説明

培土器

【課題】 畝の成形性能に優れた培土器を提供する。
【解決手段】 耕起跡を移動する成形板22の下端22aおよび側端辺22bとで畝の底面および側面を成形するよう構成するとともに、成形板22の下端辺22aに、畝底の横端部を押圧成形する舌片23を後方に弾性屈曲可能に備えてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕起跡を移動して畝の底面と側面とを成形する培土器に関する。
【背景技術】
【0002】
畝立て用の培土器としては、歩行操縦される走行機体の後部ヒッチに連結して使用するよう構成したものが知られている(例えば、特許文献1の図2の14参照)。
【特許文献1】特開2003−52202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の培土器では、成形板の下端辺で畝の底面を成形するとともに、成形板の側端辺で畝の側面を成形するのであるが、土の耕起具合によっては成形板の下及び側端辺による押圧が不十分になって、仕上がりが低下したり、崩れやすい畝になるおそれがあった。特に、畝の底面の横端部が弱いと、これに連なる畝の側面の下端部から崩れが発生しやすくなる。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、畝の側面の崩れが発生しにくい成形性能に優れた培土器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、耕起跡を移動する成形板の下端辺および側端辺とで畝の底面および側面を成形するよう構成するとともに、成形板の下端辺に、畝の底面の横端部を押圧成形する舌片を後方に弾性屈曲可能に備えてあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、成形板の下端辺から突出された舌片は畝の底面を押圧する反力によって後方に屈曲され、その弾性復元力によって畝の底面の横端部を押し固めるとともに、耕起の具合や前後姿勢の変化によって畝の底面の高さが多少変動しても、その変動に応じて成形板の舌片の屈曲具合が追従変化し、適度に押し固められた畝の底面を形成することができる。
【0007】
従って、第1の発明によると、畝の側面の下端部に連なる底面の横端部をしっかり押し固めて、畝の側面の崩れが発生しにくい成形性能に優れた培土器を構成することができる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、
成形板の側端辺を後方に弾性屈曲可能に構成してあるものである。
【0009】
上記構成によると、成形板の側端辺が畝の側面を押圧する反力によって後方に屈曲され、その弾性復元力によって畝の側面を押し固めるとともに、耕起の具合によって畝間の横幅が多少変動しても、その変動に応じて成形板の側端辺の屈曲具合が追従変化し、適度に押し固められた崩れにくい畝の側面を形成することができる。
【0010】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
剛性材からなる支持枠に止着したゴム板で成形板を構成し、舌片、あるいは、舌片と側端辺を成形板に一体形成してあるものである。
【0011】
上記構成によると、成形板の下端辺に別部材の舌片、あるいは、成形板の下及び側端辺に別部材の舌片と側端辺とを弾性屈曲可能に取り付ける構成に比べて、構造簡単かつ安価に製作することができる。
【0012】
第4の発明は、耕起跡を移動する成形板の下端辺および側端辺とで畝の底面および側面を成形するよう構成するとともに、成形板の下端辺に、畝の底面の横端部を押圧成形する舌片を後方に屈曲して備えてあることを特徴とする。
【0013】
上記構成によると、成形板の下端辺から屈曲突出された舌片は畝の底面の横端部をその下面で広く押圧して押し固めることになり、畝の側面の下端部から崩れが発生しにくい畝を成形するのに有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、歩行型管理機の全体側面が、図2に、その平面がそれぞれ示されている。この歩行型管理機の走行機体1は、エンジン2を上端に直結した伝動ケース3から後方に操縦ハンドル4を延出するとともに、前記伝動ケース3の下部左右に回転軸5を横架支承し、伝動ケース3の上部左右にフェンダ6を張り出し配備して構成されている。
【0015】
前記エンジン2は縦軸型の空冷式ガソリンエンジンが使用されており、エンジン2の上部に備えたリコイルスタータ7を用いて手動でエンジン始動を行うよう構成されている。前記リコイルスタータ7から後方にリコイルロープ8が導出されるとともに、リコイルロープ8の後端に備えた引き手8aが、操縦ハンドル4に備えられたロープフック9に挿通支持されている。
【0016】
操縦ハンドル4は、丸パイプ材からなるハンドル基部4aと、その後端に横向きの支点p周りに回動可能に枢支連結された左右二股状の操作ハンドル部4bとから構成されており、支点pに備えたノブ付きボルト10を緩めて操作ハンドル部4bを上下に回動し、任意の回動位置でノブ付きボルト10を締め込むことで、操作ハンドル部4bの高さを調節することができる。図3に示すように、操作ハンドル部4bを前方に大きく回動することで、エンジン2に跨るように折り込み格納可能となっている。
【0017】
前記ロープフック9は丸棒材をループ状に屈曲して操作ハンドル部4bの横ステー部4cに固着されており、このロープフック9の遊端部が横向きに延出されて取っ手9aが形成されている。図3に示すように、操作ハンドル部4bを折込み格納位置に固定した状態においては、前記取っ手9aがエンジン2の上部後方に位置することになり、伝動ケース3の上部前端に備えたアーチ形のプロテクタ11と後方の前記取っ手9aを把持して、走行機体1を持ち上げることができるようになっている。
【0018】
前記伝動ケース3の後部には板金構造の後部ヒッチ12が備えられており、この後部ヒッチ12に挿通したハンドル基部4aの前端部が伝動ケース3の下部後方箇所に連結されることで、ハンドル基部4aが所定の後上がり傾斜姿勢で強固に固定支持されている。
【0019】
前記後部ヒッチ12の後端には縦向きのボス部12aが備えられており、このボス部12aに、丸棒材をくの字形に屈曲した抵抗棒13が挿通されて貫通ピン14で位置固定されている。抵抗棒13には上下複数のピン挿通孔15が形成されており、このピン挿通孔15を選択して貫通ピン14を挿通することで、抵抗棒13の高さを複数段階に調節することが可能となっている。
【0020】
図1は、前進走行によって走行機体1の通過跡左右に畝を形成してゆく外盛り式の畝立てを行う仕様とした歩行型管理機が示されており、伝動ケース3の下部に支承された左右の回転軸5には耕起ロータ16がそれぞれ装着されている。耕起ロータ16をダウンカット方向(図1及び図3の矢印参照)に高速で回転駆動して耕起しながら耕起ロータ16の回転によって前進し、走行機体1の後部において圃場に突入された抵抗棒13による前進抵抗を加減することで、所望の速度で前進しながら耕起を行うようになっている。
【0021】
前記耕起ロータ16は、回転軸5に連結される爪軸17に耕起爪18を植設して構成されており、この例では、複数種の耕起爪18を所定の配列に配置して、所定の横幅に亘って耕起した土を左右に跳ね上げる外盛り仕様に構成されたものが用いられる。
【0022】
前記後部ヒッチ12の後寄り箇所には、抵抗棒13の直前方に近接するように培土器20が横向きの支点q周りに自由回動可能に連結支持されている。図4,図5に示すように、この培土器20は、金属製の支持枠21にゴム板からなる成形板22をボルト締め連結して構成されたものであり、その詳細は以下の通りである。
【0023】
前記支持枠21は、平鋼材からなる左右に長い上部横枠部21aと、左右に短い下部横枠部21bと、これらの左右中心部をつなぐ縦枠部21cとを備えており、縦枠部21cの上端から上方に向けて二股状に折り曲げ延出された連結枠部21dが、後部ヒッチ12に回動自在にピン連結されている。縦枠部21cの上端に連設した屈曲部21eが左右の前連結枠部21dに亘って溶接連結されており、図5中の仮想線に示すように、前記屈曲部21eが後部ヒッチ12の下面に接当することで、培土器20の前方への揺動限界が規制され、培土器20が耕起ロータ16に接触することが回避されている。
【0024】
前記成形板22は、適度の硬度と弾性を備えた厚さ数mmのゴム板を下窄まりの逆台形状に切り出したものであり、上記支持枠21の前面上下に複数個所でボルト締め連結される。この成形板22は、支持枠21の横外端よりもはみ出す横幅と、支持枠21の上下高さと同じ高さの上下高さを備えるとともに、成形板22の下端辺22aにおける左右には下部横枠部21bよりも下方に突出する舌片23が一体形成されている。
【0025】
上記構成によると、耕起ロータ16をダウンカット方向(図1及び図3の矢印参照)に高速で回転駆動して耕起しながら耕起ロータ16の回転によって前進し、圃場に突入された抵抗棒13による前進抵抗を加減することで、所望の速度で前進しながら耕起および左右への土上げを行いながら、耕起されて柔らかくなった土を逆台形状の培土器20で押圧移動させ、成形板22の下端辺22aで畝の底面Bを押圧成形するとともに、成形板22の傾斜する側端辺22bで左右の畝の側面Sを押圧成形する。
【0026】
この場合、図5に示すように、培土器20は後向きに働く負荷によって支点q周りに後方に揺動され、支持枠21の下部が抵抗棒13に受け止められることで、培土器20が少し前倒れ傾斜した所定の畝成形作用姿勢に維持される。
【0027】
図6,図7に示すように、成形板22の下端辺22aから突出された舌片23は畝の底面Bを押圧する反力によって後方に屈曲され、その弾性復元力によって畝の底面Bの左右端を押し固めるとともに、耕起の具合や走行機体1の前後姿勢の変化によって畝の底面Bの高さが多少変動しても、その変動に応じて舌片23の屈曲具合が追従変化し、適度に押し固められた畝の底面Bを形成することができる。
【0028】
成形板22の側端辺22bも畝の側面Sを押圧する反力によって後方に屈曲され、その弾性復元力によって畝の側面Sを押し固めるとともに、耕起の具合によって畝間の横幅が多少変動しても、その変動に応じて側端辺22bの屈曲具合が追従変化し、適度に押し固められた畝の側面Sを形成することができる。
【0029】
なお、図3に示すように、取り外した培土器22を大きく後方に振り上げた姿勢で付け換え連結するとともに、図5中の仮想線で示すように、支持枠21の屈曲部21eを後部ヒッチ12の上面に係止することで、培土器20を抵抗棒13より上方の格納姿勢に保持することができ、培土器20を走行機体1に携帯装備した状態のままで、耕起ロータ16と抵抗棒13を用いての耕起作業を行うことができる。
【0030】
〔他の実施例〕
本発明は、以下のような形態で実施することも可能である。
【0031】
(1)前記培土器20の成形板22を金属板で構成し、この成形板22の下端部にゴム板や薄いバネ板で構成した別部材の舌片23を取り付けるとともに、成形板22の左右端にゴム板や薄いバネ板で構成した別部材のヒレ状部材を取り付けて弾性屈曲可能な側端辺22bを構成することもできる。
【0032】
(2)前記培土器20の成形板22を金属板で構成し、この成形板22の下端辺に金属板からなる舌片23を後方揺動可能に枢支連結するとともに、枢支部に備えたねじりバネなどによって下方に延出された姿勢に揺動付勢し、また、成形板22の左右端に金属板で構成した別部材のヒレ状部材を後方揺動可能に取り付けるとともに、枢支部に備えたねじりバネなどによって横外方に延出された姿勢に揺動付勢して弾性屈曲可能な側端辺22bを構成することもできる。
【0033】
(3)上記実施例では、培土器20で左右の畝の側面Sと畝の底面Bとを形成する外盛り仕様での畝を成形する場合を例示したが、培土器20の通過跡に畝を盛り上げ形成してゆく内盛り仕様で実施することもできる。
【0034】
(4)図8および図9に示すように、培土器20の成形板22を金属板あるいは硬質の樹脂板で構成し、この成形板22における下端辺22aの左右に、予め後方に屈曲された舌片23を突設し、畝の底面Bの横端部を舌片23の下面で広く押圧して押し固める形態で実施することも、畝の側面Sが下端部から崩れにくくする上で有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】歩行型管理機の側面図
【図2】歩行型管理機の平面図
【図3】操縦ハンドルおよび培土器を格納した状態の側面図
【図4】培土器の背面図
【図5】畝成形作用姿勢にある培土器を示す縦断側面図
【図6】畝成形作用姿勢にある培土器を示す背面図
【図7】畝成形作用姿勢にある培土器を示す平面図
【図8】別実施例の培土器を示す背面図
【図9】別実施例の培土器を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0036】
21 支持枠
22 成形板
22a 下端辺
22b 側端辺
23 舌片
B 畝の底面
S 畝の側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕起跡を移動する成形板の下端辺および側端辺とで畝の底面および側面を成形するよう構成するとともに、前記成形板の下端辺に、畝の底面の横端部を押圧成形する舌片を後方に弾性屈曲可能に備えてあることを特徴とする培土器。
【請求項2】
前記成形板の側端辺を後方に弾性屈曲可能に構成してある請求項1記載の培土器。
【請求項3】
剛性材からなる支持枠に止着したゴム板で前記成形板を構成し、前記舌片、あるいは、前記舌片と前記側端辺を成形板に一体形成してある請求項1または2記載の培土器。
【請求項4】
耕起跡を移動する成形板の下端辺および側端辺とで畝の底面および側面を成形するよう構成するとともに、前記成形板の下端辺に、畝の底面の横端部を押圧成形する舌片を後方に屈曲して備えてあることを特徴とする培土器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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