変速装置およびそれを備える鞍乗型車両
【課題】複数の油圧クラッチ部に選択的にオイルを供給できかつ小型に構成できる変速装置およびそれを備える鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】変速装置44は、クラッチ部C3,C4、クラッチ部C3,C4にオイルを導くためのオイル通路136,138、オイルパン190からオイルが導かれるオイル通路184、およびバルブ部材194を有する。バルブ部材194は、回動軸194a上に形成されるオイル通路206および回動軸194aに直交する仮想的な第1平面222上に形成されるオイル通路210,212を有する。オイル通路210がオイル通路136に連通することによって、オイル通路184のオイルがオイル通路206,210を介してオイル通路136に導かれ、オイル通路212がオイル通路138に連通することによって、オイル通路184のオイルがオイル通路206,212を介してオイル通路138に導かれる。
【解決手段】変速装置44は、クラッチ部C3,C4、クラッチ部C3,C4にオイルを導くためのオイル通路136,138、オイルパン190からオイルが導かれるオイル通路184、およびバルブ部材194を有する。バルブ部材194は、回動軸194a上に形成されるオイル通路206および回動軸194aに直交する仮想的な第1平面222上に形成されるオイル通路210,212を有する。オイル通路210がオイル通路136に連通することによって、オイル通路184のオイルがオイル通路206,210を介してオイル通路136に導かれ、オイル通路212がオイル通路138に連通することによって、オイル通路184のオイルがオイル通路206,212を介してオイル通路138に導かれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変速装置およびそれを備える鞍乗型車両に関し、より特定的には、複数の油圧クラッチ部を有する変速装置およびそれを備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の油圧クラッチ部を有する変速装置が提案されている。たとえば、特許文献1に記載されている有段式自動変速装置は、第1〜第3の油圧式変速クラッチを有する。この有段式自動変速装置では、第1〜第3の油圧式変速クラッチに選択的にオイルを供給することによって、第1〜第3の油圧式変速クラッチを選択的に接続状態にできる。これにより、有段式自動変速装置の変速比を変更できる。
【0003】
複数の油圧クラッチ部を有する上述のような変速装置では、一般に、複数の油圧クラッチ部にオイルを供給するための複数のオイル通路および複数のオイル通路を開閉するためのバルブが設けられる。
【0004】
たとえば、特許文献1に記載されている有段式自動変速装置には、図14に示すように、第1の油圧式変速クラッチ(図示せず)に接続されるオイル経路1、第2の油圧式変速クラッチ(図示せず)に接続されるオイル経路2、第3の油圧式変速クラッチ(図示せず)に接続されるオイル経路3、およびオイル溜まり(図示せず)に接続されるオイル経路4が設けられている。また、オイル経路1,2,3とオイル経路4との間に、略円柱状のバルブ5が設けられている。バルブ5は、内部経路5a,5b,5cを有する。
【0005】
特許文献1の有段式自動変速装置では、ECU(図示せず)による制御によってバルブ5が回転する。これにより、オイル経路4が内部経路5a,5b,5cによって選択的にオイル経路1,2,3に連通される。その結果、オイル経路4内のオイルがオイル経路1,2,3に選択的に供給され、第1〜第3の油圧式変速クラッチに選択的にオイルが供給される。
【0006】
また、たとえば、特許文献2に記載されているロータリ弁は、弁ケース内に回動可能に設けられるロータを有する。ロータの軸心には圧油供給路が形成され、ロータの外周面には圧油供給路に連通する複数の油溝が形成される。ロータリ弁の外部からロータの外周面の一の油溝(以下、オイル流入溝と称する)を介して圧油供給路に流入したオイルは、ロータの外周面の他の複数の油溝(以下、オイル流出溝と称する)を介して複数の油圧クラッチに選択的に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−68700号公報
【特許文献2】特開2001−90821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図14に示した特許文献1のバルブ5においては、内部経路5a,5b,5cがバルブ5の軸方向において並ぶように設けられるので、バルブ5の軸方向の長さを短くすることが難しい。このため、変速装置のバルブの構成として特許文献1の構成を採用した場合、変速装置を小型に構成することが難しくなる。
【0009】
また、特許文献2のロータリ弁では、ロータリ弁の内部にオイルを導くためのオイル流入溝およびロータリ弁の内部からオイルを送り出すためのオイル流出溝が、ロータの軸方向において並ぶようにロータの外周面に形成される。このため、ロータの軸方向の長さを短くすることが難しい。したがって、変速装置のバルブの構成として特許文献2の構成を採用した場合も、変速装置を小型に構成することが難しくなる。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、複数の油圧クラッチ部に選択的にオイルを供給できかつ小型に構成できる変速装置およびそれを備える鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のある見地によれば、少なくとも第1油圧クラッチ部および第2油圧クラッチ部を有する変速装置であって、第1油圧クラッチ部にオイルを導くための第1オイル通路、第2油圧クラッチ部にオイルを導くための第2オイル通路、オイル源からオイルが導かれる第3オイル通路、ならびに第1オイル通路と第2オイル通路と第3オイル通路との間に回動可能に設けられかつ第1回動位置および第2回動位置に設定可能なバルブ部材を備え、バルブ部材は、当該バルブ部材の内部を当該バルブ部材の回動軸に対して平行な方向に延びかつ第3オイル通路に連通するように上記平行な方向に向かって開口する第4オイル通路と、それぞれ第4オイル通路から上記回動軸に直交する方向に延びかつ上記直交する方向に向かって開口する第5オイル通路および第6オイル通路とを有し、第5オイル通路および第6オイル通路は、上記回動軸に直交する仮想的な第1平面上に形成され、バルブ部材が第1回動位置に位置する場合には、第1オイル通路と第5オイル通路とが連通し、バルブ部材が第2回動位置に位置する場合には、第2オイル通路と第6オイル通路とが連通する、変速装置が提供される。
【0012】
この変速装置では、バルブ部材が第1回動位置に設定されることによって、第1オイル通路と第5オイル通路とが連通する。したがって、オイル源から第3オイル通路に導かれたオイルは、第4オイル通路および第5オイル通路を介して第1オイル通路に導かれる。これにより、第1オイル通路から第1油圧クラッチ部にオイルを導くことができる。また、バルブ部材が第2回動位置に設定されることによって、第2オイル通路と第6オイル通路とが連通する。したがって、オイル源から第3オイル通路に導かれたオイルは、第4オイル通路および第6オイル通路を介して第2オイル通路に導かれる。これにより、第2オイル通路から第2油圧クラッチ部にオイルを導くことができる。このように、この変速装置では、バルブ部材を第1回動位置および第2回動位置に選択的に設定することによって、第1油圧クラッチ部および第2油圧クラッチ部に選択的にオイルを供給することができる。それにより、第1油圧クラッチ部および第2油圧クラッチ部を選択的に接続および切断することができる。
【0013】
ここで、この変速装置においては、第5オイル通路および第6オイル通路は、バルブ部材の回動軸に直交する仮想的な第1平面上に形成される。この場合、第5オイル通路および第6オイル通路が、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向において並ぶように形成される場合に比べて、バルブ部材の長さ(回動軸に対して平行な方向の長さ)を短くすることができる。また、この変速装置においては、第4オイル通路は、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向に延びかつその平行な方向に向かって開口し、第5オイル通路および第6オイル通路は、上記回動軸に直交する方向に延びかつその直交する方向に向かって開口する。この場合、第1油圧クラッチ部および第2油圧クラッチ部に供給されるオイルをバルブ部材の内部に導くための開口部(第4オイル通路の開口端)と、第1油圧クラッチ部および第2油圧クラッチ部に供給されるオイルをバルブ部材の内部から送り出すための2つの開口部(第5オイル通路の開口端および第6オイル通路の開口端)とが、同一方向に並んで配置されることがない。より具体的には、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向において上記3つの開口部が並んで配置されることがなく、バルブ部材の回動軸に直交する方向において上記3つの開口部が並んで配置されることもない。これにより、上記回動軸に対して平行な方向におけるバルブ部材の長さおよび上記回動軸に直交する方向におけるバルブ部材の大きさを小さくできる。すなわち、バルブ部材の軸方向の長さおよびバルブ部材の太さを小さくできる。その結果、変速装置を小型に構成できる。
【0014】
好ましくは、第4オイル通路は、バルブ部材の回動軸上に形成されかつ回動軸上において開口する。この場合、第4通路を容易に形成できかつ第3通路から第4通路にオイルを円滑に導くことができる。
【0015】
より好ましくは、変速装置は、第3油圧クラッチ部と第3油圧クラッチ部にオイルを導くための第7オイル通路とをさらに備え、バルブ部材は、第1オイル通路と第2オイル通路と第3オイル通路と第7オイル通路との間に回動可能に設けられかつ第3回動位置に設定可能であり、第4オイル通路から上記回動軸に直交する方向に延びかつ上記直交する方向に向かって開口する第8オイル通路をさらに有し、第8オイル通路は、上記回動軸に直交する仮想的な第2平面上に形成され、第2平面は、上記回動軸に対して平行な方向において第1平面から離れており、バルブ部材が第3回動位置に位置する場合には、第7オイル通路と第8オイル通路とが連通する。
【0016】
この変速装置では、バルブ部材が第3回動位置に設定されることによって、第7オイル通路と第8オイル通路とが連通する。したがって、オイル源から第3オイル通路に導かれたオイルは、第4オイル通路および第8オイル通路を介して第7オイル通路に導かれる。これにより、第7オイル通路から第3油圧クラッチ部にオイルを導くことができる。したがって、この変速装置では、バルブ部材を第1回動位置、第2回動位置および第3回動位置に選択的に設定することによって、第1油圧クラッチ部、第2油圧クラッチ部および第3油圧クラッチ部に選択的にオイルを供給することができる。それにより、第1油圧クラッチ部、第2油圧クラッチ部および第3油圧クラッチ部を選択的に接続および切断することができる。また、この変速装置では、第8オイル通路は、上記回動軸に対して平行な方向において第1平面から離れた第2平面上に形成される。この場合、第5オイル通路、第6オイル通路および第8オイル通路が密集し過ぎることを避けることができるので、バルブ部材の構造を簡単にできる。
【0017】
複数の油圧クラッチ部を有する変速装置では、一般に、複数の油圧クラッチ部にオイルを選択的に供給するためのバルブ部材が設けられる。この場合、バルブ部材を配置するためのスペースが必要になり、変速装置を小型に構成することが難しい。そのため、複数の油圧クラッチ部を有する変速装置を備えた鞍乗型車両を小型に構成することは難しい。一方、上述のように、この発明に係る変速装置は、複数の油圧クラッチ部に選択的にオイルを供給できかつ小型に構成できる。したがって、この発明に係る変速装置は、鞍乗型車両に好適に利用できる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、複数の油圧クラッチ部に選択的にオイルを供給できかつ小型に構成できる変速装置およびそれを備える鞍乗型車両が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態のスクータを示す側面図である。
【図2】エンジンユニットの内部構造を示す断面図解図である。
【図3】エンジンユニットの構成要素を模式的に示す図解図である。
【図4】エンジンユニットを示す側面図解図である。
【図5】第2クラッチユニットの周辺の構造を示す断面図解図である。
【図6】クラッチ部へのオイルの供給経路を説明するための図である。(a)は図5のA−A線断面を示す図であり、(b)は図5のB−B線断面を示す図である。
【図7】バルブ部材を示す図である。(a)はバルブ部材を示す正面図(図5においてバルブ部材を左側から見た図)であり、(b)はバルブ部材を示す側面図であり、(c)はバルブ部材を示す背面図(図5においてバルブ部材を右側から見た図)であり、(d)は(a)のD−D線断面を示す図である。
【図8】バルブ部材の第1部を示す展開図である。
【図9】ケーシングに形成された各オイル通路の開口端とバルブ部材との関係を示す図である。
【図10】バルブ部材の他の例を示す図である。(a)は(b)のa−a線断面図であり、(b)は(a)のb−b線断面図である。
【図11】バルブ部材のその他の例を示す図である。
【図12】クラッチ部の油室内のオイルの圧力変化を示す図である。
【図13】バルブ部材のさらに他の例を示す図である。
【図14】従来の有段式自動変速装置を示す断面図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。ここでは、この発明の実施の形態に係る変速装置44を、鞍乗型車両の一例であるスクータ10に搭載した場合について説明する。この発明の実施の形態における前後、左右、上下とは、スクータ10のシート40に運転者がそのハンドル16に向かって着座した状態を基準とした前後、左右、上下を意味する。
【0021】
図1は、スクータ10を示す側面図である。図1を参照して、スクータ10は、車体フレーム12および車体フレーム12を覆うように設けられる車体カバー14を含む。なお、車体カバー14によって隠れているために図1には詳細が示されていないが、車体フレーム12の前部は前方斜め上方に向かって延び、車体フレーム12の後部は後方斜め上方に向かって延びている。車体フレーム12は、その前端部に図示しないヘッドパイプを有し、ヘッドパイプには、図示しないステアリングシャフトが回転可能に挿通される。ステアリングシャフトの上端部には、ハンドル16が取り付けられ、ステアリングシャフトの下端部には、フロントフォーク18が取り付けられる。フロントフォーク18の下端部には、前輪20が車軸22を介して回転可能に支持される。
【0022】
車体カバー14の下端部には、運転者が足を載せるためのフットステップ24が左右方向に延びるように設けられる。車体フレーム12においてフットステップ24よりも後方には、サイドスタンド26が取付部28を介して取り付けられる。車体フレーム12の下端部において取付部28よりも後方には、後方に延びるエンジンユニット30がピボット軸32を介して揺動可能に支持される。具体的には、エンジンユニット30の後述するエンジンブラケット48が、ピボット軸32を介して車体フレーム12に取り付けられる。後述するように、変速装置44は、エンジンユニット30に含まれる。
【0023】
エンジンユニット30の後端部には、後輪34が出力軸36を介して回転可能に支持される。車体フレーム12の後部(図示せず)とエンジンユニット30とを連結するように、クッションユニット38が設けられる。車体フレーム12の後部(図示せず)においてクッションユニット38よりも上方には、運転者が着座するためのシート40が設けられる。
【0024】
以下、エンジンユニット30を詳細に説明する。
図2は、エンジンユニット30の内部構造を示す断面図解図であり、図3は、エンジンユニット30の構成要素を模式的に示した図である。図4は、エンジンユニット30を示す側面図解図である。
【0025】
図1〜図4を参照して、エンジンユニット30は、エンジン42(図2および図3参照)、ケーシング46(図2および図4参照)を含む変速装置44、およびエンジンブラケット48(図1および図4参照)を含む。
【0026】
図2を参照して、ケーシング46は、ケースシング本体46aおよびケーシング本体46aの左端部に取り付けられるカバー部材46bを含む。図2および図3を参照して、エンジン42は、ケーシング本体46a(図2参照)の前端部に接続されかつ前方に延びるシリンダボディ50(図2においては一部のみ図示)、シリンダボディ50の前端部に接続されるシリンダヘッド52(図3参照)、シリンダボディ50内に設けられるピストン54(図3参照)、およびピストン54に接続されるコンロッド56(図2においては一部のみ図示)を有する。図2を参照して、ケーシング46においてシリンダボディ50よりも後方には、クランク室58が形成される。
【0027】
図2および図3を参照して、変速装置44は、クランク軸60を含む。クランク軸60は、ケーシング46(図2参照)内の前端部に設けられる。クランク軸60は、クランク室58(図2参照)に配置される一対のウェブ部60a,60b、一対のウェブ部60a,60bを連結するクランクピン60c、ウェブ部60aから左方向に延びるクランクジャーナル60d、およびウェブ部60bから右方向に延びるクランクジャーナル60eを有する。クランクピン60cには、コンロッド56の後端部が接続される。
【0028】
クランク軸60は、クランクジャーナル60dの右端部に設けられるベアリング62、クランクジャーナル60eの左端部に設けられるベアリング64、およびクランクジャーナル60dの左端部に設けられるベアリング66を介してケーシング46(図2参照)に回転可能に支持される。
【0029】
図4を参照して、クランクジャーナル60d(クランク軸60(図2参照))は、エンジン42(図2参照)によって発生される駆動力に基づいて第1方向R1に回転する。変速装置44においては、クランクジャーナル60d(クランク軸60)が第1方向R1に回転することによって、後述する回転軸102,156および出力軸36が第1方向R1に回転し、後述する回転軸90,140,166が第2方向R2(第1方向R1の反対方向)に回転する。
【0030】
図2を参照して、クランクジャーナル60eの右端部は、発電機68に接続される。発電機68においては、クランクジャーナル60eの回転に基づいて発電が行われる。
【0031】
クランクジャーナル60dの内部にはオイル通路60fが形成される。オイル通路60fは、クランクジャーナル60dの左端面およびクランクジャーナル60dの外周面において開口する。
【0032】
図2および図3を参照して、クランクジャーナル60dと同軸状に第1クラッチユニット70が設けられる。第1クラッチユニット70は、円筒状のクラッチハウジング72、クラッチハウジング72の内側に設けられるインナー部材74、およびインナー部材74よりも左側に設けられるインナー部材76を含む。
【0033】
クラッチハウジング72の右端部にはギア78が取り付けられ、クラッチハウジング72の左端部には複数の環状のフリクションディスク80(図3参照)が取り付けられる。クラッチハウジング72、ギア78および複数のフリクションディスク80は一体的に回転する。
【0034】
ギア78は、ワンウェイクラッチ82を介してクランクジャーナル60dに取り付けられる。ワンウェイクラッチ82は、クランクジャーナル60dの第1方向R1(図4参照)の回転をクランクジャーナル60dからギア78(クラッチハウジング72)に伝達せず、かつギア78(クラッチハウジング72)の第1方向R1(図4参照)の回転をギア78からクランクジャーナル60dに伝達する。したがって、ワンウェイクラッチ82は、エンジン42によって発生される駆動力をギア78に伝達しない。なお、クランクジャーナル60dおよびギア78(クラッチハウジング72)がともに第1方向R1(図4参照)に回転しかつクランクジャーナル60dの回転速度がギア78(クラッチハウジング72)の回転速度よりも大きい場合には、ワンウェイクラッチ82は、ギア78(クラッチハウジング72)の第1方向R1(図4参照)の回転をクランクジャーナル60dに伝達しない。ワンウェイクラッチ82としては公知の種々のワンウェイクラッチを用いることができるので、ワンウェイクラッチ82の構成の詳細な説明は省略する。
【0035】
図2および図3を参照して、インナー部材74は、複数のクラッチシュー74aを有する。インナー部材74は、クランクジャーナル60dと一体的に回転するようにクランクジャーナル60dに取り付けられる。この実施形態では、クラッチハウジング72およびインナー部材74が遠心式のクラッチ部C1として機能する。クラッチ部C1では、クランクジャーナル60dの回転速度が所定速度に達したときに、インナー部材74の複数のクラッチシュー74aがクラッチハウジング72に接触する。これにより、クランクジャーナル60dの回転がインナー部材74を介してクラッチハウジング72に伝達される。その結果、クラッチハウジング72およびギア78が第1方向R1(図4参照)に回転する。インナー部材74の構成としては公知の種々の遠心式クラッチの構成を用いることができるので、インナー部材74の構成の詳細な説明は省略する。
【0036】
以下においては、インナー部材74がクラッチハウジング72に接触している状態をクラッチ部C1が接続されているといい、インナー部材74がクラッチハウジング72に接触していない状態をクラッチ部C1が切断されているという。なお、変速装置44では、クラッチ部C1は1速用のクラッチとして機能する。
【0037】
インナー部材76は、クランクジャーナル60dに対して回転自在になるように、たとえばカラー等を介してクランクジャーナル60dに取り付けられる。図2を参照して、インナー部材76は、押圧部77を有する。押圧部77は、ガイド部材77aおよびプレッシャープレート77bを有する。プレッシャープレート77bは、ガイド部材77aに対して摺動可能に設けられる。ガイド部材77aおよびプレッシャープレート77bによって油室77cが形成される。油室77cは、オイル通路60fに連通している。プレッシャープレート77bは、プレッシャープレート77bの板厚方向(この実施形態では左右方向)に貫通しかつ油室77cに連通するリーク孔77dを有する。プレッシャープレート77bは、図示しない付勢部材によってガイド部材77a側(この実施形態では右側)に向かって付勢されている。
【0038】
図3を参照して、インナー部材76の外周部には、複数の環状のクラッチディスク84が取り付けられ、インナー部材76の左端部には、ギア86が取り付けられる。インナー部材76、複数のクラッチディスク84およびギア86は一体的に回転する。複数のフリクションディスク80と複数のクラッチディスク84とは、交互に配置される。
【0039】
この実施形態では、クラッチハウジング72、インナー部材76、複数のフリクションディスク80(図3参照)、および複数のクラッチディスク84(図3参照)が油圧式のクラッチ部C2として機能する。クラッチ部C2では、後述するオイルパン190(図5参照)から、ケーシング46(図2参照)に形成されたオイル通路88(図2参照)およびクランクジャーナル60dのオイル通路60f(図2参照)を介してインナー部材76の油室77c(図2参照)にオイルが供給される。これにより、プレッシャープレート77b(図2参照)が左方向に移動し、複数のフリクションディスク80(図3参照)がプレッシャープレート77b(図2参照)によって複数のクラッチディスク84(図3参照)に押し付けられる。その結果、クラッチハウジング72の回転がフリクションディスク80(図3参照)およびクラッチディスク84(図3参照)を介してインナー部材76に伝達され、インナー部材76およびギア86が第1方向R1(図4参照)に回転する。
【0040】
図2を参照して、この実施形態では、上述したように、プレッシャープレート77bは、図示しない付勢部材によって右方向に付勢されている。また、インナー部材76の油室77cはリーク孔77dに連通しているので、油室77c内のオイルの一部はリーク孔77dから排出される。したがって、油室77cへのオイル供給が停止されると、油室77c内のオイル量が減少し、プレッシャープレート77bが右側に移動する。その結果、複数のフリクションディスク80(図3参照)と複数のクラッチディスク84(図3参照)との接触状態が解除され、クラッチハウジング72からインナー部材76への回転の伝達が遮断される。インナー部材76の構成としては公知の種々の油圧式クラッチの構成を用いることができるので、インナー部材76の構成の詳細な説明は省略する。クラッチ部C2へのオイルの供給経路については後述する。この実施形態では、クラッチ部C2が第3油圧クラッチ部に相当する。
【0041】
以下においては、複数のフリクションディスク80と複数のクラッチディスク84とが接触しかつ略同一の回転速度で一体的に回転している状態をクラッチ部C2が接続されているといい、複数のフリクションディスク80と複数のクラッチディスク84とが互いに対して摺動しつつ回転している状態をクラッチ部C2が半クラッチ状態であるといい、複数のフリクションディスク80と複数のクラッチディスク84とが接触していない状態をクラッチ部C2が切断されているという。なお、変速装置44では、クラッチ部C2は2速用のクラッチとして機能する。
【0042】
図2および図4を参照して、ケーシング46内においてクランクジャーナル60dの後方斜め下方には、回転軸90がクランクジャーナル60dに対して平行に設けられる。図2を参照して、回転軸90の右端部は、ベアリング92を介してケーシング46に回転可能に支持され、回転軸90の左端部は、ベアリング94を介してケーシング46に回転可能に支持される。
【0043】
図2および図3を参照して、ベアリング92よりも左側において回転軸90と同軸状にギア96が設けられる。ギア96は、ワンウェイクラッチ98を介して回転軸90に取り付けられる。ギア96は、ギア78と噛み合っている。ワンウェイクラッチ98は、回転軸90の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸90からギア96に伝達せず、かつギア96の第2方向R2(図4参照)の回転をギア96から回転軸90に伝達する。なお、回転軸90およびギア96がともに第2方向R2(図4参照)に回転しかつ回転軸90の回転速度がギア96の回転速度よりも大きい場合には、ワンウェイクラッチ98は、ギア96の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸90に伝達しない。
【0044】
ベアリング94よりも右側において回転軸90と同軸状にギア100が設けられる。ギア100は、回転軸90と一体的に回転するように回転軸90に取り付けられる。また、ギア100は、ギア86と噛み合っている。これにより、ギア100は、回転軸90が回転することによって、あるいはギア86から回転が伝達されることによって回転する。
【0045】
変速装置44においては、クラッチ部C1のみが接続されている場合(変速装置44のギアポジションが1速の場合)には、クランクジャーナル60dの回転がクラッチ部C1およびギア78を介してギア96に伝達される。それにより、ギア96が第2方向R2(図4参照)に回転する。上述のように、ワンウェイクラッチ98は、ギア96の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸90に伝達するので、ギア96が第2方向R2(図4参照)に回転することによって回転軸90が第2方向R2(図4参照)に回転する。それにより、ギア100が第2方向R2(図4参照)に回転する。
【0046】
一方、クラッチ部C1およびクラッチ部C2がともに接続されている場合(変速装置44のギアポジションが2速以上の場合)には、クランクジャーナル60dの回転は、ギア78に伝達されるとともに、クラッチ部C2を介してギア86に伝達される。それにより、ギア86は、ギア78と同じ回転速度で第1方向R1(図4参照)に回転する。ギア100はギア86と噛み合っているので、ギア86が第1方向R1(図4参照)に回転することによってギア100および回転軸90が第2方向R2(図4参照)に回転する。ここで、変速装置44においては、ギア86およびギア100のギア比(減速比)は、ギア78およびギア96のギア比に比べて小さく設定される。そのため、ギア86から伝達される回転によってギア100が回転する場合、ギア100および回転軸90の回転速度はギア96の回転速度よりも大きくなる。上述したように、回転軸90の回転速度がギア96の回転速度よりも大きい場合には、ワンウェイクラッチ98は、ギア96の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸90に伝達しない。したがって、クラッチ部C1およびクラッチ部C2がともに接続されている場合(変速装置44のギアポジションが2速以上の場合)には、ギア96は空転する。
【0047】
図2および図4を参照して、回転軸90の後方斜め上方には、回転軸102が回転軸90に対して平行に設けられる。図2を参照して、回転軸102の右端部は、ベアリング104を介してケーシング46に回転可能に支持され、回転軸102の左端部は、ベアリング106を介してケーシング46に回転可能に支持される。
【0048】
図5は、回転軸102の周辺の構造を示す断面図解図である。
図5を参照して、回転軸102の内部には、オイル通路102a,102bが形成される。オイル通路102aは、回転軸102の左端面および回転軸102の外周面において開口し、オイル通路102bは、回転軸102の右端面および回転軸102の外周面において開口する。
【0049】
ベアリング104よりも左側において、回転軸102と同軸状にギア108が設けられる。ギア108は、回転軸102に対して回転自在になるように、たとえばブッシュまたはカラー等を介して回転軸102に取り付けられる。
【0050】
ギア108よりも左側において、回転軸102と同軸状に第2クラッチユニット110が設けられる。第2クラッチユニット110は、円筒状のクラッチハウジング112、クラッチハウジング112の内側に設けられるインナー部材114、クラッチハウジング112よりも左側に設けられる円筒状のクラッチハウジング116、クラッチハウジング116の内側に設けられるインナー部材118、およびインナー部材114とインナー部材118との間に設けられる押圧部120を含む。
【0051】
ギア108は、クラッチハウジング112の右端部に取り付けられる。クラッチハウジング112の左端部には、複数の環状のフリクションディスク122が取り付けられる。ギア108、クラッチハウジング112および複数のフリクションディスク122は一体的に回転する。
【0052】
インナー部材114は、回転軸102と一体的に回転するように回転軸102に取り付けられる。インナー部材114の外周部には、複数の環状のクラッチディスク124が取り付けられる。複数の環状のフリクションディスク122と複数のクラッチディスク124とは、交互に配置される。
【0053】
クラッチハウジング116の右端部には、複数の環状のフリクションディスク126が取り付けられ、クラッチハウジング116の左端部には、ギア128が取り付けられる。ギア128は、回転軸102に対して回転自在になるように、たとえばブッシュまたはカラー等を介して回転軸102に取り付けられる。クラッチハウジング116、複数のクラッチディスク126およびギア128は一体的に回転する。
【0054】
インナー部材118は、回転軸102と一体的に回転するように回転軸102に取り付けられる。インナー部材118の外周部には、複数の環状のクラッチディスク130が取り付けられる。複数のフリクションディスク126と複数のクラッチディスク130とは、交互に配置される。
【0055】
押圧部120は、ガイド部材120a、プレッシャープレート120bおよびプレッシャープレート120cを含む。ガイド部材120aは、回転軸102と同軸状に回転軸102の外周面に設けられる。プレッシャープレート120bは、インナー部材114とガイド部材120aとの間においてガイド部材120aに対して摺動できるように設けられる。プレッシャープレート120cは、インナー部材118とガイド部材120aとの間においてガイド部材120aに対して摺動できるように設けられる。
【0056】
ガイド部材120aとプレッシャープレート120bとによって油室120dが形成され、ガイド部材120aとプレッシャープレート120cとによって油室120eが形成される。油室120dはオイル通路102bに連通し、油室120eはオイル通路102aに連通している。プレッシャープレート120bは、プレッシャープレート120bの板厚方向(この実施形態では左右方向)に貫通しかつ油室120dに連通するリーク孔120fを有する。プレッシャープレート120cは、プレッシャープレート120cの板厚方向(この実施形態では左右方向)に貫通しかつ油室120eに連通するリーク孔120gを有する。
【0057】
インナー部材114とプレッシャープレート120bとの間には、複数の付勢部材121a(図5においては、1つの付勢部材121aのみ図示)が設けられる。付勢部材121aは、たとえばコイルばねからなる。プレッシャープレート120bは、複数の付勢部材121aによってガイド部材120a側(この実施形態では左側)に向かって付勢される。
【0058】
インナー部材118とプレッシャープレート120cとの間には、複数の付勢部材121b(図5においては、1つの付勢部材121bのみ図示)が設けられる。付勢部材121bは、たとえばコイルばねからなる。プレッシャープレート120cは、複数の付勢部材121bによってガイド部材120a側(この実施形態では右側)に向かって付勢される。
【0059】
ギア128の左側において回転軸102と同軸状に、ギア132が設けられる。ギア132は、回転軸102と一体的に回転するように回転軸102に取り付けられる。ギア132の右端部には、ギア132と一体的に回転するようにギア134が取り付けられる。ギア134は、ギア100(図2および図3参照)と噛み合っている。したがって、ギア134は、ギア100から伝達される回転に基づいて第1方向R1(図4参照)に回転する。これにより、ギア132および回転軸102が第1方向R1(図4参照)に回転する。
【0060】
この実施形態では、クラッチハウジング116、インナー部材118、押圧部120、複数のフリクションディスク126および複数のクラッチディスク130が油圧式のクラッチ部C3として機能し、クラッチハウジング112、インナー部材114、押圧部120、複数のフリクションディスク122および複数のクラッチディスク124が油圧式のクラッチ部C4として機能する。
【0061】
クラッチ部C3では、後述するオイルパン190から、ケーシング46に形成されたオイル通路136および回転軸102のオイル通路102aを介して押圧部120の油室120eにオイルが供給される。これにより、プレッシャープレート120cが左方向に移動し、複数のフリクションディスク126がプレッシャープレート120cによって複数のクラッチディスク130に押し付けられる。その結果、回転軸102の第1方向R1(図4参照)の回転が、インナー部材118、複数のクラッチディスク130および複数のフリクションディスク126を介してクラッチハウジング116に伝達され、クラッチハウジング116およびギア128が第1方向R1(図4参照)に回転する。
【0062】
この実施形態では、上述したように、プレッシャープレート120cは複数の付勢部材121bによって右方向に付勢されている。また、油室120eはリーク孔120gに連通しているので、油室120e内のオイルの一部はリーク孔120gから排出される。したがって、オイル通路102aから油室120eへのオイル供給が停止されると、油室120e内のオイル量が減少し、プレッシャープレート120cが右側に移動する。その結果、複数のフリクションディスク126と複数のクラッチディスク130との接触状態が解除され、インナー部材118からクラッチハウジング116への回転の伝達が遮断される。クラッチ部C3へのオイルの供給経路については後述する。この実施形態では、クラッチ部C3が第1油圧クラッチ部に相当する。
【0063】
クラッチ部C4では、後述するオイルパン190から、ケーシング46に形成されたオイル通路138および回転軸102のオイル通路102bを介して押圧部120の油室120dにオイルが供給される。これにより、プレッシャープレート120bが右方向に移動し、複数のフリクションディスク122がプレッシャープレート120bによって複数のクラッチディスク124に押し付けられる。その結果、回転軸102の第1方向R1(図4参照)の回転が、インナー部材114、複数のクラッチディスク124および複数のフリクションディスク122を介してクラッチハウジング112に伝達され、クラッチハウジング112およびギア108が第1方向R1(図4参照)に回転する。
【0064】
この実施形態では、上述したように、プレッシャープレート120bは複数の付勢部材121aによって左方向に付勢されている。また、油室120dはリーク孔120fに連通しているので、油室120d内のオイルの一部はリーク孔120fから排出される。したがって、オイル通路102bから油室120dへのオイル供給が停止されると、油室120d内のオイル量が減少し、プレッシャープレート120bが左側に移動する。その結果、複数のフリクションディスク122と複数のクラッチディスク124との接触状態が解除され、インナー部材114からクラッチハウジング112への回転の伝達が遮断される。この実施形態では、クラッチ部C4が第2油圧クラッチ部に相当する。
【0065】
なお、インナー部材114、インナー部材118および押圧部120の構成としては公知の種々の油圧式クラッチの構成を用いることができるので、インナー部材114、インナー部材118および押圧部120の構成の詳細な説明は省略する。
【0066】
以下においては、複数のフリクションディスク126と複数のクラッチディスク130とが接触しかつ略同一の回転速度で一体的に回転している状態をクラッチ部C3が接続されているといい、複数のフリクションディスク126と複数のクラッチディスク130とが互いに対して摺動しつつ回転している状態をクラッチ部C3が半クラッチ状態であるといい、複数のフリクションディスク126と複数のクラッチディスク130とが接触していない状態をクラッチ部C3が切断されているという。同様に、複数のフリクションディスク122と複数のクラッチディスク124とが接触しかつ略同一の回転速度で一体的に回転している状態をクラッチ部C4が接続されているといい、複数のフリクションディスク122と複数のクラッチディスク124とが互いに対して摺動しつつ回転している状態をクラッチ部C4が半クラッチ状態であるといい、複数のフリクションディスク122と複数のクラッチディスク124とが接触していない状態をクラッチ部C4が切断されているという。なお、変速装置44では、クラッチ部C3は3速用のクラッチとして機能し、クラッチ部C4は4速用のクラッチとして機能する。
【0067】
図2および図4を参照して、ケーシング46内において回転軸102の後方斜め下方には、回転軸140が回転軸102に対して平行に設けられる。図2を参照して、回転軸140の右端部は、ベアリング142を介してケーシング46に回転可能に支持され、回転軸140の左端部は、ベアリング144を介してケーシング46に回転可能に支持される。
【0068】
図2および図3を参照して、回転軸140の左右方向における略中心部の外周面には、ギア歯146が設けられる。ギア歯146よりも左側において回転軸140と同軸状に、ギア148が設けられる。ギア148は、回転軸140と一体的に回転するように回転軸140に取り付けられる。ギア140は、ギア128と噛み合っている。したがって、クラッチ部C3が接続されている場合には、回転軸102の第1方向R1(図4参照)の回転は、クラッチ部C3およびギア128を介してギア148に伝達される。これにより、ギア148および回転軸140が第2方向R2(図4参照)に回転する。
【0069】
ギア歯146よりも右側において回転軸140と同軸状に、ギア150が設けられる。ギア150は、回転軸140と一体的に回転するように回転軸140に取り付けられる。ギア150は、ギア108と噛み合っている。したがって、クラッチ部C4が接続されている場合には、回転軸102の第1方向R1(図4参照)の回転は、クラッチ部C4およびギア108を介してギア150に伝達される。これにより、ギア150および回転軸140が第2方向R2(図4参照)に回転する。なお、変速装置44では、クラッチ部C3が接続されている場合には、クラッチ部C4は接続されない。また、クラッチ部C4が接続されている場合には、クラッチ部C3は接続されない。
【0070】
ギア148とベアリング144との間において回転軸140と同軸状に、ギア152が設けられる。ギア152は、ギア132と噛み合っている。ギア152は、ワンウェイクラッチ154を介して回転軸140に取り付けられる。ワンウェイクラッチ154は、回転軸140の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸140からギア152に伝達せず、かつギア152の第2方向R2(図4参照)の回転をギア152から回転軸140に伝達する。なお、回転軸140およびギア152がともに第2方向R2(図4参照)に回転しかつ回転軸140の回転速度がギア152の回転速度よりも大きい場合には、ワンウェイクラッチ154は、ギア152の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸140に伝達しない。
【0071】
変速装置44においては、クラッチ部C3およびクラッチ部C4がともに切断されている場合(ギアポジションが1速または2速の場合)には、ギア100の第2方向R2(図4参照)の回転が、ギア134およびギア132を介してギア152に伝達される。それにより、ギア152が第2方向R2(図4参照)に回転する。上述のように、ワンウェイクラッチ154はギア152の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸140に伝達するので、ギア152が第2方向R2(図4参照)に回転することによって回転軸140が第2方向R2(図4参照)に回転する。
【0072】
クラッチ部C3が接続されかつクラッチ部C4が切断されている場合(ギアポジションが3速の場合)には、ギア100の回転は、ギア134およびギア132を介してギア152に伝達されるとともに、ギア134、ギア132、回転軸102、クラッチ部C3およびギア128を介してギア148に伝達される。それにより、ギア148および回転軸140が第2方向R2(図4参照)に回転する。ここで、変速装置44においては、ギア128およびギア148のギア比(減速比)は、ギア132およびギア152のギア比に比べて小さく設定される。そのため、ギア148および回転軸140の回転速度は、ギア152の回転速度よりも大きくなる。上述したように、回転軸140の回転速度がギア152の回転速度よりも大きい場合には、ワンウェイクラッチ154は、ギア152の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸140に伝達しない。したがって、変速装置44のギアポジションが3速の場合には、ギア152は空転する。
【0073】
クラッチ部C4が接続されかつクラッチ部C3が切断されている場合(ギアポジションが4速の場合)には、ギア100の回転は、ギア134およびギア132を介してギア152に伝達されるとともに、ギア134、ギア132、回転軸102、クラッチ部C4およびギア108を介してギア150に伝達される。それにより、ギア150および回転軸140が第2方向R2(図4参照)に回転する。ここで、変速装置44においては、ギア108およびギア150のギア比(減速比)は、ギア132およびギア152のギア比に比べて小さく設定される。そのため、ギア150および回転軸140の回転速度は、ギア152の回転速度よりも大きくなる。上述したように、回転軸140の回転速度がギア152の回転速度よりも大きい場合には、ワンウェイクラッチ154は、ギア152の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸140に伝達しない。したがって、変速装置44のギアポジションが3速の場合には、ギア152は空転する。なお、ギア108およびギア150のギア比(減速比)は、ギア128およびギア148のギア比に比べて小さく設定される。したがって、クラッチ部C4が接続されている場合の回転軸140の回転速度は、クラッチ部C3が接続されている場合の回転軸140の回転速度に比べて大きくなる。
【0074】
図2および図4を参照して、ケーシング46内において回転軸140よりも後方には、回転軸156が回転軸140に対して平行に設けられる。図2を参照して、回転軸156の右端部は、ベアリング158を介してケーシング46に回転可能に支持され、回転軸156の左端部は、ベアリング160を介してケーシング46に回転可能に支持される。
【0075】
図2および図3を参照して、ベアリング158とベアリング160との間において回転軸156と同軸状に、ギア162およびギア164が設けられる。ギア162およびギア164は、回転軸156と一体的に回転するように回転軸156に取り付けられる。ギア162は、回転軸140のギア歯146と噛み合っている。したがって、回転軸140の回転は、ギア歯146を介してギア162に伝達される。それにより、ギア162、回転軸156およびギア164が第1方向R1(図4参照)に回転する。
【0076】
図2および図4を参照して、ケーシング46内において回転軸156よりも後方には、回転軸166が回転軸156に対して平行に設けられる。図2を参照して、回転軸166の右端部は、ベアリング168を介してケーシング46に回転可能に支持され、166の左端部は、ベアリング170を介してケーシング46に回転可能に支持される。
【0077】
図2および図3を参照して、ベアリング168とベアリング170との間において回転軸166と同軸状に、ギア172が設けられる。ギア172は、回転軸166と一体的に回転するように回転軸166に取り付けられる。ギア172は、ギア164と噛み合っている。したがって、回転軸156の回転は、ギア164を介してギア172に伝達される。それにより、ギア172および回転軸166が第2方向R2(図4参照)に回転する。
【0078】
図2および図4を参照して、出力軸36は、回転軸166よりも後方において回転軸166に対して平行に設けられる。図2を参照して、出力軸36は、ベアリング174およびベアリング176を介してケーシング46に回転可能に支持される。出力軸36は、ケーシング46から右側に突出するように設けられる。ケーシング46内において出力軸36と同軸状に、ギア178が設けられる。ギア178は、出力軸36と一体的に回転するように出力軸36に取り付けられる。出力軸36の右端部(図示せず)には、出力軸36と一体的に回転するように後輪34(図1参照)が取り付けられる。ギア178は、ギア172と噛み合っている。したがって、ギア172の回転は、ギア178を介して出力軸36に伝達される。それにより、出力軸36および後輪34(図1参照)が第1方向R1(図4参照)に回転する。その結果、スクータ10(図1参照)が前進する。
【0079】
次に、変速装置44におけるクランクジャーナル60dから出力軸36への回転の伝達経路について図3を参照しつつ簡単に説明する。
まず、クランクジャーナル60d(クランク軸60)の回転速度が所定の速度に到達することによってクラッチ部C1が接続され、変速装置44のギアポジションが1速に設定される。このとき、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4は切断されている。したがって、クランクジャーナル60dの回転は、クラッチ部C1、ギア78、ギア96、ワンウェイクラッチ98、回転軸90、ギア100、ギア134、ギア132、ギア152、ワンウェイクラッチ154、回転軸140、ギア歯146、ギア162、回転軸156、ギア164、ギア172およびギア178を介して出力軸36に伝達される。
【0080】
次に、クラッチ部C2が接続されることによって変速装置44のギアポジションが2速に設定される。このとき、クラッチ部C1は接続されているが、クラッチ部C3およびクラッチ部C4は切断されている。したがって、クランクジャーナル60dの回転は、クラッチ部C1、クラッチ部C2、ギア86、ギア100、ギア134、ギア132、ギア152、ワンウェイクラッチ154、回転軸140、ギア歯146、ギア162、回転軸156、ギア164、ギア172およびギア178を介して出力軸36に伝達される。
【0081】
次に、クラッチ部C3が接続されることによって変速装置44のギアポジションが3速に設定される。このとき、クラッチ部C1およびクラッチ部C2は接続されているが、クラッチ部C4は切断されている。したがって、クランクジャーナル60dの回転は、クラッチ部C1、クラッチ部C2、ギア86、ギア100、ギア134、ギア132、回転軸102、クラッチ部C3、ギア128、ギア148、回転軸140、ギア歯146、ギア162、回転軸156、ギア164、ギア172およびギア178を介して出力軸36に伝達される。
【0082】
次に、クラッチ部C4が接続されることによって変速装置44のギアポジションが4速に設定される。このとき、クラッチ部C1およびクラッチ部C2は接続されているが、クラッチ部C3は切断されている。したがって、クランクジャーナル60dの回転は、クラッチ部C1、クラッチ部C2、ギア86、ギア100、ギア134、ギア132、回転軸102、クラッチ部C4、ギア108、ギア150、回転軸140、ギア歯146、ギア162、回転軸156、ギア164、ギア172およびギア178を介して出力軸36に伝達される。
【0083】
次に、クラッチ部C2の油室77c、クラッチ部C3の油室120eおよびクラッチ部C4の油室120dへのオイルの供給経路について詳細に説明する。なお、以下の説明では、油室77cにオイルが供給されることをクラッチ部C2にオイルが供給されるといい、油室120eにオイルが供給されることをクラッチ部C3にオイルが供給されるといい、油室120dにオイルが供給されることをクラッチ部C4にオイルが供給されるという。
【0084】
図6は、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4へのオイルの供給経路を説明するための図であり、(a)は図5のA−A線断面を示す図であり、(b)は図5のB−B線断面を示す図である。
【0085】
図5を参照して、第2クラッチユニット110の下方においてケーシング46のケースシング本体46aには、断面円形の空洞部180が設けられる。図5および図6を参照して、第2クラッチユニット110(図5参照)の下方においてケーシング46のカバー部材46bには、空洞部180(図5参照)に連通しかつ空洞部180よりも大きい直径を有する断面円形の空洞部182が設けられる。
【0086】
空洞部180に連通するように、ケーシング46のケースシング本体46aにオイル通路184が設けられる。オイル通路184は、オイルポンプ186およびストレーナ188を介してオイルパン190に連通する。オイルパン190はケーシング46内に設けられ、変速装置44に供給されるオイルを貯留する。オイルパン190内のオイルは、オイルポンプ186が作動することによってストレーナ188を介してオイル通路184に導かれる。この実施形態では、オイルパン190がオイル源に相当し、オイル通路184が第3オイル通路に相当する。なお、オイルポンプ186、ストレーナ188およびオイルパン190としては、公知の種々のオイルポンプ、ストレーナおよびオイルパンを用いることができる。したがって、オイルポンプ186、ストレーナ188およびオイルパン190の詳細な説明は省略する。
【0087】
図5および図6(a)を参照して、オイル通路136およびオイル通路138は空洞部182に連通する。図6(a)を参照して、この実施形態では、オイル通路136の空洞部182側の開口端136aとオイル通路138の空洞部182側の開口端138aとが空洞部182を間に挟んで互いに対向するように、オイル通路136およびオイル通路138が形成される。この実施形態では、オイル通路136が第1オイル通路に相当し、オイル通路138が第2オイル通路に相当する。
【0088】
図5および図6(b)を参照して、オイル通路88は、オイル通路136,138が空洞部182に連通する位置よりも左側において空洞部182に連通する。空洞部182に連通するように、ケーシング46のカバー部材46bにオイル通路192が設けられる。オイル通路192は、オイル通路136,138が空洞部182に連通する位置よりも左側において空洞部182に連通する。図6(b)を参照して、この実施形態では、オイル通路88の空洞部182側の開口端88aとオイル通路192の空洞部182側の開口端192aとが空洞部182を間に挟んで互いに対向するように、オイル通路88およびオイル通路192が形成される。
【0089】
図5を参照して、オイル通路192内のオイルの圧力を調整できるように、空洞部182の下方においてカバー部材46bにリリーフバルブ193が設けられる。リリーフバルブ193としては、公知の種々のリリーフバルブを用いることができるので、リリーフバルブ193の詳細な説明は省略する。
【0090】
空洞部180および空洞部182内にバルブ部材194が回動可能に設けられる。言い換えると、バルブ部材194は、オイル通路88とオイル通路136とオイル通路138とオイル通路184とオイル通路192との間に回動可能に設けられる。
【0091】
図7は、バルブ部材194を示す図であり、(a)はバルブ部材194を示す正面図(図5においてバルブ部材194を左側から見た図)であり、(b)はバルブ部材194を示す側面図であり、(c)はバルブ部材194を示す背面図(図5においてバルブ部材194を右側から見た図)であり、(d)は(a)のD−D線断面を示す図である。
【0092】
図7を参照して、バルブ部材194は、略円柱形状を有し、本体部196および連結部198を含む。本体部196は、円筒状の第1部200、第1部200よりも小さい直径を有する円筒状の第2部202、および第1部200よりも小さい直径を有する円柱状の第3部204を含む。
【0093】
図7(a)〜(c)を参照して、第1部200は、バルブ部材194の回動軸194aに対して平行な方向に延びる外周面200a、外周面200aの一端部(この実施形態では右端部)から第1部200の軸心(回動軸194a)に向かって延びる端面200b、および外周面200aの他端部(この実施形態では左端部)から第1部200の軸心に向かって延びる端面200cを有する。
【0094】
第2部202は、第1部200の端面200bから回動軸194aに対して平行な方向(この実施形態では右方向)に延びる外周面202aおよび外周面202aの一端部(この実施形態では右端部)から第2部202の軸心(回動軸194a)に向かって延びる端面202bを有する。
【0095】
第3部204は、第1部200の端面200cから回動軸194aに対して平行な方向(この実施形態では左方向)に延びる外周面204aおよび外周面204aの一端部(この実施形態では左端部)から第3部204の軸心(回動軸194a)に向かって延びる端面204bを有する。この実施形態では、端面200b、端面200c、端面202bおよび端面204bは、バルブ部材194の回動軸194aに対して垂直に設けられる。
【0096】
図6および図7を参照して、バルブ部材194は、バルブ部材194の内部を回動軸194aに対して平行な方向に延びるオイル通路206,208、およびオイル通路206から回動軸194aに直交する方向に延びるオイル通路210,212,214,216,218,220(図6参照)を有する。オイル通路206は、回動軸194aに対して平行な方向(この実施形態では右方向)に向かって開口し、オイル通路210,212,214,216,218,220は、回動軸194aに直交する方向(バルブ部材194の径方向)に向かって開口する。より具体的には、オイル通路206は、第2部202(図7(c)参照)の端面202b(図7(c)参照)において開口し、オイル通路210,212,214,216,218,220は、第1部200(図6参照)の外周面200a(図6参照)において開口する。オイル通路208は、第1部200を貫通するように形成される。
【0097】
図7(b)〜(d)を参照して、この実施形態では、オイル通路206は、回動軸194a上を通りかつ第1部200と第3部204との境界部から第2部202の端面202bに向かって延びるように形成される。また、この実施形態では、オイル通路206は、回動軸194a上において開口する。
【0098】
この実施形態では、オイル通路206が第4オイル通路に相当し、オイル通路210が第5オイル通路に相当し、オイル通路212が第6オイル通路に相当し、オイル通路88が第7オイル通路に相当し、オイル通路214が第8オイル通路に相当する。
【0099】
図8は、バルブ部材194の第1部200を示す展開図である。
【0100】
図6(a)、図7(b)および図8を参照して、オイル通路210およびオイル通路212(図6(a)および図8参照)は、回動軸194a(図7(b)参照)に直交する仮想的な第1平面222(図7(b)および図8参照)上に形成される。この実施形態では、回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路210の中心および回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路212の中心が第1平面222上に位置するように、オイル通路210,212が形成される。
【0101】
図6(b)および図7(b)を参照して、オイル通路214、オイル通路216、オイル通路218(図6(b)および図8参照)およびオイル通路220(図6(b)および図8参照)は、回動軸194a(図7(b)参照)に直交する仮想的な第2平面224(図7(b)および図8参照)上に形成される。図7(b)を参照して、第2平面224は、回動軸194aに対して平行な方向において第1平面222から離れている。この実施形態では、回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路214の中心、回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路216の中心、回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路218の中心、および回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路220の中心が第2平面224上に位置するように、オイル通路214,216,218,220が形成される。なお、第1平面222は図5のA−A線上に位置し、第2平面224は図5のB−B線上に位置する。
【0102】
図6(a)および図8を参照して、オイル通路210の開口端210aは、第1部200の周方向に延びるように長尺状に形成される。同様に、オイル通路212の開口端212aは、第1部200の周方向に延びるように長尺状に形成される。図6(b)および図8を参照して、オイル通路214の開口端214aは、第1部200の周方向に延びるように長尺状に形成される。オイル通路216の開口端216a、オイル通路218の開口端218aおよびオイル通路220の開口端220aは、それぞれ円形状に形成される。
【0103】
図8を参照して、第1部200の周方向において、開口端210aの長さと開口端212aの長さは等しい。第1部200の周方向において、開口端210aの長さおよび開口端212aの長さは、開口端214aの長さよりも短い。第1部200の周方向において、開口端210aの長さおよび開口端212aの長さは、開口端216aの長さ、開口端218aの長さおよび開口端220aの長さよりも長い。
【0104】
図5を参照して、空洞部180および空洞部182にバルブ部材194が挿入される。より具体的には、第2部202が空洞部180に挿入され、第1部200および第3部204が空洞部182に挿入される。オイル通路206の開口端206aは、オイル通路184内に位置する。これにより、オイル通路184とオイル通路206とが連通される。第1部200の直径は、第1部200の外周面200a(図7参照)とカバー部材46bとの間に隙間がほとんど形成されないように、空洞部182の直径よりも僅かに小さい。第2部202の直径は、空洞部180の直径よりも小さく、第3部204の直径は、空洞部182の直径よりも小さい。第2部202は、支持部材226を介してケーシング46(ケースシング本体46a)に回動可能に支持され、第3部204は、支持部材228を介してケーシング46(カバー部材46b)に回動可能に支持される。これにより、バルブ部材194がケーシング46に回動可能に支持される。この実施形態では、支持部材226および支持部材228はそれぞれオイルシールを含む。
【0105】
連結部198には、連結機構(図示せず)を介してモータ(図示せず)が連結される。上記モータは、たとえば、スロットル開度および車速等に基づいて制御部(図示せず)によって制御される。これにより、バルブ部材194が回動し、オイル通路184がオイル通路206、オイル通路210、オイル通路212およびオイル通路214を介してオイル通路88、オイル通路136およびオイル通路138に選択的に連通される。その結果、オイル通路88、オイル通路136およびオイル通路138に選択的にオイルが導かれ、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4に選択的にオイルが供給される。これにより、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4が選択的に接続および切断される。すなわち、スクータ10の走行状態に応じて、変速装置44が適切なギアポジションに切り替えられる。
【0106】
以下、変速装置44のギアポジションを1速から4速に切り替える際の、クラッチ部C2,C3,C4へのオイルの供給経路について詳細に説明する。
【0107】
図9は、オイル通路88の開口端88a、オイル通路136の開口端136a、オイル通路138の開口端138aおよびオイル通路192の開口端192aとバルブ部材194との関係を示す図である。なお、図9では、図面が煩雑になることを避けるために、バルブ部材194については、第1部200のみを示す。また、第1部200は展開図として示す。図9において(a)には、開口端88a、開口端136a、開口端138aおよび開口端192aの位置関係を示し、(b)〜(h)には、変速装置44のギアポジションが1速から4速に切り替えられるときの開口端88a,136a,138a,192aとバルブ部材194との関係を示す。
【0108】
なお、以下の説明では、オイル通路210の開口端210aがケーシング46によって塞がれている状態(たとえば、図6(a)に示す状態)をオイル通路210が閉じているという。同様に、開口端212a、開口端214a、開口端216a、開口端218aおよび開口端220aがケーシング46によって塞がれている状態(たとえば、図6(a)および図6(b)に示す状態)を、それぞれオイル通路212、オイル通路214、オイル通路216、オイル通路218およびオイル通路220が閉じているという。
【0109】
図6および図9を参照して、変速装置44のギアポジションが1速の場合には、オイル通路210,212,214,216,218,220はそれぞれ閉じている。この場合、オイル通路184(図5参照)からオイル通路88、オイル通路136およびオイル通路138へのオイルの流れはバルブ部材194によって遮断される。したがって、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4にはオイルが供給されず、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4は接続されない。なお、以下の説明では、変速装置44のギアポジションが1速のときのオイル通路184およびバルブ部材194内のオイルの圧力を第1圧力とする。第1圧力は、環境(オイルの温度等)の変化等によって多少変動する値である。
【0110】
バルブ部材194が図9の(b)に示す状態(変速装置44のギアポジションが1速のときの状態)から第1方向R1に25°回動することによって、図9の(c)に示すように、第1部200の径方向において開口端214aと開口端88aとが重なり、開口端216aと開口端192aとが重なる。すなわち、オイル通路214がオイル通路88に対して開放され、オイル通路216がオイル通路192に対して開放される。これにより、オイル通路214とオイル通路88とが連通し、オイル通路216とオイル通路192とが連通する。したがって、オイル通路184(図5参照)のオイルが、オイル通路206およびオイル通路214を介してオイル通路88に導かれ、オイル通路206およびオイル通路216を介してオイル通路192に導かれる。
【0111】
ここで、図5を参照して、オイル通路192内のオイルの圧力は、リリーフバルブ193によって調整される。より具体的には、リリーフバルブ193は、オイル通路192内のオイルの圧力を上記第1圧力よりも低い第2圧力に調整する。なお、第2圧力は、環境(オイルの温度等)の変化等によって多少変動する値である。また、第2圧力は、0よりも大きい値である。バルブ部材194が図9の(c)に示す状態のときには、オイル通路192とオイル通路88とは、オイル通路216、オイル通路206(図5参照)およびオイル通路214を介して連通している。したがって、オイル通路88を介してクラッチ部C2に導かれるオイルの圧力も、第1圧力よりも低い第2圧力になる。ここで、この実施形態では、クラッチ部C2は、第1圧力のオイルが供給された場合に接続状態になり、第2圧力のオイルが供給された場合に半クラッチ状態になるように構成されている。したがって、バルブ部材194が図9の(c)に示す状態のときには、クラッチ部C2は半クラッチ状態になる。なお、この実施形態では、クラッチ部C3およびクラッチ部C4も同様に、第1圧力のオイルが供給された場合に接続状態になり、第2圧力のオイルが供給された場合に半クラッチ状態になるようにそれぞれ構成されている。
【0112】
次に、バルブ部材194が図9の(c)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図9の(d)に示すように、オイル通路214(開口端214a)がオイル通路88(開口端88a)に対して開放された状態が維持されつつ、オイル通路216(開口端216a)が閉じられる。これにより、オイル通路216からオイル通路192(図5参照)およびリリーフバルブ193(図5参照)へのオイルの流れが遮断され、クラッチ部C2に導かれるオイルの圧力が第1圧力に上昇する。その結果、クラッチ部C2が完全に接続され、変速装置44のギアポジションの2速への切替が終了する。
【0113】
なお、バルブ部材194が図9の(b)および(c)に示す状態の場合には、オイル通路210およびオイル通路212は閉じられている。この場合、図5を参照して、オイル通路184からオイル通路136およびオイル通路138へのオイルの流れはバルブ部材194によって遮断される。したがって、クラッチ部C3およびクラッチ部C4にオイルは供給されず、クラッチ部C3およびクラッチ部C4は接続されない。
【0114】
次に、バルブ部材194が図9の(d)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図9の(e)に示すように、第1部200の径方向において開口端210aと開口端136aとが重なり、開口端218aと開口端192aとが重なる。すなわち、オイル通路210がオイル通路136に対して開放され、オイル通路218がオイル通路192に対して開放される。このとき、オイル通路214(開口端214a)がオイル通路88(開口端88a)に対して開放された状態は維持されている。したがって、オイル通路210とオイル通路136とが連通し、オイル通路214とオイル通路88とが連通し、オイル通路218とオイル通路192とが連通する。これにより、オイル通路184(図5参照)のオイルが、オイル通路206(図5参照)およびオイル通路214を介してオイル通路88に導かれ、オイル通路206およびオイル通路210を介してオイル通路136に導かれ、オイル通路206およびオイル通路218を介してオイル通路192に導かれる。
【0115】
上述したように、オイル通路192内のオイルの圧力は、リリーフバルブ193によって第2圧力に調整される。また、オイル通路192とオイル通路88とは、オイル通路218、オイル通路206(図5参照)およびオイル通路214を介して連通している。さらに、オイル通路192とオイル通路136とは、オイル通路218、オイル通路206およびオイル通路210を介して連通している。したがって、オイル通路88からクラッチ部C2(図5参照)に導かれるオイルの圧力およびオイル通路136からクラッチ部C3(図5参照)に導かれるオイルの圧力は、第2圧力になる。このため、クラッチ部C2およびクラッチ部C3はそれぞれ半クラッチ状態になる。
【0116】
次に、バルブ部材194が図9の(e)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図9の(f)に示すように、オイル通路214(開口端214a)がオイル通路88(開口端88a)に対して開放された状態およびオイル通路210(開口端210a)がオイル通路136(開口端136a)に対して開放された状態が維持されつつ、オイル通路218(開口端218a)が閉じられる。これにより、オイル通路218からオイル通路192(図5参照)およびリリーフバルブ193(図5参照)へのオイルの流れが遮断され、クラッチ部C2およびクラッチ部C3に導かれるオイルの圧力が第1圧力に上昇する。その結果、クラッチ部C2およびクラッチ部C3がそれぞれ完全に接続され、変速装置44のギアポジションの3速への切替が終了する。
【0117】
なお、バルブ部材194が図9の(e)および(f)に示す状態の場合には、オイル通路212は閉じられている。この場合、図5を参照して、オイル通路184からオイル通路138へのオイルの流れはバルブ部材194によって遮断される。したがって、クラッチ部C4にオイルは供給されず、クラッチ部C4は接続されない。
【0118】
次に、バルブ部材194が図9の(f)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図9の(g)に示すように、第1部200の径方向において開口端212aと開口端138aとが重なり、開口端220aと開口端192aとが重なる。すなわち、オイル通路212がオイル通路138に対して開放され、オイル通路220がオイル通路192に対して開放される。このとき、オイル通路214がオイル通路88に対して開放された状態は維持されるが、オイル通路210(開口端210a)は閉じられる。したがって、バルブ部材194が図9の(g)に示す状態の場合には、オイル通路212とオイル通路138とが連通し、オイル通路214とオイル通路88とが連通し、オイル通路220とオイル通路192とが連通する。一方、オイル通路210とオイル通路136とは連通していない。これにより、オイル通路184(図5参照)のオイルが、オイル通路206(図5参照)およびオイル通路214を介してオイル通路88に導かれ、オイル通路206およびオイル通路212を介してオイル通路138に導かれ、オイル通路206およびオイル通路220を介してオイル通路192に導かれる。また、オイル通路184(図5参照)からオイル通路136へのオイルの流れは、バルブ部材194によって遮断される。
【0119】
上述したように、オイル通路192内のオイルの圧力は、リリーフバルブ193によって第2圧力に調整される。また、オイル通路192とオイル通路88とは、オイル通路220、オイル通路206(図5参照)およびオイル通路214を介して連通している。さらに、オイル通路192とオイル通路138とは、オイル通路220、オイル通路206およびオイル通路212を介して連通している。したがって、オイル通路88からクラッチ部C2(図5参照)に導かれるオイルの圧力およびオイル通路138からクラッチ部C4(図5参照)に導かれるオイルの圧力は、第2圧力になる。このため、クラッチ部C2およびクラッチ部C4はそれぞれ半クラッチ状態になる。なお、オイル通路184(図5)からオイル通路136へのオイルの流れはバルブ部材194によって遮断されているので、クラッチ部C3にはオイルが供給されない。これにより、クラッチ部C3は切断される。
【0120】
次に、バルブ部材194が図9の(g)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図9の(h)に示すように、オイル通路214(開口端214a)がオイル通路88(開口端88a)に対して開放された状態およびオイル通路212(開口端212a)がオイル通路138(開口端138a)に対して開放された状態が維持されつつ、オイル通路220(開口端220a)が閉じられる。これにより、オイル通路220からオイル通路192(図5参照)およびリリーフバルブ193(図5参照)へのオイルの流れが遮断され、クラッチ部C2およびクラッチ部C4に導かれるオイルの圧力が第1圧力に上昇する。その結果、クラッチ部C2およびクラッチ部C4が完全に接続され、変速装置44のギアポジションの4速への切替が終了する。
【0121】
バルブ部材194とクラッチ部C1,C2,C3,C4との上述の関係(オイル通路210,212,214,216,218,220の開閉状態とクラッチ部C1,C2,C3,C4の接続状態との関係)を表1にまとめる。なお、表1において、「×」はバルブ部材194のオイル通路が閉じられていることを示し、「○」はバルブ部材194のオイル通路が開放されていることを示す。また、「C」は、クラッチ部が接続状態であることを示し、「HC」は、クラッチ部が半クラッチ状態であることを示し、「NC」は、クラッチ部が切断されている状態であることを示す。
【0122】
【表1】
【0123】
表1を参照して、上述したように、この実施形態では、バルブ部材194を回動させることによって、オイル通路214、オイル通路210およびオイル通路212を選択的に開閉することができる。これにより、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4を選択的に接続および切断でき、変速装置44のギアポジションを切り替えることができる。
【0124】
また、変速装置44のギアポジションを1速から2速に切り替える際に、オイル通路216をオイル通路192(図5参照)に対して開放することによって、クラッチ部C2を半クラッチ状態にすることができる。同様に、変速装置44のギアポジションを2速から3速に切り替える際に、オイル通路218をオイル通路192に対して開放することによって、クラッチ部C2およびクラッチ部C3を半クラッチ状態にすることができる。また、変速装置44のギアポジションを3速から4速に切り替える際に、オイル通路220をオイル通路192に対して開放することによって、クラッチ部C2およびクラッチ部C4を半クラッチ状態にすることができる。これにより、変速装置44のギアポジションの切替を円滑に行うことができる。
【0125】
この実施形態では、変速装置44のギアポジションが1速のときのバルブ部材194の位置(図9の(b)参照)を基準位置とした場合に、以下に示す各位置が第1回動位置、第2回動位置および第3回動位置に相当する。すなわち、基準位置から第1角度(100°)回動したときのバルブ部材194の位置(図9の(f)参照)が第1回動位置に相当し、基準位置から第2角度(150°)回動したときのバルブ部材194の位置(図9の(h)参照)が第2回動位置に相当し、基準位置から第3角度(50°)回動したときのバルブ部材194の位置(図9の(d)参照)が第3回動位置に相当する。
【0126】
上述の構成を有する変速装置44では、クラッチ部C3にオイルを供給するためのオイル通路210およびクラッチ部C4にオイルを供給するためのオイル通路212が、バルブ部材194の回動軸194aに直交する仮想的な第1平面222上に形成される。この場合、クラッチ部C3,C4にオイルを供給するための2つのオイル通路が、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向において並ぶように形成される場合に比べて、バルブ部材194の長さ(回動軸194aに対して平行な方向の長さ)を短くすることができる。また、変速装置44においては、オイル通路206は、バルブ部材194の回動軸194aに対して平行な方向に延びかつその平行な方向に向かって開口し、オイル通路210およびオイル通路212は、回動軸194aに直交する方向に延びかつその直交する方向に向かって開口する。この場合、クラッチ部C3およびクラッチ部C4に供給されるオイルをバルブ部材194の内部に導くための開口部(開口端206a)と、クラッチ部C3およびクラッチ部C4に供給されるオイルをバルブ部材194の内部から送り出すための開口部(開口端210aおよび開口端212a)とが、同一方向に並んで配置されることがない。より具体的には、バルブ部材194の回動軸194aに対して平行な方向において開口端206a,210a,212aが並んで配置されることがなく、回動軸194aに直交する方向において開口端206a,210a,212aが並んで配置されることもない。これにより、回動軸194aに対して平行な方向におけるバルブ部材194の長さおよび回動軸194aに直交する方向におけるバルブ部材194の大きさを小さくできる。すなわち、バルブ部材194の軸方向の長さおよびバルブ部材194の太さ(バルブ部材194の径方向の大きさ)を小さくできる。その結果、変速装置44を小型に構成できる。
【0127】
また、変速装置44においては、オイル通路206は、バルブ部材194の回動軸194a上に形成されかつ回動軸194a上において開口する。この場合、オイル通路206を容易に形成できかつオイル通路184からオイル通路206にオイルを円滑に導くことができる。
【0128】
また、変速装置44においては、オイル通路214、オイル通路216、オイル通路218およびオイル通路220が、第1平面222から離れた第2平面224上に形成される。この場合、オイル通路210、オイル通路212、オイル通路214、オイル通路216、オイル通路218およびオイル通路220が密集し過ぎることを避けることができるので、バルブ部材194の構造を簡単にできる。
【0129】
上述の実施形態では、バルブ部材194は、制御部によって制御されるモータによって回動されているが、運転者の操作に基づいてバルブ部材194が回動されてもよい。この場合、運転者によって操作されるシフトレバーまたはシフトペダルが、バルブ部材194の連結部198に連結機構を介して連結される。
【0130】
上述の実施形態では、バルブ部材194の内部にオイルを導くためのオイル通路206は、バルブ部材194の回動軸194a上に形成されているが、バルブ部材の内部にオイルを導くためのオイル通路がバルブ部材の回動軸上に形状されなくてもよい。たとえば、図10に示すバルブ部材230のように、回動軸230aに対して平行な方向に延びる断面環状のオイル通路232が形成されてもよい。なお、図10において(a)は(b)のa−a線断面図であり、(b)は(a)のb−b線断面図である。また、図10に示すバルブ部材230が上述のバルブ部材194と異なるのは、オイル通路206の代わりにオイル通路232が設けられている点であり、バルブ部材230のオイル通路232以外の構成は、バルブ部材194の構成と等しい。
【0131】
上述の実施形態では、クラッチ部C4にオイルを供給するためのオイル通路として1つのオイル通路212がバルブ部材194に設けられているが、クラッチ部C4にオイルを供給するためにバルブ部材に設けられるオイル通路の数は1つに限定されない。たとえば、図11に示すバルブ部材234のように、クラッチ部C4にオイルを供給するためのオイル通路としてオイル通路236をさらに備えてもよい。
【0132】
図11は、上述の変速装置44においてバルブ部材194の代わりにバルブ部材234を設けた場合の、バルブ部材234と開口端88a,136a,138a,192aとの関係を示す。なお、オイル通路236以外のバルブ部材234の構成は、バルブ部材194の構成と等しい。したがって、オイル通路236以外のバルブ部材234の構成については説明を省略する。また、バルブ部材234からクラッチ部C2およびクラッチ部C3へのオイルの供給方法および供給経路は、バルブ部材194からクラッチ部C2およびクラッチ部C3へのオイルの供給方法および供給経路と同様である。したがって、クラッチ部C2およびクラッチ部C3へのオイルの供給方法および供給経路についての説明は省略する。また、変速装置のギアポジションが1速から2速に切り替えられるとき、およびクラッチ部C3が半クラッチ状態に設定されるときの開口端88a,136a,138a,192aとバルブ部材234との関係は、図9で説明した開口端88a,136a,138a,192aとバルブ部材194との関係と同様である。したがって、変速装置のギアポジションが1速から2速に切り替えられるとき、およびクラッチ部C3が半クラッチ状態に設定されるときのバルブ部材234の状態についての説明は省略する。
【0133】
図11を参照して、オイル通路236は、オイル通路210およびオイル通路212と同様に、第1平面222(図8参照)上に位置する。オイル通路236は、オイル通路216,218,220(図6参照)と同様に、オイル通路206(図6参照)から回動軸194aに直交する方向に延び、バルブ部材234の外周面において開口する。また、オイル通路236は、変速装置のギアポジションが3速に設定されているときにオイル通路138に対して開放されるように形成される。また、オイル通路236は、オイル通路236を流れるオイルの量がオイル通路212を流れるオイルの量よりも少なくなるように形成される。
【0134】
図12は、クラッチ部C4(図5参照)の油室120d内のオイルの圧力変化を示す図である。図12において、圧力p1は上述の第1圧力であり、圧力p2は上述の第2圧力である。また、時点t1は、バルブ部材234が図11の(e)に示す状態から図11の(f)に示す状態に移行した時点を示し、時点t2は、バルブ部材234が図11の(f)に示す状態から図11の(g)に示す状態に移行した時点を示し、時点t3は、油室120d内のオイルの圧力が第2圧力p2に達した時点を示す。また、時点t4は、バルブ部材234が図11の(g)に示す状態から図11の(h)に示す状態に移行した時点を示し、時点t5は、油室120d内のオイルの圧力が第1圧力p1に達した時点を示す。
【0135】
バルブ部材234を備えた変速装置では、バルブ部材234が図11の(e)に示す状態のとき(クラッチ部C3が半クラッチ状態のとき)には、オイル通路236の開口端およびオイル通路212の開口端212aは、ケーシング46(図5参照)によって塞がれる。したがって、バルブ部材194を備えた変速装置44と同様に、クラッチ部C3が半クラッチ状態のときには、クラッチ部C4にオイルは供給されない。
【0136】
次に、バルブ部材234が図11の(e)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、変速装置のギアポジションが3速に設定される。このとき、図11の(f)に示すように、バルブ部材234の径方向においてオイル通路236の開口端と開口端138aとが重なり、オイル通路236がオイル通路138に対して開放される。これにより、オイル通路236のオイルがオイル通路138を介して油室120dに供給される。その結果、図12を参照して、時点t1において油室120d内のオイルの圧力が上昇する。なお、この実施形態では、オイル通路236を流れるオイルの量は少ない。また、上述したように、油室120d内のオイルの一部は、リーク孔120f(図5参照)から排出される。したがって、オイル通路236から油室120dにオイルが供給されても、油室120d内のオイルの圧力は第2圧力p2までは上昇しない。また、上述したように、プレッシャープレート120b(図5参照)は複数の付勢部材121a(図5参照)によって左方向(フリクションディスク122とクラッチディスク124とが離れる方向)に付勢されている。したがって、オイル通路236から油室120dにオイルが供給されても、クラッチ部C4が切断された状態が維持される。
【0137】
次に、バルブ部材234が図11の(f)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図11の(g)に示すように、バルブ部材234の径方向において、開口端212aと開口端138aとが重なり、開口端220aと開口端192aとが重なる。すなわち、オイル通路212がオイル通路138に対して開放され、オイル通路220がオイル通路192に対して開放される。これにより、リリーフバルブ193(図5参照)によって第2圧力p2に調整されたオイルが、オイル通路212からオイル通路138を介して油室120dに供給される。その結果、図12に示すように、油室120d内のオイルの圧力は、時点t2において上昇し始め、時点t3において第2圧力p2になる。これにより、クラッチ部C4が半クラッチ状態になる。なお、このとき、オイル通路236の開口端はケーシング46によって塞がれる。
【0138】
その後、バルブ部材234が図11の(g)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図11の(h)に示すように、オイル通路212(開口端212a)がオイル通路138(開口端138a)に対して開放された状態が維持されつつ、オイル通路220(開口端220a)が閉じられる。これにより、バルブ部材234からオイル通路192(図5参照)およびリリーフバルブ193(図5参照)へのオイルの流れが遮断され、オイル通路212から油室120dへ供給されるオイルの圧力が上昇する。その結果、図12に示すように、油室120d内のオイルの圧力は、時点t4において上昇し始め、時点t5において第1圧力p1になる。これにより、クラッチ部C4が完全に接続される。
【0139】
ここで、バルブ部材234を備えた変速装置では、上述したように、ギアポジションが3速に設定されているときすなわちギアポジションの4速への切り替え動作が開始される前に、クラッチ部C4の油室120dに予めオイルが供給される。これにより、時点t2(ギアポジションの切り替え動作が開始された時点)から時点t3(油室120d内のオイルの圧力が第2圧力p2になる時点)までの時間を短くすることができる。すなわち、短時間でクラッチ部C4を半クラッチ状態にすることができる。これにより、変速装置のギアポジションが3速から4速に切り替えられる際に、スクータ10の運転者に空想感を与えることを防止できる。また、ギアポジションの3速から4速への切り替えを短時間で行うことができる。
【0140】
なお、図13に示すバルブ部材238のように、クラッチ部C2にオイルを供給するためのオイル通路240およびクラッチ部C3にオイルを供給するためのオイル通路242をさらに設けてもよい。バルブ部材238においては、オイル通路240は、第2平面224(図8参照)上に位置し、オイル通路242は、第1平面222(図8参照)上に位置する。また、オイル通路240,242は、オイル通路236(図11参照)と同様に、オイル通路206(図6参照)から回動軸194aに直交する方向に延び、バルブ部材238の外周面において開口する。また、オイル通路240は、変速装置のギアポジションが1速に設定されているとき(図13の(b)参照)にオイル通路88に対して開放されるように形成され、オイル通路242は、変速装置のギアポジションが2速に設定されているとき(図13の(d)参照)にオイル通路136に対して開放されるように形成される。また、オイル通路240は、オイル通路240を流れるオイルの量がオイル通路214を流れるオイルの量よりも少なくなるように形成され、オイル通路242は、オイル通路242を流れるオイルの量がオイル通路210を流れるオイルの量よりも少なくなるように形成される。
【0141】
バルブ部材238を備えた変速装置では、ギアポジションが1速に設定されているときに、オイル通路240からクラッチ部C2(図2参照)の油室77c(図2参照)に予めオイルを供給することができる。これにより、クラッチ部C2を短時間で半クラッチ状態にすることができる。また、ギアポジションが2速に設定されているときに、オイル通路242からクラッチ部C3(図5参照)の油室120e(図5参照)に予めオイルを供給することができる。これにより、クラッチ部C3を短時間で半クラッチ状態にすることができる。
【0142】
上述の実施形態では、オイルが供給されることによって接続されるクラッチ部C2,C3,C4を有する変速装置にこの発明を適用した場合について説明したが、この発明は、オイルが供給されることによって切断されるクラッチ部を有する変速装置にも適用できる。
【0143】
上述の実施形態では、1速用のクラッチ部として遠心式のクラッチ部C1が設けられた変速装置にこの発明を適用した場合ついて説明したが、この発明は、1速用のクラッチ部として油圧式のクラッチ部が設けられた変速装置にも適用できる。
【0144】
上述の実施形態では、4速のギアポジションを有する変速装置にこの発明を適用した場合について説明したが、この発明は、2速、3速または5速以上のギアポジションを有する変速装置にも適用できる。
【0145】
上述の実施形態では、回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路210の中心および回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路212の中心がともに第1平面222上に位置しているが、オイル通路210,212の位置は上述の例に限定されない。たとえば、オイル通路210,212が第1平面222に交わっているのであれば、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向において、オイル通路210の中心が第1平面222よりも一方側に位置し、オイル通路212の中心が第1平面222よりも他方側に位置してもよい。すなわち、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向において、オイル通路210とオイル通路212とがずれて形成されてもよい。同様に、オイル通路214,216,218,220が第2平面224に交わっているのであれば、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向において、オイル通路214,216,218,220のうちのいずれかのオイル通路が他のオイル通路に対してずれて形成されてもよい。
【0146】
上述の実施形態では、3速用のクラッチ部C3にオイルを供給するためのオイル通路210および4速用のクラッチ部C4にオイルを供給するためのオイル通路212が第1平面222上に形成され、2速用のクラッチ部C2にオイルを供給するためのオイル通路214が第2平面224上に形成されているが、オイル通路の位置は上述の例に限定されない。たとえば、2速用のクラッチ部にオイルを供給するためのオイル通路および3速用のクラッチ部にオイルを供給するためのオイル通路が第1平面222上に形成され、4速用のクラッチ部にオイルを供給するためのオイル通路が第2平面224上に形成されてもよい。この場合、2速用のクラッチ部が第1油圧クラッチ部に相当し、3速用のクラッチ部が第2油圧クラッチ部に相当し、4速用のクラッチ部が第3油圧クラッチ部に相当する。また、たとえば、2速用のクラッチ部にオイルを供給するためのオイル通路および4速用のクラッチ部にオイルを供給するためのオイル通路が第1平面222上に形成され、3速用のクラッチ部にオイルを供給するためのオイル通路が第2平面224上に形成されてもよい。この場合、2速用のクラッチ部が第1クラッチ部に相当し、4速用のクラッチ部が第2クラッチ部に相当し、3速用のクラッチ部が第3クラッチ部に相当する。
【0147】
上述の実施形態では、この発明に係る変速装置をスクータ10に適用した場合について説明したが、この発明に係る変速装置が適用できる鞍乗型車両はスクータ10に限定されない。具体的には、この発明に係る変速装置は、モペット等の他のタイプの自動二輪車、不整地走行用車両(ALL−TERRAIN VEHICLE)、およびスノーモービル等の他の鞍乗型車両にも適用できる。
【符号の説明】
【0148】
10 スクータ
30 エンジンユニット
36 出力軸
42 エンジン
44 変速装置
46 ケーシング
88、136、138、184、192、206、208、210、212、214、216、218、220、232、236、240、242 オイル通路
190 オイルパン
194、230、234、238 バルブ部材
222 仮想的な第1平面
224 仮想的な第2平面
C1、C2、C3、C4 クラッチ部
【技術分野】
【0001】
この発明は、変速装置およびそれを備える鞍乗型車両に関し、より特定的には、複数の油圧クラッチ部を有する変速装置およびそれを備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の油圧クラッチ部を有する変速装置が提案されている。たとえば、特許文献1に記載されている有段式自動変速装置は、第1〜第3の油圧式変速クラッチを有する。この有段式自動変速装置では、第1〜第3の油圧式変速クラッチに選択的にオイルを供給することによって、第1〜第3の油圧式変速クラッチを選択的に接続状態にできる。これにより、有段式自動変速装置の変速比を変更できる。
【0003】
複数の油圧クラッチ部を有する上述のような変速装置では、一般に、複数の油圧クラッチ部にオイルを供給するための複数のオイル通路および複数のオイル通路を開閉するためのバルブが設けられる。
【0004】
たとえば、特許文献1に記載されている有段式自動変速装置には、図14に示すように、第1の油圧式変速クラッチ(図示せず)に接続されるオイル経路1、第2の油圧式変速クラッチ(図示せず)に接続されるオイル経路2、第3の油圧式変速クラッチ(図示せず)に接続されるオイル経路3、およびオイル溜まり(図示せず)に接続されるオイル経路4が設けられている。また、オイル経路1,2,3とオイル経路4との間に、略円柱状のバルブ5が設けられている。バルブ5は、内部経路5a,5b,5cを有する。
【0005】
特許文献1の有段式自動変速装置では、ECU(図示せず)による制御によってバルブ5が回転する。これにより、オイル経路4が内部経路5a,5b,5cによって選択的にオイル経路1,2,3に連通される。その結果、オイル経路4内のオイルがオイル経路1,2,3に選択的に供給され、第1〜第3の油圧式変速クラッチに選択的にオイルが供給される。
【0006】
また、たとえば、特許文献2に記載されているロータリ弁は、弁ケース内に回動可能に設けられるロータを有する。ロータの軸心には圧油供給路が形成され、ロータの外周面には圧油供給路に連通する複数の油溝が形成される。ロータリ弁の外部からロータの外周面の一の油溝(以下、オイル流入溝と称する)を介して圧油供給路に流入したオイルは、ロータの外周面の他の複数の油溝(以下、オイル流出溝と称する)を介して複数の油圧クラッチに選択的に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−68700号公報
【特許文献2】特開2001−90821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図14に示した特許文献1のバルブ5においては、内部経路5a,5b,5cがバルブ5の軸方向において並ぶように設けられるので、バルブ5の軸方向の長さを短くすることが難しい。このため、変速装置のバルブの構成として特許文献1の構成を採用した場合、変速装置を小型に構成することが難しくなる。
【0009】
また、特許文献2のロータリ弁では、ロータリ弁の内部にオイルを導くためのオイル流入溝およびロータリ弁の内部からオイルを送り出すためのオイル流出溝が、ロータの軸方向において並ぶようにロータの外周面に形成される。このため、ロータの軸方向の長さを短くすることが難しい。したがって、変速装置のバルブの構成として特許文献2の構成を採用した場合も、変速装置を小型に構成することが難しくなる。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、複数の油圧クラッチ部に選択的にオイルを供給できかつ小型に構成できる変速装置およびそれを備える鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のある見地によれば、少なくとも第1油圧クラッチ部および第2油圧クラッチ部を有する変速装置であって、第1油圧クラッチ部にオイルを導くための第1オイル通路、第2油圧クラッチ部にオイルを導くための第2オイル通路、オイル源からオイルが導かれる第3オイル通路、ならびに第1オイル通路と第2オイル通路と第3オイル通路との間に回動可能に設けられかつ第1回動位置および第2回動位置に設定可能なバルブ部材を備え、バルブ部材は、当該バルブ部材の内部を当該バルブ部材の回動軸に対して平行な方向に延びかつ第3オイル通路に連通するように上記平行な方向に向かって開口する第4オイル通路と、それぞれ第4オイル通路から上記回動軸に直交する方向に延びかつ上記直交する方向に向かって開口する第5オイル通路および第6オイル通路とを有し、第5オイル通路および第6オイル通路は、上記回動軸に直交する仮想的な第1平面上に形成され、バルブ部材が第1回動位置に位置する場合には、第1オイル通路と第5オイル通路とが連通し、バルブ部材が第2回動位置に位置する場合には、第2オイル通路と第6オイル通路とが連通する、変速装置が提供される。
【0012】
この変速装置では、バルブ部材が第1回動位置に設定されることによって、第1オイル通路と第5オイル通路とが連通する。したがって、オイル源から第3オイル通路に導かれたオイルは、第4オイル通路および第5オイル通路を介して第1オイル通路に導かれる。これにより、第1オイル通路から第1油圧クラッチ部にオイルを導くことができる。また、バルブ部材が第2回動位置に設定されることによって、第2オイル通路と第6オイル通路とが連通する。したがって、オイル源から第3オイル通路に導かれたオイルは、第4オイル通路および第6オイル通路を介して第2オイル通路に導かれる。これにより、第2オイル通路から第2油圧クラッチ部にオイルを導くことができる。このように、この変速装置では、バルブ部材を第1回動位置および第2回動位置に選択的に設定することによって、第1油圧クラッチ部および第2油圧クラッチ部に選択的にオイルを供給することができる。それにより、第1油圧クラッチ部および第2油圧クラッチ部を選択的に接続および切断することができる。
【0013】
ここで、この変速装置においては、第5オイル通路および第6オイル通路は、バルブ部材の回動軸に直交する仮想的な第1平面上に形成される。この場合、第5オイル通路および第6オイル通路が、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向において並ぶように形成される場合に比べて、バルブ部材の長さ(回動軸に対して平行な方向の長さ)を短くすることができる。また、この変速装置においては、第4オイル通路は、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向に延びかつその平行な方向に向かって開口し、第5オイル通路および第6オイル通路は、上記回動軸に直交する方向に延びかつその直交する方向に向かって開口する。この場合、第1油圧クラッチ部および第2油圧クラッチ部に供給されるオイルをバルブ部材の内部に導くための開口部(第4オイル通路の開口端)と、第1油圧クラッチ部および第2油圧クラッチ部に供給されるオイルをバルブ部材の内部から送り出すための2つの開口部(第5オイル通路の開口端および第6オイル通路の開口端)とが、同一方向に並んで配置されることがない。より具体的には、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向において上記3つの開口部が並んで配置されることがなく、バルブ部材の回動軸に直交する方向において上記3つの開口部が並んで配置されることもない。これにより、上記回動軸に対して平行な方向におけるバルブ部材の長さおよび上記回動軸に直交する方向におけるバルブ部材の大きさを小さくできる。すなわち、バルブ部材の軸方向の長さおよびバルブ部材の太さを小さくできる。その結果、変速装置を小型に構成できる。
【0014】
好ましくは、第4オイル通路は、バルブ部材の回動軸上に形成されかつ回動軸上において開口する。この場合、第4通路を容易に形成できかつ第3通路から第4通路にオイルを円滑に導くことができる。
【0015】
より好ましくは、変速装置は、第3油圧クラッチ部と第3油圧クラッチ部にオイルを導くための第7オイル通路とをさらに備え、バルブ部材は、第1オイル通路と第2オイル通路と第3オイル通路と第7オイル通路との間に回動可能に設けられかつ第3回動位置に設定可能であり、第4オイル通路から上記回動軸に直交する方向に延びかつ上記直交する方向に向かって開口する第8オイル通路をさらに有し、第8オイル通路は、上記回動軸に直交する仮想的な第2平面上に形成され、第2平面は、上記回動軸に対して平行な方向において第1平面から離れており、バルブ部材が第3回動位置に位置する場合には、第7オイル通路と第8オイル通路とが連通する。
【0016】
この変速装置では、バルブ部材が第3回動位置に設定されることによって、第7オイル通路と第8オイル通路とが連通する。したがって、オイル源から第3オイル通路に導かれたオイルは、第4オイル通路および第8オイル通路を介して第7オイル通路に導かれる。これにより、第7オイル通路から第3油圧クラッチ部にオイルを導くことができる。したがって、この変速装置では、バルブ部材を第1回動位置、第2回動位置および第3回動位置に選択的に設定することによって、第1油圧クラッチ部、第2油圧クラッチ部および第3油圧クラッチ部に選択的にオイルを供給することができる。それにより、第1油圧クラッチ部、第2油圧クラッチ部および第3油圧クラッチ部を選択的に接続および切断することができる。また、この変速装置では、第8オイル通路は、上記回動軸に対して平行な方向において第1平面から離れた第2平面上に形成される。この場合、第5オイル通路、第6オイル通路および第8オイル通路が密集し過ぎることを避けることができるので、バルブ部材の構造を簡単にできる。
【0017】
複数の油圧クラッチ部を有する変速装置では、一般に、複数の油圧クラッチ部にオイルを選択的に供給するためのバルブ部材が設けられる。この場合、バルブ部材を配置するためのスペースが必要になり、変速装置を小型に構成することが難しい。そのため、複数の油圧クラッチ部を有する変速装置を備えた鞍乗型車両を小型に構成することは難しい。一方、上述のように、この発明に係る変速装置は、複数の油圧クラッチ部に選択的にオイルを供給できかつ小型に構成できる。したがって、この発明に係る変速装置は、鞍乗型車両に好適に利用できる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、複数の油圧クラッチ部に選択的にオイルを供給できかつ小型に構成できる変速装置およびそれを備える鞍乗型車両が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態のスクータを示す側面図である。
【図2】エンジンユニットの内部構造を示す断面図解図である。
【図3】エンジンユニットの構成要素を模式的に示す図解図である。
【図4】エンジンユニットを示す側面図解図である。
【図5】第2クラッチユニットの周辺の構造を示す断面図解図である。
【図6】クラッチ部へのオイルの供給経路を説明するための図である。(a)は図5のA−A線断面を示す図であり、(b)は図5のB−B線断面を示す図である。
【図7】バルブ部材を示す図である。(a)はバルブ部材を示す正面図(図5においてバルブ部材を左側から見た図)であり、(b)はバルブ部材を示す側面図であり、(c)はバルブ部材を示す背面図(図5においてバルブ部材を右側から見た図)であり、(d)は(a)のD−D線断面を示す図である。
【図8】バルブ部材の第1部を示す展開図である。
【図9】ケーシングに形成された各オイル通路の開口端とバルブ部材との関係を示す図である。
【図10】バルブ部材の他の例を示す図である。(a)は(b)のa−a線断面図であり、(b)は(a)のb−b線断面図である。
【図11】バルブ部材のその他の例を示す図である。
【図12】クラッチ部の油室内のオイルの圧力変化を示す図である。
【図13】バルブ部材のさらに他の例を示す図である。
【図14】従来の有段式自動変速装置を示す断面図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。ここでは、この発明の実施の形態に係る変速装置44を、鞍乗型車両の一例であるスクータ10に搭載した場合について説明する。この発明の実施の形態における前後、左右、上下とは、スクータ10のシート40に運転者がそのハンドル16に向かって着座した状態を基準とした前後、左右、上下を意味する。
【0021】
図1は、スクータ10を示す側面図である。図1を参照して、スクータ10は、車体フレーム12および車体フレーム12を覆うように設けられる車体カバー14を含む。なお、車体カバー14によって隠れているために図1には詳細が示されていないが、車体フレーム12の前部は前方斜め上方に向かって延び、車体フレーム12の後部は後方斜め上方に向かって延びている。車体フレーム12は、その前端部に図示しないヘッドパイプを有し、ヘッドパイプには、図示しないステアリングシャフトが回転可能に挿通される。ステアリングシャフトの上端部には、ハンドル16が取り付けられ、ステアリングシャフトの下端部には、フロントフォーク18が取り付けられる。フロントフォーク18の下端部には、前輪20が車軸22を介して回転可能に支持される。
【0022】
車体カバー14の下端部には、運転者が足を載せるためのフットステップ24が左右方向に延びるように設けられる。車体フレーム12においてフットステップ24よりも後方には、サイドスタンド26が取付部28を介して取り付けられる。車体フレーム12の下端部において取付部28よりも後方には、後方に延びるエンジンユニット30がピボット軸32を介して揺動可能に支持される。具体的には、エンジンユニット30の後述するエンジンブラケット48が、ピボット軸32を介して車体フレーム12に取り付けられる。後述するように、変速装置44は、エンジンユニット30に含まれる。
【0023】
エンジンユニット30の後端部には、後輪34が出力軸36を介して回転可能に支持される。車体フレーム12の後部(図示せず)とエンジンユニット30とを連結するように、クッションユニット38が設けられる。車体フレーム12の後部(図示せず)においてクッションユニット38よりも上方には、運転者が着座するためのシート40が設けられる。
【0024】
以下、エンジンユニット30を詳細に説明する。
図2は、エンジンユニット30の内部構造を示す断面図解図であり、図3は、エンジンユニット30の構成要素を模式的に示した図である。図4は、エンジンユニット30を示す側面図解図である。
【0025】
図1〜図4を参照して、エンジンユニット30は、エンジン42(図2および図3参照)、ケーシング46(図2および図4参照)を含む変速装置44、およびエンジンブラケット48(図1および図4参照)を含む。
【0026】
図2を参照して、ケーシング46は、ケースシング本体46aおよびケーシング本体46aの左端部に取り付けられるカバー部材46bを含む。図2および図3を参照して、エンジン42は、ケーシング本体46a(図2参照)の前端部に接続されかつ前方に延びるシリンダボディ50(図2においては一部のみ図示)、シリンダボディ50の前端部に接続されるシリンダヘッド52(図3参照)、シリンダボディ50内に設けられるピストン54(図3参照)、およびピストン54に接続されるコンロッド56(図2においては一部のみ図示)を有する。図2を参照して、ケーシング46においてシリンダボディ50よりも後方には、クランク室58が形成される。
【0027】
図2および図3を参照して、変速装置44は、クランク軸60を含む。クランク軸60は、ケーシング46(図2参照)内の前端部に設けられる。クランク軸60は、クランク室58(図2参照)に配置される一対のウェブ部60a,60b、一対のウェブ部60a,60bを連結するクランクピン60c、ウェブ部60aから左方向に延びるクランクジャーナル60d、およびウェブ部60bから右方向に延びるクランクジャーナル60eを有する。クランクピン60cには、コンロッド56の後端部が接続される。
【0028】
クランク軸60は、クランクジャーナル60dの右端部に設けられるベアリング62、クランクジャーナル60eの左端部に設けられるベアリング64、およびクランクジャーナル60dの左端部に設けられるベアリング66を介してケーシング46(図2参照)に回転可能に支持される。
【0029】
図4を参照して、クランクジャーナル60d(クランク軸60(図2参照))は、エンジン42(図2参照)によって発生される駆動力に基づいて第1方向R1に回転する。変速装置44においては、クランクジャーナル60d(クランク軸60)が第1方向R1に回転することによって、後述する回転軸102,156および出力軸36が第1方向R1に回転し、後述する回転軸90,140,166が第2方向R2(第1方向R1の反対方向)に回転する。
【0030】
図2を参照して、クランクジャーナル60eの右端部は、発電機68に接続される。発電機68においては、クランクジャーナル60eの回転に基づいて発電が行われる。
【0031】
クランクジャーナル60dの内部にはオイル通路60fが形成される。オイル通路60fは、クランクジャーナル60dの左端面およびクランクジャーナル60dの外周面において開口する。
【0032】
図2および図3を参照して、クランクジャーナル60dと同軸状に第1クラッチユニット70が設けられる。第1クラッチユニット70は、円筒状のクラッチハウジング72、クラッチハウジング72の内側に設けられるインナー部材74、およびインナー部材74よりも左側に設けられるインナー部材76を含む。
【0033】
クラッチハウジング72の右端部にはギア78が取り付けられ、クラッチハウジング72の左端部には複数の環状のフリクションディスク80(図3参照)が取り付けられる。クラッチハウジング72、ギア78および複数のフリクションディスク80は一体的に回転する。
【0034】
ギア78は、ワンウェイクラッチ82を介してクランクジャーナル60dに取り付けられる。ワンウェイクラッチ82は、クランクジャーナル60dの第1方向R1(図4参照)の回転をクランクジャーナル60dからギア78(クラッチハウジング72)に伝達せず、かつギア78(クラッチハウジング72)の第1方向R1(図4参照)の回転をギア78からクランクジャーナル60dに伝達する。したがって、ワンウェイクラッチ82は、エンジン42によって発生される駆動力をギア78に伝達しない。なお、クランクジャーナル60dおよびギア78(クラッチハウジング72)がともに第1方向R1(図4参照)に回転しかつクランクジャーナル60dの回転速度がギア78(クラッチハウジング72)の回転速度よりも大きい場合には、ワンウェイクラッチ82は、ギア78(クラッチハウジング72)の第1方向R1(図4参照)の回転をクランクジャーナル60dに伝達しない。ワンウェイクラッチ82としては公知の種々のワンウェイクラッチを用いることができるので、ワンウェイクラッチ82の構成の詳細な説明は省略する。
【0035】
図2および図3を参照して、インナー部材74は、複数のクラッチシュー74aを有する。インナー部材74は、クランクジャーナル60dと一体的に回転するようにクランクジャーナル60dに取り付けられる。この実施形態では、クラッチハウジング72およびインナー部材74が遠心式のクラッチ部C1として機能する。クラッチ部C1では、クランクジャーナル60dの回転速度が所定速度に達したときに、インナー部材74の複数のクラッチシュー74aがクラッチハウジング72に接触する。これにより、クランクジャーナル60dの回転がインナー部材74を介してクラッチハウジング72に伝達される。その結果、クラッチハウジング72およびギア78が第1方向R1(図4参照)に回転する。インナー部材74の構成としては公知の種々の遠心式クラッチの構成を用いることができるので、インナー部材74の構成の詳細な説明は省略する。
【0036】
以下においては、インナー部材74がクラッチハウジング72に接触している状態をクラッチ部C1が接続されているといい、インナー部材74がクラッチハウジング72に接触していない状態をクラッチ部C1が切断されているという。なお、変速装置44では、クラッチ部C1は1速用のクラッチとして機能する。
【0037】
インナー部材76は、クランクジャーナル60dに対して回転自在になるように、たとえばカラー等を介してクランクジャーナル60dに取り付けられる。図2を参照して、インナー部材76は、押圧部77を有する。押圧部77は、ガイド部材77aおよびプレッシャープレート77bを有する。プレッシャープレート77bは、ガイド部材77aに対して摺動可能に設けられる。ガイド部材77aおよびプレッシャープレート77bによって油室77cが形成される。油室77cは、オイル通路60fに連通している。プレッシャープレート77bは、プレッシャープレート77bの板厚方向(この実施形態では左右方向)に貫通しかつ油室77cに連通するリーク孔77dを有する。プレッシャープレート77bは、図示しない付勢部材によってガイド部材77a側(この実施形態では右側)に向かって付勢されている。
【0038】
図3を参照して、インナー部材76の外周部には、複数の環状のクラッチディスク84が取り付けられ、インナー部材76の左端部には、ギア86が取り付けられる。インナー部材76、複数のクラッチディスク84およびギア86は一体的に回転する。複数のフリクションディスク80と複数のクラッチディスク84とは、交互に配置される。
【0039】
この実施形態では、クラッチハウジング72、インナー部材76、複数のフリクションディスク80(図3参照)、および複数のクラッチディスク84(図3参照)が油圧式のクラッチ部C2として機能する。クラッチ部C2では、後述するオイルパン190(図5参照)から、ケーシング46(図2参照)に形成されたオイル通路88(図2参照)およびクランクジャーナル60dのオイル通路60f(図2参照)を介してインナー部材76の油室77c(図2参照)にオイルが供給される。これにより、プレッシャープレート77b(図2参照)が左方向に移動し、複数のフリクションディスク80(図3参照)がプレッシャープレート77b(図2参照)によって複数のクラッチディスク84(図3参照)に押し付けられる。その結果、クラッチハウジング72の回転がフリクションディスク80(図3参照)およびクラッチディスク84(図3参照)を介してインナー部材76に伝達され、インナー部材76およびギア86が第1方向R1(図4参照)に回転する。
【0040】
図2を参照して、この実施形態では、上述したように、プレッシャープレート77bは、図示しない付勢部材によって右方向に付勢されている。また、インナー部材76の油室77cはリーク孔77dに連通しているので、油室77c内のオイルの一部はリーク孔77dから排出される。したがって、油室77cへのオイル供給が停止されると、油室77c内のオイル量が減少し、プレッシャープレート77bが右側に移動する。その結果、複数のフリクションディスク80(図3参照)と複数のクラッチディスク84(図3参照)との接触状態が解除され、クラッチハウジング72からインナー部材76への回転の伝達が遮断される。インナー部材76の構成としては公知の種々の油圧式クラッチの構成を用いることができるので、インナー部材76の構成の詳細な説明は省略する。クラッチ部C2へのオイルの供給経路については後述する。この実施形態では、クラッチ部C2が第3油圧クラッチ部に相当する。
【0041】
以下においては、複数のフリクションディスク80と複数のクラッチディスク84とが接触しかつ略同一の回転速度で一体的に回転している状態をクラッチ部C2が接続されているといい、複数のフリクションディスク80と複数のクラッチディスク84とが互いに対して摺動しつつ回転している状態をクラッチ部C2が半クラッチ状態であるといい、複数のフリクションディスク80と複数のクラッチディスク84とが接触していない状態をクラッチ部C2が切断されているという。なお、変速装置44では、クラッチ部C2は2速用のクラッチとして機能する。
【0042】
図2および図4を参照して、ケーシング46内においてクランクジャーナル60dの後方斜め下方には、回転軸90がクランクジャーナル60dに対して平行に設けられる。図2を参照して、回転軸90の右端部は、ベアリング92を介してケーシング46に回転可能に支持され、回転軸90の左端部は、ベアリング94を介してケーシング46に回転可能に支持される。
【0043】
図2および図3を参照して、ベアリング92よりも左側において回転軸90と同軸状にギア96が設けられる。ギア96は、ワンウェイクラッチ98を介して回転軸90に取り付けられる。ギア96は、ギア78と噛み合っている。ワンウェイクラッチ98は、回転軸90の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸90からギア96に伝達せず、かつギア96の第2方向R2(図4参照)の回転をギア96から回転軸90に伝達する。なお、回転軸90およびギア96がともに第2方向R2(図4参照)に回転しかつ回転軸90の回転速度がギア96の回転速度よりも大きい場合には、ワンウェイクラッチ98は、ギア96の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸90に伝達しない。
【0044】
ベアリング94よりも右側において回転軸90と同軸状にギア100が設けられる。ギア100は、回転軸90と一体的に回転するように回転軸90に取り付けられる。また、ギア100は、ギア86と噛み合っている。これにより、ギア100は、回転軸90が回転することによって、あるいはギア86から回転が伝達されることによって回転する。
【0045】
変速装置44においては、クラッチ部C1のみが接続されている場合(変速装置44のギアポジションが1速の場合)には、クランクジャーナル60dの回転がクラッチ部C1およびギア78を介してギア96に伝達される。それにより、ギア96が第2方向R2(図4参照)に回転する。上述のように、ワンウェイクラッチ98は、ギア96の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸90に伝達するので、ギア96が第2方向R2(図4参照)に回転することによって回転軸90が第2方向R2(図4参照)に回転する。それにより、ギア100が第2方向R2(図4参照)に回転する。
【0046】
一方、クラッチ部C1およびクラッチ部C2がともに接続されている場合(変速装置44のギアポジションが2速以上の場合)には、クランクジャーナル60dの回転は、ギア78に伝達されるとともに、クラッチ部C2を介してギア86に伝達される。それにより、ギア86は、ギア78と同じ回転速度で第1方向R1(図4参照)に回転する。ギア100はギア86と噛み合っているので、ギア86が第1方向R1(図4参照)に回転することによってギア100および回転軸90が第2方向R2(図4参照)に回転する。ここで、変速装置44においては、ギア86およびギア100のギア比(減速比)は、ギア78およびギア96のギア比に比べて小さく設定される。そのため、ギア86から伝達される回転によってギア100が回転する場合、ギア100および回転軸90の回転速度はギア96の回転速度よりも大きくなる。上述したように、回転軸90の回転速度がギア96の回転速度よりも大きい場合には、ワンウェイクラッチ98は、ギア96の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸90に伝達しない。したがって、クラッチ部C1およびクラッチ部C2がともに接続されている場合(変速装置44のギアポジションが2速以上の場合)には、ギア96は空転する。
【0047】
図2および図4を参照して、回転軸90の後方斜め上方には、回転軸102が回転軸90に対して平行に設けられる。図2を参照して、回転軸102の右端部は、ベアリング104を介してケーシング46に回転可能に支持され、回転軸102の左端部は、ベアリング106を介してケーシング46に回転可能に支持される。
【0048】
図5は、回転軸102の周辺の構造を示す断面図解図である。
図5を参照して、回転軸102の内部には、オイル通路102a,102bが形成される。オイル通路102aは、回転軸102の左端面および回転軸102の外周面において開口し、オイル通路102bは、回転軸102の右端面および回転軸102の外周面において開口する。
【0049】
ベアリング104よりも左側において、回転軸102と同軸状にギア108が設けられる。ギア108は、回転軸102に対して回転自在になるように、たとえばブッシュまたはカラー等を介して回転軸102に取り付けられる。
【0050】
ギア108よりも左側において、回転軸102と同軸状に第2クラッチユニット110が設けられる。第2クラッチユニット110は、円筒状のクラッチハウジング112、クラッチハウジング112の内側に設けられるインナー部材114、クラッチハウジング112よりも左側に設けられる円筒状のクラッチハウジング116、クラッチハウジング116の内側に設けられるインナー部材118、およびインナー部材114とインナー部材118との間に設けられる押圧部120を含む。
【0051】
ギア108は、クラッチハウジング112の右端部に取り付けられる。クラッチハウジング112の左端部には、複数の環状のフリクションディスク122が取り付けられる。ギア108、クラッチハウジング112および複数のフリクションディスク122は一体的に回転する。
【0052】
インナー部材114は、回転軸102と一体的に回転するように回転軸102に取り付けられる。インナー部材114の外周部には、複数の環状のクラッチディスク124が取り付けられる。複数の環状のフリクションディスク122と複数のクラッチディスク124とは、交互に配置される。
【0053】
クラッチハウジング116の右端部には、複数の環状のフリクションディスク126が取り付けられ、クラッチハウジング116の左端部には、ギア128が取り付けられる。ギア128は、回転軸102に対して回転自在になるように、たとえばブッシュまたはカラー等を介して回転軸102に取り付けられる。クラッチハウジング116、複数のクラッチディスク126およびギア128は一体的に回転する。
【0054】
インナー部材118は、回転軸102と一体的に回転するように回転軸102に取り付けられる。インナー部材118の外周部には、複数の環状のクラッチディスク130が取り付けられる。複数のフリクションディスク126と複数のクラッチディスク130とは、交互に配置される。
【0055】
押圧部120は、ガイド部材120a、プレッシャープレート120bおよびプレッシャープレート120cを含む。ガイド部材120aは、回転軸102と同軸状に回転軸102の外周面に設けられる。プレッシャープレート120bは、インナー部材114とガイド部材120aとの間においてガイド部材120aに対して摺動できるように設けられる。プレッシャープレート120cは、インナー部材118とガイド部材120aとの間においてガイド部材120aに対して摺動できるように設けられる。
【0056】
ガイド部材120aとプレッシャープレート120bとによって油室120dが形成され、ガイド部材120aとプレッシャープレート120cとによって油室120eが形成される。油室120dはオイル通路102bに連通し、油室120eはオイル通路102aに連通している。プレッシャープレート120bは、プレッシャープレート120bの板厚方向(この実施形態では左右方向)に貫通しかつ油室120dに連通するリーク孔120fを有する。プレッシャープレート120cは、プレッシャープレート120cの板厚方向(この実施形態では左右方向)に貫通しかつ油室120eに連通するリーク孔120gを有する。
【0057】
インナー部材114とプレッシャープレート120bとの間には、複数の付勢部材121a(図5においては、1つの付勢部材121aのみ図示)が設けられる。付勢部材121aは、たとえばコイルばねからなる。プレッシャープレート120bは、複数の付勢部材121aによってガイド部材120a側(この実施形態では左側)に向かって付勢される。
【0058】
インナー部材118とプレッシャープレート120cとの間には、複数の付勢部材121b(図5においては、1つの付勢部材121bのみ図示)が設けられる。付勢部材121bは、たとえばコイルばねからなる。プレッシャープレート120cは、複数の付勢部材121bによってガイド部材120a側(この実施形態では右側)に向かって付勢される。
【0059】
ギア128の左側において回転軸102と同軸状に、ギア132が設けられる。ギア132は、回転軸102と一体的に回転するように回転軸102に取り付けられる。ギア132の右端部には、ギア132と一体的に回転するようにギア134が取り付けられる。ギア134は、ギア100(図2および図3参照)と噛み合っている。したがって、ギア134は、ギア100から伝達される回転に基づいて第1方向R1(図4参照)に回転する。これにより、ギア132および回転軸102が第1方向R1(図4参照)に回転する。
【0060】
この実施形態では、クラッチハウジング116、インナー部材118、押圧部120、複数のフリクションディスク126および複数のクラッチディスク130が油圧式のクラッチ部C3として機能し、クラッチハウジング112、インナー部材114、押圧部120、複数のフリクションディスク122および複数のクラッチディスク124が油圧式のクラッチ部C4として機能する。
【0061】
クラッチ部C3では、後述するオイルパン190から、ケーシング46に形成されたオイル通路136および回転軸102のオイル通路102aを介して押圧部120の油室120eにオイルが供給される。これにより、プレッシャープレート120cが左方向に移動し、複数のフリクションディスク126がプレッシャープレート120cによって複数のクラッチディスク130に押し付けられる。その結果、回転軸102の第1方向R1(図4参照)の回転が、インナー部材118、複数のクラッチディスク130および複数のフリクションディスク126を介してクラッチハウジング116に伝達され、クラッチハウジング116およびギア128が第1方向R1(図4参照)に回転する。
【0062】
この実施形態では、上述したように、プレッシャープレート120cは複数の付勢部材121bによって右方向に付勢されている。また、油室120eはリーク孔120gに連通しているので、油室120e内のオイルの一部はリーク孔120gから排出される。したがって、オイル通路102aから油室120eへのオイル供給が停止されると、油室120e内のオイル量が減少し、プレッシャープレート120cが右側に移動する。その結果、複数のフリクションディスク126と複数のクラッチディスク130との接触状態が解除され、インナー部材118からクラッチハウジング116への回転の伝達が遮断される。クラッチ部C3へのオイルの供給経路については後述する。この実施形態では、クラッチ部C3が第1油圧クラッチ部に相当する。
【0063】
クラッチ部C4では、後述するオイルパン190から、ケーシング46に形成されたオイル通路138および回転軸102のオイル通路102bを介して押圧部120の油室120dにオイルが供給される。これにより、プレッシャープレート120bが右方向に移動し、複数のフリクションディスク122がプレッシャープレート120bによって複数のクラッチディスク124に押し付けられる。その結果、回転軸102の第1方向R1(図4参照)の回転が、インナー部材114、複数のクラッチディスク124および複数のフリクションディスク122を介してクラッチハウジング112に伝達され、クラッチハウジング112およびギア108が第1方向R1(図4参照)に回転する。
【0064】
この実施形態では、上述したように、プレッシャープレート120bは複数の付勢部材121aによって左方向に付勢されている。また、油室120dはリーク孔120fに連通しているので、油室120d内のオイルの一部はリーク孔120fから排出される。したがって、オイル通路102bから油室120dへのオイル供給が停止されると、油室120d内のオイル量が減少し、プレッシャープレート120bが左側に移動する。その結果、複数のフリクションディスク122と複数のクラッチディスク124との接触状態が解除され、インナー部材114からクラッチハウジング112への回転の伝達が遮断される。この実施形態では、クラッチ部C4が第2油圧クラッチ部に相当する。
【0065】
なお、インナー部材114、インナー部材118および押圧部120の構成としては公知の種々の油圧式クラッチの構成を用いることができるので、インナー部材114、インナー部材118および押圧部120の構成の詳細な説明は省略する。
【0066】
以下においては、複数のフリクションディスク126と複数のクラッチディスク130とが接触しかつ略同一の回転速度で一体的に回転している状態をクラッチ部C3が接続されているといい、複数のフリクションディスク126と複数のクラッチディスク130とが互いに対して摺動しつつ回転している状態をクラッチ部C3が半クラッチ状態であるといい、複数のフリクションディスク126と複数のクラッチディスク130とが接触していない状態をクラッチ部C3が切断されているという。同様に、複数のフリクションディスク122と複数のクラッチディスク124とが接触しかつ略同一の回転速度で一体的に回転している状態をクラッチ部C4が接続されているといい、複数のフリクションディスク122と複数のクラッチディスク124とが互いに対して摺動しつつ回転している状態をクラッチ部C4が半クラッチ状態であるといい、複数のフリクションディスク122と複数のクラッチディスク124とが接触していない状態をクラッチ部C4が切断されているという。なお、変速装置44では、クラッチ部C3は3速用のクラッチとして機能し、クラッチ部C4は4速用のクラッチとして機能する。
【0067】
図2および図4を参照して、ケーシング46内において回転軸102の後方斜め下方には、回転軸140が回転軸102に対して平行に設けられる。図2を参照して、回転軸140の右端部は、ベアリング142を介してケーシング46に回転可能に支持され、回転軸140の左端部は、ベアリング144を介してケーシング46に回転可能に支持される。
【0068】
図2および図3を参照して、回転軸140の左右方向における略中心部の外周面には、ギア歯146が設けられる。ギア歯146よりも左側において回転軸140と同軸状に、ギア148が設けられる。ギア148は、回転軸140と一体的に回転するように回転軸140に取り付けられる。ギア140は、ギア128と噛み合っている。したがって、クラッチ部C3が接続されている場合には、回転軸102の第1方向R1(図4参照)の回転は、クラッチ部C3およびギア128を介してギア148に伝達される。これにより、ギア148および回転軸140が第2方向R2(図4参照)に回転する。
【0069】
ギア歯146よりも右側において回転軸140と同軸状に、ギア150が設けられる。ギア150は、回転軸140と一体的に回転するように回転軸140に取り付けられる。ギア150は、ギア108と噛み合っている。したがって、クラッチ部C4が接続されている場合には、回転軸102の第1方向R1(図4参照)の回転は、クラッチ部C4およびギア108を介してギア150に伝達される。これにより、ギア150および回転軸140が第2方向R2(図4参照)に回転する。なお、変速装置44では、クラッチ部C3が接続されている場合には、クラッチ部C4は接続されない。また、クラッチ部C4が接続されている場合には、クラッチ部C3は接続されない。
【0070】
ギア148とベアリング144との間において回転軸140と同軸状に、ギア152が設けられる。ギア152は、ギア132と噛み合っている。ギア152は、ワンウェイクラッチ154を介して回転軸140に取り付けられる。ワンウェイクラッチ154は、回転軸140の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸140からギア152に伝達せず、かつギア152の第2方向R2(図4参照)の回転をギア152から回転軸140に伝達する。なお、回転軸140およびギア152がともに第2方向R2(図4参照)に回転しかつ回転軸140の回転速度がギア152の回転速度よりも大きい場合には、ワンウェイクラッチ154は、ギア152の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸140に伝達しない。
【0071】
変速装置44においては、クラッチ部C3およびクラッチ部C4がともに切断されている場合(ギアポジションが1速または2速の場合)には、ギア100の第2方向R2(図4参照)の回転が、ギア134およびギア132を介してギア152に伝達される。それにより、ギア152が第2方向R2(図4参照)に回転する。上述のように、ワンウェイクラッチ154はギア152の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸140に伝達するので、ギア152が第2方向R2(図4参照)に回転することによって回転軸140が第2方向R2(図4参照)に回転する。
【0072】
クラッチ部C3が接続されかつクラッチ部C4が切断されている場合(ギアポジションが3速の場合)には、ギア100の回転は、ギア134およびギア132を介してギア152に伝達されるとともに、ギア134、ギア132、回転軸102、クラッチ部C3およびギア128を介してギア148に伝達される。それにより、ギア148および回転軸140が第2方向R2(図4参照)に回転する。ここで、変速装置44においては、ギア128およびギア148のギア比(減速比)は、ギア132およびギア152のギア比に比べて小さく設定される。そのため、ギア148および回転軸140の回転速度は、ギア152の回転速度よりも大きくなる。上述したように、回転軸140の回転速度がギア152の回転速度よりも大きい場合には、ワンウェイクラッチ154は、ギア152の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸140に伝達しない。したがって、変速装置44のギアポジションが3速の場合には、ギア152は空転する。
【0073】
クラッチ部C4が接続されかつクラッチ部C3が切断されている場合(ギアポジションが4速の場合)には、ギア100の回転は、ギア134およびギア132を介してギア152に伝達されるとともに、ギア134、ギア132、回転軸102、クラッチ部C4およびギア108を介してギア150に伝達される。それにより、ギア150および回転軸140が第2方向R2(図4参照)に回転する。ここで、変速装置44においては、ギア108およびギア150のギア比(減速比)は、ギア132およびギア152のギア比に比べて小さく設定される。そのため、ギア150および回転軸140の回転速度は、ギア152の回転速度よりも大きくなる。上述したように、回転軸140の回転速度がギア152の回転速度よりも大きい場合には、ワンウェイクラッチ154は、ギア152の第2方向R2(図4参照)の回転を回転軸140に伝達しない。したがって、変速装置44のギアポジションが3速の場合には、ギア152は空転する。なお、ギア108およびギア150のギア比(減速比)は、ギア128およびギア148のギア比に比べて小さく設定される。したがって、クラッチ部C4が接続されている場合の回転軸140の回転速度は、クラッチ部C3が接続されている場合の回転軸140の回転速度に比べて大きくなる。
【0074】
図2および図4を参照して、ケーシング46内において回転軸140よりも後方には、回転軸156が回転軸140に対して平行に設けられる。図2を参照して、回転軸156の右端部は、ベアリング158を介してケーシング46に回転可能に支持され、回転軸156の左端部は、ベアリング160を介してケーシング46に回転可能に支持される。
【0075】
図2および図3を参照して、ベアリング158とベアリング160との間において回転軸156と同軸状に、ギア162およびギア164が設けられる。ギア162およびギア164は、回転軸156と一体的に回転するように回転軸156に取り付けられる。ギア162は、回転軸140のギア歯146と噛み合っている。したがって、回転軸140の回転は、ギア歯146を介してギア162に伝達される。それにより、ギア162、回転軸156およびギア164が第1方向R1(図4参照)に回転する。
【0076】
図2および図4を参照して、ケーシング46内において回転軸156よりも後方には、回転軸166が回転軸156に対して平行に設けられる。図2を参照して、回転軸166の右端部は、ベアリング168を介してケーシング46に回転可能に支持され、166の左端部は、ベアリング170を介してケーシング46に回転可能に支持される。
【0077】
図2および図3を参照して、ベアリング168とベアリング170との間において回転軸166と同軸状に、ギア172が設けられる。ギア172は、回転軸166と一体的に回転するように回転軸166に取り付けられる。ギア172は、ギア164と噛み合っている。したがって、回転軸156の回転は、ギア164を介してギア172に伝達される。それにより、ギア172および回転軸166が第2方向R2(図4参照)に回転する。
【0078】
図2および図4を参照して、出力軸36は、回転軸166よりも後方において回転軸166に対して平行に設けられる。図2を参照して、出力軸36は、ベアリング174およびベアリング176を介してケーシング46に回転可能に支持される。出力軸36は、ケーシング46から右側に突出するように設けられる。ケーシング46内において出力軸36と同軸状に、ギア178が設けられる。ギア178は、出力軸36と一体的に回転するように出力軸36に取り付けられる。出力軸36の右端部(図示せず)には、出力軸36と一体的に回転するように後輪34(図1参照)が取り付けられる。ギア178は、ギア172と噛み合っている。したがって、ギア172の回転は、ギア178を介して出力軸36に伝達される。それにより、出力軸36および後輪34(図1参照)が第1方向R1(図4参照)に回転する。その結果、スクータ10(図1参照)が前進する。
【0079】
次に、変速装置44におけるクランクジャーナル60dから出力軸36への回転の伝達経路について図3を参照しつつ簡単に説明する。
まず、クランクジャーナル60d(クランク軸60)の回転速度が所定の速度に到達することによってクラッチ部C1が接続され、変速装置44のギアポジションが1速に設定される。このとき、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4は切断されている。したがって、クランクジャーナル60dの回転は、クラッチ部C1、ギア78、ギア96、ワンウェイクラッチ98、回転軸90、ギア100、ギア134、ギア132、ギア152、ワンウェイクラッチ154、回転軸140、ギア歯146、ギア162、回転軸156、ギア164、ギア172およびギア178を介して出力軸36に伝達される。
【0080】
次に、クラッチ部C2が接続されることによって変速装置44のギアポジションが2速に設定される。このとき、クラッチ部C1は接続されているが、クラッチ部C3およびクラッチ部C4は切断されている。したがって、クランクジャーナル60dの回転は、クラッチ部C1、クラッチ部C2、ギア86、ギア100、ギア134、ギア132、ギア152、ワンウェイクラッチ154、回転軸140、ギア歯146、ギア162、回転軸156、ギア164、ギア172およびギア178を介して出力軸36に伝達される。
【0081】
次に、クラッチ部C3が接続されることによって変速装置44のギアポジションが3速に設定される。このとき、クラッチ部C1およびクラッチ部C2は接続されているが、クラッチ部C4は切断されている。したがって、クランクジャーナル60dの回転は、クラッチ部C1、クラッチ部C2、ギア86、ギア100、ギア134、ギア132、回転軸102、クラッチ部C3、ギア128、ギア148、回転軸140、ギア歯146、ギア162、回転軸156、ギア164、ギア172およびギア178を介して出力軸36に伝達される。
【0082】
次に、クラッチ部C4が接続されることによって変速装置44のギアポジションが4速に設定される。このとき、クラッチ部C1およびクラッチ部C2は接続されているが、クラッチ部C3は切断されている。したがって、クランクジャーナル60dの回転は、クラッチ部C1、クラッチ部C2、ギア86、ギア100、ギア134、ギア132、回転軸102、クラッチ部C4、ギア108、ギア150、回転軸140、ギア歯146、ギア162、回転軸156、ギア164、ギア172およびギア178を介して出力軸36に伝達される。
【0083】
次に、クラッチ部C2の油室77c、クラッチ部C3の油室120eおよびクラッチ部C4の油室120dへのオイルの供給経路について詳細に説明する。なお、以下の説明では、油室77cにオイルが供給されることをクラッチ部C2にオイルが供給されるといい、油室120eにオイルが供給されることをクラッチ部C3にオイルが供給されるといい、油室120dにオイルが供給されることをクラッチ部C4にオイルが供給されるという。
【0084】
図6は、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4へのオイルの供給経路を説明するための図であり、(a)は図5のA−A線断面を示す図であり、(b)は図5のB−B線断面を示す図である。
【0085】
図5を参照して、第2クラッチユニット110の下方においてケーシング46のケースシング本体46aには、断面円形の空洞部180が設けられる。図5および図6を参照して、第2クラッチユニット110(図5参照)の下方においてケーシング46のカバー部材46bには、空洞部180(図5参照)に連通しかつ空洞部180よりも大きい直径を有する断面円形の空洞部182が設けられる。
【0086】
空洞部180に連通するように、ケーシング46のケースシング本体46aにオイル通路184が設けられる。オイル通路184は、オイルポンプ186およびストレーナ188を介してオイルパン190に連通する。オイルパン190はケーシング46内に設けられ、変速装置44に供給されるオイルを貯留する。オイルパン190内のオイルは、オイルポンプ186が作動することによってストレーナ188を介してオイル通路184に導かれる。この実施形態では、オイルパン190がオイル源に相当し、オイル通路184が第3オイル通路に相当する。なお、オイルポンプ186、ストレーナ188およびオイルパン190としては、公知の種々のオイルポンプ、ストレーナおよびオイルパンを用いることができる。したがって、オイルポンプ186、ストレーナ188およびオイルパン190の詳細な説明は省略する。
【0087】
図5および図6(a)を参照して、オイル通路136およびオイル通路138は空洞部182に連通する。図6(a)を参照して、この実施形態では、オイル通路136の空洞部182側の開口端136aとオイル通路138の空洞部182側の開口端138aとが空洞部182を間に挟んで互いに対向するように、オイル通路136およびオイル通路138が形成される。この実施形態では、オイル通路136が第1オイル通路に相当し、オイル通路138が第2オイル通路に相当する。
【0088】
図5および図6(b)を参照して、オイル通路88は、オイル通路136,138が空洞部182に連通する位置よりも左側において空洞部182に連通する。空洞部182に連通するように、ケーシング46のカバー部材46bにオイル通路192が設けられる。オイル通路192は、オイル通路136,138が空洞部182に連通する位置よりも左側において空洞部182に連通する。図6(b)を参照して、この実施形態では、オイル通路88の空洞部182側の開口端88aとオイル通路192の空洞部182側の開口端192aとが空洞部182を間に挟んで互いに対向するように、オイル通路88およびオイル通路192が形成される。
【0089】
図5を参照して、オイル通路192内のオイルの圧力を調整できるように、空洞部182の下方においてカバー部材46bにリリーフバルブ193が設けられる。リリーフバルブ193としては、公知の種々のリリーフバルブを用いることができるので、リリーフバルブ193の詳細な説明は省略する。
【0090】
空洞部180および空洞部182内にバルブ部材194が回動可能に設けられる。言い換えると、バルブ部材194は、オイル通路88とオイル通路136とオイル通路138とオイル通路184とオイル通路192との間に回動可能に設けられる。
【0091】
図7は、バルブ部材194を示す図であり、(a)はバルブ部材194を示す正面図(図5においてバルブ部材194を左側から見た図)であり、(b)はバルブ部材194を示す側面図であり、(c)はバルブ部材194を示す背面図(図5においてバルブ部材194を右側から見た図)であり、(d)は(a)のD−D線断面を示す図である。
【0092】
図7を参照して、バルブ部材194は、略円柱形状を有し、本体部196および連結部198を含む。本体部196は、円筒状の第1部200、第1部200よりも小さい直径を有する円筒状の第2部202、および第1部200よりも小さい直径を有する円柱状の第3部204を含む。
【0093】
図7(a)〜(c)を参照して、第1部200は、バルブ部材194の回動軸194aに対して平行な方向に延びる外周面200a、外周面200aの一端部(この実施形態では右端部)から第1部200の軸心(回動軸194a)に向かって延びる端面200b、および外周面200aの他端部(この実施形態では左端部)から第1部200の軸心に向かって延びる端面200cを有する。
【0094】
第2部202は、第1部200の端面200bから回動軸194aに対して平行な方向(この実施形態では右方向)に延びる外周面202aおよび外周面202aの一端部(この実施形態では右端部)から第2部202の軸心(回動軸194a)に向かって延びる端面202bを有する。
【0095】
第3部204は、第1部200の端面200cから回動軸194aに対して平行な方向(この実施形態では左方向)に延びる外周面204aおよび外周面204aの一端部(この実施形態では左端部)から第3部204の軸心(回動軸194a)に向かって延びる端面204bを有する。この実施形態では、端面200b、端面200c、端面202bおよび端面204bは、バルブ部材194の回動軸194aに対して垂直に設けられる。
【0096】
図6および図7を参照して、バルブ部材194は、バルブ部材194の内部を回動軸194aに対して平行な方向に延びるオイル通路206,208、およびオイル通路206から回動軸194aに直交する方向に延びるオイル通路210,212,214,216,218,220(図6参照)を有する。オイル通路206は、回動軸194aに対して平行な方向(この実施形態では右方向)に向かって開口し、オイル通路210,212,214,216,218,220は、回動軸194aに直交する方向(バルブ部材194の径方向)に向かって開口する。より具体的には、オイル通路206は、第2部202(図7(c)参照)の端面202b(図7(c)参照)において開口し、オイル通路210,212,214,216,218,220は、第1部200(図6参照)の外周面200a(図6参照)において開口する。オイル通路208は、第1部200を貫通するように形成される。
【0097】
図7(b)〜(d)を参照して、この実施形態では、オイル通路206は、回動軸194a上を通りかつ第1部200と第3部204との境界部から第2部202の端面202bに向かって延びるように形成される。また、この実施形態では、オイル通路206は、回動軸194a上において開口する。
【0098】
この実施形態では、オイル通路206が第4オイル通路に相当し、オイル通路210が第5オイル通路に相当し、オイル通路212が第6オイル通路に相当し、オイル通路88が第7オイル通路に相当し、オイル通路214が第8オイル通路に相当する。
【0099】
図8は、バルブ部材194の第1部200を示す展開図である。
【0100】
図6(a)、図7(b)および図8を参照して、オイル通路210およびオイル通路212(図6(a)および図8参照)は、回動軸194a(図7(b)参照)に直交する仮想的な第1平面222(図7(b)および図8参照)上に形成される。この実施形態では、回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路210の中心および回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路212の中心が第1平面222上に位置するように、オイル通路210,212が形成される。
【0101】
図6(b)および図7(b)を参照して、オイル通路214、オイル通路216、オイル通路218(図6(b)および図8参照)およびオイル通路220(図6(b)および図8参照)は、回動軸194a(図7(b)参照)に直交する仮想的な第2平面224(図7(b)および図8参照)上に形成される。図7(b)を参照して、第2平面224は、回動軸194aに対して平行な方向において第1平面222から離れている。この実施形態では、回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路214の中心、回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路216の中心、回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路218の中心、および回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路220の中心が第2平面224上に位置するように、オイル通路214,216,218,220が形成される。なお、第1平面222は図5のA−A線上に位置し、第2平面224は図5のB−B線上に位置する。
【0102】
図6(a)および図8を参照して、オイル通路210の開口端210aは、第1部200の周方向に延びるように長尺状に形成される。同様に、オイル通路212の開口端212aは、第1部200の周方向に延びるように長尺状に形成される。図6(b)および図8を参照して、オイル通路214の開口端214aは、第1部200の周方向に延びるように長尺状に形成される。オイル通路216の開口端216a、オイル通路218の開口端218aおよびオイル通路220の開口端220aは、それぞれ円形状に形成される。
【0103】
図8を参照して、第1部200の周方向において、開口端210aの長さと開口端212aの長さは等しい。第1部200の周方向において、開口端210aの長さおよび開口端212aの長さは、開口端214aの長さよりも短い。第1部200の周方向において、開口端210aの長さおよび開口端212aの長さは、開口端216aの長さ、開口端218aの長さおよび開口端220aの長さよりも長い。
【0104】
図5を参照して、空洞部180および空洞部182にバルブ部材194が挿入される。より具体的には、第2部202が空洞部180に挿入され、第1部200および第3部204が空洞部182に挿入される。オイル通路206の開口端206aは、オイル通路184内に位置する。これにより、オイル通路184とオイル通路206とが連通される。第1部200の直径は、第1部200の外周面200a(図7参照)とカバー部材46bとの間に隙間がほとんど形成されないように、空洞部182の直径よりも僅かに小さい。第2部202の直径は、空洞部180の直径よりも小さく、第3部204の直径は、空洞部182の直径よりも小さい。第2部202は、支持部材226を介してケーシング46(ケースシング本体46a)に回動可能に支持され、第3部204は、支持部材228を介してケーシング46(カバー部材46b)に回動可能に支持される。これにより、バルブ部材194がケーシング46に回動可能に支持される。この実施形態では、支持部材226および支持部材228はそれぞれオイルシールを含む。
【0105】
連結部198には、連結機構(図示せず)を介してモータ(図示せず)が連結される。上記モータは、たとえば、スロットル開度および車速等に基づいて制御部(図示せず)によって制御される。これにより、バルブ部材194が回動し、オイル通路184がオイル通路206、オイル通路210、オイル通路212およびオイル通路214を介してオイル通路88、オイル通路136およびオイル通路138に選択的に連通される。その結果、オイル通路88、オイル通路136およびオイル通路138に選択的にオイルが導かれ、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4に選択的にオイルが供給される。これにより、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4が選択的に接続および切断される。すなわち、スクータ10の走行状態に応じて、変速装置44が適切なギアポジションに切り替えられる。
【0106】
以下、変速装置44のギアポジションを1速から4速に切り替える際の、クラッチ部C2,C3,C4へのオイルの供給経路について詳細に説明する。
【0107】
図9は、オイル通路88の開口端88a、オイル通路136の開口端136a、オイル通路138の開口端138aおよびオイル通路192の開口端192aとバルブ部材194との関係を示す図である。なお、図9では、図面が煩雑になることを避けるために、バルブ部材194については、第1部200のみを示す。また、第1部200は展開図として示す。図9において(a)には、開口端88a、開口端136a、開口端138aおよび開口端192aの位置関係を示し、(b)〜(h)には、変速装置44のギアポジションが1速から4速に切り替えられるときの開口端88a,136a,138a,192aとバルブ部材194との関係を示す。
【0108】
なお、以下の説明では、オイル通路210の開口端210aがケーシング46によって塞がれている状態(たとえば、図6(a)に示す状態)をオイル通路210が閉じているという。同様に、開口端212a、開口端214a、開口端216a、開口端218aおよび開口端220aがケーシング46によって塞がれている状態(たとえば、図6(a)および図6(b)に示す状態)を、それぞれオイル通路212、オイル通路214、オイル通路216、オイル通路218およびオイル通路220が閉じているという。
【0109】
図6および図9を参照して、変速装置44のギアポジションが1速の場合には、オイル通路210,212,214,216,218,220はそれぞれ閉じている。この場合、オイル通路184(図5参照)からオイル通路88、オイル通路136およびオイル通路138へのオイルの流れはバルブ部材194によって遮断される。したがって、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4にはオイルが供給されず、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4は接続されない。なお、以下の説明では、変速装置44のギアポジションが1速のときのオイル通路184およびバルブ部材194内のオイルの圧力を第1圧力とする。第1圧力は、環境(オイルの温度等)の変化等によって多少変動する値である。
【0110】
バルブ部材194が図9の(b)に示す状態(変速装置44のギアポジションが1速のときの状態)から第1方向R1に25°回動することによって、図9の(c)に示すように、第1部200の径方向において開口端214aと開口端88aとが重なり、開口端216aと開口端192aとが重なる。すなわち、オイル通路214がオイル通路88に対して開放され、オイル通路216がオイル通路192に対して開放される。これにより、オイル通路214とオイル通路88とが連通し、オイル通路216とオイル通路192とが連通する。したがって、オイル通路184(図5参照)のオイルが、オイル通路206およびオイル通路214を介してオイル通路88に導かれ、オイル通路206およびオイル通路216を介してオイル通路192に導かれる。
【0111】
ここで、図5を参照して、オイル通路192内のオイルの圧力は、リリーフバルブ193によって調整される。より具体的には、リリーフバルブ193は、オイル通路192内のオイルの圧力を上記第1圧力よりも低い第2圧力に調整する。なお、第2圧力は、環境(オイルの温度等)の変化等によって多少変動する値である。また、第2圧力は、0よりも大きい値である。バルブ部材194が図9の(c)に示す状態のときには、オイル通路192とオイル通路88とは、オイル通路216、オイル通路206(図5参照)およびオイル通路214を介して連通している。したがって、オイル通路88を介してクラッチ部C2に導かれるオイルの圧力も、第1圧力よりも低い第2圧力になる。ここで、この実施形態では、クラッチ部C2は、第1圧力のオイルが供給された場合に接続状態になり、第2圧力のオイルが供給された場合に半クラッチ状態になるように構成されている。したがって、バルブ部材194が図9の(c)に示す状態のときには、クラッチ部C2は半クラッチ状態になる。なお、この実施形態では、クラッチ部C3およびクラッチ部C4も同様に、第1圧力のオイルが供給された場合に接続状態になり、第2圧力のオイルが供給された場合に半クラッチ状態になるようにそれぞれ構成されている。
【0112】
次に、バルブ部材194が図9の(c)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図9の(d)に示すように、オイル通路214(開口端214a)がオイル通路88(開口端88a)に対して開放された状態が維持されつつ、オイル通路216(開口端216a)が閉じられる。これにより、オイル通路216からオイル通路192(図5参照)およびリリーフバルブ193(図5参照)へのオイルの流れが遮断され、クラッチ部C2に導かれるオイルの圧力が第1圧力に上昇する。その結果、クラッチ部C2が完全に接続され、変速装置44のギアポジションの2速への切替が終了する。
【0113】
なお、バルブ部材194が図9の(b)および(c)に示す状態の場合には、オイル通路210およびオイル通路212は閉じられている。この場合、図5を参照して、オイル通路184からオイル通路136およびオイル通路138へのオイルの流れはバルブ部材194によって遮断される。したがって、クラッチ部C3およびクラッチ部C4にオイルは供給されず、クラッチ部C3およびクラッチ部C4は接続されない。
【0114】
次に、バルブ部材194が図9の(d)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図9の(e)に示すように、第1部200の径方向において開口端210aと開口端136aとが重なり、開口端218aと開口端192aとが重なる。すなわち、オイル通路210がオイル通路136に対して開放され、オイル通路218がオイル通路192に対して開放される。このとき、オイル通路214(開口端214a)がオイル通路88(開口端88a)に対して開放された状態は維持されている。したがって、オイル通路210とオイル通路136とが連通し、オイル通路214とオイル通路88とが連通し、オイル通路218とオイル通路192とが連通する。これにより、オイル通路184(図5参照)のオイルが、オイル通路206(図5参照)およびオイル通路214を介してオイル通路88に導かれ、オイル通路206およびオイル通路210を介してオイル通路136に導かれ、オイル通路206およびオイル通路218を介してオイル通路192に導かれる。
【0115】
上述したように、オイル通路192内のオイルの圧力は、リリーフバルブ193によって第2圧力に調整される。また、オイル通路192とオイル通路88とは、オイル通路218、オイル通路206(図5参照)およびオイル通路214を介して連通している。さらに、オイル通路192とオイル通路136とは、オイル通路218、オイル通路206およびオイル通路210を介して連通している。したがって、オイル通路88からクラッチ部C2(図5参照)に導かれるオイルの圧力およびオイル通路136からクラッチ部C3(図5参照)に導かれるオイルの圧力は、第2圧力になる。このため、クラッチ部C2およびクラッチ部C3はそれぞれ半クラッチ状態になる。
【0116】
次に、バルブ部材194が図9の(e)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図9の(f)に示すように、オイル通路214(開口端214a)がオイル通路88(開口端88a)に対して開放された状態およびオイル通路210(開口端210a)がオイル通路136(開口端136a)に対して開放された状態が維持されつつ、オイル通路218(開口端218a)が閉じられる。これにより、オイル通路218からオイル通路192(図5参照)およびリリーフバルブ193(図5参照)へのオイルの流れが遮断され、クラッチ部C2およびクラッチ部C3に導かれるオイルの圧力が第1圧力に上昇する。その結果、クラッチ部C2およびクラッチ部C3がそれぞれ完全に接続され、変速装置44のギアポジションの3速への切替が終了する。
【0117】
なお、バルブ部材194が図9の(e)および(f)に示す状態の場合には、オイル通路212は閉じられている。この場合、図5を参照して、オイル通路184からオイル通路138へのオイルの流れはバルブ部材194によって遮断される。したがって、クラッチ部C4にオイルは供給されず、クラッチ部C4は接続されない。
【0118】
次に、バルブ部材194が図9の(f)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図9の(g)に示すように、第1部200の径方向において開口端212aと開口端138aとが重なり、開口端220aと開口端192aとが重なる。すなわち、オイル通路212がオイル通路138に対して開放され、オイル通路220がオイル通路192に対して開放される。このとき、オイル通路214がオイル通路88に対して開放された状態は維持されるが、オイル通路210(開口端210a)は閉じられる。したがって、バルブ部材194が図9の(g)に示す状態の場合には、オイル通路212とオイル通路138とが連通し、オイル通路214とオイル通路88とが連通し、オイル通路220とオイル通路192とが連通する。一方、オイル通路210とオイル通路136とは連通していない。これにより、オイル通路184(図5参照)のオイルが、オイル通路206(図5参照)およびオイル通路214を介してオイル通路88に導かれ、オイル通路206およびオイル通路212を介してオイル通路138に導かれ、オイル通路206およびオイル通路220を介してオイル通路192に導かれる。また、オイル通路184(図5参照)からオイル通路136へのオイルの流れは、バルブ部材194によって遮断される。
【0119】
上述したように、オイル通路192内のオイルの圧力は、リリーフバルブ193によって第2圧力に調整される。また、オイル通路192とオイル通路88とは、オイル通路220、オイル通路206(図5参照)およびオイル通路214を介して連通している。さらに、オイル通路192とオイル通路138とは、オイル通路220、オイル通路206およびオイル通路212を介して連通している。したがって、オイル通路88からクラッチ部C2(図5参照)に導かれるオイルの圧力およびオイル通路138からクラッチ部C4(図5参照)に導かれるオイルの圧力は、第2圧力になる。このため、クラッチ部C2およびクラッチ部C4はそれぞれ半クラッチ状態になる。なお、オイル通路184(図5)からオイル通路136へのオイルの流れはバルブ部材194によって遮断されているので、クラッチ部C3にはオイルが供給されない。これにより、クラッチ部C3は切断される。
【0120】
次に、バルブ部材194が図9の(g)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図9の(h)に示すように、オイル通路214(開口端214a)がオイル通路88(開口端88a)に対して開放された状態およびオイル通路212(開口端212a)がオイル通路138(開口端138a)に対して開放された状態が維持されつつ、オイル通路220(開口端220a)が閉じられる。これにより、オイル通路220からオイル通路192(図5参照)およびリリーフバルブ193(図5参照)へのオイルの流れが遮断され、クラッチ部C2およびクラッチ部C4に導かれるオイルの圧力が第1圧力に上昇する。その結果、クラッチ部C2およびクラッチ部C4が完全に接続され、変速装置44のギアポジションの4速への切替が終了する。
【0121】
バルブ部材194とクラッチ部C1,C2,C3,C4との上述の関係(オイル通路210,212,214,216,218,220の開閉状態とクラッチ部C1,C2,C3,C4の接続状態との関係)を表1にまとめる。なお、表1において、「×」はバルブ部材194のオイル通路が閉じられていることを示し、「○」はバルブ部材194のオイル通路が開放されていることを示す。また、「C」は、クラッチ部が接続状態であることを示し、「HC」は、クラッチ部が半クラッチ状態であることを示し、「NC」は、クラッチ部が切断されている状態であることを示す。
【0122】
【表1】
【0123】
表1を参照して、上述したように、この実施形態では、バルブ部材194を回動させることによって、オイル通路214、オイル通路210およびオイル通路212を選択的に開閉することができる。これにより、クラッチ部C2、クラッチ部C3およびクラッチ部C4を選択的に接続および切断でき、変速装置44のギアポジションを切り替えることができる。
【0124】
また、変速装置44のギアポジションを1速から2速に切り替える際に、オイル通路216をオイル通路192(図5参照)に対して開放することによって、クラッチ部C2を半クラッチ状態にすることができる。同様に、変速装置44のギアポジションを2速から3速に切り替える際に、オイル通路218をオイル通路192に対して開放することによって、クラッチ部C2およびクラッチ部C3を半クラッチ状態にすることができる。また、変速装置44のギアポジションを3速から4速に切り替える際に、オイル通路220をオイル通路192に対して開放することによって、クラッチ部C2およびクラッチ部C4を半クラッチ状態にすることができる。これにより、変速装置44のギアポジションの切替を円滑に行うことができる。
【0125】
この実施形態では、変速装置44のギアポジションが1速のときのバルブ部材194の位置(図9の(b)参照)を基準位置とした場合に、以下に示す各位置が第1回動位置、第2回動位置および第3回動位置に相当する。すなわち、基準位置から第1角度(100°)回動したときのバルブ部材194の位置(図9の(f)参照)が第1回動位置に相当し、基準位置から第2角度(150°)回動したときのバルブ部材194の位置(図9の(h)参照)が第2回動位置に相当し、基準位置から第3角度(50°)回動したときのバルブ部材194の位置(図9の(d)参照)が第3回動位置に相当する。
【0126】
上述の構成を有する変速装置44では、クラッチ部C3にオイルを供給するためのオイル通路210およびクラッチ部C4にオイルを供給するためのオイル通路212が、バルブ部材194の回動軸194aに直交する仮想的な第1平面222上に形成される。この場合、クラッチ部C3,C4にオイルを供給するための2つのオイル通路が、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向において並ぶように形成される場合に比べて、バルブ部材194の長さ(回動軸194aに対して平行な方向の長さ)を短くすることができる。また、変速装置44においては、オイル通路206は、バルブ部材194の回動軸194aに対して平行な方向に延びかつその平行な方向に向かって開口し、オイル通路210およびオイル通路212は、回動軸194aに直交する方向に延びかつその直交する方向に向かって開口する。この場合、クラッチ部C3およびクラッチ部C4に供給されるオイルをバルブ部材194の内部に導くための開口部(開口端206a)と、クラッチ部C3およびクラッチ部C4に供給されるオイルをバルブ部材194の内部から送り出すための開口部(開口端210aおよび開口端212a)とが、同一方向に並んで配置されることがない。より具体的には、バルブ部材194の回動軸194aに対して平行な方向において開口端206a,210a,212aが並んで配置されることがなく、回動軸194aに直交する方向において開口端206a,210a,212aが並んで配置されることもない。これにより、回動軸194aに対して平行な方向におけるバルブ部材194の長さおよび回動軸194aに直交する方向におけるバルブ部材194の大きさを小さくできる。すなわち、バルブ部材194の軸方向の長さおよびバルブ部材194の太さ(バルブ部材194の径方向の大きさ)を小さくできる。その結果、変速装置44を小型に構成できる。
【0127】
また、変速装置44においては、オイル通路206は、バルブ部材194の回動軸194a上に形成されかつ回動軸194a上において開口する。この場合、オイル通路206を容易に形成できかつオイル通路184からオイル通路206にオイルを円滑に導くことができる。
【0128】
また、変速装置44においては、オイル通路214、オイル通路216、オイル通路218およびオイル通路220が、第1平面222から離れた第2平面224上に形成される。この場合、オイル通路210、オイル通路212、オイル通路214、オイル通路216、オイル通路218およびオイル通路220が密集し過ぎることを避けることができるので、バルブ部材194の構造を簡単にできる。
【0129】
上述の実施形態では、バルブ部材194は、制御部によって制御されるモータによって回動されているが、運転者の操作に基づいてバルブ部材194が回動されてもよい。この場合、運転者によって操作されるシフトレバーまたはシフトペダルが、バルブ部材194の連結部198に連結機構を介して連結される。
【0130】
上述の実施形態では、バルブ部材194の内部にオイルを導くためのオイル通路206は、バルブ部材194の回動軸194a上に形成されているが、バルブ部材の内部にオイルを導くためのオイル通路がバルブ部材の回動軸上に形状されなくてもよい。たとえば、図10に示すバルブ部材230のように、回動軸230aに対して平行な方向に延びる断面環状のオイル通路232が形成されてもよい。なお、図10において(a)は(b)のa−a線断面図であり、(b)は(a)のb−b線断面図である。また、図10に示すバルブ部材230が上述のバルブ部材194と異なるのは、オイル通路206の代わりにオイル通路232が設けられている点であり、バルブ部材230のオイル通路232以外の構成は、バルブ部材194の構成と等しい。
【0131】
上述の実施形態では、クラッチ部C4にオイルを供給するためのオイル通路として1つのオイル通路212がバルブ部材194に設けられているが、クラッチ部C4にオイルを供給するためにバルブ部材に設けられるオイル通路の数は1つに限定されない。たとえば、図11に示すバルブ部材234のように、クラッチ部C4にオイルを供給するためのオイル通路としてオイル通路236をさらに備えてもよい。
【0132】
図11は、上述の変速装置44においてバルブ部材194の代わりにバルブ部材234を設けた場合の、バルブ部材234と開口端88a,136a,138a,192aとの関係を示す。なお、オイル通路236以外のバルブ部材234の構成は、バルブ部材194の構成と等しい。したがって、オイル通路236以外のバルブ部材234の構成については説明を省略する。また、バルブ部材234からクラッチ部C2およびクラッチ部C3へのオイルの供給方法および供給経路は、バルブ部材194からクラッチ部C2およびクラッチ部C3へのオイルの供給方法および供給経路と同様である。したがって、クラッチ部C2およびクラッチ部C3へのオイルの供給方法および供給経路についての説明は省略する。また、変速装置のギアポジションが1速から2速に切り替えられるとき、およびクラッチ部C3が半クラッチ状態に設定されるときの開口端88a,136a,138a,192aとバルブ部材234との関係は、図9で説明した開口端88a,136a,138a,192aとバルブ部材194との関係と同様である。したがって、変速装置のギアポジションが1速から2速に切り替えられるとき、およびクラッチ部C3が半クラッチ状態に設定されるときのバルブ部材234の状態についての説明は省略する。
【0133】
図11を参照して、オイル通路236は、オイル通路210およびオイル通路212と同様に、第1平面222(図8参照)上に位置する。オイル通路236は、オイル通路216,218,220(図6参照)と同様に、オイル通路206(図6参照)から回動軸194aに直交する方向に延び、バルブ部材234の外周面において開口する。また、オイル通路236は、変速装置のギアポジションが3速に設定されているときにオイル通路138に対して開放されるように形成される。また、オイル通路236は、オイル通路236を流れるオイルの量がオイル通路212を流れるオイルの量よりも少なくなるように形成される。
【0134】
図12は、クラッチ部C4(図5参照)の油室120d内のオイルの圧力変化を示す図である。図12において、圧力p1は上述の第1圧力であり、圧力p2は上述の第2圧力である。また、時点t1は、バルブ部材234が図11の(e)に示す状態から図11の(f)に示す状態に移行した時点を示し、時点t2は、バルブ部材234が図11の(f)に示す状態から図11の(g)に示す状態に移行した時点を示し、時点t3は、油室120d内のオイルの圧力が第2圧力p2に達した時点を示す。また、時点t4は、バルブ部材234が図11の(g)に示す状態から図11の(h)に示す状態に移行した時点を示し、時点t5は、油室120d内のオイルの圧力が第1圧力p1に達した時点を示す。
【0135】
バルブ部材234を備えた変速装置では、バルブ部材234が図11の(e)に示す状態のとき(クラッチ部C3が半クラッチ状態のとき)には、オイル通路236の開口端およびオイル通路212の開口端212aは、ケーシング46(図5参照)によって塞がれる。したがって、バルブ部材194を備えた変速装置44と同様に、クラッチ部C3が半クラッチ状態のときには、クラッチ部C4にオイルは供給されない。
【0136】
次に、バルブ部材234が図11の(e)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、変速装置のギアポジションが3速に設定される。このとき、図11の(f)に示すように、バルブ部材234の径方向においてオイル通路236の開口端と開口端138aとが重なり、オイル通路236がオイル通路138に対して開放される。これにより、オイル通路236のオイルがオイル通路138を介して油室120dに供給される。その結果、図12を参照して、時点t1において油室120d内のオイルの圧力が上昇する。なお、この実施形態では、オイル通路236を流れるオイルの量は少ない。また、上述したように、油室120d内のオイルの一部は、リーク孔120f(図5参照)から排出される。したがって、オイル通路236から油室120dにオイルが供給されても、油室120d内のオイルの圧力は第2圧力p2までは上昇しない。また、上述したように、プレッシャープレート120b(図5参照)は複数の付勢部材121a(図5参照)によって左方向(フリクションディスク122とクラッチディスク124とが離れる方向)に付勢されている。したがって、オイル通路236から油室120dにオイルが供給されても、クラッチ部C4が切断された状態が維持される。
【0137】
次に、バルブ部材234が図11の(f)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図11の(g)に示すように、バルブ部材234の径方向において、開口端212aと開口端138aとが重なり、開口端220aと開口端192aとが重なる。すなわち、オイル通路212がオイル通路138に対して開放され、オイル通路220がオイル通路192に対して開放される。これにより、リリーフバルブ193(図5参照)によって第2圧力p2に調整されたオイルが、オイル通路212からオイル通路138を介して油室120dに供給される。その結果、図12に示すように、油室120d内のオイルの圧力は、時点t2において上昇し始め、時点t3において第2圧力p2になる。これにより、クラッチ部C4が半クラッチ状態になる。なお、このとき、オイル通路236の開口端はケーシング46によって塞がれる。
【0138】
その後、バルブ部材234が図11の(g)に示す状態から第1方向R1に25°回動することによって、図11の(h)に示すように、オイル通路212(開口端212a)がオイル通路138(開口端138a)に対して開放された状態が維持されつつ、オイル通路220(開口端220a)が閉じられる。これにより、バルブ部材234からオイル通路192(図5参照)およびリリーフバルブ193(図5参照)へのオイルの流れが遮断され、オイル通路212から油室120dへ供給されるオイルの圧力が上昇する。その結果、図12に示すように、油室120d内のオイルの圧力は、時点t4において上昇し始め、時点t5において第1圧力p1になる。これにより、クラッチ部C4が完全に接続される。
【0139】
ここで、バルブ部材234を備えた変速装置では、上述したように、ギアポジションが3速に設定されているときすなわちギアポジションの4速への切り替え動作が開始される前に、クラッチ部C4の油室120dに予めオイルが供給される。これにより、時点t2(ギアポジションの切り替え動作が開始された時点)から時点t3(油室120d内のオイルの圧力が第2圧力p2になる時点)までの時間を短くすることができる。すなわち、短時間でクラッチ部C4を半クラッチ状態にすることができる。これにより、変速装置のギアポジションが3速から4速に切り替えられる際に、スクータ10の運転者に空想感を与えることを防止できる。また、ギアポジションの3速から4速への切り替えを短時間で行うことができる。
【0140】
なお、図13に示すバルブ部材238のように、クラッチ部C2にオイルを供給するためのオイル通路240およびクラッチ部C3にオイルを供給するためのオイル通路242をさらに設けてもよい。バルブ部材238においては、オイル通路240は、第2平面224(図8参照)上に位置し、オイル通路242は、第1平面222(図8参照)上に位置する。また、オイル通路240,242は、オイル通路236(図11参照)と同様に、オイル通路206(図6参照)から回動軸194aに直交する方向に延び、バルブ部材238の外周面において開口する。また、オイル通路240は、変速装置のギアポジションが1速に設定されているとき(図13の(b)参照)にオイル通路88に対して開放されるように形成され、オイル通路242は、変速装置のギアポジションが2速に設定されているとき(図13の(d)参照)にオイル通路136に対して開放されるように形成される。また、オイル通路240は、オイル通路240を流れるオイルの量がオイル通路214を流れるオイルの量よりも少なくなるように形成され、オイル通路242は、オイル通路242を流れるオイルの量がオイル通路210を流れるオイルの量よりも少なくなるように形成される。
【0141】
バルブ部材238を備えた変速装置では、ギアポジションが1速に設定されているときに、オイル通路240からクラッチ部C2(図2参照)の油室77c(図2参照)に予めオイルを供給することができる。これにより、クラッチ部C2を短時間で半クラッチ状態にすることができる。また、ギアポジションが2速に設定されているときに、オイル通路242からクラッチ部C3(図5参照)の油室120e(図5参照)に予めオイルを供給することができる。これにより、クラッチ部C3を短時間で半クラッチ状態にすることができる。
【0142】
上述の実施形態では、オイルが供給されることによって接続されるクラッチ部C2,C3,C4を有する変速装置にこの発明を適用した場合について説明したが、この発明は、オイルが供給されることによって切断されるクラッチ部を有する変速装置にも適用できる。
【0143】
上述の実施形態では、1速用のクラッチ部として遠心式のクラッチ部C1が設けられた変速装置にこの発明を適用した場合ついて説明したが、この発明は、1速用のクラッチ部として油圧式のクラッチ部が設けられた変速装置にも適用できる。
【0144】
上述の実施形態では、4速のギアポジションを有する変速装置にこの発明を適用した場合について説明したが、この発明は、2速、3速または5速以上のギアポジションを有する変速装置にも適用できる。
【0145】
上述の実施形態では、回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路210の中心および回動軸194aに対して平行な方向におけるオイル通路212の中心がともに第1平面222上に位置しているが、オイル通路210,212の位置は上述の例に限定されない。たとえば、オイル通路210,212が第1平面222に交わっているのであれば、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向において、オイル通路210の中心が第1平面222よりも一方側に位置し、オイル通路212の中心が第1平面222よりも他方側に位置してもよい。すなわち、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向において、オイル通路210とオイル通路212とがずれて形成されてもよい。同様に、オイル通路214,216,218,220が第2平面224に交わっているのであれば、バルブ部材の回動軸に対して平行な方向において、オイル通路214,216,218,220のうちのいずれかのオイル通路が他のオイル通路に対してずれて形成されてもよい。
【0146】
上述の実施形態では、3速用のクラッチ部C3にオイルを供給するためのオイル通路210および4速用のクラッチ部C4にオイルを供給するためのオイル通路212が第1平面222上に形成され、2速用のクラッチ部C2にオイルを供給するためのオイル通路214が第2平面224上に形成されているが、オイル通路の位置は上述の例に限定されない。たとえば、2速用のクラッチ部にオイルを供給するためのオイル通路および3速用のクラッチ部にオイルを供給するためのオイル通路が第1平面222上に形成され、4速用のクラッチ部にオイルを供給するためのオイル通路が第2平面224上に形成されてもよい。この場合、2速用のクラッチ部が第1油圧クラッチ部に相当し、3速用のクラッチ部が第2油圧クラッチ部に相当し、4速用のクラッチ部が第3油圧クラッチ部に相当する。また、たとえば、2速用のクラッチ部にオイルを供給するためのオイル通路および4速用のクラッチ部にオイルを供給するためのオイル通路が第1平面222上に形成され、3速用のクラッチ部にオイルを供給するためのオイル通路が第2平面224上に形成されてもよい。この場合、2速用のクラッチ部が第1クラッチ部に相当し、4速用のクラッチ部が第2クラッチ部に相当し、3速用のクラッチ部が第3クラッチ部に相当する。
【0147】
上述の実施形態では、この発明に係る変速装置をスクータ10に適用した場合について説明したが、この発明に係る変速装置が適用できる鞍乗型車両はスクータ10に限定されない。具体的には、この発明に係る変速装置は、モペット等の他のタイプの自動二輪車、不整地走行用車両(ALL−TERRAIN VEHICLE)、およびスノーモービル等の他の鞍乗型車両にも適用できる。
【符号の説明】
【0148】
10 スクータ
30 エンジンユニット
36 出力軸
42 エンジン
44 変速装置
46 ケーシング
88、136、138、184、192、206、208、210、212、214、216、218、220、232、236、240、242 オイル通路
190 オイルパン
194、230、234、238 バルブ部材
222 仮想的な第1平面
224 仮想的な第2平面
C1、C2、C3、C4 クラッチ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1油圧クラッチ部および第2油圧クラッチ部を有する変速装置であって、
前記第1油圧クラッチ部にオイルを導くための第1オイル通路、
前記第2油圧クラッチ部にオイルを導くための第2オイル通路、
オイル源からオイルが導かれる第3オイル通路、ならびに
前記第1オイル通路と前記第2オイル通路と前記第3オイル通路との間に回動可能に設けられかつ第1回動位置および第2回動位置に設定可能なバルブ部材を備え、
前記バルブ部材は、当該バルブ部材の内部を当該バルブ部材の回動軸に対して平行な方向に延びかつ前記第3オイル通路に連通するように前記平行な方向に向かって開口する第4オイル通路と、それぞれ前記第4オイル通路から前記回動軸に直交する方向に延びかつ前記直交する方向に向かって開口する第5オイル通路および第6オイル通路とを有し、
前記第5オイル通路および前記第6オイル通路は、前記回動軸に直交する仮想的な第1平面上に形成され、
前記バルブ部材が前記第1回動位置に位置する場合には、前記第1オイル通路と前記第5オイル通路とが連通し、前記バルブ部材が前記第2回動位置に位置する場合には、前記第2オイル通路と前記第6オイル通路とが連通する、変速装置。
【請求項2】
前記第4オイル通路は、前記バルブ部材の前記回動軸上に形成されかつ前記回動軸上において開口する、請求項1に記載の変速装置。
【請求項3】
第3油圧クラッチ部と前記第3油圧クラッチ部にオイルを導くための第7オイル通路とをさらに備え、
前記バルブ部材は、前記第1オイル通路と前記第2オイル通路と前記第3オイル通路と前記第7オイル通路との間に回動可能に設けられかつ第3回動位置に設定可能であり、前記第4オイル通路から前記回動軸に直交する方向に延びかつ前記直交する方向に向かって開口する第8オイル通路をさらに有し、
前記第8オイル通路は、前記回動軸に直交する仮想的な第2平面上に形成され、
前記第2平面は、前記回動軸に対して平行な方向において前記第1平面から離れており、
前記バルブ部材が前記第3回動位置に位置する場合には、前記第7オイル通路と前記第8オイル通路とが連通する、請求項1または2に記載の変速装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の変速装置を備える、鞍乗型車両。
【請求項1】
少なくとも第1油圧クラッチ部および第2油圧クラッチ部を有する変速装置であって、
前記第1油圧クラッチ部にオイルを導くための第1オイル通路、
前記第2油圧クラッチ部にオイルを導くための第2オイル通路、
オイル源からオイルが導かれる第3オイル通路、ならびに
前記第1オイル通路と前記第2オイル通路と前記第3オイル通路との間に回動可能に設けられかつ第1回動位置および第2回動位置に設定可能なバルブ部材を備え、
前記バルブ部材は、当該バルブ部材の内部を当該バルブ部材の回動軸に対して平行な方向に延びかつ前記第3オイル通路に連通するように前記平行な方向に向かって開口する第4オイル通路と、それぞれ前記第4オイル通路から前記回動軸に直交する方向に延びかつ前記直交する方向に向かって開口する第5オイル通路および第6オイル通路とを有し、
前記第5オイル通路および前記第6オイル通路は、前記回動軸に直交する仮想的な第1平面上に形成され、
前記バルブ部材が前記第1回動位置に位置する場合には、前記第1オイル通路と前記第5オイル通路とが連通し、前記バルブ部材が前記第2回動位置に位置する場合には、前記第2オイル通路と前記第6オイル通路とが連通する、変速装置。
【請求項2】
前記第4オイル通路は、前記バルブ部材の前記回動軸上に形成されかつ前記回動軸上において開口する、請求項1に記載の変速装置。
【請求項3】
第3油圧クラッチ部と前記第3油圧クラッチ部にオイルを導くための第7オイル通路とをさらに備え、
前記バルブ部材は、前記第1オイル通路と前記第2オイル通路と前記第3オイル通路と前記第7オイル通路との間に回動可能に設けられかつ第3回動位置に設定可能であり、前記第4オイル通路から前記回動軸に直交する方向に延びかつ前記直交する方向に向かって開口する第8オイル通路をさらに有し、
前記第8オイル通路は、前記回動軸に直交する仮想的な第2平面上に形成され、
前記第2平面は、前記回動軸に対して平行な方向において前記第1平面から離れており、
前記バルブ部材が前記第3回動位置に位置する場合には、前記第7オイル通路と前記第8オイル通路とが連通する、請求項1または2に記載の変速装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の変速装置を備える、鞍乗型車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−19480(P2013−19480A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153566(P2011−153566)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
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