説明

圧電ファン

【課題】 本発明は、電子機器の冷却に用いられる圧電ファンに関して、支持部材の中央部の支持が不十分であるため、不要な振動が増加してしまい送風能力が十分でないという問題を解決し、従来よりも送風能力の高い圧電ファンを提供する。
【解決手段】 一端が固定端、他端が自由端であり、自由端側の領域が複数の分割板に分割されて形成されている振動板と、前記振動板の固定端側の領域に貼付されている圧電素子と、中央部に前記振動板の固定端部を挟み、少なくとも一点で固定されている一対の支持体とを備え、前記振動板の前記圧電素子が接着されている部分と前記分割板との間に曲げ部が設けられており、前記振動板と前記支持体との間に弾性体を更に備え、前記振動板の固定端部と前記圧電素子の一部が前記一対の支持体によって前記弾性体を介して支持されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の冷却に用いられる圧電ファンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
AV機器やコンピュータなどの発熱する部品を内蔵した電子機器の冷却には、ファン装置が広く用いられている。近年では、実装形態に適した小型で静音性が高い圧電ファンが望まれている。このような圧電ファンは、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示されているのは、図4に示すように、ヒートシンク120に備えられる放熱フィン間の暖気を排出する圧電ファン110を用いた冷却装置100である。
【0003】
圧電ファン110は、特に図4(B)に示すように、圧電素子111と、圧電素子111が貼付されている振動板112と、支持部材113とを備えている。振動板112の一端がねじ130によって支持部材113に二点固定されて固定端114となり、他端が自由端115となる。ここで、固定端とは振動の節となる固定端のことを指す。
【0004】
圧電ファン110は、圧電素子111に形成されている電極(図示せず)と導体からなる振動板112とに、駆動交流電源から電圧を印加して駆動させる。圧電素子111が伸縮を行うと、振動板112の自由端115がうちわ状に屈曲振動を行い、圧電ファンとして駆動するものである。
【0005】
圧電ファン110では、振動板112の一端がねじによって支持部材113に二点固定されているため、振動板112の振動の節となる固定端が定まらず、不十分な固定になってしまうという問題があった。
【0006】
図5に示す圧電ファン140は、圧電ファン110の振動板の固定方法に改良を加えたものである。圧電ファン140は、圧電素子141が貼付された振動板142の一端を、一対の直方体形状の支持部材143の中央部に挟み、支持部材143の両端をねじ160によって二点固定して構成されている。このように、振動板142を支持部材143で挟み込んで支持をしているので、振動板142の振動の節となる固定端を一意に定めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2009/034956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような圧電ファンの固定方法では、振動板の振動の節となる固定端が定まるものの、支持部材による振動板の中央部(図5のB部分)の支持が不十分であるため、不要な振動が増加してしまい送風能力が十分でないという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、従来よりも送風能力の高い圧電ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の圧電ファンは、一端が固定端、他端が自由端であり、自由端側の領域が複数の分割板に分割されて形成されている振動板と、前記振動板の固定端側の領域に貼付されている圧電素子と、中央部に前記振動板の固定端部を挟み、少なくとも一点で固定されている一対の支持体とを備え、前記振動板の前記圧電素子が接着されている部分と前記分割板との間に曲げ部が設けられており、前記振動板と前記支持体との間に弾性体を更に備え、前記振動板の固定端部と前記圧電素子の一部が前記一対の支持体によって前記弾性体を介して支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、振動板の一端と圧電素子の一部が支持体によって弾性体を介して支持されているので、振動板の固定部全体をしっかりと支持できるようになり、従来よりも高い送風能力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る圧電ファンの斜視図である。
【図2】実施形態1に係る圧電ファンを示し、同図(A)は側面図、同図(B)は上面図である。
【図3】比較例1としての圧電ファンを示し、同図(A)は側面図、同図(B)は上面図である。
【図4】従来の冷却装置を示し、同図(A)は斜視図、同図(B)は従来の圧電ファンの上面図である。
【図5】従来の圧電ファンを示し、同図(A)は斜視図、同図(B)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態に係る圧電ファンについて説明する。
【0014】
(実施形態1)
以下、実施形態1について、図1と図2を参照しながら説明を行う。なお、本明細書において、斜視図は理解しやすくするために概略的に示している。
【0015】
本実施形態1の圧電ファン10は図1に示すように、所定周波数の駆動交流電圧の印加に応じて伸縮する圧電素子11と、振動板12と、一対の支持体13と、弾性体18とから構成されている。圧電素子11は、振動板12の両主面に固着されている。振動板12は、一方主面の一端が支持体13に支持されている。振動板12の一端は固定端14、他端を自由端15とする。ここで、固定端14は振動の節となる固定端のことを指す。
【0016】
振動板12は、幅46mm×長さ50mm×厚み50μmの薄い板状に形成されている。振動板12は長さ方向の中央に曲げ部16が設けられており、曲げ部16にて約90度に折り曲げてL字型に形成されている。自由端15から曲げ部16までの長さは25mmである。振動板12の幅は曲げ部16を境に変化しており、曲げ部16よりも自由端15側の振動板12の幅は46mm、曲げ部16よりも固定端14側の振動板12の幅は35mmに加工されて形成されている。振動板12の曲げ部16よりも自由端15側では、振動板12が7枚の分割板12aに分割されて熊手型に形成されており、各分割板12aは等間隔に形成されている。各分割板12aの幅はそれぞれ4.5mmである。振動板12は、例えばNi−Fe合金から構成されている。
【0017】
圧電素子11は、幅33.4mm×長さ15.8mm×厚み55μmの板状であり、両主面に電極(図示せず)が形成されている。圧電素子11は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスから構成されている。圧電素子11は、振動板12の曲げ部16から固定端14側に固着されている。
【0018】
支持体13は、幅48mm×長さ5mm×厚み3mmの直方体形状であり、例えばガラスエポキシ樹脂から構成されている。支持体13は、幅方向の両端部に固定点が設けられている。固定点は例えばねじ溝として形成されている。
【0019】
弾性体18は、幅36mm×長さ5mm×厚み1mmの直方体形状であり、例えばシリコーンゴムから形成されている。弾性体18は振動板12の一端と圧電素子11の一部を支持体13によって支持する際に、両者の緩衝となるように、振動板12の支持体13と当接する主面の全面に渡るように設けられている。
【0020】
支持体13は、ねじ溝にねじ20が螺合されることで振動板12の一端を支持するものである。一対の支持体13間の固定点の周囲には、弾性体の圧縮量を正確に決め、支持体13の高さを一定にするためにスペーサ(図示せず)が設けられている。ねじ20は、一方の支持体13からスペーサを介して他方の支持体13に螺合される。
【0021】
図2(A)に示すように、圧電ファン10は、圧電素子11に形成されている一方の電極(図示せず)と導体からなる振動板12とに、駆動交流電源17から電圧を印加して駆動させる。圧電素子11が長さ方向に伸縮を行うと、振動板12は一端が固定されているために、曲げ部16が圧電素子11の厚み方向に振動する。その結果、自由端15が圧電素子11の長さ方向にうちわ状に屈曲振動を行い、圧電ファンとして駆動する。
【0022】
本実施形態では、振動板12の一端と圧電素子11の一部が支持体13によって弾性体18を介して支持されている。このように形成しているので、固定点だけでなく振動板12の振動の節となる固定端14を幅方向にしっかりと支持できるようになるので、圧電ファン10の送風能力が高くなる。以下にその根拠となる実験結果を記述する。
【0023】
(実験例1、2と比較例1〜3)
実験例1、2として図1に示す圧電ファン10、比較例1、2として図3に示す圧電ファン30、比較例3として比較例1と一部異ならせた圧電ファンを用いて実験を行った。実験例1、2と比較例1〜3との異なる点は弾性体18の有無である。実験例1、2として支持体13と振動板12との間に弾性体18が設けられた圧電ファンを用い、比較例1〜3として弾性体が設けられていない圧電ファンを用いた。
【0024】
また、比較例1、2と比較例3との異なる点は、圧電素子の支持の有無である。
本実験では、振動板の曲げ部から5mm固定端側の箇所に圧電素子の長さ方向の一辺がくるように固着し、圧電素子と振動板の位置を変化させずに、振動板の曲げ部から振動の節となる固定端までの長さ、すなわち図2(B)及び図3(B)に示す距離Aを変化させる。具体的には、振動板に対する支持体及び弾性体の位置を変化させる。このようにして、圧電素子の支持量を変化させる。
【0025】
実験例1及び比較例1として圧電素子の支持量を1.0mmとし、実験例2及び比較例2として圧電素子の支持量を4.0mmとした圧電ファンを用いた。また、比較例3として圧電素子を支持しない圧電ファンを用いた。詳しい条件については表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
本実験では、表1に示す5条件にて、圧電ファンを基本波で駆動させた時の振動板の振幅を測定して送風能力の比較を行った。なお、本明細書での振幅は両振幅のことである。送風能力は、周波数×振幅によって決定される。
【0028】
振幅の測定にはレーザー変位計を用い、振動板の自由端から15mmの箇所の圧電素子の長さ方向への振幅を測定した。各圧電ファン共に印加する電圧は20Vppとした。
【0029】
実験結果を表1に示す。実験例1の送風能力は415.7Hz・mmであり、実験例2の送風能力は437.7Hz・mmであった。また、比較例1の送風能力は389.2Hz・mm、比較例2の送風能力は372.9Hz・mm、比較例3の送風能力は358.9Hz・mmであった。
【0030】
比較例1、2と比較例3とを比較すると、比較例1、2のほうが送風能力が高いので、圧電素子の一部が支持体によって支持されているとより望ましいといえる。
【0031】
また、実験例1と比較例1との送風能力を比較すると、実験例1のほうが送風能力が高く、実験例2と比較例2との送風能力を比較すると、実験例2のほうが送風能力が高いので、弾性体を介して振動板の支持を行うと、さらなる送風能力の向上が得られることがわかる。
【0032】
これらの結果から、圧電素子の一部が支持体によって弾性体を介して支持されていると、圧電ファンの送風能力が増加するため、より望ましいといえる。
【0033】
これは、振動板を曲げ部でL字型に折り曲げて形成しているため、振動板の固定端をしっかりと支持することで固定端の剛性が高まり、曲げ部よりも自由端側の分割板の振幅が大きくなって、圧電ファンの送風能力が向上したものと考えられる。
【0034】
なお、本発明に係る冷却装置は上記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0035】
前記実施形態では、圧電素子はチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスから構成しているが、これに限るものではない。例えば、ニオブ酸カリウムナトリウム系及びアルカリニオブ酸系セラミックス等の非鉛系圧電体セラミックスの圧電材料などから構成してもよい。
【0036】
前記実施形態では、振動板の中央部に設けられた曲げ部にてL字型に折り曲げているが、これに限るものではない。例えば、U字型やV字型に折り曲げてもよい。
【0037】
前記実施形態では、振動板を両面から挟むように圧電素子をそれぞれ固着して、バイモルフ型振動子を構成したが、振動板の一方主面のみに圧電素子を接合したユニモルフ型振動子を構成してもよい。
【0038】
前記実施形態では、弾性体はシリコーンゴムから形成しているが、これに限るものではない。例えば、ウレタンゴムやエラストマー等であってもよい。
【0039】
前記実施形態では、ねじは一方の支持体からスペーサを介して他方の支持体に螺合されているが、これに限るものではない。例えば、スペーサの代わりに他の弾性の低い部材を用いてもよいし、スペーサ部分が支持体と一体成型されていてもよい。
【0040】
前記実施形態では、支持体を二点固定しているが、これに限るものではない。例えば、一点固定でもよいし、三点以上で固定してもよい。
【0041】
前記実施形態では、ねじを螺合することにより一対の支持体を固定しているが、これに限るものではない。例えば、別体や支持板同士を嵌合することによって固定してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10、30…圧電ファン
11、31…圧電素子
12、32…振動板
12a…分割板
13、33…支持体
14、34…固定端
15、35…自由端
16、36…曲げ部
17、37…駆動交流電源
18…弾性体
20、40…ねじ
A…振動板の曲げ部から振動の節となる固定端までの長さ
B…振動板の中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が固定端、他端が自由端であり、自由端側の領域が複数の分割板に分割されて形成されている振動板と、
前記振動板の固定端側の領域に貼付されている圧電素子と、
中央部に前記振動板の固定端部を挟み、少なくとも一点で固定されている一対の支持体とを備え、
前記振動板の前記圧電素子が接着されている部分と前記分割板との間に曲げ部が設けられており、
前記振動板と前記支持体との間に弾性体を更に備え、
前記振動板の固定端部と前記圧電素子の一部が前記一対の支持体によって前記弾性体を介して支持されていることを特徴とする圧電ファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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