説明

埋込金物およびその取り付け方法

【課題】コンクリート建物の構成部材内の配筋等と埋込金物を形成する定着用棒材が干渉しないように埋込金物を取り付ける際に、その取り付け効率が極めて高い埋込金物と、該埋込金物の取り付け方法を提供する。
【解決手段】埋込金物10は、その平面視が所定形状のプレート材1と、該プレート材1の広幅の一側面11に固着された所定数のプレート材定着用棒材2,…と、からなり、プレート材1の一側面11の図心位置P0と、所定数の定着用棒材2,…の該プレート材1への各固着位置Q1,Q2,Q3,Q4を繋いでできる多角形の図心位置P1が、ずらされているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート建物の構成部材内に埋込まれて配管等を支持する埋込金物と、この埋込金物をコンクリート建物に取り付ける方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートからなる建物(以下、「コンクリート建物」という)は、一般家屋のほか、マンション、ビル、各種プラント施設など広範囲に亘って構築されている。このコンクリート建物を形成する構成部材、たとえば、柱や壁、梁や天井床などには、通常、配管や電線、防風壁やこれを支持する金物、鋼材等の重量物が接続されている。
【0003】
一般にこの重量物の接続方法は、鉄筋コンクリート造の構成部材内に鉄筋や棒状金物などの棒材が固着された埋込金物を埋め込んでおき、外部に臨む埋込金物の一側面に配管等を溶接等するものである。
【0004】
この埋込金物の上記構成部材への埋込位置は設計段階で予め設定されているが、鉄筋コンクリート造の構成部材の内部には各種鉄筋やダクト配管等の埋設物が配設されていることから、埋込金物に固着された定着用棒材がこの鉄筋等と干渉することが往々にしてあり、このことが埋込金物の取り付け作業が手間と時間を要する一因となっている。ここで、構成部材内の各種鉄筋とは、壁であれば鉛直方向および水平方向に延びる主鉄筋であり、柱であれば鉛直方向の主鉄筋とこれを囲繞するフープ筋であり、梁であれば水平方向に延びる主鉄筋とスターラップ等のせん断補強筋であり、天井床であれば面的に広がる主鉄筋とこれを補強するスターラップ等のことである。
【0005】
埋込金物に固着された定着用棒材がこれら鉄筋等と干渉した場合は、埋込金物の配設位置が予め決定されていることから、この棒材を曲げ加工せざるを得ないが、金物や鋼製の棒材を曲げ加工するには時間がかかること、曲げ加工することによって棒材の強度を低下させたり、初期のアンカー効果を十分に発揮できなくなる可能性があることなど、この曲げ加工には多くの課題が存在する。
【0006】
上記課題を解決するための埋込金物に関する技術が特許文献1に開示されている。この埋込金物は、プレートに穿孔されたねじ孔にスタッドジベル先端のねじ部をねじ込んでこれをコンクリート建屋内の天井等に埋め込むものであるが、ねじ込まれるジベル規定数よりも多いねじ孔をプレートに予め設けておき、埋込金物取り付け時に建屋内の配筋とスタッドジベルが干渉しない位置にあるねじ孔を選び出して、これにスタッドジベルをねじ込むものである。
【0007】
【特許文献1】特開2005−133360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示の埋込金物によれば、建屋を形成する構成部材内の配筋と干渉しないプレート位置にスタッドジベルを固定することができ、したがって、配筋との干渉の際にスタッドジベルを曲げ加工等する問題は解消される。しかし、この埋込金物では、プレートに多数のねじ孔を設けておく必要があり、プレート自体の強度を低下させることは必然である。スタッドジベルは重量物を支持するプレートが建屋部材から抜け出さないようにするためのものであるが、孔を多数設けることでプレート自体の強度が低下することにより、重量物の支持荷重によってプレート自体が破断等してしまう可能性も生じ得る。また、プレートごとに規定数以上のねじ孔を設けることからその製作コストは高くならざるを得ない。さらに、その取り付けに際しては、配筋と干渉のない位置を一つずつ探し出し、それぞれのねじ孔にスタッドジベルをねじ込んでいくことから、取り付け効率が極めて低いことは言うまでもない。プレート当たりのジベル規定数が多い場合や埋め込まれるプレート数が多い場合には、この効率の低さは一層顕著なものとなる。
【0009】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、コンクリート建物を形成する構成部材に埋め込まれる定着用棒材をプレート材に固着してなる埋込金物に関し、構成部材の内部配筋等との干渉を回避するために該定着用棒材を曲げ加工する必要がなく、さらに内部配筋等と定着用棒材が干渉しないように埋込金物を取り付ける際に、その取り付け効率が極めて高い埋込金物と、該埋込金物の取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による埋込金物は、コンクリート建物を形成する構成部材内の所定位置に埋込まれる埋込金物であって、該埋込金物は、その平面視が所定形状のプレート材と、該プレート材の広幅の一側面に固着された所定数のプレート材定着用棒材と、からなる埋込金物において、プレート材の前記一側面の図心位置と、所定数の定着用棒材の該プレート材への各固着位置を繋いでできる多角形の図心位置とが、ずらされていることを特徴とするものである。
【0011】
ここで、プレート材は金属製または鋼製の板材であり、その厚みは要求耐力に応じて任意であり、その平面視形状は、正方形、矩形、菱形等の四角形、その他の多角形、円形、楕円形など、任意の形状を選定できる。
【0012】
このプレート材の広幅の2面のうち、一方の面(一側面)にはコンクリート建物の構成部材内に定着して該プレート材が構成部材外へ抜け出さないようにするためのプレート材定着用棒材が固着されている。また、プレート材の他側面は構成部材の表面に臨み、配管等が直接溶接されたり、Uリング等の取付け部材が該他側面に溶接等されて間接的に配管等を支持する面となる。
【0013】
上記定着用棒材は、異形棒鋼や丸鋼、ねじ切りボルト、ジベル、スタッドジベル等、公知の棒材を使用することができ、プレート材に固着される本数も、たとえば4本、5本以上等、所要の引抜耐力等を満足する本数が設定できる。また、その長さ、すなわち、定着長も、所要の引抜耐力等(コンクリートとの摩擦力、仮想コーン破壊面のせん断強度など)を満足する長さが設定できる。
【0014】
上記プレート材の一側面に、所定数の定着用棒材が溶接や圧接(摩擦圧接等)等にて固着されて本発明の埋込金物が形成される。なお、プレート材にねじ切り孔を設けておき、定着用棒材の端部のねじ切りと螺合接合する固着形態であってもよいが、この場合でも、上記する特許文献1とは異なり、プレート材には固着される定着用棒材の数のねじ切り孔のみが穿孔されるものである。
【0015】
本発明の埋込金物は、上記する所定形状のプレート材の端辺(外郭辺)でできる形状の図心位置と、このプレート材に固着される複数の定着用棒材の各固着位置を繋いでできる多角形の図心位置とが、一致しないようにずらされているものである。
【0016】
たとえば平面視正方形のプレート材に4本の定着用棒材が正方形配置で固着され、プレート材の正方形の各辺と定着用棒材の正方形の各辺が対応する態様で埋込金物が形成されている場合には、双方の正方形の図心位置をずらすことにより、各辺間の4つの離間長のすべてが異なる形態、4つのうちの2つが同じ離間長で他の2つがこれと異なる形態、2つずつが同じ離間長となる形態などが存在することになる。
【0017】
なお、定着用棒材が3本以上の場合には、この定着用棒材の固着位置で多角形が形成されて図心位置が確定するが、定着用棒材が2本の場合にはその中心位置を図心位置として設定し、1本の場合にはこの定着位置を図心位置として、プレート材の図心位置からずらすようにすればよい。
【0018】
上記のごとく離間長が異なるようにして複数の定着用棒材をプレート材に固着して埋込金物を形成することにより、コンクリート建物の構成部材において予め設定された取り付け位置にこの埋込金物を取り付ける際に、プレート材の取り付け位置を変更することなく、各定着用棒材の埋め込み位置を変化させることが可能となる。たとえば、上記する埋込金物の形態において、プレート材の一つの辺を上辺として構成部材に取り付けようとした際に定着用棒材の一部または全部が構成部材内の配筋等と干渉する場合には、プレート材の他の辺を上辺として各定着用棒材の埋め込み位置を変化させ、再度干渉の有無をチェックし、干渉しない場合にはそのプレート材姿勢を取り付け姿勢とすることができる。さらにこの干渉チェックでも定着用棒材が配筋等と干渉する場合には、さらに他の辺を上辺として再度干渉の有無を確認すればよい。
【0019】
上記するように、本発明の埋込金物によれば、プレート材の図心位置と複数の定着用棒材の各固着位置でできる形状の図心位置とがずらされただけの極めて簡易な構成で、該埋込金物とこれが取り付けられるコンクリート建物の構成部材内の配筋等との干渉を回避する可能性を高めることができる。さらに、この埋込金物は、不要な貫通孔が形成されていないことからプレート材自身が有する初期の強度をそのまま備えており、現場における取り付け作業効率も高めることができるものである。
【0020】
ここで、上記する埋込金物の一実施の形態として、前記プレート材の平面視形状が正方形または矩形であり、4本の前記定着用棒材が各固着位置を繋いでできる形状が正方形または矩形となるように定着用棒材がプレート材に固着される埋込金物であって、プレート材の各辺と、4本の定着用棒材の固着位置でできる正方形または矩形の各辺との間の4つ離間長がすべて異なる形態がある。
【0021】
一つのプレート材に対して4本の定着用棒材を固着してなる埋込金物が使用されるのが一般的であり、さらに、このプレート材の形状が正方形もしくは矩形のものが使用されるのが一般的である。
【0022】
上記形態の埋込金物において、さらに、プレート材の各辺と、4本の定着用棒材の固着位置でできる正方形または矩形の各辺との間の4つの離間長がすべて異なる形態とすることにより、構成部材内の配筋等との干渉を回避できるプレート材取り付け姿勢のバリエーションをより多様にできる。
【0023】
また、上記する埋込金物の他の実施の形態として、前記プレート材の平面視形状が円形または略円形であり、4本の前記定着用棒材が各固着位置を繋いでできる形状が正方形または矩形となるように定着用棒材がプレート材に固着される埋込金物であって、4本の定着用棒材の固着位置でできる正方形または矩形の各辺の各中心からプレート材の端辺までの最短離間長がすべて異なる形態がある。
【0024】
この埋込金物の形態は、プレート材の形状がたとえば円形の場合で、かつ、4本の定着用棒材を使用する場合に関するものである。たとえば正方形配置の4本の定着用棒材の各固着位置でできる矩形の各辺中心と円形のプレート材の端辺との各離間長(各最短離間長)をすべて異なるようにすることで、上記形態と同様に配筋回避可能なプレート材取り付け姿勢のバリエーションを多様にできる。
【0025】
また、上記4本の定着用棒材を使用してなる埋込金物のさらに他の実施の形態として、前記4本の定着用棒材は、2本の定着用棒材に相当する2本の直線部とこれらを繋ぐ繋ぎ部とからなる2つのU型定着部材からなるとともに、該繋ぎ部が前記プレート材に固着されるものであり、前記直線部からプレート材に延ばした仮想直線が該プレート材と交差する位置が、前記定着用棒材の固着位置に相当する形態がある。
【0026】
たとえばU型の細長金物の先端に定着板等を備えたU型金物(またはU型定着部材)をプレート材に固着することで定着用棒材に2本の着用棒材を固着したのと同様のアンカー効果が期待できるとともに、2本を別途固着することに比して固着加工効率が高くなる。そこで、本実施の形態では、2つのU型定着部材を使用してこれらをプレート材に固着することにより、実質的に4本の定着用棒材を取り付けたと同様のアンカー効果を期待するものである。
【0027】
ここで、U型定着部材は、1本の細長金物を折り曲げ加工することにより、2本の直線部とこれらを繋ぐ繋ぎ部とが連続一体に加工されるものであり、この繋ぎ部がプレート材に直接固着されるものである。より具体的には、直線状の繋ぎ部の端部がアール(R)を成して直線部に移行するように曲げ加工される。この場合、U型定着部材の各直線部はプレート材に直接固着されない。そこで、この形態では、該直線部からプレート材に延ばした仮想直線が該プレート材と交差する位置を定着用棒材の固着位置と仮定し、仮定された各固着位置でできる形状の図心位置を特定し、これをプレート材の図心位置と異なるようにするものである。
【0028】
さらに、本発明によるコンクリート建物の構成部材への埋込金物の取り付け方法は、その平面視が所定形状のプレート材と、該プレート材の広幅の一側面に固着された所定数のプレート材定着用棒材と、からなる埋込金物をコンクリート建物を形成する構成部材内の所定位置に取り付ける埋込金物の取り付け方法であって、予めプレート材と定着用棒材が固着されてなる前記埋込金物を、前記構成部材の所定位置において該構成部材内の埋設物と定着用棒材が干渉しないプレート姿勢を該プレートを回転または回動することによって見つけ出し、見つけ出されたプレート姿勢で埋込金物を仮に取り付け、コンクリートを打設することによって構成部材を構築するとともに該構成部材内に埋込金物を取り付けることを特徴とするものである。
【0029】
既述するように、本発明の埋込金物を使用することにより、これをコンクリート建物の構成部材(柱や壁、天井床等)のコンクリート打設前の仮設段階で所定位置(の型枠や配筋等)に仮取り付けする際に、既に設置された配筋等と定着用棒材との干渉を回避できるプレート材姿勢を見つけ出し易くなる。さらに、この回避姿勢の見つけ出し作業は、単にプレート材を把持した作業員が、設置場所でプレート材を回転または回動するだけの極めて簡易な方法で実行されるため、設置手間を要することもなく、作業効率の高い取り付け施工を実現できるものである。埋込金物が仮取り付けされた後に、型枠内にフレッシュコンクリートが打設され、その硬化を待って埋込金物が取り付けられた柱、壁等の構成部材が施工される。
【発明の効果】
【0030】
以上の説明から理解できるように、本発明による埋込金物とその取り付け方法によれば、作業員が取り付け位置にて埋込金物を回転または回動させるだけで、定着用棒材と構成部材内の配筋等が干渉しないプレート材姿勢を見つけ出すことが可能となり、したがって、極めて効率的でかつ取り付け精度の高い埋込金物の取り付け施工を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の埋込金物の一実施の形態の斜視図であり、図2は図1の埋込金物において、プレート材の図心位置と4本の定着用棒材固着位置でできる矩形の図心位置との関係を説明した図である。図3は本発明の埋込金物の他の実施の形態の斜視図であり、図4は図3の埋込金物において、プレート材の図心位置と4本の定着用棒材固着位置でできる矩形の図心位置との関係を説明した図である。図5は本発明の埋込金物のさらに他の実施の形態の斜視図であり、図6は鉄筋コンクリート造の柱の施工段階における、図5の埋込金物の仮取り付け方法を説明した図であり、図7は鉄筋コンクリート造の柱に図5の埋込金物が取り付けられ、これに鋼材が溶着されている状態を説明した図である。なお、プレート材の形状、定着用棒材の本数やプレート材への固着態様(固着位置でできる形状)などは図示する実施の形態に限定されるものではないことは勿論のことである。
【0032】
図1は本発明の埋込金物の一実施の形態を示したものである。この埋込金物10は、SUS製でその平面視が矩形のプレート材1の一側面11に、4本で同様にSUS製の定着用棒材2,…が溶着されて形成されたものである。なお、この定着用棒材2は、丸棒のアンカー筋21とその先端近傍に固着された定着板22とから構成されている。
【0033】
この埋込金物10の一側面11と定着用棒材2,…は、不図示のコンクリート建物の構成部材、たとえば柱や壁、天井床等を構成するコンクリート内に埋設固定され、他側面12は該構成部材の表面に臨み、この他側面12に配管や鋼材等が溶接等されるものである。
【0034】
図2は、埋込金物10において、長短辺長:L1,L2のプレート材1の図心位置:P0と、4本の定着用棒材2,…のプレート材1への各固着位置Q1,Q2,Q3,Q4でできる矩形の図心位置:P1との関係を説明した図である。
【0035】
同図で示すように、各図心位置P0,P1は互いにずらされるように設定されており、さらに、固着位置Q1,Q2,Q3,Q4でできる矩形の各辺とプレート材1の各辺までの4つの離間の離間長は、それぞれt1、t2、t3、t4ですべてが異なるものである。
【0036】
上記する埋込金物10を構成部材に仮に取り付ける際に、図2で示すプレート材姿勢で各定着用棒材2,…が構成部材内の配筋等と干渉するか否かを確認し、仮に干渉する場合には、たとえば、図心位置:P0を固定しておいて、この図心位置周りでプレート材1を90度回動させ、この状態において再度各定着用棒材2,…と配筋等の干渉の有無を確認する。
【0037】
4つの直線状の端辺のいずれかを上辺または下辺とする場合には、プレート材1を90度ずつずらしてその都度干渉の有無を確認できることから、計4度のプレート材1の姿勢バリエーションで干渉のない姿勢を探すことが可能になる。
【0038】
図3は、その外郭形状が円形のプレート材1Aと埋込金物10と同様の配設形態の4本の定着用棒材2,…を有する埋込金物10Aを示している。
【0039】
また、図4は、埋込金物10Aにおいて、プレート材1Aの図心位置:P0’と、4本の定着用棒材2,…の各固着位置Q1,Q2,Q3,Q4でできる矩形の図心位置:P1’との関係を説明した図である。同図で示すように、各図心位置P0’,P1’は互いにずらされるように調整されており、さらに、各固着位置Q1,Q2,Q3,Q4でできる矩形の各辺の中点:Q12、Q23,Q34,Q14からプレート材1Aの外郭辺までの最短離間長:t1’、t2’、t3’、t4’がすべてが異なるものである。
【0040】
この埋込金物10Aでは、図心位置P0’を中心としてプレート材1Aを回動または回転させることにより、プレート材1Aの姿勢バリエーションが極めて多い中で定着用棒材2,…と構成部材内の配筋等との干渉の有無の確認が実行できる。
【0041】
図5は、2つのU型定着部材2A,2Aをプレート材1の一側面11に溶着してなる埋込金物10Bを示している。
【0042】
このU型定着部材2Aは、1本のSUS製の細長部材を折り曲げ加工することにより、2本の直線部23,23とこれらを繋ぐ繋ぎ部24とが連続一体に加工されるものであり、この繋ぎ部24がプレート材1に溶着されるものである。なお、アンカー筋となる直線部23の先端近傍にも定着板22が固着されている。
【0043】
同図において、直線部23はプレート材1に直接固着していない。そこで、この埋込金物10Bにおいては、4本の直線部23,…から仮想直線V1、V2,V3,V4を引き、これらがプレート材1と交差してできる点を埋込金物10でいう固着位置Q1,Q2,Q3,Q4に相当するものとして図心位置を求める。
【0044】
この埋込金物10Bは、2本のU型定着部材2A,2Aの各繋ぎ部24,24を所定の位置に溶着するだけで形成されることから、埋込金物10に比してその製作効率が高くなる。
【0045】
次に、図6に基づいて埋込金物10Bを鉄筋コンクリート造の柱の所定位置に仮に取り付ける方法を概説する。
【0046】
図6では、柱を構成する鉛直方向に延びる主鉄筋S1,…が配筋され、この主鉄筋S1,…を囲繞するフープ筋S2,…が配筋されており、さらに、埋込金物10Bが取り付けられる側の型枠Fが設置された状況が図示されている。
【0047】
型枠Fの表面において埋込金物10Bのたとえば図心位置が取り付けられるべき位置が測量結果に基づいてマーキングされており、不図示の作業員はこの位置に埋込金物10Bの図心位置を設定しながら、埋込金物10Bを回動させ(X方向)、U型定着部材2A,2Aが配筋と干渉しないプレート材姿勢を見つけ出す。
【0048】
見つけ出されたプレート材姿勢で埋込金物10Bが型枠Fに仮に取り付けられる。
【0049】
柱の主鉄筋S1,…周りにすべての型枠が取り付けられ、支保工にて型枠が支持された姿勢で、型枠内にフレッシュコンクリートが打設される。
【0050】
図7は、上記フレッシュコンクリートが硬化して所定の強度発現が成され、型枠を脱型してできた柱Cの表面にプレート材1の他側面が臨んだ状態を示している。
【0051】
このプレート材1に図示のごとく型鋼Mの端部を溶着し、この型鋼Mで不図示の防風壁を支持するものである。
【0052】
埋込金物10,10A,10Bを使用することにより、コンクリート建物を形成する構成部材への取り付けに際し、定着用棒材と構成部材内の配筋等との干渉の有無を容易に確認するとともに迅速に干渉しない姿勢で該埋込金物10,…を構成部材に取り付けることが可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の埋込金物の一実施の形態の斜視図である。
【図2】図1の埋込金物において、プレート材の図心位置と4本の定着用棒材固着位置でできる矩形の図心位置との関係を説明した図である。
【図3】本発明の埋込金物の他の実施の形態の斜視図である。
【図4】図3の埋込金物において、プレート材の図心位置と4本の定着用棒材固着位置でできる矩形の図心位置との関係を説明した図である。
【図5】本発明の埋込金物のさらに他の実施の形態の斜視図である。
【図6】鉄筋コンクリート造の柱の施工段階における、図5の埋込金物の仮取り付け方法を説明した図である。
【図7】鉄筋コンクリート造の柱に図5の埋込金物が取り付けられ、これに鋼材が溶着されている状態を説明した図である。
【符号の説明】
【0055】
1,1A…プレート材、11…一側面、12…他側面、2…定着用棒材、2A…U型定着部材、21…アンカー筋、22…支圧板、23…直線部、24…繋ぎ部、10,10A,10B…埋込金物、Q1,Q2,Q3,Q4…固着位置、V1、V2,V3,V4…仮想直線、P0,P0’…プレート材の図心位置、P1,P1’…定着用棒材の固着位置でできる矩形の図心位置、F…型枠、S1…主筋、S2…フープ筋、C…鉄筋コンクリート造の柱、M…型鋼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート建物を形成する構成部材内の所定位置に埋込まれる埋込金物であって、該埋込金物は、その平面視が所定形状のプレート材と、該プレート材の広幅の一側面に固着された所定数のプレート材定着用棒材と、からなる埋込金物において、
プレート材の前記一側面の図心位置と、所定数の定着用棒材の該プレート材への各固着位置を繋いでできる多角形の図心位置とが、ずらされていることを特徴とする、埋込金物。
【請求項2】
前記プレート材の平面視形状が正方形または矩形であり、4本の前記定着用棒材が各固着位置を繋いでできる形状が正方形または矩形となるように定着用棒材がプレート材に固着される場合において、
プレート材の各辺と、4本の定着用棒材の固着位置でできる正方形または矩形の各辺との間の4つ離間長がすべて異なっていることを特徴とする、請求項1に記載の埋込金物。
【請求項3】
前記プレート材の平面視形状が円形または略円形であり、4本の前記定着用棒材が各固着位置を繋いでできる形状が正方形または矩形となるように定着用棒材がプレート材に固着される場合において、
4本の定着用棒材の固着位置でできる正方形または矩形の各辺の各中心からプレート材の端辺までの最短離間長がすべて異なっていることを特徴とする、請求項1に記載の埋込金物。
【請求項4】
前記4本の定着用棒材は、2本の定着用棒材に相当する2本の直線部とこれらを繋ぐ繋ぎ部とからなる2つのU型定着部材からなるとともに、該繋ぎ部が前記プレート材に固着されるものであり、
前記直線部からプレート材に延ばした仮想直線が該プレート材と交差する位置が、前記定着用棒材の固着位置に相当するものである、請求項2または3に記載の埋込金物。
【請求項5】
その平面視が所定形状のプレート材と、該プレート材の広幅の一側面に固着された所定数のプレート材定着用棒材と、からなる埋込金物をコンクリート建物を形成する構成部材内の所定位置に取り付ける埋込金物の取り付け方法であって、
予めプレート材と定着用棒材が固着されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の埋込金物を、前記構成部材の所定位置において該構成部材内の埋設物と定着用棒材が干渉しないプレート姿勢を該プレートを回転または回動することによって見つけ出し、見つけ出されたプレート姿勢で埋込金物を仮に取り付け、コンクリートを打設することによって構成部材を構築するとともに該構成部材内に埋込金物を取り付けることを特徴とする、埋込金物の取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−102909(P2009−102909A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276633(P2007−276633)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】