説明

外反母趾矯正用サポータ

【課題】履いて装着する作業とは別に母趾を内反方向へ引っ張る状態を確保するための作業が要求されず、装着状態において母趾を正常姿勢に矯正する力を発揮し続ける外反母趾矯正用サポータを提供する。
【解決手段】母趾を爪先側から被覆可能な袋状の母趾収容部2と、第1中足骨を外反方向に締付可能な第1中足骨締付部3と、母趾収容部2と第1中足骨締付部3を連結する連結部4と、連結部4を跨いで一端部51を母趾収容部2に固定して他端部52を第1中足骨締付部3に固定した伸縮可能な補強ベルト5とを備え、母趾収容部2により母趾を収容して第1中足骨締付部3により甲及び足底を被覆した装着状態において、連結部4よりも強い引っ張り力が作用した状態で足の内側に沿って配置される補強ベルト5により、母趾収容部2を第1中足骨締付部3側に引っ張るように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外反母趾を矯正する際に用いる外反母趾矯正用サポータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、外反母趾を矯正するサポータとして種々のものが知られている。ここで、外反母趾とは、足の変形の一種であり、第1中足骨が内反(足の内方に曲がって変形)することに伴って第1趾である母趾が外反(足の外方に曲がって変形)する症状である。
【0003】
このような外反母趾を矯正するサポータとして、例えば、下記特許文献1には、足指の第1中足指関節部全体を覆うように足底及び甲の周囲に巻いて装着される関節部装着部と、母趾の周囲に装着される筒状の母趾装着部と、母趾装着部の第2趾側と関節部装着部の第1趾側を斜めにつなぐように装着され、両者の間に引っ張り力を作用させる連結ベルトとを備えた外反母趾矯正用サポータが開示されている。このようなサポータであれば、関節部装着部によって第1中足骨に対して外反方向に向く外力を加えるとともに、連結ベルトによって母趾装着部を関節部装着部の第1趾側に向かって引っ張ることにより、母趾を第2趾から離れる方向に引っ張ることができる。ここで、連結ベルトは、一端部が母趾装着部から連続して伸び、他端部に面ファスナを取り付けたものであり、この面ファスナを関節部装着部の第1趾側の面に着脱可能に取り付けることよって、母趾装着部を関節部装着部の第1趾側に向かって引っ張ることができる。
【0004】
また、下記特許文献2には、中足関節を足の巾方向に巻回押圧して締め付け状態に保持する中足関節固定用バンドと、母趾に巻回保持する母指固定用バンドと、中足関節固定用バンドと母趾固定用バンドとを連結する連結部と、連結部の外側に設けられ一端部を母趾固定用バンドに固定し、他端部の内面にベルベットファスナを取り付けた引っ張りバンドとを備えた外反母趾矯正用のサポータが開示されている。このサポータは、それぞれ帯状をなす中足関節固定用バンド及び母趾固定用バンドの適宜箇所にベルベットファスナが取り付けられ、使用時は、中足関節固定用バンドを中足関節に巻回押圧し、ベルベットファスナにより締め付けた状態で保持し、次いで、母趾固定用バンドを母趾に巻回し、ベルベットファスナにより締め付けた状態で保持する。さらに引き続いて、引っ張りバンドを引っ張って他端部を中足関節固定用バンドに着脱可能に取り付けることによって母趾を正常位置に引っ張った状態を保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−076283号公報
【特許文献2】実開平6−13814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した何れのサポータも、足に装着して使用している場合に、母趾を内反方向に引っ張る機能を発揮する連結ベルト(特許文献1)や引っ張りバンド(特許文献2)にテンションが常に作用し続けることによって、面ファスナ(特許文献1)やベルベットファスナ(特許文献2)を介した取付状態(係合状態)が不意に解除される可能性がある。そして、面ファスナやベルベットファスナの係合状態が解除された場合には、連結ベルトや引っ張りバンドによる良好な引っ張り力を得ることはできず、外反母趾を矯正する機能を発揮し得ない。
【0007】
また、上述した何れの外反母趾矯正用サポータも、連結ベルト又は引っ張りベルトを引っ張って所定の取付位置に取り付ける作業を、使用者(装着者)自身或いは使用者の介助者に要求するものであるため、不慣れな場合や手指が不自由な人にとってはこの取付作業自体が負担となることも考えられ、補強ベルトによる良好な引っ張り力を得られない状態で使用し続けてしまう事態も招来しかねない。
【0008】
さらに、上述した何れの外反母趾矯正用サポータも、連結ベルト又は引っ張りベルトを関節部装着部(特許文献1)又は中足関節固定用バンド(特許文献2)に固定するためには、関節部装着部又は中足関節固定用バンド固定対象部自体を面ファスナ又はベルベットファスナと対になって連結ベルト又は引っ張りベルトを固定できるファスナ材で構成したり、あるいは専用のファスナ材を別途縫製処理などによって取り付ける必要がある。このような態様は、関節部装着部又は中足関節固定用バンドの素材を限定したり、或いは部材点数の増加による縫製作業工程の増加及びコストアップを招来する上に、ファスナ材の取付箇所が分厚くなって装着感を低下させることにもなり得る。
【0009】
以上のような問題に鑑みて、本発明は、足に装着して使用している場合に母趾を正常な姿勢に矯正する力が作用しなくなる事態を防止するとともに、履いて装着する作業とは別に母趾を内方へ引っ張る状態を確保するための作業を装着者などに要求することがなく、取り扱い性や装着感に優れた外反母趾矯正用サポータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係る外反母趾矯正用サポータは、母趾を爪先側から収容可能な袋状の母趾収容部と、少なくとも第1中足骨を外反方向へ締め付けた状態で甲及び足底を被覆し得る筒状の第1中足骨締付部と、母趾収容部及び第1中足骨締付部を連結する連結部と、連結部を跨いで一端部を母趾収容部に固定し且つ他端部を第1中足骨締付部に固定した伸縮可能な補強ベルトとを備え、母趾収容部によって母趾を収容するとともに第1中足骨締付部によって甲及び足底を被覆した装着状態において、補強ベルトは、連結部よりも強い引っ張り力が作用した状態で足の内側に沿う位置に配置されるものであって、この引っ張り力を作用させた補強ベルトにより、母趾収容部を第1中足骨締付部側に引っ張るように構成したことを特徴としている。
【0011】
ここで、「外反方向」とは、足の幅方向において内側から外側に向かう方向を意味する。また、本発明における「足の内側に沿う位置に配置される補強ベルト」は、「足の内側に沿う位置に足に直接接触した状態で配置される補強ベルト」、「足の内側に沿う位置に母趾収容部、連結部及び第1中足骨締付部側を介して足に対面する状態で配置される補強ベルト」の何れも包含する。また、母趾収容部、第1中足骨締付部及び連結部は、相互に連続する1枚の生地から構成したものであってもよく、それぞれ別々の生地から構成したものであってもよい。また、補強ベルトの端部を母趾収容部や第1中足骨締付部に固定する態様としては、縫合や接着、溶着(熱溶着、高周波溶着、超音波溶着)を挙げることができる。
【0012】
このような外反母趾矯正用サポータであれば、母趾収容部に母趾を挿し込むとともに第1中足骨締付部によって甲及び足底を被覆した装着状態において、第1中足骨締付部によって第1中足骨を外反方向(足の内側から外側へ向かう方向)へ締め付けることができるとともに、足の内側に沿う位置に配置される補強ベルトが連結部よりも強い力で母趾収容部を第1中足骨締付部側に引っ張り込むことで、母趾収容部内に収容した母趾を外反した姿勢から正常な位置(外反姿勢時よりも第二趾から離間した位置)に矯正した姿勢に保持することができる。特に、本発明では、母趾収容部として母趾を爪先側から収容可能な袋状のものを適用しているため、補強ベルトによって母趾収容部を第1中足骨締付部側に強く引っ張った場合にも、母趾が母趾収容部から抜け外れる事態を防止して、装着状態における母趾の良好な矯正姿勢を維持することができる。
【0013】
そして、本発明の外反母趾矯正用サポータは、補強ベルトの一端部を母趾収容部に固定するとともに、補強ベルトの他端部を第1中足骨締付部に固定しているため、上述の従来の態様、つまり補強ベルトの端部を所定の取付位置に着脱可能に取り付けることによって母趾収容部を第1中足骨締付部側に引っ張る機能が発揮される態様と比較して、装着状態において補強ベルトの端部が不意に取り外れてしまい、所期の機能を発揮し得ない状態に陥るという不具合を解消することができる。すなわち、本発明に係る外反母趾矯正用サポータでは、母趾収容部によって母趾を収容するとともに第1中足骨締付部によって甲及び足底を被覆した装着状態さえ確保すれば、補強ベルトのテンションによって母趾収容部を第1中足骨締付部側に引っ張ることができ、母趾を正常な姿勢に矯正した状態を確実に維持することができる。
【0014】
また、本発明に係る外反母趾矯正用サポータであれば、補強ベルトの両端部をそれぞれ母趾収容部又は第1中足骨締付部に固定しているため、外反母趾矯正用サポータを爪先側から履いて装着した状態で、さらに補強ベルトの一端部を所定位置に取り付ける作業や、装着した外反母趾用サポータを足から取り外す際に補強ベルトの端部の取付状態を解除する作業を装着者或いは装着者の介助者が行う必要がなく、取り扱い性にも優れたものになる。さらに、本発明に係る外反母趾矯正用サポータであれば、母趾収容部や第1中足骨締付部を、例えばベルベットファスナ又は面ファスナが係合可能なファスナ材に限定されたり、あるいは専用のファスナ材を別途縫製処理などによって取り付ける必要がなく、作製工程やコストを低減でき、また補強ベルトの取付箇所がファスナ材の厚み分だけ分厚くなる事態も回避することができ、装着感も良好となる。
【0015】
また、本発明の外反母趾矯正用サポータは、足に装着した場合、足の内側に、補強ベルトと、母趾収容部のうち補強ベルトの一端部が固定された位置から連結部を経由して第1中足骨締付部のうち補強ベルトの他端部が固定された位置までの部分(この部分を「メインベルト」と称する)とが相互に重なった状態となり、この状態で補強ベルトによる良好な引っ張り力を得るためには、補強ベルトの引っ張り力がメインベルトの引っ張り力よりも大きいことが要求される。このような要求を簡単な構成で満たす具体例としては、補強ベルトの固定部間の距離を、母趾収容部のうち補強ベルトの一端部が固定された位置から連結部を経由して第1中足骨締付部のうち補強ベルトの他端部が固定された位置までの距離よりも短く設定した態様を挙げることができる。
【0016】
本発明に係る外反母趾矯正用サポータは、装着状態において、補強ベルトが母趾収容部、連結部及び第1中足骨締付部の外面側に配置される態様も包含するものであるが、この場合、足に直接接触し得る母趾収容部、連結部及び第1中足骨締付部の一部が補強ベルトのテンションによって撓んで折り重なった状態になれば、足に対する良好なフィット性を得られず、装着に違和感を与えてしまう。このような事態を回避するためには、装着状態において母趾収容部、連結部及び第1中足骨締付部よりも優先して補強ベルトが足に接触するように構成すればよい。
【0017】
また、本発明に係る外反母趾矯正用サポータにおいて、より一層安定した装着状態を維持することができるようにするには、一端部を第1中足骨締付部に固定又は着脱可能に接続し、踵に掛け回して他端部を第1中足骨締付部に固定又は着脱可能に接続した踵保持部を設けることが好ましい。
【0018】
特に、本発明の外反母趾矯正用サポータでは、踵保持部を一枚の生地によって構成し、踵保持部のうち踵に接触し得る部分を他の部分よりも幅広に設定した幅広部とし、この幅広部にスリットを形成することができる。この場合、踵保持部の幅広部が踵に接触することにより、幅が狭い生地が踵に接触する態様と比較して踵に作用する負担を軽減することができるとともに、スリット内に装着者の踵や足首の一部を露出させることによって、幅広部全体を連続して装着者の皮膚に接触させる態様と比較して、スリットの開口縁がすべり止めとして機能し、装着状態で不意に踵保持部がずれ落ちてしまうことを防止・抑制することができる。
【0019】
さらに、本発明の外反母趾矯正用サポータは、母趾収容部内に母趾を収容可能な向きで足に装着することによって、右足又は左足の何れにも装着することができ、実用性に優れる。
【0020】
また、本発明の外反母趾矯正用サポータにおいて、少なくとも母趾収容部、第1中足骨締付部及び連結部に、適宜のパターンで通気穴を形成すれば、通気性及伸縮性が向上し、使い勝手に優れ、装着者に良好な装着感を与えることが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の外反母趾矯正用サポータによれば、母趾収容部を第1中足骨締付部側に引っ張る補強ベルトの一端部を母趾収容部に固定するとともに、補強ベルトの他端部を第1中足骨締付部に固定しているため、母趾収容部によって母趾を収容するとともに第1中足骨締付部によって甲及び足底を被覆した装着状態で使用している間に、母趾を内方へ引っ張る力が不意に作用しなくなる事態を防止するとともに、このサポータを足の爪先側から履いて装着する作業とは別に母趾を内反方向へ引っ張る状態を確保する作業が不要であり、取り扱い性や装着感も優れ、良好な外反母趾矯正を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る外反母趾矯正用サポータを右足に装着した状態の平面模式図。
【図2】図1の装着状態にある同外反母趾矯正用サポータを右足の左後方から見た図。
【図3】図1の装着状態にある同外反母趾矯正用サポータを踵側から見た図。
【図4】図1の装着状態にある同外反母趾矯正用サポータを右足の右後方から見た図。
【図5】足に装着する前の同外反母趾矯正用サポータを裏返して示す図。
【図6】踵保持部の使用方法を変更した同外反母趾矯正用サポータの図3対応図。
【図7】踵保持部の使用方法を変更した同外反母趾矯正用サポータの図4対応図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る外反母趾矯正用サポータ1は、図1乃至図4に示すように、母趾収容部2と、第1中足骨締付部3と、母趾収容部2及び第1中足骨締付部3を連結する連結部4と、連結部4を跨いで一端部51を母趾収容部2に固定し且つ他端部52を第1中足骨締付部3に固定した補強ベルト5と、踵に掛け回すことが可能な踵保持部6とを備えたものである。なお、各図において、実線と同じ太さで表す破線は目視可能な縫合箇所を示し、実線よりも細い破線は装着状態において目視不能な補強ベルト5を示す。
【0024】
母趾収容部2は、母趾全体を爪先側から被覆可能な袋状をなすものである。本実施形態では1枚の生地を用いて母趾収容部2を形成している。
【0025】
第1中足骨締付部3は、第1中足骨を外反方向へ押圧して締め付けた状態で甲及び足底を被覆可能な筒状をなすものである。本実施形態の第1中足骨締付部3は、第1中足骨に加えて、第2中足骨、第3中足骨、第4中足骨及び第5中足骨を甲の両サイドから締め付けた状態で甲及び足底を被覆可能なものである。本実施形態では、2枚の生地の端部同士を縫合することによって筒状の第1中足骨締付部3を形成しているが、1枚の生地(縫合処理するか否かは不問)によって第1中足骨締付部3を形成することもできる。
【0026】
連結部4は、母趾収容部2のうち足の内側部分と、第1中足骨締付部3のうち足の内側部分とを相互に接続するものである。外反母趾矯正用サポータ1を足に装着していない状態においてこの連結部4に、母趾収容部2を第1中足骨締付部3側に引っ張る機能を付与させることも可能であるが、本実施形態の外反母趾矯正用サポータ1における連結部4は、少なくとも母趾収容部2と第1中足骨締付部3とを接続する機能を果たせば十分である。そして、この連結部4は、外反母趾矯正用サポータ1を足に装着した状態において母趾収容部2を第1中足骨締付部3側に引っ張る機能を発揮し得る。また、本実施形態では、装着状態において装着者の第1中足骨を被覆し得る程度の幅を有する帯状の連結部4を適用している。
【0027】
本実施形態の外反母趾矯正用サポータ1は、母趾収容部2、第1中足骨締付部3及び連結部4を同じ素材からなる生地を用いて構成している。そして、連結部4は、母趾収容部2及び第1中足骨締付部3と一体である。本実施形態では、熱融着性繊維を用いて生地端のほつれ等を生じさせ難くする織物・編物(言い換えれば切断後の処理が不要である)所謂フリーカット生地(マルチカット生地とも称される)によって母趾収容部2、第1中足骨締付部3及び連結部4を構成している。フリーカット生地としては、例えばレーヨン、ナイロンやポリウレタン等の素材(再生繊維、合成繊維等)を適宜の割合で混成したものを挙げることができる。特に伸縮性を有するフリーカット生地が好ましい。また、本実施形態では、このフリーカット生地に適宜のパターンで通気穴7を形成している。これにより、母趾収容部2、第1中足骨締付部3及び連結部4は伸縮性が増大し、通気性にも優れたものになる。なお、通気穴7としては、円形のパンチ穴を挙げることができるが、円形以外の形状の穴によって通気穴を形成してもよい。さらに本実施形態では、例えば厚み0.数mm程度の極めて薄い生地を用いて母趾収容部2、第1中足骨締付部3及び連結部4を構成しているため、装着時においてこれら各部2,3,4が装着者に違和感を与える程度に嵩張ったり、ごわつくことを防止・抑制することができる。
【0028】
補強ベルト5は、一端部51を母趾収容部2の内面側に固定し、他端部を第1中足骨締付部3の内面側に固定した伸縮性を有する1枚の生地によって構成したものである。本実施形態では、補強ベルト5の一端部51を母趾収容部2のうち爪先側の端部に縫合処理により固定するとともに、補強ベルト5の他端部52を第1中足骨締付部3のうち踵側(足首側)の端部に縫合処理により固定している。より具体的には、補強ベルト5の一端部51を母趾収容部2の爪先側端部に線的に接合し、補強ベルト5の他端部52を第1中足骨締付部3の踵側端部から連結部4側端部に向かって全体の二分の一以上(例えば約三分の二)を占める領域に面的に接合している(図1参照)。そして、補強ベルト5の固定部間の距離(一端部51と他端部52との距離)を、母趾収容部2のうち補強ベルト5の一端部51が固定された位置(縫合箇所)から連結部4を経由して第1中足骨締付部3のうち補強ベルト5の他端部52が固定された位置(縫合箇所)までの距離よりも短く設定している。したがって、本実施形態の外反母趾矯正用サポータ1は、足に装着する前の状態では図5(装着前の外反母趾矯正用サポータ1を裏返した状態を示す図)に示すように、補強ベルト5の引っ張り力によって母趾収容部2が第1中足骨締付部3側に引っ張られて連結部4が撓んだ状態になる。そして、この外反母趾矯正用サポータ1を足に装着した場合には、補強ベルト5が、足の内側に沿って母趾収容部2、連結部4及び第1中足骨締付部3よりも優先して接触した状態で、連結部4よりも強い力で母趾収容部2を第1中足骨締付部3側に引っ張ることにより、母趾収容部2に被覆された母趾を正常の位置(外反していない位置)に引っ張ることができる。この装着状態では、足の内側に、補強ベルト5と、母趾収容部2のうち補強ベルト5の一端部51が固定された位置から連結部4を経由して第1中足骨締付部3のうち補強ベルト5の他端部52が固定された位置までの部分(この部分を「メインベルト」と称する)とが生地の厚み方向に重なった状態となる。そして、この状態で補強ベルト5の引っ張り力がメインベルトの引っ張り力よりも大きくなるように設定することにより、補強ベルト5によって母趾収容部2を第1中足骨締付部3側に強く引っ張ることができる。
【0029】
踵保持部6は、一端部61を第1中足骨締付部3に固定し、踵に掛け回して他端部62を第1中足骨締付部3に着脱可能に接続するものである。踵保持部6は、母趾収容部2等と同じ素材からなる伸縮性を有する1枚の生地を主体としてなり、自由端である他端部62にフック部材62a(例えばZカン)を設けたものである。本実施形態では、第1中足骨締付部3のうち補強ベルト5の他端部52を固定した部分から周方向にほぼ180度にずらした位置に、踵保持部6の一端部61を重ね合わせて縫合処理により固定し、第1中足骨締付部3のうち補強ベルト5の他端部52を固定した箇所にフック部材62aが係合可能な被係合部3aを設けている。特に、本実施形態の外反母趾矯正用サポータ1は、フック部材62aを挿入して係合させることが可能な筒状の被係合部3aを足首側から爪先側に向かって所定ピッチで複数形成し、フック部材62aを係合させる被係合部3aを変更することにより装着者に応じたサイズ調整を行えるように構成している。
【0030】
また、本実施形態の外反母趾矯正用サポータ1は、踵保持部6のうち踵に接触し得る部分を他の部分よりも幅寸法(装着状態では上下方向と一致する方向の寸法)を広く設定した幅広部63に設定し、この幅広部63に踵保持部6の長手方向(踵に掛け回す方向)に延びるスリット64を形成している。なお、本実施形態では、踵保持部6のうち少なくとも幅広部63に適宜のパターンで通気穴7を複数形成している。
【0031】
次に、このような構成を有する本実施形態に係る外反母趾矯正用サポータ1の使用方法及び作用について説明する。
【0032】
先ず、補強ベルト5の一端部51が母趾収容部2の内面側にある状態か否かを確認し、外反母趾を矯正する足の爪先側から第1中足骨締付部3の内面側に全ての指を挿入するようにして、第1中足骨締付部3を足首側に向けて引っ張る。そして、ある程度第1中足骨締付部3を足首側に向けて引っ張ると、母趾収容部2が母趾の爪先に接触し得る状態となり、母趾収容部2内に母趾を爪先側から収容する。引き続き、母趾収容部2内に母趾を収容した状態を維持したまま、第1中足骨締付部3によって第1中足骨を外反方向へ押圧して締め付け得る位置まで第1中足骨締付部3を足首側に向けて引っ張り、装着する。この装着状態で、補強ベルト5がメインベルトよりも優先して足の内側に接した状態で母趾収容部2を第1中足骨締付部3側に引っ張ることにより、母趾収容部2内に収容され且つサポータ1を装着する前の時点では外反となっていた母趾を正常の位置に矯正した姿勢に維持することができる。また、この装着状態では、第1中足骨締付部3により第1中足骨を外反方向に押圧して締め付けているため、第1中足骨に外反方向に矯正する外力が作用した状態を維持することができる。
【0033】
次いで、踵保持部6の自由端(他端部62)を持って幅広部63を踵に掛け回し、その自由端62に設けたフック部材62aを第1中足骨締付部3の被係合部3aに係合する。この際、複数の被係合部3aから装着者に応じた適切な被係合部3aを選択することによって、装着者に過度の負担が掛からない状態で踵保持部6を装着しつつ、外反母趾矯正用サポータ1全体をより一層安定した状態で足に装着することができる。さらに、踵保持部6を装着した状態では、踵保持部6の幅広部63が踵に接触することにより、幅が狭い生地が踵に接触する態様と比較して踵に作用する負担を軽減することができる。また、本実施形態の外反母趾矯正用サポータ1は、幅広部63のうちスリット64を介して隔てられた上側領域631と下側領域632の両方を足首に掛ける使用方法(図2乃至4参照)と、上側領域631を足首に掛ける一方で下側領域632の少なくとも一部が足底に回り込み得るように踵に掛ける使用方法(図6及び図7参照)とを選択できる。何れの使用方法においても、スリット64内に装着者の踵や足首の一部を露出させることになり、幅広部63全体を連続して装着者の皮膚に接触させる態様と比較して、スリット64の開口縁がすべり止めとして機能し、装着状態で不意に踵保持部6がずれてしまうことを防止・抑制することができる。特に、後者の使用方法(下側領域632の少なくとも一部が足底に回り込み得るように踵に掛ける使用方法)を選択した場合には、前者の使用方法と比較して上側領域631を相対的に低い位置に配置することができ、踵部分が浅い履物(ローシューズなど)を履いた場合にも外反母趾矯正用サポータ1の一部(上側領域631)が履物の外側から見え難いというメリットがある。
【0034】
以上の手順によって外反母趾矯正用サポータ1を足に装着することができ、この装着状態では、補強ベルト5の長手方向に作用する引っ張り力によって母趾収容部2を第1中足骨締付部3側に引っ張ることにより、母趾収容部2内に収容している母趾を外反していない正常な位置に矯正した姿勢を維持することができる。特に、本実施形態に係る外反母趾矯正用サポータ1は、補強ベルト5の一端部51を母趾収容部2に固定するとともに、補強ベルト5の他端部52を第1中足骨締付部3に固定しているため、例えば、補強ベルトの一方の端部を自由端に設定し、母趾収容部内に母趾を収容した状態で第1中足骨締付部を所定の位置まで引っ張って装着した後に、補強ベルトの自由端を所定の位置に取り付けることによって補強ベルトにテンションを付与する態様と比較して、母趾収容部2内に母趾を収容した状態で第1中足骨締付部3を所定の位置まで引っ張って装着するだけで、補強ベルト5に自ずとテンションを付与することができ、装着作業の簡便化を図りつつ母趾の適切な矯正姿勢を維持することができる。
【0035】
さらに、本実施形態の外反矯正用サポータ1では、母趾収容部2として母趾を爪先側から被覆可能な袋状のものを適用しているため、補強ベルト5によって母趾収容部2を第1中足骨締付部3側に引っ張った状態において、その引っ張り力によって母趾収容部2が母趾から抜け外れることを適切に防止することができ、装着状態における母趾の良好な矯正姿勢を維持することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る外反矯正用サポータ1は、足に装着していない状態における補強ベルト5の固定端部51,52間の長さを、母趾収容部2のうち補強ベルト5の一端部51が固定された位置から連結部4を経由して第1中足骨締付部3のうち補強ベルト5の他端部52が固定された位置までの長さ(言い換えればメインベルトの長さ)よりも短く設定するという簡単な構成によって、装着状態において補強ベルト5による有効な引っ張り力を得ることができる。
【0037】
さらに、本実施形態の外反母趾矯正用サポータ1では、装着状態において補強ベルト5が、母趾収容部2、連結部4及び第1中足骨締付部3よりも優先して足に接触するように構成しているため、母趾収容部2、連結部4或いは第1中足骨締付部3のうち補強部5と重なり得る部分(言い換えればメインベルトとして機能し得る部分)に補強ベルト5のテンションによって撓んだり、部分的に折り重なって皺が生じても、その撓みや皺が足に接触し難く、足の内側にフィットした補強ベルト5により装着者には良好な装着感を与えることができる。
【0038】
また、図1等では、本実施形態に係る外反母趾矯正用サポータ1を右足に装着した状態を示しているが、本実施形態の外反母趾矯正用サポータ1は左足に装着することも可能である。何れの足に装着する場合にも、上述した手順で装着することができる。ただし、踵保持部6の自由端62に設けるフック部材として、上述のZカン62aを適用した場合には、被係合部3aに挿入して係合させる際の挿入方向が、右足装着時と左足装着時では反対になる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、母趾収容部、連結部、及び第1中足骨締付部を、全て別々の生地(素材の同一は問わず)から構成することも可能である。
【0040】
また、母趾収容部と連結部を一体に形成し、これらとは別体の第1中足骨締付部を連結部に適宜の手段で固定したり、或いは連結部と第1中足骨締付部を一体に形成し、これらとは別体の母趾収容部を連結部に適宜の手段で固定してもよい。
【0041】
また、フリーカット素材ではない生地によって外反母趾矯正用サポータの各部を形成することもできる。外反母趾矯正用サポータの各部を形成する生地における通気穴のパターンは一定ではなく不規則であってもよく、通気性や伸縮性に悪影響を与えない範囲であれば通気穴を省略することも可能である。また、通気性に優れたメッシュ素材によって外反母趾矯正用サポータの各部を形成することもできる。
【0042】
また、母趾収容部、連結部及び第1中足骨締付部を構成する生地よりも伸縮性に乏しい素材によって補強ベルトを形成し、装着状態において母趾収容部、連結部、及び第1中足骨締付部よりも伸び難い補強ベルトによって母趾収容部を第1中足骨締付部側に引っ張り込むように構成した外反母趾矯正用サポータであっても構わない。この場合、装着していない状態における補強ベルトの固定部同士の長さを、母趾収容部のうち補強ベルトの一端部が固定された位置から連結部を経由して第1中足骨締付部のうち補強ベルトの他端部が固定された位置までの長さ(メインベルトの長さ)とほぼ同一に設定し、装着状態において補強ベルトによる有効な引っ張り力を得ることができるように構成することも可能である。
【0043】
さらには、補強ベルトを母趾収容部、連結部及び第1中足骨締付部の外面側に配置し、装着状態において母趾収容部、連結部及び第1中足骨締付部が補強ベルトよりも優先して足に接触するように構成してもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、踵保持部として、一端部を固定する一方で他端部を所定位置に着脱可能に固定できる自由端に設定したものを例示したが、両端部をそれぞれ第1中足骨締付部に固定した踵保持部を適用したり、両端部を自由端に設定した踵保持部を適用することもできる。なお、踵保持部の自由端を所定位置に着脱可能に固定する態様として、自由端に面ファスナを設けたり、Zカン以外の適宜のフック部材を設け、所定の固定箇所に1又は複数設けた被係合部に、面ファスナ或いはフック部材を係合させる態様を採用してもよい。
【0045】
また、踵保持部の幅広部に形成するスリットの数や位置を適宜変更したり、或いはスリットを省略した幅広部であっても構わない。
【0046】
さらには、踵保持部を備えていない外反母趾矯正用サポータであってもよい。
【0047】
また、補強ベルトの形状や素材、或いは母趾収容部における補強ベルトの固定箇所や第1中足骨締付部における補強ベルトの固定箇所など、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…外反母趾矯正用サポータ
2…母趾収容部
3…第1中足骨締付部
4…連結部
5…補強ベルト
6…踵保持部
63…幅広部
64…スリット
7…通気穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母趾を爪先側から収容可能な袋状の母趾収容部と、
少なくとも第1中足骨を外反方向へ締め付けた状態で甲及び足底を被覆し得る筒状の第1中足骨締付部と、
前記母趾収容部及び前記第1中足骨締付部を連結する連結部と、
前記連結部を跨いで一端部を前記母趾収容部に固定し且つ他端部を前記第1中足骨締付部に固定した伸縮可能な補強ベルトとを備え、
前記母趾収容部によって母趾を収容するとともに前記第1中足骨締付部によって甲及び足底を被覆した装着状態において、前記補強ベルトは、前記連結部よりも強い引っ張り力が作用した状態で足の内側に沿う位置に配置されるものであって、この引っ張り力を作用させた補強ベルトにより、前記母趾収容部を前記第1中足骨締付部側に引っ張るように構成したことを特徴とする外反母趾矯正用サポータ。
【請求項2】
前記補強ベルトの固定部間の距離を、前記母趾収容部のうち前記補強ベルトの一端部が固定された位置から前記連結部を経由して前記第1中足骨締付部のうち前記補強ベルトの他端部が固定された位置までの距離よりも短く設定している請求項1に記載の外反母趾矯正用サポータ。
【請求項3】
前記補強ベルトは、前記装着状態において前記母趾収容部、前記連結部及び第1中足骨締付部よりも優先して足に接触するものである請求項1又は2に記載の外反母趾矯正用サポータ。
【請求項4】
一端部を前記第1中足骨締付部に固定又は着脱可能に接続し、踵に掛け回して他端部を前記第1中足骨締付部に固定又は着脱可能に接続した踵保持部を備えている請求項1乃至3の何れかに記載の外反母趾矯正用サポータ。
【請求項5】
前記踵保持部を一枚の生地によって構成し、且つ踵に接触し得る部分を他の部分よりも幅広に設定した幅広部とし、この幅広部にスリットを形成している請求項4に記載の外反母趾矯正用サポータ。
【請求項6】
右足又は左足の何れにも装着可能である請求項1乃至5の何れかに記載の外反母趾矯正用サポータ。
【請求項7】
少なくとも前記母趾収容部、前記第1中足骨締付部及び前記連結部に、適宜のパターンで通気穴を形成している請求項1乃至6の何れかに記載の外反母趾矯正用サポータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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