説明

垂直面等の立ち上がり面用の緑化構造及び給水マット

【課題】背高であっても毛細管現象を利用した下からの水の給水によって培地材に充分な水を供給することができて、灌水のための散水を減らす、ないしは、なくすことができる、垂直面等の立ち上がり面用の緑化構造等を提供する。
【解決手段】水受け2と、平均繊維径0.2〜5μmの微細ガラス繊維マットからなる給水マットと、該給水マットを挟む一方又は両方に設置された立ち上がり状設置の培地材とが備えられ、該培地材の立ち上がり面部に植栽するようになされている。微細ガラス繊維マットは、膨張性マイクロカプセルをバインダーとして備え、該マイクロカプセルはマット内で膨張され、膨張したマイクロカプセルの外殻は透水性を備えているとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直面等の立ち上がり面用の緑化構造及び給水マットに関する。
【背景技術】
【0002】
垂直面緑化のために、従来より、保水性に優れた培地材が種々提供されているが、そのような培地材を用いて垂直面緑化を行う場合であっても、散水をしなければ保水もされず、植物を枯らしてしまう。
【0003】
そのため、垂直面緑化において、下部に貯水部を設け、給水マットとして、ヤシガラシートや、合成樹脂製の不織布、古布フェルトなどを用い、その下端部を貯水部に設置し、貯水部の水を給水マットで毛細管現象により上方に吸い上げて培地材に給水する方法が提案されている。
【特許文献1】実用新案登録第3064435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発明者のした実験によれば、その方法で培地材に有効的に給水することのできる高さ寸法は、ほとんどゼロであり、垂直面緑化の給水方法としては、上記の給水方法は、砂上の楼閣にすぎないものであって、背高な垂直面緑化を行う場合の難点である散水を軽減できるものでは到底ないことを突き止めた。
【0005】
本発明は、上記のような調査と研究に基づいてなされたものであって、背高であっても毛細管現象を利用した下からの水の給水によって培地材に充分な水を供給することができて、灌水のための散水を減らす、ないしは、なくすことができる、垂直面等の立ち上がり面用の緑化構造及び給水マットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、貯水部と、上下方向に向けられ下端部が浸漬可能に貯水部に設置されて貯水部の水を毛細管現象により上方に給水する給水マットと、該給水マットを挟む一方又は両方に給水マットからの給水を受けることができるよう設置された立ち上がり状設置の培地材とが備えられ、該培地材の立ち上がり面部に植栽するようになされた垂直面等の立ち上がり面用の緑化構造であって、
前記給水マットが、平均繊維径0.2〜5μmの微細ガラス繊維マットからなることを特徴とする、垂直面等の立ち上がり面用の緑化構造によって解決される。
【0007】
また、下方の貯水部に下端部を浸漬され、毛細管現象で水を吸い上げ、立ち上がり状設置の培地材に給水する給水マットであって、平均繊維径0.2〜5μmの微細ガラス繊維マットからなることを特徴とする、垂直面等の立ち上がり面緑化用の給水マットによって解決される。
【0008】
上記の微細ガラス繊維マットからなる給水マットによれば、微細ガラス繊維の絡み合いによる毛細管現象によって、培地材に有効的に給水することのできる高さ寸法を70〜80cm確保することができ、背高であっても毛細管現象を利用した下からの水の給水によって培地材に充分な水を供給することができて、灌水のための散水を減らす、ないしは、なくすことができる。
【0009】
上記の緑化構造において、微細ガラス繊維マットが膨張性マイクロカプセルをバインダーとして備え、該マイクロカプセルはマット内で膨張され、膨張したマイクロカプセルの外殻は透水性を備えているとよい。
【0010】
この場合は、マイクロカプセルのバインダー効果で微細ガラス繊維間の隙間を小さく維持することができるのみならず、マイクロカプセルの外殻が透水性を備えていることにより、マイクロカプセルの内部にも水分が吸収保持され、マイクロカプセルが微細ガラス繊維の交絡によってできた隙間を埋めることによる毛細管現象の能力低下をきたさないのみならず、それを越えて毛細管現象を促進するように働き、培地材に有効的に給水することのできる高さ寸法を高いものにすることができる。
【0011】
上記の緑化構造において、培地材が、高気相率、高透水性、高保水性を備えた発泡熱硬化性樹脂からなる場合は、高気相率によって根腐れを防ぐことができ、給水マットからの給水をすばやく受け入れることができて給水マットによる給水を促進することができ、そして、受け入れた水をしっかり保持し、植物に長い時間、あるいは、長い期間にわたって水を供給し続けることができる。
【0012】
また、上記の緑化構造において、培地材と給水マットが蒸散阻止性のあるケース内に収容されてパネル化され、該ケースの立ち上がり面に植栽用の複数の孔が分散状態に設けられているとよい。
【0013】
この場合は、ケースによって蒸散を抑えられ、培地材への給水量を節約することができると共に、ケースの立ち上がり面に設けられた植栽孔を利用して植栽を行うことができ、しかも、ケースによるパネル化で取扱容易性を高いものにすることができる。
【0014】
また、この緑化構造において、ケース内の上部に灌水用のパイプが備えられ、該パイプを通じてケース外から内部に灌水することができるようになされており、かつ、該パイプを通じた灌水により、貯水部に貯水されるようになされているとよい。
【0015】
この場合は、灌水のためにケースを開く必要がないし、ケースの上部は閉じておくことができて蒸散を阻止することができ、貯水部への貯水も容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のとおりのものであるから、背高であっても毛細管現象を利用した下からの水の給水によって培地材に充分な水を供給することができて、灌水のための散水を減らす、ないしは、なくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示す第1実施形態の緑化構造は、垂直面緑化についてのもので、盤状のケース1を用いてパネル化されており、該ケース1は、二つ合わせ式のケースからなっていて、ケース1内において、その下部には、貯水部としての樋状水受け2が設置され、該水受け2には、上下方向に向けられた給水マット3の下端部が浸漬可能に設置され、給水マット3を挟む一方の面側に培地材4が立ち上がり状に設置されている。
【0019】
そして、ケース1は、合成樹脂成形品や、表面処理鋼板あるいはアルミニウム合金板などからなっていて、蒸散阻止性をもたされており、培地材4の側の立ち上がり面部には、植栽用の複数の孔5…が分散状態に設けられ、図2(ロ)に示すように、該孔5を通じてポット上の植物を培地材4に植設することができるようになされている。なお、培地材4には、植設用の空間部6を形成しておくのもよいし、植設に際して空間部6を形成するようにしてもよい。
【0020】
また、ケース1内の上部には、灌水用のパイプ7が設置され、該パイプ7を通じてケース1の外から内部に灌水することができるようになされており、図2(ロ)に示すように、パイプ7を通じた灌水により、水受け2内に貯水されるようになされて、水受け2への貯水を容易にすることができるようになされている。
【0021】
そして、上記の給水マット3は、平均繊維径が0.2〜5μmの微細ガラス繊維マットからなっていて、図2(ハ)に示すように、水受け2内から給水マット3で毛細管現象により吸い上げた水が培地材4に供給されるようになっている。該微細ガラス繊維マット3は、膨張性マイクロカプセルをバインダーとして備え、該マイクロカプセルはマット3内で膨張され、膨張したマイクロカプセルの外殻は透水性を備えているものからなっている。
【0022】
培地材4は、気相率が高く、また、給水マット3との関係で透水速度が高くしかも保水性に優れた人工培地材からなっており、そのような人工培地材としては、例えば、レゾール系発泡フェノール樹脂や発泡メラミン樹脂等の発泡熱硬化性樹脂が好適に用いられる。
【0023】
上記の構造では、給水マット3が、平均繊維径0.2〜5μmの微細ガラス繊維マットからなっているので、微細ガラス繊維の絡み合いによる毛細管現象によって、水受け2から70〜80cmの高さ範囲内に存在する培地材4に対して有効的に給水することができ、培地材4が背高であっても、給水マット3によって培地材4に充分な水を供給することができ、灌水のための散水を減らすことができる。
【0024】
また、微細ガラス繊維マット3は、膨張性マイクロカプセルをバインダーとし、膨張されたマイクロカプセルの外殻は透水性を備えているので、マイクロカプセルのバインダー効果で微細ガラス繊維間の隙間を小さく維持でき、外殻の透水性により毛細管現象を促進させることができて、培地材4への給水を効果的なものにすることができる。
【0025】
また、給水マット3や培地材4、水受け2は、ケース1によって蒸散を抑えられ、培地材4への給水量を節約でき、ケース1によるパネル化で取扱も容易である。更に、ケース1内の上部に灌水パイプ7が備えられ、パイプ7を通じてケース1の外から灌水できるようになされているので、灌水のためにケース1を開く必要がないし、ケース1の上部を閉じておくことができて蒸散を阻止できる。
【0026】
図3に示す第2実施形態は、両面緑化についてのもので、給水マット3を挟む両側に培地材4,4が設けられ、ケース1のもう一方の面側にも植栽用の孔5…が設けられている。その他は、第1実施形態と同様である。このような構造にすれば、一つの給水マット3で各培地材4,4に給水することができ、灌水パイプ7も水受け2も共用でき、両面緑化でありながら、それを簡素な構造で実現することができる。
【0027】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、本発明の構造は、ケース収容式でなくてもよいし、給水マットによる下からの給水のみで他の灌水を排除することができる構造に構成されていてもよい。また、法面などの斜面緑化に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図(イ)は第1実施形態の緑化構造を示す分解斜視図、図(ロ)は中間省略断面側面図である。
【図2】図(イ)〜図(ハ)はそれぞれ、使用方法、使用状態を示す中間省略断面側面図である。
【図3】第2実施形態の緑化構造を示す中間省略断面側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…ケース
2…水受け(貯水部)
3…微細ガラス繊維マット(給水マット)
4…培地材
5…孔
7…灌水パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水部と、上下方向に向けられ下端部が浸漬可能に貯水部に設置されて貯水部の水を毛細管現象により上方に給水する給水マットと、該給水マットを挟む一方又は両方に給水マットからの給水を受けることができるよう設置された立ち上がり状設置の培地材とが備えられ、該培地材の立ち上がり面部に植栽するようになされた垂直面等の立ち上がり面用の緑化構造であって、
前記給水マットが、平均繊維径0.2〜5μmの微細ガラス繊維マットからなることを特徴とする、垂直面等の立ち上がり面用の緑化構造。
【請求項2】
前記微細ガラス繊維マットが膨張性マイクロカプセルをバインダーとして備え、該マイクロカプセルはマット内で膨張され、膨張したマイクロカプセルの外殻は透水性を備えている請求項1に記載の、垂直面等の立ち上がり面用の緑化構造。
【請求項3】
前記培地材が、高気相率、高透水性、高保水性を備えた発泡熱硬化性樹脂からなる請求項1又は2に記載の、垂直面等の立ち上がり面用の緑化構造。
【請求項4】
前記培地材と給水マットが蒸散阻止性のあるケース内に収容されてパネル化され、該ケースの立ち上がり面に植栽用の複数の孔が分散状態に設けられている請求項1乃至3のいずれか一に記載の、垂直面等の立ち上がり面用の緑化構造。
【請求項5】
前記ケース内の上部に灌水用のパイプが備えられ、該パイプを通じてケース外から内部に灌水することができるようになされており、かつ、該パイプを通じた灌水により、貯水部に貯水されるようになされている請求項4に記載の、垂直面等の立ち上がり面用の緑化構造。
【請求項6】
下方の貯水部に下端部を浸漬され、毛細管現象で水を吸い上げ、立ち上がり状設置の培地材に給水する給水マットであって、平均繊維径0.2〜5μmの微細ガラス繊維マットからなることを特徴とする、垂直面等の立ち上がり面緑化用の給水マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−280285(P2006−280285A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105274(P2005−105274)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】