壁構造及びその施工法
【課題】 トラス筋で補強した捨て型枠に発泡樹脂の断熱材を固定し、その外側に外装材を披着させるためのラスを設けてこれを型枠に連結させることにより、重い外装材でも安定的に固定し、また作業手順を簡略化して建築費の低廉化及び工期の短縮を図ることができる壁構造を提供する。捨て型枠にトラス筋、断熱材、及びラスを一体化したユニットを用い、或いは更に外装まで含めて一体化したユニットを用いることにより、壁構造を更に簡単に施工できるようにして、建築費の低廉化及び工期の短縮を促進できる施工法を提供する。
【解決手段】 壁を構築すべき部位に支持された板状体10と、板状体の内側に設けられたトラス筋20と、トラス筋と交差するように配筋された交差筋104と、板状体の外側に固定された発泡樹脂の断熱体40と、断熱体の外側に設けられたラス50と、断熱体を貫通してラスを板状体に連結するアンカー部材60とを備え、板状体10の内側にコンクリート121が打設されていると共に、ラス50にモルタル122、タイル123等の外装材が装着されている壁構造。
【解決手段】 壁を構築すべき部位に支持された板状体10と、板状体の内側に設けられたトラス筋20と、トラス筋と交差するように配筋された交差筋104と、板状体の外側に固定された発泡樹脂の断熱体40と、断熱体の外側に設けられたラス50と、断熱体を貫通してラスを板状体に連結するアンカー部材60とを備え、板状体10の内側にコンクリート121が打設されていると共に、ラス50にモルタル122、タイル123等の外装材が装着されている壁構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はマンション、ビル等の鉄筋コンクリート又は鉄骨造りの建造物の外壁等として好適な壁構造、及びその施工法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、鉄筋コンクリート又は鉄骨造りの建造物で外壁を構築する場合、外壁を構築すべき部位に鉄筋を配筋し、その内側及び外側にコンクリートパネルを配し、これらをセパレーターで仮固定して型枠を組み上げ、この型枠内にコンクリートを打設し、その養生後に型枠をばらし、構築された壁本体の外側にモルタル、タイル等の外装材で外装を施すという作業によるのが一般的である。さらに、壁本体の外側に断熱材を装着するときには、発泡樹脂等の断熱材の片面にモルタルを薄く披着させたボードを、モルタルが外側になるように壁本体の外側に当てがい、これをアンカーボルトで壁本体に打ち付け、アンカーボルトの頭部を隠す処理を行う方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】壁本体の外側に断熱材を装着するにしても、上述したような工法により、せいぜいモルタルを薄く披着できる程度であり、タイル等の重い外装材は装着できない。
【0004】また、従来の外壁構築作業は多くの手順を踏む必要があり、しかも作業者には熟練と力が要求されるから、建築費がかさみ、又ある程度の工期が必要になってくる。
【0005】本発明はこのような点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、トラス筋で補強した捨て型枠に発泡樹脂の断熱材を固定し、その外側に外装材を披着させるためのラスを設けてこれを上記型枠に連結させることにより、重い外装材でも安定的に固定し、また作業手順を簡略化して建築費の低廉化及び工期の短縮を図ることができる壁構造を提供することにある。さらに、上記捨て型枠にトラス筋、断熱材、及びラスを一体化したユニットを用い、或いは更に外装まで含めて一体化したユニットを用いることにより、上記壁構造を更に簡単に施工できるようにして、建築費の低廉化及び工期の短縮を促進できる施工法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1の壁の壁構造は、壁を構築すべき部位に支持された板状体と、この板状体の内側に設けられたトラス筋と、このトラス筋と交差するように配筋された交差筋と、板状体の外側に固定された発泡樹脂の断熱体と、この断熱体の外側に設けられたラスと、上記断熱体を貫通してラスを板状体に連結するアンカー部材とを備え、上記板状体の内側にコンクリートが打設されていると共に、上記ラスにモルタル、タイル等の外装材が装着されている構成である。
【0007】この壁構造は、トラス筋及び交差筋等により充分な強度が発揮される。また外装材はラスに付着し、このラスがアンカー部材により板状体に固定されるから、重い外装材も確実に保持される。そして火災等により断熱体等が焼失しても、ラスがアンカー部材により板状体に固定されたまま残るから、外装材が崩れ落ち難い。さらに、施工時には板状体が捨て型枠として機能するから、従来の施工法によるよりも、作業手順が簡略化される。
【0008】請求項2の壁構造の施工法は、型枠となる板状体と、この板状体の一方の面に設けられたトラス筋と、上記板状体の他方の面に固定された発泡樹脂の断熱体と、この断熱体の板状体側とは反対側の面に設けられたラスと、上記断熱体を貫通してラスを板状体に連結するアンカー部材とを備えた構成材を用いた壁構造の施工法であって、壁を構築すべき部位に上記構成材を一連に配設し、トラス筋と交差するように交差筋を配筋し、トラス筋に対向させてコンクリートパネルを設置し、このコンクリートパネルを板状体、トラス筋又はアンカー部材にセパレーターで連結し、構成材とコンクリートパネルとの間にコンクリートを打設する一方、ラスにモルタル、タイル等の外装材を装着するというものである。
【0009】この施工法では、構成材を用いることにより、トラス筋の配筋、外側のコンクリートパネルの設置、コンクリート打設後の断熱材の取り付けといった作業が不要になるから、作業手順が簡略化される。
【0010】請求項3の壁構造の施工法は、請求項2に記載の構成材のラスにモルタル、タイル等の外装材が装着された外装済み構成材を用いた壁構造の施工法であって、この外装済み構成材を、壁を構築すべき部位に一連に配設し、トラス筋と交差するように交差筋を配筋し、トラス筋に対向させてコンクリートパネルを設置し、このコンクリートパネルを板状体、トラス筋又はアンカー部材にセパレーターで連結し、構成材とコンクリートパネルとの間にコンクリートを打設するというものである。
【0011】この施工法では、請求項2の作用に加え、構成材のラスに予め外装材が装着されているから、コンクリート打設後に外装を施す手間が省ける。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は実施形態に係る壁構造を示す縦断面図である。
【0013】図1において、10は壁を構築すべき部位に支持された板状体であって、この板状体10は横方向(図1では紙面に垂直な方向)に複数枚が連続して一連に立設されている。20は板状体10の内側に設けられたトラス筋であって、長手方向(図1では上下方向)からみて山形状になるように鉄筋を組んでなる。104はトラス筋20と交差するように配筋された交差筋であって、図1では紙面に垂直な方向に延びている。40は板状体10の外側に固定された発泡樹脂の断熱体、50は断熱体40の外側に設けられたラス、60は上記断熱体40を貫通してラス50を板状体10に連結するアンカー部材である。上記板状体10の内側にはコンクリート121が打設されていると共に、上記ラス50にはモルタル122が付着し、その外側にはタイル123が装着されている。この壁構造は、壁の構成材を用いて構築されるので、上記板状体等の各部材については、以下の構成材Bの説明において詳述する。
【0014】図2及び図3は壁の構成材Bを示す。これらの図において、10は型枠となる板状体であって、例えば鉄板又はメラミン樹脂等に代表される合成木材よりなり、縦横寸法は例えば長手方向が2mで短手方向が400〜600mmであるが、その材質及び寸法はこれらに限定されるものではない。板状体10の端辺は、隣接する板状体10と隙間無く接続できるように、例えば図に示すような合決構造や蟻継構造にしておくことが望ましい。さらに、板状体10の一方の側端縁を断面U字状に折曲げると共に、他方の側端縁を反対側に断面U字状に折曲げて、隣会う板状体同士でU字状部分を係合させることにより、板状体同士を隙間無く、且つ強固に接続できるようにしてもよい。
【0015】20は上記板状体10の一方の面に取り付けられたトラス筋であって、長手方向からみて山形状になるように鉄筋を組んでなる。すなわち、このトラス筋20は、長手方向からみて山の頂点に位置する鉄筋21と、山の斜面を形成する2本の波形鉄筋22、22とを備え、この2本の波形鉄筋22、22の逆V字状部分22a・・を上記鉄筋21に溶接している。
【0016】上記トラス筋20は、弾性的に撓められてその端部が板状体10にはめ込まれている。すなわち、上記波形鉄筋22のV字状部分22b・・が板状体10にほぼ平行になるまで曲げ起こされてトラス筋20の裾部として形成されていると共に、板状体10にこのV字状部分22b・・が嵌入する受入部11が設けられている。この受入部11は、図3に示すように、板状体10に逆L字状のアングル材状の部分を一体成形したり、このような部分を別途に成形してから取り付けることにより設けられる。なお、23、23は鉄筋21と平行に配置され、波形鉄筋22、22にそれぞれ溶接固定された鉄筋である。
【0017】図3において、30はトラス筋20の裾部同士を連結するロック部材であって、帯状の板材等よりなり、その両端をそれぞれL字状に立ち上げ、さらに外側へ折り曲げることにより係合部31、31が形成されており、この係合部31、31を上記鉄筋23、23にそれぞれ乗架させると、L字状の立ち上げ部により鉄筋23、23が互いに接近する方向に動くことを阻止し、これによってトラス筋20の対向するV字状部分22b・・同士の相対位置を固定するようにしている。
【0018】上記板状体10の他方の面には発泡樹脂の断熱体40が固定されている。この発泡樹脂としては、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレンなどに代表される発泡ポリオレフィンのほか、発泡スチロール、発泡ウレタン、発泡塩化ビニールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、発泡した樹脂であればよい。断熱体40は、例えば板状体10に対して一体成形すればよい。すなわち、例えばビーズ法による発泡樹脂成形用の型内に板状体10をセットし、ここにビーズを入れて発泡させる方法である。その場合、板状体10に係止孔12・・を貫設しておけば、発泡樹脂が係止孔12・・に入り、さらに板状体10の反対側の面へと行き渡り、板状体10を挟んでサンドイッチ構造となって強く一体化する。しかし、必ずしもこのようにサンドイッチ構造にしなくてもよく、板状体10のトラス筋20とは反対側の面に断熱体40が固定されておればよい。一体化を促進するには、例えば板状体10に凹凸を付けたり、酢酸ビニル系、エポキシ系等に代表される接着剤を事前に塗布しておくことが望ましい。また、必ずしも一体成形しなくてもよく、例えば板状体10に対して別途に成形した断熱体40を接着してもよいし、加熱して融着させてもよい。
【0019】この断熱体40の板状体側とは反対側の面にはラス50が固定されている。このラス50は、メタルラスであってもワイヤラスであってもよく、また図11に拡大して示した平面状のラスであっても、図12に拡大して示したように波状に成形した立体ラスであってもよい。このラス50を断熱体40に固定するには、ラス50を加熱して断熱体40に融着させる方法、ラス50の少なくとも一部を断熱体40に圧入する方法、ラス50にワイヤー等を溶接等で固定し、このワイヤー等を加熱して断熱体40に融着させる方法、このワイヤー等を断熱体40に圧入する方法などがある。また、複数枚のラスを重ねて溶接等により固定し、その端の1枚のラスを断熱体40に融着等により固定するようにしてもよい。さらに、ラス50の一部を凹陥形成してこの部位のみを断熱体40に固定したり、ラス50に固定したワイヤー等を断熱体40に固定したときには、ラス50の少なくとも一部が断熱体40から浮くから、モルタルを付着させたときに、モルタルがラス50の裏側(断熱体40に面する側)まで回り込んでしっかりと付着することになる。これとは逆に断熱体40に凹部を凹陥形成することにより、ラス50の少なくとも一部が断熱体40から浮くようにして、同じ作用を狙ってもよい。
【0020】上記ラス50は、断熱体40を貫通するアンカー部材60を介して板状体10に連結されている。このアンカー部材60は、図4に示すように、ラス50に取り付けられたガイド部材61と、このガイド部材61に螺合するタッピングネジ62とを備える。ガイド部材61のボス部の外周には雄ねじが切られ、このボス部がラス50に下側からねじ込まれている。また、タッピングネジ62はガイド部材内方の雌めじ部に螺合し、先端のタップ部が板状体10にねじ込まれている。そして、タッピングネジ62の頭部が沈むことにより形成されたガイド部材61の凹陥部には、熱橋対策のために発泡ウレタン63が注入されており、タッピングネジ62を介した熱伝導により断熱体40の断熱効果が減じられないようにしている。図5はアンカー部材60の変形例を示す。このアンカー部材60もガイド部材61及びタッピングネジ62を備えるが、このガイド部材61は、例えば樹脂により半球状に形成され、これを図5(a)に示すようにラス50に当てがい、タッピングネジ62をガイド部材内方の雌めじ部に螺合して螺進させていき、タッピングネジ先端のタップ部が板状体10に達してから更にねじ込んでいくと、図5(b)に示すようにガイド部材61が反転するように変形し、ラス50に食い込むようになっている。この反転したガイド部材61には、上記同様に熱橋対策のための発泡ウレタン63が注入されている。なお、アンカー部材60としては他にも例えばピン状のものを板状体10に立設し、断熱体40を固定した後でラス50をアンカー部材60に対して熱融着、溶接等により固定してもよく、要するにラス50が、断熱体40を貫通するアンカー部材60を介して板状体10に連結されておればよい。
【0021】上記アンカー部材60は、先端(具体的にはタッピングネジ62等の先端)が板状体10から突き出ていて、この部位に後述するセパレーターを係止できるようになっている。
【0022】この壁の構成材Bの組立方法は、図6の上側のトラス筋20で示すように、トラス筋20をその弾性により対向するV字状部分22b・・同士が接近するように撓ませて、これを板状体10の受入部11に嵌入すれば、トラス筋20が板状体10に取り付けられる。そして、図6の下側のトラス筋20で示すように、ロック部材30の係合部31、31を鉄筋23、23にそれぞれ乗架させると、トラス筋20の裾部同士の相対位置が固定される。
【0023】そして、上記構成材Bを用いた壁構造の施工法を説明すると、図8及び図9に示すように、この壁の構成材Bを、建造物の壁を構築すべき部位に自立させる。この図では、構築済み床面101の端縁付近に構成材Bを、そのトラス筋20が内側となるように、且つトラス筋20の鉄筋21が上下方向に沿うように置き、次々に構成材Bを並べて板状体10の間に隙間ができないように並べ、又は端縁で接続してゆく。その場合、構成材Bの固定を確実にするために、床面101に2本の桟木102、102を平行に固定し、この間で構成材Bの下端を挟持したり、外側に横端太103を組み、これを建造物の既設構造部分で支持したりすることが望ましい。そして、トラス筋20の鉄筋21と交差する方向に(この実施形態では水平方向)に横筋104を当てて、トラス筋20に対して結束等により固定する。次いで、構成材B・・の内側にコンクリートパネル105・・を配し、これらの構成材B・・とコンクリートパネル105・・とをセパレーター106で仮固定する。その接続構造としては、図10に示すように、アンカー部材60のタッピングネジ62の先端に雌ネジが切られたパイプ状のコネクタ107の一端を螺合し、このコネクタ107の他端に、コンクリートパネル105に取り付けるセパレーター106の先端を螺合するというものが例示される。その場合、コネクタ107を樹脂等の断熱性ある部材で形成すれば、熱橋対策になる。このようにコネクタ107を用いた螺合接続に限らず、アンカー部材60又はセパレーター106の先端を鈎状に形成して接続してもよい。このように構成材B・・とコンクリートパネル105・・との仮固定が完了すれば、その間にコンクリート121を打設し、養生後にコンクリートパネル105・・を外せば、打設コンクリート121及びトラス筋20により壁本体が構築されると共に、板状体10の外側に断熱体40が固定される。そしてラス50にモルタル122を付け、さらにタイル123を付けて外装を施せば、図1に示すように外壁等が構築される。なお、108はセパレーター106の一端を構成するフォームタイ(登録商標)、109はこのフォームタイ108の端部を挟持する2本のパイプよりなる横端太、110はフォームタイ108の端部に螺合して横端太109に係合するリブ座である。この横端太109によりコンクリートパネル105が支持されるが、さらに縦端太を取り付けて支持強度を増してもよい。
【0024】従って、上記実施形態の壁構造によれば、トラス筋20及び交差筋104等により充分な壁強度を確保できる。そして、モルタル122及びタイル123等の外装材はラス50に付着し、このラス50がアンカー部材60により板状体10に固定されるから、モルタル122を厚く塗ったりタイル123を貼るなどして外装材が重くなったときでも、これらを安定的に固定できる。本発明ではラス50は断熱体40に固定しさえすればよいが、上記実施形態のようにラス50を断熱体40に融着したときには、図11に拡大して示したようにラス50の目に断熱体表面の溶融層が絡みつき、両者が強く一体化されるから、構成材自体の剛性が上がると共に、ラス50が断熱体40に確実に固定され、ひいては外装材122、123が安定して保持される。また、火災等により断熱体等が焼失しても、ラス50がアンカー部材60により板状体10に固定されたまま残るから、外装材122、123が崩れ落ち難い。なお、本発明のトラス筋は上記実施形態の構造に限定されるものではなく、鉄筋を用いてトラス構造に組まれたものであればよい。
【0025】また、上記壁構造を採用すれば、施工時には板状体10が捨て型枠として機能するから、従来の施工法によるよりも作業手順が簡略化され、建築費の低廉化及び工期の短縮を図ることができる。さらに、上述した施工法によれば、構成材Bを用いることにより、トラス筋の配筋、外側のコンクリートパネルの設置、コンクリート打設後の断熱材の取り付けといった作業が不要になるから、作業手順が更に簡略化され、一層の建築費の低廉化及び工期の短縮を図ることができる。
【0026】さらに、アンカー部材60を、セパレーター106を係止できるように構成したので、自立させた壁の構成材B・・をコンクリートパネル105・・に仮固定するときには、セパレーター106を板状体10、トラス筋20又はアンカー部材60に係止すればよく、作業性がよくなり、建築費の低廉化及び工期の短縮を更に促進することができる。このようにアンカー部材60にセパレーター106を係止する以外にも、板状体10又はトラス筋20にセパレーター106を係止するように構成してもよい。その係止構造としては、セパレーター106の先端を鈎状に形成して接続してもよいし、上記実施形態のようなコネクタを用いて、板状体10又はトラス筋20に固定したボルト等に接続してもよい。
【0027】また、本発明はトラス筋を板状体に溶接等により固定したものも含むものである。しかし、上記実施形態のようにトラス筋20を弾性的に撓ませてその裾部22b・・を板状体10の受入部11にはめ込むように構成すれば、トラス筋20を板状体10に取り付ける前では板状体10とトラス筋20が別体であるので、板状体同士を積み上げ、また図7に示すようにトラス筋同士を重ねても嵩張らない。このため、保管するにも輸送するにも場所をとらない。そして、施工現場ではトラス筋20及び板状体10を別体で移動できるから、運搬対象が軽く且つコンパクトになって人力運搬が容易である。しかも、トラス筋20を弾性的に撓ませてその裾部22b・・を板状体10の受入部11にはめ込む構成であるから、組み付けが容易である。また、ロック部材30は必ずしも要しないが、これを付ければトラス筋20が板状体10から外れ難くなる。
【0028】さらに、上記実施形態では、壁の構成材B・・の立設、固定後にラス50にモルタル122を付けたが、図13に示すように、工場出荷段階で予め構成材Bのラス50にモルタル122及びタイル123等の外装材を固定しておき、これを施工現場に搬入して組み付けるという施工法を採用すれば、コンクリート打設後に外装を施す手間が省けるから、建築費の低廉化及び工期の短縮を更に促進することができる。
【0029】以上説明した壁構造では、コンパクトな構成材Bを用い、これを壁を構築すべき部位に一連に配設して構築した。しかし、本発明の壁構造は必ずしも構成材Bを用いなければならないものではなく、例えば側面投影面積を異にする板状体、トラス筋、断熱体、ラス、及びアンカー部材をそれぞれ現場に搬入し、これらを壁を構築すべき部位で組むことにより、上記構成材Bを連設したものに相当する構造を組み上げるようにしてもよい。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の壁構造によれば、充分な壁強度を確保しながら、重い外装材でも安定的に固定でき、また捨て型枠の採用により作業手順を簡略化して建築費の低廉化及び工期の短縮を図ることができる。
【0031】請求項2の施工法によれば、トラス筋の配筋、外側のコンクリートパネルの設置、コンクリート打設後の断熱材の取り付けといった作業が不要になるから、作業手順が簡略化され、建築費の低廉化及び工期の短縮を図ることができる。
【0032】請求項3のようにすれば、コンクリート打設後に外装を施す手間が省けるから、建築費の低廉化及び工期の短縮を更に促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の壁構造の縦断面図、
【図2】実施形態の壁の構成材を示す斜視図、
【図3】上記構成材の一部を断面して示した平面図、
【図4】上記構成材で用いたアンカー部材の拡大図、
【図5】アンカー部材の変形例の拡大図、
【図6】上記構成材でトラス筋を板状体に組み付ける手順を示す説明図、
【図7】上記トラス筋を重ねて保管している状態を示す正面図、
【図8】上記壁構造の施工を説明する斜視図、
【図9】図8の縦断面図、
【図10】アンカー部材とセパレーターとの接続構造を示す拡大側面図、
【図11】断熱体の表面のラスを示す拡大断面図、
【図12】別のラスで示す図11相当図、
【図13】別の実施形態で用いる構成材を示す斜視図である。
【符号の説明】
B 壁の構成材
10 板状体
20 トラス筋
40 断熱体
50 ラス
60 アンカー部材
101 床面
104 交差筋
105 コンクリートパネル
106 セパレータ
121 コンクリート
122 モルタル
123 タイル
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はマンション、ビル等の鉄筋コンクリート又は鉄骨造りの建造物の外壁等として好適な壁構造、及びその施工法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、鉄筋コンクリート又は鉄骨造りの建造物で外壁を構築する場合、外壁を構築すべき部位に鉄筋を配筋し、その内側及び外側にコンクリートパネルを配し、これらをセパレーターで仮固定して型枠を組み上げ、この型枠内にコンクリートを打設し、その養生後に型枠をばらし、構築された壁本体の外側にモルタル、タイル等の外装材で外装を施すという作業によるのが一般的である。さらに、壁本体の外側に断熱材を装着するときには、発泡樹脂等の断熱材の片面にモルタルを薄く披着させたボードを、モルタルが外側になるように壁本体の外側に当てがい、これをアンカーボルトで壁本体に打ち付け、アンカーボルトの頭部を隠す処理を行う方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】壁本体の外側に断熱材を装着するにしても、上述したような工法により、せいぜいモルタルを薄く披着できる程度であり、タイル等の重い外装材は装着できない。
【0004】また、従来の外壁構築作業は多くの手順を踏む必要があり、しかも作業者には熟練と力が要求されるから、建築費がかさみ、又ある程度の工期が必要になってくる。
【0005】本発明はこのような点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、トラス筋で補強した捨て型枠に発泡樹脂の断熱材を固定し、その外側に外装材を披着させるためのラスを設けてこれを上記型枠に連結させることにより、重い外装材でも安定的に固定し、また作業手順を簡略化して建築費の低廉化及び工期の短縮を図ることができる壁構造を提供することにある。さらに、上記捨て型枠にトラス筋、断熱材、及びラスを一体化したユニットを用い、或いは更に外装まで含めて一体化したユニットを用いることにより、上記壁構造を更に簡単に施工できるようにして、建築費の低廉化及び工期の短縮を促進できる施工法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1の壁の壁構造は、壁を構築すべき部位に支持された板状体と、この板状体の内側に設けられたトラス筋と、このトラス筋と交差するように配筋された交差筋と、板状体の外側に固定された発泡樹脂の断熱体と、この断熱体の外側に設けられたラスと、上記断熱体を貫通してラスを板状体に連結するアンカー部材とを備え、上記板状体の内側にコンクリートが打設されていると共に、上記ラスにモルタル、タイル等の外装材が装着されている構成である。
【0007】この壁構造は、トラス筋及び交差筋等により充分な強度が発揮される。また外装材はラスに付着し、このラスがアンカー部材により板状体に固定されるから、重い外装材も確実に保持される。そして火災等により断熱体等が焼失しても、ラスがアンカー部材により板状体に固定されたまま残るから、外装材が崩れ落ち難い。さらに、施工時には板状体が捨て型枠として機能するから、従来の施工法によるよりも、作業手順が簡略化される。
【0008】請求項2の壁構造の施工法は、型枠となる板状体と、この板状体の一方の面に設けられたトラス筋と、上記板状体の他方の面に固定された発泡樹脂の断熱体と、この断熱体の板状体側とは反対側の面に設けられたラスと、上記断熱体を貫通してラスを板状体に連結するアンカー部材とを備えた構成材を用いた壁構造の施工法であって、壁を構築すべき部位に上記構成材を一連に配設し、トラス筋と交差するように交差筋を配筋し、トラス筋に対向させてコンクリートパネルを設置し、このコンクリートパネルを板状体、トラス筋又はアンカー部材にセパレーターで連結し、構成材とコンクリートパネルとの間にコンクリートを打設する一方、ラスにモルタル、タイル等の外装材を装着するというものである。
【0009】この施工法では、構成材を用いることにより、トラス筋の配筋、外側のコンクリートパネルの設置、コンクリート打設後の断熱材の取り付けといった作業が不要になるから、作業手順が簡略化される。
【0010】請求項3の壁構造の施工法は、請求項2に記載の構成材のラスにモルタル、タイル等の外装材が装着された外装済み構成材を用いた壁構造の施工法であって、この外装済み構成材を、壁を構築すべき部位に一連に配設し、トラス筋と交差するように交差筋を配筋し、トラス筋に対向させてコンクリートパネルを設置し、このコンクリートパネルを板状体、トラス筋又はアンカー部材にセパレーターで連結し、構成材とコンクリートパネルとの間にコンクリートを打設するというものである。
【0011】この施工法では、請求項2の作用に加え、構成材のラスに予め外装材が装着されているから、コンクリート打設後に外装を施す手間が省ける。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は実施形態に係る壁構造を示す縦断面図である。
【0013】図1において、10は壁を構築すべき部位に支持された板状体であって、この板状体10は横方向(図1では紙面に垂直な方向)に複数枚が連続して一連に立設されている。20は板状体10の内側に設けられたトラス筋であって、長手方向(図1では上下方向)からみて山形状になるように鉄筋を組んでなる。104はトラス筋20と交差するように配筋された交差筋であって、図1では紙面に垂直な方向に延びている。40は板状体10の外側に固定された発泡樹脂の断熱体、50は断熱体40の外側に設けられたラス、60は上記断熱体40を貫通してラス50を板状体10に連結するアンカー部材である。上記板状体10の内側にはコンクリート121が打設されていると共に、上記ラス50にはモルタル122が付着し、その外側にはタイル123が装着されている。この壁構造は、壁の構成材を用いて構築されるので、上記板状体等の各部材については、以下の構成材Bの説明において詳述する。
【0014】図2及び図3は壁の構成材Bを示す。これらの図において、10は型枠となる板状体であって、例えば鉄板又はメラミン樹脂等に代表される合成木材よりなり、縦横寸法は例えば長手方向が2mで短手方向が400〜600mmであるが、その材質及び寸法はこれらに限定されるものではない。板状体10の端辺は、隣接する板状体10と隙間無く接続できるように、例えば図に示すような合決構造や蟻継構造にしておくことが望ましい。さらに、板状体10の一方の側端縁を断面U字状に折曲げると共に、他方の側端縁を反対側に断面U字状に折曲げて、隣会う板状体同士でU字状部分を係合させることにより、板状体同士を隙間無く、且つ強固に接続できるようにしてもよい。
【0015】20は上記板状体10の一方の面に取り付けられたトラス筋であって、長手方向からみて山形状になるように鉄筋を組んでなる。すなわち、このトラス筋20は、長手方向からみて山の頂点に位置する鉄筋21と、山の斜面を形成する2本の波形鉄筋22、22とを備え、この2本の波形鉄筋22、22の逆V字状部分22a・・を上記鉄筋21に溶接している。
【0016】上記トラス筋20は、弾性的に撓められてその端部が板状体10にはめ込まれている。すなわち、上記波形鉄筋22のV字状部分22b・・が板状体10にほぼ平行になるまで曲げ起こされてトラス筋20の裾部として形成されていると共に、板状体10にこのV字状部分22b・・が嵌入する受入部11が設けられている。この受入部11は、図3に示すように、板状体10に逆L字状のアングル材状の部分を一体成形したり、このような部分を別途に成形してから取り付けることにより設けられる。なお、23、23は鉄筋21と平行に配置され、波形鉄筋22、22にそれぞれ溶接固定された鉄筋である。
【0017】図3において、30はトラス筋20の裾部同士を連結するロック部材であって、帯状の板材等よりなり、その両端をそれぞれL字状に立ち上げ、さらに外側へ折り曲げることにより係合部31、31が形成されており、この係合部31、31を上記鉄筋23、23にそれぞれ乗架させると、L字状の立ち上げ部により鉄筋23、23が互いに接近する方向に動くことを阻止し、これによってトラス筋20の対向するV字状部分22b・・同士の相対位置を固定するようにしている。
【0018】上記板状体10の他方の面には発泡樹脂の断熱体40が固定されている。この発泡樹脂としては、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレンなどに代表される発泡ポリオレフィンのほか、発泡スチロール、発泡ウレタン、発泡塩化ビニールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、発泡した樹脂であればよい。断熱体40は、例えば板状体10に対して一体成形すればよい。すなわち、例えばビーズ法による発泡樹脂成形用の型内に板状体10をセットし、ここにビーズを入れて発泡させる方法である。その場合、板状体10に係止孔12・・を貫設しておけば、発泡樹脂が係止孔12・・に入り、さらに板状体10の反対側の面へと行き渡り、板状体10を挟んでサンドイッチ構造となって強く一体化する。しかし、必ずしもこのようにサンドイッチ構造にしなくてもよく、板状体10のトラス筋20とは反対側の面に断熱体40が固定されておればよい。一体化を促進するには、例えば板状体10に凹凸を付けたり、酢酸ビニル系、エポキシ系等に代表される接着剤を事前に塗布しておくことが望ましい。また、必ずしも一体成形しなくてもよく、例えば板状体10に対して別途に成形した断熱体40を接着してもよいし、加熱して融着させてもよい。
【0019】この断熱体40の板状体側とは反対側の面にはラス50が固定されている。このラス50は、メタルラスであってもワイヤラスであってもよく、また図11に拡大して示した平面状のラスであっても、図12に拡大して示したように波状に成形した立体ラスであってもよい。このラス50を断熱体40に固定するには、ラス50を加熱して断熱体40に融着させる方法、ラス50の少なくとも一部を断熱体40に圧入する方法、ラス50にワイヤー等を溶接等で固定し、このワイヤー等を加熱して断熱体40に融着させる方法、このワイヤー等を断熱体40に圧入する方法などがある。また、複数枚のラスを重ねて溶接等により固定し、その端の1枚のラスを断熱体40に融着等により固定するようにしてもよい。さらに、ラス50の一部を凹陥形成してこの部位のみを断熱体40に固定したり、ラス50に固定したワイヤー等を断熱体40に固定したときには、ラス50の少なくとも一部が断熱体40から浮くから、モルタルを付着させたときに、モルタルがラス50の裏側(断熱体40に面する側)まで回り込んでしっかりと付着することになる。これとは逆に断熱体40に凹部を凹陥形成することにより、ラス50の少なくとも一部が断熱体40から浮くようにして、同じ作用を狙ってもよい。
【0020】上記ラス50は、断熱体40を貫通するアンカー部材60を介して板状体10に連結されている。このアンカー部材60は、図4に示すように、ラス50に取り付けられたガイド部材61と、このガイド部材61に螺合するタッピングネジ62とを備える。ガイド部材61のボス部の外周には雄ねじが切られ、このボス部がラス50に下側からねじ込まれている。また、タッピングネジ62はガイド部材内方の雌めじ部に螺合し、先端のタップ部が板状体10にねじ込まれている。そして、タッピングネジ62の頭部が沈むことにより形成されたガイド部材61の凹陥部には、熱橋対策のために発泡ウレタン63が注入されており、タッピングネジ62を介した熱伝導により断熱体40の断熱効果が減じられないようにしている。図5はアンカー部材60の変形例を示す。このアンカー部材60もガイド部材61及びタッピングネジ62を備えるが、このガイド部材61は、例えば樹脂により半球状に形成され、これを図5(a)に示すようにラス50に当てがい、タッピングネジ62をガイド部材内方の雌めじ部に螺合して螺進させていき、タッピングネジ先端のタップ部が板状体10に達してから更にねじ込んでいくと、図5(b)に示すようにガイド部材61が反転するように変形し、ラス50に食い込むようになっている。この反転したガイド部材61には、上記同様に熱橋対策のための発泡ウレタン63が注入されている。なお、アンカー部材60としては他にも例えばピン状のものを板状体10に立設し、断熱体40を固定した後でラス50をアンカー部材60に対して熱融着、溶接等により固定してもよく、要するにラス50が、断熱体40を貫通するアンカー部材60を介して板状体10に連結されておればよい。
【0021】上記アンカー部材60は、先端(具体的にはタッピングネジ62等の先端)が板状体10から突き出ていて、この部位に後述するセパレーターを係止できるようになっている。
【0022】この壁の構成材Bの組立方法は、図6の上側のトラス筋20で示すように、トラス筋20をその弾性により対向するV字状部分22b・・同士が接近するように撓ませて、これを板状体10の受入部11に嵌入すれば、トラス筋20が板状体10に取り付けられる。そして、図6の下側のトラス筋20で示すように、ロック部材30の係合部31、31を鉄筋23、23にそれぞれ乗架させると、トラス筋20の裾部同士の相対位置が固定される。
【0023】そして、上記構成材Bを用いた壁構造の施工法を説明すると、図8及び図9に示すように、この壁の構成材Bを、建造物の壁を構築すべき部位に自立させる。この図では、構築済み床面101の端縁付近に構成材Bを、そのトラス筋20が内側となるように、且つトラス筋20の鉄筋21が上下方向に沿うように置き、次々に構成材Bを並べて板状体10の間に隙間ができないように並べ、又は端縁で接続してゆく。その場合、構成材Bの固定を確実にするために、床面101に2本の桟木102、102を平行に固定し、この間で構成材Bの下端を挟持したり、外側に横端太103を組み、これを建造物の既設構造部分で支持したりすることが望ましい。そして、トラス筋20の鉄筋21と交差する方向に(この実施形態では水平方向)に横筋104を当てて、トラス筋20に対して結束等により固定する。次いで、構成材B・・の内側にコンクリートパネル105・・を配し、これらの構成材B・・とコンクリートパネル105・・とをセパレーター106で仮固定する。その接続構造としては、図10に示すように、アンカー部材60のタッピングネジ62の先端に雌ネジが切られたパイプ状のコネクタ107の一端を螺合し、このコネクタ107の他端に、コンクリートパネル105に取り付けるセパレーター106の先端を螺合するというものが例示される。その場合、コネクタ107を樹脂等の断熱性ある部材で形成すれば、熱橋対策になる。このようにコネクタ107を用いた螺合接続に限らず、アンカー部材60又はセパレーター106の先端を鈎状に形成して接続してもよい。このように構成材B・・とコンクリートパネル105・・との仮固定が完了すれば、その間にコンクリート121を打設し、養生後にコンクリートパネル105・・を外せば、打設コンクリート121及びトラス筋20により壁本体が構築されると共に、板状体10の外側に断熱体40が固定される。そしてラス50にモルタル122を付け、さらにタイル123を付けて外装を施せば、図1に示すように外壁等が構築される。なお、108はセパレーター106の一端を構成するフォームタイ(登録商標)、109はこのフォームタイ108の端部を挟持する2本のパイプよりなる横端太、110はフォームタイ108の端部に螺合して横端太109に係合するリブ座である。この横端太109によりコンクリートパネル105が支持されるが、さらに縦端太を取り付けて支持強度を増してもよい。
【0024】従って、上記実施形態の壁構造によれば、トラス筋20及び交差筋104等により充分な壁強度を確保できる。そして、モルタル122及びタイル123等の外装材はラス50に付着し、このラス50がアンカー部材60により板状体10に固定されるから、モルタル122を厚く塗ったりタイル123を貼るなどして外装材が重くなったときでも、これらを安定的に固定できる。本発明ではラス50は断熱体40に固定しさえすればよいが、上記実施形態のようにラス50を断熱体40に融着したときには、図11に拡大して示したようにラス50の目に断熱体表面の溶融層が絡みつき、両者が強く一体化されるから、構成材自体の剛性が上がると共に、ラス50が断熱体40に確実に固定され、ひいては外装材122、123が安定して保持される。また、火災等により断熱体等が焼失しても、ラス50がアンカー部材60により板状体10に固定されたまま残るから、外装材122、123が崩れ落ち難い。なお、本発明のトラス筋は上記実施形態の構造に限定されるものではなく、鉄筋を用いてトラス構造に組まれたものであればよい。
【0025】また、上記壁構造を採用すれば、施工時には板状体10が捨て型枠として機能するから、従来の施工法によるよりも作業手順が簡略化され、建築費の低廉化及び工期の短縮を図ることができる。さらに、上述した施工法によれば、構成材Bを用いることにより、トラス筋の配筋、外側のコンクリートパネルの設置、コンクリート打設後の断熱材の取り付けといった作業が不要になるから、作業手順が更に簡略化され、一層の建築費の低廉化及び工期の短縮を図ることができる。
【0026】さらに、アンカー部材60を、セパレーター106を係止できるように構成したので、自立させた壁の構成材B・・をコンクリートパネル105・・に仮固定するときには、セパレーター106を板状体10、トラス筋20又はアンカー部材60に係止すればよく、作業性がよくなり、建築費の低廉化及び工期の短縮を更に促進することができる。このようにアンカー部材60にセパレーター106を係止する以外にも、板状体10又はトラス筋20にセパレーター106を係止するように構成してもよい。その係止構造としては、セパレーター106の先端を鈎状に形成して接続してもよいし、上記実施形態のようなコネクタを用いて、板状体10又はトラス筋20に固定したボルト等に接続してもよい。
【0027】また、本発明はトラス筋を板状体に溶接等により固定したものも含むものである。しかし、上記実施形態のようにトラス筋20を弾性的に撓ませてその裾部22b・・を板状体10の受入部11にはめ込むように構成すれば、トラス筋20を板状体10に取り付ける前では板状体10とトラス筋20が別体であるので、板状体同士を積み上げ、また図7に示すようにトラス筋同士を重ねても嵩張らない。このため、保管するにも輸送するにも場所をとらない。そして、施工現場ではトラス筋20及び板状体10を別体で移動できるから、運搬対象が軽く且つコンパクトになって人力運搬が容易である。しかも、トラス筋20を弾性的に撓ませてその裾部22b・・を板状体10の受入部11にはめ込む構成であるから、組み付けが容易である。また、ロック部材30は必ずしも要しないが、これを付ければトラス筋20が板状体10から外れ難くなる。
【0028】さらに、上記実施形態では、壁の構成材B・・の立設、固定後にラス50にモルタル122を付けたが、図13に示すように、工場出荷段階で予め構成材Bのラス50にモルタル122及びタイル123等の外装材を固定しておき、これを施工現場に搬入して組み付けるという施工法を採用すれば、コンクリート打設後に外装を施す手間が省けるから、建築費の低廉化及び工期の短縮を更に促進することができる。
【0029】以上説明した壁構造では、コンパクトな構成材Bを用い、これを壁を構築すべき部位に一連に配設して構築した。しかし、本発明の壁構造は必ずしも構成材Bを用いなければならないものではなく、例えば側面投影面積を異にする板状体、トラス筋、断熱体、ラス、及びアンカー部材をそれぞれ現場に搬入し、これらを壁を構築すべき部位で組むことにより、上記構成材Bを連設したものに相当する構造を組み上げるようにしてもよい。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の壁構造によれば、充分な壁強度を確保しながら、重い外装材でも安定的に固定でき、また捨て型枠の採用により作業手順を簡略化して建築費の低廉化及び工期の短縮を図ることができる。
【0031】請求項2の施工法によれば、トラス筋の配筋、外側のコンクリートパネルの設置、コンクリート打設後の断熱材の取り付けといった作業が不要になるから、作業手順が簡略化され、建築費の低廉化及び工期の短縮を図ることができる。
【0032】請求項3のようにすれば、コンクリート打設後に外装を施す手間が省けるから、建築費の低廉化及び工期の短縮を更に促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の壁構造の縦断面図、
【図2】実施形態の壁の構成材を示す斜視図、
【図3】上記構成材の一部を断面して示した平面図、
【図4】上記構成材で用いたアンカー部材の拡大図、
【図5】アンカー部材の変形例の拡大図、
【図6】上記構成材でトラス筋を板状体に組み付ける手順を示す説明図、
【図7】上記トラス筋を重ねて保管している状態を示す正面図、
【図8】上記壁構造の施工を説明する斜視図、
【図9】図8の縦断面図、
【図10】アンカー部材とセパレーターとの接続構造を示す拡大側面図、
【図11】断熱体の表面のラスを示す拡大断面図、
【図12】別のラスで示す図11相当図、
【図13】別の実施形態で用いる構成材を示す斜視図である。
【符号の説明】
B 壁の構成材
10 板状体
20 トラス筋
40 断熱体
50 ラス
60 アンカー部材
101 床面
104 交差筋
105 コンクリートパネル
106 セパレータ
121 コンクリート
122 モルタル
123 タイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】 壁を構築すべき部位に支持された板状体と、この板状体の内側に設けられたトラス筋と、このトラス筋と交差するように配筋された交差筋と、板状体の外側に固定された発泡樹脂の断熱体と、この断熱体の外側に設けられたラスと、上記断熱体を貫通してラスを板状体に連結するアンカー部材とを備え、上記板状体の内側にコンクリートが打設されていると共に、上記ラスにモルタル、タイル等の外装材が装着されている壁構造。
【請求項2】 型枠となる板状体と、この板状体の一方の面に設けられたトラス筋と、上記板状体の他方の面に固定された発泡樹脂の断熱体と、この断熱体の板状体側とは反対側の面に設けられたラスと、上記断熱体を貫通してラスを板状体に連結するアンカー部材とを備えた構成材を用いた壁構造の施工法であって、壁を構築すべき部位に上記構成材を一連に配設し、トラス筋と交差するように交差筋を配筋し、トラス筋に対向させてコンクリートパネルを設置し、このコンクリートパネルを板状体、トラス筋又はアンカー部材にセパレーターで連結し、構成材とコンクリートパネルとの間にコンクリートを打設する一方、ラスにモルタル、タイル等の外装材を装着する壁構造の施工法。
【請求項3】 請求項2に記載の構成材のラスにモルタル、タイル等の外装材が装着された外装済み構成材を用いた壁構造の施工法であって、この外装済み構成材を、壁を構築すべき部位に一連に配設し、トラス筋と交差するように交差筋を配筋し、トラス筋に対向させてコンクリートパネルを設置し、このコンクリートパネルを板状体、トラス筋又はアンカー部材にセパレーターで連結し、構成材とコンクリートパネルとの間にコンクリートを打設する壁構造の施工法。
【請求項1】 壁を構築すべき部位に支持された板状体と、この板状体の内側に設けられたトラス筋と、このトラス筋と交差するように配筋された交差筋と、板状体の外側に固定された発泡樹脂の断熱体と、この断熱体の外側に設けられたラスと、上記断熱体を貫通してラスを板状体に連結するアンカー部材とを備え、上記板状体の内側にコンクリートが打設されていると共に、上記ラスにモルタル、タイル等の外装材が装着されている壁構造。
【請求項2】 型枠となる板状体と、この板状体の一方の面に設けられたトラス筋と、上記板状体の他方の面に固定された発泡樹脂の断熱体と、この断熱体の板状体側とは反対側の面に設けられたラスと、上記断熱体を貫通してラスを板状体に連結するアンカー部材とを備えた構成材を用いた壁構造の施工法であって、壁を構築すべき部位に上記構成材を一連に配設し、トラス筋と交差するように交差筋を配筋し、トラス筋に対向させてコンクリートパネルを設置し、このコンクリートパネルを板状体、トラス筋又はアンカー部材にセパレーターで連結し、構成材とコンクリートパネルとの間にコンクリートを打設する一方、ラスにモルタル、タイル等の外装材を装着する壁構造の施工法。
【請求項3】 請求項2に記載の構成材のラスにモルタル、タイル等の外装材が装着された外装済み構成材を用いた壁構造の施工法であって、この外装済み構成材を、壁を構築すべき部位に一連に配設し、トラス筋と交差するように交差筋を配筋し、トラス筋に対向させてコンクリートパネルを設置し、このコンクリートパネルを板状体、トラス筋又はアンカー部材にセパレーターで連結し、構成材とコンクリートパネルとの間にコンクリートを打設する壁構造の施工法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図7】
【図11】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図13】
【図2】
【図4】
【図7】
【図11】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図13】
【公開番号】特開平10−205032
【公開日】平成10年(1998)8月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−26163
【出願日】平成9年(1997)1月25日
【出願人】(000000941)鐘淵化学工業株式会社 (3,932)
【公開日】平成10年(1998)8月4日
【国際特許分類】
【出願日】平成9年(1997)1月25日
【出願人】(000000941)鐘淵化学工業株式会社 (3,932)
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