説明

多孔質炭素材料、吸着剤、経口投与吸着剤、医療用吸着剤、血液浄化カラム用の充填剤、水浄化用吸着剤、クレンジング剤、担持体、薬剤徐放剤、細胞培養足場材、マスク、炭素/ポリマー複合体、吸着シート、及び、機能性食品

【課題】所望の物質を高効率で吸着することができる多孔質炭素材料を提供する。
【解決手段】本発明の多孔質炭素材料は、泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上であり、あるいは又、BJH法によって求められた細孔の容積が0.5cm3/グラム以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質炭素材料、並びに、係る多孔質炭素材料を用いた、吸着剤、経口投与吸着剤、医療用吸着剤、血液浄化カラム用の充填剤、水浄化用吸着剤、クレンジング剤、担持体、薬剤徐放剤、細胞培養足場材、マスク、炭素/ポリマー複合体、吸着シート、及び、機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は、2nm以下のマイクロ細孔と呼ばれる細孔が支配的に存在する多孔質炭素材料である。現在に至るまで、このような活性炭の優れた吸着特性を生かした様々なアプリケーションが実用化されている。そして、アプリケーションの高性能化、及び、多孔質炭素材料としての新しい応用開拓(例えば、吸着剤、経口投与吸着剤、医療用吸着剤、血液浄化カラム用の充填剤、水浄化用吸着剤、クレンジング剤、担持体、薬剤徐放剤、細胞培養足場材、マスク、炭素/ポリマー複合体、吸着シートや機能性食品)において、マイクロ細孔に繋がるメソ細孔及びマクロ細孔の形成が注目を集めている(例えば、特開2004−182511、特開2004−345921参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−182511
【特許文献2】特開2004−345921
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術における活性炭にあっては、2nm以下のマイクロ細孔が支配的であり、主に分子量の小さな有機分子しか吸着ができなかった。即ち、分子量の大きな有機分子や蛋白質については、細孔内に進入することができず、活性炭によって吸着することが難しい。特に、分子量が1万以上、若しくは5万以上の大きな蛋白質を吸着し得る炭素材料は、本発明者が調べた限りでは、知られていない。
【0005】
従って、本発明の目的は、分子量の大きな有機分子や蛋白質を確実に吸着し得る多孔質炭素材料、並びに、係る多孔質炭素材料を用いた、吸着剤、経口投与吸着剤、医療用吸着剤、血液浄化カラム用の充填剤、水浄化用吸着剤、クレンジング剤、担持体、薬剤徐放剤、細胞培養足場材、マスク、炭素/ポリマー複合体、吸着シート、及び、機能性食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る多孔質炭素材料は、泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法(NLDFT法,Non Localized Density Functional Theory 法)によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である。
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る多孔質炭素材料は、泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つのピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、全細孔の容積総計の0.3以上である。
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の第3の態様に係る多孔質炭素材料は、泥炭を原料とし、BJH法によって求められた細孔の容積が0.5cm3/グラム以上である。
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の吸着剤は、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様乃至第3の態様に係る多孔質炭素材料から成る。ここで、本発明の吸着剤は、限定するものではないが、数平均分子量1×102乃至1×106の分子(あるいは有機物)、好ましくは数平均分子量1×103乃至1×106の分子(あるいは有機物)、より好ましくは数平均分子量1×104乃至1×106の分子(あるいは有機物)、より一層好ましくは数平均分子量1×106の分子(あるいは有機物)を吸着する形態とすることができる。あるいは又、上記の目的を達成するための本発明のα−アミラーゼを吸着する吸着剤、リゾチームを吸着する吸着剤、あるいは又、ベンゾピレンを吸着する煙草フィルター用の吸着剤は、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様乃至第3の態様に係る多孔質炭素材料から成る。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の経口投与吸着剤、本発明の医療用吸着剤、本発明の血液浄化カラム用の充填剤、本発明の水浄化用吸着剤、本発明の脂肪酸を吸着するクレンジング剤、本発明の薬剤を担持するための担持体、本発明の薬剤徐放剤、本発明の細胞培養足場材は、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様乃至第3の態様に係る多孔質炭素材料から成る。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明のマスクは、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様乃至第3の態様に係る多孔質炭素材料から成る吸着剤を備えている。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の炭素/ポリマー複合体は、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様乃至第3の態様に係る多孔質炭素材料、及び、バインダーから成る。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の吸着シートは、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様乃至第3の態様に係る多孔質炭素材料から成るシート状部材、並びに、シート状部材を支持する支持部材から構成されている。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の機能性食品は、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様乃至第3の態様に係る多孔質炭素材料を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の態様〜第3の態様に係る多孔質炭素材料、あるいは、係る多孔質炭素材料を用いた本発明の吸着剤、経口投与吸着剤、医療用吸着剤、血液浄化カラム用の充填剤、水浄化用吸着剤、クレンジング剤、担持体、薬剤徐放剤、細胞培養足場材、マスク、炭素/ポリマー複合体、吸着シート、機能性食品は、泥炭を原料としており、しかも、所定の直径を有する細孔の容積が規定されているので、所望の物質、より具体的には、分子量の小さな有機分子や蛋白質だけでなく、分子量の大きな有機分子や蛋白質を確実に、高効率で吸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1A、実施例1B、実施例1Cの多孔質炭素材料及び比較例1の多孔質炭素材料前駆体における非局在化密度汎関数法に基づき得られた細孔径分布の測定結果を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例3の浄水器の模式的な断面図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、実施例3におけるボトルの模式的な一部断面図及び模式的な断面図である。
【図4】図4の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例6の花粉症対策マスクの模式図、及び、花粉症対策マスクの本体部分の模式的な断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の第1の態様〜第3の態様に係る多孔質炭素材料、本発明の吸着剤、経口投与吸着剤、医療用吸着剤、血液浄化カラム用の充填剤、水浄化用吸着剤、クレンジング剤、担持体、薬剤徐放剤、細胞培養足場材、マスク、炭素/ポリマー複合体、吸着シート、及び、機能性食品、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の第1の態様〜第3の態様に係る多孔質炭素材料、本発明の吸着剤)
3.実施例2(本発明の経口投与吸着剤、医療用吸着剤、血液浄化カラム用の充填剤、クレンジング剤)
4.実施例3(本発明の水浄化用吸着剤)
5.実施例4(本発明の薬剤を担持するための担持体及び薬剤徐放剤)
6.実施例5(本発明の細胞培養足場材料)
7.実施例6(本発明のマスク、炭素/ポリマー複合体及び吸着シート)
8.実施例7(本発明の機能性食品)
9.実施例8(実施例1の多孔質炭素材料の変形である多孔質炭素材料複合体)、その他
【0018】
[本発明の第1の態様〜第3の態様に係る多孔質炭素材料、本発明の吸着剤、経口投与吸着剤、医療用吸着剤、血液浄化カラム用の充填剤、水浄化用吸着剤、クレンジング剤、担持体、薬剤徐放剤、細胞培養足場材、マスク、炭素/ポリマー複合体、吸着シート、及び、機能性食品、全般に関する説明]
上記の各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様〜第3の態様に係る多孔質炭素材料、本発明の吸着剤、経口投与吸着剤、医療用吸着剤、血液浄化カラム用の充填剤、水浄化用吸着剤、クレンジング剤、担持体、薬剤徐放剤、細胞培養足場材、マスク、炭素/ポリマー複合体、吸着シート、あるいは、機能性食品(以下、これらを総称して、単に『本発明』と呼ぶ場合がある)において、多孔質炭素材料の原料として泥炭(ピートあるいは草炭とも呼ばれる)を用いるが、多孔質炭素材料は、具体的には、泥炭に対して、不活性ガス中(窒素ガスやアルゴンガス等)若しくは真空中での高温熱処理といった処理を行うことで得られた物質(『多孔質炭素材料前駆体』と呼ぶ)に、賦活処理を行うことで得ることができる。泥炭に対して、上記高温熱処理後の洗浄(各種ミネラル分を溶出させる)といった前処理を行ってもよい。泥炭を所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、更には、分級してもよい。また、泥炭を予め洗浄してもよい。あるいは又、得られた多孔質炭素材料前駆体や多孔質炭素材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。あるいは又、賦活処理後の多孔質炭素材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。更には、最終的に得られた多孔質炭素材料に殺菌処理を施してもよい。尚、本発明の第1の態様〜第3の態様に係る多孔質炭素材料を、以下、総称して、『本発明における多孔質炭素材料』と呼ぶ場合がある。
【0019】
賦活処理の方法として、ガス賦活法、薬品賦活法を挙げることができる。ここで、ガス賦活法とは、賦活剤として酸素や水蒸気、炭酸ガス、空気等を用い、係るガス雰囲気下、700゜C乃至1400゜Cにて、好ましくは700゜C乃至1000゜Cにて、より好ましくは800゜C乃至950゜Cにて、数十分から数時間、多孔質炭素材料を加熱することにより、多孔質炭素材料中の揮発成分や炭素分子により微細構造を発達させる方法である。尚、より具体的には、加熱温度は、使用する泥炭の仕様、ガスの種類や濃度等に基づき、適宜、選択すればよい。薬品賦活法とは、ガス賦活法で用いられる酸素や水蒸気の替わりに、塩化亜鉛、塩化鉄、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸等を用いて賦活させ、塩酸で洗浄、アルカリ性水溶液でpHを調整し、乾燥させる方法である。
【0020】
本発明における多孔質炭素材料の表面に対して、化学処理又は分子修飾を行ってもよい。化学処理として、例えば、硝酸処理により表面にカルボキシ基を生成させる処理を挙げることができる。また、水蒸気、酸素、アルカリ等による賦活処理と同様の処理を行うことにより、多孔質炭素材料の表面に水酸基、カルボキシ基、ケトン基、エステル基等、種々の官能基を生成させることもできる。更には、多孔質炭素材料と反応可能な水酸基、カルボキシ基、アミノ基等を有する化学種又は蛋白質とを化学反応させることでも、分子修飾が可能である。
【0021】
本発明における多孔質炭素材料は、細孔(ポア)を多く有している。細孔として、孔径が2nmよりも小さい『マイクロ細孔』、孔径が2nm乃至50nmの『メソ細孔』、及び、孔径が50nmを越える『マクロ細孔』が含まれる。
【0022】
本発明における多孔質炭素材料において、窒素BET法による比表面積の値(以下、単に、『比表面積の値』と呼ぶ場合がある)は、より一層優れた機能性を得るために、好ましくは10m2/グラム以上、より好ましくは100m2/グラム以上、より一層好ましくは400m2/グラム以上であることが望ましい。
【0023】
本発明の吸着剤の使用形態として、シート状での使用、カラムやカートリッジに充填された状態での使用、バインダー(結着剤)等を用いて所望の形状に賦形した状態での使用、粉状での使用を例示することができる。溶液中に分散させた吸着剤として用いる場合、表面を親水処理又は疎水処理して使用してもよい。あるいは又、上述したとおり、本発明における多孔質炭素材料を、血液浄化カラム用の充填剤(吸収剤)として用いることができるし、水を浄化する水浄化用吸着剤、クレンジング剤に用いることもできる。本発明の血液浄化カラム用の充填剤、水浄化用吸着剤、クレンジング剤の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができるし、使用形態も、上述と同様にすればよいし、あるいは又、血液浄化カラム用の充填剤、水浄化用吸着剤、クレンジング剤の形態に依存して、適宜、選択、決定すればよい。
【0024】
具体的には、例えば、本発明の水浄化用吸着剤の使用形態として、シート状での使用、カラムやカートリッジに充填された状態での使用、透水性を有する袋に納められた状態での使用、バインダー(結着剤)等を用いて所望の形状に賦形した状態での使用、粉状での使用を例示することができる。水(溶液)中に分散させた水浄化用吸着剤として用いる場合、表面を親水処理又は疎水処理して使用することができる。
【0025】
本発明の水浄化用吸着剤(濾材)を組み込むのに適した装置、例えば、浄化装置、具体的には、浄水器(以下、『本発明における浄水器』と呼ぶ場合がある)にあっては、濾過膜(例えば、0.4μm〜0.01μmの穴の開いた中空糸膜や平膜)を更に有する構成(本発明の水浄化用吸着剤と濾過膜の併用)とすることができるし、逆浸透膜(RO)を更に有する構成(本発明の水浄化用吸着剤と逆浸透膜の併用)とすることができるし、セラミックス製の濾材(微細な穴を有するセラミックス製の濾材)を更に有する構成(本発明の水浄化用吸着剤とセラミックス製の濾材の併用)とすることができるし、イオン交換樹脂を更に有する構成(本発明の水浄化用吸着剤とイオン交換樹脂の併用)とすることもできる。
【0026】
本発明における浄水器の種類として、連続式浄水器、回分式浄水器、逆浸透膜浄水器を挙げることができるし、あるいは又、水道の蛇口の先端部に浄水器本体を直接取り付ける蛇口直結型、据え置き型(トップシンク型あるいは卓上型とも呼ばれる)、水栓に浄水器が組み込まれた水栓一体化型、キッチンのシンク内に設置するアンダーシンク型(ビルトイン型)、ポットや水差し等の容器内に浄水器を組み込んだポット型(ピッチャー型)、水道メーター以降の水道配管に直接取り付けるセントラル型、携帯型、ストロー型を挙げることができる。本発明における浄水器の構成、構造は、従来の浄水器と同じ構成、構造とすることができる。本発明における浄水器において、本発明の水浄化用吸着剤(多孔質炭素材料)は、例えば、カートリッジに納めて使用することができ、カートリッジには水流入部及び水排出部を設ければよい。本発明における浄水器において浄化の対象とすべき「水」は、JIS S3201:2010「家庭用浄水器試験方法」の「3.用語及び定義」に規定された「水」に限定するものではない。
【0027】
あるいは又、本発明の水浄化用吸着剤(濾材)を組み込むのに適した部材として、キャップあるいは蓋付きのボトル(所謂ペットボトル)やラミネート容器、プラスチック容器、ガラス容器、ガラス瓶等におけるキャップあるいは蓋を挙げることができる。ここで、キャップや蓋の内部に本発明の水浄化用吸着剤を配し、ボトルやラミネート容器、プラスチック容器、ガラス容器、ガラス瓶等の内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)を、キャップや蓋の内部に配された本発明の水浄化用吸着剤を通過させて飲むことで、あるいは、使用することで、濾過水を浄化することができる。あるいは又、透水性を有する袋の中に本発明の水浄化用吸着剤を格納し、ボトル(所謂ペットボトル)やラミネート容器、プラスチック容器、ガラス容器、ガラス瓶、ポット水差し等の各種の容器内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)の中に、この袋を投入する形態を採用することもできる。
【0028】
本発明の経口投与吸着剤、医療用吸着剤の投与形態は、散剤、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル、懸濁剤、乳剤等、いずれも取り得ることが可能である。カプセル剤として服用する場合には、通常のゼラチン他、腸溶性を有する材料から作製されたカプセルを用いればよい。錠剤にする場合には、乳糖やデンプン等の賦形剤、ヒドロキシプロピルセルロースやアラビアゴム糊、デンプン糊等の結合剤、ステアリン酸マグネシウム等のワックスやタルク等の滑沢剤、セルロース類等の崩壊剤等を用いてもよい。また、その他、アルミナやシリカ成分との複合剤として用いてもよい。そして、本発明における多孔質炭素材料を、体内の様々な不要な分子を選択的に吸着するために用いることができる。即ち、本発明における多孔質炭素材料を、上述したとおり、疾患の治療及び予防に有用な医薬内服薬等の経口投与吸着剤あるいは医療用吸着剤として用いることができる。ここで、本発明の吸着剤を、上述したとおり、α−アミラーゼを吸着する吸着剤、リゾチームを吸着する吸着剤ベンゾピレンを吸着する煙草フィルター用の吸着剤として用いるだけでなく、インドール、尿酸、アデノシン、3−メチルインドール、トリプトファン、インジカン、テオフィリン、イノシン−5−1燐酸2ナトリウム塩、脂肪酸(具体的には、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、スクアレン、コレステロール)、色素、疎水性を有する分子、数平均分子量1×103乃至1×106の分子、有機物(例えば、有機分子、若しくは、蛋白質)、アンモニア、尿素、ジメチルアミン、メチルグアニジンといったグアニジン化合物、含硫アミノ酸、フェノール、p−クレゾール、蓚酸、ホモシステイン、グアジニノコハク酸、ミオイノシトール、インドキシル硫酸、プソイドウリジン、環状アデノシン一リン酸、クレアチニン、β−アミノイソ酪酸、オクトパミン、α−アミノ酪酸、副甲状腺ホルモン、β2−ミクログロブリン、リボヌクレアーゼ、ナトリウム利尿ホルモンや、アスパラギン酸、アルギニン等の水溶性の塩基性及び両性物質を吸着する吸着剤として用いることもできる。また、プリン又はプリン誘導体、プリン塩基であるアデニンやグアニン、プリンヌクレオシドであるグアノシンやイノシン、プリンヌクレオチドであるアデニル酸、グアニル酸、イノシン酸を吸着する吸着剤として用いることもできる。更には、低分子又は高分子核酸であるオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドを吸着する吸着剤として用いることもできるし、ポリアミン類、3−デオキシグルコソン、種々のペプチドホルモンを吸着することができる。特に、本発明の吸着剤は以下に示すような、分子量の大きな蛋白質に対する吸着に優れている。即ち、顆粒球抑制タンパク(GIP)、脱顆粒球抑制タンパク(DIP)、化学遊走抑制タンパクを吸着する吸着剤として用いることもできるし、更には、各種酵素類、コラーゲン・ケラチン等の生体構造を形成する蛋白質、蛋白質ホルモン、その受容体や、細胞内シグナル伝達に関わる蛋白質、アクチン、ミオチン等のような筋肉を構成する蛋白質、抗原/抗体蛋白質、卵、種子、乳等に含まれる栄養としての蛋白質、アルブミンのような血液中の蛋白質、GFPやRFPのような蛍光に拘わる蛋白質等を挙げることができる。また、カルバミル化ヘモグロビン、糖化終末産物、顆粒球・単球機能阻害物質、酸化作用促進物質等を吸着する吸着剤として用いることもできる。あるいは又、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH,数平均分子量:394)、チロシン(タイロシン,数平均分子量:394)、ミクロシスチン類を吸着する吸着剤として用いることもできる。尚、α−アミラーゼを吸着する吸着剤は、クローン病等を引き起こす炎症性サイトカインのような蛋白質の吸着特性を調べるためのモデル(擬似的な炎症性サイトカイン)に適用することができる。
【0029】
また、本発明における多孔質炭素材料には、例えば、脂肪酸や、色素、疎水性の分子を吸着させることができる。脂肪酸として、具体的には、オレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、スクアレン(テルペノイドに属する油脂)、コレステロール(スクアレンから生合成される)、ステアリン酸モノグリセリンを挙げることができる。また、色素として、具体的には、リソールルビンBCA(赤色202号)を含む法定色素(タール色素)全般、即ち、アマランス(赤色2号)、ニューコクシン(赤色102号)、リソールルビンB(赤色201号)、リソールレッドCA(赤色206号)、ローダミンB(赤色231号)、ディープマルーン(赤色220号)、ファストアシッドマゲンタ(赤色227号)、ビオラミンR(赤色401号)、スカーレットレッドNF(赤色501号)、ファストレッドS(赤色506号)、ジブロモフルオレセイン(だいだい色201号)、ジヨードフルオレセインだいだい色206号)、ハンサオレンジ(だいだい色401号)、タートラジン(黄色4号)、フルオレセイン(黄色201号)、ベンチジンイエローG(黄色205号)、ハンサイエロー(黄色401号)、メタニルイエロー(黄色406号)、ファストグリーンFCF(緑色3号)、アリザリンシアニングリーンF(緑色201号)、ナフトールグリーンB(緑色401号)、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、インジゴ(青色201号)、スダンブルーB(青色403号)、レゾルシンブラウン(褐色201号)、アリズリンパープルSS(紫色201号)、ナフトールブルーブラック(黒色401号)を挙げることができる。また、疎水性の分子とは、人の肌表面に存在する皮脂および日常生活にて肌・衣服に付着する可能性のある油脂や汚れと定義することができ、具体的には、脂肪酸グリセリンエステルを成分とする油脂や皮脂;単純脂質、複合脂質、誘導脂質といった脂質;蝋等の構成成分である有機酸、特に人の肌表面に存在する油分全般を指し(広義の脂肪酸)、また、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸といった鎖状あるいは分枝鎖を含み、あるいは又、環状構造を有する狭義の脂肪酸を指す。脂肪酸を吸着する吸着剤、色素を吸着する吸着剤、本発明のクレンジング剤(洗浄剤、美容用あるいは洗浄用吸着剤)は、汗や油脂、口紅等の汚れ成分を除去するものであり、整肌機能を有する場合がある。
【0030】
また、上述したとおり、薬剤を担持するための本発明の担持体を、本発明における多孔質炭素材料から構成することができるが、この場合、担持体の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができる。そして、本発明における多孔質炭素材料を100重量部としたとき、1重量部乃至200重量部の薬剤を、本発明における多孔質炭素材料に吸着、担持させることにより、薬剤を放出可能な複合体(薬剤放出速度を適切に制御し得る薬剤/担持体の複合体であり、薬剤徐放剤)を得ることができる。ここで、係る薬剤/担持体の複合体(薬剤徐放剤)は、本発明における多孔質炭素材料、及び、薬剤から成り、多孔質炭素材料と薬剤の重量割合は、本発明における多孔質炭素材料を100重量部としたとき、薬剤が1重量部乃至200重量部である形態とすることができる。薬剤徐放剤の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができる。
【0031】
本発明における多孔質炭素材料に吸着、担持させる薬剤として、有機分子、ポリマー分子、蛋白質を挙げることができる。具体的には、例えば、ペントキシフィリン、プラゾシン、アシクロビル、ニフェジピン、ジルチアゼム、ナプロキセン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナク、フェンチアザック、吉草酸エストラジオール、メトプロロール、スルピリド、カプトプリル、シメチジン、ジドブジン、ニカルジピン、テルフェナジン、アテノロール、サルブタモール、カルバマゼピン、ラニチジン、エナラプリル、シムバスタチン、フルオキセチン、アルプラゾラム、ファモチジン、ガンシクロビル、ファムシクロビル、スピロノラクトン、5−asa、キニジン、ペリンドプリル、モルフィン、ペンタゾシン、パラセタモール、オメプラゾール、メトクロプラミド、アスピリン、メトフォルミンを挙げることができるし、全身性及び局所性の治療の観点から、各種のホルモン(例えば、インスリン、エストラジオール等)、喘息の治療薬(例えば、アルブテロール等)、結核の治療薬(例えば、リファンピシン、エタンブトール、ストレプトマイシン、イソニアジド、ピラジンアミド等)、癌の治療薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、アドリアマイシン、5−FU、パクリタキセル等)、高血圧の治療薬(例えば、クロニジン、プラゾシン、プロプラノロール、ラベタロール、ブニトロロール、レセルピン、ニフェジピン、フロセミド等)を挙げることができるし、特に分子量の大きな蛋白質の薬剤の担持に適しており、例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、トシリズマブ、セルトリズマブベコル、ナタリズマブ、リツキシマブ、ゲムツズマブ、アレムツズマブ、イブリツモマブ、チウキセタン、トシツモマブ、トラスツヅマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、バニツムバブ、セツキシマブ、アブシキシマブ、バリミズマブ、ラニビズマブ、オマリズマブのような抗体医薬を挙げることができるが、これらに限定するものではない。そして、これらの薬剤を溶解可能な有機溶剤に溶解し、その溶液中に本発明における多孔質炭素材料を浸漬し、次いで、溶媒及び余分な溶質を除去することで、多孔質炭素材料/薬剤の複合体を得ることができる。具体的な溶媒として、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム、2−クロロメタン、1−クロロメタン、へキサン、テトラヒドロフラン、ピリジン等を挙げることができる。
【0032】
本発明における多孔質炭素材料を、細胞培養足場材料(細胞培養材料)として用いることができる。また、例えば、花粉症対策マスクといった各種のマスクにおける吸着剤に、本発明における多孔質炭素材料を適用することができ、例えば、蛋白質を吸着することができる。本発明の吸着シートは、例えば、シート状部材や本発明の炭素/ポリマー複合体がセルロースから成る支持部材(例えば、不織布)と支持部材(例えば、不織布)との間に挟まれた構造を有する。また、本発明の炭素/ポリマー複合体にあっては、ポリマーからバインダーを構成している。ここで、バインダーとして、例えば、カルボキシニトロセルロースを挙げることができる。本発明の吸着シートあるいは本発明の炭素/ポリマー複合体から、例えば、空気浄化装置のフィルター、マスク、防護手袋や防護靴を構成することができる。
【0033】
本発明の機能性食品においては、その他、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、矯味剤、保存剤、安定化剤、着色剤、香料、ビタミン類、発色剤、光沢剤、甘味料、苦味料、酸味料、うまみ調味料、発酵調味料、酸化防止剤、酵素、酵母エキス、栄養強化剤が含まれていてもよい。また、機能性食品の形態として、粉末状、固形状、錠剤状、粒状、顆粒状、カプセル状、クリーム状、ゾル状、ゲル状、コロイド状を挙げることができる。尚、本発明の多孔質炭素材料は、その他、健康食品、栄養補助食品、健康補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、医薬部外品、あるいは、医薬品に含ませることもできる。健康食品、栄養補助食品及び健康補助食品は食品衛生法で規定され、栄養機能食品及び特定保健用食品は健康増進法・食品衛生法で規定され、医薬部外品及び医薬品は薬事法で規定される。
【0034】
また、本発明における多孔質炭素材料を、経皮吸収薬、化粧料成分や保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分、芳香剤といった多孔質炭素材料複合体に用いることもできる。化粧料成分として、疎水性の美容成分を有する物質(例えばダイゼイン、ゲニステイン、コラーゲン、セリシン、フィブロイン)を挙げることができるし、保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分として、ヒアルロン酸、アスタキサンチン、トコフェロール、トロロックス、コエンザイムQ10等の化粧水中に含まれる有効成分を挙げることができる。また、芳香剤として、リモネン、メントール、リナロール、バニリン等の放出物質を挙げることができる。例えば、これらの放出物質を液状として、多孔質炭素材料を浸漬、乾燥することで、多孔質炭素材料複合体を得ることができるが、このような方法に限定するものではない。
【0035】
窒素BET法とは、吸着剤(ここでは、多孔質炭素材料)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータを式(1)で表されるBET式に基づき解析する方法であり、この方法に基づき比表面積や細孔容積等を算出することができる。具体的には、窒素BET法により比表面積の値を算出する場合、先ず、吸着剤(多孔質炭素材料)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、吸着等温線を求める。そして、得られた吸着等温線から、式(1)あるいは式(1)を変形した式(1’)に基づき[p/{Va(p0−p)}]を算出し、平衡相対圧(p/p0)に対してプロットする。そして、このプロットを直線と見なし、最小二乗法に基づき、傾きs(=[(C−1)/(C・Vm)])及び切片i(=[1/(C・Vm)])を算出する。そして、求められた傾きs及び切片iから式(2−1)、式(2−2)に基づき、Vm及びCを算出する。更には、Vmから、式(3)に基づき比表面積asBETを算出する(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第66頁参照)。尚、この窒素BET法は、JIS R 1626−1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準じた測定方法である。
【0036】
a=(Vm・C・p)/[(p0−p){1+(C−1)(p/p0)}] (1)
[p/{Va(p0−p)}]
=[(C−1)/(C・Vm)](p/p0)+[1/(C・Vm)] (1’)
m=1/(s+i) (2−1)
C =(s/i)+1 (2−2)
sBET=(Vm・L・σ)/22414 (3)
【0037】
但し、
a:吸着量
m:単分子層の吸着量
p :窒素の平衡時の圧力
0:窒素の飽和蒸気圧
L :アボガドロ数
σ :窒素の吸着断面積
である。
【0038】
窒素BET法により細孔容積Vpを算出する場合、例えば、求められた吸着等温線の吸着データを直線補間し、細孔容積算出相対圧で設定した相対圧での吸着量Vを求める。この吸着量Vから式(4)に基づき細孔容積Vpを算出することができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第65頁参照)。尚、窒素BET法に基づく細孔容積を、以下、単に『細孔容積』と呼ぶ場合がある。
【0039】
p=(V/22414)×(Mg/ρg) (4)
【0040】
但し、
V :相対圧での吸着量
g:窒素の分子量
ρg:窒素の密度
である。
【0041】
メソ細孔の孔径は、例えば、BJH法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。BJH法は、細孔分布解析法として広く用いられている方法である。BJH法に基づき細孔分布解析をする場合、先ず、吸着剤(多孔質炭素材料)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、脱着等温線を求める。そして、求められた脱着等温線に基づき、細孔が吸着分子(例えば窒素)によって満たされた状態から吸着分子が段階的に着脱する際の吸着層の厚さ、及び、その際に生じた孔の内径(コア半径の2倍)を求め、式(5)に基づき細孔半径rpを算出し、式(6)に基づき細孔容積を算出する。そして、細孔半径及び細孔容積から細孔径(2rp)に対する細孔容積変化率(dVp/drp)をプロットすることにより細孔分布曲線が得られる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第85頁〜第88頁参照)。
【0042】
p=t+rk (5)
pn=Rn・dVn−Rn・dtn・c・ΣApj (6)
但し、
n=rpn2/(rkn−1+dtn2 (7)
【0043】
ここで、
p:細孔半径
k:細孔半径rpの細孔の内壁にその圧力において厚さtの吸着層が吸着した場合のコア半径(内径/2)
pn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔容積
dVn:そのときの変化量
dtn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの吸着層の厚さtnの変化量
kn:その時のコア半径
c:固定値
pn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔半径
である。また、ΣApjは、j=1からj=n−1までの細孔の壁面の面積の積算値を表す。
【0044】
マイクロ細孔の孔径は、例えば、MP法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。MP法により細孔分布解析を行う場合、先ず、吸着剤(多孔質炭素材料)に窒素を吸着させることにより、吸着等温線を求める。そして、この吸着等温線を吸着層の厚さtに対する細孔容積に変換する(tプロットする)。そして、このプロットの曲率(吸着層の厚さtの変化量に対する細孔容積の変化量)に基づき細孔分布曲線を得ることができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第72頁〜第73頁、第82頁参照)。
【0045】
JIS Z8831−2:2010 「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第2部:ガス吸着によるメソ細孔及びマクロ細孔の測定方法」、及び、JIS Z8831−3:2010 「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第3部:ガス吸着によるミクロ細孔の測定方法」に規定された非局在化密度汎関数法(NLDFT法)にあっては、解析ソフトウェアとして、日本ベル株式会社製自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−MAX」に付属するソフトウェアを用いる。前提条件としてモデルをシリンダ形状としてカーボンブラック(CB)を仮定し、細孔分布パラメータの分布関数を「no−assumption」とし、得られた分布データにはスムージングを10回施す。
【実施例1】
【0046】
実施例1は、本発明の第1の態様〜第3の態様に係る多孔質炭素材料、本発明の吸着剤、本発明のα−アミラーゼを吸着する吸着剤、本発明のリゾチームを吸着する吸着剤、本発明のベンゾピレンを吸着する煙草フィルター用の吸着剤に関する。
【0047】
実施例1の多孔質炭素材料は、泥炭を原料としている。そして、本発明の第1の態様に係る多孔質炭素材料の構成内容に沿って説明すると、実施例1の多孔質炭素材料において、非局在化密度汎関数法(NLDFT法)によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積V10-200の合計は0.5cm3/グラム以上である。また、本発明の第2の態様に係る多孔質炭素材料の構成内容に沿って説明すると、実施例1の多孔質炭素材料は、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つのピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積V3-20の合計の占める割合(V3-20/VTotal)は、全細孔の容積総計VTotalの0.3以上である。
【0048】
あるいは又、本発明の第3の態様に係る多孔質炭素材料の構成内容に沿って説明すると、実施例1の多孔質炭素材料において、BJH法によって求められた細孔の容積VBJHは0.5cm3/グラム以上である。
【0049】
実施例1にあっては、泥炭に対して不活性ガス中(窒素ガスやアルゴンガス等)若しくは真空中での高温熱処理といった処理、更には、このような処理の後の洗浄処理(各種ミネラル分を溶出させる)といった前処理を行うことで得られた物質(多孔質炭素材料前駆体であり、『比較例1』と呼ぶ)に賦活処理を行うことで、多孔質炭素材料を得た。賦活処理をガス賦活法とした。具体的には、管状型窒素雰囲気炉を使用し、賦活剤として水蒸気を用い、水蒸気雰囲気下、900゜Cにて、1時間(実施例1A)、3時間(実施例1B)、5時間(実施例1C)、賦活処理を行った。得られた実施例1A、実施例1B、実施例1Cの多孔質炭素材料、及び、比較例1の多孔質炭素材料前駆体(以下、これらを『試料』と呼ぶ)における細孔等の測定結果を、表1に示し、また、図1に示す。尚、図1は、非局在化密度汎関数法に基づき得られた細孔径分布の測定結果を示し、白三角印のデータは実施例1Aを示し、「×」印のデータは実施例1Bを示し、白丸印のデータは実施例1Cを示し、実線で表されたデータは比較例1を示す。
【0050】
尚、比表面積及び細孔容積を求めるための測定機器として、BELSORP−mini(日本ベル株式会社製)を用い、窒素吸脱着試験を行った。測定条件として、測定平衡相対圧(p/p0)を0.01〜0.99とした。そして、BELSORP解析ソフトウェアに基づき、比表面積及び細孔容積を算出した。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径分布は、上述した測定機器を用いた窒素吸脱着試験を行い、BELSORP解析ソフトウェアによりBJH法及びMP法に基づき算出した。更には、非局在化密度汎関数法に基づく測定にあっては、日本ベル株式会社製自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−MAX」を使用した。尚、測定に際しては、試料の前処理として、200゜Cで3時間の乾燥を行った。
【0051】
[表1]

【0052】
多孔質炭素材料によるα−アミラーゼ(数平均分子量:5.5×104)及びリゾチーム(数平均分子量:1.4×104)の吸着量を測定した。具体的には、α−アミラーゼあるいはリゾチームの燐酸緩衝液濃度を500ミリグラム/リットルとした。そして、調製した燐酸緩衝液の10.0ミリリットルのそれぞれに、0.010グラムの実施例1A、実施例1B、実施例1C、比較例1の試料を添加し、室温にて3時間振とうした。振とう後、500μmの細孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルターを用いて、燐酸緩衝液から試料を除去した。そして、濾液の吸光度をUV可視吸光度測定により測定し、モル濃度(『吸着後のモル濃度』と呼ぶ)を求めた。尚、試料を添加する前の燐酸緩衝液濃度(『初期モル濃度』と呼ぶ)と比較することにより、吸着量を算出した。試料1グラム当たりの吸着量(ミリグラム/グラム)を、以下の式に基づき算出した。その結果を表2に示す。
【0053】
また、メチレンブルー(数平均分子量:320)及びブラック5(数平均分子量:900)の吸着量を測定した。吸着前のメチレンブルー及びブラック5の水溶液濃度は任意に決めた。そして、調製した水溶液50.0ミリリットルのそれぞれに、0.010グラムの試料を添加し、室温にて3時間振とうした。振とう後、500μmの細孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルターを用いて、水溶液から試料を除去した。そして、濾液の吸光度をUV可視吸光度測定により測定し、吸着後のモル濃度を求めた。尚、試料を添加する前の初期モル濃度と比較することにより、吸着量を算出した。試料1グラム当たりの吸着量(ミリグラム/グラム)を、以下の式に基づき算出した。その結果を表2に示す。
【0054】
(試料1グラム当たりの吸着量)=
(溶質の分子量)×{(初期モル濃度)−(吸着後のモル濃度)}
/(1000ミリリットル当たりの試料の量)
【0055】
[表2]

【0056】
表2から、実施例1A、実施例1B、実施例1Cの多孔質炭素材料のα−アミラーゼ及びリゾチームの吸着量は、比較例1の多孔質炭素材料前駆体のα−アミラーゼ及びリゾチームの吸着量よりも多く、しかも、水蒸気賦活時間が長いほど、即ち、直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積V10-200が大きいほど、また、VTotalの値が大きいほど、吸着量が多くなった。これは、直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積V10-200が大きいほど、また、VTotalの値が大きいほど、数平均分子量の大きな分子あるいは有機物を良く吸着することを示している。即ち、数平均分子量1×103乃至1×106の分子(あるいは有機物)を吸着すること、更には、数平均分子量1×104乃至1×106の分子(あるいは有機物)をより良く吸着すること、更には、数平均分子量1×106の分子(あるいは有機物)を、より一層良く吸着することを示している。
【0057】
以上に説明したとおり、多孔質炭素材料の細孔の容積、細孔径分布といったパラメータの違い等に依存して、分子の吸着特性が異なることが判った。そして、特に、分子量の小さな分子の吸着に関する多孔質炭素材料の挙動と、分子量の大きな分子の吸着に関する多孔質炭素材料の挙動とに相違が認められ、比較例1の多孔質炭素材料前駆体(活性炭)と比べて、実施例1における多孔質炭素材料は、高分子量を有する物質をより一層良く吸着することが判った。従って、吸着させるべき分子の分子量と多孔質炭素材料のパラメータとの間の関係や製造方法との関係等を種々の試験に基づき求めることで、多孔質炭素材料によって選択的に分子を吸着することが可能となり、例えば、吸着を必要とする様々な医療用途において大きな効果が期待される。
【0058】
次に、多孔質炭素材料によるベンゾピレン(数平均分子量:252)の吸着量を測定した。具体的には、ベンゾピレンと、蒸留水と、エチルアルコールとを用いて、4.58×10-5モル/リットルの濃度の溶液を調製した。そして、調製した溶液40.0ミリリットルに、0.010グラムの多孔質炭素材料(実施例1A、実施例1B、実施例1C)を添加し、室温にて1時間攪拌した。攪拌後、ポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルターを用いて溶液から多孔質炭素材料を除去した。そして、濾液の吸光度をUV可視吸光度測定により測定し、吸着前の調製した溶液の吸光度に基づき、以下の式からベンゾピレン吸着率を算出した。また、市販のピート炭を比較例1A、クラレケミカル株式会社製の活性炭であるクラレコールを比較例1Bとして、同様に、ベンゾピレン吸着率を求めた。その結果を表3に示すが、実施例1A〜実施例1Cの吸着剤を、ベンゾピレンを吸着する煙草フィルター用の吸着剤として用いるとき、比較例1A〜比較例1Bと比較して、発癌性の高いベンゾピレンを高い吸着率で吸着していた。即ち、数平均分子量1×102台の分子(あるいは有機物)を効果的に吸着することが判った。尚、ベンゾピレンから成る吸着剤は、煙草フィルターを構成する材料に混在させてもよいし、煙草フィルター内に層状の吸着剤として配置してもよい。
【0059】
ベンゾピレン吸着率(%)=100−(吸着後の吸光度/吸着前の吸光度×100)
【0060】
[表3]
ベンゾピレン吸着率(%)
実施例1A 94
実施例1B 96
実施例1C 94
比較例1A 79
比較例1B 52
【実施例2】
【0061】
実施例2は、本発明の経口投与吸着剤及び医療用吸着剤に関する。実施例2にあっては、実施例1において説明した多孔質炭素材料を、疾患の治療及び予防に有用な医薬内服薬等の経口投与吸着剤及び医療用吸着剤として用いた。具体的には、実施例1において説明した多孔質炭素材料を経口投与吸着剤あるいは医療用吸着剤の分野に適用する場合、本発明の吸着剤として、例えば、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料から成り、クレアチニンを吸着する経口投与吸着剤あるいは医療用吸着剤、アリザリンシアニングリーンを吸着する経口投与吸着剤あるいは医療用吸着剤、リゾチームを吸着する経口投与吸着剤あるいは医療用吸着剤、アルブミンを吸着する経口投与吸着剤あるいは医療用吸着剤、数平均分子量が1×103乃至1×104の有機物(例えば、有機分子、若しくは、蛋白質)を吸着する経口投与吸着剤あるいは医療用吸着剤とすればよい。あるいは又、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料を、周知の構成、構造を有する血液浄化カラムにおける血液浄化カラム用の充填剤(吸収剤)として用いることもできる。あるいは又、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料を含むクレンジング剤(脂肪酸を吸着するクレンジング剤)を製造した。このクレンジング剤(洗浄剤、美容用あるいは洗浄用吸着剤)は、汗や油脂、口紅等の汚れ成分を除去するものであり、場合によっては、整肌機能を有する。
【実施例3】
【0062】
実施例3は、本発明の水浄化用吸着剤に関する。実施例3にあっては、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料を、例えば、水の浄化、広くは流体の浄化のために用いる。あるいは又、水から、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素といった活性酸素種(酸化ストレス物質)を除去することができる。
【0063】
純水にメチレンブルー及びブラック5を溶解あるいは分散させた試験液各40ミリリットルに対し、実施例1A〜実施例1C、及び、比較例1の試料10ミリグラムを投入し、ミックスローター(攪拌機)を用いて100rpmで攪拌した。そして、攪拌後、濾過し、得られた濾液の吸光度変化を測定したところ、実施例1A〜実施例1Cのいずれにおいても、比較例1よりも、メチレンブルー及びブラック5を、より一層、吸着することができた。
【0064】
実施例3の浄水器の断面図を図2に示す。実施例3の浄水器は、連続式浄水器であり、水道の蛇口の先端部に浄水器本体を直接取り付ける蛇口直結型の浄水器である。実施例3の浄水器は、浄水器本体10、浄水器本体10の内部に配置され、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料11が充填された第1充填部12、綿13が充填された第2充填部14を備えている。水道の蛇口から排出された水道水は、浄水器本体10に設けられた流入口15から、多孔質炭素材料11、綿13を通過して、浄水器本体10に設けられた流出口16から排出される。
【0065】
あるいは又、模式的な一部断面図を図3の(A)に示すように、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料を、キャップ部材30の付いたボトル(所謂ペットボトル)20に組み込んでもよい。具体的には、キャップ部材30の内部に実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料(濾材40)を配し、濾材40が流出しないように、フィルター31,32をキャップ部材30の液体流入側及び液体排出側に配置する。そして、ボトル20の内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)21を、キャップ部材30の内部に配された濾材40を通過させて飲むことで、あるいは、使用することで、例えば、液体(水)を浄化、洗浄する。尚、キャップ部材30は、通常、図示しない蓋を用いて閉じておく。
【0066】
あるいは又、模式的な断面図を図3の(B)に示すように、透水性を有する袋50の中に実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料(濾材40)を格納し、ボトル20内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)21の中に、この袋50を投入する形態を採用することもできる。尚、参照番号22は、ボトル20の口部を閉鎖するためのキャップである。
【実施例4】
【0067】
実施例4は、本発明の薬剤を担持するための担持体及び薬剤徐放剤に関する。実施例4にあっては、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料に基づき、これらの多孔質炭素材料を含む担持体及び薬剤徐放剤を製造した。薬剤を人体内で有効に作用させるためには、適切な量の薬剤を、適切な時間、作用させることが望ましい。そして、そのためには、薬剤の放出速度を制御できる担持体を用いることが好ましい。係る担持体に薬剤を吸着させれば、一定量の薬剤を連続的に放出することが可能となる。このような担持体/薬剤の複合体は、例えば、皮膚を通じて薬剤を伝達する経皮吸収局所作用を有する経皮剤や、経口剤として用いることができる。具体的には、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料0.10グラムを、イブプロフェン0.10グラム/へキサン10ミリリットルの溶液に一晩含浸させた後、メンブレンフィルターにより濾過し、40゜Cにおいて真空乾燥を行うことで、担持体及び薬剤徐放剤を得た。
【実施例5】
【0068】
実施例5は、本発明の細胞培養足場材料(細胞培養材料)に関する。実施例5の細胞培養足場材料にあっては、具体的には、例えば、粉末のポリ乳酸やカゼインやグルコース等と、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料とを混合し、成型することで、厚さ0.5mmの薄膜から成るシート状の細胞培養足場材料を得た。この細胞培養足場材料を構成する多孔質炭素材料に、細胞の成長因子となる蛋白質等を吸着、徐放させることで、細胞培養足場材料の上で細胞の培養を容易に、且つ、確実に行うことができた。具体的には、細胞培養足場材料に必要な細胞成長因子(例えば、上皮成長因子、インスリン様成長因子、トランスフォーミング成長因子、神経成長因子等)を細胞培養足場材料を構成する多孔質炭素材料に吸着させ、徐放させることで、効率よく各種細胞を培養することができた。
【実施例6】
【0069】
実施例6は本発明のマスク、炭素/ポリマー複合体及び吸着シートに関する。実施例6にあっては、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料を、花粉症対策マスクにおける吸着剤、炭素/ポリマー複合体及び吸着シートに適用した。花粉症対策マスクの模式図を図4の(A)に示し、花粉症対策マスクの本体部分(吸着シート)の模式的な断面構造を図4の(B)に示すが、この花粉症対策マスクの本体部分は、セルロースから成る不織布1と不織布1との間に、シート状にした多孔質炭素材料が挟み込まれた構造を有する。実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料をシート状とするためには、例えば、カルボキシニトロセルロースをバインダーとした炭素/ポリマー複合体1を形成するといった方法を採用すればよい。一方、実施例6の吸着シートは、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料から成るシート状部材(具体的には、カルボキシニトロセルロースをバインダーとした炭素/ポリマー複合体1)、並びに、シート状部材を支持する支持部材(具体的には、シート状部材を挟み込んだ支持部材である不織布2)から成る。花粉症対策マスクといった各種のマスクにおける吸着剤に、本発明における多孔質炭素材料を適用することで、例えば、花粉の蛋白部位が多孔質炭素材料に吸着することで、花粉を効果的に吸着することができると考えられる。
【実施例7】
【0070】
実施例7は、本発明の機能性食品に関する。実施例7にあっては、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料に基づき、これらの多孔質炭素材料を含む機能性食品を製造した。具体的には、多孔質炭素材料、微結晶セルロースにカルボキシメチルセルロースナトリウムをコーティングした微結晶セルロース製剤、甘味料、及び、調味料を混合し、水に分散させ、混錬、成型(賦形)するといった方法に基づき、機能性食品を製造した。
【実施例8】
【0071】
実施例8は、実施例1の変形であり、実施例1において説明した多孔質炭素材料に機能性材料を付着させた多孔質炭素材料複合体に関し、この多孔質炭素材料複合体によって、例えば、化粧料や水浄化用吸着剤を構成する。具体的には、実施例8にあっては、実施例1A〜実施例1Cの多孔質炭素材料に基づき、活性酸素除去効果を有する金属系材料や光触媒材料といった機能性材料をこれらの多孔質炭素材料に付着させた多孔質炭素材料複合体を製造した。
【0072】
このような多孔質炭素材料複合体にあっては、細孔サイズや配列によって光触媒材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、光触媒作用による分解を効果的に生じさせることができる。また、化粧料にあっては、このような細孔サイズや配列によって活性酸素除去効果を有する金属系材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に担持させることができる。それ故、例えば、ナノサイズの白金微粒子をコロイド化するために保護コロイド剤を用いることが不可欠ではなくなり、急性炎症、組織障害、老化の要因と考えられるスーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素といった活性酸素種に対する高い抗酸化作用を発揮することができる。また、水から、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素といった活性酸素種(酸化ストレス物質)を除去することができる。
【0073】
尚、多孔質炭素材料を得た後、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させればよい。また、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる前に、賦活処理を施せばよい。ここで、機能性材料として、白金(Pt)、あるいは、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を挙げることができ、機能性材料の多孔質炭素材料への付着の形態として、微粒子の状態での付着、薄膜の状態での付着を例示することができ、具体的には、多孔質炭素材料の表面(細孔内を含む)に、微粒子として付着している状態、薄膜状に付着している状態、海・島状(多孔質炭素材料の表面を「海」とみなした場合、機能性材料が「島」に相当する)に付着している状態を挙げることができる。尚、付着とは、異種の材料間の接着現象を指す。多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる方法として、機能性材料を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、多孔質炭素材料の表面に無電解メッキ法(化学メッキ法)又は化学還元反応にて機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、熱処理を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、超音波照射処理を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、ゾル・ゲル反応を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法を挙げることができる。
【0074】
実施例8にあっては、機能性材料として、多孔質炭素材料に付着した金属系材料(具体的には、白金微粒子,白金ナノ粒子)を用いた。より具体的には、実施例8にあっては蒸留水182ミリリットルに対して5ミリモルのH2PtCl6水溶液を8ミリリットル、L−アスコルビン酸(表面保護剤)を3.5ミリグラム添加して、暫く撹拌した。その後、実施例1A〜実施例1Cにおいて説明した多孔質炭素材料を0.43グラム添加して、20分間、超音波照射した後、40ミリモルのNaBH4水溶液を10ミリリットル加え、3時間撹拌した。その後、吸引濾過し、120゜Cで乾燥させることによって、黒色の粉末試料である実施例8の多孔質炭素材料複合体あるいは化粧料(多孔質炭素材料複合体)を得た。
【0075】
以上、好ましい実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。また、本発明における多孔質炭素材料に関して、窒素BET法に基づく比表面積や細孔径の値について適切な範囲を説明したが、その説明は、比表面積の値や細孔径の値が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。即ち、上記の適切な範囲は、あくまでも本発明の効果を得る上で特に好ましい範囲であり、本発明の効果が得られるのであれば、比表面積の値等が上記の範囲から多少外れてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1・・・炭素/ポリマー複合体、2・・・不織布、10・・・浄水器本体、11・・・多孔質炭素材料、12・・・第1充填部、13・・・綿、14・・・第2充填部、15・・・流入口、16・・・流出口、20・・・ボトル、21・・・液体あるいは水、22・・・キャップ、30・・・キャップ部材、31,32・・・フィルター、40・・・濾材、50・・・袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料。
【請求項2】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つのピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、全細孔の容積総計の0.3以上である多孔質炭素材料。
【請求項3】
泥炭を原料とし、BJH法によって求められた細孔の容積が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料。
【請求項4】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る吸着剤。
【請求項5】
数平均分子量1×102乃至1×106の分子を吸着する請求項4に記載の吸着剤。
【請求項6】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る、α−アミラーゼを吸着する吸着剤。
【請求項7】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る、リゾチームを吸着する吸着剤。
【請求項8】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る、ベンゾピレンを吸着する煙草フィルター用の吸着剤。
【請求項9】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る経口投与吸着剤。
【請求項10】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る医療用吸着剤。
【請求項11】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る血液浄化カラム用の充填剤。
【請求項12】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る水浄化用吸着剤。
【請求項13】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る、脂肪酸を吸着するクレンジング剤。
【請求項14】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る、薬剤を担持するための担持体。
【請求項15】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る薬剤徐放剤。
【請求項16】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る細胞培養足場材。
【請求項17】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る吸着剤を備えたマスク。
【請求項18】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料、及び、バインダーから成る炭素/ポリマー複合体。
【請求項19】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料から成るシート状部材、並びに、シート状部材を支持する支持部材から構成された吸着シート。
【請求項20】
泥炭を原料とし、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-8m乃至2×10-7mの細孔の容積の合計が0.5cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を含む機能性食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−211043(P2012−211043A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77354(P2011−77354)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】