説明

塔状構造物の構築方法および同方法に使用されるスリップフォーム装置

【課題】 塔状構造物の構成要素たる複数の筒状構造物を、20〜40m程度の比較的低い背で、内外にほぼ同心の配置で、且つ各々独立して状態で入れ子式に構築し、しかる後、内側の筒状構造物をリフトアップ(又はプッシュアップ)して塔状構造物を構築することにより、工期の短縮を実現し、コスト削減に寄与する、経済性に非常に優れた塔状構造物の構築方法および同方法の実施に使用されるスリップフォーム装置を提供する。
【解決手段】 内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した2体の筒状構造物を入れ子式に構築するステップと、外側の筒状構造物を基礎に固定し、内側の筒状構造物を、前記外側の筒状構造物に反力をとって上昇させ、上昇限度に到達した段階で、前記内側の筒状構造物の下端部を前記外側の筒状構造物の上端部に緊結するステップにより塔状構造物を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塔状構造物の構築方法および同方法の実施に使用されるスリップフォーム装置の技術分野に属し、更に云えば、高層の塔状構造物を短工期で構築することに適した塔状構造物の構築方法および同方法の実施に使用されるスリップフォーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、風力発電タワー、煙突、サイロ等の塔状構造物の高層化が進められている。特に、風力発電タワーは、地球温暖化や酸性雨の原因となるガスを排出しないクリーンエネルギー源として社会的要求が高くなっており、風の強さは高度が高くなる程強くなり、ひいては利用するエネルギーが増大することから、高層化(大型化)が要請されている。また、近年では、地上高さが200mに及ぶ高層の煙突も多い。
【0003】
従来、風力発電タワー、煙突、サイロ等の塔状構造物をコンクリートで構築する場合には、スリップフォーム装置を使用したスリップフォーム工法が好適に採用されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【0004】
前記特許文献1〜3に係る塔状構造物の構築方法の実施に使用されるスリップフォーム装置は、構築する塔状構造物の目的、形態等に応じてその構成が種々異なるが、その基本構造はほぼ共通する。即ち、前記特許文献1〜3に係るスリップフォーム装置Sは、共通して、互いに対向する一対のスライディング型枠1、1と、同スライディング型枠1、1を共通して支持するヨーク2と、同ヨーク2を上下移動させるクライミング機構3とを備えている(図20を参照)。
【0005】
ちなみに、図20中の符号3aは上昇ジャッキ、符号3bは鞘管、符号4はコンクリート、符号5はロッド、符号6は作業床、符号7はタワーバケット、符号8はカメラ、符号9はレーザー垂直器、符号10は保護カバー、符号11はワイヤー、符号12は上段の作業床を示している。その他、図示は省略するが、姿勢測定装置、光波距離計、反射鏡、油圧ユニット等も搭載している。なお、これらのスリップフォーム装置Sを構成する機器3a…等は格別新規ではない。
【0006】
また、前記特許文献1〜3に係るスリップフォーム装置を使用した塔状構造物の構築方法(スリップフォーム工法)は、その枢要な手順を図21A〜Dに概略的に示したように、共通して、塔状構造物Tの建設位置に予め構築したコンクリート基礎Kの上にスリップフォーム装置(移動型枠)Sを組み立て設置し、前記スリップフォーム装置Sのスライディング型枠1、1を、塔状構造物Tを構築する所定高さまで順次上方に移動させながら前記型枠1、1間に連続的にコンクリート4を打設して1体の塔状構造物Tを構築し、しかる後、前記スリップフォーム装置Sを解体・撤去して実施していた。また、風力発電タワーを構築する場合には、図21Dに次いで、図示は省略するが、大型クレーンを使用し、前記塔状構造物Tの頭部にナセル(発電機本体)及びローターブレード等の風力発電機器を据え付けて実施していた。
【0007】
【特許文献1】特開平6−2429号公報
【特許文献2】特開2001−59339号公報
【特許文献3】特開2001−227159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1〜3に係る塔状構造物の構築方法(スリップフォーム工法)は、構築する塔状構造物の所定高さまでスリップフォーム装置を上昇移動させなければならず、それ故、特に60m〜200m程度の高層の塔状構造物を構築する場合には、下記するような問題があった。
【0009】
1)スリップフォーム工法により構築する塔状構造物(コンクリート壁)は、通常、1日当たり4〜6m程度であり、高層の塔状構造物を構築する場合は、工期が長期化し、コストが嵩むという問題があった。
【0010】
2)また、構築する塔状構造物の高さに応じた高所作業を余儀なくされ、強風対策等も必要になり、場合によっては作業を中止せざるを得ず、さらに工期が長期化し、コストが嵩むという問題もあった。
【0011】
3)前記塔状構造物を風力発電タワーで実施を構築する場合には、タワーの最頂部に据え付けるナセルは大重量であるが故に、これを60〜200m程度の高さまで吊り上げるには、大型のクレーンが不可欠となる。このような大型クレーンは台数が極力少なく、また大型クレーンを安定して設置するための地盤改良工事や地盤補強工事などに多大な労力と時間が必要になり経済性が悪いという問題があった。また、大型クレーンによるローターブレードのナセルへの据付に際し、風が強いとローターブレードが風の影響を受け易いために、多大な時間を要したり、作業を中止することが多かった。特に、塔状構造物を設置する場所は、山岳地帯や離島などの強風地帯であり、これらの強風地帯で、60m〜200m程度の高さまでローターブレードを吊り上げ、且つナセルへの据え付け作業を行うことは大変至難であり、作業に長期間を有するという問題があった。さらに、大型クレーンの使用は、建設費が嵩むだけでなく、建設現場までの搬入が困難という問題があった。特に、塔状構造物を設置する場所は、山岳地帯や離島などの交通アクセスの不便な場所が多く、この問題は顕著であった。
【0012】
本発明の目的は、塔状構造物の構成要素たる複数の筒状構造物を、20〜40m程度の比較的低い背で、内外にほぼ同心の配置で、且つ各々独立して状態で入れ子式に構築し、しかる後、内側の筒状構造物をリフトアップ(又はプッシュアップ)して塔状構造物を構築することにより、工期の短縮を実現し、コスト削減に寄与する、経済性に非常に優れた塔状構造物の構築方法および同方法の実施に使用されるスリップフォーム装置を提供することである。
【0013】
また、風力発電タワーを構築する場合には、ナセル及びローターブレード等の風力発電機器の据え付け作業を地上20m〜40m程度の比較的低所で行うことにより、大型クレーンおよび大掛かりな仮設部材を一切不要とし、それでいて60〜200m程度の大型化した塔状構造物を構築することができる、安全性及び経済性に非常に優れた塔状構造物の構築方法および同方法の実施に使用されるスリップフォーム装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る塔状構造物の構築方法は、内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した2体の筒状構造物を入れ子式に構築するステップと、
外側の筒状構造物を基礎に固定し、内側の筒状構造物を、前記外側の筒状構造物に反力をとって上昇させ、上昇限度に到達した段階で、前記内側の筒状構造物の下端部を前記外側の筒状構造物の上端部に緊結するステップにより塔状構造物を構築することを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載した発明に係る塔状構造物の構築方法は、内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した複数の筒状構造物を入れ子式に構築するステップと、
最も外側の筒状構造物を基礎に固定し、最も内側の筒状構造物を、その外側に隣接する筒状構造物に反力をとって上昇させ、上昇限度に到達した段階で、前記内側の筒状構造物の下端部をその外側に隣接する筒状構造物の上端部に緊結し、次いで前記外側の筒状構造物を更に外側の筒状構造物に反力をとって上昇させ、上昇限度に到達した段階で、前記外側の筒状構造物の下端部を更に外側の筒状構造物の上端部に緊結する工程を、最も外側の筒状構造物の内側に隣接する筒状構造物を上昇させるまで順次行うステップにより塔状構造物を構築することを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した塔状構造物の構築方法において、最も内側に位置する筒状構造物を上昇させるステップに先行して、当該筒状構造物の頭部に、ナセル、ローターブレード等の風力発電機器を据え付けることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した塔状構造物の構築方法において、筒状構造物を上昇させる手段は、その外側に隣接する筒状構造物自体を反力架台としてリフトアップ、又はプッシュアップすることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載した塔状構造物の構築方法において、上昇する筒状構造物の外側面と、その外側に隣接する筒状構造物の内側面のいずれか一方にガイドを鉛直方向に設け、他方に前記ガイドに沿ってスライド可能なレールを鉛直方向に設けることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載した発明に係るスリップフォーム装置は、内外に対向する一対のスライディング型枠と、前記一対のスライディング型枠を共通に支持するヨークと、同ヨークを上下移動させるクライミング機構とを備え、前記型枠間にコンクリートを打設して筒状構造物を構築するスリップフォーム装置であって、
前記一対のスライディング型枠は、内外にほぼ同心の配置で複数対設置されており、各々が内外にほぼ同心の配置で独立した複数の筒状構造物を入れ子式に構築可能に構成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載した発明は、請求項6に記載したスリップフォーム装置において、内外に対向する一対のスライディング型枠を共通して支持するヨークは、筒状構造物をテーパー状に構築できる傾斜可能な機構とされていることを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載した発明は、請求項6又は7に記載したスリップフォーム装置において、内外に対向する一対のスライディング型枠は、筒状構造物の壁厚を調整可能な構成とされていることを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載した発明は、請求項6〜8のいずれか一に記載したスリップフォーム装置において、内外に対向する一対のスライディング型枠は、その水平断面形状を円形状、又は多角形状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1〜9に記載した発明に係る塔状構造物の構築方法および同方法の実施に使用されるスリップフォーム装置によれば、塔状構造物の構成要素たる複数の筒状構造物を、20〜40m程度の比較的低い背で、同時に、内外にほぼ同心の配置とされ、且つ独立した状態で入れ子式に構築することができるので、上記した従来技術と比して、塔状構造物を構築するのに要する工期を全体的に大幅に短縮することができ、コスト削減に大きく寄与する。また、高所作業を極力回避して構築作業をスムーズに行うことができ、それでいて、60m〜200m程度の高さを有する大型化した塔状構造物を構築することができる。
【0024】
また、風力発電タワーを構築する場合には、ナセル及びローターブレード等の風力発電機器の据え付け作業を地上20m〜40m程度の比較的低所で行うことができるので、大型クレーンおよび大掛かりな仮設部材が一切不要となり、工期も短縮でき、安全性及び経済性に非常に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る塔状構造物の構築方法および同方法の実施に使用されるスリップフォーム装置は、上述した発明の効果を奏するべく、以下のように実施される。
【実施例1】
【0026】
図1A〜Eは、請求項1に記載した塔状構造物の構築方法を段階的に示しており、内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した2体の筒状構造物20、21を入れ子式に構築するステップと、外側の筒状構造物21を基礎Kに固定し、内側の筒状構造物20を、前記外側の筒状構造物21に反力をとって上昇させ、上昇限度に到達した段階で、前記内側の筒状構造物20の下端部を前記外側の筒状構造物21の上端部に緊結するステップにより塔状構造物を構築する(請求項1記載の発明)。
【0027】
図2は、前記塔状構造物の構築方法の実施に好適に使用されるスリップフォーム装置S’を示している。このスリップフォーム装置S’は、内外に対向する一対のスライディング型枠1、1と、前記一対のスライディング型枠1、1を共通に支持するヨーク2と、同ヨーク2を上下移動させるクライミング機構3とを備え、前記型枠1、1間にコンクリート4を打設して筒状構造物を構築する装置であり、前記一対のスライディング型枠1、1は、内外にほぼ同心の配置で複数対設置されており、各々が内外にほぼ同心の配置で独立した複数(図示例では2体)の筒状構造物を入れ子式に構築可能に構成されている(請求項6記載の発明)。
【0028】
要するに、請求項6に記載したスリップフォーム装置S’は、従来技術に係るスリップフォーム装置S(図20参照)が1体の筒状構造物しか構築できない構造であるのに対し、同時に複数体の筒状構造物を構築できる構造であることが主に大きく相違する。ちなみに、図2中の符号1〜12に係る機器等は、上記従来技術の項で説明した図20中の符号1〜12に対応しているので、その説明は省略する。
【0029】
図3は、図2のX部を拡大して示している。従来技術に係るスリップフォーム装置Sは、図20に示したように、左右の作業床6、6の間に、内外に対向する一対のスライディング型枠1、1と、前記一対のスライディング型枠1、1を共通に支持するヨーク2を1セットしか設けていないのに対し、本実施例1に係るスリップフォーム装置S’は、左右の作業床6、6の間に、内外に対向する一対のスライディング型枠1、1と、前記一対のスライディング型枠1、1を共通に支持するヨーク2を2セット並設した構造で実施している。ちなみに、図3中の符号13は傾斜調整機構(請求項7記載の発明)、符号14は壁厚調整機構(請求項8記載の発明)、符号15は半径調整機構、符号16は周長調整ジャッキカセットを示している。これらの機構等13〜16は格別新規でなく、よってその説明は省略する。
【0030】
かくして、請求項6に記載したスリップフォーム装置S’を使用したスリップフォーム工法は、塔状構造物の建設位置に予め構築したコンクリート基礎Kの上にスリップフォーム装置(移動型枠)S’を組み立て設置し、スリップフォーム装置S’に搭載した2体のスライディング型枠1、1を、塔状構造物20、21を構築する所定高さ(図示例では30m程度)まで順次上方に移動させながら前記2体の型枠1、1間に連続的にコンクリート4を打設すると、図1Dに示したように、内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した2体の筒状構造物20、21を同時に、入れ子式に構築することができるのである。
【0031】
なお、図示例に係るスリップフォーム装置S’によれば、2体の筒状構造物を同時に入れ子式に構築することができるが、図12に示したように、互いに対向する一対のスライディング型枠1、1を3対用意したスリップフォーム装置SSによれば、図10等に示したように、3体の筒状構造物を同時に入れ子式に構築することができる。また、前記一対のスライディング型枠1、1をさらに増設することに応じて、4体以上の筒状構造物を同時に入れ子式に構築することも勿論可能である(請求項6記載の発明)。
【0032】
次に、上記スリップフォーム装置を使用した塔状構造物の構築方法を説明する。
【0033】
この塔状構造物の構築方法は、要するに、図1A〜Dに示したような、前記スリップフォーム工法により入れ子式に構築した複数(2体)の筒状構造物20、21を、図1Eに示したように、内側の筒状構造物20を上方にせり上げて外側の筒状構造物21と一体化する方法である。以下、具体的に説明する。
【0034】
図4A〜Dは、請求項1に係る塔状構造物の構築方法の手順を示している。なお、図示例では、地上60m程度の高さを有する煙突を構築する場合を示している。
【0035】
図4Aは、上記したスリップフォーム装置S’を使用したスリップフォーム工法により構築した前記筒状構造物20、21を詳示している。前記筒状構造物20、21は、上記したように、それぞれ30m程度の高さを有し、内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した状態で入れ子式に構築されている。
【0036】
ちなみに、図中の符号20aは、内側の筒状構造物20の下端部の外側に設けられた突出部を示しており、図中の符号21aは、外側の筒状構造物21の上端部の内側に設けられた突出部を示している。前記突出部20aは、内側の筒状構造物20を吊り上げる際に揚重用連結材23を定着させるための部材であり、当該内側の筒状構造物20の外周面に沿って、前記外側の筒状構造物21の内周面に届く程度の寸法でリング状に設けられている。これに対し、前記突出部21aは、油圧ジャッキ(センターホールジャッキ)22を設置するための部材であり、当該外側の筒状構造物21の内周面に沿って、前記内側の筒状構造物20の外周面に届く程度の寸法で、ほぼ等間隔にバランス良く3箇所設けられている(図5参照)。以下の実施例2についても同様の技術的思想とする。
【0037】
前記内側の塔状構造物20に前記突出部20aを設ける手法は種々考えられるが、本実施例では、予め基礎K上の該当部位にリング状の突出部を仮固定しておいてその後に内側の筒状構造物20を構築する際に一体化している。これに対し、前記外側の筒状構造物21に突出部21aを設ける手法も種々考えられるが、本実施例では、外側の筒状構造物21を構築した後、事後的に取り付けて一体化している。前記突出部20a、21aの材質はコンクリート製、或いは鋼製が好ましい。なお、前記突出部20aは、リング状に限定されるものではなく、前記突出部21aと対応する位置(平面方向に見てほぼ一致する位置)に3箇所設けて実施することもできる。また、前記突出部21aは、3箇所に限定されるものではなく、4箇所以上にバランス良く設けて実施することもできるし、前記突出部20aと同様に内周面全面にリング状に設けて実施することもできる。以下の実施例2についても同様の技術的思想である。
【0038】
かくして、前記内側の筒状構造物(以下、トップタワーと云う。)20と外側の筒状構造物21(以下、ボトムタワーと云う。)は、内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した状態で入れ子式に構築されると共に、前記トップタワー20の下端部に設けた突出部20aと、前記ボトムタワー21の上端部に設けた突出部21aとがガイド的な働きをして水平変位を拘束し、安定した状態でトップタワー20を上昇させることができる構造となるのである。
【0039】
次に、図4Bに示したように、前記ボトムタワー21の突出部21aの上面にリフトアップ用の油圧ジャッキ(センターホールジャッキ)22をバランスよく所要の台数(本実施例では3台)設置する。そして、各油圧ジャッキ22…と、リフトアップするトップタワー20の突出部20aとを、前記トップタワー20の外周面とボトムタワー21の内周面との間に鉛直方向に吊り下げされたワイヤロープ、PC鋼より線、ロッド等の揚重用連結材23で繋ぐ。
【0040】
前記揚重用連結材23は、その上端部を、前記ボトムタワー21の突出部21aに予め設けた通し孔及び前記油圧ジャッキ22へ通し当該油圧ジャッキ22を利用して固定し、その下端部を、前記トップタワー20の突出部20aに予め設けた通し孔へ鉛直方向に通し、定着ナット等の掛け止め部材を利用して前記突出部20aに固定する。
【0041】
次に、図4Cに示したように、前記トップタワー20を、前記ボトムタワー21の突出部21a上に設置した油圧ジャッキ22を利用して、所定の高さまでリフトアップする作業を開始する(請求項4記載の発明)。ここで、図示は省略するが、必要に応じて、バランス制御用のステーワイヤー及びウィンチを使用することが安全上好ましい。このステーワイヤーは、ウィンチを用い、リフトアップ用の前記油圧ジャッキ22と連動させながら制御する。
【0042】
かくして、前記油圧ジャッキ22を作動させて、前記揚重用連結材23及びこれに吊り支持された前記トップタワー20の突出部20aを徐々に上昇移動(リフトアップ)させて当該トップタワー20を上昇させる。前記トップタワー20は、ガイド的な働きをし水平変位を拘束する前記突出部20a、21aと、必要に応じて設置するバランス制御用の前記ステーワイヤー及びウィンチにより、安定した状態で徐々に上昇する。
【0043】
また、前記トップタワー20を更に安定した状態で(特には、無回転のまま)上昇させるべく、図6に示したように、前記トップタワー20の外側面に、水平断面がコ字形状のガイド24を鉛直方向に設け、前記ボトムタワー21の内側面に前記ガイド24に沿ってスライド可能なレール25を鉛直方向に設けて実施することが好ましい。勿論、前記トップタワー20の外側面にレール25を設け、前記ボトムタワー21の内側面にガイド24を設けて実施することもできる。なお、前記ガイド24及びレール25の水平断面形状は図示例に限定されるものではなく、前記トップタワー20を無回転のままボトムタワー21に沿って上昇させることができる形状であればよい(請求項5記載の発明)。
【0044】
前記油圧ジャッキ22によるリフトアップ作業は、前記トップタワー20の突出部20aの上面が、前記ボトムタワー21の突出部21aの下面に当接するまで行う。前記油圧ジャッキ22によるリフトアップ作業が終了した後は、図7A、Bに示したように、前記油圧ジャッキ22から緊結用鋼材26へ徐々にトップタワー20の荷重を盛り替え、前記トップタワー20の突出部20aとボトムタワー21の突出部21aとの緊結作業を行う。しかる後、前記油圧ジャッキ22と揚重用連結材23とを撤去し、かくして、図4Dに示したように、高さが60m程度の煙突(塔状構造物)の構築作業を完了する。
【0045】
具体的に、この実施例1に係る緊結作業は、前記突出部20a、21aに予め穿設しておいた鉛直方向のボルト孔を一致させ、当該ボルト孔に高力ボルト26aを挿入し、ナット26bで締め付け固定し、必要に応じて、底面部の前記突出部20aと側面部の前記ボトムタワー21の内周面とが形成する凹部にコンクリートを打設して、前記トップタワー20とボトムタワー21とを構造的に一体化している。ちなみに、前記突出部20a、21aに設けた前記ボルト孔の一部は、前記揚重用連結材23の通し孔として使用される。
【0046】
前記緊結手段は勿論これに限定されず、前記トップタワー1とボトムタワー2とを構造的に一体化できる方法であればよい。例えば、図8A、Bに示したように、前記突出部20aと突出部21aの双方に埋め込まれた縦筋27aと前記突出部21aを水平方向に貫通する横筋27bとから成る緊結用鉄筋27にコンクリートを打設して、前記トップタワー20とボトムタワー21とを構造的に一体化して実施してもよい。また、図9に示したように、前記突出部21aに、水平方向に貫通するI形鋼(又はH形鋼)28を設け、前記突出部20aに立設する鋼管29と溶接及びボルト等の接合手段で一体化して実施してもよい。
【0047】
以上説明したように、上記実施例1によれば、塔状構造物の構成要素である筒状構造物(トップタワー20及びボトムタワー21)を、上記スリップフォーム装置S’を使用したスリップフォーム工法により、30m程度の比較的低い背で、同時に、内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した状態で入れ子式に構築することができる。よって、上記した従来技術と比して、塔状構造物を構築するのに要する工期を全体的に大幅(約1/2)に短縮することができ、コスト削減に大きく寄与する。また、高所作業を極力回避して構築作業をスムーズに行うことができ、それでいて、60m程度の高さを有する大型化した塔状構造物を構築することができる。
【0048】
なお、この実施例1では、前記トップタワー20を、前記ボトムタワー21の上端部に反力をとりリフトアップする手段で上昇させているが、これに限定されず、前記トップタワー20の突出部20aの下面部の外周縁部に油圧ジャッキを設置し、前記ボトムタワー21の内周面に設けた反力ピースを利用してプッシュアップする手段で上昇させることもできる(請求項4記載の発明)。以下の実施例2についても同様の技術的思想とする。
【実施例2】
【0049】
図10と図11は、請求項2に記載した塔状構造物の構築方法の手順を段階的に示している。この実施例2に係る塔状構造物の構築方法は、上記した実施例1と比して、図12に示したような、左右の作業床6、6の間に、内外に対向する一対のスライディング型枠1、1と、前記一対のスライディング型枠1、1を共通に支持するヨーク2を3セット並設したスリップフォーム装置SSを使用して、3体の筒状構造物を各々独立した状態で同時に入れ子式に構築すること、及び前記筒状構造物を煙突ではなく、風力発電タワーとして実施することが主に相違する。
【0050】
即ち、この塔状構造物の構築方法は、図10A〜Dに示したように、前記スリップフォーム装置SSを使用したスリップフォーム工法により、内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した複数(本実施例では3体)の筒状構造物30、40、50を入れ子式に構築する。続いて、図11A〜Cに示したように、最も外側の筒状構造物50を基礎に固定し、最も内側の筒状構造物30を、その外側に隣接する筒状構造物40に反力をとって上昇させ、上昇限度に到達した段階で、前記内側の筒状構造物30の下端部をその外側に隣接する筒状構造物40の上端部に緊結し、次いで前記外側の筒状構造物40を更に外側の筒状構造物50に反力をとって上昇させ、上昇限度に到達した段階で、前記外側の筒状構造物40の下端部を更に外側の筒状構造物50の上端部に緊結する工程を、最も外側の筒状構造物50の内側に隣接する筒状構造物40を上昇させるまで順次行うステップにより塔状構造物を構築することを特徴とする。なお、この実施例2では3体の筒状構造物で実施しているが、スリップフォーム装置の性能に応じて4体以上で実施することも勿論できる。(請求項2記載の発明)。以下、具体的に説明する。
【0051】
図11Aと図13Aは、前記スリップフォーム装置SSを使用したスリップフォーム工法により、内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した3体の筒状構造物30、40、50を、地上40m程度の高さで、入れ子式に構築した状態を示している。、
【0052】
なお、本実施例2では、塔状構造物を風力発電タワーで実施するべく、最も内側に位置する筒状構造物30(以下、トップタワーと云う。)を上昇させるステップに先行して、予め当該トップタワー30の頭部にナセル(発電機本体)31、ローターブレード32等の風力発電機器を据え付けている(請求項3記載の発明)。そのため、前記トップタワー30は、その外側に隣接する筒状構造物(以下、ミドルタワーと云う。)40、及び更に外側に隣接する筒状構造物(以下、ボトムタワーと云う。)50と比して、前記風力発電機器を据え付け易くするべく、若干背を高くして構築することが作業上好ましい。、
【0053】
ちなみに、図13A中の符号30aはベース部材を示しており、前記トップタワー30の下端部を閉塞する円盤状で実施しているが、上記実施例1で説明したような突出部20aで実施することも勿論できる。符号40aは、前記突出部20aと同様の突出部を示している。符号40bと50bは、上記実施例1で説明した突出部21aと同様の突出部を示している。
【0054】
かくして、前記トップタワー30とミドルタワー40とボトムタワー50は、内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した状態で入れ子式に構築されると共に、前記ベース部材30a、及び突出部40a、40b、50bとが、ガイド的な働きをして水平変位を拘束し、安定した状態でトップタワー30及びミドルタワー40を上昇させることができる構造となるのである。
【0055】
次に、図13Aに示したように、前記ミドルタワー40の突出部40bの上面にリフトアップ用の油圧ジャッキ(センターホールジャッキ)22を、上記実施例1と同様に、バランスよく所要の台数(本実施例では3台)設置する。そして、各油圧ジャッキ22と、リフトアップするトップタワー30のベース部材30aとを、前記トップタワー30の外周面とミドルタワー40の内周面との間に鉛直方向に吊り下げされたワイヤロープ、PC鋼より線、ロッド等の揚重用連結材23で繋ぐ。ちなみに、この油圧ジャッキ22及び揚重用連結材23の取り付け作業は、前記風力発電機器の据え付け作業に先行して行ってもよいし、並行して行ってもよい。
【0056】
前記揚重用連結材23は、その上端部を前記突出部40bに予め設けた通し孔及び前記油圧ジャッキ22へ通し当該油圧ジャッキ22を利用して固定し、その下端部を前記ベース部材30aへ予め設けた通し孔へ鉛直方向に通し、定着ナット等の掛け止め部材を利用して前記ベース部材30aに固定する。
【0057】
以下に、前記トップタワー30とミドルタワー40を上昇させる工程を順に説明する。
【0058】
前記ナセル31、ローターブレード32等の風力発電機器を据え付け、入れ子式に構築したトップタワー30及びミドルタワー40並びにボトムタワー50について、図14に示したように、前記トップタワー30を、前記ミドルタワー40の突出部40b上に設置した油圧ジャッキ6を利用して、所定の高さまでリフトアップする作業を開始する(請求項4記載の発明)。
【0059】
ここで、前記風力発電機器を据え付けたトップタワー30の重心位置は、構築する風力発電タワーの重心位置とは一致せず、リフトアップ時に偏心荷重が生じる。この偏心荷重を相殺してリフトアップをスムーズに行うために、バランス制御用のステーワイヤーを使用することが安全上好ましい。このステーワイヤーは、ウィンチを用い、リフトアップ用の油圧ジャッキ22と連動させながら制御する。また、前記ウィンチ(ステーワイヤー)は、必要に応じて1箇所から複数箇所設置して実施する。
【0060】
かくして、前記油圧ジャッキ6を作動させて、前記揚重用連結材23及びこれに吊り支持されたベース部材30aを徐々に上昇移動(リフトアップ)させて前記トップタワー30を上昇させる。前記トップタワー30は、ガイド的な働きをし水平変位を拘束する前記ベース部材30a及び突出部40bと、バランス制御する前記ステーワイヤー及び前記ウィンチにより、安定した状態で徐々に上昇する。
【0061】
また、前記トップタワー30をさらに安定した状態で(特には、無回転のまま)上昇させるべく、前記トップタワー30の外側面に、ガイド24を鉛直方向に設け、前記ミドルタワー40の内側面に、前記ガイド24に沿ってスライド可能なレール25を鉛直方向に設けて実施することが好ましいのは、上記実施例1で説明した通りである(図6参照、請求項5記載の発明)。
【0062】
前記油圧ジャッキ22によるリフトアップ作業は、前記トップタワー30のベース部材30aの上面が、前記ミドルタワー40の突出部40bの下面に当接するまで行う。前記油圧ジャッキ22によるリフトアップ作業が終了した後は、図15に示したように、上記実施例1で種々説明した手段(図7〜図9参照)で、前記トップタワー30のベース部材30aとミドルタワー40の突出部40bとの緊結作業を行う。
【0063】
次に、図16に示したように、前記ミドルタワー40を、前記ボトムタワー50の突出部50b上に設置した油圧ジャッキ22を利用して、所定の高さまでリフトアップする作業を開始する(請求項4記載の発明)。
【0064】
前記油圧ジャッキ22は、前記ボトムタワー50の突出部50bの上面に、上記実施例1と同様に、バランスよく所要の台数(本実施例では3台)設置する。そして、各油圧ジャッキ22…と、リフトアップするミドルタワー40の突出部40aとを、前記ミドルタワー40の外周面とボトムタワー50の内周面との間に鉛直方向に吊り下げされたワイヤロープ、PC鋼より線、ロッド等の揚重用連結材23で繋ぐ。
【0065】
前記揚重用連結材23は、その上端部を前記突出部50bに予め設けた通し孔及び前記油圧ジャッキ22へ通し当該油圧ジャッキ22を利用して固定し、その下端部を前記突出部40aへ予め設けた通し孔へ鉛直方向に通し、定着ナット等の掛け止め部材を利用して前記突出部40aに固定する。ここで、バランス制御用のステーワイヤーとウィンチを使用することは、上記した通りである。
【0066】
かくして、前記油圧ジャッキ22を作動させて、前記揚重用連結材23及びこれに吊り支持された突出部40aを徐々に上昇移動(リフトアップ)させて前記ミドルタワー40を上昇させる。前記ミドルタワー40は、ガイド的な働きをし水平変位を拘束する前記突出部40a、50bと、バランス制御する前記ステーワイヤー及び前記ウィンチにより、安定した状態で徐々に上昇する。
【0067】
また、前記ミドルタワー40を安定した状態で(特には、無回転のまま)上昇させるべく、前記ミドルタワー40の外側面にガイド24を鉛直方向に設け、前記ボトムタワー50の内側面に前記ガイド24に沿ってスライド可能なレール25を鉛直方向に設けて実施することが好ましいのは、上記した通りである(図6参照、請求項5記載の発明)。
【0068】
前記油圧ジャッキ22によるリフトアップ作業は、前記ミドルタワー40の突出部40aの上面が、前記ボトムタワー50の突出部50bの下面に当接するまで行う。前記油圧ジャッキ22によるリフトアップ作業が終了した後は、図17に示したように、上記実施例1で種々説明した手段(図7〜図9参照)で、前記ミドルタワー40の突出部40aとボトムタワー50の突出部50bとの緊結作業を行い、かくして、高さが120m程度の塔状構造物の構築作業を完了する。
【0069】
以上説明したように、上記実施例2によれば、塔状構造物の構成要素である筒状構造物(トップタワー30及びミドルタワー40並びにボトムタワー50)を、上記スリップフォーム装置SSを使用したスリップフォーム工法により、40m程度の比較的低い背で、同時に、内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した状態で入れ子式に構築することができる。よって、上記した従来技術と比して、塔状構造物を構築するのに要する工期を全体的に大幅(約1/3)に短縮することができ、コスト削減に大きく寄与する。また、高所作業を極力回避して構築作業をスムーズに行うことができ、それでいて、120m程度の高さを有する大型化した塔状構造物を構築することができる。
【0070】
また、前記ナセル31及びローターブレード32等の風力発電機器の据え付け作業を地上40m程度の比較的低所で行うことができ、それでいて120m程度の高さを有する塔状構造物を構築することができる。よって、大型クレーンおよび大掛かりな仮設部材が一切不要となり、工期も短縮でき、安全性及び経済性に非常に優れている。
【0071】
さらに、前記風力発電機器が劣化等して取り替える必要が生じたときは、構築時と逆の工程を行う。即ち、前記ミドルタワー40の突出部40aとボトムタワー50の突出部50bとの緊結状態を解除し、当該ミドルタワー40を地上に到達するまで下降させ、次いで前記トップタワー30のベース部材30aとミドルタワー40の突出部40bとの緊結状態を解除し、当該トップタワー30を地上に到達するまで下降させた後に取り替え作業を行う。よって、風力発電機器の取り替え作業もやはり地上40m程度の比較的低所で行うことができるので、大型クレーンおよび大掛かりな仮設部材は必要とせず、工期も短縮でき、安全性および経済性に非常に優れている。
【0072】
以上に実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の実施例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【0073】
例えば、160m程度の高さの塔状構造物を構築する場合には、高さ40m程度の筒状構造物を4体、入れ子式に構築し、上記説明したように、内側の筒状構造物を、外側に隣接する筒状構造物に反力をとって上昇させ、上昇限度に到達した段階で、前記内側の筒状構造物の下端部をその外側に隣接する筒状構造物の上端部に緊結する工程を、最も内側の筒状構造物から最も外側の筒状構造物へ順次行うのである。前記筒状構造物の高さは1体当たり20m〜40m程度が好ましいがこれに限定されるものではなく、筒状構造物の個数も5体以上でも実施することができる等、フレキシブルに組み合わせることができ、200m程度の高さの塔状構造物を構築することも可能である。
【0074】
また、この実施例1と実施例2に係る塔状構造物は、所謂寸胴形状で実施しているがこれに限定されず、スリップフォーム装置S’、SSに係るスライディング型枠1、1を共通に支持するヨーク2を、図18に示したように、傾斜可能な機構で実施することにより、図19A、Bに概略的に示したように、筒状構造物Tをテーパー状に構築して実施することもできる(請求項7記載の発明)。さらに、この実施例1と実施例2に係る塔状構造物は、円筒形状で実施しているがこれに限定されず、スリップフォーム装置S’、SSに係るスライディング型枠1、1の形状を、平面方向から見て方形状に形成する等して、多角形状で実施することもできる(請求項9記載の発明)
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】A〜Eは、実施例1に係るスリップフォーム装置を使用した塔状構造物の構築方法を段階的に示した概略図である。
【図2】実施例1の実施に使用するスリップフォーム装置を示した立面図である。
【図3】図2の符号X部を拡大して示した立面図である。
【図4】A〜Dは、筒状構造物の構築方法を段階的に示した立面図である。
【図5】トップタワーとボトムタワーの構造を概略的に示した平面図である。
【図6】ガイドとレールの取り付け構造を概略的に示した平面図である。
【図7】Aは、トップタワーとボトムタワーとを緊結する方法を概略的に示した縦断面図であり、Bは、同平面図である。
【図8】Aは、トップタワーとボトムタワーとを緊結するその他の方法を概略的に示した縦断面図であり、Bは、同平面図である。
【図9】トップタワーとボトムタワーとを緊結するその他の方法を概略的に示した縦断面図である。
【図10】A〜Dは、実施例2に係るスリップフォーム装置を使用したスリップフォーム工法により筒状構造物を構築する工程を段階的に示した概略図である。
【図11】A〜Cは、実施例2に係るスリップフォーム装置を使用した塔状構造物の構築方法を段階的に示した概略図である。
【図12】実施例2の実施に使用するスリップフォーム装置を示した立面図である。
【図13】Aは、実施例2に係る塔状構造物の構築方法の初期状態を概略的に示した縦断面図であり、Bは、同平面図である。
【図14】トップタワーを上昇させる段階を概略的に示した縦断面図である。
【図15】トップタワーとミドルタワーを緊結した状態を概略的に示した縦断面図である。
【図16】ミドルタワーを上昇させる段階を概略的に示した縦断面図である。
【図17】ミドルタワーとボトムタワーを緊結し、実施例2に係る塔状構造物の構築を完了した段階を概略的に示した縦断面図である。
【図18】スリップフォーム装置に係る異なる実施例を示した立面図である。
【図19】A、Bは、スリップフォーム装置を使用した塔状構造物の構築方法の異なる実施例を段階的に示した概略図である。
【図20】従来技術に係るスリップフォーム装置を示した立面図である。
【図21】A〜Dは、従来技術に係るスリップフォーム装置を使用した塔状構造物の構築方法を段階的に示した概略図である。
【符号の説明】
【0076】
1 スライディング型枠
2 ヨーク
3 クライミング機構
3a 上昇ジャッキ
3b 鞘管
4 コンクリート
5 ロッド
6 作業床
7 タワーバケット
8 カメラ
9 レーザー垂直器
10 保護カバー
11 ワイヤー
12 上段の作業床
13 傾斜調整機構
14 壁厚調整機構
15 半径調整機構
16 周長調整ジャッキカセット
20 トップタワー
20a、21a 突出部
21 ボトムタワー
22 油圧ジャッキ(センターホールジャッキ)
23 揚重用連結材
24 ガイド
25 レール
26 緊結用鋼材
26a 高力ボルト
26b ナット
27 緊結用鉄筋
27a 縦筋
27b 横筋
28 I形鋼
29 鋼管
30 トップタワー
30a、 ベース部材
31 ナセル(発電機本体)
32 ローターブレード
40 ミドルタワー
40a、40b、50b 突出部
50 ボトムタワー
K 基礎
S、S’、SS スリップフォーム装置
T 塔状構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した2体の筒状構造物を入れ子式に構築するステップと、
外側の筒状構造物を基礎に固定し、内側の筒状構造物を、前記外側の筒状構造物に反力をとって上昇させ、上昇限度に到達した段階で、前記内側の筒状構造物の下端部を前記外側の筒状構造物の上端部に緊結するステップにより塔状構造物を構築することを特徴とする、塔状構造物の構築方法。
【請求項2】
内外にほぼ同心の配置とされ、且つ各々独立した複数の筒状構造物を入れ子式に構築するステップと、
最も外側の筒状構造物を基礎に固定し、最も内側の筒状構造物を、その外側に隣接する筒状構造物に反力をとって上昇させ、上昇限度に到達した段階で、前記内側の筒状構造物の下端部をその外側に隣接する筒状構造物の上端部に緊結し、次いで前記外側の筒状構造物を更に外側の筒状構造物に反力をとって上昇させ、上昇限度に到達した段階で、前記外側の筒状構造物の下端部を更に外側の筒状構造物の上端部に緊結する工程を、最も外側の筒状構造物の内側に隣接する筒状構造物を上昇させるまで順次行うステップにより塔状構造物を構築することを特徴とする、塔状構造物の構築方法。
【請求項3】
最も内側に位置する筒状構造物を上昇させるステップに先行して、当該筒状構造物の頭部に、ナセル、ローターブレード等の風力発電機器を据え付けることを特徴とする、請求項1又は2に記載した塔状構造物の構築方法。
【請求項4】
筒状構造物を上昇させる手段は、その外側に隣接する筒状構造物自体を反力架台としてリフトアップ、又はプッシュアップすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した塔状構造物の構築方法。
【請求項5】
上昇する筒状構造物の外側面と、その外側に隣接する筒状構造物の内側面のいずれか一方にガイドを鉛直方向に設け、他方に前記ガイドに沿ってスライド可能なレールを鉛直方向に設けることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載した塔状構造物の構築方法。
【請求項6】
内外に対向する一対のスライディング型枠と、前記一対のスライディング型枠を共通に支持するヨークと、同ヨークを上下移動させるクライミング機構とを備え、前記型枠間にコンクリートを打設して筒状構造物を構築するスリップフォーム装置であって、
前記一対のスライディング型枠は、内外にほぼ同心の配置で複数対設置されており、各々が内外にほぼ同心の配置で独立した複数の筒状構造物を入れ子式に構築可能に構成されていることを特徴とする、スリップフォーム装置。
【請求項7】
内外に対向する一対のスライディング型枠を共通して支持するヨークは、筒状構造物をテーパー状に構築できる傾斜可能な機構とされていることを特徴とする、請求項6に記載したスリップフォーム装置。
【請求項8】
内外に対向する一対のスライディング型枠は、筒状構造物の壁厚を調整可能な構成とされていることを特徴とする、請求項6又は7に記載したスリップフォーム装置。
【請求項9】
内外に対向する一対のスライディング型枠は、その水平断面形状を円形状、又は多角形状に形成されていることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一に記載したスリップフォーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−70884(P2007−70884A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258883(P2005−258883)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】