説明

基板保持装置及び基板検査装置

【課題】形状の異なる複数の基板の検査に対して、即座にその基板の形状に対応することができる基板保持装置を提供する。
【解決手段】この基板保持装置1は、基台部材2と、X方向に沿って互いに近接離反変位可能に備えられた第1及び第2の可動保持部材3,4と、Y方向に沿って互いに近接離反変位可能に備えられた第3及び第4の可動保持部材5,6と、第1及び第3の可動保持部材3,5の位置を調節する第1及び第2の位置調節機構7,8と、第2及び第4の可動保持部材4,6を対向する第1及び第3の可動保持部材3,5側に付勢する第1及び第2の付勢機構9,10と、第2及び第4の可動保持部材4,6を、第1及び第2の付勢機構9,10の付勢力に抗して第1及び第3の可動保持部材3,5から離反する方向に駆動する第1及び第2の駆動機構11,12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板検査時等において基板を保持する基板保持装置及び基板検査装置に関する。
【0002】
尚、この発明は、プリント配線基板に限らず、例えば、フレキシブル基板、多層配線基板、及び半導体パッケージ用のパッケージ基板やフィルムキャリアなど種々の基板を保持する際に適用でき、この明細書では、それら種々の基板を総称して「基板」と称する。
【背景技術】
【0003】
この種の従来の基板保持装置では、例えば特許文献1に記載のものがある。この基板保持装置では、基板の隣接する2辺に当接する固定式の3つの位置決めピンと、基板の隣接する他の2辺に押圧される可動式の2つの押圧部材とによって基板を保持している。
【特許文献1】特開2000−338164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の基板保持装置では、可動式の2つの押圧部材を独立して位置調節できないため、形状(縦横比等)の異なる基板に対応できないという問題がある。
【0005】
また、検査対象となる基板は、上記の如き多種多様な種類を有しており、種類や大きさが相違する基板を連続的に検査する場合には、その都度基板の大きさや形状に沿って、位置決めピンを設定したり、新たな基板を保持する保持装置を準備したりする必要があり、煩雑な作業が増加するという問題点を有していた。
【0006】
そこで、本発明の解決すべき課題は、形状の異なる複数の基板の検査に対して、即座にその基板の形状に対応することができる基板保持装置及び基板検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明では、基板を保持する基板保持装置であって、基台部材と、第1方向に沿って互いに近接離反変位可能に前記基台部材に備えられ、基板を挟み込む第1及び第2の可動保持部材と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って互いに近接離反変位可能に前記基台部材に備えられ、基板を挟み込む第3及び第4の可動保持部材と、前記第1の可動保持部材の前記第1方向に沿った位置を調節する第1の位置調節機構と、前記第3の可動保持部材の前記第2方向に沿った位置を調節する第2の位置調節機構と、前記第2の可動保持部材を前記第1の可動保持部材側に付勢する第1の付勢手段と、前記第4の可動保持部材を前記第3の可動保持部材側に付勢する第2の付勢手段と、前記第2の可動保持部材を前記第1の付勢手段の付勢力に抗して前記第1の可動保持部材から離反する方向に駆動する第1の駆動機構と、前記第4の可動保持部材を前記第2の付勢手段の付勢力に抗して前記第2の可動保持部材から離反する方向に駆動する第2の駆動機構とを備える。
【0008】
また、請求項2の発明では、請求項1の発明に係る基板保持装置において、前記第1の駆動機構は、前記第2の可動保持部材を、与えられる第1の駆動力に基づき、前記第1の付勢手段の付勢力に抗して前記第1の可動保持部材から離反する方向に駆動し、前記第2の駆動機構は、前記第4の可動保持部材を、与えられる第2の駆動力に基づき、前記第2の付勢手段の付勢力に抗して前記第2の可動保持部材から離反する方向に駆動し、第1の位置調節機構は、前記第1の可動保持部材の前記第1方向に沿った位置を、与えられる第3の駆動力により前記第1の可動保持部材を駆動することによって調節し、第2の位置調節機構は、前記第3の可動保持部材の前記第2方向に沿った位置を、与えられる第4の駆動力により前記第3の可動保持部材を駆動することによって調節する。
【0009】
また、請求項3の発明では、請求項2の発明に係る基板保持装置において、前記第1の位置調節機構は、前記第1の可動保持部材に摺接し、前記第3の駆動力によって回転駆動されることにより前記第1の可動保持部材を前記第1方向に沿って駆動する第1のカム部材を備え、前記第2の位置調節機構は、前記第3の可動保持部材に摺接し、前記第4の駆動力によって回転駆動されることにより前記第3の可動保持部材を前記第2方向に沿って駆動する第2のカム部材を備える。
【0010】
また、請求項4の発明では、請求項1の発明に係る基板保持装置において、前記第1の駆動機構は、前記第2の可動保持部材を、与えられる第1の駆動力に基づき、前記第1の付勢手段の付勢力に抗して前記第1の可動保持部材から離反する方向に駆動し、前記第2の駆動機構は、前記第4の可動保持部材を、与えられる第2の駆動力に基づき、前記第2の付勢手段の付勢力に抗して前記第2の可動保持部材から離反する方向に駆動し、第1の位置調節機構は、前記第1の可動保持部材の前記第1方向に沿った位置を、与えられる第1の操作力により前記第1の可動保持部材を駆動することによって調節し、第2の位置調節機構は、前記第3の可動保持部材の前記第2方向に沿った位置を、与えられる第2の操作力により前記第3の可動保持部材を駆動することによって調節する。
【0011】
また、請求項5の発明では、請求項4の発明に係る基板保持装置において、前記第1の位置調節機構は、前記第1の可動保持部材に摺接し、前記第1の操作力によって回転駆動されることにより前記第1の可動保持部材を前記第1方向に沿って駆動する第1のカム部材を備え、前記第2の位置調節機構は、前記第3の可動保持部材に摺接し、前記第2の操作力によって回転駆動されることにより前記第3の可動保持部材を前記第2方向に沿って駆動する第2のカム部材を備える。
【0012】
また、請求項6の発明では、請求項5の発明に係る基板保持装置において、前記第1のカム部材及び前記第2のカム部材に、そのカム部材の回転位置判別のための一又は複数の印が設けられている。
【0013】
また、請求項7の発明では、請求項3又は請求項5の発明に係る基板保持装置において、前記第1のカム部材及び前記第2のカム部材は、ハートカムである。
【0014】
また、請求項8の発明では、請求項2ないし請求項7のいずれかの発明に係る基板保持装置において、前記第1の駆動力及び前記第2の駆動力は、前記可動保持部材によって保持された基板と略直角な方向に沿って与えられ、前記第1の駆動機構及び前記第2の駆動機構は、前記第1の駆動力及び前記第2の駆動力の方向を、前記可動保持部材によって保持された基板と略直角な方向から、前記第1方向及び前記第2方向にそれぞれ変換するレバー機構をそれぞれ備える。
【0015】
また、請求項9の発明では、請求項2又は請求項3の発明に係る基板保持装置において、前記第1及び第2の駆動機構に与えられる前記第1及び第2の駆動力と、前記第1及び第2の位置調整機構に与えられる前記第3及び第4の駆動力とが、前記基台部材の表面側又は裏面側のいずれか一方のみから与えられる。
【0016】
また、請求項10の発明では、請求項1ないし請求項9いずれかの発明に係る基板保持装置を複数備えた基板検査装置であって、該複数の基板保持装置が検査処理工程に沿って設定された無端状軌道に沿って略連続的に配置され、かつその無端状軌道に沿って搬送可能とされている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1ないし請求項10に記載の発明によれば、出退可能に備えられた第1ないし第4の可動保持部材により基板を略四方から挟み込んで保持する構成であるため、第1ないし第4の可動保持部材の基板保持位置を調節することにより、サイズだけでなく、形状(円形、矩形等の違いや、矩形基板の場合は縦横比など)の異なる複数の基板の検査に対して、その基板のサイズ及び形状に即座に対応することができる。
【0018】
また、第1ないし第4の可動保持部材の基板保持位置を調節することにより、基板のサイズや形状が変化しても、保持された基板の基準位置(中心等)を基台部材内の所望の位置にセットすることができる。
【0019】
また、第1ないし第4の可動保持部材のうち、第1及び第3の可動保持部材の出退位置を、基板のサイズ又は形状に応じて第1及び第2の位置調節機構によって予め調節しておくことにより、基板を保持する際には、第1及び第2の駆動機構及び第1及び第2の付勢手段によって第2及び第4の可動保持部材を駆動するだけで基板の保持及び保持解除ができるため、基板の保持及び保持解除の動作(動き)が簡単であり、被検査基板を保持する位置精度の信頼性が高い。
【0020】
請求項2及び請求項4に記載の発明によれば、基板を保持する際は、第1及び第2の駆動機構が第2及び第4の可動保持部材に与えていた駆動力を解除することにより、第1及び第2の付勢手段の付勢力により第2及び第4の可動保持部材が基板側に押圧移動され、基板に当接されるようになっている。すなわち、基板を保持する際の力が第1及び第2の付勢手段の付勢力により規定されるため、基板の保持に必要な力を安定的にかつ容易に得ることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、第1及び第2の位置調節機構にカム部材を採用することにより、第3及び第4の駆動力の動力源に回転駆動系のモータ等の簡易な動力源を採用することができるとともに、第1及び第3の可動保持部材の出退位置を容易に且つ正確に調節できる。
【0022】
また、特別なロック手段等を設けなくとも、カム部材及びその関連する機構部分の摩擦力等だけでも、基板保持時に第1及び第2の付勢手段の付勢力に抗して、第1及び第3の可動保持部材が所定の設定位置からずれるのを防止することができ、この点からも構成の簡略化が図れる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、第1及び第2の位置調節機構にカム部材を採用しているため、カム部材を回転操作することにより、第1及び第3の可動保持部材の出退位置を容易に且つ正確に調節できる。
【0024】
また、特別なロック手段等を設けなくとも、カム部材及びその関連する機構部分の摩擦力等だけでも、基板保持時に第1及び第2の付勢手段の付勢力に抗して、第1及び第3の可動保持部材が所定の設定位置からずれるのを防止することができ、この点からも構成の簡略化が図れる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、第1及び第2のカム部材にその回転位置判別のための一又は複数の印が設けられているため、その印を参照しつつカム部材を回転操作することにより、カム部材の回転位置及び第1及び第3の可動保持部材の出退位置の調節を容易に行うことができる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、第1及び第2の位置調節機構にハートカムを採用するため、動力源に用いられるモータ等の駆動源の回転変位量と第1及び第3の可動保持部材の直線変位量とがリニアな関係になり、第1及び第3の可動保持部材の位置調節(位置制御)を容易に行うことができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、第1及び第2の駆動機構に対して与える第1及び第2の駆動力を基板と略直角な方向から与える構成であるため、第1及び第2の駆動力を発生させる駆動源の設置面積を小さくすることができる。これは、例えば複数の基板保持装置を隣接させて配置する場合に省スペース化等の点で有利である。
【0028】
また、第1及び第2の駆動機構にレバー機構を用いているため、レバー機構の駆動側のストロークを小さくして、第1及び第2の駆動力の駆動源の小型化が図れる。
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、基台部材の表面側又は裏面側のいずれか一方に第1ないし第4の駆動力の駆動源を配置することができるため、基台部材の表面側又は裏面側のいずれか他方において基板の検査や取り扱いのためのスペースを有効に確保できる。
【0030】
請求項10に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の発明に係る複数の基板保持装置を検査処理工程に沿った無端状軌道に沿って搬送可能なように略連続的に配置する構成であるため、形状等の異なる複数の基板に対して即座に対応でき、かつ小型化に適した基板検査装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は本発明の一実施形態に係る基板保持装置の平面図であり、図2はその側面図である。なお、両図には後述する各図との方向関係を明確にするため、XYZ直交座標軸を付与している。
【0032】
尚、本発明の一実施形態に係る基板保持装置は、被検査基板13が矩形(特に、長方形や正方形)に対応した場合を説明する。
【0033】
この基板保持装置1は、図1及び図2に示すように、基台部材2と、第1ないし第4の可動保持部材3〜6と、第1及び第2の位置調節機構7,8と、第1及び第2の付勢手段
としての第1及び第2の付勢機構9,10と、第1及び第2の駆動機構11,12とを備えている。このような基板保持装置1は、例えば、基板検査装置等に備えられ、基板13に対する検査(例えば、回路の導通検査等)が行われる際に基板13を保持するために用いられる。
【0034】
基台部材2には、保持した基板13への上下からのアクセスが容易なように窓部14が設けられており、この窓部14の空間内で基板13が保持されるようになっている。基台部材2上における窓部14の四方には、4組のレールR1〜R8と、そのレールR1〜R8にスライド可能に嵌合されたスライダS1〜S8とが設けられている。レールR1〜R
4はX方向と平行に配置され、レールR5〜R8はY方向と平行に配置されている。
【0035】
第1及び第2の可動保持部材3,4は、スライダS1〜S4に固定され、第1方向とし
てのX方向に互いに近接離反変位可能になっており、X方向の両側から基板13に当接して基板13を挟み込む。第3及び第4の可動保持部材5,6は、スライダS5〜S8に固
定され、第2方向としてのY方向に互いに近接離反変位可能になっており、Y方向の両側から基板13に当接して基板13を挟み込む。
【0036】
各可動保持部材3〜6は、スライダS1〜S8に固定された台座21〜24と、その台座21〜24に取り付けられた当接部材25〜28とを備えている。当接部材25〜28は、その先端部が窓部14の内方に突き出すようにして台座21〜24に取り付けられており、当接部材25〜28の先端部が基板13の4辺に四方から当接して、基板13を保持するようになっている。
【0037】
各可動保持部材3〜6は、図1に示される如く、窓部14を構成する各辺の略中央部に配置されていることが好ましい。このように各可動保持部材3〜6が各辺の略中央部に配置されることによって、被検査基板13の大きさや形状に応じて可動保持部材3、5が調整されても、被検査基板13の各対応する辺の略中央部を保持することができる。
【0038】
このため、可動保持部材3〜6は、被検査基板の各辺の略中央部を保持することができ、被検査基板13を窓部14による空間の略中央位置で保持可能となり、安定性が高く且つ位置精度の高い保持が可能となる。
【0039】
第1及び第2の位置調節機構7,8は、第1及び第3の可動保持部材3,5のX,Y方向
に沿った位置を調節するためのものであり、カム部材29,30をそれぞれ備えている。
このカム部材29,30には、第1及び第3の可動保持部材3,5の台座21,23に設け
られたローラ21a,23aがX方向マイナス側又はY方向プラス側からそれぞれ摺接さ
れている。そして、このカム部材29,30が図示しないモータ等の動力源から与えられ
る第3及び第4の駆動力としてのZ軸回りの回転駆動力F1,F2によりZ軸回りに回転駆動されると、その回転によるカム部材29,30のカム半径の増大に伴って、第1及び
第3の可動保持部材3,5がX方向マイナス側又はY方向プラス側に駆動されるようにな
っている。このため、第1及び第2の位置調整機構7,8は、第1及び第3の可動保持部材3,5の移動量を微細に制御することが可能となる。
【0040】
また、第1及び第2の位置調節機構7,8には、第1及び第3の可動保持部材3,5をX方向プラス側又はY方向マイナス側に付勢する付勢バネ31,32が備えられている。このため、回転に伴ってカム部材29,30のカム半径が減少したときには、その減少に
伴って付勢バネ31,32の付勢力により、第1及び第3の可動保持部材3,5がX方向
プラス側又はY方向マイナス側に駆動されるようになっている。なお、本実施形態では、付勢バネ31,32として、台座21,30に設けられた係合部21b,23bと基台部材2に設けられた係合部33,33との間に伸張された状態で張り渡されたコイルバネからなる引っ張りバネが用いられている。
【0041】
第1の位置調節機構7のさらに詳細な構成例について、図3を参照して説明する。第1の位置調節機構7は、例えば図3に示すように、基台部材2に軸受部材36を介して回転可能に取り付けられた回転軸37と、回転軸37の上端部に固定されたカム部材29と、回転軸37の下端部に固定され、動力源からの回転駆動力F1を受け取る回転板38と、回転軸37に外挿された外挿リング39と、回転軸37に外挿され、外挿リング39と回転板38との間に介挿されたベアリング40と、回転軸37に外挿され、基台部材37と外挿リング39との間に圧縮された状態で挿入された圧縮コイルバネ41とを備えている
。軸受部材36は、上方から留め具42によって押さえ込まれて固定されており、留め具42はネジ43によって基台部材2に固定されている。この構成では、軸部材37が基台部材2をZ方向に貫通するように配置され、基台部材2の下面側に配置された回転板38で受けた回転駆動力F1が、基台部材2の上面側に配置されたカム部材29に伝えられるようになっている。なお、第2の位置調節機構8についても図3とほぼ同様な構成が採用されている。
【0042】
このような第1及び第2の位置調節機構7,8の構成により、第1及び第3の可動保持部材3,5を駆動するための回転駆動力F1,F2を基台部材2の下面側から与えることができるようになっている。これによって、基板13を保持する基台部材2の上面側に配置される構成要素を無くすことができ、基板13の検査や取り扱いが容易に行えるようになっている。
【0043】
第1及び第2の付勢機構9,10は、第2及び第4の可動保持部材4,6をX方向プラス側又はY方向マイナス側に付勢する圧縮コイルバネ46,47と、その圧縮コイルバネ4
6,47が外挿されたガイド棒48,49とをそれぞれ備えている。圧縮コイルバネ46,
47は、第2及び第4の可動保持部材4,6の台座22,24と、基台部材2に固定された受け部材50,51との間に圧縮された状態で備えられている。受け部材50,51には、圧縮コイルバネ46,47及びガイド棒48,49を収容する収容穴50a,51aが設け
られている。
【0044】
第1及び第2の駆動機構11,12は、図示しない動力源から与えられる第1及び第2の駆動力としての駆動力F3(図4参照)に基づき、第1及び第2の付勢機構9,10の付勢力に抗して第2及び第4の可動保持部材4,6をX方向マイナス側又はY方向プラス側に駆動する。駆動力F3は、可動保持部材3〜6によって保持された基板13と直角な方向であるZ方向に沿って与えられるようになっている。なお、この駆動力F3は、第1及び第2の駆動機構11,12に同時に与えられるようにしてもよく、あるいは駆動機構11,12ごとに独立して設けられる駆動源により独立して与えられるようにしてもよい。
【0045】
第1及び第2の駆動機構11,12には、駆動力F3の方向を、Z方向からX方向又はY方向に変換する第1及び第2のレバー機構61,62がそれぞれ備えられている。レバー機構61,62の第2及び第4の可動保持部材4,6を駆動するレバー63,64は、基台部材2に設けられた貫通孔65,66を介して下面側から上面側に挿通され、その上端部が第2及び第4の可動保持部材4,6の当接部22a,24aに当接可能に配置されている。これによって、レバー機構61,62を駆動するための駆動力F3が、基台部材2の下面側から与えられるようになっている。その結果、基板13を保持する基台部材2の上面側に配置される構成要素を減らすことができ、基板13の検査や取り扱いが容易に行えるようになっている。
【0046】
第1のレバー機構61のより具体的な構成例について、図4を参照して説明する。なお、ここでは第1のレバー機構61についてのみ具体的な説明を行うこととするが、第2のレバー機構62の構成及び動作は第1のレバー機構61とほぼ同様である。
【0047】
第1のレバー機構61は、図4に示すように、取付具71等を介して基台部材2に揺動可能に軸支され、第2の可動保持部材4を駆動するレバー63と、取付具71等を介してZ方向にスライド可能に基台部材2に取り付けられ、駆動力F3によりスライド駆動されるのに伴ってレバー63を揺動変位させるスライド部材72とを備えている。
【0048】
レバー63は、側面から見て全体的に略L字方の形状を有し、その屈曲部63aから略直角に交差する方向に延びる2つの延設部63b,63cを有している。下方に位置する
延設部63bに軸支部63dが設けられ、この軸支部63dによってレバー63が揺動可能に軸支されている。レバー63が軸支部63dの回りに揺動するのに伴って、上方に位置する延設部63cが略X方向(第2のレバー機構62の場合は略Y方向)に沿って移動するようになっている。この延設部63cにおける第2の可動保持部材4の当接部22aと対応する部分には、ローラ63eが設けられている。
【0049】
スライド部材72には、レバー63の屈曲部63aに設けられた受け部63fと当接又は係合するローラ72aが設けられている。そして、駆動力F3によって、このスライド部材72がZ方向へ駆動されるのに伴って、レバー63が揺動されるようになっている。
【0050】
次に、第1及び第2の駆動機構11,12の動作を説明する。駆動力F3により、スライド部材72が図4の実線で示される位置から仮想線で示される位置まで押し上げられると、それに伴ってレバー63,64が実線で示される位置から仮想線で示される位置まで揺動し、第1及び第2の付勢機構9,10の付勢力に抗して第2及び第4の可動保持部材4,6をX方向マイナス側又はY方向プラス側に駆動するようになっている。そして、駆動力F3が解除されると、第1及び第2の付勢機構9,10の付勢力により、第2及び第4の可動保持部材4,6がX方向プラス側又はY方向マイナス側に駆動され、これに伴ってレバー63,64及びスライド部材72が駆動力F3による駆動方向と逆方向に駆動されるようになっている。
【0051】
次に、この基板保持装置1の動作について説明する。まず、保持すべき基板13のサイズ及び形状(縦横比等)に応じて、駆動源からの回転駆動力F1,F2によって第1及び第2の位置調節機構7,8のカム部材29,30が回転駆動され、カム部材29,30のカム半径が変動され、これに伴って第1及び第3の可動保持部材3,5のX方向又はY方向に沿った出退位置が調節される。この出退位置の調節は、例えば保持した基板13が窓部14の中央部に位置するようにして行われる。なお、この調節は、基板13を保持する度ごとに毎回行うようにしてもよいし、装置の起動時や、基板13の種類変更が行われた際等にのみ行うようにしてもよい。
【0052】
続いて、駆動源から与えられる駆動力F3により第1及び第2の駆動機構11,12のレバー63,64が駆動され、これによって第1及び第2の付勢機構9,10の付勢力に抗して第2及び第4の可動保持部材3,6がX方向マイナス側又はY方向プラス側に駆動され、第1及び第2の可動保持部材3,4間の間隔、及び第3及び第4の可動保持部材5,6間の間隔が拡大される。
【0053】
続いて、図5に示すように、図示しない搬送手段等により基板13が第1ないし第4の可動保持部材4〜6の間にセットされる。
【0054】
続いて、駆動力F3が解除され、これに伴って第1及び第2の付勢機構9,10の付勢力により、第2及び第4の可動保持部材4,6がX方向プラス側又はY方向マイナス側に駆動され、第1及び第2の可動保持部材3,4間の間隔、及び第3及び第4の可動保持部材5,6間の間隔が縮小され、図1に示すように第1ないし第4の可動保持部材3〜6によって基板13が四方から挟み込まれて保持される。そして、その状態で基板13に対する検査等が行われる。
【0055】
検査後等に基板13を開放する際には、第1及び第2の駆動機構11,12に駆動力F3が与えられ、第1及び第2の付勢機構9,10の付勢力に抗して第2及び第4の可動保持部材3,6がX方向マイナス側又はY方向プラス側に駆動され、第1及び第2の可動保持部材3,4間の間隔、及び第3及び第4の可動保持部材5,6間の間隔が拡大される。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、出退可能に備えられた第1ないし第4の可動保持部材3〜6により基板13を四方から挟み込んで保持する構成であるため、第1ないし第4の可動保持部材3〜6の基板保持位置を調節することにより、サイズだけでなく、形状(円形、矩形等の違いや、矩形基板の場合は縦横比など)の異なる基板13にも容易に対応することができる。例えば、図1に示す正方形の基板13だけでなく、図6に示す長方形の基板13であっても容易に対応することができる。
【0057】
また、第1ないし第4の可動保持部材3〜6の基板保持位置を調節することにより、基板13のサイズや形状が変化しても、保持された基板13の基準位置(中心等)を基台部材2の窓部14内の所望の位置(例えば、中央)にセットすることができる。
【0058】
また、第1ないし第4の可動保持部材3〜6のうち、第1及び第3の可動保持部材3,5の出退位置を、基板13のサイズ又は形状に応じて第1及び第2の位置調節機構7,8によって予め調節しておくことにより、基板13を保持する際には、第1及び第2の駆動機構11,12及び第1及び第2の付勢機構9,10によって第2及び第4の可動保持部材4,6を駆動するだけで基板13の保持及び保持解除ができるため、基板13の保持及び保持解除の動作(動き)が簡単であり、基板が保持された際の位置精度の信頼性が高い。
【0059】
また、基板13を保持する際は、第1及び第2の駆動機構11,12が第2及び第4の可動保持部材4,6に与えていた駆動力を解除することにより、第1及び第2の付勢機構9,10の付勢力により第2及び第4の可動保持部材4,6が基板13側に押圧移動され、基板13に当接されるようになっている。すなわち、基板13を保持する際の力が第1及び第2の付勢機構9,10の付勢力により規定されるため、基板13の保持に必要な力を安定的にかつ容易に得ることができる。
【0060】
また、第1及び第2の位置調節機構7,8にカム部材29,30を採用することにより、駆動力F1,F2の動力源に回転駆動系のモータ等の簡易な動力源を採用することができるとともに、第1及び第3の可動保持部材3,5の出退位置を容易に且つ正確に調節できる。
【0061】
また、特別なロック手段等を設けなくとも、カム部材29,30及びその関連する機構部分の摩擦力等だけでも、基板保持時に第1及び第2の付勢機構9,10の付勢力に抗して、第1及び第3の可動保持部材3,5が所定の設定位置からずれるのを防止することができ、この点からも構成の簡略化が図れる。
【0062】
また、第1及び第2の駆動機構11,12に対して与える駆動力F3を基板13と直角な方向から与える構成であるため、駆動力F3を発生させる図示しない駆動源の設置面積を小さくすることができる。これは、例えば後述する図8に示すように、複数の基板保持装置1を隣接させて配置する場合に省スペース化等の点で有利である。
【0063】
また、第1及び第2の駆動機構11,12にレバー機構61,62を用いているため、レバー機構61,62の駆動側のストロークを小さくして、駆動力F3の駆動源の小型化が図れる。 また、基台部材2の裏面側に集中して駆動力F1〜F3の駆動源を配置する構成であるため、基台部材2の表面側において基板13の検査や取り扱いのためのスペースを有効に確保できる。これによって、例えば後述する図8に示すように円形配置した複数の基板保持装置1を円形軌道に沿って移動させる際、基台部材2の表面側に配置された基板検査のための処理設備に基板保持装置1が干渉する
のを防止でき、空間利用効率が向上し、基板検査装置等の小型化が図れる。なお、変形例として、駆動力F1〜F3を基台部材2の表面側から与えるようにしてもよい。
【0064】
なお、本実施形態に係る構成の変形例として、図7に示すように、第1及び第2の位置調節機構7,8のカム部材29,30にハートカムを用いるようにしてもよい。これによって、駆動力F1,F2の動力源に用いられるモータ等の駆動源の回転変位量と第1及び第3の可動保持部材3,5の直線変位量とがリニアな関係になり、第1及び第3の可動保持部材3,5の位置調節(位置制御)を容易に行うことができる。なお、本明細書において「ハートカム」とは、カム面の全体がハート型になっていなくても、等速回転運動を等速直線運動に変換するためのカム曲線をカム面の少なくとも一部に有しているカムをすべて含むものである。
【0065】
また、本実施形態では第1及び第2の可動保持部材3,4の出退方向と、第3及び第4の出退方向とが直交するようにしたが、これらの出退方向が斜めに公差するようにしてもよい。
【0066】
本実施形態に係る構成の他の変形例として、図8に示すように、第1及び第2の位置調節機構7,8に備えられるカム部材29,30を、手動による操作力で回転駆動するようにしてもよい。本構成においても、カム部材29,30はハートカムとなっており、カム部材29,30に固定されたつまみ部91を持ってカム部材29,30を回転させることにより、第1及び第3の可動保持部材3,5の出退位置が調節されるようになっている。
【0067】
また、カム部材29,30には、そのカム部材29,30の回転位置判別のための一又は複数の印92,93が設けられている。印92はカム部材29,30の周方向に等間隔に付与されたメモリであり、印93はそのメモリに関連して付与された数値表示である。このため、こららの印92,93を参照しつつカム部材29,30を回転操作することにより、カム部材29,30の回転位置及び第1及び第3の可動保持部材3,5の出退位置の調節を容易に行うことができる。
【0068】
図9は、本発明の基板保持装置を利用した基板検査装置の一実施形態を示す平面図である。この基板検査装置81では、複数の基板保持装置1が基板処理工程に沿って設定された円形軌道(無端状軌道)に沿って周方向に略一定の間隔をあけて略連続的に配置されており、段階的に行われる検査処理工程の進行に伴って円形軌道に沿って図示しない搬送機構により矢印Cで示すように搬送されるようになっている。この図9で示される基板検査装置81では、8つの基板保持装置1が配置されている。基板保持装置1は、上記の説明
の如く、各可動保持部材3〜6を駆動するための駆動力F1〜F3を与える駆動源が基台部材2の下面側(図示せず)に配置されることになるので、基台部材2の上面側の空間には、検査治具や検査ユニット等の他の処理機構を備えた装置を配置することができるとともに、それらの検査治具や処理機構等が基板保持装置1の搬送の障害にならないようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板保持装置の平面図である。
【図2】図1の基板保持装置の側面図である。
【図3】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図4】図1のB−B線に沿った断面図である。
【図5】基板を保持する際の動作説明図である。
【図6】基板を保持する際の動作説明図である。
【図7】図1の基板保持装置の変形例を示す図である。
【図8】図1の基板保持装置の他の変形例を示す図である。
【図9】本発明の基板保持装置を利用した基板検査装置の一実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 基板保持装置、2 基台部材、3〜6 第1ないし第4の可動保持部材、7,8 第1及び第2の位置調節機構、9,10 第1及び第2の付勢機構、11,12 第1及び第2の駆動機構、13 基板、29,30 カム部材、61,62 レバー機構、81
基板検査装置、92,93 印、F1〜F3 駆動力。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持装置であって、
基台部材と、
第1方向に沿って互いに近接離反変位可能に前記基台部材に備えられ、基板を挟み込む第1及び第2の可動保持部材と、
前記第1方向と交差する第2方向に沿って互いに近接離反変位可能に前記基台部材に備えられ、基板を挟み込む第3及び第4の可動保持部材と、
前記第1の可動保持部材の前記第1方向に沿った位置を調節する第1の位置調節機構と、
前記第3の可動保持部材の前記第2方向に沿った位置を調節する第2の位置調節機構と、
前記第2の可動保持部材を前記第1の可動保持部材側に付勢する第1の付勢手段と、
前記第4の可動保持部材を前記第3の可動保持部材側に付勢する第2の付勢手段と、
前記第2の可動保持部材を前記第1の付勢手段の付勢力に抗して前記第1の可動保持部材から離反する方向に駆動する第1の駆動機構と、
前記第4の可動保持部材を前記第2の付勢手段の付勢力に抗して前記第2の可動保持部材から離反する方向に駆動する第2の駆動機構と、を備えることを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板保持装置において、
前記第1の駆動機構は、前記第2の可動保持部材を、与えられる第1の駆動力に基づき、前記第1の付勢手段の付勢力に抗して前記第1の可動保持部材から離反する方向に駆動し、
前記第2の駆動機構は、前記第4の可動保持部材を、与えられる第2の駆動力に基づき、前記第2の付勢手段の付勢力に抗して前記第2の可動保持部材から離反する方向に駆動し、
第1の位置調節機構は、前記第1の可動保持部材の前記第1方向に沿った位置を、与えられる第3の駆動力により前記第1の可動保持部材を駆動することによって調節し、
第2の位置調節機構は、前記第3の可動保持部材の前記第2方向に沿った位置を、与えられる第4の駆動力により前記第3の可動保持部材を駆動することによって調節することを特徴とする基板保持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板保持装置において、
前記第1の位置調節機構は、
前記第1の可動保持部材に摺接し、前記第3の駆動力によって回転駆動されることにより前記第1の可動保持部材を前記第1方向に沿って駆動する第1のカム部材を備え、
前記第2の位置調節機構は、
前記第3の可動保持部材に摺接し、前記第4の駆動力によって回転駆動されることにより前記第3の可動保持部材を前記第2方向に沿って駆動する第2のカム部材を備えることを特徴とする基板保持装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板保持装置において、
前記第1の駆動機構は、前記第2の可動保持部材を、与えられる第1の駆動力に基づき、前記第1の付勢手段の付勢力に抗して前記第1の可動保持部材から離反する方向に駆動し、
前記第2の駆動機構は、前記第4の可動保持部材を、与えられる第2の駆動力に基づき、前記第2の付勢手段の付勢力に抗して前記第2の可動保持部材から離反する方向に駆動し、
第1の位置調節機構は、前記第1の可動保持部材の前記第1方向に沿った位置を、与えられる第1の操作力により前記第1の可動保持部材を駆動することによって調節し、
第2の位置調節機構は、前記第3の可動保持部材の前記第2方向に沿った位置を、与えられる第2の操作力により前記第3の可動保持部材を駆動することによって調節することを特徴とする基板保持装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板保持装置において、
前記第1の位置調節機構は、
前記第1の可動保持部材に摺接し、前記第1の操作力によって回転駆動されることにより前記第1の可動保持部材を前記第1方向に沿って駆動する第1のカム部材を備え、
前記第2の位置調節機構は、
前記第3の可動保持部材に摺接し、前記第2の操作力によって回転駆動されることにより前記第3の可動保持部材を前記第2方向に沿って駆動する第2のカム部材を備えることを特徴とする基板保持装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板保持装置において、
前記第1のカム部材及び前記第2のカム部材に、そのカム部材の回転位置判別のための一又は複数の印が設けられていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項7】
請求項3又は請求項5に記載の基板保持装置において、
前記第1のカム部材及び前記第2のカム部材は、ハートカムであることを特徴とする基板保持装置。
【請求項8】
請求項2ないし請求項7のいずれかに記載の基板保持装置において、
前記第1の駆動力及び前記第2の駆動力は、前記可動保持部材によって保持された基板と略直角な方向に沿って与えられ、
前記第1の駆動機構及び前記第2の駆動機構は、
前記第1の駆動力及び前記第2の駆動力の方向を、前記可動保持部材によって保持された基板と略直角な方向から、前記第1方向及び前記第2方向にそれぞれ変換するレバー機構をそれぞれ備えることを特徴とする基板保持装置。
【請求項9】
請求項2又は請求項3に記載の基板保持装置において、
前記第1及び第2の駆動機構に与えられる前記第1及び第2の駆動力と、前記第1及び第2の位置調整機構に与えられる前記第3及び第4の駆動力とが、前記基台部材の表面側又は裏面側のいずれか一方のみから与えられることを特徴とする基板保持装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9いずれかに記載の基板保持装置を複数備えた基板検査装置であって、該複数の基板保持装置が検査処理工程に沿って設定された無端状軌道に沿って略連続的に配置され、かつその無端状軌道に沿って搬送可能とされていることを特徴とする基板検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−78599(P2008−78599A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321709(P2006−321709)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(392019709)日本電産リード株式会社 (160)
【Fターム(参考)】