44の側面が形成され、第1凹部16が第1ダイアフラム46を包含するパッケージ44の−Z方向側の面となり、第2凹部24が第2ダイアフラム48を包含するパッケージ44の+Z方向側の面となる。そして第1凸部18は第1基部34と接続することにより第1支持部50となり、第2凸部26は第2基部38と接続することにより第2支持部52となる。
【0036】
そして、感圧素子枠30が感圧素子32を保持するため、感圧素子層28には感圧素子枠30から延出され第1基部34に接続する第1連結部40と、感圧素子枠30から延出され第2基部38に接続する第2連結部42を有する。
【0037】
第1連結部40及び第2連結部42は、感圧素子32等に比べて充分細い幅を有するとともに、感圧素子32の長手方向(±X方向)に対して垂直に延びる成分を有する。これにより、第1基部34及び第2基部38が長手方向に変位した場合、第1連結部40及び第2連結部42において、長手方向に垂直な成分が長手方向に屈曲することが可能となるので、第1基部34及び第2基部38の長手方向への動きを妨げることを低減することができる。そして、第1連結部40及び第2連結部42は図3(a)〜(d)、図4(a)〜(d)に示すようにいくつかの形態をとることができる。図3(a)のように第1連結部40及び第2連結部42を感圧素子枠30の長辺30aの内側から延出させ波型の形状とすることにより両者にバネ性を持たせている。これにより第1連結部40及び第2連結部42に応力が集中することを回避して破壊限界点を高めることができる。図3(b)、(c)に示すように、L字型またはコの字型とすることにより、第1連結部40及び第2連結部42の長手方向(±X方向)に垂直(±Y方向)な成分が直角に折れた位置において長手方向に屈曲可能となる。なお、図2に示すように第1連結部40及び第2連結部42は、感圧素子32の長手方向(±X方向)に対して垂直な方向(±Y方向)に延びる棒状に形成してもよい。
【0038】
さらに図3(d)に示すように、第1連結部40及び第2連結部42を感圧素子枠30内側のコーナーから斜め方向に延出させ、それぞれ第1基部34、第2基部38に接続する構成とすることができる。さらにこの状態で第1連結部40及び第2連結部42を図3(a)に示すように波型にしても良い。このような形状とすることで第1基部34及び第2基部38にバネ性を持たせることができ、第1連結部40及び第2連結部42に応力が集中しないので破壊限界点を高めることができる。
【0039】
また図4(a)、(b)に示すように、L字型またはコの字型の第1連結部40及び第2連結部42を感圧素子枠30の短辺30bの内側から延出させそれぞれ第1基部34、第2基部38に接続した構成とすることができる。これにより第1基部34及び第2基部38との接続箇所を減らし、感圧素子32の感度劣化を防止できる。この場合、図4(c)(図4(a)に対応)、(d)(図4(b)に対応)に示すように、第1連結部40及び第2連結部42を2本ずつ設けることにより感圧素子32の長手方向(±X方向)に対して対称性を持たせて一方への偏りをなくしてバランスを保つようにしても良い。さらに図3(b)、(c)、及び図4(a)、(b)、(c)、(d)の場合は、フォトリソ・エッチング加工におけるマスクが作りやすいため、安定量産が可能となる。このように第1連結部40及び第2連結部42は複数の形態をとることができるが、第1基部34及び第2基部38の動きやすさに差が生じないように、中心線Cを基準とした線対称な関係を有している。
【0040】
なお、振動部36に形成された励振電極(不図示)と接続した引き出し電極(不図示)が第1連結部40または第2連結部42に形成され、引き出し電極(不図示)は感圧素子枠30に延長され外部に露出した構成を有している。よって感圧素子32はパッケージ外部にある発振回路(不図示)と電気的に接続可能であり、発振回路(不図示)からの交流電圧を受けて感圧素子32の振動部36は所定の共振周波数で振動することができる。
【0041】
組み立て手順としては(図2参照)、まず第1層12の上に感圧素子層28を積層する。このとき第1周縁部14の上面と、感圧素子枠30の下面とを接着し、第1凸部18の頂面と第1基部34の下面とを接着する。
【0042】
次に、第1層12上に積層された感圧素子28の上に第2層20を積層する。このとき感圧素子枠30の上面と第2周縁部22の下面とを接着し、第2凸部26の頂面と第2基部38の上面とを接着する。このとき第2層20の上面であって第2凸部26に対向する位置に錘(不図示)を載せて、第2凸部26と第2基部38とを接合すると、第2基部38を保持する第2連結部42が錘(不図示)の荷重に対して抗力を発生させるため、第2凸部26と第2基部38との密着性が増し、その接合度が向上する。
【0043】
各層の接着においては低融点ガラスを用いた接合方法、アルコキシド、オルガノシノキシ基などを含む接合部材を用い、当該接合部材に紫外線等のエネルギー線を照射することにより活性化させて接合する方法、金錫合金等の共晶合金による被膜を接合部材に用いた共晶接合方法などを用いてもよい。もちろん後述の固相接合を用いてもよい。
【0044】
このように、第1層12、感圧素子層28、第2層20の順に積層したのち、例えば第1層12の第1周縁部14、感圧素子層28の感圧素子枠30、第2層20の第2周縁部22のいずれかの側面から形成した封止孔(不図示)から真空引きして封止孔(不図示)を封止することにより圧力センサー素子10が形成される。
【0045】
上記構成のもと、第1実施形態に係る圧力センサー素子10の動作について図5、図6を用いて述べる。まず図5において、比較例として、従来技術と同様の構成を有し、絶対圧を測定する圧力センサー素子における感圧素子に対する加速度に伴う応力について述べる。なお、図5、図6において各ダイアフラムの圧力や加速度による撓み変形は極僅かであるが、理解しやすいように強調して描いている。
【0046】
比較例に係る絶対圧を測定する圧力センサー素子60は、図5(a)に示すように、パッケージ62とパッケージ62の一面に形成されたダイアフラム64と、パッケージ62内部に真空封止された感圧素子66とを有し、感圧素子66は長手方向に第1基部68、振動部70、第2基部72を有し、前記長手方向が前記ダイアフラム64の変位方向(±Z方向)と垂直(±X方向)になるように配置され、第1基部68がダイアフラム64の内側に形成された第1支持部74に接続され、第2基部72がダイアフラム64内側に形成された第2支持部76に接続された構成である。そして従来技術で述べたように、ダイアフラム64の法線を鉛直方向(±Z方向)に向けて自動車等に搭載し、その自動車等が段差に乗り上げた場合、圧力センサー素子60には図5(a)に示すように、−Z方向の加速度、+Z方向の加速度が掛かることになる。
【0047】
図5(b)に示すように、圧力センサー素子60に−Z方向の加速度Gが掛かった場合、ダイアフラム64は−Z方向に撓み変形して変位する。よって第1支持部74は−Z方向に変位するとともに、第1基部68に対してほぼ−X方向に力f1を与えることになる。また、第2支持部76は−Z方向に変位するとともに、第2基部72に対してほぼ+X方向に力f1を与えることになる。よって振動部70は両端から引張り応力を受け共振周波数が高くなる。
【0048】
一方、図5(c)に示すように、+Z方向の加速度Gが掛かった場合、ダイアフラム64は+Z方向に撓み変形して変位する。よって第1支持部74は+Z方向に変位するとともに、第1基部68に対してほぼ+X方向の力f2を与えることになる。また、第2支持部76は+Z方向に変位するとともに、第2基部72に対してほぼ−X方向の力f2を与えることになる。よって振動部70は両端から圧縮応力を受け共振周波数が低くなる。
【0049】
このように加速度が受ける方向により感圧素子66の振動部70の受ける力の方向が変化するため、本願発明者は、以下の図に示すように、第1基部34に生じる力と、第2基部38に生じる力とが相殺するようにすれば、圧力センサー素子10に付加される加速度による余計な撓み分により生じる共振周波数の変動をキャンセルできることに想到した。
【0050】
図6に第1実施形態に係る圧力センサー素子の圧力及び加速度を受けた場合の動作を示す。図6(a)は圧力センサー素子の圧力及び加速度を受けていない場合の模式図、図6(b)は圧力Pを受けた場合の模式図、図6(c)は加速度Gを受けた場合の模式図である。
【0051】
図6(b)に示すように、圧力センサー素子10に圧力Pが掛かった場合、第1ダイアフラム46は+Z方向に変位し、第2ダイアフラム48は−Z方向に変位する。よって第1支持部50は+Z方向に変位するととともに、第1基部34に対してほぼ+X方向の力f1を与え、第2支持部52は−Z方向に変位するととともに、第2基部38に対してほぼ−X方向の力f1を与えることになる。よって振動部36は両端から力f1を受け、引張り応力を受けて発振周波数が高くなることにより圧力を検知することができる。
【0052】
一方、図6(c)に示すように、圧力センサー素子10に−Z方向から加速度Gが掛かった場合、第1ダイアフラム及び第2ダイアフラムは−Z方向に変位する。よって第1支持部50は−Z方向に変位するとともに、第1基部34に対してほぼ−X方向の力f2を与えることになる。一方、第2支持部52は−Z方向に変位するとともに、第2基部38に対してほぼ−X方向の力f1を与えることになる。ここで第1ダイアフラム46及び第2ダイアフラム48の圧力に対する特性は同一である。また第1支持部50及び第2支持部52は同一寸法であり感圧素子32も中心線Cを基準として線対称な形状を有する。そして圧力センサー素子10を反転させると第1支持部50及び第2支持部52の位置が互いに重なり、第1基部34及び第2基部38の位置が互いに重るため、中心O(図6(a)参照)を基準として180度の回転対称性を有する。したがって上記f1及びf2の大きさは互いにほぼ等しくなるため、振動部36の一方の基部である第1基部34に対して引張り応力が生じても、他方の基部である第2基部38に対しては圧縮応力が生じる、即ち、それぞれの基部には、互いに異なる応力が生じることにより、それぞれに発生する応力は互いに相殺されることになるので、結果的に振動部36は結果的に引っ張り応力も圧縮応力も生じることはなく、加速度に起因した共振周波数の変動は発生することはない。そして加速度Gが逆方向に掛かったとしても圧力センサー素子10には上述のように前記中心Oを基準とした180度の対称性があるため同様に加速度に起因する共振周波数の変動は発生することはない。
【0053】
第1実施形態に係る圧力センサー素子10の感度を向上させるためには第1ダイアフラム46及び第2ダイアフラム48の板厚を薄くして各ダイアフラムの変位量を増加させる必要がある。しかし第1ダイアフラム46及び第2ダイアフラム48は、それぞれ第1凹部16及び第2凹部24により形成された薄肉の領域と、感圧素子32を支持する第1凸部18(第1支持部50)、第2凸部26(第2支持部52)などの厚肉の領域とが一体で構成されていることから、厚肉で平板状の基板を用い、薄肉の領域を形成するための掘り込み作業が必要となる。しかしながら上記ダイアフラムは、この掘り込み加工をする際に、以下のような問題が発生する虞がある。
【0054】
まず、上記ダイアフラムが水晶基板で形成されている場合、通常フォトリソ・エッチング、またはサンドブラストによって掘り込み加工が行われる。上記ダイアフラムをフォトリソ・エッチングにて掘り込み加工をする際に、水晶基板の有する結晶歪みに起因したエッチパイプ(エッチチャンネル、エッチチューブ、エッチトンネルともいう)と称される針状の細孔が形成されることがある。そして上述の上記ダイアフラムを包含する圧力センサー素子は、このエッチパイプが上記ダイアフラムの薄肉の領域に形成されることにより圧力センサー素子10の内部と外気とが貫通してしまうと、圧力センサー素子10内が気密に封止されず、絶対圧検出に必要な真空状態を保持できない虞がある。一方、サンドブラストによって上述の掘り込み加工をする際に、サンドブラストにおける高圧吹き付けによって、上記ダイアフラムの薄肉の領域にクラックや割れなどが発生し、上記ダイアフラムが破損する虞がある。
【0055】
したがって、圧力センサー素子はこれらの問題を回避するために、ダイアフラムの薄肉の領域の板厚を、これらの問題が発生する厚みより厚く設定する必要がある。これにより第1実施形態に係る圧力センサー素子10においては、第1ダイアフラム46及び第2ダイアフラム48の薄肉の領域の板厚のさらなる薄型化によって各ダイアフラムの変位量を増やし、より高い感度を得ることが、各ダイアフラムの構成に起因する加工上の制約から極めて困難であるという問題を有している。そこで第2実施形態においては上記問題を解決する構成について述べる。
【0056】
第2実施形態に係る圧力センサー素子80の積層構造を図7に示す。第2実施形態に係る圧力センサー素子80は水晶等を材料として用い、第1ダイアフラム層82、第1支持部層84、感圧素子層28、第2支持部層92、第2ダイアフラム層100の順に5層で積層した構成を有している。なお第1実施形態における第1層12は第1ダイアフラム層82と第1支持部層84を積層した構成に相当し、第2層20は第2支持部層92と第2ダイアフラム層100を積層した構成に相当し、感圧素子層28は第1実施形態と共通する。
【0057】
第1ダイアフラム層82及び第2ダイアフラム層100は、水晶で形成された矩形の板材である。第1ダイアフラム層82及び第2ダイアフラム層100は、水晶原石から切り出された水晶素板(不図示)をラップ研磨により所定の厚みになるまで研磨し、鏡面研磨を行って平坦度を高め、更に、前記水晶基板の表面に残留している応力の緩和や加工痕等の加工変質層を除去するために希フッ酸等により前記水晶基板の表面をエッチングすることにより形成される。よって水晶素板(不図示)そのものをエッチングや、サンドブラストにより掘り込む工程はないので、第1実施形態で述べたようなエッチパイプやクラック、割れなどを発生させることなく薄肉の板材を容易に形成することができる。
【0058】
第1支持部層84は、第1支持部86と、第1支持部86を囲む第1支持部枠88と、第1支持部枠88から延出し第1支持部86に接続する第1梁90とを有する。そして第1支持部86は、第1ダイアフラム層82と接続して第1実施形態に係る第1凸部18を形成し、第1支持部枠88は、第1ダイアフラム層82と接続して第1実施形態に係る第1周縁部14及び第1凹部16を形成する。また第1ダイアフラム層82は、第1支持部層84と接続することにより第1実施形態に係る第1ダイアフラム46を形成する。
【0059】
第2支持部層92は、第2支持部94と、第2支持部94を囲む第2支持部枠96と、第2支持部枠96から延出し第2支持部94に接続する第2梁98とを有する。そして第2支持部94は、第2ダイアフラム層100と接続して第1実施形態に係る第2凸部26を形成し、第2支持部枠96は、第2ダイアフラム層100と接続して第1実施形態に係る第2周縁部22及び第2凹部24を形成する。また第2ダイアフラム層100は、第2支持部層92と接続することにより第1実施形態に係る第2ダイアフラム48を形成する。
【0060】
第1梁90及び第2梁98は、第1連結部40及び第2連結部42と同様に感圧素子32の長手方向(±X方向)に対して垂直に延びる成分を有する。これにより、第1支持部86及び第2支持部94が長手方向に変位した場合、第1梁90及び第2梁98において、長手方向に垂直な成分が長手方向に屈曲することが可能となるので、第1支持部86及び第2支持部94の長手方向への動きを妨げることを低減することができる。そして、第1支持部86及び第2支持部94は、第1連結部40及び第2連結部42と同様に図8(a)〜(d)、図9(a)〜(d)に示すようにいくつかの形態をとることができる。図8(a)のように第1梁90及び第2梁98をそれぞれ第1支持部枠88、第2支持部枠96の長辺88a、96aの内側から延出させ波型の形状とすることにより両者にバネ性を持たせている。これにより第1梁90及び第2梁98に応力が集中することを回避して破壊限界点を高めることができる。図8(b)、(c)に示すように、L字型またはコの字型とすることにより、第1梁90及び第2梁98の感圧素子32の長手方向に垂直な成分が直角に折れた位置を軸として長手方向に屈曲可能となる。
【0061】
さらに図8(d)に示すように、第1梁90及び第2梁98をそれぞれ第1支持部枠88内側、第2支持部枠96内側のコーナーから斜め方向に延出させ、それぞれ第1支持部86、第2支持部94に接続する構成とすることができる。さらにこの状態で第1梁90及び第2梁98を図8(a)に示すように波型にしても良い。このような形状とすることで第1梁90及び第2梁98にバネ性を持たせることができ、第1梁90及び第2梁98に応力が集中しないので破壊限界点を高めることができる。
【0062】
また図9(a)、(b)に示すように、L字型またはコの字型の第1梁90及び第2梁98をそれぞれ第1支持部枠88、第2支持部枠96の短辺88b、96bの内側から延出させそれぞれ第1支持部86、第2支持部94に接続した構成とすることができる。これにより第1支持部86及び第2支持部94との接続箇所を減らし、感圧素子32の感度劣化を防止できる。この場合、図9(c)(図9(a)に対応)、(d)(図9(b)に対応)に示すように、第1梁90及び第2梁98を2本ずつ設けることにより、感圧素子32の長手方向(±X方向)に対して対称性を持たせて一方への偏りを無くしてバランスを保つようにしても良い。さらに図8(b)、(c)、及び図9(a)、(b)、(c)、(d)の場合は、フォトリソ・エッチング加工におけるマスクが作りやすいため、安定量産が可能となる。このように第1梁90及び第2梁98は複数の形態をとることができるが、第1支持部88及び第2支持部94の動きやすさに差が生じないように、中心線Cを基準とした線対称な関係を有している。
【0063】
第2実施形態に係る圧力センサー素子80の組み立ては、まず第1ダイアフラム層82と第1支持部層84、第2支持部層92と第2ダイアフラム層100をそれぞれ固相接合により接続する。
【0064】
ここで固相接合とは、接着剤を用いずに固相同士を接合する方法をいい、本実施形態において具体的には、直接接合、メタル接合、陽極接合等が挙げられる。直接接合は、平坦性が確保された水晶基板の接合面に酸などの化学薬品を用いて表面をわずかに酸化させて薄い酸化膜を形成し、同時に表面に水酸基を付着させる親水化処理を行い、親水化処理された接合面同士を当接させて相対する水酸基同士を水素結合により結合させ、その後の熱処理により水酸基を水の形態で系外に排出することにより行われるもの等があり、接合面において直接接合による新たな接合膜は形成されない。
【0065】
メタル接合は平坦性が確保された両方の接合面に厚さ0.1μm程度のAu膜等の金属膜をスパッタ等により形成し、両方の金属膜の表面をプラズマ照射により活性化させ、活性化された金属膜表面同士を当接させ、加熱加圧して活性化された金属原子が当接面から互いに拡散して当接した膜同士が一体化することにより接合させるものであり、接合後は0.2μm程度の金属膜による接合膜が形成される。
【0066】
陽極接合は、接合界面にある金属が酸化されるという化学反応により成立し、水晶基板とガラス部材との陽極接合では、平坦性の確保された水晶部材の接合面にアルミニウムなどの金属膜をスパッタなどにより形成し、形成した金属膜の表面に平坦性の確保されたガラス部材の接合面を当接させる。ここで、一般には、ガラス部材中にはナトリウム等の金属イオンが含まれているため、ガラス部材の接合面近傍には接合に必要な金属が存在し、陽極接合を可能としている。陽極接合させるときには、金属膜を陽極とし、ガラス部材の接合面に対向する面に陰極を配置し、これらの間に電界を印加する。このことにより、ガラスに含まれているナトリウムなどの金属イオンが陰極側に移動し、これに伴い、接合面の近傍では、酸素イオンの量が増加し、電気的二重層が形成された状態となる。この結果、接合界面においてガラス部材に接触している金属膜が酸化され、両者が接合した状態が得られ、接合後は0.1μm程度の接合膜が形成される。
【0067】
これらの接合は導電性ペーストに比べて遥かに少ない接合面積で充分な接合強度が得られ、本実施形態においては接合幅が100μm〜300μm程度でウェハ同士を充分な接合強度で接合できる。
【0068】
このとき第1支持部86と第1ダイアフラム層82、第2支持部94と第2ダイアフラム層100は固相接合により接合するが、第1支持部86、第2支持部94の変位を妨げないように、第1梁90及び第2梁98は、それぞれ第1ダイアフラム層82、第2ダイアフラム層100には接合させない。
【0069】
次に第1支持部枠88の上面と感圧素子枠30の下面とを接着し、第1支持部86の上面と第1基部34の下面とを接着する。そして感圧素子枠30の上面と第2支持部枠96の下面とを接着し、第2基部38の上面と第2支持部94の下面とを接着する。
【0070】
この接着においては低融点ガラスを用いた接合方法、アルコキシド、オルガノシノキシ基などを含む接合部材を用い、当該接合部材に紫外線等のエネルギー線を照射することにより活性化させて接合する方法、金錫合金等の共晶合金による被膜を接合部材に用いた共晶接合方法などを用いてもよい。もちろん上述の固相接合を用いてもよい。
【0071】
また上述の第1ダイアフラム層82と第1支持部層84、第2ダイアフラム層100と第2支持部層92との接合において、第1ダイアフラム層82と第1支持部86、第2ダイアフラム層100と第2支持部94をそれぞれ固相接合で接合し、他の部分を上述の接着方法により接着してもよい。
【0072】
このように、第1ダイアフラム層82、第1支持部層84、感圧素子層28、第2支持部層92、第2ダイアフラム層100の順に積層したのち、例えば第1支持部層84の第1支持部枠88、感圧素子層28の感圧素子枠30、第2支持部層92の第2支持部枠96のいずれかの側面に形成された封止孔(不図示)から真空引きして封止孔(不図示)を封止することにより圧力センサー素子80が形成される。
【0073】
このように第2実施形態においては、第1実施形態より積層構造が複雑になるが、第1ダイアフラム層82及び第2ダイアフラム層100はフォトリソ・エッチング、サンドブラスト等により掘り込む工程が不要であるので、各ダイアフラム層においてフォトリソ・エッチングに起因したエッチパイプが形成されたり、またサンドブラストに起因したクラックや割れが形成されることを回避することができる。
【0074】
第1実施形態に係る圧力センサー素子10、第2実施形態に係る圧力センサー素子80はそれぞれ圧力センサー用の基板に実装することによって圧力センサーとなる。
【0075】
第3実施形態に係る圧力センサー110を図10(a)、(b)示す。第3実施形態に係る圧力センサー110は、図10(a)に示すように、前記圧力センサー素子10、80を搭載する基板112と、前記基板112の前記圧力センサー素子10、80の当接する位置に設けられ前記圧力センサー素子10、80と前記基板112との間に隙間を形成するバンプ114と、前記圧力センサー素子10、80と電気的に接続され前記圧力センサー素子10、80を駆動する駆動回路116と、を有しており、前記駆動回路116は前記圧力センサー素子10、80とAu等で形成されたワイヤー線118によるワイヤーボンディングにより電気的に接続された構成である。
【0076】
圧力センサー素子10、80は感圧素子層28の感圧素子枠30の一部に張り出し部30cを有しており、この張り出し部30cの上面に感圧素子32の励振電極(不図示)に接続した引き出し電極(不図示)が引き出されているものとする。一方基板112上には駆動回路116が搭載され基板112上に駆動回路116に接続する接続電極120が設けられている。基板112上に設けられたバンプ114は、一定の高さを有し圧力センサー素子10、80の基板112に対向する第1層12(第1ダイアフラム層82)の角に対応した位置に4つ配置されている。圧力センサー素子10、80は第1層12(第1ダイアフラム層82)側を基板側に向け、バンプ114に圧力センサー素子10、80を押し付けた状態で、バンプ114に高周波を当てることにより圧力センサー素子10、80をバンプ114を介して基板112に固定する。さらに引き出し電極(不図示)と接続電極120とをワイヤー線によるワイヤーボンディングにより接続する。これにより駆動回路116は感圧素子32と電気的に接続される。そしてワイヤーボンディングにより駆動回路116と圧力センサー素子10、80とを電気的に接続するため駆動回路116、及び圧力センサー素子10、80の基板112上の配置の自由度が向上する。さらに圧力センサー素子10、80と基板112はバンプ114を介して接続され、圧力センサー素子10、80と基板112との間には隙間122が形成されるため、基板112に対向する第1層12(第1ダイアフラム層82)の圧力に対する応答が劣化したり、加速度による基板112側への変位が妨げられるのを防ぐことができる圧力センサー110となる。
【0077】
また、図10(b)に示すように、引き出し電極は第1層12(第1ダイアフラム層82)側に引き出され、基板112上であって引き出し電極と対向する位置に接続電極120と接続した導体のバンプ114を配置し、バンプ114に圧力センサー素子10、80を押し付けた状態で、バンプ114に高周波を当てることにより圧力センサー素子10、80をバンプ114を介して基板112に固定するとともに、駆動回路116と圧力センサー素子10、80とを電気的に接続する構成としてもよい。これにより、基板114上で実装に必要な面積及び体積を削減することができるので小型化した圧力センサー110を構築できる。
【0078】
第4実施形態に係る圧力センサーを図11(a)、(b)に示す。第4実施形態に係る圧力センサー130は、図11(a)に示すように、第1実施形態、第2実施形態に係る圧力センサー素子10、80と、前記圧力センサー素子10、80を搭載する基板132と、前記圧力センサー素子10、80と電気的に接続され前記圧力センサー10、80を駆動する駆動回路134と、を有し、前記圧力センサー素子10、80は、
前記圧力センサー素子10、80の側面のいずれか一面を前記基板132に接着した構成である。
【0079】
圧力センサー素子10、80を搭載する基板132は、圧力センサー素子10、80の外形(XY面)に倣った形状に形成され圧力センサー素子10、80を嵌め込む貫通孔132aを有し、この貫通孔132aに圧力センサー素子10、80を嵌め込んで接着剤等により接着する形となっている。この場合、圧力センサー素子10、80の全ての側面が基板に接着され、第1ダイアフラム46及び第2ダイアフラム48を有する面が開放されることになるが、圧力センサー素子10、80の厚みと同じ厚みを有する基板132の側面に圧力センサー素子10、80の側面を接着する構成としても良い。
【0080】
これにより第1ダイアフラム46(第1層12、第1ダイアフラム層82)及び第2ダイアフラム48(第2層20、第2ダイアフラム層100)は圧力測定において基板132から干渉をうけることはなく。圧力測定値の加速度による誤差を低減し、かつ低背化した圧力センサー130となる。
【0081】
また図11(b)に示すように、駆動回路134も基板132に埋め込み、駆動回路134と圧力センサー素子10、80との接続は、第1層12、第1ダイアフラム層82(第2層20、第2ダイアフラム層100でも良い)に引き出された引き出し電極(不図示)と、駆動回路134の能動面にある所定の電極(不図示)とをワイヤー線136によるワイヤーボンディングにより接続すればよい。
【0082】
いずれの実施形態においても、感圧素子32は振動部が2本のビームで形成された双音叉型の圧電振動子を用いてきたが、これに限定されず、図12に示すように、感圧素子33の振動部37が1本のビームで形成されたシングルビーム型圧電振動子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10………圧力センサー素子、12………第1層、14………第1周縁部、16………第1凹部、18………第1凸部、20………第2層、22………第2周縁部、24………第2凹部、26………第2凸部、28………感圧素子層、30………感圧素子枠、32………感圧素子、33………感圧素子、34………第1基部、36………振動部、37………振動部、38………第2基部、40………第1連結部、42………第2連結部、44………パッケージ、46………第1ダイアフラム、48………第2ダイアフラム、50………第1支持部、52………第2支持部、60………圧力センサー素子、62………パッケージ、64………ダイアフラム、66………感圧素子、68………第1基部、70………振動部、72………第2基部、74………第1支持部、76………第2支持部、80………圧力センサー素子、82………第1ダイアフラム層、84………第1支持部層、86………第1支持部、88………第1支持部枠、90………第1梁、92………第2支持部層、94………第2支持部、96………第2支持部枠、98………第2梁、100………第2ダイアフラム層、110………圧力センサー、112………基板、114………バンプ、116………駆動回路、118………ワイヤー線、120………接続電極、122………隙間、130………圧力センサー、132………基板、134………駆動回路、136………ワイヤー線、210………圧力センサー、212………ダイアフラム、218………支持部、220………圧力センサー素子、222………基部、224………振動部、320………圧力センサー素子、322………薄肉部、324………支持部、326………突出部、330………圧電振動片、431………圧電振動片、434………振動腕、435………振動腕、436………基部、437………基部、440………ダイアフラム、442………周縁部、444………台座部、445………台座部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージと、
前記パッケージの一面に設けられた第1ダイアフラムと、
前記パッケージの前記一面に対向する面に設けられた第2ダイアフラムと、
前記パッケージ内部に配置された感圧素子と、を有し、
前記感圧素子は、
長手方向の一端に形成された第1基部と、前記一端の前記長手方向の反対側の他端に形成された第2基部と、前記第1基部及び前記第2基部との間に形成された振動部と、を有し、前記長手方向が各ダイアフラムの変位の方向に対して垂直に配置され、
前記第1基部は前記第1ダイアフラムに接続され、前記第2基部は前記第2ダイアフラムに接続されたことを特徴とする圧力センサー素子。
【請求項2】
力を受けて変位する第1層及び第2層と、前記第1層及び第2層の間に形成され前記変位を検出する感圧素子層と、を有する圧力センサー素子であって、
前記感圧素子層は、
前記変位を検出する振動部と、
前記振動部の長手方向の一端に形成された第1基部と、
前記一端の前記長手方向の反対側の他端に形成された第2基部と、
前記振動部、前記第1基部、及び前記第2基部を囲む感圧素子枠と、
前記感圧素子枠と前記第1基部とを連結する第1連結部と、
前記感圧素子枠と前記第2基部とを連結する第2連結部と、を有し、
前記第1層は、
前記感圧素子層に対向する面に形成された第1周縁部と、
前記第1周縁部の内側に形成され、前記力を受けて変位する第1凹部と、前記第1凹部の前記第1基部に対向する位置に形成された第1凸部と、を有し、
前記第2層は、
前記感圧素子層に対向する面に形成された第2周縁部と、
前記第2周縁部の内側に形成され、前記力を受けて変位する第2凹部と、前記第2凹部の前記第2基部に対向する位置に形成された第2凸部と、を有し、
前記第1周縁部、前記感圧素子枠、前記第2周縁部の順に積層するとともに、
前記第1基部は、前記第1凸部と接続され、前記第2基部は、前記第2凸部と接続されたことを特徴とする圧力センサー素子。
【請求項3】
前記第1連結部及び前記第2連結部は、前記長手方向に対して垂直に延びる成分を有することを特徴とする請求項2に記載の圧力センサー素子。
【請求項4】
前記第1層は、第1ダイアフラム層と第1支持部層との積層構造を有し、前記第2層は、第2支持部層と第2ダイアフラム層との積層構造を有し、
前記第1支持部層は、
第1支持部と、前記第1支持部を囲む第1支持部枠と、前記第1支持部枠から延出し前記第1支持部に接続する第1梁と、を有し、
前記第1支持部は、前記第1ダイアフラム層と接続して前記第1凸部を形成し、
前記第1支持部枠は、前記第1ダイアフラム層と接続して前記第1周縁部及び前記第1凹部を形成し、
前記第2支持部層は、
第2支持部と、前記第2支持部を囲む第2支持部枠と、前記第2支持部枠から延出し前記第2支持部に接続する第2梁と、を有し、
前記第2支持部は、前記第2ダイアフラム層と接続して前記第2凸部を形成し、
前記第2支持部枠は、前記第2ダイアフラム層と接続して前記第2周縁部及び前記第2凹部を形成することを特徴とする請求項2または3に記載の圧力センサー素子。
【請求項5】
前記第1梁及び前記第2梁は、前記長手方向に対して垂直に延びる成分を有することを特徴とする請求項4に記載の圧力センサー素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧力センサー素子と、
前記圧力センサー素子を搭載する基板と、
前記基板の前記圧力センサー素子の当接する位置に設けられ前記圧力センサーと前記基板との間に隙間を形成するバンプと、
前記圧力センサー素子と電気的に接続され前記圧力センサーを駆動する駆動回路と、を有することを特徴とする圧力センサー。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧力センサー素子と、
前記圧力センサー素子を搭載する基板と、
前記圧力センサー素子と電気的に接続され前記圧力センサーを駆動する駆動回路と、を有し、
前記圧力センサー素子は、前記圧力センサー素子の側面のいずれか一面を前記基板に接着したことを特徴とする圧力センサー。
【請求項8】
前記駆動回路は前記圧力センサー素子とワイヤーボンディングにより電気的に接続されたことを特徴とする請求項6または7に記載の圧力センサー。
【請求項9】
前記駆動回路は前記圧力センサー素子と前記バンプを介して電気的に接続されたことを特徴とする請求項7に記載の圧力センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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