説明

変性ジエン系ゴム及びその製造方法並びにそれを用いたゴム組成物

【課題】低エネルギーロス性及び反発弾性に優れた変性ジエン系ゴム及びその製造方法並びにそれを用いたゴム組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ化率が0.1%以上15%未満のエポキシ化ジエン系ゴムと、エポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシラン及びカルボン酸とを反応させた変性ジエン系ゴムである。また、エポキシ化率が0.1%以上15%未満のエポキシ化ジエン系ゴムと、エポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシラン及びカルボン酸とを機械的混練により反応させることを特徴とする変性ジエン系ゴムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ジエン系ゴム及びその製造方法並びにそれを用いたゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への意識が高まり、自動車の燃費向上を目的とした低燃費タイヤ用ゴム材料の開発が盛んに行われている。このような低燃費を目的としたタイヤ用ゴム材料は、機械的性質、低エネルギーロス性などに優れていることが望まれており、その実現のため、フィラーであるシリカの分散性を向上させ、ゴム分子間の摩擦やシリカとゴム分子間の摩擦を低減させて発熱を減らす技術が知られている。そして、シリカの分散性を向上させるために、その材料となるゴムをエポキシ化変性させる技術が多数開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3363539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたタイヤトレッドゴム組成物は、機械的性質、低エネルギーロス性などが必ずしも十分でない。そこで、本発明は、特に低エネルギーロス性及び反発弾性が優れた変性ジエン系ゴム及びその製造方法並びにそれを用いたゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、以上の目的を達成するために、鋭意検討した結果、エポキシ化率を限定したエポキシ化ジエン系ゴムとアルコキシシラン及びカルボン酸とを反応させることによって、アルコキシシランが多数付加した変性ジエン系ゴムを製造でき、それを用いたゴム組成物は、特に低エネルギーロス性及び反発弾性に優れていることを見出し、本発明に至った。すなわち本発明は、エポキシ化率が0.1%以上15%未満のエポキシ化ジエン系ゴムと、エポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシラン及びカルボン酸とを反応させた変性ジエン系ゴムに関する。
【0006】
また、本発明は、エポキシ化率が0.1%以上15%未満のエポキシ化ジエン系ゴムと、エポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシラン及びカルボン酸とを機械的混練により反応させることを特徴とする変性ジエン系ゴムの製造方法に関する。
【0007】
さらに、本発明は、上記変性ジエン系ゴムとシリカとを含有することを特徴とする変性ジエン系ゴム組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、特に低エネルギーロス性及び反発弾性に優れた変性ジエン系ゴム及びその製造方法並びにそれを用いたゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る変性ジエン系ゴムにおいて、原料となるジエン系ゴムは、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン含有のブタジエンゴム(VCR)、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムなどである。この中でも、特にブタジエンゴムが好ましい。上記ジエン系ゴムは、1種類単独、または2種類以上を組み合わせて使用してもよいが、2種類以上の組合せでは、そのうち1種類のみに変性が偏る可能性がある点から1種類の単独重合体が好ましい。
【0010】
上記ジエン系ゴムは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ法)による重量平均分子量(Mw)が5万〜200万、さらに20万〜100万、特には40万〜80万であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が5万未満になると、機械強度が低くなり、200万を超えると、加工性が低下するので好ましくない。
【0011】
また、上記ジエン系ゴムは、エポキシ化率が0.1%以上15%未満でエポキシ化されており、より好ましくは0.2%〜5%、特に好ましくは0.5%〜2.5%である。
【0012】
上記ジエン系ゴムのエポキシ化の方法としては、特に制限はなく、例えば、モノ過フタル酸を用いる方法(特開昭51−060292号公報)、有機過酸またはカルボン酸その無水物とともに過酸化水素水を用いる方法(特開平05−214014号公報)、タングステン酸系触媒とリン酸化合物および相間移動触媒と過酸化水素水を用いる方法(特許第3942927号公報)等に記載の公知の方法が用いられる。
【0013】
また、上記エポキシ化の際に、エポキシ化率を調整する方法としては、例えば過酸化水素水の添加量を調整する、反応温度を調整する、反応時間を調整する等の通常の方法が挙げられる。エポキシ化率が0.1%未満では、エポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシランと反応するエポキシ基の数が不足する点で好ましくない。また、エポキシ化率が15%以上では、不飽和結合が少なくなってゴム弾性が低下する点や、硫黄加硫を用いた場合に加硫戻りを生じやすく、機械的性質が低下する点で好ましくない。
【0014】
本発明に係る変性ジエン系ゴムにおいて、エポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシランとしては、特に制限はなく、エポキシ化ジエン系ゴム中のエポキシ基に付加反応の可能なものであれば良い。
【0015】
上記エポキシ基と反応する官能基としては、例えば、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、ウレイド基、アクリロキシ基、イソシアネート基、スチリル基、メタクリロキシ基、スルフィド基、ニトロ基、ハロゲン基、エポキシ基またはグリシジル基などが挙げられ、さらに、チオカルバモイルテトラスルフィド構造、ベンゾチアゾールテトラスルフィド構造、メタクリレートモノスルフィド構造を有するものなどが挙げられる。
【0016】
エポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシランとしては、例えば、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルブトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシエチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシプロピルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシブチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリブトキシシランなどのアミノ基を有するものが挙げられる。これらの化合物の中では、特に変性効果の点から、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシランが好適に使用される。
【0017】
さらに、エポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシランとして、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト基を有するもの、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基を有するもの、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド基を有するもの、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリロキシ基を有するもの、3−イソシアネートプロピル、トリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するもの、p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリル基を有するもの、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリロキシ基を有するもの、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィドなどのスルフィド基を有するもの、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ基を有するもの、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのハロゲン基を有するもの、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィドなどのチオカルバモイルテトラスルフィド構造を有するもの、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどのベンゾチアゾールテトラスルフィド構造を有するもの、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのメタクリレートモノスルフィド構造を有するもの、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランなどのエポキシ基またはグリシジル基を有するもの等が挙げられる。これらの化合物の中では、特に反応後の性能が優れる点から、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシジル基またはエポキシ基を持つアルコキシシランが好適に使用される。
【0018】
さらにまた、エポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシランとして、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、トリメチルブトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、トリエチルブトキシシラン、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、トリブトキシシラン、メチルジブトキシシラン、ジメチルブトキシシラン、エチルジブトキシシラン、ジエチルブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、ジエチルジプロポキシシランなどが挙げられる。これらの化合物の中では、特に添加効果とコストの両立の点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好適に使用される。上記エポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシランは、1種類単独、または2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
これらのエポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシランの使用量は、好ましくはエポキシ化ジエン系ゴム100gに対して0.001mol〜0.3mol、より好ましくは0.002mol〜0.25mol、特に好ましくは0.003mol〜0.1molである。アルコキシシランの使用量が0.001mol未満では、エポキシ化ジエン系ゴム中に導入されるアルコキシシランの量が少なくなり、満足すべき変性効果が現れない。一方、アルコキシシランの使用量が0.3molを超えると、エポキシ化ジエン系ゴム中に未反応のアルコキシシランが残存し、その除去に手間がかかり、アルコキシシランの無駄にもなり、さらに顕著な物性の改善効果が現れにくい。
【0020】
本発明に係る変性ジエン系ゴムにおいて、アルコキシシランとともにエポキシ基と反応させるカルボン酸としては、特に制限はなく、飽和モノカルボン酸、飽和ジカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、また、3つ以上のカルボキシル基を持つ不飽和、飽和カルボン酸が挙げられる。飽和モノカルボン酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルチミン酸、マルガリン酸、ステアリン酸などが挙げられる。飽和ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。芳香族モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、m−トルイル酸、o−トルイル酸、p−トルイル酸、ケイ皮酸、メリト酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸などが挙げられる。不飽和モノカルボン酸としては、例えば、α−エレオステアリン酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、アラキドン酸、イワシ酸、エイコサジエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサペンタエン酸、エイコセン酸、エライジン酸、エルカ酸、オズボンド酸、オレイン酸、ガドレイン酸、クロトン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸、ネルボン酸、バクセン酸、パルミトレイン酸、ボセオペンタエン酸、ミード酸、ミリストレイン酸、リノール酸などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。これらの化合物の中で、カルボキシル基以外が化学的に安定で、沸点が高く揮発しにくい性質を持ち、シラン変性剤を付加する際の効果が高い点から、飽和モノカルボン酸または飽和ジカルボン酸が好ましく、飽和ジカルボン酸が特に好ましい。中でも具体的には、ステアリン酸、マロン酸がより好ましく、マロン酸が特に好ましい。上記カルボン酸は、1種類単独、または2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
これらのカルボン酸の使用量は、好ましくはエポキシ化ジエン系ゴムに対して、10μmol/g以上5000μmol/g以下であり、より好ましくは50μmol/g以上1000μmol/g以下、特に好ましくは80μmol/g以上500μmol/g以下である。カルボン酸の使用量が10μmol/g未満では、シラン変性剤が充分付加しない。一方、カルボン酸の使用量がエポキシ化ジエン系ゴムに対して5000μmol/gを超えると、ゴム組成物とした時、エポキシ化ジエン系ゴムに付加した変性基と無機フィラーの反応が妨害されるので好ましくない。
【0022】
本発明に係る変性ジエン系ゴムは、上記エポキシ化率が0.1%以上15%未満のエポキシ化ジエン系ゴムを、カルボン酸存在下でエポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシランと機械的混練により反応させることを特徴とする。機械的混練することで、低コストで生産効率がよく、廃液等を発生させずに変性ジエン系ゴムを製造することができる。本発明においては、例えば、あらかじめ加熱した混練機を用いて原料となるエポキシ化ジエン系ゴムにアルコキシシラン及びカルボン酸を練り込むことによって反応させても良いし、製造時にエポキシ化触媒として用いられたカルボン酸を通常行われる中和工程を省略して、そのまま用いても良い。
【0023】
上記反応の反応温度としては、20℃〜140℃が好ましく、より好ましくは40℃〜120℃である。20℃未満ではエポキシ基とアルコキシシランの官能基の反応が起きず、140℃を超えるとジエン系ゴムの熱劣化が起きるため、好ましくない。
【0024】
本発明に係る変性ジエン系ゴムの製造方法において、機械的混練とは、機械的せん断力を与えて溶融樹脂を混練することであり、その混練に用いられる混練機は、機械的せん断力を与えて溶融樹脂を混練できる装置であれば特に制限はなく、ロール混練機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、一軸押出機、二軸押出機、2軸テーパー押出機等、樹脂加工に用いられる一般的な混練機械を用いることができる。
【0025】
本発明に係る変性ジエン系ゴムの製造方法によって得られた変性ジエン系ゴムによれば、低エネルギーロス性及び反発弾性に優れた変性ジエン系ゴム組成物を得ることができる。
【0026】
次に、本発明に係る変性ジエン系ゴムを用いたゴム組成物について説明する。本発明に係るゴム組成物は、上記変性ジエン系ゴムと、シリカとを含有することを特徴とする。
【0027】
本発明に係るゴム組成物においては、上記変性ジエン系ゴムの他にそれ以外のゴムを加えて、ゴム組成物として使用することもできる。それ以外の加えられるゴムとしては、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン含有のブタジエンゴム(VCR)、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムなどのジエン系単量体の重合体;アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ニトリルクロロプレンゴム、ニトリルイソプレンゴムなどのアクリロニトリル−ジエン共重合ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンクロロプレンゴム、スチレンイソプレンゴムなどのスチレン−ジエン共重合ゴム;エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。この中で、ブタジエンゴム、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン含有のブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴムが好ましい。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
また、本発明に係るゴム組成物において、シリカの含有量は、上記変性ジエン系ゴムとそれ以外のゴム成分100重量部に対して10重量部〜120重量部、より好ましくは30重量部〜90重量部、特に好ましくは50重量部〜80重量部である。シリカが10重量部より少ないと、本発明の変性ジエン系ゴムを用いなくても充分なシリカの分散が得られるため、本発明の効果がなく、120重量部より多いと加工性が著しく悪くなり、かつ耐摩耗性も低下し、好ましくない。
【0029】
また、本発明に係るゴム組成物は、ゴム補強剤を加えることができる。ゴム補強剤としては、上記シリカの他、各種のカーボンブラック、ホワイトカーボン、活性化炭酸カルシウム、超微粒子珪酸マグネシウム等などが挙げられる。なかでも、好ましくは、粒子径が90nm以下、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が70ml/100g以上のカーボンブラックであり、例えば、FEF、FF、GPF、SAF、ISAF、SRF、HAF等が用いられ、特に好ましくは、低発熱性や低燃費性の観点から粒子径の小さいISAFである。
【0030】
ゴム補強剤に用いるカーボンブラックとシリカは混合するとより加工性と低エネルギーロス性や摩耗性などの両立が可能となる。特に、両者の重量比がカーボンブラック/シリカが90/10〜10/90が良く、より好ましくは、80/20〜20/80、特に好ましくは70/30〜30/70である。シリカが10%より少ないと、エネルギーロスが大きくなり、90%より多いと加工性や摩耗性が悪くなる欠点がある。
【0031】
また、本発明に係るゴム組成物は、更に、加硫剤、加硫促進剤を添加することができる。
【0032】
加硫剤としては、硫黄、加熱により硫黄を生成させる化合物、有機過酸化物、酸化マグネシウム等の金属酸化物、多官能性モノマー、シラノール化合物等が挙げられる。加熱により硫黄を生成させる化合物としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
【0033】
加硫促進剤としては、例えばアルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類等が挙げられ、より具体的には、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジンクジ−n−ブチルジチオカーバイト(ZnBDC)、ジンクジメチルジチオカーバイト(ZnMDC)等が挙げられる。
【0034】
また、本発明に係るゴム組成物は、その他、必要に応じて、老化防止剤、充填剤、プロセスオイル等、通常ゴム組成物に用いられる公知の添加剤を添加することができる。
【0035】
老化防止剤としては、アミン・ケトン系、イミダゾール系、アミン系、フェノール系、硫黄系及び燐系等の老化防止剤が挙げられる。より具体的には、老化防止剤としてはフェノール系の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、リン系のトリノニルフェニルフォスファイト(TNP)、硫黄系の4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(TPL)等が挙げられる。
【0036】
充填剤としては、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、クレー、リサージュ、珪藻土等の無機充填剤、再生ゴム、粉末ゴム等の有磯充填剤が挙げられ、プロセスオイルとしては、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系のプロセスオイルが挙げられる。
【0037】
さらに、本発明に係るゴム組成物は、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤としては特にエポキシ基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0038】
エポキシ基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤として、市販で利用できるものは、例えば、以下のものが含まれるが、決してこれらに限定されるものではない。3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルブトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシエチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシプロピルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシブチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)メチルジメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、11−メルカプトウンデシルトリメトキシシラン、11−メルカプトウンデシルトリエトキシシランなどがある。この中でも特に、(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシランが好ましい。
【0039】
エポキシ基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤の添加量は、エポキシ化ジエン系ゴムのもつエポキシ基数に対し0.1〜1モル当量が好ましい。当該シランカップリング剤の添加量が0.1モル当量未満では、tanδおよび耐摩耗性の改善効果が少なくなる傾向がある。また、当該シランカップリング剤の添加量が1モル当量を超えると、経済的に好ましくない傾向がある。
【0040】
シランカップリング剤を用いたゴム組成物は、シリカなどのゴム補強剤との混合により、ゴム補強剤のゴムマトリクス中での分散性を向上させる働きがある。その結果、低燃費性などの効果にもつながる。
【0041】
本発明に係るゴム組成物は、上記各成分を通常行われているバンバリー、オープンロール混練機、ニーダー、二軸混練り機などを用いて混練時の最高温度がシランカップリング剤とエポキシ基の反応温度以上となる条件で混練りすることで得られる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではない。
【0043】
(参考例1)
先ず、参考例1として、実施例1乃至4、比較例2及び3に用いるエポキシ化ポリブタジエンゴムを作製した。具体的には、ポリブタジエン(宇部興産(株)製:UBEPOL BR150L)を100g取り、セパラブルフラスコのシクロへキサン1000ml中に投入して攪拌し、1晩(約8時間)をかけて溶解した。その後、ウォーターバスでセパラブルフラスコの温度を50℃とし、非イオン性界面活性剤テリック320(HUNTSMAN社製)1gおよび蟻酸4.25g投入して攪拌、続いて過酸化水素水(30%)10.5gを滴下ロートで投入して2時間攪拌を続けた。その後に加熱を止め、酸化防止剤(イルガノックス1520L)を0.1g投入し、ウォーターバス中に氷を投入して温度を室温まで下げた。次に、メタノール500mlを投入し、エポキシ化ポリブタジエンゴムを溶液から析出させた。溶媒を取り除いた後、2.5%炭酸ナトリウムを500ml投入し、10分間攪拌後、洗浄液を除去した。さらに、水500mlを投入し、10分間攪拌後、洗浄液を除去した。この水洗作業を3度行った。その後、反応液をテフロン(登録商標)コーティングしたバットに取り出し、90℃の真空乾燥機中に1時間置いて、乾燥させることで、エポキシ化ポリブタジエンゴムを得た。
【0044】
得られたエポキシ化ポリブタジエンゴムのエポキシ化率を測定したところ、2.2%であった。
【0045】
エポキシ化率は試料の工程終了後、3時間以上貯蔵した後、JIS K7236に準じて測定した。なお、JIS K7236と異なる点は、エポキシ化ゴムの量を0.6g〜0.9gとしたこと、エポキシ化ゴムの溶解時に用いるクロロホルムをシクロへキサンに変更したことである。また、JIS K7236では測定直前に20mlの酢酸を加えることとなっているが、臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液に含まれる酢酸以外に加えなかったことである。エポキシ化率の低いゴムは規格量の酢酸を加えると塊状に析出し、滴定できなかった。酢酸量を減じた場合、当量点が分かりにくくなるが、析出した試料が油膜状に測定液上に広がり時間をかければ滴定可能となった。その他の試薬調整等はJIS K7236に述べられている通りである。
【0046】
また、ここでエポキシ化率は、下記計算式数1を用いて計算した。エポキシ当量とはエポキシ基1モルに相当するエポキシ化樹脂の質量(g)であり、JIS K7236に述べられている方法で求められる。100%エポキシ化ポリブタジエンの場合はブタジエン分子量+酸素1原子量である。
【0047】
【数1】

【0048】
(実施例1)
次に、表1に示すとおり、参考例1において作製したエポキシ化ポリブタジエンゴムを100g取り、ロール(温度:60℃、ロール間隔:0.8mm)に巻きつけて混練した。ロールは、安田精機製6インチロール混練機を用いた。次に、ステアリン酸(花王社製)2.5g、GOPTMS(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)(東京化成製:試薬)1gをピペットでロール上のエポキシ化ポリブタジエンゴムに垂らし、さらに5分間練り込んだ。その後、真空乾燥機で真空下、90℃で1時間熱処理することで、実施例1に係る変性ポリブタジエンゴムを得た。この変性ポリブタジエンゴムを24時間静置した後、約5gを取りシクロヘキサン100mlに溶解し、エタノールで析出させる操作を2回行った。得られた試料を再び90℃、1時間乾燥させ、ICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表3に示す。
【0049】
(実施例2)
実施例1において、ステアリン酸(花王社製)2.5gの代わりにマロン酸(和光純薬社製:試薬)1gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る変性ポリブタジエンゴムを得た。得られた試料について、実施例1と同様にICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表3に示す。
【0050】
(実施例3)
実施例1において、ステアリン酸(花王社製)2.5gの代わりにマロン酸(和光純薬社製:試薬)2.5gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る変性ポリブタジエンゴムを得た。得られた試料について、実施例1と同様にICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表3に示す。
【0051】
(実施例4)
実施例3において、変性ポリブタジエンゴムをシクロヘキサン100mlに溶解し、エタノールで析出させる操作を1回にしたこと以外は実施例3と同様にして、実施例4に係る変性ポリブタジエンゴムを得た。得られた試料について、実施例3と同様にICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表3に示す。
【0052】
(比較例1)
ポリブタジエン(宇部興産(株)製:UBEPOL BR150L)を24時間静置した後、約5gを取りシクロヘキサン100mlに溶解し、エタノールで析出させる操作を2回行った。得られた試料を再び90℃、1時間乾燥させ、ICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表3に示す。
【0053】
(比較例2)
参考例1において作製したエポキシ化ポリブタジエンゴムを24時間静置した後、約5gを取りシクロヘキサン100mlに溶解し、エタノールで析出させる操作を2回行った。得られた試料を再び90℃、1時間乾燥させ、ICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表3に示す。
【0054】
(比較例3)
参考例1において作製したエポキシ化ポリブタジエンゴムを100g取り、ロール(温度:60℃、ロール間隔:0.8mm)に巻きつけて混練した。ロールは、安田精機製6インチロール混練機を用いた。次に、GOPTMS(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)(東京化成製:試薬)1gをピペットでロール上のエポキシ化ポリブタジエンゴムに垂らし、さらに5分間練り込んだ。その後、真空乾燥機で真空下、90℃で1時間熱処理することで、比較例3に係る変性ポリブタジエンゴムを得た。この変性ポリブタジエンゴムを24時間静置した後、約5gを取りシクロヘキサン100mlに溶解し、エタノールで析出させる操作を2回行った。得られた試料を再び90℃、1時間乾燥させ、ICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表3に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
得られた実施例1乃至4及び比較例1乃至3に係る試料30重量部と、スチレン−ブタジエンゴム(スチレン含量が23%、ML1+4、100℃が70)70重量部を、予め90℃に加温した180ccのバンバリータイプのプラストミルに投入して30秒混練した。続けてシリカ(Ultrasil 5000GR)75重量部にシランカップリング剤(Si69)を6重量部、プロセスオイル(サンセンオイル4240)21.5重量部、亜鉛華3重量部、老化防止剤(住友化学製:アンチゲン6C)を1重量部、ステアリン酸1重量部を混合し、そのうち半分をプラストミルに投入し、1分間混練した。次に、残り半分を投入し約3分30秒混練した。混練を開始してから合計で5分間経過した後、混練物をプラストミルより取り出した。次に、6インチロールに取り出した混合物を巻きつけてロール混練しながら、加硫剤である粉末硫黄を1.4重量部と加硫促進剤ノクセラーCZ1.7重量部およびノクセラーD2重量部を添加した。ロールの温度は60℃とし、約5分間の間に粉末硫黄と加硫促進剤を混合した。次に、下記に示す試験に必要な加硫成型体を得るため、加硫成型を行った。熱プレスにセットした金型を用い、金型内に混合物を入れて温度160℃、約20〜25分間加熱加圧することで加硫成型を行い、実施例1乃至4及び比較例1乃至3に係るゴム組成物を得た。用いた薬品および配合比(重量部)を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
得られた実施例1乃至4及び比較例1乃至3に係るゴム組成物について、ゴム組成物の引張強度、破壊伸び、反発弾性、加硫物tanδを以下の方法により測定した。結果を表3に示す。
【0059】
(引張試験)
JIS K6251に準拠して測定し、引張強度(TB)、破壊伸度(EB)、(TB×EB)/2を下記計算式数2で指数表示した。(TB×EB)/2は破断までに費やされたエネルギーのおおよその大きさを示す。TB、EB、(TB×EB)/2は一般的に指数が大きい程、ゴム組成物として有利である。
【0060】
(反発弾性試験)
反発弾性は、JIS K6251に規定されている測定法に従って、トリプソ式で測定し、下記計算式数2で指数表示した。一般的に指数が大きい程、ゴム組成物として有利である。
【0061】
【数2】

【0062】
(加硫物tanδ)
EPLEXOR 100N(GABO社製)を用いて、初期歪み10%、動歪み0.3%、周波数16Hz、温度50℃の測定条件で各配合物のtanδを測定し、比較例1のtanδを100とし、下記計算式数3で指数表示した。指数が大きいほど、転がり抵抗特性が優れることを示す。
【0063】
【数3】

【0064】
【表3】

【0065】
以上より、実施例に係る変性ポリブタジエンゴムは、エポキシ基と反応したSiの量が多いため、シリカの分散性が向上し、結果ゴム組成物のtanδ及び反発弾性が向上したことが分かる。
【0066】
(参考例2)
次に、参考例2として、実施例5乃至10、比較例4に用いるエポキシ化ポリブタジエンゴムを作製した。具体的には、ポリブタジエン(宇部興産(株)製:UBEPOL BR150L)を100g取り、セパラブルフラスコのシクロへキサン1000ml中に投入して攪拌し、室温(25℃)で、1晩(約8時間)をかけて溶解した。その後、ウォーターバスでセパラブルフラスコの温度を40℃とし、非イオン性界面活性剤テリック320(HUNTSMAN社製)1gおよび蟻酸2.13g投入して攪拌、続いてセパラブルフラスコの温度を50℃まで上昇させ、過酸化水素水(30%)5.24gを滴下ロートで投入して2時間攪拌を続けた。その後に加熱を止め、酸化防止剤(イルガノックス1520L)を0.2g投入し、ウォーターバス中に氷を投入して温度を室温まで下げた。次に、エタノール500mlを投入し、エポキシ化ポリブタジエンゴムを溶液から析出させた。溶媒を取り除いた後、1.0%炭酸ナトリウムを500ml投入し、10分間攪拌後、洗浄液を除去した。さらに、水(pH=7.0)500mlを投入し、10分間攪拌後、洗浄液を除去した。この水洗作業を3度行った。その後、反応液をテフロン(登録商標)コーティングしたバットに取り出し、90℃の真空乾燥機中に3時間置いて、乾燥させることで、エポキシ化ポリブタジエンゴムを得た。
【0067】
得られたエポキシ化ポリブタジエンゴムのエポキシ化率を参考例1と同様にして測定したところ、2.5%であった。
【0068】
(実施例5)
次に、表4に示すとおり、参考例2において作製したエポキシ化ポリブタジエンゴムを100g取り、ロール(温度:60℃、ロール間隔:0.8mm)に巻きつけて混練した。ロールは、安田精機製6インチロール混練機を用いた。次に、ステアリン酸(花王社製)1g、GOPTMS(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)(東京化成製:試薬)1gをピペットでロール上のエポキシ化ポリブタジエンゴムに垂らし、さらに5分間練り込んだ。その後、真空乾燥機で真空下、90℃で1時間熱処理することで、実施例5に係る変性ポリブタジエンゴムを得た。この変性ポリブタジエンゴムを24時間静置した後、約5gを取りシクロヘキサン120mlに溶解し、メタノール400mlで30分洗浄した。沈殿した試料を再びシクロヘキサン120mlに溶解し、老化防止剤(Irganox 1520L)0.05mlを加え、上記と同様にメタノールで洗浄することで、再度試料を析出させた。得られた試料を再び90℃、1時間乾燥させ、ICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表6に示す。
【0069】
(実施例6)
実施例5において、ステアリン酸(花王社製)1gの代わりにマロン酸(和光純薬社製:試薬)1gを用いたこと以外は実施例5と同様にして、実施例6に係る変性ポリブタジエンゴムを得た。得られた試料について、実施例5と同様にICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表6に示す。
【0070】
(実施例7)
実施例5において、ステアリン酸(花王社製)1gの代わりにマロン酸(和光純薬社製:試薬)2.5gを用いたこと以外は実施例5と同様にして、実施例7に係る変性ポリブタジエンゴムを得た。得られた試料について、実施例5と同様にICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表6に示す。
【0071】
(比較例4)
参考例2において作製したエポキシ化ポリブタジエンゴムを100g取り、ロール(温度:60℃、ロール間隔:0.8mm)に巻きつけて混練した。ロールは、安田精機製6インチロール混練機を用いた。次に、GOPTMS(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)(東京化成製:試薬)1gをピペットでロール上のエポキシ化ポリブタジエンゴムに垂らし、さらに5分間練り込んだ。その後、真空乾燥機で真空下、90℃で1時間熱処理することで、比較例4に係る変性ポリブタジエンゴムを得た。この変性ポリブタジエンゴムを24時間静置した後、約5gを取りシクロヘキサン120mlに溶解し、メタノール400mlで30分洗浄した。沈殿した試料を再びシクロヘキサン120mlに溶解し、老化防止剤(Irganox 1520L)0.05mlを加え、上記と同様にメタノールで洗浄することで、再度試料を析出させた。得られた試料を再び90℃、1時間乾燥させ、ICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表6に示す。
【0072】
【表4】

【0073】
(実施例8)
次に、表5に示すとおり、参考例2において作製したエポキシ化ポリブタジエンゴムを100g取り、ロール(温度:60℃、ロール間隔:0.8mm)に巻きつけて混練した。ロールは、安田精機製6インチロール混練機を用いた。次に、マロン酸(花王社製)1g、GOPTMS(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)(東京化成製:試薬)2.5gをピペットでロール上のエポキシ化ポリブタジエンゴムに垂らし、さらに5分間練り込んだ。その後、真空乾燥機で真空下、90℃で1時間熱処理することで、実施例8に係る変性ポリブタジエンゴムを得た。この変性ポリブタジエンゴムを24時間静置した後、約5gを取りシクロヘキサン120mlに溶解し、メタノール400mlで30分洗浄した。沈殿した試料を再びシクロヘキサン120mlに溶解し、老化防止剤(Irganox 1520L)0.05mlを加え、上記と同様にメタノールで洗浄することで、再度試料を析出させた。得られた試料を再び90℃、1時間乾燥させ、ICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表6に示す。
【0074】
(実施例9)
実施例8において、GOPTMS(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)(東京化成製:試薬)を5g用いたこと以外は実施例8と同様にして、実施例9に係る変性ポリブタジエンゴムを得た。得られた試料について、実施例8と同様にICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表6に示す。
【0075】
(実施例10)
実施例8において、GOPTMS(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)(東京化成製:試薬)2.5gの代わりにAPTES(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)(東京化成製:試薬)2.5gを用いたこと以外は実施例8と同様にして、実施例10に係る変性ポリブタジエンゴムを得た。得られた試料について、実施例8と同様にICP分析によりSiの含量を測定した。結果を表6に示す。
【0076】
【表5】

【0077】
得られた実施例5乃至10及び比較例4に係る試料30重量部と、スチレン−ブタジエンゴム(スチレン含量が23%、ML1+4、100℃が70)70重量部を、予め90℃に加温した180ccのバンバリータイプのプラストミルに投入して30秒混練した。続けてシリカ(ニプシルAQ)75重量部にシランカップリング剤(Evonik Degussa Japan社製:ニボニックデグザSi69)を6重量部、プロセスオイル(サンセンオイル4240)21.5重量部、亜鉛華3重量部、老化防止剤(住友化学製:アンチゲン6C)を1重量部、ステアリン酸(花王社製)1重量部を混合し、そのうち半分をプラストミルに投入し、1分間混練した。次に、残り半分を投入し約3分30秒混練した。混練を開始してから合計で5分間経過した後、混練物をプラストミルより取り出した。次に、6インチロールに取り出した混合物を巻きつけてロール混練しながら、加硫剤である粉末硫黄を1.4重量部と加硫促進剤ノクセラーCZ(CBS)1.7重量部およびノクセラーD(DPG)2重量部を添加した。ロールの温度は55〜65℃とし、約5分間の間に粉末硫黄と加硫促進剤を混合した。次に、下記に示す試験に必要な加硫成型体を得るため、加硫成型を行った。熱プレスにセットした金型を用い、金型内に混合物を入れて温度160℃、約20〜25分間加熱加圧することで加硫成型を行い、実施例5乃至10及び比較例4に係るゴム組成物を得た。
【0078】
得られた5乃至10及び比較例4に係るゴム組成物について、ゴム組成物の引張強度、破壊伸び、反発弾性、加硫物tanδを上記実施例1乃至4及び比較例1乃至3と同様の方法により測定した。結果を表6に示す。
【0079】
【表6】

【0080】
以上より、実施例に係る変性ポリブタジエンゴムは、エポキシ基と反応したSiの量が多いため、シリカの分散性が向上し、結果ゴム組成物のtanδ及び反発弾性が向上したことが分かる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化率が0.1%以上15%未満のエポキシ化ジエン系ゴムと、エポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシラン及びカルボン酸とを反応させた変性ジエン系ゴム。
【請求項2】
上記反応は、20〜140℃で反応させることを特徴とする請求項1記載の変性ジエン系ゴム。
【請求項3】
エポキシ化率が0.1%以上15%未満のエポキシ化ジエン系ゴムと、エポキシ基と反応する官能基を有するアルコキシシラン及びカルボン酸とを機械的混練により反応させることを特徴とする変性ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の変性ジエン系ゴムとシリカとを含有することを特徴とする変性ジエン系ゴム組成物。


【公開番号】特開2012−184408(P2012−184408A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27339(P2012−27339)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】