説明

圧着用紙の原紙、その製造方法、及びその製造方法に使用される感圧接着剤組成物塗料

【課題】 塗工層成分が剥離してオフセット印刷機等を汚すことが無く、圧着用紙に適用した場合にインクが対向面に転移することが無い、圧着用紙の原紙を提供すること。
【解決手段】 基紙と、基紙の表面に形成された感圧接着剤組成物塗工層とを包含し、塗工層には基剤と微粒子充填剤とカチオン性インク定着剤とバインダとが含まれており、微粒子充填剤の配合割合は基剤100重量%に対して75〜95重量%であり、微粒子充填剤が、体積平均粒子径が1〜3μmの非晶質シリカである第1の微粒子充填剤と、体積平均粒子径が8〜15μmの非晶質シリカである第2の微粒子充填剤とからなり、第1の微粒子充填剤の配合割合は全微粒子充填剤100重量%に対して50乃至70重量%であり、第1及び第2の微粒子充填剤の吸油量は100〜210ml/100gであることを特徴とする圧着用紙の原紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式プリンタによる印刷に適した圧着用紙(例えば、葉書用途の圧着用紙、機密保持が必要な各種通知書用途の圧着用紙等)の原紙、その製造方法、及びその製造方法に使用される感圧接着剤組成物塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行、官公庁、保険会社、クレジット会社等より個人宛に発信される個人情報(例えば、預貯金額、使用料金等)の郵便による通知には、封書が用いられてきた。我が国においては、封書よりも葉書の方が郵便料金が安い。そのため、我が国においては、封書と同様に通信の機密保持が可能で、親展性・隠蔽性を備えつつも、葉書と同様な外観形態を呈することが可能な葉書用途の圧着用紙が種々開発され、広く一般に普及するに至っている。
【0003】
葉書用途の圧着用紙は、一般にロール状で提供される専用の原紙を加工することにより製造される。この原紙は、基紙と、この基紙の片面または両面の全部又は一部に形成された、感圧接着剤組成物の塗工層とを包含する。塗工層には、非剥離性感圧接着剤を主成分とする基剤と、この基剤の接着態様を調整するための微粒子充填剤とが含まれている。また、使用条件によってその他のものを添加する場合もある。例えば、インクジェット式プリンタによる印刷を行う場合には、インクを定着させるためのカチオン性インク定着剤を添加する、塗工層の強度を必要とする場合には、塗工層強度を維持するためのバインダを添加する、などである。
【0004】
原紙から葉書用途の圧着用紙である連続帳票を製造するには、罫線、注意書き、デザイン等(固定情報)を紫外線硬化型インクでロール状の原紙にオフセット印刷する工程と、固定情報が印刷されたロール状の原紙に折り線や切り取り線となるべきミシン目加工を施す工程と、ミシン目加工が施されたロール状の原紙を長手方向に等間隔でミシン目に沿ってZ折り状に折り畳むことで連続帳票を完成する工程とを経ることとなる。
【0005】
完成した連続帳票の使用に当たっては、連続帳票をノンインパクト方式のオンデマンドプリンタに供給することにより、宛名面には受取人の住所や氏名、また親展面には個人番号、請求金額等の個人情報(可変情報)を印刷する工程と、可変情報が印刷された連続帳票をミシン目に沿って1宛名分の紙片に切り離す工程と、切り離された1宛名分の紙片を親展面を内側にしてミシン目に沿って二つ折り状、又は三つ折り状に折り畳む工程と、折り畳まれた紙片をドライシーラに掛けて圧着封止する工程とを経ることとなる。
【0006】
感圧接着剤組成物の塗工層は、常温、常圧の通常の状態では接着性がなく、塗工層同士を対向させた状態で、ドライシーラに掛けて強力な圧力(例えば、50〜150kg/cm2)で挟み付けることにより、初めて接着性を呈するように仕組まれている。
【0007】
一方、一旦接着した後にあっては、郵送時の自動仕分け機等による想定される通常の外力によっては剥離することはないものの、そのような通常の外力を超え、かつ人が加えることが可能な程度の強い力で引き離そうとすれば、折り重ねられて接着された2枚の紙片は、相対向する塗工層同士の界面において剥離され、印刷された可変情報が露出されることとなる。
【0008】
なお、圧着用紙の使用用途に関して、一例として葉書用紙を挙げたが、機密保持が必要な通知書、書類等に用途展開をすることも可能である。
【0009】
最近、ノンインパクト方式のオンデマンドプリンタとして、高速輪転式インクジェット式プリンタが、カラー化が容易であり、個人情報等をオンデマンドで必要な分だけを、分速100m以上で大量処理可能であるという利点があるために普及している。高速輪転式インクジェット式プリンタに使用される水溶性インクとしては、例えばコダックヴァーサマーク社のインキである#1040ブラックインク等が使用される。ヴァーサマーク社のインクの特徴は、インク固形分が4乃至8重量%で染料以外は大部分が水であり、誘導率が高い点である。
【0010】
高速輪転式インクジェット式プリンタに使用される圧着用紙に要求される品質(インクジェット適性)としては、(1)ドライーシーラで圧着用紙を圧着後、剥離しても親展面の印字が対向面に転移しない程度のインク吸収性(塗工層のインク吸収性)を有すること、(2)OCR適性を満足するバーコード印刷が可能である程度の記録画像の鮮明性(塗工層の記録画像鮮明性)を有すること、(3)葉書用途の圧着用紙を製造する場合において、罫線や一般情報がUV硬化型印刷用インキ等によりフォーム印刷機で印刷する際に、塗工層から感圧接着剤組成物の成分が剥離して印刷機の版等を汚さない程度の塗工層強度(塗工層の強度)を有すること、が要求される。
【0011】
塗工層のインク吸収性を高めるためには、基剤の接着態様を調整するために接着剤組成物中に添加される微粒子充填剤として、インク吸収性の高い非晶質シリカ、アルミナ、ゼオライト等の微細粒子を採用すればよいことが知られている。一方、塗工層の強度を高めるためには、非感圧接着剤であるバインダを接着剤組成物中に添加すればよいことが知られている。
【0012】
ここにおいて、本発明者等は、インクジェット適性を満足させるべく鋭意研究の結果、塗工層のインク吸収性を高めるために、インク吸収性の高い微粒子充填剤を感圧接着剤組成物に添加すると、そのようなインク吸収性の高い微粒子充填剤は、同時に、塗工層強度の維持を目的として感圧接着剤組成物に添加されるバインダについても吸収して、塗工層強度の低下を引き起こし、罫線や一般情報(固定情報)を印刷する際にフォーム印刷機を汚すという矛盾を生じるため、インク吸収性の向上と塗工層強度の維持には、処方上の微妙なバランスが求められるとの知見を得た。
【0013】
なお、インクジェット式プリンタに適した圧着用紙に要求される品質を満たすために、カチオン性の塗工層に使用される填料の比表面積及び吸油度を特定するという技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
また、インクジェット式プリンタに適した圧着用紙に要求される品質を満たすために、コブサイズ度、塗工層中に使用する填料の比表面積、吸油度、及び平均粒径を特定するという技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平9−104167号公報
【特許文献2】特開平11―334201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1により提案される技術にあっては、インク記録画像の鮮明性については考慮されているものの、圧着用紙を製造するためのフォーム印刷工程におけるオフセット印刷機の汚れに関しては言及されておらず、この問題の解決方法についても言及されていない。
【0017】
また、特許文献2により提案される技術にあっても、圧着用紙を製造するためのフォーム印刷工程におけるオフセット印刷機の汚れに関しては言及されておらず、この問題の解決方法についても言及されていない。
【0018】
本発明は、本発明者等の鋭意研究の結果として得られた上述の知見に基づきなされたものであり、その目的とするところは、葉書用紙等の圧着用紙の製造過程おけるフォーム印刷工程において、塗工層成分が剥離してフォーム印刷用のオフセット印刷機等を汚すことが無く、しかも製造された圧着用紙の使用にあたっては、開封のための剥離操作に際して、インクジェット式プリンタによる印刷がその印刷面と対向する対向面に転移することが無い、圧着用紙の原紙、その製造方法、及びその製造方法に使用される感圧接着剤組成物塗料を提供することにある。
【0019】
また、この発明の他の目的とするところは、上記の目的に加えて、製造された圧着用紙の使用にあたっては、高速輪転式等のインクジェット式プリンタで印刷した際に、記録画像の鮮明度が高く、EAN−128等のバーコードのOCR適性が良好である、圧着用紙の原紙、その製造方法、及びその製造方法に使用される感圧接着剤組成物塗料を提供することにある。
【0020】
この発明のさらに他の目的、並びに、作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解される筈である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の発明が解決しようとする課題は、以下の構成を有する、圧着用紙の原紙、その製造方法、及びその製造方法に使用される感圧接着剤組成物塗料により解決することができると考えられる。
【0022】
即ち、本発明の圧着用紙の原紙は、基紙と、前記基紙の片面または両面の全部又は一部に形成された、感圧接着剤組成物の塗工層とを包含する。
【0023】
前記塗工層には、非剥離性感圧接着剤を主成分とする基剤と、前記基剤の接着態様を調整するための微粒子充填剤と、インクジェット式プリンタによるインクを定着させるためのカチオン性インク定着剤と、前記塗工層の強度を維持するためのバインダと、が含まれている。
【0024】
前記塗工層に含まれる前記微粒子充填剤の前記基剤に対する配合割合は、前記基剤100重量%に対して75乃至95重量%である。
【0025】
前記微粒子充填剤は、コールターカウンタ法による体積平均粒子径が1乃至3μmの非晶質シリカである第1の微粒子充填剤と、コールターカウンタ法による体積平均粒子径が8乃至15μmの非晶質シリカである第2の微粒子充填剤との2種の微粒子充填剤からなり、かつ前記第1の微粒子充填剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して50乃至70重量%である。
【0026】
前記第1及び第2の微粒子充填剤の吸油量のそれぞれは、ISO 787−5に基づいて測定した吸油量が、いずれも、100乃至210ml/100gである。
【0027】
このような構成の圧着用紙の原紙によれば、感圧接着剤組成物塗工層の強度が適切に維持されることから、葉書用紙等の圧着用紙の製造過程におけるフォーム印刷工程において、塗工層成分の剥離によりフォーム印刷用のオフセット印刷機を汚すことがない。しかも、この圧着用紙の原紙から製造された圧着用紙の使用にあたっては、塗工層のインク吸収性が適切に維持されるため、開封のための剥離操作に際して、印刷に用いたインクジェット用インクがその印刷面と対向する対向面に転移することがないという利点がある。
【0028】
また、好ましい実施の形態にあっては、上述の圧着用紙の原紙において、前記カチオン性インク定着剤が、ポリアルキルアミンエピクロロヒドリン重合体からなり、かつ前記カチオン性インク定着剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して、10乃至30重量%とされる。
【0029】
このような構成によれば、製造された圧着用紙の使用にあたっては、高速輪転式等のインクジェット式プリンタで印刷した際に、記録画像の鮮明度が高く、EAN−128等のバーコードのOCR適性が良好であるという利点がある。
【0030】
別の一面から見た本発明は、圧着用紙の原紙の製造方法として把握することもできる。すなわち、この製造方法は、基紙を用意する第1のステップと、感圧接着剤組成物塗料を用意する第2のステップと、前記第1のステップで用意された基紙の片面又は両面の全部又は一部に、第2のステップで用意された感圧接着剤組成物塗料を塗布することにより感圧接着剤組成物の塗工層を形成する第3のステップとを包含する。
【0031】
前記第2のステップは、非剥離性感圧接着剤を主成分とする基剤と、前記基剤の接着態様を調整するための微粒子充填剤と、インクジェット式プリンタによるインクを定着させるためのカチオン性インク定着剤と、前記塗工層の強度を維持するためのバインダとを、水に添加して混合することにより感圧接着剤組成物塗料を生成する塗料生成ステップを含む。
【0032】
前記塗料生成ステップにおいて、前記微粒子充填剤の前記基剤に対する配合割合は、前記基剤100重量%に対して75乃至95重量%である。
【0033】
前記微粒子充填剤は、コールターカウンタ法による体積平均粒子径1乃至3μmの非晶質シリカである第1の微粒子充填剤と、コールターカウンタ法による体積平均粒子径が8乃至15μmの非晶質シリカである第2の微粒子充填剤との2種の微粒子充填剤からなり、かつ前記第1の微粒子充填剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して50乃至70重量%である。
【0034】
前記第1及び第2の微粒子充填剤の吸油量のそれぞれは、ISO 787−5に基づいて測定した吸油量が、いずれも、100乃至210ml/100gである。
【0035】
好ましい実施の形態においては、上述の製造方法において、前記カチオン性インク定着剤が、ポリアルキルアミンエピクロロヒドリン重合体からなり、かつ前記カチオン性インク定着剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して、10乃至30重量%とされる。
【0036】
別の一面から見た本発明は、圧着用紙の原紙の製造方法に使用される感圧接着剤組成物塗料として把握することもできる。
【0037】
即ち、この感圧接着剤組成物塗料は、非剥離性感圧接着剤を主成分とする基剤と、前記基剤の接着態様を調整するための微粒子充填剤と、インクジェット式プリンタによるインクを定着させるためのカチオン性インク定着剤と、塗工層の強度を維持するためのバインダとを、水に添加して混合してなる。
【0038】
前記微粒子充填剤の前記基剤に対する配合割合は、前記基剤100重量%に対して75乃至95重量%である。
【0039】
前記微粒子充填剤が、コールターカウンタ法による体積平均粒子径が1乃至3μmの非晶質シリカである第1の微粒子充填剤と、コールターカウンタ法による体積平均粒子径が8乃至15μmの非晶質シリカである第2の微粒子充填剤との2種の微粒子充填剤からなり、かつ前記第1の微粒子充填剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して50乃至70重量%である。
【0040】
前記第1及び第2の微粒子充填剤の吸油量のそれぞれは、ISO 787−5に基づいて測定した吸油量が、いずれも、100乃至210ml/100gである。
【0041】
好ましい実施の形態にあっては、前記カチオン性インク定着剤が、ポリアルキルアミンエピクロロヒドリン重合体からなり、かつ前記カチオン性インク定着剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して、10乃至30重量%である。
【発明の効果】
【0042】
本発明の圧着用紙の原紙は、感圧接着剤組成物塗工層の強度が適切に維持されることから、葉書用紙等の圧着用紙の製造過程におけるフォーム印刷工程において、塗工層成分の剥離によりフォーム印刷用のオフセット印刷機を汚すことが無く、しかも塗工層のインク吸収性が適切に維持されるため、製造された圧着用紙の使用にあたっては、開封のための剥離操作に際して、インクジェット式プリンタによる印刷がその印刷面と対向する対向面に転移することが無いという利点がある。
【0043】
更に、カチオン性インク定着剤が、ポリアルキルアミンエピクロロヒドリン重合体からなり、かつ前記カチオン性インク定着剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して、10乃至30重量%とすることにより、製造された圧着用紙の使用にあたっては、高速輪転式等のインクジェット式プリンタで印刷した際に、記録画像の鮮明度が高く、EAN−128等のバーコードのOCR適性が良好であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本願の圧着用紙の原紙の感圧接着剤組成物の塗工パターン例を示す図である。
【図2】本願の圧着用紙の原紙を三つ折り圧着葉書に適用する場合の加工工程の一例を示す図である。
【図3】本願の圧着用紙の原紙を二つ折り圧着葉書に適用する場合の加工工程の一例を示す図である。
【図4】本願の圧着用紙の原紙を三つ折り圧着葉書に適用する場合の一構成例を示す図である。
【図5】本願の圧着用紙の原紙を二つ折り圧着葉書に適用する場合の一構成例を示す図である。
【図6】本願の圧着用紙の原紙を圧着葉書に適用する場合の一構成例を示す図である。
【図7】実施例及び比較例により得られた圧着用紙の原紙の各物性の評価結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の圧着用紙の原紙は、例えば二つ折り、三つ折り、一部折り重ねといった折り畳みタイプ又は紙片同士を重ね合わせるタイプの葉書用途の圧着用紙に加工することができる。また、書類、印刷用紙、端部を綴じ合わせる綴じ合わせ用シート等の用途の圧着用紙に加工することもできる。それらの用途の中でも特に、感圧接着剤塗工領域の一部または全面を秘匿情報の印字面として使用される用途の圧着用紙に加工するのに好適である。
【0046】
以下においては、本発明に係る原紙を加工することで製作される葉書用途の圧着用紙の幾つかの例を添付図面を参照しつつ説明するが、本発明に係る原紙から製作可能な圧着用紙はこれらに限定されるものではない。
【0047】
先にも述べたように、本願の圧着用紙の原紙は、基紙の片面又は両面の全部又は一部に感圧接着剤組成物を塗工して感圧接着剤組成物の塗工層を設けたものであり、三つ折り、二つ折り等の形態の葉書用途の圧着用紙に加工することができる。
【0048】
ここで、加工後の圧着用紙上における接着力の強弱については、原紙製造の段階で、基紙上に塗工される剥離可能な感圧接着剤組成物の成分、並びに、塗工パターンを図1に示すように部分毎に異ならせることで実現することができる。
【0049】
例えば、図1(a)に示す例は、葉書用途の二つ折り圧着用紙10の重ね合わせ予定領域周縁部には、原紙製造の段階で、接着力の強い剥離可能な感圧接着剤組成物11を塗工し、隠蔽情報記載部分であるその内側部分には接着力の弱い剥離可能な感圧接着剤組成物12を塗工するようにしたものである。また、図1(b)に示す例は、葉書用途の二つ折り圧着用紙10の重ね合わせ予定領域の全面に、接着力の強い剥離可能な感圧接着剤組成物13と接着力の弱い剥離可能な感圧接着剤組成物14とを縞状に交互に配置したものである。また、図1(c)に示す例は、コーナーや端部等の剥離開始部分には接着力の弱い剥離可能な感圧接着剤組成物16を塗工し、その他の部分には接着力の強い剥離可能な感圧接着剤組成物15を塗工するようにしたものである。
【0050】
なお、葉書用途の三つ折り圧着用紙の場合には、隠蔽情報が記載されない重ね合わせ面(図4(c)40e,40fに相当)は剥離不能であってもよく、この場合には、剥離不能な面には通常の非剥離性接着剤を用いることも可能である。
【0051】
次に、本願の圧着用紙の原紙から、葉書用途の三つ折り及び二つ折り圧着用紙を製造する際の一般的な加工工程を、図2及び図3の工程図を参照して説明する。図2の例では、ロール状の原紙20の幅W1は葉書用途の三つ折り圧着用紙の展開方向の長さに相当し、図3の例では、ロール状の原紙20の幅W2は葉書用途の二つ折り圧着用紙の展開方向の長さに相当する。
【0052】
先ず、製紙会社にて原紙20を製造する。製造された原紙20の構造は、後に詳述するが、要するに、基紙と、基紙の片面または両面の全部又は一部に形成された、感圧接着剤組成物の塗工層とを包含し、塗工層には、非剥離性感圧接着剤を主成分とする基剤と、基剤の接着態様を調整するための微粒子充填剤と、インクジェット式プリンタによるインクを定着させるためのカチオン性インク定着剤と、塗工層の強度を維持するためのバインダと、が含まれている。こうして製造された原紙20は、ロール状に巻き取った状態で加工業者に移送される(図2(a)、図3(a)参照)。
【0053】
次いで、加工業者では、ロール状の原紙20に、秘匿情報が透けてしまうことを防止するための模様や一般情報、罫線などの固定情報をオフセット印刷機等でフォーム印刷する。この段階では、ロールの幅方向に展開された1単位分の三つ折り又は二つ折り圧着用紙の予定領域が、ロール伸長方向に連なった状態となっている(図2(b)、図3(b)参照)。なお、後に詳述するように、塗工層強度が不足している場合には、このフォーム印刷の段階で、印刷機汚れの問題が発生することがある。
【0054】
次いで、フォーム印刷が完了したロール状の原紙20を1単位分の三つ折り又は二つ折り圧着用紙の予定領域に切り離す為のミシン目加工と、三つ折り(図2)もしくは二つ折り(図3)にするためのミシン目加工とを施すと共に、必要に応じて幅方向の両側縁部に沿って送り孔加工を施したのち(図示せず)、フォーム印刷並びにミシン目加工等が施された原紙20は、折り畳み装置へと送られる(図2(c)、図3(c)参照)。
【0055】
次いで、折り畳み装置においては、フォーム印刷並びにミシン目加工等が施された原紙20は、ロールの長手方向に等間隔でジグザグ状に折り重ねられて、連続帳票の形態を有する葉書用途の三つ折り又は二つ折り圧着用紙10が完成する(図2(d)、図3(d)参照)。こうして製造された連続帳票の形態を有する葉書用途の三つ折り又は二つ折り圧着用紙10は、加工業者から印刷業者へ引き渡される場合もある。
【0056】
次いで、連続帳票の形態を有する葉書用途の三つ折り又は二つ折り圧着用紙10は、そのまま高速輪転式インクジェットプリンタに供給されて、親展情報等の可変情報が印刷されたのち、葉書用途の圧着用紙の各一単位毎に切り離される(図2(e)、図3(e)参照)。こうして各一単位毎に切り離された単票形態を有する葉書用途の圧着用紙10は、折り畳み装置へと送られる。
【0057】
次いで、単票形態を有する葉書用途の圧着用紙10は、所定の折り畳み装置によって、ミシン目に沿って三つ折り又は二つ折りされたのち、ドライシーラなどで圧着加工が施され配送用の葉書形態を有する圧着用紙(以下、圧着葉書と言う)10となる。(図2(f)、図3(f)参照)。
【0058】
次に、上記のように製造された単票形態を有する葉書用途の圧着用紙の構成について、図4,5を参照してさらに詳細に説明する。図4には、連続帳票の形態を有する葉書用途の圧着用紙10(図2(d)参照)から作成される1単位分の葉書用途の三つ折り圧着用紙40が示されている。三つ折り圧着用紙40の表面(図4(a)参照)と裏面(図4(b)参照)全体には、感圧接着剤組成物を基紙上に塗工することにより形成された接着剤塗工層が設けられている。なお、図4(a)に示される表面と図4(b)に示される裏面とは表裏の関係であり、面40aの裏が40f、面40bの裏が40e、面40cの裏が40dとなっている。この例では三つ折り圧着用紙40の両端にピントラクタによる搬送用の孔が設けられているが、これは必須の構成ではなく必要に応じて設けるようにすればよい。
【0059】
三つ折り圧着用紙40は、宛名情報41と秘匿情報42を印刷した後に、折り用ミシン目43a,43bに沿ってN字状乃至Z字状に折り畳み、面40bと面40cとを押しつけるように適宜な圧力を加えることで、秘匿情報42が記された面40b,40cが隠蔽された状態で圧着される(図4(c)参照)。郵送する際に葉書の表面となる面40aには宛名情報41が印字され、圧着後に内側に隠蔽される面40b,40cには秘匿情報42が印刷される。圧着葉書を受け取った受取人は、面40bと40cとの間で剥離することにより、面40b及び40cが露出して秘匿情報42が視認可能となる。
【0060】
なお、図4の例では、宛名情報41が印刷される面40a、秘匿情報42が印刷される面40b,40c、圧着葉書となった際に葉書の裏面となる面40d、葉書形状とするために圧着される面40e,40fのすべてに同じ種類の感圧接着剤塗工物を塗工しているが、隠蔽されない面40a,40dには、感圧接着剤組成物を塗工しなくてもよい。また、面40e,40fにも秘匿情報を印刷するように構成してもよい。面40e,40fに秘匿情報を印刷しない場合は、面40e,40fには再剥離不能な接着剤を用いてもよい。
【0061】
次に、葉書用途の二つ折り圧着用紙50について図5を参照しつつ説明する。二つ折り圧着用紙50は裏面全体に感圧接着剤組成物が塗工されており、この感圧接着剤塗工層の上に秘匿情報52が印刷される(図5(b)参照)。また、感圧接着剤組成物が塗工されてない表面については、圧着時に葉書表面となる面50aには宛名情報51が、圧着時に葉書裏面となる面50bには透け防止模様54がそれぞれ印刷される(図5(a)参照)。
【0062】
宛名情報51と秘匿情報52を印刷した後に、折り用ミシン目53aに沿って面50c,50dが内側となるように折り畳み、適宜な圧力を加えることで、秘匿情報52が記された面50c,50dが隠蔽された状態で圧着される(図5(c)参照)。圧着葉書を受け取った受取人は、面50cと50dとの間で剥離することにより、面50c及び50dが露出して秘匿情報52が視認可能となる。
【0063】
またさらに、図6に示す葉書用途の圧着用紙60は、別体の2枚の紙片61と紙片62の対向する面61a,62aに感圧接着剤組成物を塗工し、この感圧接着剤組成物を塗工した面同士を重ね合わせて圧力を加えることで、紙片61と紙片62が圧着されて葉書形状となる。紙片61の裏面61bと、紙片62の裏面62bには、隠蔽部分に印刷された情報が透けて見えることを防止する為に、透かし防止の模様などが印刷されている。紙片61の紙片62によって隠蔽されない領域には宛名情報63が印刷される。紙片61と紙片62を重ね合わせ圧着した際に隠蔽される面61a,62aには秘匿情報64,65が印刷される。ここで、秘匿情報の印刷は面61a,62aの双方に行われても良いし、いずれか一方であってもよい。
【0064】
図4〜6の圧着葉書の構成例においては、各隠蔽部分の一側端部に切り用ミシン目を設けて、剥離動作が容易になるように構成してもよい。
【0065】
次いで、本発明のインクジェット式プリンタによる印刷に適した圧着用紙の原紙に用いる原材料等の説明を行う。本発明の圧着用紙の原紙の感圧接着剤組成物塗工層に用いる非剥離性感圧接着剤としては、天然ゴム系ラテックスや合成ゴムラテックス等が挙げられる。天然ゴム系ラテックスとしては、天然ゴムに、メタアクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、スチレン単量体を1種又は2種以上グラフト重合させて得られた天然ゴム系ラテックス、天然ゴムとメタアクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを混合した天然ゴム系ラテックス、天然ゴムと保護コロイド系アクリル共重合エマルジョンとを混合した天然ゴム系ラテックス、等を好適に用いることができる。また、合成ゴムラテックスとしては、スチレン−ブタジエンラテックス、等を好適に用いることができる。これらのラテックスは、各々単独又は2種以上を混合して用いることが可能である。
【0066】
天然ゴム系ラテックスの変性に使用される単量体の量は、天然ゴム系ラテックスのゴム成分100重量部に対して25〜60重量部が望ましい。単量体の使用量が25重量部より少ない場合は、熱、光、酸素等により劣化を防止し難くなるという虞がある。一方、単量体の使用量が60重量部を超える場合には、ドライシール後の接着力が向上し難くなるという虞がある。
【0067】
また、天然ゴム成分に変性させる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、具体的にはメチル(メタ)アクリルレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの群より選ばれる1種又は2種以上使用することができる。
【0068】
本願においては、接着力の調製、及びインクジェット適性の付与を目的として、感圧接着剤組成物には微粒子充填剤を添加する。非剥離性感圧接着剤に微粒子充填剤等を添加することで、感圧接着剤同士の接着が阻害されて接着力が弱まり、界面で剥離可能な接着強度に調整することが可能となる。感圧接着剤組成物に用いる微粒子充填剤としては、非剥離性感圧接着剤と非親和性を有する微粒子充填剤、具体的には、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、穀物澱粉、シリカゲル、変性澱粉などが好適に使用できる。
【0069】
ここで、塗工層に含まれる微粒子充填剤の基剤に対する配合割合は、基剤100重量%に対して75乃至95重量%であることが望ましい。微粒子充填剤の添加量が75重量%未満となると、高速インクジェット式プリンタで印刷した際に十分なインク吸収性及びインク乾燥性が得られず、印刷が対向面に転移するという問題を生じることがある。一方、微粒子充填剤の添加量が95重量%を超えると、微粒子充填剤が後述するバインダ成分を吸収しすぎてしまうため塗工層強度が弱くなり、フォーム印刷機で前印刷を行う際に、印刷面表面から塗工層成分が脱離し印刷機を汚す虞がある。
【0070】
本願においては、微粒子充填剤として、コールターカウンタ法による体積平均粒子径が1乃至3μmの非晶質シリカである第1の微粒子充填剤と、コールターカウンタ法による体積平均粒子径が8乃至15μmの非晶質シリカである第2の微粒子充填剤との2種の微粒子充填剤を併用することが望ましい。このような2種の非晶質シリカを併用することにより、非晶質シリカの構成を他の構成とした場合と比較して、高速輪転式インクジェット式プリンタで印刷した際の、インク乾燥性、画像鮮明性が良好となる。また、塗工層強度もより強くなるために、フォーム印刷機における印刷適性にも優れた圧着用紙が得られる。なお、上述の非晶質シリカの体積平均粒子径は、すべてコールターカウンタ法による2次粒子の粒度分布から求めた算術平均値であり、以降の記載についても同様である。
【0071】
2種の微粒子充填剤の内、第1の微粒子充填剤である非晶質シリカの体積平均粒子径が1μm未満になると、接着剤組成物の粘度が上昇して接着剤組成物を基紙に塗工する際の塗工適性が低下する虞がある。一方、第1の微粒子充填剤である非晶質シリカの体積平均粒子径が3μmを超えると、理由は明らかではないが、圧着紙を剥離した際に印刷画像が対向面に転移するという問題が生じることがある。
【0072】
また、2種の微粒子充填剤の内、第2の微粒子充填剤である非晶質シリカの体積平均粒子径が8μm未満になると、十分な塗工層強度が得られず、フォーム印刷機で前印刷を行う際に、印刷面表面から塗工層成分が脱離し印刷機を汚すという虞がある。一方、第2の微粒子充填剤である非晶質シリカの体積平均粒子径が15μmを超えると、印刷画像の境界にじみが発生して画像鮮明性が悪くなり、バーコードの読取り適性が不良となる虞がある。
【0073】
また、微粒子充填剤の配合割合は、前記第1の微粒子充填剤である体積平均粒子径が1乃至3μmの非晶質シリカの全微粒子充填剤に対する配合割合が、全微粒子充填剤100重量%に対して50乃至70重量%であることが望ましい。第1の微粒子充填剤の配合割合が全微粒子充填剤の50重量%未満になると、インクの乾燥性が低下するため、圧着用紙を剥離して開封した際に、インクジェット印刷による印字画像が対向面に転移する虞がある。一方、第1の微粒子充填剤の配合割合が全微粒子充填剤の70重量%を超えると、塗工層強度が弱くなるため、フォーム印刷機で前印刷を行う際に塗工成分がブランケット等に取られて印刷機を汚すという虞がある。
【0074】
更に、第1及び第2の微粒子充填剤のそれぞれは、ISO 787−5に基づいて測定した吸油量が、いずれも、100乃至210ml/100gであることが特に望ましい。第1及び第2の微粒子充填剤の吸油量が100ml/100g未満になると、印刷に用いたインクの乾燥性が悪くなり、剥離時にインクが対向面に転移する虞がある。一方、第1及び第2の微粒子充填剤の吸油量が210ml/100gを超えると、微粒子充填剤が感圧接着剤組成物中のバインダ成分を吸収しすぎることからバインダによる塗工層強度の調整効果が十分に機能せず塗工層強度が弱くなる。このため、フォーム印刷機でオフセット印刷を行う際に、印刷面表面から塗工層成分が脱離し印刷機を汚す虞がある。なお、上述の吸油量はすべてISO 787−5に基づいて測定した場合の値であり、以降の記載についても同様である。
【0075】
本発明では、インクジェットインクの印刷部の耐水性を向上させるために、感圧接着剤組成物にはカチオン性インク定着剤を配合することが望ましい。しかしながら、インク定着剤の配合量が多すぎると塗料の粘度が上昇し、感圧接着剤組成物を基紙に塗工する際の塗工適性が低下する虞がある。
【0076】
感圧接着剤組成物塗料の粘度を考慮すると、カチオン性インク定着剤としてはカチオン性高分子化合物が好ましく、カチオン性高分子化合物の中でもポリアルキルアミンエピクロルヒドリン重合体が最も好ましく、塗工適性も良好となる。なお、カチオン性インク定着剤の分子量が高くなりすぎると、塗工適性が低下する虞があるため、数平均分子量20000以下のポリアルキルアミンエピクロルヒドリン重合体を用いることが望ましい。
【0077】
感圧接着剤組成物中にポリアルキルアミンエピクロルヒドリン重合体を配合する場合の配合量は、全微粒子充填剤100重量部に対して10乃至30重量部とすることが望ましい。ポリアルキルアミンエピクロルヒドリン重合体の配合量が、全微粒子充填剤100重量部に対して10重量部未満の場合には、十分な画像鮮明性が得られずにOCR適正に劣り、バーコード読取り等に問題を生じる虞がある。一方、ポリアルキルアミンエピクロルヒドリン重合体の配合量が、全微粒子充填剤100重量部に対して30重量部を超えると、圧着用紙の接着力が低下する虞がある。
【0078】
圧着用紙を圧着する際には、剥離面の接着力が一般的に使用されるドライシーラの圧着するロール間の隙間条件で、23℃、50%RHで調湿後、剥離角90度で0.4乃至1.4N/25mmとなるように調製することが望ましい。剥離面の接着力が0.4N/25mm未満になると、圧着用紙を葉書用紙として使用する場合に、郵送前、葉書として区分け機等を走行する際に剥離面が剥がれ開封されてしまうという虞がある。一方、接着力が1.4N/25mmを超えると、接着力が高すぎるために、郵送後、情報等を視認するために用紙を剥離して開封する際に、剥離面で開かずに紙層間から用紙が破れてしまい、情報を視認することができなくなるという虞がある。
【0079】
本発明においては、塗工層強度を維持するために非感圧接着剤であるバインダを用いる。バインダとしては、完全ケン化型ポリビニルアルコール、部分ケン化型ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、ローコンス、カゼイン、CMCなどの水溶性高分子を用いることができる。これらの水溶性高分子の中では、添加による印字濃度の低下が少なく、セットオフ性も良好になる点からポリビニルアルコールが好ましく、特に、圧着性能の点から完全ケン化型ポリビニルアルコールが好ましい。
【0080】
また、水溶性高分子の配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して10乃至30重量%であることが好ましく、12乃至30重量%であることがさらに好ましい。水溶性高分子の配合割合が10重量%を下回ると、十分な塗工層強度が得られず、フォーム印刷機で前印刷を行う際に、印刷面表面から塗工層成分が脱離し印刷機を汚す虞がある。一方、水溶性高分子の配合割合が30重量%を越えると、圧着用紙としての接着力が低くなり過ぎて、郵送中に剥離して親展面が露出するという虞がある。
【0081】
本発明において、基紙に感圧接着剤組成物塗料を塗工する方法としては、エアーナイフコータ、グラビアコータ、ブレードコータ、ロールコータ、バーコータ等の公知の塗工方式が使用できる。塗工量は、固形分で片面当たり4乃至8g/m2の範囲であることが好ましく、5乃至7g/m2の範囲であるとなお良い。
【0082】
また、本発明の接着剤組成物には、増粘剤、蛍光増白剤、浸透剤、着色染料、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤等を含有させることもできる。
【0083】
本発明の圧着用紙の原紙に用いる基紙については特に限定するものではなく、上質紙、中質紙、アート紙、コート紙等の紙類、合成紙、合成樹脂フィルム、不織布等が用いられる。その中でも、紙類が安価なため望ましく使用される。
【実施例】
【0084】
以下において本発明に係る圧着用紙の実施例について具体的に説明する。尚、実施例中の部及び%は、断らない限り乾燥重量部及び重量%を示す。また、実施例及び比較例中の非晶質シリカの体積平均粒子径及び吸油量の測定方法は下記の通りである。
【0085】
[体積平均粒子径]
非晶質シリカ0.2gに水100mlを加え、超音波攪拌機で十分に攪拌した後、Coulter Multisizer AccuComp(Coulter Electronics Ltd.製)を用いて体積平均粒子径を測定した。第1の微粒子充填剤である非晶質シリカの測定は30μmのアパーチャーチューブ(Aperture Tube)を用い、第2の微粒子充填剤である非晶質シリカの測定は70μmのアパーチャーチューブ(Aperture Tube)を用いた。
[吸油量]
ISO 787−5に定める方法に準拠して、アマニ油(Linseed Oil)を使用した滴定法により行った。
【0086】
<実施例1>
[二つ折り(片面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
非剥離性感圧接着剤として天然ゴムにメタクリル酸メチルをグラフト重合させた天然ゴム系ラテックス100重量部、第1の微粒子充填剤として体積平均粒子径が1.2μmで吸油量が130ml/100gである非晶質シリカを48重量部、第2の微粒子充填剤として体積平均粒子径が12μmで吸油量が200ml/100gである非晶質シリカ32重量部を選択し、これらを水に添加して十分に分散させる。この分散液に、カチオン性インク定着剤としてポリアミドエピクロルヒドリン20重量部を添加して混合した後、更にバインダとして完全ケン化型ポリビニルアルコール12.5重量部を添加して混合し、消泡剤を添加して混合することで感圧接着剤組成物となる塗料が得られた。作成した塗料を米坪132g/m2のフォーム用紙の片面に、コーターのエアーナイフ方式にて塗工量が固形分で6.0g/m2となるように塗工し、圧着用紙の原紙を得た。
【0087】
<実施例2>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
非剥離性感圧接着剤として天然ゴムにメタクリル酸メチルをグラフト重合させた天然ゴム系ラテックス100重量部、第1の微粒子充填剤として体積平均粒子径が1.2μmで吸油量が130ml/100gである非晶質シリカを48重量部、第2の微粒子充填剤として体積平均粒子径が12μmで吸油量が200ml/100gである非晶質シリカ32重量部を選択し、これらを水に添加して十分に分散させる。この分散液に、カチオン性インク定着剤としてカチオン性ウレタン樹脂を20重量部添加して混合した後、更にバインダとして完全ケン化型ポリビニルアルコール12.5重量部を添加して混合し、消泡剤を添加して混合することで接着剤組成物となる塗料が得られた。作成した塗料を米坪132g/m2のフォーム用紙の両面に、コーターのエアーナイフ方式にて塗工量が固形分で片面あたり6.0g/m2となるように塗工し、圧着用紙の原紙を得た。
【0088】
<比較例1>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤を体積平均粒子径が1.9μmで吸油量が220ml/100gである非晶質シリカ48重量部に変更すると共に、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径12μmで吸油量が225ml/100gである非晶質シリカ32重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0089】
<比較例2>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤を体積平均粒子径2.0μmで吸油量が70ml/100gである非晶質シリカ48重量部に変更し、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径12μmで吸油量が75ml/100gである非晶質シリカ32重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0090】
<比較例3>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤の添加量を48重量部から42重量部に変更し、第2の微粒子充填剤の添加量を32重量部から28重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0091】
<比較例4>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤の添加量を48重量部から60重量部に変更し、第2の微粒子充填剤の添加量を32重量部から40重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0092】
<比較例5>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤を体積平均粒子径が3.6μmで吸油量が210ml/100gである非晶質シリカに変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0093】
<比較例6>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤を体積平均粒子径が0.7μmで吸油量が170ml/100gである非晶質シリカ48重量部に変更した以外は実施例2と同様にして感圧接着剤組成物となる塗料を作成したが、塗料の粘度上昇により感圧接着剤組成物の調製が困難となった。
【0094】
<比較例7>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例2と同様の条件で、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が16μmで吸油量が180ml/100gである非晶質シリカに変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0095】
<比較例8>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例2と同様の条件で、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が7.0μmで吸油量が180ml/100gである非晶質シリカに変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0096】
<比較例9>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤を体積平均粒子径が1.2μmで吸油量が130ml/100gである非晶質シリカ64重量部に変更し、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が11μmで吸油量が200ml/100gである非晶質シリカ16重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0097】
<比較例10>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤を体積平均粒子径が1.2μmで吸油量が130ml/100gである非晶質シリカ32重量部に変更し、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が11μmで吸油量が200ml/100gである非晶質シリカ48重量部に変更する以外は、実施例2と同様に実施した。
【0098】
<実施例3>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
非剥離性感圧接着剤として天然ゴムにメタクリル酸メチルをグラフト重合させた天然ゴム系ラテックス100重量部、第1の微粒子充填剤として体積平均粒子径が1.2μmで吸油量が130ml/100gである非晶質シリカ48重量部、第2の微粒子充填剤として体積平均粒子径が12μmで吸油量が200ml/100gである非晶質シリカ32重量部を選択し、これらを水に添加して十分に分散させる。この分散液に、カチオン性インク定着剤としてポリアルキルアミンエピクロルヒドリン重合体であるポリジエチルアミンエピクロロヒドリン20重量部を添加して混合した後、更にバインダとして完全ケン化型ポリビニルアルコール12.5重量部を添加して混合し、消泡剤を添加して混合することで感圧接着剤組成物となる塗料が得られた。作成した塗料を米坪132g/m2のフォーム用紙の両面に、コーターのエアーナイフ方式において塗工量が固形分で片面あたり6.0g/m2となるように塗工し、圧着用紙の原紙が得られた。
【0099】
<実施例4>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例3と同様の条件で、カチオン性インク定着剤であるポリジエチルアミンエピクロロヒドリンの添加量を20重量部から10重量部に変更した以外は、実施例3と同様に実施した。
【0100】
<実施例5>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例3と同様の条件で、カチオン性インク定着剤であるポリジエチルアミンエピクロロヒドリンの添加量を20重量部から30重量部に変更した以外は、実施例3と同様に実施した。
【0101】
<実施例6>
[三つ折り(両面塗工)圧着用紙の原紙の作製]
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤を体積平均粒子径が3.0μmで吸油量が100ml/100gである非晶質シリカ40重量部に変更し、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が12μmで吸油量が200ml/100gである非晶質シリカ40重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0102】
<実施例7>
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤を体積平均粒子径が1.9μmで吸油量が210ml/100gである非晶質シリカ55重量部に変更し、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が12μmで吸油量が200ml/100gである非晶質シリカ25重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0103】
<実施例8>
実施例2と同様の条件で、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が8.0μmで吸油量が210ml/100gである非晶質シリカ32重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0104】
<実施例9>
実施例2と同様の条件で、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が15μmで吸油量が200ml/100gである非晶質シリカ32重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0105】
<実施例10>
実施例2と同様の条件で、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が10μmで吸油量が100ml/100gである非晶質シリカ32重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0106】
<実施例11>
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤を体積平均粒子径が1.2μmで吸油量が130ml/100gである非晶質シリカ45重量部に変更し、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が12μmで吸油量が200ml/100gである非晶質シリカ30重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0107】
<実施例12>
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤を体積平均粒子径が1.2μmで吸油量が130ml/100gである非晶質シリカ57重量部に変更し、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が12μmで吸油量が200ml/100gである非晶質シリカ38重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0108】
<実施例13>
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤を体積平均粒子径が3.0μmで吸油量が100ml/100gである非晶質シリカ38重量部に変更し、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が10μmで吸油量が100ml/100gである非晶質シリカ38重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0109】
<実施例14>
実施例2と同様の条件で、第1の微粒子充填剤を体積平均粒子径が1.9μmで吸油量が210ml/100gである非晶質シリカ65重量部に変更し、第2の微粒子充填剤を体積平均粒子径が8.0μmで吸油量が210ml/100gである非晶質シリカ30重量部に変更した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0110】
実施例1〜14、及び比較例1〜10にて得られた圧着用紙の原紙の各物性の評価結果が図7に示されている。各物性の評価方法は下記の通りである。
【0111】
[圧着用紙の表面強度]
実施例及び比較例にて得られた圧着用紙の原紙からB5サイズの紙片を切り取り、RI印刷試験機にて印刷インキ(紙試験用TV30紅/大日本インキ化学工業製)を0.6cc使用して感圧接着剤組成物塗工面(親展面)にテスト印刷パターン(ベタ)の印刷を行い圧着用紙を作成した。印刷した圧着用紙の、印刷面のピッキングの程度を目視評価した。
◎:ピッキングが全く発生せず、表面強度が極めて良好である。
○:ピッキングが僅かに発生しているが、塗工紙としては良好なレベルである。
△:ピッキングが発生しており、表面強度が劣るが、実用上問題ないレベルである。
×:ピッキングが多く発生しており、表面強度がかなり劣り、実用に供し得ない。
【0112】
[剥離後における印字画像の転写性]
実施例及び比較例にて得られた圧着用紙の原紙から巾100mm×長さ100mmの紙片を切り取り、23℃、50%RHの室内で、感圧接着剤組成物塗工面(親展面)の左半面にインクジェット式プリンタ(キヤノン(株)製BJF210)にてテスト印刷パターン(文字、線、ベタ)を印刷し、ドライシーラーMS−9100(大日本印刷株式会社製)にて親展面同士を加圧接着し、25mm(巾)×100mm(長さ)に切り、複数の試験片を得た。加圧接着後、該圧着用紙を23℃、50%RHの条件下で保存して、手で剥離して接着層面の右半面に転写したインク転移濃度を目視判定した。プリンタに用いたインクは、サイテックス2003黒インク、サイテックス2001青インキ、サイテックス2002赤インキ、及びサイテックス2004黄インキであり、インクタンクに別々に注射器で注入した。尚、加圧接着を行う際には、接着直後の剥離強度が1.0N/25mm巾となるようシーラーギャップを調整している。
◎印:インクの転写はまったくなく、非常に優れている。
○印:インクの転写はほとんどなく、優れている。
△印:インクの転写は僅かにあるが、実用上問題ない。
×印:インクが転写して実用的ではない。
【0113】
[印字画像の鮮明性]
実施例及び比較例にて得られた圧着用紙の原紙に、インクジェット式プリンタ(キャノン製:BJF210)にて感圧接着剤組成物塗工面(親展面)にテスト印刷パターン(文字、線、ベタ)を印刷して圧着用紙を作成し、自然乾燥後の印刷画像の画像鮮明性を目視判定した。インクは、インクカートリッジにサイテックス2003黒インクをに注入して用いた。
◎印:滲みはまったくなく、非常に優れている。
○印:滲みはほとんどなく、優れている。
△印:滲みはわずかに発生しているが、実用上問題はない。
×印:滲みが発生し、実用的ではない。
【0114】
実施例1〜実施例12で得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、親展面の表面強度が良好で、剥離後に対向面に印刷画像が転写せず、また目視判定の結果、印刷画像の鮮明性も良好であり、実用上問題がなかった。
【0115】
実施例13で得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、第1の微粒子充填剤として体積平均粒子径が3.0μmで吸油量が100ml/100gである非晶質シリカを使用し、第2の微粒子充填剤として吸油量が100ml/100gである非晶質シリカを使用し、第1の微粒子充填剤、第2の微粒子充填剤共に吸油量が好適な範囲の下限の値であった。また、第1の微粒子充填剤の全微粒子充填剤に対する配合割合を50重量%とし、微粒子充填剤の基剤に対する配合割合を76重量部とし、微粒子充填剤の基剤に対する配合量が下限に近い値であった。そのため、インク吸収性とインク乾燥性に多少劣り、親展面を剥離した際の印刷画像の対向面への転写が僅かに認められ、他の実施例で得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙より剥離後における印字画像の転写性に劣る結果となったが、実用上問題ないレベルであった。
【0116】
実施例14で得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、第1の微粒子充填剤として吸油量が210ml/100gである非晶質シリカを使用し、第2の微粒子充填剤として体積平均粒子径が8.0μmで吸油量が210ml/100gである非晶質シリカを使用し、第1の微粒子充填剤、第2の微粒子充填剤共に吸油量が好適な範囲の上限の値であった。また、第1の微粒子充填剤の全微粒子充填剤に対する配合割合を68重量%とし、微粒子充填剤の基剤に対する配合割合を95重量部とし、微粒子充填剤の基剤に対する配合量が上限に近い値であった。そのため、微粒子充填剤による吸収性が上がり塗工層強度が弱まり、RI印刷時に親展面のピッキングが発生し、他の実施例で得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙より表面強度が劣る結果となったが、実用上問題ないレベルであった。
【0117】
比較例1にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、第1及び第2の微粒子充填剤として吸油量が210ml/100gより高い非晶質シリカを使用したため、非晶質シリカが感圧接着剤層中の完全ケン化型ポリビニルアルコールを吸収しすぎてしまい、バインダの効果が十分に得られなくなった。このため、親展面の表面強度が低下して、RI印刷時に親展面のピッキングが多発する結果となった。
【0118】
比較例2にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、第1及び第2の微粒子充填剤として吸油量が100ml/100gより低い非晶質シリカを使用したため、微粒子充填剤によるインク吸収が十分に行われず、感圧接着剤層のインク吸収性が低下した。このため、親展面のインクが十分に吸収されないまま加圧接着を行うこととなり、親展面を剥離した際に印刷画像の対向面への転写が認められた。
【0119】
比較例3にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、微粒子充填剤の基剤に対する配合割合が75重量部未満であったため、親展面のインク吸収性が低下した。このため、親展面のインクが十分に吸収されないまま加圧接着を行うこととなり、剥離した際に印刷画像の対向面への転写が生じる結果となった。
【0120】
比較例4にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、微粒子充填剤の基剤に対する配合割合が95重量部を超えたため、微粒子充填剤である非晶質シリカが感圧接着剤層中の完全ケン化型ポリビニルアルコールを吸収しすぎてしまい、バインダの効果が十分に得られなくなった。このため、親展面の表面強度が低下して、RI印刷時に印刷面のピッキングが多発する結果となった。
【0121】
比較例5にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、第1の微粒子充填剤として体積平均粒子径が3.6μmの非晶質シリカを使用したため、親展面を剥離した際に印刷画像の対向面への転写が生じる結果となった。
【0122】
比較例6にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、第1の微粒子充填剤として体積平均粒子径が1μ未満の非晶質シリカを使用したため、塗工液の粘度が著しく上昇し(360mpa・s超)、エアーナイフ式コータによる基紙への塗工が困難となった。このため、各種試験を行なわなかった。
【0123】
比較例7にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、第2の微粒子充填剤として体積平均粒子径が16μmの非晶質シリカを使用したため、インクジェットインクで印刷後滲みを生じてしまい、画像鮮明性の劣る結果となった。
【0124】
比較例8にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、第2の微粒子充填剤として体積平均粒子径が7.0μmの非晶質シリカを使用したため、親展面の表面強度が低下して、RI印刷時に印刷面のピッキングが多発する結果となった。
【0125】
比較例9にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、第1の微粒子充填剤の全微粒子充填剤に対する配合割合が70重量%超であったため、親展面の表面強度が低下して、RI印刷時に印刷面のピッキングが多発する結果となった。
【0126】
比較例10にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、第1の微粒子充填剤の全微粒子充填剤に対する配合割合が50重量%未満であったため、親展面のインク吸収性が低下して、圧着用紙を加圧接着して剥離した後、印刷画像の対向面への転写を生じる結果となった。
【0127】
実施例3は、カチオン性インク定着剤としてポリアルキルアミンエピクロルヒドリン重合体であるジエチルアミンエピクロロヒドリン20重量部を添加した処方である。同実施例にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、添加したジメチルアミンエピクロロヒドリンによりインク定着性が更に向上して、加圧接着して剥離した後にも印刷画像の対向面への転写を全く生じないと共に、画像鮮明性が良好となる結果となった。
【0128】
実施例4は、カチオン性インク定着剤としてポリアルキルアミンエピクロルヒドリン重合体であるジエチルアミンエピクロロヒドリン10重量部を添加した処方である。同実施例にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、添加したジメチルアミンエピクロロヒドリンによりインク定着性が向上して、加圧接着して剥離した後にも印刷画像の対向面への転写を生じないと共に、画像鮮明性が良好となる結果となった。
【0129】
実施例5は、カチオン性インク定着剤としてポリアルキルアミンエピクロルヒドリン重合体であるジエチルアミンエピクロロヒドリン30重量部を添加した処方である。同実施例にて得られた圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、添加したジメチルアミンエピクロロヒドリンによりインク定着性が向上して、加圧接着して剥離した後にも印刷画像の対向面への転写を全く生じないと共に、画像鮮明性が良好となる結果となった。その一方で、実用上問題ないレベルであるがRI印刷時に印刷面のピッキングが発生する結果となった。また、カチオン性インク定着剤の配合量が増えたことにより、基剤の配合比が相対的に低下して接着力も低下したため、感圧接着剤基剤の増量や塗工量の向上が必要となり、これ以上ジエチルアミンエピクロロヒドリンの配合量を増量することはコスト面で好ましくないことがわかる。
【0130】
以上より明らかなように、本発明の圧着用紙の原紙から作成された圧着用紙は、感圧接着剤組成物中の全微粒子充填剤の吸油量及び基剤に対する配合割合を特定し、更に、微粒子充填剤として用いる2種の非晶質シリカの体積平均粒子径とそれらの配合割合についても特定することにより、良好なインク吸収性と表面強度が得られる。インク吸収性が良好であることにより、加圧接着を行ってもインクが対向面に転写されず、剥離後に印刷内容が対向面に転移することがない。また、表面強度が良好であるため、インクジェット印刷で秘匿情報を印刷する前の罫線や一般情報等をフォーム印刷機でオフセット印刷する際に、親展面から塗工層成分が脱離せず、塗工層成分が印刷機のブランケットを汚すという問題が生じない上に、インクジェットインクの印刷による画像鮮明性も比較的良好な結果となった。
【0131】
更に、カチオン性インク定着剤であるポリアルキルアミンエピクロルヒドリンを感圧接着剤層に特定量だけ配合することによってインク定着性がより向上し、OCR適性の必要なバーコードの印刷も可能な程度の画像鮮明性が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上述べたように、本発明の圧着用紙の原紙によれば、葉書用途等の圧着用紙の製造過程におけるフォーム印刷工程において、感圧接着剤組成物塗工層の強度が適切に維持されることから、塗工層成分が脱離してフォーム印刷用のオフセット印刷機を汚すことが無く、しかも製造された圧着用紙の使用にあたっては、塗工層のインク吸収性が適切に維持されるため、開封のための剥離操作に際して、インクジェット式プリンタによる印字がその印刷面と対向する面に転移することが無いという利点がある。
【0133】
更に、カチオン性インク定着剤が、ポリアルキルアミンエピクロロヒドリン重合体からなり、かつ前記カチオン性インク定着剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して、10乃至30重量%とすることにより、製造された圧着用紙の使用にあたっては、高速輪転式等のインクジェット式プリンタで印刷した際に、記録画像の鮮明度が高く、EAN−128等のバーコードのOCR適性が良好であるという利点がある。
【符号の説明】
【0134】
10 圧着用紙
11 接着力の強い剥離可能な感圧接着剤組成物
12 接着力の弱い剥離可能な感圧接着剤組成物
13 接着力の強い剥離可能な感圧接着剤組成物
14 接着力の弱い剥離可能な感圧接着剤組成物
15 接着力の強い剥離可能な感圧接着剤組成物
16 接着力の弱い剥離可能な感圧接着剤組成物
20 圧着用紙の原紙
40 三つ折り圧着用紙
40a〜40f 圧着用紙の各面
41 宛名情報
42 秘匿情報
43a,43b 折り用ミシン目
44 透け防止用模様
45 ピントラクタ用孔
50 二つ折り圧着用紙
50a〜50d 圧着用紙の各面
51 宛名情報
52 秘匿情報
53 折り畳み用ミシン目
54 透け防止用模様
55 ピントラクタ用孔
60 圧着用紙
61 圧着用紙片
61a,61b 圧着用紙片61の各面
62 圧着用紙片
62a,62b 圧着用紙片62の各面
63 宛名情報
64 秘匿情報
65 秘匿情報
W1 三つ折り圧着用紙の展開幅
W2 二つ折り圧着用紙の展開幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙と、
前記基紙の片面または両面の全部又は一部に形成された、感圧接着剤組成物の塗工層とを包含し、
前記塗工層には、
非剥離性感圧接着剤を主成分とする基剤と、
前記基剤の接着態様を調整するための微粒子充填剤と、
インクジェット式プリンタによるインクを定着させるためのカチオン性インク定着剤と、
前記塗工層の強度を維持するためのバインダと、が含まれており、かつ
前記塗工層に含まれる前記微粒子充填剤の前記基剤に対する配合割合は、前記基剤100重量%に対して75乃至95重量%であり、
前記微粒子充填剤が、コールターカウンタ法による体積平均粒子径が1乃至3μmの非晶質シリカである第1の微粒子充填剤と、コールターカウンタ法による体積平均粒子径が8乃至15μmの非晶質シリカである第2の微粒子充填剤との2種の微粒子充填剤からなり、かつ前記第1の微粒子充填剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して50乃至70重量%であり、
前記第1及び第2の微粒子充填剤の吸油量のそれぞれは、ISO 787−5に基づいて測定した吸油量が、いずれも、100乃至210ml/100gである、圧着用紙の原紙。
【請求項2】
前記カチオン性インク定着剤が、ポリアルキルアミンエピクロロヒドリン重合体からなり、かつ前記カチオン性インク定着剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して、10乃至30重量%である、請求項1に記載の圧着用紙の原紙。
【請求項3】
基紙を用意する第1のステップと、
感圧接着剤組成物塗料を用意する第2のステップと、
前記第1のステップで用意された基紙の片面又は両面の全部又は一部に、第2のステップで用意された感圧接着剤組成物塗料を塗布することにより感圧接着剤組成物の塗工層を形成する第3のステップとを包含し、
前記第2のステップは、
非剥離性感圧接着剤を主成分とする基剤と、前記基剤の接着態様を調整するための微粒子充填剤と、インクジェット式プリンタによるインクを定着させるためのカチオン性インク定着剤と、前記塗工層の強度を維持するためのバインダとを、水に添加して混合することにより感圧接着剤組成物塗料を生成する塗料生成ステップを含み、
前記塗料生成ステップにおいて、
前記微粒子充填剤の前記基剤に対する配合割合は、前記基剤100重量%に対して75乃至95重量%であり、
前記微粒子充填剤が、コールターカウンタ法による体積平均粒子径1乃至3μmの非晶質シリカである第1の微粒子充填剤と、コールターカウンタ法による体積平均粒子径が8乃至15μmの非晶質シリカである第2の微粒子充填剤との2種の微粒子充填剤からなり、かつ前記第1の微粒子充填剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して50乃至70重量%であり、
前記第1及び第2の微粒子充填剤の吸油量のそれぞれは、ISO 787−5に基づいて測定した吸油量が、いずれも、100乃至210ml/100gである、圧着用紙の原紙の製造方法。
【請求項4】
前記カチオン性インク定着剤が、ポリアルキルアミンエピクロロヒドリン重合体からなり、かつ前記カチオン性インク定着剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して、10乃至30重量%である、請求項3に記載の圧着用紙の原紙の製造方法。
【請求項5】
非剥離性感圧接着剤を主成分とする基剤と、前記基剤の接着態様を調整するための微粒子充填剤と、インクジェット式プリンタによるインクを定着させるためのカチオン性インク定着剤と、塗工層の強度を維持するためのバインダとを、水に添加して混合してなり、
前記微粒子充填剤の前記基剤に対する配合割合は、前記基剤100重量%に対して75乃至95重量%であり、
前記微粒子充填剤が、コールターカウンタ法による体積平均粒子径が1乃至3μmの非晶質シリカである第1の微粒子充填剤と、コールターカウンタ法による体積平均粒子径が8乃至15μmの非晶質シリカである第2の微粒子充填剤との2種の微粒子充填剤からなり、かつ前記第1の微粒子充填剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して50乃至70重量%であり、
前記第1及び第2の微粒子充填剤の吸油量のそれぞれは、ISO 787−5に基づいて測定した吸油量が、いずれも、100乃至210ml/100gである、圧着用紙の原紙の製造方法に使用される感圧接着剤組成物塗料。
【請求項6】
前記カチオン性インク定着剤が、ポリアルキルアミンエピクロロヒドリン重合体からなり、かつ前記カチオン性インク定着剤の全微粒子充填剤に対する配合割合は、全微粒子充填剤100重量%に対して、10乃至30重量%である、請求項5に記載の圧着用紙の原紙の製造方法に使用される感圧接着剤組成物塗料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−98507(P2011−98507A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254473(P2009−254473)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(592175416)紀州製紙株式会社 (23)
【Fターム(参考)】