説明

基板の製造方法及び回路基板の製造方法

【課題】本発明は絶縁接着層中にマイクロボイドが残存しない、高品質且つ高放熱である基板及び金属ベース回路基板を効率良く生産する製造方法を提供する。
【解決の手段】金属ベース材、絶縁接着層、導体箔よりなる基板の製造方法であり、絶縁接着剤の各組成物を均一に分散する工程、ロール状である導体箔を連続的に繰り出しながら、前記導体箔上に絶縁接着層を連続成形する工程、連続的に供給される導体箔上の絶縁接着層を加熱することで、Bステージ状態まで硬化させる工程を有することを特徴とする。更に、絶縁接着剤が少なくともエポキシ樹脂及び無機フィラーを主成分とし、Bステージ状態の絶縁接着剤の反応開始温度が60℃以上であり、Cステージ状態の絶縁接着層の熱伝導率が1.0W/(m・K)以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED等の発熱電子部品実装用の基板の製造方法及び回路基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
品質が良く安価な基板及び金属ベース回路基板を効率良く製造する製造方法が求められており、例えば、金属ベースに絶縁層組成物を塗布し、金属ベース回路基板を製造する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、金属ベースに絶縁層を塗布する方法であるため、金属ベースが厚い場合はロールでの連続塗布が難しく、生産性が向上しないという問題があった。
【0003】
また、金属基板上に接着シートと金属箔を配置し、一体化することで金属ベース回路基板を製造する方法が提案されている(特許文献2)。しかし、金属基板、接着シート、金属箔が何れも枚葉状のシートでの取り扱いであるため、生産性の面から不利であった。
【0004】
また、絶縁接着剤の放熱性を向上させるために無機フィラーを多量に添加すると、絶縁接着剤の硬化後にボイドが残存し、耐電圧及び放熱性が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−268405号公報
【特許文献2】特開2009−49062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、絶縁接着層中にボイドが残存しない、高品質且つ高放熱である発熱電子部品実装用の基板の製造方法及び回路基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
金属ベース材、絶縁接着層及び導体箔を有する基板の製造方法であり、
湿潤分散剤を有する絶縁接着剤の各組成物を均一に分散する分散工程と、
ロール状である導体箔を繰り出しながら、前記導体箔上に絶縁接着層を積層する積層工程と、
導体箔上の絶縁接着層を加熱することで、Bステージ状態まで硬化させる硬化1工程と、
導体箔とBステージ状態の絶縁接着層との積層体をシート状に裁断するシート状裁断工程と、
硬化工程1後又は裁断工程後の絶縁接着層に金属ベース材を積層する金属ベース材積層工程と、
積層体を温度範囲70℃以上260℃以下、圧力範囲0.1MPa以上10MPa以下の条件で加熱加圧することで、Bステージ状態の絶縁接着層をCステージ状態にまで硬化させる硬化2工程と
を有する基板の製造方法である。
【0008】
絶縁接着剤は、エポキシ樹脂及び無機フィラーであることが好ましい。
【0009】
硬化1工程でのBステージ状態の絶縁接着剤の反応開始温度は、60℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0010】
硬化2工程でのCステージ状態の絶縁接着層の熱伝導率は、1.0W/(m・K)以上15.0W/(m・K)以下であることが好ましい。
【0011】
他の発明は、上述の基板の製造方法によって製造された基板の導体箔に、導体パターンを形成するパターン形成方法と、パターン上に被膜を形成する被膜形成方法を有する回路基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、絶縁接着層中にボイドが残存しない、高品質且つ高放熱である基板及び金属ベース回路基板を効率良く生産する製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る基板の製造方法の積層工程、硬化1工程、シート状裁断工程、金属ベース材積層工程を示す模式図。
【図2】本発明に係る基板の製造方法の他の実施例を示す模式図。
【図3】本発明に係る基板の製造方法の硬化2工程を示す模式図。
【図4】本発明に係る基板の製造方法によって製造された基板の断面図。
【図5】本発明に係る回路基板の製造方法によって製造された回路基板の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1及至図5に基づいて本発明を詳細に解説する。
本発明の基板は、図1に示すように
金属ベース材6、絶縁接着層及び導体箔1を有する基板の製造方法であり、
湿潤分散剤を有する絶縁接着剤2の各組成物を均一に分散する分散工程21と、
ロール状である導体箔を繰り出しながら、前記導体箔1の上に絶縁接着層を積層する積層工程22と、
導体箔1上の絶縁接着層を加熱することで、Bステージ状態まで硬化させる硬化1工程23と、
導体箔1とBステージ状態の絶縁接着層との積層体7をシート状に裁断するシート状裁断工程24と、
硬化工程23後又は裁断工程24後の絶縁接着層に金属ベース材を積層する金属ベース材積層工程25と、
積層体7を温度範囲70℃以上260℃以下、圧力範囲0.1MPa以上10MPa以下の条件で加熱加圧することで、Bステージ状態の絶縁接着層aをCステージ状態の絶縁接着層bにまで硬化させる硬化2工程26と
を有する基板の製造方法である。
【0015】
<分散工程>
分散工程は、湿潤分散剤を有する絶縁接着剤2の各組成物を均一に分散する工程であって、絶縁接着剤2を分散媒と分散層に分けて考えると、分散媒中に、分散相を均一に分散させる工程であって、例えば剪断力を主とする機械的な力によって、分散相を解砕しつつ分散媒中に練り込む過程と分散相表面を分散媒が濡らす過程である。分散工程は、分散相を分散媒が濡らす過程と、分散媒中の分散相が再凝集及び沈降せずに安定化する過程、具体的にはフィラーが再凝集、沈降しない過程を有するのが好ましい。
【0016】
湿潤分散剤
分散工程には、湿潤分散剤を加えることで分散相表面へ濡れと安定性を向上させ、ボイドの低減を図ることができる。湿潤分散剤としては、分散相表面に配向し、分散媒中での十分な濡れ及び安定化を得ることができるものであり、具体的には、吸着基としてアミノ基、アマイド基、アミノアマイド基、リン酸、カルボキシル基等の酸基や塩基を持つ共重合体化合物がある。本分散工程には、表面調整剤、消泡剤、シランカップリング剤等と併用することが好ましい。
【0017】
分散媒
分散媒は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒、溶媒で構成されるのが好ましく、分散層は無機フィラーで構成されるのが好ましい。
【0018】
エポキシ樹脂
分散媒におけるエポキシ樹脂は、発熱電子部品実装用のプリント配線板として必要な電気特性、導体箔や金属ベース材との密着性、耐熱性等を与えるものであり、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂(クレゾールのボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等)、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂がある。この中でも、密着性、耐熱性、電気特性、柔軟性、コストを含めて特性のバランスが取れているビスフェノールA又はF型エポキシ樹脂が好ましく、これらの樹脂のうちエポキシ当量が400以下であることがさらに好ましい。
【0019】
エポキシ樹脂には、上述のエポキシ樹脂に加えてBステージ状態の絶縁接着層の保存安定性及び加熱加圧工程での成形性を向上するために、高分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を添加しても良い。この場合のエポキシ当量、800以上であることが好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂は単体で硬化触媒のみを用いて硬化反応させることができるし、さらに硬化剤を加えてもよい。硬化剤を加える場合は、エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対して硬化剤の活性水素当量(または酸無水物当量)が0.01〜3.0になるように配合することが望ましい。
【0021】
硬化剤
分散媒における硬化剤は、エポキシ基と反応する活性水素化合物(アミノ基、カルボキシル基、水酸基、チオール基等を有する化合物)や酸無水物基を有する化合物であり、エポキシ基との反応開始温度の高い水酸基、カルボキシル基、酸無水物の一種類を有する化合物又はそれらを両方或いは全部有する物質を含むものが好ましい。
【0022】
硬化剤は、Bステージ状態の絶縁接着層にハンドリング性を付与させる場合、硬化剤の主鎖中に柔軟性に優れる脂肪族環、脂肪族鎖、ポリアルキレングリコール等を有するものが好ましい。具体的には、3−ドデシル無水コハク酸、脂肪族二塩基酸ポリ無水物があげられる。
【0023】
硬化触媒
分散媒における硬化触媒は、エポキシ基の自己重合反応、エポキシ基と活性水素化合物の付加反応、エポキシ基と酸無水物基との共重縮合反応を促進するものであり、反応開始温度を60℃に制御できるものが好ましい。具体的には3級アミン、イミダゾール類、オニウム化合物のボロン塩がある。
【0024】
溶剤
分散媒における溶剤は、エポキシ樹脂及び硬化剤と相溶するものであり、具体的にはエチレングリコールモノブチルエーテルがある。エポキシ樹脂、硬化剤、無機フィラーに対し10重量部以下であることが好ましい。あまりに多いと、積層工程での減圧下でのマイクロボイドの除去が困難になる傾向にある。
【0025】
分散相
分散相は、電気絶縁性で熱伝導性の良好な無機フィラーが好ましく、無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化ベリリウムがある。
【0026】
無機フィラーの含有率としては、絶縁層の総体積に対して無機フィラーが35体積%以上80体積%以下であること望ましい。35体積%以下であると必要な熱伝導率を得ることが困難であり、80体積%を超えると高粘度になり絶縁接着層形成時にマイクロボイドが発生し易くなり、耐電圧、密着性に悪影響を及ぼす可能性がある。また、無機フィラーによる増粘をさけ、マイクロボイドの発生を抑制するため2種以上の粒径の異なる無機フィラーを混合することが更に望ましい。
【0027】
分散工程で用いる分散装置としては、分散相が解砕され分散媒中に練り込まれるのに十分な剪断力を与えるものであり、具体的には、ビーズミル、ニーダー、三本ロール、単軸混練押し出し機、二軸混練押し出し機、遊星式撹拌機の装置がある。
【0028】
分散工程後に、真空、超音波、遠心力、振動、加熱等の手法を単一又は複数組み合わせて、更にボイドを低減することが好ましい。
【0029】
<積層工程>
この工程はロール状の導体箔1を繰り出しながら、導体箔上に絶縁接着層を積層する工程であり、絶縁接着層連続成形部8の方式としては、ダイコーター、コンマコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビヤコーター、同時ダイコーター、カーテンコーター、ドクターブレードコーター、スプレーコーター、スクリーン印刷等の方法がある。
【0030】
導体箔の絶縁接着層積層面への絶縁接着剤2の濡れ性を向上させることで、絶縁接着層積層時の絶縁接着層/導体箔界面でのボイドの巻き込みを低減することが好ましい。その方法は次の2つの方法が有り、単独で行っても良いし、組み合わせても良い。
1.絶縁接着層を成形する前に、ロール状の導体箔1の塗工面にプラズマ処理、コロナ処理、エキシマ光洗浄処理を連続的に行うことで、絶縁接着剤2の導体箔塗工面への濡れ性を向上させる方法。
2.絶縁接着層連続成形部8を加熱することで、絶縁接着剤2を低粘度化し、導体箔の絶縁接着層連続成形面への濡れ性を向上させる方法。
【0031】
<硬化1工程>
硬化1工程23は、図1及び図2に示すように連続的に供給される導体箔上の絶縁接着層を、加熱することでBステージ状態まで硬化させる工程であり、絶縁接着層を加熱する加熱炉8としては、熱風式、遠赤外線式、またはそれらの併用式である。
【0032】
<シート状裁断工程>
シート状裁断工程は、導体箔とBステージ状態の絶縁接着層との複合体をシート状に加工する工程である。導体箔とBステージ状態の絶縁接着層との複合体5をシート状に裁断する裁断部11の方式としては、回転鋸刃、ナイフ刃、シャー刃がある。また、Bステージ状態の絶縁接着層上にポリエチレンテレフタラート,ポリエチレン等の表面保護フィルムをラミネートしても良い。
【0033】
<金属ベース材積層工程>
金属ベース材積層工程25は、図1及び図2に示すようにシート状裁断肯定24の後又は前に、絶縁接着層上に金属ベース材を積層し、積層体とする工程である。金属ベース材積層工程25は、生産性の向上の観点から裁断前に行うことが望ましい(図2)。
【0034】
<硬化2工程>
硬化2工程は、図3に示すように積層体を加熱加圧することで、Bステージ状態の絶縁接着層をCステージ状態にまで硬化させる工程であり、積層体7を加熱加圧板13a、bにて加熱加圧することが好ましい。更に硬化工程における雰囲気を30mmHg以下に減圧することがさらに好ましい。積層体7を同時に加熱加圧することで、溶融したBステージ状態の絶縁接着剤が金属ベース材6表面を十分に濡らすことができる。また、積層体7を30mmHg以下の減圧雰囲気下に置くことで、Bステージ状態の絶縁接着層表面と金属ベース材4界面の空気を脱気することができる。その結果、絶縁接着層の硬化反応終了後、Cステージ状態の絶縁接着層15と金属ベース材6界面にボイドが無く、密着性が良好な基板を得ることができる。
【0035】
無機フィラーの熱伝導率、耐電圧
Cステージ状態の絶縁接着層2bの伝熱は1.0W/(m・K)以上であることが好ましく、2.0W/(m・K)であることがより好ましい。さらにCステージ状態の絶縁接着層2bの耐電圧は、1.0kV以上であることが好ましく、より好ましくは2.0kV以上である。
【0036】
絶縁接着層の厚み
Cステージ状態の絶縁接着層2bの厚みは、耐電圧及び放熱性特性の観点から、40μm〜250μmであることが好ましい。40μm以下であると所望の耐電圧値を得ることが困難となり、250μm以上であると熱抵抗が大きくなり、放熱特性が低下する。
【0037】
他の発明である回路基板の製造方法は、上記の基板の製造方法によって製造された基板の導体箔に、導体パターンを形成するパターン形成方法と、パターン上に被膜を形成する被膜形成方法を有する回路基板の製造方法によって、金属ベース回路基板が製造される。
【0038】
<パターン形成方法>
パターン形成方法は、基板上の導体箔上にスクリーン印刷法乃至は写真現像法でエッチングレジストを形成し、導体箔表面をマスクした後に、導体箔の一部を塩化第二鉄エッチング液、塩化第二銅エッチング、過酸化水素/硫酸エッチング液、アルカリエッチャント等で腐食溶解し、エッチングレジストを剥離して、導体パターンを形成する工程である。
【0039】
<被膜形成方法>
被膜形成方法は、図は省略したが、絶縁接着層及び導体箔上1に図5に示す有機絶縁被膜19を所望の電子部品接続用の開口部を持つように形成する工程であって、スクリーン印刷法又は写真現像法で作製することができる。
【0040】
導体箔の材質
図1乃至4における導体箔1を構成する金属は、アルミニウム、鉄、銅、ステンレス及びこれらの合金やクラッド箔である。電気伝導度、放熱性の面から銅が好ましい。また、絶縁接着層との密着性を向上させるために、絶縁接着層と接着面に、脱脂処理、サンドブラスト、エッチング、各種メッキ処理、カップリング剤等のプライマー処理等の表面処理を行うことが望ましい。
【0041】
導体箔 表面粗さ
導体箔1の絶縁接着層との接着面の表面粗さは、十点平均粗さ(Rz)で0.1μm〜15μmが好ましい。あまりに粗いと絶縁接着層と十分な密着性を確保することが困難であり、あまりに密であると絶縁接着層界面でマイクボイドが発生し易くなり、耐電圧が低下する可能性がある。
【0042】
導体箔の厚み
導体箔1の厚さは、金属ベース回路基板17に対する要求特性により適宜変化するが、0.018mm〜0.5mmが好ましく、0.035mm〜0.14mmが特に好ましい。あまりに薄いと製造工程上のハンドリング時に発生する皺や折れに起因する不良が発生する。あまりに厚いと生産性が悪く。
【0043】
金属ベース材
金属ベース材6を構成する金属は、アルミニウム、鉄、銅、ステンレス及びこれらの合金が好ましく、放熱性、価格、軽量性、加工性の面でバランスが取れているという点でアルミニウムが好ましい。また、絶縁接着層との密着性を向上させるために、絶縁接着層と接着面に、アルマイト処理、脱脂処理、サンドブラスト、エッチング、各種メッキ処理、カップリング剤等のプライマー処理等の表面処理を行うことが好ましい。金属ベース材4の厚さは、金属ベース回路用基板15に対する要求特性により適宜変化するが、0.15mm以上であることが好ましく、0.2mm以上が特に好ましい。あまりに薄いと製造工程上のハンドリング時に発生する中間材料の皺や折れを生じやすくなり、あまりに厚いと必要以上に重量が増えるためである。
【0044】
金属ベース材の表面粗さ
金属ベース材6の絶縁接着層との接着面の表面粗さは、十点平均粗さ(Rz)で0.1μm〜15μmが好ましい。あまりに薄いと絶縁接着層と十分な密着性が低下し、あまりに厚いと15μmであると絶縁接着層界面でマイクボイドが発生し易くなり、耐電圧が低下する可能性がある。
【0045】
有機絶縁被膜
金属ベース回路基板17の有機絶縁被膜19には、電子部品接続用の開口部を持つもつことが好ましい。有機絶縁被膜は部品実装時の半田からの基板表面の保護等金属ベース回路基板の要求を満たすものであれば特に制限無く使用できる。LED等発光部品の輝度向上の為には、酸化チタンや硫酸バリウム等の白色顔料を添加することができし、放熱性を向上させるためには、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム等の熱伝導率に優れた無機フィラーを添加しても良い。
【0046】
硬化率
硬化率とは、未反応の絶縁接着剤が加熱硬化する時の発熱量を100に対する加熱処理後の絶縁接着剤が加熱硬化する時の発熱量の割合である。なお発熱量はDSC(Differential scanning calorimetry=示差走査熱量測定)によって測定した。
【0047】
Bステージ状態
Bステージ状態とは、加熱処理によって進行させた、絶縁接着剤中のエポキシ樹脂と硬化剤及び硬化触媒の反応を途中で停止させた半硬化状態である。具体的には、常温(25℃)で固体状態であり、高温(60℃以上)で加熱すると再溶融する状態である。定量的には、硬化率の項で記述した硬化率が5〜80%の状態である。また、Bステージ状態の反応率を調整することで、製造時の生産性を改善することができる。具体的には、硬化反応率を50〜70%にすることで、タックフリーなBステージ状態の絶縁接着層表面を得ることができる。タックフリーであれば、保護フィルムを使用しなくても良く作業、コスト面から望ましい。
【0048】
Cステージ状態
Cステージ状態とは絶縁接着剤中のエポキシ樹脂と硬化剤及び硬化触媒の反応がほぼ終了した、不溶、不融の状態である。具体的には、DSCにて加熱硬化した場合に、発熱がほとんど観察できない場合であり、硬化率の項で記述した硬化率が80%の以上状態である。
【0049】
反応開始温度
反応開始温度とは、絶縁接着剤をDSCにて加熱硬化した場合に得られる、発熱曲線において、ベースラインと曲線の立ち上がりから引いた外挿線の交点から求めた温度である。
【0050】
反応開始温度
Bステージ状態の絶縁接着剤の反応開始温度は60℃以上であることが望ましい、反応開始温度が60℃以下であると、作業環境によっては、金属ベース材積層〜硬化2工程間で硬化反応が進行し、硬化2工程において、溶融したBステージ状態の絶縁接着剤が金属ベース材4表面を十分に濡らすことができなくなる。そのため、硬化反応終了後にCステージ状態の絶縁接着層と金属ベース材4界面にボイドや剥離が発生し、耐電圧特性や密着性が低下する。
【実施例】
【0051】
本発明は、金属ベース材、絶縁接着層及び導体箔を有する基板の製造方法であり、
湿潤分散剤を有する絶縁接着剤の各組成物を均一に分散する分散工程と、
ロール状である導体箔を繰り出しながら、前記導体箔上に絶縁接着層を積層する積層工程と、
導体箔上の絶縁接着層を加熱することで、Bステージ状態まで硬化させる硬化1工程と、
導体箔とBステージ状態の絶縁接着層との積層体をシート状に裁断するシート状裁断工程と、
硬化工程後又は裁断工程後の絶縁接着層に金属ベース材を積層する金属ベース材積層工程と、
積層体を温度範囲70℃以上260℃以下、圧力範囲0.1MPa以上10MPa以下の条件で加熱加圧することで、Bステージ状態の絶縁接着層をCステージ状態にまで硬化させる硬化2工程と
を有する基板の製造方法である。
次に、実施例により本発明の効果を具体的に説明する。
【0052】
以下の実施例では、基板及び金属ベース回路基板を作製し、評価を実施した。
【0053】
評価方法を示す。
<耐電圧、銅箔引き剥がし強さ>
耐電圧:基板の導体箔/金属ベース材間の印可開始電圧を0.50kVとし、20秒ごとに0.20kVづつ昇圧した場合に、Cステージ状態の絶縁接着層が絶縁破壊しない最大の電圧。
銅箔引き剥がし強さ:基板の幅10mmの導体箔を50mm/分で50mm剥がした時の荷重の最低値。
<熱伝導率>
Cステージ状態の絶縁接着層の熱伝導率は、基板から金属ベース材と導体箔を腐食溶解によって除去してCステージ状態の絶縁接着層を取り出し、キセノンフラッシュ法(NETZSCH社製LFA 447 Nanoflash)法にて評価した。
<空隙率>
空隙率とは以下の評価方法で算出する。基板から金属ベース材と導体箔を腐食溶解によって除去してCステージ状態の絶縁接着層を取り出す。その後、1cm角のCステージ状態の絶縁接着層表面を光学顕微鏡(100倍)で表面観察を行い、ボイドの数と直径を観察し、下記式より算出する。
空隙率(%)=(ボイドの体積/ Cステージ状態の絶縁接着層)×100
<最高温度>
金属ベース回路基板にLEDを実装し、電圧を印可した場合のLED又は基板の最高温度。温度は赤外線サーモグラフィ(山武商会 FLIR SC600)にて測定した。
【0054】
(実施例1)
以下、本発明に係る実施例と比較例を示し、表1を具体的に説明する。
【表1】


Aステージ状態の絶縁接着剤原料として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製EPICLON−828)に対して、硬化剤としてフェノールノボラック(明和化成社製HF−4M)を等量比0.9になるように加えて、均粒子径が1.2μmの破砕状粗粒子の酸化珪素(龍森社製A−1)と平均粒子径が10μmである破砕状粗粒子の酸化珪素(林化成社製SQ−10)を合わせて絶縁接着剤中59体積%(粗粒子と微粒子は質量比が9:1)となるように配合し、エポキシ樹脂と硬化剤と無機フィラーの合計100重量部に対して、イミダゾール系の硬化触媒を0.1重量部(四国化成社製 2PZ)、湿潤分散剤を0.05重量部(楠本化成社製ディスパロン1850)、溶剤としてエチレングリコールモノブチルエーテルを7重量部(三協化学社製ブチルセロソルブ)、シランカップリング剤として3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラを2重量部(東レ・ダウコーニング社製Z−6020)加えた。
【0055】
ロール状の導体箔14として、幅500mm/厚さ70μmの銅箔を採用し、連続的に繰り出しながら、銅箔上にAステージ状態の絶縁接着剤2をドクターブレードコーターにて幅480mm/厚み100μmに連続成形しながら、加熱硬化炉7にて連続的にBステージ状態に硬化させた後、銅箔とBステージ状態の絶縁接着層との複合体をシート状に裁断した(幅500mm/長さ500mm)。この時の Bステージ状態の絶縁接着層の反応開始温度は95℃であり、硬化率は64%であった。
【0056】
シート状に裁断した導体箔(銅箔)とBステージ状態の絶縁接着層との複合体3上に金属ベース材4として脱脂処理したアルミ板 厚み1.0mm/幅500mm/長さ500mmを積層した後、減圧下25mmHgにて190℃/3MPaで3時間加熱加圧処理を行い、基板12を得た。
基板12上の導体箔(銅箔)上にスクリーン印刷でエッチングレジストを形成し、塩化第二鉄エッチング液で導体箔を腐食溶解し、アルカリ水溶液でエッチングレジストを剥離し導体パターン16とした。
【0057】
写真現像法によって、有機絶縁被膜17を形成し、金型により所望の大きさ(10mm×460mm)に加工し金属ベース回路基板15とした。次に、LEDを実装するため、導体パターン上にスクリーン印刷によって電子部品実装部に半田ペーストを印刷し、LED(日亜化学社製 NESW425C)を積載した後、リフロー加熱を行った。
【0058】
(実施例2)
アルミ板 厚み1.0mm/幅500mm/長さ500mmを、銅箔とBステージ状態の絶縁接着層との複合体をシート状に裁断する前に積層した以外は実施例1と同様に作製した。
【0059】
(実施例3)
大気圧(760mmHg)にて190℃/3MPaで3時間加熱加圧処理を行った以外は実施例1と同様に作製した。
【0060】
(実施例4)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製EPICLON−828)100重量部に対して、フェノキシ樹脂(東都化成製FX316)を70重量部加えた以外は実施例1と同じにした。この時のBステージ状態の絶縁接着層の反応開始温度は110℃、反応率は63%であった。
【0061】
(実施例5)
フェノールノボラック(明和化成社製HF−4M)100重量部に対して、3−ドデシル無水コハク酸40重量部を加えた以外は実施例1と同じにした。この時のBステージ状態の絶縁接着層の反応開始温度は90℃、反応率は64%であった。
【0062】
(比較例1)
絶縁接着剤を、加熱硬化炉7にて連続的にBステージ状態に硬化させた後の硬化率が3%である以外は実施例1と同じにした。
【0063】
(比較例2)
絶縁接着剤を、加熱硬化炉7にて連続的にBステージ状態に硬化させた後の硬化率が83%である以外は実施例1と同じにした。
【0064】
(比較例3)
硬化剤としてトリエチレンテトラミン(東ソー社製TETA)をもちいた以外は実施例1と同じにした。この時のBステージ状態の絶縁接着層の反応開始温度は52℃、反応率は66%であった。
【0065】
(比較例4)
均粒子径が1.2μmの破砕状粗粒子の酸化珪素(龍森社製A−1)と平均粒子径が10μmである破砕状粗粒子の酸化珪素(林化成社製SQ−10)を合わせて絶縁接着剤中25体積%(粗粒子と微粒子は質量比が9:1)となるように配合した以外は実施例1と同様にした。
【0066】
実施例1〜5及び比較例1〜3の評価結果を表1を参照にしつつ説明する。実施例1〜5では耐電圧、銅箔引き剥がし強さとも良好な値を示した。また、ボイドの割合を表す空隙率も0.01%以下であり、最高温度も低く放熱性は良好であった。したがって、本発明は絶縁接着層中にボイドが残存しない、高品質且つ高放熱である基板及び金属ベース回路基板の製造方法として好適である。
【0067】
比較例1〜3では空隙率も1.2%以上であり、耐電圧、熱伝導率が悪く、放熱性も不十分であった。また、比較例4は熱伝導率が悪く、放熱性も不十分である。したがって、高品質且つ高放熱である基板及び金属ベース回路基板の製造方法として不適である。
【符号の説明】
【0068】
1 導体箔
2 絶縁接着剤
2a Bステージ状態の絶縁接着層
2b Cステージ状態の絶縁接着層
5 導体箔とBステージ状態の絶縁接着層との複合体
6 金属ベース材
7 積層体
8 絶縁接着層連続成形部
9 加熱炉
10 ニップロール
11 裁断部
13a、13b 加熱加圧板
14 基板
17 金属ベース回路基板
19 有機絶縁被膜
21 分散工程
22 積層工程
23 硬化1工程
24 シート状裁断工程
25 金属ベース材積層工程
26 硬化2工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ベース材、絶縁接着層及び導体箔を有する基板の製造方法であり、
湿潤分散剤を有する絶縁接着剤の各組成物を均一に分散する分散工程と、
ロール状である導体箔を繰り出しながら、前記導体箔上に絶縁接着層を積層する積層工程と、
導体箔上の絶縁接着層を加熱することで、Bステージ状態まで硬化させる硬化1工程と、
導体箔とBステージ状態の絶縁接着層との積層体をシート状に裁断するシート状裁断工程と、
硬化工程後又は裁断工程後の絶縁接着層に金属ベース材を積層する金属ベース材積層工程と、
積層体を温度範囲70℃以上260℃以下、圧力範囲0.1MPa以上10MPa以下の条件で加熱加圧することで、Bステージ状態の絶縁接着層をCステージ状態にまで硬化させる硬化2工程と
を有する基板の製造方法。
【請求項2】
絶縁接着剤がエポキシ樹脂及び無機フィラーを有する請求項1記載の基板の製造方法。
【請求項3】
硬化1工程でのBステージ状態の絶縁接着剤の反応開始温度が60℃以上250℃以下である請求項1又は2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
硬化2工程でのCステージ状態の絶縁接着層の熱伝導率が1.0W/(m・K)以上15.0W/(m・K)以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載の基板の製造方法によって製造された基板の導体箔に、導体パターンを形成するパターン形成方法と、パターン上に被膜を形成する被膜形成方法を有する回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−238729(P2011−238729A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108051(P2010−108051)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】