説明

外壁下地材

【課題】軽量性や、耐火性能等の外壁下地材に要求される各種性能を備え、加えて、耐凍害性に優れた外壁下地材を提供することを課題とする。
【解決手段】建物の内壁と外壁との間に通気路を形成するために、前記内壁と前記外壁との間に配設される、長尺状に形成された外壁下地材であって、水硬性材料100質量部に対して、軽量骨材30〜60質量部、樹脂発泡ビーズ0.5〜2質量部、平均繊維長0.5〜3mmの有機繊維4〜10質量部、合成樹脂エマルジョン2〜10質量部、及び増粘剤1〜2.5質量部を含有する混合物を押出成形し、前記押出成形により成形された押出成形体を硬化させることにより得られることを特徴とする外壁下地材を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の内壁と外壁との間に通気路を形成するために、前記内壁と前記外壁との間に配設される、長尺状に形成された外壁下地材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図2に示すように、建物の内壁2と外壁1との間に長尺状の外壁下地材13を介在させて、内壁2と外壁1との間に通気路4を設けることにより、通気性を確保する壁内通気構造20が知られている(例えば、特許文献1)。このような外壁下地材を形成する材料としては、木材等が用いられていた。
【0003】
一方、木材を用いた外壁下地材の欠点である、燃焼性を解決した外壁下地材としては、防火性能を有する材料として、木片セメント板や、フレキシブルボード等の繊維混入セメント板を用いた外壁下地材が知られている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開昭61−286434号公報
【特許文献2】特開2000−234404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、木片セメント板や繊維混入セメント板からなる外壁下地材においては、外壁下地材が雨水、空気中の湿気、土壌中から放散される水分等を吸水(吸湿)しやすいという性質があった。また、外壁下地材が木材からなる柱に固定される場合には、木材が吸収した水分が外壁下地材に移行することもある。このような、外壁下地材の吸水は、以下のような問題を生じる。
【0005】
外壁下地材が吸水した場合、寒冷地においては、吸湿された水分が凍結するときに体積膨張することにより材料自身にクラック等が生じて、外壁下地材の強度が低下する、いわゆる凍害が生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、外壁下地材に要求される各種特性、特に耐凍害性に優れた外壁下地材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、本発明者らは、後述する組成の混合物を押出成形して得られる成形体の硬化物によれば、耐凍害性に優れた外壁下地材が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の外壁下地材は、建物の内壁と外壁との間に通気路を形成するために、前記内壁と前記外壁との間に配設される、長尺状に形成された外壁下地材であって、水硬性材料100質量部に対して、軽量骨材30〜60質量部、樹脂発泡ビーズ0.5〜2質量部、平均繊維長0.5〜3mmの有機繊維4〜10質量部、合成樹脂エマルジョン2〜10質量部、及び増粘剤1〜2.5質量部を含有する混合物を押出成形し、前記押出成形により成形された押出成形体を硬化させることにより得られるものである。このような、構成により得られる外壁下地材は、外壁下地材に要求される各種特性、具体的には耐凍害性、耐火性能、曲げ強度等を兼ね備えている。
【0009】
また、前記樹脂発泡ビーズが0.5〜1.2mmの粒子径を有する発泡ポリスチレンビーズである場合には、高い断熱性を有する外壁下地材であって、且つ、吸湿した水分が凍結した際に生じる体積膨張を吸収することによる耐凍害性に特に優れた外壁下地材が得られる。
【0010】
また、前記水硬性材料がセメントと石膏とを含有する場合には、エトリガイドを生成し、高強度を発現する点から好ましい。
【0011】
また、上記外壁下地材が、曲げ強度10MPa以上、比重1〜1.2、吸水率20%以下、及び熱伝導率0.2W/m・K以下を満たす場合には、耐凍害性、強度、及び軽量性等に特に優れた外壁下地材が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記内壁と前記外壁との間に配設される長尺状に形成された外壁下地材に要求される、優れた耐凍害性、耐火性能、曲げ強度を備えた外壁下地材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を説明する。
【0014】
本実施形態である、建物の内壁と外壁との間に通気路を形成するために、前記内壁と前記外壁との間に配設される、長尺状に形成された外壁下地材は、水硬性材料100質量部に対して、軽量骨材30〜60質量部、樹脂発泡ビーズ0.5〜2質量部、平均繊維長0.5〜3mmの有機繊維4〜10質量部、合成樹脂エマルジョン2〜10質量部、及び増粘剤1〜2.5質量部を含有する混合物を押出成形し、前記押出成形により成形された押出成形体を硬化させることにより得られるものである。
【0015】
図1は建物の内壁と外壁との間に空間を設けることにより、内壁と外壁との間の通気性を確保するように形成した壁内通気構造10の断面図である。
【0016】
図1中、1は外壁材からなる外壁、2は断熱材からなる内壁、3は長尺状に形成された外壁下地材、4は通気路、5はシーリング、6は柱、7は内装材である。
【0017】
壁内通気構造10においては、柱6及び内壁2と外壁1との間に通気路4が形成されている。
【0018】
外壁1としては、軽量化されたセメント材等から形成される外壁材であるサイディング材料が好ましく用いられる。また、内壁2としては、発泡ポリスチレン系パネル等からなる各種断熱パネル等の断熱材等が用いられる。また、内装材7は石膏ボード等から形成される。なお、湿気の侵入を防止するために、内壁2及び柱6は防水シート等で覆われていることが好ましい。
【0019】
そして、壁内通気構造10においては、外壁下地材3は柱6に固定されて、内壁2と外壁1との間に配設されている。そして、壁内に、外壁下地材3の厚みにより通気路4が形成されている。このような通気路4を形成することにより、壁内に通気性を確保することができる。
【0020】
本実施形態における水硬性材料としては、普通、早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメント、ビーライト高含有セメント、アルミナセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、各種混合セメント等の水硬セメント、あるいは、石膏などのセメント以外の水硬材料が挙げられる。特に、上記各種セメントと石膏とを含有する組合せを用いた場合には、エトリガイドを生成し、高強度を発現する点から好ましい。
【0021】
また、本発明における軽量骨材は、外壁下地材を軽量化するために用いられる成分であり、その具体例としては、例えば、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、真珠岩バルーン、黒曜石バルーン等が挙げられる。これらの中では、フライアッシュバルーンが低吸水率であるために凍害抑制効果が高い点から特に好ましい。軽量骨材の配合割合としては、水硬性材料100質量部に対して、30〜60質量部である。このような範囲の場合には軽量性と強度のバランスに優れた外壁下地材が得られる。
【0022】
また、本発明における樹脂発泡ビーズは、外壁下地材を軽量化するとともに、外壁下地材に断熱性を付与する成分である。その具体例としては、例えば、発泡ポリスチレンビーズ等が挙げられる。樹脂発泡ビーズとしては、その粒子径が0.5〜1.2mm程度で、発泡倍率が20〜40倍程度であることが好ましい。このような発泡ビーズを用いることにより、高い断熱性を維持することができるために、吸湿した水分が凍結しにくくなる。また、吸湿した水分が凍結した際に生じる体積膨張を吸収することによっても、凍害を抑制する。
【0023】
樹脂発泡ビーズの配合割合としては、水硬性材料100質量部に対して、0.5〜2質量部である。このような範囲の場合には、断熱性に優れ、また耐凍害性に優れた外壁下地材が得られる。
【0024】
また、本発明における平均繊維長0.5〜3mmの有機繊維は、曲げ強度向上のための補強材として用いられる成分であり、具体的には、例えば、平均繊維長0.5〜3mmの有機繊維のパルプ等が挙げられる。平均繊維長0.5〜3mmの有機繊維の配合割合は、水硬性材料100質量部に対して、4〜10質量部である。このような範囲の場合には、強度に優れた外壁下地材が得られる。前記有機繊維の含有割合が4質量部未満の場合には、強度が不充分になり、また、10質量部を超える場合には、吸湿しやすくなるために、耐凍害性が悪くなる。
【0025】
また、本発明における合成樹脂エマルジョンは、外壁下地材の吸水性を低下させて、耐水性を付与するための成分である。合成樹脂エマルジョンの具体例としては、例えば、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、ブタジエン系エマルジョン、その他合成ゴム系エマルジョン等が挙げられる。合成樹脂エマルジョンの配合割合としては、その合成樹脂の固形分換算で、水硬性材料100質量部に対して、2〜10質量部である。
【0026】
また、本発明における増粘剤の具体例としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。増粘剤の配合割合としては、水硬性材料100質量部に対して、1〜2.5質量部であり、好ましくは1〜2質量部である。
【0027】
本発明における外壁下地材の強度をさらに高めるために、上記混合物は、その他の平均繊維長の繊維を含有しても良い。このような繊維の具体例としては、ポリプロピレン繊維,ビニロン繊維等の合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の各種チョップド繊維が挙げられる。その他の繊維の配合割合としては、水硬性材料100質量部に対して、3質量部以下であることが好ましい。
【0028】
さらに、上記混合物は、耐火性能を向上させるために混和材を含有することが好ましい。混和材の具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。混和材の配合割合としては、水硬性材料100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。
【0029】
本発明の外壁下地材は、上記各成分を配合して混合することにより得られる混合物を押出成形し、前記押出成形により成形された押出成形体を硬化させることにより得られる。
【0030】
前記混合物は、上記各成分を配合してドライブレンドした後、適量の水をブレンドして、ニーダー等の混練手段により、水と混練することにより形成されることが好ましい。このとき、添加される水の量は、特に限定されないが、ドライブレンドされた固形分100質量部に対して、30〜100質量部程度であることが好ましい。
【0031】
このようにして得られた混合物は、次に、押出成形機に供給される。そして、押出成形機の吐出口に配設された口金から、押出物が連続して吐出される。このように、押し出された押出物は、通常、ベルトコンベヤ等により受け取られ、一定速度で送られる。そして、長尺形状を形成するために、押出物を所定の長さで切断することにより、押出成形体が得られる。
【0032】
そして、得られた押出成形体は養生硬化される。養生硬化としては、蒸気養生した後、高温高圧でのオートクレーブ中で養生することが好ましい。そして、オートクレーブ養生の後、乾燥することにより、外壁下地材が得られる。
【0033】
本発明の外壁下地材は、長尺形状でありながら、片持ちした場合であっても、たわみが生じない程度の高い曲げ強度、具体的には、10MPa以上の曲げ強度を維持しうる。また軽量性を維持するために、その比重は1〜1.2程度であることが好ましい。さらに、吸水率は20%以下程度であり、また、熱伝導率が0.2W/m・K以下程度の場合には特に、耐凍害性に優れている点から好ましい。
【0034】
本発明の外壁下地材は、例えば、長さ(L)1200〜3600mm、幅(D)30〜200mm、厚み(T)9〜20mm程度であって、L/Dが6〜60程度の長尺の形状を有する。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明する。なお、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
【0036】
はじめに、本実施例で用いた原材料を以下にまとめて示す。
【0037】
(水硬性材料)
・高炉セメント:太平洋セメント製
・石膏:住友大阪セメント製、ノンクレーブ
(軽量骨材)
・フライアッシュバルーン(粒子径500μm以下、見かけ比重0.4)
・真珠岩パーライト(粒子径1mm以下)
(樹脂発泡ビーズ)
・ポリスチレン(PS)発泡ビーズ(数平均粒子径0.8mm、発泡倍率40倍)
・有機発泡体(粒子径10〜100μmの塩化ビニリデン系樹脂からなる発泡体)
(補強繊維)
・平均繊維長1.4mmのパルプ
・平均繊維長6mmのポリプロピレン(PP)繊維
・平均繊維長13mmのガラス繊維
(樹脂エマルジョン)
・アクリル系樹脂エマルジョン
(混和材)
・炭酸カルシウム
(増粘剤)
・メチルセルロース
(実施例1〜6、及び比較例1〜7)
表1に記載の各成分を配合した後、ドライブレンドして混合物を得た。そして、前記混合物100質量部に対し、水70質量部を添加して、ニーダールーダーで混練して、粉砕した。
【0038】
前記粉砕された混練物を押出成形機のホッパーに供給して、幅90mm、厚み12mmの口金から連続的に押し出した。
【0039】
なお、押出成形機から押し出された押出物はベルトコンベヤで受け取られ、2650mmの長さごとに切断して押出成形体を得た。
【0040】
そして、得られた押出成形体を温度60〜80℃、湿度90%の条件で12時間蒸気養生した後、105℃、10時間の条件で乾燥することにより外壁下地材が得られた。
【0041】
得られた外壁下地材を、以下の評価方法により、評価した。
(凍結融解性)
ASTM C666A法に準じた、水中凍結/水中融解法により、300サイクル後の状態を以下の基準により評価した。
【0042】
◎:良好
○:脆弱部がわずかに見られる。
【0043】
×:脆弱部分が発生、または、クラックが発生した。
(吸水率)
JIS5430に準じて、吸水率を測定した。
(比重)
JIS A5430に準じて、測定した。
(耐火性能)
ISO5660に準じた発熱性試験により評価した。評価には、東洋精機(株)製のコーンカロリーメータを用いた。
(熱伝導率)
JIS1412(2)に準じた、熱流計法により測定した。なお、木材の熱伝導率は0.160であった。
(曲げ強度)
JIS 7171に準じて、50×250×12(mm)の大きさの基材の曲げ強度(MPa)を万能試験機により測定した。
【0044】
結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
本発明に係る実施例1〜6の外壁下地材はいずれも凍結融解性に優れており、凍害の影響が少ないことが分かった。これは、吸水率が低く、また、樹脂発泡ビーズが、水が凍結するときの体積膨張を緩和したためであると思われる。また、耐火性能にも優れ、曲げ強度も高かった。また、樹脂発泡ビーズとして粒子径0.8mmのPS発泡ビーズを用いた実施例1〜5と、粒子径10〜100μmの範囲の有機発泡体を用いた実施例6とを比較すると、発泡ビーズを用いた実施例1〜5は、凍結融解性に特に優れていた。これは、粒子径が比較的大きいPS発泡ビーズを用いた実施例4においては、水分の凍結時の体積変化の影響がより緩和され、また、熱伝導率が大幅に低い(2.0以下)であるために断熱性に優れていることによると考えられる。
【0047】
一方、樹脂発泡ビーズであるポリスチレン発泡ビーズの含有割合が3.5質量部である、比較例1においては、耐火性能が悪かった。また、合成樹脂エマルジョンを配合しなかった比較例3においては、吸水率が23%と非常に高く、凍結融解性も悪かった。また、平均繊維長1.4mmのパルプを11質量部含有する比較例4においては、凍結融解性が悪かった。これは、有機繊維を多く含有するために吸湿性が高くなったためであると思われる。また、アクリル系樹脂エマルジョンを10.5質量部含有する比較例5においては、耐火性能が悪かった。また、フライアッシュバルーンを62質量部含有する比較例6においては、吸水率が22.3%と高かった。また、パルプを含有しない比較例7においては、曲げ強度が大幅に低かった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明における壁内通気構造の模式断面図の一例である。
【図2】従来の壁内通気構造の模式断面図の一例である。
【符号の説明】
【0049】
1 外壁
2 内壁
3,13 外壁下地材
4 通気路
5 シーリング
6 柱
7 内装材
10,20壁内通気構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内壁と外壁との間に通気路を形成するために、前記内壁と前記外壁との間に配設される、長尺状に形成された外壁下地材であって、
水硬性材料100質量部に対して、軽量骨材30〜60質量部、樹脂発泡ビーズ0.5〜2質量部、平均繊維長0.5〜3mmの有機繊維4〜10質量部、合成樹脂エマルジョン2〜10質量部、及び増粘剤1〜2.5質量部を含有する混合物を押出成形し、前記押出成形により成形された押出成形体を硬化させることにより得られることを特徴とする外壁下地材。
【請求項2】
前記樹脂発泡ビーズが0.5〜1.2mmの粒子径を有する発泡ポリスチレンビーズである請求項1に記載の外壁下地材。
【請求項3】
前記水硬性材料がセメントと石膏とを含有する請求項1または2に記載の外壁下地材。
【請求項4】
曲げ強度が10MPa以上、比重が1〜1.2、吸水率が20%以下、及び熱伝導率が0.2W/m・K以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の外壁下地材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−156889(P2008−156889A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346404(P2006−346404)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】