説明

多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法

【課題】 コンデンサから瞬間的に大電流を供給することができる多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】 プリント配線板は、内層銅パターン28を形成した基板20の上面と下面に銅張り積層板120、122を積層することにより形成され、該多層プリント配線板10に形成された開口部10Aに集積回路チップ100を収容する。基板20上に形成された内層銅パターン28には、セラミックから成るチップコンデンサCが実装されている。このため、チップコンデンサCから集積回路100までの配線長が短くなり、該配線のインダクタンス分を低下させれるので、集積回路100へ瞬時的に大電流を供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、コンデンサを備える多層プリント配線板及び該多層プリント配線板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】CPU等の集積回路チップを載置するパッケージを構成する多層プリント配線板には、コンデンサが設けられることがある。即ち、高速化に伴い、CPUが瞬間的に大きな電流を必要とするために、多層プリント配線板にコンデンサを設け、該コンデンサに電荷を蓄えておき、大電流を供給できるようにしている。
【0003】ここで、セラミックの多層線板においては、図5(A)に示すように絶縁層250の両面に導体層252、254を形成することで、コンデンサとしていた。一方、樹脂基板を用いる多層プリント配線板においては、図5(B)に示すように、多層プリント配線板の表面にチップコンデンサCを載置していた。これは、該多層プリント配線板は、樹脂基板にて構成してあり、樹脂の誘電率がセラミックと比較して低いため、樹脂基板の上面と下面に導体層を設けることで多層プリント配線板内部にコンデンサを形成しても、高い容量を得ることができないためである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図5(B)に示すように多層プリント配線板の表面にチップコンデンサCを配設すると、該チップコンデンサCから集積回路チップ100への距離が離れ、該集積回路チップ100までの配線のインダクタンス分が大きくなるため、集積回路チップ100へ瞬間的に供給し得る電流量を大きくすることが困難であった。
【0005】本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、コンデンサから瞬間的に大電流を供給することができる多層プリント配線板を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、上記目的を達成するため、層間絶縁層32を介在させて複数の導体回路28、38を積層してなる多層プリント配線板において、内層の導体回路28にチップコンデンサCを実装したことを技術的特徴とする。
【0007】また、請求項2では、請求項1において、前記層間絶縁層32が樹脂からなり、チップコンデンサCが誘電材料としてセラミックを用いることを技術的特徴とする。
【0008】請求項3の発明は、上記目的を達成するため、樹脂基板20、120、122を積層する多層プリント配線板の製造方法において、第1の樹脂基板20上に導体回路28を形成するする工程と、該第1樹脂基板上に形成された導体回路28にチップコンデンサCを実装する工程と、該導体回路28の上に、該チップコンデンサCの形状に相当する開口32Aの形成された層間絶縁フィルム32を載置する工程と、前記層間絶縁フィルム32の上に第2の樹脂基板120を載置し、前記第1樹脂基板20と該第2の樹脂基板120とを接着させる工程と、を有することを特徴とする。
【0009】請求項1では、内層の導体回路にチップコンデンサを実装してあるため、該多層プリント配線板に搭載される集積回路までの配線の距離が短くなり、該配線のインダクタンス分を低下させれるため、該集積回路へ瞬時に大電流を供給することができる。
【0010】請求項2では、チップコンデンサの誘電材料として高誘電率のセラミックを用いるため、高い容量を得ることができる。
【0011】請求項3では、導体回路の上に、該チップコンデンサの形状に相当する開口の形成された層間絶縁フィルムを載置して、第1樹脂基板と第2樹脂基板とを接着するため、厚みのあるチップコンデンサを内層導体回路に実装して多層プリント配線板を形成することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板について図を参照して説明する。先ず、多層プリント配線板10の構成について、図3を参照して説明する。この第1実施形態のプリント配線板は、内層銅パターン(内層導体回路)28を形成した基板20の上面と下面に、銅張り積層板120、122を積層することにより形成され、該多層プリント配線板に形成された開口部10Aに集積回路チップ100を収容する。この基板20上に形成された内層銅パターン28には、セラミックから成る高容量のチップコンデンサCが実装されている。該チップコンデンサCは、図示しないマザーボードからの電源ラインに接続され、集積回路チップ100に内層銅パターン28等の配線を介して電流を供給するように構成されている。
【0013】この第1実施形態の多層プリント配線板10は、内層銅パターン28にチップコンデンサCを実装してあるため、該多層プリント配線板に搭載される集積回路100までの配線長が短くなり、該配線のインダクタンス分を低下させれるので、集積回路100へ瞬時的に大電流を供給することができる。
【0014】引き続き、上述した層間絶縁剤及び線間絶縁剤を用いる多層プリント配線板の製造工程について、図1〜図2を参照して説明する。厚さ1mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板20の両面に18μmの銅箔22がラミネートされている銅張積層板20aを出発材料とする(図1(A))。まず、この銅張積層板20aをドリル削孔し、スルーホール用の通孔24を形成する(図1(B))。次に、めっきレジストを形成した後、無電解めっき処理してスルーホール26を形成する(図1(C))。さらに、銅箔22を常法に従いパターン状にエッチングすることにより、基板20の両面に内層銅パターン28を形成する(図1(D))。
【0015】次に、チップコンデンサ(村田製作所製、GRM36 長さ1mm、幅0.5mm、厚さ0.5mm)を実装する内層銅パターン28の部位に、はんだ30を印刷する(図1(E))。ここで、はんだとしては、9:1はんだが望ましい。そして、チップコンデンサCをはんだ30を印刷した内層銅パターン28に載置し、リフロー炉を通してはんだ30を溶融し、該内層銅パターン28にコンデンサCを取り付ける(図2(F))。その後、基板20を洗浄してはんだ30から溶け出したフラックス等を除去する。
【0016】次に、図2(G)に示すようにプリプレグ(松下電工製 R−1661)を3枚重ねたプリプレグ積層体32に、チップコンデンサCを収容する部位にルータ等により開口32Aを設ける。基板20の上面側に該プリプレグ積層体32を介在させて片面銅張り積層板120を載置する。同様に、基板20の下面に、1枚のプリプレグ34を介在させて片面銅張り積層板122を配置する。
【0017】該上側の片面銅張り積層板120、基板20、下側の片面銅張り積層板122を加熱・加圧して一体化する(図2(H))。次に、ドリルでスルーホール用の通孔34を穿設する(図2(I))。そして、めっきレジストを形成した後、無電解めっき処理してスルーホール36を形成し、最上面及び最下面の銅箔22を常法に従いパターン状にエッチングすることにより外層銅パターン38を形成し(図2(J))、さらにソルダーレジスト層SRを設け、その開口部に半田クリームを印刷してリフローし、半田バンプBPを形成し、多層プリント配線板を完成する(図3)。
【0018】なお、第1実施形態では、基板20と銅張り積層板120、122とを接着させる層間絶縁層(接着剤層)としてプリプレグ32、34を用いたが、種々の樹脂からなる接着用フィルムを用いて、基板を接着させることができる。また、第1実施形態においては、プリプレグを重ねたプリプレグ積層体32に、チップコンデンサCを収容する通孔からなる開口32Aを設けたが、通孔ではなく、凹部を設けてチップコンデンサCを収容することも可能である。
【0019】引き続き、本発明の第2実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法について図4を参照して説明する。ここで、図1及び図2を参照して上述した第1実施形態の多層プリント配線板では、複数の銅張り積層板をプリプレグを介して積層した。これに対して、第2実施形態では、樹脂層をビルトアップにより形成する。なお、図1(A)〜図1(F)に示した第1実施形態の工程は、第2実施形態でも同様であるため、図1に示す工程については説明を省略する。
【0020】先ず、エポキシ樹脂にエポキシ樹脂粒子を混合した樹脂絶縁剤を、基板20表面にロールコータにて均一に塗布すると共に、スルーホール26内に充填する。さらに水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥を行い、厚さ0.6m、即ち、チップコンデンサCの厚みよりも厚く層間絶縁層60を形成する(図4(G))
【0021】層間絶縁層60を形成した基板20の両面に、黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯により露光する。これをDMTG溶液でスプレー現像することにより、層間絶縁層60にバイアホールとなる開口を形成する。さらに、当該基板を超高圧水銀灯により露光し、その後、加熱処理をすることにより、フォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れた開口(バイアホール形成用開口)60aを形成する。(図4(H))。
【0022】開口60aの形成された基板20を、クロム酸に2分間浸漬し、樹脂マトリックス中のエポキシ樹脂粒子を溶解して、当該樹脂層間絶縁層60の表面を粗面とし、この粗面化処理を行った基板20にパラジウム触媒を付与することにより、樹脂層間絶縁層60及びバイアホール用開口60aに触媒核を付ける。
【0023】上記の触媒核付与の処理を終えた基板20の両面に、液状レジストをロールコーターを用いて塗布し、乾燥した厚さ30μmレジスト層62を形成する(図4(I))。
【0024】ついで、導体回路に対応するパターンの形成されたフォトマスクフィルムを載置して紫外線を照射し、露光した後、フォトマスクフィルムを取り除き、レジスト層をDMTGで溶解現像し、基板20上に導体回路パターン部の抜けたメッキ用レジストを形成し、更に、超高圧水銀灯にて露光し、その後、加熱処理を行い、層間絶縁層60の上に線間絶縁層となる永久レジスト62を形成する(図4(J))。
【0025】上記永久レジスト62の形成された基板20に、予めめっき前処理(具体的には触媒核の活性化)を施し、その後、無電解銅めっき浴による無電解めっきによって、レジスト非形成部に厚さ15μm程度の無電解銅めっき64を析出させて、外層銅パターン70、バイアホール72を形成することにより、アディティプ法による導体層を形成する(図4(K))。
【0026】このようにしてアディティプ法による導体層を形成した後、上記工程を繰り返して、層間絶縁層、外層銅パターンから成る導体層(図示せず)をビルトアップすることにより、多層プリント配線板を完成する。
【0027】
【発明の効果】以上のように、請求項1では、内層の導体回路にチップコンデンサを実装してあるため、該多層プリント配線板に搭載される集積回路までの配線の距離が短くなり、該配線のインダクタンス分を低下させれるため、該集積回路に瞬時に大電流を供給することができる。
【0028】請求項2では、チップコンデンサの誘電材料として高誘電率のセラミックを用いるため、高い容量を得ることができる。
【0029】請求項3では、導体回路の上に、該チップコンデンサの形状に相当する開口の形成された層間絶縁フィルムを載置して、上層の樹脂基板を接着するため、厚みのあるチップコンデンサを内層導体回路に実装して多層プリント配線板を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造を示す行程図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る多層プリント配線板の製造を示す行程図である。
【図3】第1実施形態の多層プリント配線板の構成を示す説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る多層プリント配線板の製造を示す行程図である。
【図5】図5(A)は、従来技術に係るセラミック多層配線板の構成を示す説明図であり、図5(B)は、従来技術に係る樹脂製多層プリント配線板の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
20 基板
22 銅箔
28 内層銅パターン
32 プリプレグ積層体
32A 開口部
36 スルーホール
38 外層銅パターン
60 層間絶縁層
72 バイヤホール
70 外層銅パターン
100 集積回路チップ
120、122 片面銅張り積層板
C コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 層間絶縁層を介在させて複数の導体回路を積層してなる多層プリント配線板において、内層の導体回路にチップコンデンサを実装したことを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項2】 前記層間絶縁層が樹脂からなり、チップコンデンサが誘電材料としてセラミックを用いることを特徴とする請求項1のチップコンデンサ。
【請求項3】 樹脂基板を積層するプリント配線板の製造方法において、第1の樹脂基板上に導体回路を形成するする工程と、該第1樹脂基板上に形成された導体回路にチップコンデンサを実装する工程と、該導体回路の上に、該チップコンデンサの形状に相当する開口の形成された層間絶縁フィルムを載置する工程と、前記層間絶縁フィルムの上に第2の樹脂基板を載置し、前記1の樹脂基板と前記第2樹脂基板とを接着させる工程と、を有することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図4】
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