説明

壁体内換気装置及びそれに用いる壁パネル

【課題】 浴室や土間のある玄関やガレージなど土間周りにも設置できて、外気の湿度を適正に調整して壁内に導入することができる壁体内換気装置及びそれに用いる壁パネルを提供すること。
【解決手段】 基礎近傍の外気を建物の外壁の壁体内通気路に入れて該外気が上昇するにしたがって換気する壁体内換気装置において、壁体内通気路の外気取り入れ口近くに、外気と接触し、外気の湿度が高いときは湿分を吸い取り、湿度が低いときは湿分を吐き出して外気の相対湿度を標準値より抑える機能を有する吸放湿材12を配設したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基礎近傍の外気を建物の外壁の壁体内通気路に入れて該外気が上昇するにしたがって換気する壁体内換気装置及びそれに用いる壁パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
木質系の建物において一般的に普及している外壁通気は、外気を直接導入し、外壁下地と外壁材の間を通気させ、これにより外壁材の劣化防止や外壁部の漏水による排水経路の役割を行うものであり、壁内の湿気を排出する機能としては外壁下地材の透湿抵抗が高く十分に機能しない。そこで、外気を壁内に直接導入する工法もある。しかし、湿度の高い空気を壁内に導くこととなり、劣化の原因となる。これらの点を解決するために本出願人は先に「土台下パッキン及び壁体内換気装置」なる発明を提案した(特許文献1)。
【0003】
特許文献1の技術は、外気を一旦床下に導き、高湿度を除湿し、適正な湿度を壁内に導入するものであり、その結果、壁内は適正な湿度環境を保ち、内部結露を発生しにくくし、劣化防止となる。
【0004】
【特許文献1】特許第3059114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術のように建物プラン上、常に床下空間が存在していればよいが、浴室や土間のある玄関やガレージなどは、性能認定上や環境工学的知見から床下通気ができずにいた。すなわち、浴室や土間のある玄関やガレージなどについては湿気を排除して結露が生じないようにしなければならないところ、それができず、結局、壁体内換気装置が設置できないという問題があった。
【0006】
そこでこの発明は、前記従来のものが有する問題点を解決し、浴室や土間のある玄関やガレージなど土間周りにも設置できて、外気の湿度を適正に調整して壁内に導入することができる壁体内換気装置及びそれに用いる壁パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、基礎近傍の外気を建物の外壁の壁体内通気路に入れて該外気が上昇するにしたがって換気する壁体内換気装置において、前記壁体内通気路の外気取り入れ口近くに、外気と接触し、外気の湿度が高いときは湿分を吸い取り、湿度が低いときは湿分を吐き出して外気の相対湿度を標準値より抑える機能を有する吸放湿材を配設したことを特徴とする。ここで「外気の相対湿度を標準値より抑える機能」とは、前記吸放湿材を配設しない場合の相対湿度を標準値とした場合に、該標準値の相対湿度で高い部分は低く、逆に低い部分は高くなるようにする機能をいい、これにて相対湿度の変動範囲を所定に平準化しようとするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の壁体内換気装置において、縦材と横材が組み付けられて形成された方形枠体と、該枠体の一方の面側に取り付けられた面材とを有する壁パネルを具え、この壁パネルの前記面材が室外側となるように配置されるとともに、該面材と室内側に配置される断熱材との間に壁体内通気路を形成する換気スペーサが配設され、この換気スペーサの壁体内通気路以外の部分に吸放湿材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の壁体内換気装置において、換気スペーサの表面に壁体内通気路の高さにわたり凹凸部がそれぞれ複数個設けられ、前記凹部が通気路に、前記凸部が非通気路に形成され、この非通気路に形成された凸部内に粒状の吸放湿材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の壁体内換気装置において、縦材と横材が組み付けられて形成された方形枠体と、該枠体の一方の面側に取り付けられた面材とを有する壁パネルを具え、この壁パネルの前記面材が室外側となるように配置されるとともに、該面材と室内側に配置される断熱材との間に壁体内通気路を形成する換気スペーサが配設され、この換気スペーサの壁体内通気路と室内側において対面する部分に吸放湿材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の壁体内換気装置において、吸放湿材が、換気スペーサと断熱材との間に配置された板状の吸放湿材であることを特徴とする。請求項6に記載の発明は、請求項2ないし5のいずれかに記載の壁体内換気装置において、吸放湿材が、壁パネルにおける基礎の上に設置された土台近くの下方部分に設けられていることを特徴とする。請求項7に記載の発明は、請求項2ないし6のいずれかに記載の壁体内換気装置において、基礎近傍の外気を建物の外壁の壁体内通気路にのみ入れて床下に入るのを阻止するパッキンが、基礎と土台間に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項2ないし7のいずれかに記載の壁体内換気装置に用いられる壁パネルであって、縦材と横材が組み付けられて形成された方形枠体と、該枠体の一方の面側に取り付けられた面材とを有し、前記面材の室内側を向いた面に壁体内通気路を形成する換気スペーサが配設され、この換気スペーサの表面に該通気路の高さにわたり凹凸部がそれぞれ複数個設けられ、前記凹部が通気路に、前記凸部が非通気路に形成され、前記枠体の高さ方向の少なくとも下方部分における非通気路に形成された凸部内に粒状の吸放湿材が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項2ないし7のいずれかに記載の壁体内換気装置に用いられる壁パネルであって、縦材と横材が組み付けられて形成された方形枠体と、該枠体の一方の面側に取り付けられた面材とを有し、前記面材の室内側を向いた面に壁体内通気路を形成する換気スペーサが配設され、この換気スペーサの表面に該通気路の高さにわたり凹凸部がそれぞれ複数個設けられ、前記凹部が通気路に、前記凸部が非通気路に形成され、前記枠体の高さ方向の少なくとも下方部分における換気スペーサの壁体内通気路と室内側において対面する部分に板状の吸放湿材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明は前記のように、請求項1に記載の発明は、基礎近傍の外気を建物の外壁の壁体内通気路に入れて該外気が上昇するにしたがって換気する壁体内換気装置において、前記壁体内通気路の外気取り入れ口近くに、外気と接触し、外気の湿度が高いときは湿分を吸い取り、湿度が低いときは湿分を吐き出して外気の相対湿度を標準値より抑える機能を有する吸放湿材を配設したので、前記吸放湿材によって外壁の壁体内通気路に取り入れる外気の相対湿度を標準値より抑えることが可能となる。したがって、従来不可能であった浴室や土間のある玄関やガレージなど土間周りについても設置でき、これら土間周りの湿気を排除して結露が生じないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の一実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、一実施の形態が適用されている建物1階の一部の概略平面図、図2は、図1の矢示Aに沿う立面図、図3は、図2の線B−Bに沿う基礎近くの拡大縦断面図、図4は、図2のC部の拡大図、図5は図4の線D−Dに沿う断面図である。
【0017】
図1に示すように建物の1階の隅部には浴室が設けられ、かつそれと隣接して洗面室とトイレが設けられている。浴室を形成する平面視L型の外壁(斜線で表している)は、基礎の上に設置されている。図2は丁度その基礎から1階天井に至る胴差までの外壁構造が室内側から矢印A方向に見た状態を示している。すなわち、図3にも示すように基礎1上には外気誘導用パッキン2を介在して土台3が設置されている。パッキン2は、全体が樹脂製で、図6にその平面図を示すように平板状の本体2aを具え、該本体の室外側の上面に土台3に設けた通気路5と連通する通気路2bが奥側の面が閉鎖、手前側の面と上面が開放した形でパッキン2の長さ方向に所定間隔で複数個形成され、土台3の通気路5へは通気可能であるが、それ以外へは通気ができない構造となっている。つまり、パッキン2は、軽量化等のために図示のように溝や凹所などの空間が多く形成されているものの、通気路としては通気路2bのみが形成され、他に通気路は形成されていない構造となっている。土台3の通気路5はパッキン2の通気路2bと対応して土台3の長さ方向に所定間隔で複数個形成されている。また、通気路5の各上端が連通するように土台3の上端縁に沿って横向きの連通路5aが形成されている。
【0018】
土台3上には壁パネル6が胴差7までの空間を塞ぐように設置されている。壁パネル6は、木材からなり、縦材6aと横材6bが組み付けられて形成された方形枠体6cと、該枠体の一方の面側に張付けられた面材6dとを有し、面材6dが室外側となるように配置されている。壁パネル6は方形枠体6cの縦材6aと横材6bと面材6dによって仕切られ区画された空間領域6eを縦横方向にそれぞれ複数有し、各空間領域は縦材6aと横材6bに設けられた通孔6fによってそれぞれ相互に連通されている。すなわち、壁パネル6の最下方の横材6bに設けられた通孔6fは、土台3の連通路5aと連通している。そのため、土台3の通気路5からの外気は、連通路5aを経て壁パネル6の最下方の空間領域6eに入る。そして最下方の空間領域6eからさらにその上に隣接する空間領域又は横に隣接する空間領域に前記のように縦材6aと横材6bに設けられた通孔6fから当該空間領域に入り、このようにして最上方の空間領域6eに至るまで順次、外気が通過できる構造となっている。
【0019】
前記のような複数の空間領域6eにおける壁パネル6の面材6dに対して室内側には断熱材8が収容され、該断熱材と面材6dとの間には壁体内通気路を形成する換気スペーサ9が配設されている。換気スペーサ9は、図4,5に詳示するように前記各空間領域の縦横の寸法に合わせた大きさに形成されたポリプロピレンからなる樹脂シート9aと、この樹脂シートの表面の縦横方向に所定の間隔をおいて一体に形成された多数の正面視丸型の凹凸部とを有し、凹部が壁体内通気路としての通気路9bに、凸部が非通気路9cに形成されている。非通気路9cに形成された凸部は、シート側が開口した内部中空状になっている。通気路9bはそれぞれ縦横に連通して土台3の通気路5からの外気が、前記連通路5a及び通孔6fを経て最上方の横材6bに設けられた通孔6fから、胴差7に設けた通気路10に入るようになっている。すなわち、胴差7の通気路10は、土台3の通気路5と同じように、胴差7の長さ方向に所定間隔で複数個形成され、通気路10の各上端及び各下端が連通するように胴差7の上端縁及び下端縁に沿って横向きの連通路10a,10bが形成されている。そして胴差7の上に構築される図示しない2階の外壁も前記した1階の外壁と同じような構造になっており、外気が同じような通気路を経て2階の天井裏(小屋裏)にまで入り、抜けていけるようになっている。図4で、9dは樹脂シート9aに設けた抜き穴である。
【0020】
前記のような壁パネル6の前記壁体内通気路の外気取り入れ口近く、すなわち図4に示すように最下方の縦材6aと横材6bで区画された空間領域6eで、壁パネル6の全高比では1/6強の高さ領域における非通気路9cに形成された凸部内には粒状の吸放湿材12が、通気路9bを通る外気と接触可能に収容されている。吸放湿材12は、ポリアクリレート系繊維がパルプ繊維シート及びポリオレフィン繊維シートで包み込まれた高混合層材からなっている。詳しくは、目付けが500g/m2、厚みが2.0mm、標準吸放湿性が400g/m2(30℃、90%RH)となっており、吸放湿材12が通気路9bを通る外気と通気性のある前記シートを介して接触することにより、通気路9bの外気取り入れ口近くを通る外気の湿度が高いときは湿分を吸い取り、湿度が低いときは湿分を吐き出して外気の相対湿度を標準値(吸放湿材12が設けられていない場合の相対湿度)より抑える機能を有している。なお、吸放湿材12が設けられる範囲であるが、図2で石膏ボード等で隠れている壁パネル6の左半部を含む図1のL型の外壁内における対応位置の換気スペーサ9の凸部内である。図2,3において、13は透湿防水シート、14は外装材、15は石膏ボード、16は水切り鉄板である。
【0021】
前記のような構成からなる壁体内換気装置においては、外気取り入れ口近くの外気は、次のように壁体内通気路を通気する。すなわち外気は、図3に矢印で示すようにパッキン2に誘導されて通気路2bを経て土台3の通気路5に入り、さらに土台3の通気路5から連通路5a、壁パネル6の最下方の横材6bに設けた通孔6fを経て最下方の空間領域6eに入り、以後も上あるいは横にある空間領域6eを形成する縦材6aと横材6bに設けられた通孔6fを通過して該空間領域に入って、壁体内全体を換気することになる。そして外気は、壁パネル6の最下方の空間領域6eにおける通気路2bを通過する際に、非通気路9cに形成された凸部内に収容された吸放湿材12と接触し、湿度が高いとき(湿気が多いとき)は吸放湿材12で湿分が吸い取られ、逆に湿度が低いとき(湿気が少ないとき)は吸放湿材12から湿気が吐き出される。そのため、吸放湿材12のある空間領域を通過した外気は、吸放湿材12による湿度の調整によりその相対湿度の変動が標準値の相対湿度のそれよりも小さい所定の範囲に平準化されて、胴差7の通気路10に入ることになる。したがって、従来のように壁体内に結露が生じたりすることはなくなる。
【0022】
図7A及び図7Bは上記の作用を実験的に証明するものである。図7Aは、梅雨時期の2008年7月13日から7月23日にかけて測定した外気の「温度」と「相対湿度」を示したものであり、同図によれば期間中、外気温が20℃〜30℃で推移し、相対湿度は低いところで50%前後、高いところで90%前後となっていることがわかる。つまり、30℃近くなる気温の高い日中では相対湿度は50%〜60%となり、20℃近くなる気温の低い夜間では相対湿度は80%〜90%前後となる、両者の相関関係がわかる。
【0023】
一方、図7Bは、図7Aと同期間において、図1の矢示Aで示す外壁が北壁の場合にその壁体内通気路内に吸放湿材12が「ある場合」と「ない場合」の相対湿度を比較して示したものである。壁体内通気路内に吸放湿材12が「ない場合」の相対湿度とは前記した標準値のことであり、吸放湿材12が「ある場合」の相対湿度をこれとの比較で表している。これによると、吸放湿材12が「ある場合」には「ない場合」に比し、その相対湿度が高い部分では低く、逆に低い部分では高くなっていること、特に相対湿度のトップ又はボトムのところでその相違が顕著であることがわかる。
【0024】
前記のように土台3から壁パネル6内に取り込んだ外気の相対湿度の変動範囲を、吸放湿材12により所定に平準化し、適正に調整して壁内に導入することができるので、外気の余分な湿気がパネル内に通気するのを防ぐことができる。換言すると、取り込んだ外気を、従来の床下の空間に一旦入れて除湿したものと同じような湿度状態にできる。そのため、従来の結露による弊害が解消されるとともに、従来不可能であった浴室や浴室や土間のある玄関やガレージなど土間周りにも設置できて、木質系建物における通気経路の整備や拡張、あるいは再構築に資することができて、住まいの快適性等の向上を図ることができる。また、この実施の形態の場合には吸放湿材12を樹脂シート9aにより非通気路9cに形成された凸部内に収容し、その収容部を凸部形状に保持することが可能であるため、断熱材8を隣接配置しても断熱材8によって通気路9bが塞がれてしまうということも回避でき、通気効率を常時高く維持することができる。しかも、吸放湿材12を収容するのに既存の換気スペーサ9を利用することができるので、壁パネル6にそのための格別な加工を施す必要もない。さらに、この実施の形態の場合には壁パネル6を利用して形成した壁体内通気路を通過する外気の相対湿度を適正に調整できるので、壁パネル6の面板6dにおける木材含水率を低減することができ、建物の劣化が進むのを防止できる効果もある。
【0025】
図8〜10は、別の実施の形態を示すものである。図8は、図2と対応する立面図、図9は、図8のE部の拡大図、図10は図9の線F−Fに沿う断面図である。この別の実施の形態において、前記実施の形態と同じ部材には同一符号を付してその説明を簡略化し、ここでは主として異なる構成について以下に説明する。
【0026】
すなわち、この実施の形態では各空間領域に設けられる換気スペーサ9はそのままに、つまり非通気路9cに形成された凸部内に粒状の吸放湿材12を収容することなく設けられ、代わりに壁パネル6の最下方の空間領域6eを室外側から換気スペーサ9を覆うように板状の吸放湿材17が断熱材8と換気スペーサ9の間に、粒状の吸放湿材12と同様な機能を果たすべく配置されている。
【0027】
板状の吸放湿材17は、ポリアクリレート系繊維からなっている。詳しくは、目付けが545g/m2、厚みが1.5mm、標準吸放湿性が400g/m2(30℃、90%RH)となっている。
【0028】
前記のような板状の吸放湿材17を用いた場合も、外気は、壁パネル6の最下方の空間領域6eにおける通気路9bを通過する際に、吸放湿材17と接触し、外気の湿度が高いとき(湿気が多いとき)は吸放湿材17で湿分が吸い取られ、逆に湿度が低いとき(湿気が少ないとき)は吸放湿材17から湿分が吐き出される。そのため、吸放湿材17のある空間領域6eを通過した外気は吸放湿材17による湿度の調整により所定の範囲に平準化されて、胴差7の通気路10に入ることとなり、前記実施の形態と同じ作用をもたらす。
【0029】
次に特許請求の範囲の請求項2以下に記載した発明の特有な効果について説明する。請求項2に記載の発明によれば、壁パネルを具えた壁体内通気路内においても換気スペーサの壁体内通気路以外の部分に設けた吸放湿材により外気の相対湿度の適正な調整ができる。請求項3に記載の発明によれば、換気スペーサの非通気路である凸部内に収容した粒状の吸放湿材により外気の相対湿度の適正な調整ができ、しかも粒状の吸放湿材を収容するのに既存の換気スペーサを利用することができて、格別な部材を設ける必要がない。請求項4に記載の発明によれば、壁パネルを具えた壁体内通気路内においても換気スペーサの壁体内通気路と室内側において対面する部分に設けた吸放湿材により外気の相対湿度の適正な調整ができる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、換気スペーサと断熱材との間に配置された板状の吸放湿材により請求項4に記載の発明と同等の効果が期待できる。請求項6に記載の発明によれば、土台近くの下方部分において、外気の湿度の吸放湿を行って、適正な相対湿度の調整ができる。請求項7に記載の発明によれば、パッキンによって効率よく外気を壁体内通気路へ誘導することが可能となる。請求項8に記載の発明によれば、請求項2ないし7のいずれかに記載の壁体内換気装置に用いられて、換気スペーサの非通気路に形成された凸部内に設けた粒状の吸放湿材により外気の相対湿度の適正な調整ができる壁パネルを提供することができる。請求項9に記載の発明によれば、板状の吸放湿材により請求項8に記載の発明と同様に外気の相対湿度の適正な調整ができる壁パネルを提供することができる。
【0031】
本実施の形態は、あくまで好ましい一例を示したにすぎず、構成各部材の細部の設計的な事項は、その実施に際して種々に変更、修正することができるものである。すなわち、吸放湿材12,17として粒状又は板状のものを示したが、これ以外の態様のものとしてもよく、また具体的な材質についても任意である。また、換気スペーサ9の構造も他の構造としてもよく、図示のものに限定されるものではない。また、吸放湿材12,17を壁体内通気路の外気取り入れ口近くに設けたが、さらに外気取り入れ口近くから上方の中程まであるいは通気路の全体にわたり設けてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施の形態が適用されている建物1階の一部の概略平面図である。
【図2】図1の矢示Aに沿う立面図である。
【図3】図2の線B−Bに沿う基礎近くの拡大縦断面図である。
【図4】図2のC部の拡大図である。
【図5】図4の線D−Dに沿う断面図である。
【図6】パッキンの平面図である。
【図7A】作用を実験的に証明するもので、梅雨時期の2008年7月13日から7月23日にかけて測定した外気の「温度」と「相対湿度」を示す表である。
【図7B】作用を実験的に証明するもので、図7Aと同期間において、図1の矢示Aで示す外壁が北壁の場合にその壁体内通気路内に吸放湿材が「ある場合」と「ない場合」の相対湿度を比較して示す表である。
【図8】別の実施の形態を示す、図2と対応する立面図である。
【図9】図8のE部の拡大図である。
【図10】図9の線F−Fに沿う断面図である
【符号の説明】
【0033】
1 基礎
2 外気誘導用パッキン
3 土台
5 通気路
6 壁パネル
6a 縦材
6b 横材
6c 枠体
6d 面材
6e 空間領域
6f 通孔
7 胴差
8 断熱材
9 換気スペーサ
9a 樹脂シート
9b 通気路
9c 非通気路
10 通気路
12 粒状の吸放湿材
17 板状の吸放湿材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎近傍の外気を建物の外壁の壁体内通気路に入れて該外気が上昇するにしたがって換気する壁体内換気装置において、
前記壁体内通気路の外気取り入れ口近くに、外気と接触し、外気の湿度が高いときは湿分を吸い取り、湿度が低いときは湿分を吐き出して外気の相対湿度を標準値より抑える機能を有する吸放湿材を配設したことを特徴とする壁体内換気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の壁体内換気装置において、縦材と横材が組み付けられて形成された方形枠体と、該枠体の一方の面側に取り付けられた面材とを有する壁パネルを具え、この壁パネルの前記面材が室外側となるように配置されるとともに、該面材と室内側に配置される断熱材との間に壁体内通気路を形成する換気スペーサが配設され、この換気スペーサの壁体内通気路以外の部分に吸放湿材が設けられていることを特徴とする壁体内換気装置。
【請求項3】
請求項2に記載の壁体内換気装置において、換気スペーサの表面に壁体内通気路の高さにわたり凹凸部がそれぞれ複数個設けられ、前記凹部が通気路に、前記凸部が非通気路に形成され、この非通気路に形成された凸部内に粒状の吸放湿材が設けられていることを特徴とする壁体内換気装置。
【請求項4】
請求項1に記載の壁体内換気装置において、縦材と横材が組み付けられて形成された方形枠体と、該枠体の一方の面側に取り付けられた面材とを有する壁パネルを具え、この壁パネルの前記面材が室外側となるように配置されるとともに、該面材と室内側に配置される断熱材との間に壁体内通気路を形成する換気スペーサが配設され、この換気スペーサの壁体内通気路と室内側において対面する部分に吸放湿材が設けられていることを特徴とする壁体内換気装置。
【請求項5】
請求項4に記載の壁体内換気装置において、吸放湿材が、換気スペーサと断熱材との間に配置された板状の吸放湿材であることを特徴とする壁体内換気装置。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれかに記載の壁体内換気装置において、吸放湿材が、壁パネルにおける基礎の上に設置された土台近くの下方部分に設けられていることを特徴とする壁体内換気装置。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれかに記載の壁体内換気装置において、基礎近傍の外気を建物の外壁の壁体内通気路にのみ入れて床下に入るのを阻止するパッキンが、基礎と土台間に設けられていることを特徴とする壁体内換気装置。
【請求項8】
請求項2ないし7のいずれかに記載の壁体内換気装置に用いられる壁パネルであって、縦材と横材が組み付けられて形成された方形枠体と、該枠体の一方の面側に取り付けられた面材とを有し、前記面材の室内側を向いた面に壁体内通気路を形成する換気スペーサが配設され、この換気スペーサの表面に該通気路の高さにわたり凹凸部がそれぞれ複数個設けられ、前記凹部が通気路に、前記凸部が非通気路に形成され、前記枠体の高さ方向の少なくとも下方部分における非通気路に形成された凸部内に粒状の吸放湿材が設けられていることを特徴とする壁パネル。
【請求項9】
請求項2ないし7のいずれかに記載の壁体内換気装置に用いられる壁パネルであって、縦材と横材が組み付けられて形成された方形枠体と、該枠体の一方の面側に取り付けられた面材とを有し、前記面材の室内側を向いた面に壁体内通気路を形成する換気スペーサが配設され、この換気スペーサの表面に該通気路の高さにわたり凹凸部がそれぞれ複数個設けられ、前記凹部が通気路に、前記凸部が非通気路に形成され、前記枠体の高さ方向の少なくとも下方部分における換気スペーサの壁体内通気路と室内側において対面する部分に板状の吸放湿材が設けられていることを特徴とする壁パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−144335(P2010−144335A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319556(P2008−319556)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000185710)エス・バイ・エル株式会社 (15)
【Fターム(参考)】