説明

塩素バイパスシステム及び塩素バイパス抽気ガスの処理方法

【課題】低コストで、セメント焼成系の熱損失の増加及びクリンカ生産量の低下を回避し、硫黄分、有機分、塩素分の濃縮及び煙突からの系外への排出を抑制しながら塩素バイパス排ガスを処理する。
【解決手段】セメントキルン2の窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気するプローブ3と、プローブによる抽気ガスG1に含まれるダストD2を集塵する乾式集塵機8と、集塵後の排ガスG3に含まれる有害成分を除去・回収する装置11とを備える塩素バイパスシステム1。清浄化された抽気ガス(排ガスG4)を、セメントキルンに付設されたプレヒータの出口側に設置された誘引ファンの出口側に供給することで、塩素バイパス率を大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントキルンの窯尻からプレヒータの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気して塩素を除去する塩素バイパスシステム、及びその排ガスを処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント製造設備におけるプレヒータの閉塞等の問題を引き起こす原因となる塩素、硫黄、アルカリ等の中で、塩素が特に問題となることに着目し、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気して塩素を除去する塩素バイパスシステムが用いられている。
【0003】
このような塩素バイパスシステムとして、図2に示すように、セメントキルン32の窯尻から最下段サイクロン(不図示)に至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気するプローブ33と、プローブ33内に冷風を供給して抽気ガスG1を急冷する冷却ファン34と、抽気ガスG1に含まれるダストの粗粉D1を分離する分級機としてのサイクロン35と、サイクロン35から排出された微粉D2を含む抽気ガスG2を冷却する冷却器36と、冷却器36に冷風を供給する冷却ファン37と、冷却器36で冷却された抽気ガスG2中のダストの微粉D2を集塵するバグフィルタ38と、冷却器36及びバグフィルタ38から排出された微粉D2を回収するダストタンク39等を備える塩素バイパスシステム31が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記塩素バイパスシステム31では、バグフィルタ38の排ガスG3に多量のSOが含まれるため、この排ガスG3をそのまま系外へ放出することができず、排気ファン40を介して、排ガスG3をセメントキルン32の排ガスを誘引するファン(IDF)側に戻していた。この際、排ガスG3をセメントキルン32に付設されるプレヒータに戻すと、セメント焼成系の熱損失の増加及びクリンカ生産量の低下を招くとともに、硫黄分の濃縮によるコーチングトラブルなどを引き起こすという問題がある。
【0005】
他方、上記排ガスG3をセメント原料焼成系の燃料燃焼用空気として利用する方法が提案されているが、本方法では前述と同様に硫黄分が焼成工程に濃縮するため、硫黄分の濃縮によるコーチングトラブルなどを引き起こすという問題がある(特許文献2参照)。
【0006】
そこで、上記種々の問題を解決するため、図3に示すように、セメントキルン62の窯尻から最下段サイクロン(不図示)に至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気するプローブ63と、プローブ63内に冷風を供給して抽気ガスG1を急冷する冷却ファン64と、抽気ガスG1に含まれるダストの粗粉D1を分離する分級機としてのサイクロン65と、サイクロン65からの抽気ガスG2に含まれる微粉D2を集塵する湿式集塵機66と、湿式集塵機66から排出されるスラリーS2をケークCとろ液Lとに固液分離する固液分離器67とを備える塩素バイパスシステム61が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
この塩素バイパスシステム61では、サイクロン65からの抽気ガスG2中のSOを、湿式集塵機66を循環するスラリーS1に含まれるカルシウム分と反応させ、固液分離器67のケークC側に石膏として回収することで、排ガスG3をセメントキルン62の排ガスを誘引するファン(IDF)側に戻しても、煙突から大気に放出される排ガス中のSOの増加を招くことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−035354号公報
【特許文献2】特許第355246号公報
【特許文献3】特開2004−002143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、図3に示した塩素バイパスシステム61は、塩素を除去しながらセメント焼成系の熱損失の増加及びクリンカ生産量の低下を回避し、硫黄分の濃縮も抑制することができるという特長を有する。しかし、塩素と硫黄を同時に除去するための湿式集塵機66やろ液Lを処理する排水処理設備(不図示)が必要となるため、設備コストやランニングコストが上昇する。特に、上記塩素バイパスシステム31から塩素バイパスシステム61へ移行するには、多額の設備投資が必要となるという問題がある。そこで、低コストで、上記塩素バイパスシステム31の諸問題を解決すると同時に、前記排ガスに含まれる有機分の除去、及び塩素除去効率の向上のための改善が望まれていた。
【0010】
本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、塩素バイパス排ガスを処理するにあたり、低コストで、セメント焼成系の熱損失の増加及びクリンカ生産量の低下を回避し、硫黄分の濃縮や系外への排出も抑制し、前記排ガスに含まれる有機分及び塩素分を同時に処理することが可能な塩素バイパスシステム及び塩素バイパス抽気ガスの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、塩素バイパスシステムであって、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気するプローブと、該プローブで抽気した燃焼ガスに含まれるダストを集塵する乾式集塵機と、該集塵後の抽気ガスに含まれる有害成分を除去・回収する装置とを備えることを特徴とする。
【0012】
そして、本発明によれば、乾式集塵機によってプローブで抽気した燃焼ガスに含まれるダストを集塵した後、抽気ガスに含まれる有害成分を除去する装置で該抽気ガスに含まれる有機分等の有害成分及び塩素分を同時に処理可能であるため、新たに湿式集塵機や固液分離後の重金属等の高度な排水処理の設備を設置する必要がなく、低コストで塩素バイパス排ガスを処理することができる。
【0013】
また、前記装置で抽気ガス中の有害成分を除去・回収するため、前記塩素バイパス排ガスをセメント原料焼成系の燃料燃焼用空気として利用したり、セメントキルンに付設されたプレヒータに戻す必要もなく、セメント焼成系の熱損失の増加及びクリンカ生産量の低下を招くこともない。さらに、硫黄分の濃縮によるコーチングトラブルも回避することができる。また、抽気ガス中の有害成分を除去・回収しているため、塩素バイパス排ガスをセメントキルンの排ガスを誘引するファン(IDF)側以降に戻した場合でも、煙突から大気に放出される排ガス中の有害成分が増加することもない。
【0014】
上記塩素バイパスシステムは、前記除去・回収装置によって有害成分が除去・回収された抽気ガスを、前記セメントキルンに付設されたプレヒータの出口側に設置された誘引ファンの出口側に供給することができる。これにより、塩素バイパス排ガスをセメントキルンの排ガスを誘引するファン(IDF)側以降に戻しても、煙突から大気に放出される排ガス中の有害成分を抑制しながら、キルン内通風量を増加させ、クリンカ生産量を増加させることができる。
【0015】
上記塩素バイパスシステムは、前記乾式集塵機の前段に、前記プローブで抽気した燃焼ガスを冷却する冷却器、又は該燃焼ガスより熱を回収する熱交換器を備えることができ、また、前記乾式集塵機の前段に、前記プローブで抽気した燃焼ガスに含まれるダストの粗粉を分離する分級機を備え、前記乾式集塵機は、該分級機から排出された微粉を含む抽気ガスを集塵することもできる。
【0016】
前記除去・回収される有害成分は、硫黄分、有機分及びガス状塩素化合物から選択される少なくともいずれか一つとすることができる。有機分には、VOCやPOPs等が含まれる。これらの有害成分は、原燃料としてセメント製造設備で使用される廃棄物中に含まれる成分、及び不完全燃焼等により発生し、該プローブで抽気した燃焼ガスにとともに抽気された成分であり、ダストに吸着されないため、前記排ガスとともに排出されるが、本システムではそれらを除去・回収することで、前記排ガスを清浄化することができる。
【0017】
前記有害成分を除去・回収する装置は、アルカリ成分を溶解又はスラリー化した溶液を循環させた吸着・吸収塔とすることができ、導入した抽気ガスの除塵機能を有することを不要とすることを特徴とする。塩素バイパスシステムで回収するダストは数μmと微細なため、従来の吸着・吸収塔では圧損が高くなるなど、ランニングコストが高くなる虞があるが、本システムでは、前記ダストを捕集しているため、その機能を最小限に抑えることができる。
【0018】
前記吸着・吸収塔におけるスラリーの塩素濃度を2%以下とすることができる。塩素濃度が2%以上では、吸着・吸収塔で生成した二水石膏が溶解しやすくなり、スケールが発生し、運転の支障となる。また、高度の排水処理が必要になり好ましくない。
【0019】
前記吸着・吸収塔から排出されたスラリーを固液分離して得られたケーキをセメントに添加処理することができる。
【0020】
また、本発明は、塩素バイパス抽気ガスの処理方法であって、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気し、該抽気した燃焼ガスに含まれるダストを乾式集塵し、該集塵後の抽気ガスに含まれる有害成分を除去・回収し、該有害成分を除去・回収した後の抽気ガスを、前記セメントキルンに付設されたプレヒータの出口側に設置された誘引ファンの出口側に供給することを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、低コストで塩素バイパス排ガスを処理することができ、セメント焼成系の熱損失の増加及びクリンカ生産量の低下を招くこともなく、その一方でクリンカ生産量を増加させることが可能となり、硫黄分の濃縮によるコーチングトラブルなども回避することができる。また、熱損失の増加及び減産の懸念がなくなり、煙突から大気に放出される排ガス中のSOや有機分(VOCやPOPs他)、塩素分が増加することもなくなるため、塩素バイパス率を大きくすることもできる。
【0021】
上記塩素バイパス抽気ガスの処理方法において、前記乾式集塵を行う前に、前記キルン排ガス流路より抽気した燃焼ガスの一部を冷却することができ、前記乾式集塵を行う前に、前記キルン排ガス流路より抽気した燃焼ガスの一部に含まれるダストの粗粉を分離し、微粉を含む抽気ガスを乾式集塵することができる。
【0022】
また、前記除去・回収される有害成分は、硫黄分、有機分及びガス状塩素化合物から選択される少なくともいずれか一つとすることができ、有機分としてVOCやPOPs等を除去・回収することができる。
【0023】
さらに、塩素バイパス抽気率を1%以上30%以下にすることができる。塩素バイパス排ガスをセメントキルンに付設されたプレヒータに戻した場合、セメントクリンカ生産量が減少するため、生産コストが増大する。本システムを導入することにより、前記排ガスに含まれる有害成分が除去されるため、セメントキルンの排ガスを誘引するファン(IDF)側以降に戻した場合でも、煙突から大気に放出される排ガス中のSOや有機分(VOCやPOPs他)、塩素成分が増加することがなくなるため、最低限の抽気による熱損失だけに留めることができ、減産を行うことなく、増産効果を得ることができる。
【0024】
該燃焼ガスに含まれる集塵後の排ガスの温度を50℃以上200℃以下にすることを特徴とする。排ガス温度が200℃を超えると、水の蒸発量が多くなるため大量の水が必要になると共に、固形分がダクトや除去・回収装置内に付着するため好ましくない。一方、50℃未満では設備の腐食による老朽化、修繕費の増加となるため好ましくない。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明にかかる塩素バイパスシステム及び塩素バイパス抽気ガスの処理方法によれば、低コストで、セメント焼成系の熱損失の増加及びクリンカ生産量の低下を回避し、増産効果を得ることができる。また、硫黄分をはじめとする有害成分の濃縮や系外への排出を抑制しながら塩素バイパス排ガスを処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる塩素バイパスシステムの一実施の形態を示すフロー図である。
【図2】従来の塩素バイパスシステムの一例を示すフロー図である。
【図3】従来の塩素バイパスシステムの他の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明にかかる塩素バイパスシステムの一実施の形態を示し、この塩素バイパスシステム1は、セメントキルン2の窯尻から最下段サイクロン(不図示)に至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気するプローブ3と、プローブ3内に冷風を供給して抽気ガスG1を急冷する冷却ファン4と、抽気ガスG1に含まれるダストの粗粉D1を分離する分級機としてのサイクロン5と、サイクロン5から排出された微粉D2を含む抽気ガスG2を冷却する冷却器6と、冷却器6に冷風を供給する冷却ファン7と、冷却器6で冷却された抽気ガスG2中の微粉D2を集塵するバグフィルタ8と、冷却器6及びバグフィルタ8から排出された微粉D2を回収するダストタンク9と、バグフィルタ8から排出される排ガスG3を清浄化する吸着・吸収塔11とで構成され、図2に示した従来の塩素バイパスシステム31の排ガス処理系の下流側に吸着・吸収塔11を設置し、吸着・吸収塔11の排ガスG4をセメントキルン2の排ガスを誘引するファン(IDF)側に戻すことを特徴とする。
【0029】
吸着・吸収塔11は、微粉D2を除去した後の排ガスG3に含まれる硫黄分(SO等)や有機分(VOCやPOPs等)、塩素分(ガス状塩素化合物)を除去するために備えられ、吸着・吸収塔11内に薬剤としての消石灰等を噴霧して硫黄分や有機分、塩素分を除去する。
【0030】
消石灰(Ca(OH))を噴霧した場合には、排ガスG3中に存在するSO、HClは消石灰と以下のように反応する。
SO+Ca(OH)→CaSO・1/2HO+1/2H
CaSO・1/2HO+1/2O+3/2HO→CaSO・2H
2HCl+Ca(OH)→CaCl+2H
【0031】
これにより、排ガスG3中のSOを回収するとともに、石膏(CaSO・2HO)を生成させることができ、HClは排水とともにセメント製造工程系外に排出できる。尚、脱硫剤としては、消石灰以外にも、生石灰、仮焼したセメント原料(プレヒータの最下段サイクロン等から分取したセメント原料)、石炭灰等を用いることもできる。
【0032】
次に、上記塩素バイパスシステム1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0033】
セメントキルン2の窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部をプローブ3によって抽気すると同時に、冷却ファン4からの冷風によって、塩素化合物の融点である600〜700℃以下にまで急冷する。次いで、サイクロン5において、プローブ3から排気される抽気ガスG1を、粗粉D1と、微粉D2を含む抽気ガスG2とに分離し、粗粉D1をセメントキルン系に戻す一方で、抽気ガスG2を冷却器6で冷却する。その後、バグフィルタ8において、抽気ガスG2中の微粉D2を集塵し、塩素バイパスダストとしてダストタンク9に回収する。
【0034】
その一方で、微粉D2が除去されたガスG3を排気ファン10を介して吸着・吸収塔11に供給し、排ガスG3に脱硫剤としての消石灰等を噴霧する。これにより、ガスG3中の硫黄分や塩素分を消石灰等と反応させて石膏や塩化カルシウムを生成させる。また、有機分は化学反応しないが、循環するスラリーに捕捉される。硫黄分や有機分、塩素分が除去された排ガスG4は、セメントキルン2の排ガスを誘引するファン(IDF)側に戻す。
【0035】
尚、上記本実施の形態においては、吸着・吸収塔11において消石灰等を噴霧してガスG3中の硫黄分を石膏として回収する消石灰−石膏方式を例示したが、これに限らず、水酸化マグネシウム(Mg(OH))や、重曹(NaHCO)を薬剤として使用することもできる。この場合、水酸化マグネシウムは、SO、HClと反応して硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムとなり、重曹は、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムとなって水に溶解する。
【0036】
以上のように、本実施の形態によれば、湿式集塵機や高度な排水処理設備を導入せずに、吸着・吸収塔11によって排ガスG3中の硫黄分を回収することができるため、塩素バイパス排ガスを、低コストで、セメント焼成系の熱損失の増加及びクリンカ生産量の低下を回避し、硫黄分の濃縮や系外への排出を抑制しながら処理することができる。その一方、キルン内通風量が増加するため、キルンでの焼成熱量を増やすことができ、それにより増産が可能となる。
【0037】
吸着・吸収塔11は、スプレー式、流動層式、充填式、多孔板式、高圧噴霧式など、有害物質の除去が可能なものであれば何れのタイプのものでも良い。
【0038】
尚、硫黄分が除去された排ガスG4をセメントキルン2の排ガスを誘引するファン(IDF)以降いずれの場所にも戻すことができ、さらに誘引するファン(IDF)側に戻さずに、そのまま大気に放出することもできる。
【0039】
表1は塩素バイパスを付設したセメントキルンにおける、塩素バイパスの抽気率と窯尻から熱ガスを抽気した分の熱ロス、該塩素バイパス排ガスをプレヒータに戻し、800℃まで昇温させたときの熱損失とそれによるクリンカ生産の減産率の一例を、表2は該塩素バイパス排ガスをキルンの排ガスを誘引するファン(IDF)側以降に戻したときの増産率を示したものである。尚、該塩素バイパス排ガスを誘引するファン(IDF)側以降に戻した場合においても、熱ガスを抽気した分の熱ロスは発生する。本発明によれば、前記塩素バイパス排ガスをセメントキルンの排ガスを誘引するファン(IDF)側以降に戻すことにより、表1に示す損失を抑制できる一方、表2に示す増産効果を得ることができる。
【0040】
また、10%未満の抽気率でも熱損失・減産抑制効果を有するが、IDF側戻しで30%の高抽気とした場合の熱損失327.9 kJ/kg-cli.は、抽気率が約6.3%でプレ戻しをした場合のトータル(熱ガス抽気+プレ戻し)の熱損失と同程度となり、高抽気率になるほどその効果が増大する。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表3は微粉D2を集塵するバグフィルタ8から排出された排ガスの一部を分取し、消石灰スラリーを循環した吸着・吸収塔(スプレー式)での処理前後の濃度である。尚、処理ガス量は、10mN/min、吸着・吸収塔での液ガス比は25、スラリー濃度は15%である。
【0044】
【表3】

【符号の説明】
【0045】
1 塩素バイパスシステム
2 セメントキルン
3 プローブ
4 冷却ファン
5 サイクロン
6 冷却器
7 冷却ファン
8 バグフィルタ
9 ダストタンク
10 排気ファン
11 吸着・吸収塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気するプローブと、
該プローブで抽気した燃焼ガスに含まれるダストを集塵する乾式集塵機と、
該集塵後の抽気ガスに含まれる有害成分を除去・回収する装置とを備えることを特徴とする塩素バイパスシステム。
【請求項2】
前記有害成分を除去・回収する装置によって有害成分が除去された抽気ガスを、前記セメントキルンに付設されたプレヒータの出口側に設置された誘引ファンの出口側に供給することを特徴とする請求項1に記載の塩素バイパスシステム。
【請求項3】
前記乾式集塵機の前段に、前記プローブで抽気した燃焼ガスを冷却する冷却器、又は該燃焼ガスより熱を回収する熱交換器を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の塩素バイパスシステム。
【請求項4】
前記乾式集塵機の前段に、前記プローブで抽気した燃焼ガスに含まれるダストの粗粉を分離する分級機を備え、前記乾式集塵機は、該分級機から排出された微粉を含む抽気ガスを集塵することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の塩素バイパスシステム。
【請求項5】
前記有害成分を除去・回収する装置で除去・回収される有害成分は、硫黄分、有機分及びガス状塩素化合物から選択される少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項1乃至4に記載の塩素バイパスシステム。
【請求項6】
前記有害成分を除去・回収する装置は、アルカリ成分を溶解又はスラリー化した溶液を循環させた吸着・吸収塔であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塩素バイパスシステム。
【請求項7】
前記吸着・吸収塔におけるスラリーの塩素濃度を2%以下とすることを特徴とする請求項6に記載の塩素バイパスシステム。
【請求項8】
前記吸着・吸収塔から排出されたスラリーを固液分離して得られたケーキをセメントに添加処理することを特徴とする請求項6又は7に記載の塩素バイパスシステム。
【請求項9】
セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気し、
該抽気した燃焼ガスに含まれるダストを乾式集塵し、
該集塵後の抽気ガスに含まれる有害成分を除去・回収し、
該有害成分を除去・回収した後の抽気ガスを、前記セメントキルンに付設されたプレヒータの出口側に設置された誘引ファンの出口側に供給することを特徴とする塩素バイパス抽気ガスの処理方法。
【請求項10】
前記乾式集塵を行う前に、前記キルン排ガス流路より抽気した燃焼ガスの一部を冷却することを特徴とする請求項9に記載の塩素バイパス抽気ガスの処理方法。
【請求項11】
前記乾式集塵を行う前に、前記キルン排ガス流路より抽気した燃焼ガスの一部に含まれるダストの粗粉を分離し、微粉を含む抽気ガスを乾式集塵することを特徴とする請求項9又は10に記載の塩素バイパス抽気ガスの処理方法。
【請求項12】
前記除去・回収される有害成分は、硫黄分、有機分及びガス状塩素化合物から選択される少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項9、10又は11に記載の塩素バイパス抽気ガスの処理方法。
【請求項13】
前記塩素バイパス抽気率を1%以上30%以下とすることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の塩素バイパス抽気ガスの処理方法。
【請求項14】
前記集塵後の抽気ガスの温度を50℃以上200℃以下とすることを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに記載の塩素バイパス抽気ガスの処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−140313(P2012−140313A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1213(P2011−1213)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)