説明

多出力型DC/DCコンバータ

【課題】 入力電圧をリアクトルに間歇的に印加して電流を流し、リアクトルからの出力を複数の出力端子に時分割で振り分けて複数の電圧出力を行う多出力型DC/DCコンバータにおいて、負荷の変動によって出力電圧が所望の電位から大きくずれるのを防止し、安定した直流電圧を出力できるようにする。
【解決手段】 各出力ごとに出力電圧検出手段(AMP1,AMP2)と比較回路(PWMコンパレータCMP1,CMP2)を有する多出力型DC/DCコンバータ(10)において、比較回路の出力を監視して早いものの出力を選択してリアクトルに流れる電流の経路を切り替えるスイッチ回路のオン、オフ制御信号を生成させる出力選択回路(12)を設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スイッチング電源装置さらには1つの入力電圧から複数の電圧出力を行う多出力型DC/DCコンバータに関し、特に各電圧出力のレベルに応じて出力電流の切替えを行なうための選択回路を備えたDC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
直流入力電圧を、該入力電圧とは異なる電位の直流電圧に変換して出力する電源装置としてDC/DCコンバータがある。また、ひとつの直流入力に対して電位の異なる複数の直流電圧を出力する多出力型DC/DCコンバータとして図9に示されているようなものがある。このような多出力DC/DCコンバータは、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
図9のDC/DCコンバータは、主スイッチSW0をコンパレータCMP1,CMP2から出力されるパルスP1またはP2でオン、オフするとともに、切換え用スイッチSW1,SW2のいずれか1つを、分周器からの出力で所定の周期で選択的にオンさせて、時分割でインダクタ(リアクトル)Lの出力電流を整流・平滑回路16aまたは16bに流すことで、第1出力端子OUT1および第2出力端子OUT2からそれぞれ所望のレベルに変換された直流電圧Vout1,Vout2を出力するものである。
【特許文献1】特開2005−117886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9に示すような多出力型DC/DCコンバータにおいては、インダクタLの出力電流を時分割で切り替えるようにしているため、インダクタの数を減らすことができ、直流電源装置の小型化を図ることができるという利点がある。しかしながら、図9の多出力型DC/DCコンバータにあっては、インダクタLの出力電流を所定の周期(固定)で第1出力端子OUT1と第2出力端子OUT2に振り分けるため、2つの出力端子のそれぞれに接続される負荷の電流比が大きく変化すると、所望の電位を維持するのが困難になるという問題点がある。
【0005】
具体的には、例えば、第1出力端子OUT1に接続される負荷の消費電流と第2出力端子OUT2に接続される負荷の消費電流との比2:1であることを想定して時分割の周期が設計された多出力型DC/DCコンバータを使用したシステムにおいて、第1出力端子OUT1の負荷の消費電流と第2出力端子OUT2の負荷の消費電流の比が急に逆転して1:2になったような場合を考える。この場合、時分割の周期が固定であると、負荷が増大した第2出力端子OUT2の出力電圧Vout2が所望の電位に達しない一方、負荷が減少した第1出力端子OUT1の出力電圧Vout1は所望の電位よりも高くなるような自体が生じるおそれがある。
【0006】
この発明の目的は、入力電圧をリアクトル(インダクタ)に間歇的に印加して電流を流し、リアクトルからの出力を複数の出力端子に時分割で振り分けて複数の電圧出力を行う多出力型DC/DCコンバータにおいて、負荷の変動によって出力電圧が所望の電位から大きくずれるのを防止し、安定した直流電圧を出力できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、各出力ごとに出力電圧検出手段と比較回路(PWMコンパレータ)を有する多出力型DC/DCコンバータにおいて、比較回路の出力を監視して早いものの出力を選択してリアクトルに流れる電流の経路を切り替えるスイッチ回路のオン、オフ制御信号を生成させる出力選択回路を設けるようにしたものである。
【0008】
より具体的には、直流電源に接続されるリアクトルと、前記リアクトルに電流を流す1又は2以上のスイッチからなる第1スイッチ回路と、前記リアクトルからの出力を複数の出力端子のいずれかに切り替える1又は2以上のスイッチからなる第2スイッチ回路とを備えた多出力型DC/DCコンバータにおいて、前記複数の出力端子の電圧を検出する複数の出力電圧検出手段と、前記複数の出力電圧検出手段の出力と所定の周波数の波形信号とを比較する複数の比較回路と、前記複数の比較回路の出力を入力とし、立ち上がりもしくは立ち下がりの早い比較回路の出力を選択して前記第1スイッチ回路または第2スイッチ回路もしくは前記第1スイッチ回路および第2スイッチ回路を構成するスイッチのオン、オフに関わる制御信号を生成する出力選択回路と、を備え、前記出力選択回路により生成される前記制御信号に応じて前記リアクトルに蓄積されているエネルギーの放出による電流が前記複数の出力端子のいずれかに出力されるように構成した。ここで、出力端子から出力される電流には、正の電流すなわち吐き出し電流のみならず負の電流すなわち引き込み電流が含まれる。
【0009】
このような構成によれば、各出力ごとに決まった周期で昇圧や降圧の動作が繰り返されるのではなく、そのときそのときの出力電圧のレベルに応じてつまり負荷の軽重に応じて自動的に昇圧や降圧の動作の割合が変化するようなスイッチング制御が行なわれるようになり、負荷の変動によって出力電圧が所望の電位から大きくずれるのを防止し、安定した直流電圧を出力できるようになる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記出力選択回路は、前記複数の比較回路のそれぞれに対応して設けられ前記複数の比較回路の出力の立ち上がりもしくは立ち下がりにより状態変化される複数のフリップフロップ回路と、前記複数のフリップフロップ回路のうちいずれか1つの状態が変化されると他のフリップフロップ回路へ、対応する前記比較回路の出力の変化を伝達させないようにする複数の論理ゲート回路と、を備えるようにする。これにより、比較的簡単な回路で確実に複数の比較回路の出力のうち立ち上がりもしくは立ち下がりが早いものを選択してスイッチング制御のための信号を生成することができる。
【0011】
また、前記所定の周波数の波形信号は三角波であり、前記複数のフリップフロップ回路は前記三角波の変化点に同期して変化する信号によってリセットされるように構成することができる。比較回路の出力により状態変化されたフリップフロップ回路は、次のサイクルにおける判定のためにリセットする必要があるが、そのためのリセット信号を三角波の変化点に同期した信号とすることにより、容易にリセット信号を生成することができる。
【0012】
さらに、前記複数の出力電圧検出手段のそれぞれは、前記複数の出力端子の電圧を抵抗分割した電圧と所定の参照電圧との電位差に応じた電圧を出力する誤差増幅回路とすることができる。また、前記複数の比較回路のそれぞれは、前記誤差増幅回路の出力と前記所定の周波数の波形信号とを比較して前記誤差増幅回路の出力電圧に応じたパルス幅を有するパルス信号を出力するPWMコンパレータとすることができる。誤差増幅回路やPWMコンパレータは従来のスイッチング電源回路で一般的に使用されている回路であるので、これらを使用することで大幅な設計変更なしに所望の動作を行なうDC/DCコンバータを構成することができる。
【0013】
また、前記第1スイッチ回路は、前記直流電源からの電圧が印加される入力点と前記リアクトルの一方の端子との間に設けられた第1スイッチと、前記リアクトルの他方の端子と回路の基準電位点との間に設けられた第2スイッチを含み、前記第2スイッチ回路は、前記第2スイッチと、前記リアクトルの前記一方の端子と前記複数の出力端子のいずれかとの間に逆方向接続されたダイオードを含む回路とすることができる。これにより、昇圧した電圧と反転した電圧(負電圧)を出力することができるDC/DCコンバータを比較的少ない素子数で実現することができる。
【0014】
さらに、前記出力選択回路により生成される制御信号に基づいて、前記第1スイッチをオン、オフ駆動する信号と前記第2スイッチをオン、オフ駆動する信号とを出力する駆動回路を設ける。リアクトルに電流を流すスイッチはサイズが大きいためこれをオン、オフさせるには比較的大きな駆動力を必要とするため、出力選択回路の後段に駆動回路を設けておくことにより、出力選択回路を構成する素子のサイズを小さくすることができ、トータルの回路面積を小さくできるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従うと、入力電圧をリアクトルに間歇的に印加して電流を流し、リアクトルからの出力を複数の出力端子に時分割で振り分けて複数の電圧出力を行う多出力型DC/DCコンバータにおいて、負荷の変動によって出力電圧が所望の電位から大きくずれるのを防止し、安定した直流電圧を出力できるようになるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態の多出力型DC/DCコンバータを示す構成図である。
【0018】
この実施の形態の多出力型DC/DCコンバータ10は、MOSFETなどのトランジスタからなるスイッチSW1,SW2をオンすることでリアクトルLに直流電源20からの入力電圧Vinを印加して電流を流し、リアクトルLから出力側に電流を流して電圧出力を行う昇圧&反転型コンバータにおいて、スイッチの切り換えにより2つの出力端子OUT1,OUT2に2種類の出力電圧Vout1,Vout2を出力するものである。
【0019】
この実施形態の多出力型DC/DCコンバータ10は、電気エネルギーを蓄積するリアクトルLと、直流電源20とリアクトルLとの間に設けられオン・オフ動作によりリアクトルLに間歇的に入力電圧Vinを印加するスイッチSW2と、リアクトルLと第1出力端子OUT1との間に順方向接続された第1ダイオードD1と、スイッチSW2とリアクトルLとの接続ノードN2と第2出力端子OUT2との間に逆方向接続された第2ダイオードD2と、リアクトルLと第1ダイオードD1との接続ノードN1とグランドとの間に接続されたスイッチSW1と、各出力端子OUT1,OUT2とグランドとの間にそれぞれ接続された平滑コンデンサC1,C2とを備える。
【0020】
このコンバータ10は、SW1とSW2をオンしてリアクトルLにエネルギーを蓄積し、SW1をオフすることで出力端子OUT1に昇圧電圧Vout1を出力するとともに、SW1とSW2をオンしてリアクトルLにエネルギーを蓄積し、SW1とSW2をオフすることで出力端子OUT2に反転電圧(負電圧)Vout2を出力する。具体的には、SW1,SW2のPWMスイッチング制御で、例えば3Vの入力電圧Vinに対して+12Vの出力電圧Vout1と−7Vの出力電圧Vout2を出力するように構成されている。
【0021】
また、この実施形態のDC/DCコンバータ10は、出力電圧Vout1のレベルを検出するため出力端子TOU1とグランドとの間に直列に接続された分割抵抗R1,R2と、出力電圧Vout2のレベルを検出するため出力端子OUT2と定電圧Vcが印加された端子との間に直列に接続された分割抵抗R3,R4と、検出された電圧と所定の参照電圧Vref1,Vref2とを比較して電位差に応じた電圧を出力する誤差増幅回路AMP1,AMP2を備える。
【0022】
さらに、DC/DCコンバータ10は、所定の周波数の三角波TAWを生成する三角波生成回路11と、生成された三角波と前記誤差増幅回路AMP1,AMP2の出力ERR1,ERR2とを比較してPWM制御パルスP1,P2を生成するPWMコンパレータCMP1,CMP2と、これらのコンパレータの出力のうち立ち上がりの早い方の出力パルスを選択し選択されたパルスに応じてスイッチSW1,SW2のオン、オフ制御信号を生成する出力選択回路12と、出力選択回路12からの制御信号に応じてオン、オフ駆動信号S1,S2を生成してSW1,SW2に印加する駆動回路(ドライバ)13とを備える。さらに、DC/DCコンバータ10は、発振回路OSCから発振信号に基づいて三角波生成回路11にリセットを与えて生成する三角波TAWの変化点のタイミングを規定するとともにこの三角波TAWに同期して出力選択回路12をリセットするリセット回路14を備えている。
【0023】
出力電圧Vout1を検出するための分割抵抗R1,R2は、抵抗R2に1.25Vのような定電圧が印加され、10V〜15Vのような範囲で出力電圧Vout1が変動しているとき0.5〜1.5Vの電圧が誤差増幅回路AMP1に入力されるように抵抗値が設定されている。また、出力電圧Vout2を検出するための分割抵抗R3,R4は、−5V〜−9Vのような範囲で出力電圧Vout2が変動しているとき0〜0.2Vの電圧が誤差増幅回路AMP2に入力されるように抵抗値が設定されている。
【0024】
図2には、出力選択回路12の具体的な構成例が示されている。
【0025】
出力選択回路12は、PWMコンパレータCMP1,CMP2の各出力であるPWM制御パルスP1,P2を反転するインバータINV1,INV2と、該インバータINV1,INV2の出力をそれぞれ一方の入力とするNOR論理ゲート回路G1,G2と、該NOR論理ゲート回路G1,G2の出力がそれぞれセット端子Sに入力されリセット端子Rに前記リセット回路14からのリセット信号RESが共通に入力されたフリップフロップFF1,FF2とから構成されている。そして、このFF1,FF2の出力端子とNOR論理ゲート回路G2とG1の他方の入力端子とが交差的に結合されることにより、PWM制御パルスP1,P2のうち立ち上がりの早い方の出力パルスを選択して出力し遅い方を遮断する選択回路として動作する。フリップフロップFF1,FF2の出力は、駆動力の高いインバータからなるドライバDRV1,DRV2によって反転されて、スイッチSW1,SW2のオン、オフ駆動信号S1,S2として出力される。
【0026】
次に、上記実施形態のDC/DCコンバータの動作を、図3のタイミングチャートを用いて説明する。図3には、始めに誤差増幅回路AMP1の出力ERR1がAMP2の出力ERR2よりも高く途中で逆転してAMP1の出力ERR2の方が高くなり、再びAMP1の出力ERR1の方が高くなるように変化した場合の各部の信号の変化が示されている。誤差増幅回路AMP1の出力ERR1がAMP2の出力ERR2よりも高い期間T1においては、三角波TAWはそのレベルが立ち下がる際に先ずAMP1の出力ERR1に達するため、PWMコンパレータCMP1,CMP2の出力パルスP1,P2はP1の方が先にハイレベルに変化することになる(タイミングt1)。
【0027】
これによって、フリップフロップFF1が先にセット状態にされ、出力Q1がハイレベルに変化する。すると、FF1の出力Q1によってNORゲート回路G2が閉じられてPWMコンパレータCMP2の出力パルスP2が入って来てもフリップフロップFF2はセット状態にされないようになり、FF2の出力Q2はロウレベルのままとされる。ハイレベルに変化したフリップフロップFF1の出力Q1は、リセット信号RESの立ち上がりに同期してロウレベルに変化される(タイミングt2)。
【0028】
このタイミングt2は、三角波TAWの低い方の頂点に一致する。Q1のハイレベルに応じて駆動信号S1がロウレベルにされることによってスイッチSW1がオフされ、リアクトルLに流れていた電流がダイオードD1を介して出力端子OUT1へ流されることによって、昇圧した電圧Vout1が出力される。ERR1がERR2よりも高い場合、ERR1が高いほどFF1の出力Q1すなわちドライバDRV1の出力であるSW1の負の駆動信号S1のパルス幅が広くされ、ERR1が低いほどSW1の駆動信号S1の負のパルス幅が狭くされる。これにより、出力電圧Vout1が変化するとその変化を少なくするようにフィードバックがかかるようになっている。
【0029】
期間T1のようにスイッチSW1が繰り返しオフされて、昇圧動作が連続してなされていると、平滑容量C2に電荷が供給されないことにより出力電圧Vout2は次第に上昇(絶対値は減少)し、図3の期間T2のように、誤差増幅回路AMP2の出力ERR2の方がAMP1の出力ERR1よりも高くなる。この期間においては、三角波TAWはそのレベルが立ち下がる際に先ずAMP2の出力ERR2に達するため、PWMコンパレータCMP1,CMP2の出力パルスP1,P2はP2の方が先にハイレベルに変化することになる(タイミングt3)。
【0030】
これによって、フリップフロップFF2が先にセット状態にされ、出力Q2がハイレベル変化する。すると、FF2の出力Q2によってNORゲート回路G1が閉じられてPWMコンパレータCMP1の出力パルスP1が入って来てもフリップフロップFF1はセットされないようになり、FF1の出力Q1はロウレベルのままとされる。ハイレベルに変化したフリップフロップFF2の出力Q2は、リセット信号RESの立ち上がりに同期してロウレベルに変化される(タイミングt4)。このタイミングt4は、三角波TAWの低い方の頂点に一致する。Q2のハイレベルに応じて駆動信号S2がロウレベルにされることによってスイッチSW2がオフされ、リアクトルLに流れていた電流はダイオードD2を介して出力端子OUT2より引き込むように作用することによって、より低い反転電圧Vout2が出力される。
【0031】
Vout2が下がって誤差増幅回路AMP1の出力ERR1の方がERR1よりも高くなると、PWMコンパレータCMP1の出力パルスP1の方が先にハイレベルに変化するようになり、フリップフロップFF1が先にセット状態にされ、出力Q1がハイレベルに変化し、Q1のハイレベルに応じて駆動信号S1がロウレベルにされることによってスイッチSW1がオフされ、リアクトルLに流れていた電流がダイオードD1を介して出力端子OUT1へ流されることによって、再び昇圧した電圧Vout1が出力されるようになる。
【0032】
このように、本実施形態においては、決まった周期で昇圧動作と反転動作が繰り返されるのではなく、そのときそのときの出力電圧Vout1とVout2のレベルに応じてつまり負荷の軽重に応じて自動的に昇圧動作と反転動作の割合が変化するようなスイッチング制御が行なわれるようになる。
【0033】
図4は、本発明の第2の実施の形態の多出力型DC/DCコンバータを示す構成図である。
【0034】
この実施形態の多出力型DC/DCコンバータ10は、昇圧&昇圧型のコンバータであり、リアクトルLと、リアクトルLとグランドとの間に設けられオン・オフ動作によりリアクトルLに間歇的に入力電圧Vinを印加してエネルギーを蓄積させるスイッチSW0と、リアクトルLと第1出力端子OUT1との間に設けられた第1の整流・平滑回路16aと、リアクトルLと第2出力端子OUT2との間に設けられた第2の整流・平滑回路16bと、リアクトルLと第1整流・平滑回路16aとの間に接続されたスイッチSW1と、リアクトルLと第2整流・平滑回路16bとの間に接続されたスイッチSW2とを備える。さらに、第1の出力電圧Vout1を検出する第1検出回路17aと、第2の出力電圧Vout2を検出する第2検出回路17bと、所定の周波数の三角波TAWやリセットを生成する信号生成回路11と、生成された三角波と前記検出回路17a,17bの出力ERR1,ERR2とを比較してPWM制御パルスP1,P2を生成するPWMコンパレータCMP1,CMP2と、これらのコンパレータの出力のうち立ち上がりの早い方の出力パルスを選択し選択されたパルスに応じてスイッチSW0〜SW2のオン、オフ制御信号を生成する出力選択回路12と、出力選択回路12からの制御信号に応じてオン、オフ駆動信号S0〜S2を生成してSW0〜SW2に印加する駆動回路13を備える。出力検出回路17a,17bとPWMコンパレータCMP1,CMP2と三角波生成回路11と出力選択回路12と駆動回路13によってスイッチング制御回路19が構成される。
【0035】
整流・平滑回路16aと16bは、それぞれリアクトルLと出力端子OUT1,OUT2との間に順方向接続されたダイオードと、各ダイオードのカソード側端子とグランドとの間に接続された平滑コンデンサとによって構成することができる。検出回路17aと17bは、それぞれ出力電圧Vout1とVout2を分圧する抵抗分圧回路と、分圧された電圧と所定の参照電圧とを比較して電位差に応じた電圧を出力する誤差増幅回路とで構成することができる。
【0036】
この実施形態のDC/DCコンバータ10は、SW1をオンしてリアクトルLにエネルギーを蓄積し、SW1をオフしSW1またはSW2のいずれか一方をオンすることで出力端子OUT1と出力端子OUT2に昇圧電圧Vout1とVout2を出力する。この実施形態においても、出力選択回路12にてPWMコンパレータCMP1,CMP2の出力P1,P2のうち立ち上がりの早い方の出力パルスを選択し、選択されたパルスに応じてスイッチSW0〜SW2のオン、オフ制御信号を生成し、駆動回路13がSW0〜SW2のオン、オフ駆動信号S0〜S2を出力するように構成されている。
【0037】
これによって、本実施形態においては、決まった周期で昇圧動作と反転動作が繰り返されるのではなく、そのときそのときの出力電圧Vout1とVout2のレベルに応じてつまり負荷の軽重に応じて自動的に昇圧動作と反転動作の割合が変化するようなスイッチング制御が行なわれるようになる。
【0038】
図5は、本発明の第3の実施の形態の多出力型DC/DCコンバータを示す構成図である。
【0039】
この実施形態の多出力型DC/DCコンバータ10は、昇圧&降圧型のコンバータであり、リアクトルLと、直流電源20とリアクトルLとグランドとの間に設けられオン・オフ動作によりリアクトルLに間歇的に入力電圧Vinを印加してエネルギーを蓄積させるスイッチSW0と、リアクトルLの一方の端子とグランドとの間に設けられたスイッチSW3と、リアクトルLの他方の端子とグランドとの間に設けられたスイッチSW4と、リアクトルLと第1整流・平滑回路16aとの間に接続されたスイッチSW1と、リアクトルLと第2整流・平滑回路16bとの間に接続されたスイッチSW2とを備える。
【0040】
この実施形態の多出力型DC/DCコンバータ10では、スイッチSW0〜SW4のタイミングを変えることによって、出力端子OUT1に入力電圧Vinを昇圧した電圧を、また出力端子OUT2に入力電圧Vinを降圧した電圧を出力することができる。しかも、出力選択回路12にてPWMコンパレータCMP1,CMP2の出力P1,P2のうち立ち上がりの早い方の出力パルスを選択し、選択されたパルスに応じてスイッチSW0〜SW4のオン、オフ制御信号を生成するため、決まった周期で出力端子OUT1側の昇圧動作と出力端子OUT2側の降圧動作が繰り返されるのではなく、負荷の軽重に応じて自動的にOUT1側の昇圧動作とOUT2側の降圧動作の割合が変化するようなスイッチング制御が行なわれるようになる。
【0041】
図6は、本発明の第4の実施の形態の多出力型DC/DCコンバータを示す構成図である。
【0042】
この実施形態の多出力型DC/DCコンバータ10は、昇圧&反転型のコンバータであり、リアクトルLと、直流電源20とリアクトルLとグランドとの間に設けられオン・オフ動作によりリアクトルLに間歇的に入力電圧Vinを印加してエネルギーを蓄積させるスイッチSW0と、リアクトルLの他方の端子とグランドとの間に設けられたスイッチSW3と、リアクトルLと第1整流・平滑回路16aとの間に接続されたスイッチSW1と、リアクトルLと第2整流・平滑回路16bとの間に接続されたスイッチSW2とを備える。
【0043】
この実施形態の多出力型DC/DCコンバータ10では、スイッチSW0〜SW3のタイミングを変えることによって、出力端子OUT1に、入力電圧Vinを昇圧した電圧を、また出力端子OUT2に入力電圧Vinを反転した負電圧を出力することができる。しかも、出力選択回路12にてPWMコンパレータCMP1,CMP2の出力P1,P2のうち立ち上がりの早い方の出力パルスを選択し、選択されたパルスに応じてスイッチSW0〜SW3のオン、オフ制御信号を生成するため、決まった周期で出力端子OUT1側の昇圧動作と出力端子OUT2側の反転動作が繰り返されるのではなく、負荷の軽重に応じて自動的にOUT1側の昇圧動作とOUT2側の反転動作の割合が変化するようなスイッチング制御が行なわれるようになる。
【0044】
図7は、本発明の第5の実施の形態の多出力型DC/DCコンバータを示す構成図である。
【0045】
この実施形態の多出力型DC/DCコンバータ10は、昇降圧&昇降圧型のコンバータであり、リアクトルLと、直流電源20とリアクトルLとグランドとの間に設けられオン・オフ動作によりリアクトルLに間歇的に入力電圧−Vinを印加して逆方向の電流を流してエネルギーを蓄積させるスイッチSW1と、リアクトルLとスイッチSW1との接続ノードN0と第1出力端子OUT1との間に順方向接続された2端子スイッチング素子としてのダイオードD3と、接続ノードN0と第2出力端子OUT2との間に接続されたスイッチSW2とを備える。
【0046】
この実施形態の多出力型DC/DCコンバータ10では、スイッチSW1をオンさせてリアクトルLにエネルギーを蓄積させた後、スイッチSW1をオフしSW2をオンさせると出力端子OUT2側の平滑容量C2に電荷に供給され、蓄積されたエネルギーとSW1のオン時間に応じて昇圧または降圧した出力電圧Vout2が出力端子OUT2に出力される。また、スイッチSW1をオンさせてリアクトルLにエネルギーを蓄積させた後、スイッチSW1とSW2をオフさせると出力端子OUT1側の平滑容量C1に電荷に供給され、またはSW1とSW2をオフ時間に応じて昇圧または降圧した出力電圧Vout1が出力端子OUT1に出力される。
【0047】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記の実施の形態では、出力選択回路12にPWMコンパレータCMP1,CMP2からいずれの出力パルスが先に入ったかでPWMパルスを選択するようにしているが、例えば図8のように、検出回路(誤差増幅回路AMP1,AMP2)の出力電圧を比較するコンパレータ15を設けて、いずれの出力電圧が高いかあるいは所定の電位差以上か以下かを判定して、その判定結果に応じて出力選択回路がPWMパルスを選択するように構成してもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、PWMコンパレータCMP1,CMP2で比較される所定の周波数の波形信号として立ち上がりと立ち下がりそれぞれ所定の傾きを有する三角波を使用しているが、立ち上がりのみ所定の傾きを有する鋸波を使用しても良い。また、上記実施の形態では、誤差増幅回路AMP1,AMP2の参照電圧として異なる電圧(Vref1,Vref2)を使用しているが、分割抵抗R1とR2との比およびR3とR4との比をそれぞれ適宜設定することにより、同一の参照電圧を使用できるように構成することも可能である。
【0049】
さらに、上記の実施の形態では、2出力型のDC/DCコンバータの例を示したが、出力端子の数と切換え用のスイッチの数を増やすことで3つ以上の出力にも対応することが出来る。また、上記第5の実施の形態(図7)では、リアクトルの電流を第1出力端子OUT1に流すスイッチとして、2端子スイッチ素子であるダイオードD3を用いているが、制御信号によりオン・オフさせるトランジスタ等の3端子スイッチ素子を用いても良い。その他、出力電圧の検出回路や発振回路などの回路も、実施の形態で具体的に示したもの限定されず本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施の形態の多出力型DC/DCコンバータを示す構成図である。
【図2】第1の実施の形態の多出力型DC/DCコンバータにおける出力選択回路のより具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】リアクトル電流の変化を詳細に示したタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2の実施の形態の多出力型DC/DCコンバータを示す構成図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態の多出力型DC/DCコンバータを示す構成図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態の多出力型DC/DCコンバータを示す構成図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態の多出力型DC/DCコンバータを示す構成図である。
【図8】本発明のその他の実施形態の多出力型DC/DCコンバータを示す構成図である。
【図9】従来の多出力型DC/DCコンバータの一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0051】
10 多出力型DC/DCコンバータ
11 三角波発生回路(広義の発振回路)
12 出力選択回路
13 駆動回路(ドライバ)
14 リセット回路
19 スイッチング制御回路
20 直流電源
L リアクトル
SW0〜SW4 スイッチ
D1,D2 整流用ダイオード
D3 ダイオードスイッチ
R1〜R4 検出用分割抵抗
Vin 入力電圧
Vout1,Vout2 出力電圧
OUT1 第1出力端子
OUT2 第2出力端子
C1,C2 平滑用コンデンサ
CMP1,CMP2 PWMコンパレータ
AMP1,AMP2 誤差増幅回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に接続されるリアクトルと、前記リアクトルに電流を流す1又は2以上のスイッチからなる第1スイッチ回路と、前記リアクトルからの出力を複数の出力端子のいずれかに切り替える1又は2以上のスイッチからなる第2スイッチ回路とを備えた多出力型DC/DCコンバータにおいて、
前記複数の出力端子の電圧を検出する複数の出力電圧検出手段と、
前記複数の出力電圧検出手段の出力と所定の周波数の波形信号とを比較する複数の比較回路と、
前記複数の比較回路の出力を入力とし、立ち上がりもしくは立ち下がりの早い比較回路の出力を選択して前記第1スイッチ回路または第2スイッチ回路もしくは前記第1スイッチ回路および第2スイッチ回路のオン、オフに関わる制御信号を生成する出力選択回路と、
を備え、前記出力選択回路により生成される前記制御信号に応じて前記リアクトルに蓄積されているエネルギーの放出による電流が前記複数の出力端子のいずれかに出力されるように構成されていることを特徴とする多出力型DC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記出力選択回路は、
前記複数の比較回路のそれぞれに対応して設けられ前記複数の比較回路の出力の立ち上がりもしくは立ち下がりにより状態変化される複数のフリップフロップ回路と、
前記複数のフリップフロップ回路のうちいずれか1つの状態が変化されると他のフリップフロップ回路へ、対応する前記比較回路の出力の変化を伝達させないようにする複数の論理ゲート回路と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の多出力型DC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記所定の周波数の波形信号は三角波であり、前記複数のフリップフロップ回路は前記三角波の変化点に同期して変化する信号によってリセットされるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の多出力型DC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記複数の出力電圧検出手段のそれぞれは、
前記複数の出力端子の電圧を抵抗分割した電圧と所定の参照電圧との電位差に応じた電圧を出力する誤差増幅回路であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の多出力型DC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記複数の比較回路のそれぞれは、
前記誤差増幅回路の出力と前記所定の周波数の波形信号とを比較して前記誤差増幅回路の出力電圧に応じたパルス幅を有するパルス信号を出力するコンパレータであることを特徴とする請求項4に記載の多出力型DC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記第1スイッチ回路は、前記直流電源からの電圧が印加される入力点と前記リアクトルの一方の端子との間に設けられた第1スイッチと、前記リアクトルの他方の端子と回路の基準電位点との間に設けられた第2スイッチを含み、
前記第2スイッチ回路は、前記第2スイッチと、前記リアクトルの前記一方の端子と前記複数の出力端子のいずれかとの間に逆方向接続されたダイオードを含むことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の多出力型DC/DCコンバータ。
【請求項7】
前記出力選択回路により生成される制御信号に基づいて、前記第1スイッチをオン、オフ駆動する信号と前記第2スイッチをオン、オフ駆動する信号とを出力する駆動回路を有することを特徴とする請求項6に記載の多出力型DC/DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−295736(P2007−295736A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121593(P2006−121593)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】