説明

多数枚取り基板の生産管理方法

【課題】小片基板の仕掛品・在庫品の発生を抑制しつつ歩留りを向上し、部品を浪費することなく生産効率を向上でき、トレーサビリティ情報をサーチすることが容易になる多数枚取り基板の生産管理方法を提供する。
【解決手段】複数種類の小片基板からなる製品構成グループの複数グループ分の小片基板が当初一体的に結合され、部品実装工程で所定の部品が実装された後に基板分離工程で各小片基板に分離され、各小片基板が製品構成グループ単位でそれぞれ製品に組み込まれる多数枚取り基板1の生産管理方法であって、小片基板の種類を表す基板種類名CAD1、CAD2と、多数枚取り基板1内で小片基板を区別するボード番号B1〜B6と、多数枚取り基板1内で製品構成グループを区別するグループ番号G1〜G3とを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の小片基板が当初一体的に結合され部品実装後に分離されて使用される多数枚取り基板の生産管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の部品が実装された基板を生産する装置として、はんだ印刷機、部品実装機、リフロー機、基板検査機などがあり、これらを基板搬送装置で連結して基板生産ラインを構築する場合が多い。昨今、1枚のパネルに分離可能なミシン目を形成し、パネルに対するはんだ印刷工程、部品実装工程、およびリフロー工程を終了した後に、基板分離工程でミシン目に沿って複数のボードに分離する生産方法が増えてきている。これにより、複数のボードのはんだ印刷工程、部品実装工程、リフロー工程、および検査工程をまとめて実施できるので、ボードの生産効率が格段に向上する。元になるパネルは多数枚取り基板、多面取り基板、割り基板などと呼ばれ、分離後のボードは小片基板などと呼ばれている。
【0003】
多数枚取り基板を用いる生産方法では、多数枚取り基板内の複数の小片基板が単一種類の場合、複数種類の場合、および複数種類の複数グループからなる場合がある。小片基板が単一種類の生産方法では、工程をまとめて実施することが主たる目的である。一方、小片基板が複数種類の場合は、1枚の多数枚取り基板で1製品を完結させるという目的もある。つまり、製品を構成する複数種類の小片基板からなる製品構成グループを1枚の多数枚取り基板によって生産する。これにより、製品を構成する各小片基板を組み合わせで生産できる点、および各小片基板の生産枚数を自動的に揃えられる点などのメリットが生じる。例えば、折り畳み式の携帯電話に組み込む2種類1組の小片基板の生産において、大きなメリットが生じる。
【0004】
また、多数枚取り基板への部品実装では、複数の部品の種類と基板上の座標位置とを対応付けた実装CADデータを小片基板ごとに用意し、一つの小片基板への部品実装を終了すると次の小片基板に移る部品実装シーケンスが用いられている。そして、不良が発見された場合に、当該の多数枚取り基板全体を不良とするのではなく、不良が発見された当該不良小片基板のみを不良としてスキップ対象とし、以降は当該不良小片基板を除いた部品実装シーケンスを用いる生産管理を行っている。これにより、部品実装後に当該の多数枚取り基板を分離して、不良小片基板以外の残りの小片基板を通常通りに生産することができる。
【0005】
なお、小片基板を区別したりその種類を分かりやすくしたりするために、目視やセンサ、カメラなどにより確認できるボード番号や基板種類名を、各小片基板に文字やバーコードなどで表示する場合が多い。多数枚取り基板では、通常ボード番号や基板種類名などを用いて生産管理が行われる。この種の多数枚取り基板の生産管理に関連する技術例が特許文献1に開示されている。
【0006】
特許文献1の部品内蔵基板の製造方法は、独立した複数の領域(小片基板)に区画された第1および第2基板(多数枚取り基板)と、第2基板の各領域に実装された電子部品を埋め込む部品埋込層とを有し、第2基板の不良領域のみならず第1基板の不良領域をも考慮して電子部品の実装を行うようにしている。つまり、第2基板の或る領域が不良のときに電子部品を実装せず、これに加えて、第1基板の別の或る領域が不良のときにも第2基板の対応する領域に電子部品を実装しない。これにより、無駄に電子部品を消費するのを防止することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−260112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、不良発見時に当該の多数枚取り基板の当該不良小片基板を除いた残りの小片基板を通常通りに生産する従来の管理方法は、必ずしも合理的とは言えない。つまり、特許文献1に例示されるように多数枚取り基板内の小片基板が単一種類の場合には良いが、小片基板が複数種類あって製品構成グループを構成する場合には問題点がある。例えば、製品構成グループの特定種類の小片基板で不良が発生しやすい場合に、他の種類の小片基板を余分に生産することになる。余分な小片基板は、仕掛品・在庫品として長く滞留して保管の手間を要し、最終的に廃棄されて歩留りを低下させる。また、余分な小片基板を生産するために部品を浪費するとともに、生産時間も余分にかかって生産効率が低下する。
【0009】
さらに、製品構成グループを構成する小片基板の組み合わせを固定して製品に組み込まなければいけない場合がある。例えば、製品構成グループを構成する第1小片基板に発振素子が実装され、第2小片基板に発振素子の関連回路素子が実装され、かつ発振素子の特性個体差を関連回路素子の素子定数の選定によって調整する回路構成が考えられる。この回路構成では、発振素子と選定済の関連回路素子とを組み合わせて使用するために、小片基板の組み合わせを固定する必要がある。したがって、第1小片基板および第2小片基板の一方で不良が発見された場合に、他方は良品であっても使用できず結果的に仕掛品・在庫品になる。
【0010】
また、従来の小片基板を単位として順次実装を行う部品実装シーケンスは必ずしも最適とは言えず、生産効率を向上できる余地が考えられる。例えば、前述の発振素子および関連回路素子を含む回路構成では、まず発振素子の特性個体差を測定して第1小片基板に実装し、続けて関連回路素子を選定して第2小片基板に実装し、その後第1小片基板に戻り別の部品を実装すると生産効率が向上する場合がある。このように、小片基板を往き来する部品実装シーケンスを用いることで生産効率を向上できる余地がある。
【0011】
さらに、近年の製品品質保証思想の一環で、製品に組み込んだ小片基板のトレーサビリティ情報(履歴情報)が必要とされる場合も多い。トレーサビリティ情報は、製品構成グループを構成する各小片基板の組み合わせを固定するか否かに関わらず必要であり、容易にサーチできることが好ましい。
【0012】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、小片基板の仕掛品・在庫品の発生を抑制しつつ歩留りを向上し、部品を浪費することなく生産効率を向上でき、トレーサビリティ情報をサーチすることが容易になる多数枚取り基板の生産管理方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する請求項1に係る多数枚取り基板の生産管理方法の発明は、複数種類の小片基板からなる製品構成グループの複数グループ分の前記小片基板が当初一体的に結合され、部品実装工程で所定の部品が実装された後に基板分離工程で各前記小片基板に分離され、各前記小片基板が前記製品構成グループ単位でそれぞれ製品に組み込まれる多数枚取り基板の生産管理方法であって、前記小片基板の種類を表す基板種類名と、前記多数枚取り基板内で前記小片基板を区別するボード番号と、前記多数枚取り基板内で前記製品構成グループを区別するグループ番号とを用いる。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記部品実装工程が終了する以前にいずれかの多数枚取り基板の或る小片基板で不良が発見された場合に、当該の多数枚取り基板の当該不良小片基板および前記当該不良小片基板と同じグループ番号の小片基板をスキップ対象として、以降の部品実装工程を実施しない。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1または2において、不良が発見されずに前記部品実装工程が良好に終了した小片基板からなる製品構成グループの数量が前記製品の生産予定数に達すると、前記部品実装工程を終了する。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記部品実装工程で前記多数枚取り基板に実装する複数の部品の実装順序を定める部品実装シーケンスを、各前記製品構成グループ内で完結させている。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、複数の多数枚取り基板の各前記小片基板を固有に識別するボードID番号をさらに用い、前記製品を固有に識別する製品ID番号と当該製品に組み込まれた小片基板のボードID番号とを対応付ける。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る多数枚取り基板の生産管理方法の発明では、多数枚取り基板内の各小片基板に基板種類名、ボード番号およびグループ番号を付して生産管理を行う。これにより、各小片基板を基板種類ごとおよび製品構成グループごとに管理して余分に小片基板を生産することを抑制できるので、仕掛品・在庫品の発生を抑制しつつ歩留りを向上できる。
【0019】
請求項2に係る発明では、いずれかの多数枚取り基板の或る小片基板で不良が発見された場合に、当該不良小片基板および同じグループ番号の小片基板をスキップ対象として、以降の部品実装工程を実施しない。これにより、製品構成グループを構成する小片基板の組み合わせを固定して用いる場合に、グループ内の或る小片基板で不良が発見されたときに、片割れになるグループ内の他の小片基板を無駄に生産することが無くなり、仕掛品・在庫品の発生を抑制して歩留りを向上できる。また、片割れになる小片基板を無駄に生産することによる部品の浪費がなく、生産時間が余分にかかって生産効率が低下することもない。
【0020】
請求項3に係る発明では、部品実装工程が良好に終了した小片基板からなる製品構成グループの数量が製品の生産予定数に達すると、部品実装工程を終了する。これにより、製品の生産予定数を越える小片基板を生産することが無くなり、仕掛品・在庫品の発生を抑制して歩留りを向上できる。また、余分に小片基板を生産することによる部品の浪費がなく、生産時間が余分にかかって生産効率が低下することもない。
【0021】
請求項4に係る発明では、多数枚取り基板に実装する複数の部品の実装順序を定める部品実装シーケンスを、製品構成グループ内で完結させている。つまり、部品実装シーケンスは、多数枚取り基板内のグループ内の小片基板の間で往き来できるものとし、グループ間を越えて往き来しないものとしている。これにより、複数の部品の実装順序の自由度が従来よりも大きくなって、生産効率を向上できる余地が拡がる。また、不良が発生したときにグループ単位でスキップ対象の設定を行えるので、実装順序を細かく変更制御する必要がなく、生産効率が低下することもない。仮に、自由度をさらに大きくするためにグループ間を越えて往き来する部品実装シーケンスを用いると、不良が発見されたときに当該グループの小片基板への実装をスキップさせる変更制御が著しく煩雑化し、生産効率も低下する。
【0022】
請求項5に係る発明では、複数の多数枚取り基板の各小片基板を固有に識別するボードID番号をさらに用い、製品を固有に識別する製品ID番号と当該製品に組み込まれた小片基板のボードID番号とを対応付ける。これにより、製品に組み込まれた小片基板のトレーサビリティ情報をサーチすることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態の生産管理方法の対象となる多数枚取り基板を例示説明する図である。
【図2】多数枚取り基板を生産する基板生産ラインを説明する図である。
【図3】チップシュータ(部品実装機)の部品実装シーケンスを模式的に説明する図であり、(1)は第1実施形態のシーケンス、(2)は従来技術のシーケンスを示している。
【図4】第1実施形態の生産管理方法を例示説明する図であり、はんだ検査機によってはんだ不良が発見された場合を説明する図である。
【図5】第1実施形態の生産管理方法を例示説明する図であり、基板外観検査機によって部品実装不良が発見された場合を説明する図である。
【図6】第2実施形態の生産管理方法の対象となる複数の多数枚取り基板を例示説明する図である。
【図7】第2実施形態でボードID番号の用法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1実施形態の多数枚取り基板の生産管理方法について、図1〜図5を参考にして説明する。図1は、第1実施形態の生産管理方法の対象となる多数枚取り基板1を例示説明する図である。多数枚取り基板1は、矩形の薄板(パネル)であり、2種類各3枚すなわち合計6枚の小片基板B1〜B6が当初一体的に結合されて形成されている。多数枚取り基板1は、部品実装工程で所定の部品が実装された後に、基板分離工程でミシン目11に沿って外枠12が外され各小片基板B1〜B6に分離される。
【0025】
多数枚取り基板1の図中の上側に配置されている3枚の小片基板B1〜B3は、同じ種類であり同形同大の矩形薄板で、互いに回路パターンおよび実装部品も同一になっている。下側に配置されている3枚の小片基板B4〜B6は、同じ種類であり上側の3枚の小片基板B1〜B3よりも大きい同形同大の矩形薄板で、互いに回路パターンおよび実装部品も同一になっている。6枚の小片基板B1〜B6の種類を表す基板種類名が、それぞれの表面の左側下方寄りに表示されている。すなわち、上側の3枚の小片基板B1〜B3で基板種類名CAD1が表示され、下側の3枚の小片基板B4〜B6で基板種類名CAD2が表示されている。また、6枚の小片基板B1〜B6を区別するため、それぞれの表面の右側下方寄りにボード番号B1〜B6が表示されている。図1では、便宜的にボード番号B1〜B6と同じ符号を各小片基板B1〜B6に付している。
【0026】
ここで、基板種類名CAD1の小片基板B1〜B3と、基板種類名CAD2の小片基板B4〜B6とは、組み合わせを固定して製品に組み込む製品構成グループを構成している。すなわち、多数枚取り基板1上で上下に隣接して配置された小片基板B1と小片基板B4とが第1の製品構成グループG1を構成し、小片基板B2と小片基板B5とが第2の製品構成グループG2を構成し、小片基板B3と小片基板B6とが第3の製品構成グループG3を構成する。補足すると、小片基板B1は、必ず小片基板B4と組み合わせで用いられ、小片基板B5と組み合わせられることはない。したがって、仮に小片基板B4で不良が発見されると、片割れになる小片基板B1は使用できなくなる。6枚の小片基板B1〜B6の各製品構成グループG1〜G3のグループ番号G1〜G3が、それぞれの表面のボード番号B1〜B6の下側に表示されている。
【0027】
なお、基板種類名CAD1、CAD2、ボード番号B1〜B6、およびグループ番号G1〜G3は互いに区別できれば任意の名称や番号を用いることができ、表示方法も文字表示やバーコード表示など自由であり、表示位置も図1に限定されない。また、基板種類名、ボード番号、およびグループ番号のうちの2つ以上を1つに複合化させた複合番号を用いて表示することもできる。
【0028】
次に、多数枚取り基板1を生産する基板生産ライン3について、図2を参考にして説明する。基板生産ライン3は、はんだ印刷機4、はんだ検査機5(SPI=Solder-Paste Inspector)、チップシュータ6(Chip Shooter)、基板外観検査機7(AOI=Automatic Outlook Inspector)、チッププレーサ8(Chip Placer)、および図略のリフロー機、基板分離機などが直列に配置されて構成されている。また、各機4〜8を統括制御する図略のホストコンピュータが設けられている。多数枚取り基板1は、基板搬送装置91〜95により上記の各機4〜8を記載順(図1の左方から右方)に搬送されて、所定の生産工程が実施される。
【0029】
はんだ印刷機4は、多数枚取り基板1にペースト状のはんだを印刷する。はんだ印刷機4には、例えば、回路構成の型紙に相当するスクリーンを備えたスクリーン印刷機や、はんだを噴射するノズルを備えたノズル印刷機などを用いることができる。はんだ検査機5は、多数枚取り基板1におけるはんだ印刷状態の良否を検査する。はんだ検査機5には、例えば、基板の表面状態を撮像するカメラを備え、撮像データを基準データと比較して良否を判定する装置を用いることができる。チップシュータ6は部品実装機の一種であり、多数枚取り基板1にチップ抵抗やチップコンデンサなどの小形の電子部品を実装する。なお、チップシュータ6は、複数のモジュール形部品実装機が直列に連結配置された部品実装ラインであってもよい。
【0030】
基板外観検査機7は、多数枚取り基板1における小形の電子部品の実装状態の良否を検査する。基板外観検査機7にも、撮像カメラを備える装置を用いることができる。チッププレーサ8は部品実装機の一種であり、多数枚取り基板1にコネクタなどの大形部品をはんだ付けあるいは嵌合結合により実装する。図略のリフロー機は、ペースト状のはんだを加熱して溶融させ、冷却させることではんだを固化してはんだ付けを完結させる。図略の基板分離機は、多数枚取り基板1を6枚の小片基板B1〜B6に分離する。はんだ検査機5および基板外観検査機7の検査結果は、ホストコンピュータを介して各機4〜8に通知達される。ホストコンピュータは、後述するスキップ対象の設定および各機4〜8への通知、および後述する製品構成グループの生産数の管理を行う。
【0031】
次に、チップシュータ6およびチッププレーサ8の部品実装シーケンスは類似しているので、前者6の部品実装シーケンスを例にして説明する。図3は、チップシュータ6の部品実装シーケンスを模式的に説明する図であり、(1)は第1実施形態のシーケンス、(2)は従来技術のシーケンスを示している。部品実装シーケンスは、多数枚取り基板1に実装する複数の部品の実装順序を定め、さらに部品の種類と多数枚取り基板1上の座標位置とを対応付けるものであり、実装CADデータとして保持されている。
【0032】
図3の(1)に示される第1実施形態で、部品実装シーケンスは製品構成グループ内で完結しており、実装CADデータもグループを単位として設定されている。つまり、図中に実線の矢印で示されるように、先ずグループ番号G1の小片基板B1および小片基板B4、次いでグループ番号G2の小片基板B2および小片基板B5、最後にグループ番号G3の小片基板B3および小片基板B6の順序で部品実装が行われる。そして、図中に破線の矢印で示されるように、グループ内の小片基板の間で往き来できるものとし、グループ間を越えて往き来しないものとしている。
【0033】
参考までに、図3の(2)に示される従来技術では、一つの小片基板への部品実装を終了すると次の小片基板に移るように、小片基板B1から小片基板B6までボード番号B1〜B6の順序にしたがう部品実装シーケンスが用いられており、実装CADデータは各小片基板を単位として設定されている。
【0034】
次に、第1実施形態の多数枚取り基板1の生産管理方法について説明する。第1実施形態の生産管理方法では、小片基板B1〜B6の種類を表す基板種類名CAD1、CAD2と、小片基板B1〜B6を区別するボード番号B1〜B6と、製品構成グループG1〜G3を区別するグループ番号G1〜G3とを用いる。図4および図5は、第1実施形態の生産管理方法を例示説明する図である。第1実施形態では、部品実装工程が終了する以前にいずれかの多数枚取り基板の或る小片基板で不良が発見された場合に、当該の多数枚取り基板の当該不良小片基板および当該不良小片基板と同じグループ番号の小片基板をスキップ対象として、以降の部品実装工程を実施しない。
【0035】
例えば、図4に例示されるように、はんだ検査機5によって多数枚取り基板1Xのボード番号B1の小片基板B1Xではんだ不良が発見されると、当該不良小片基板B1Xをスキップ対象(図中の実線の×印参照)とする。さらに、当該不良小片基板B1Xのグループ番号G1と同じグループ番号G1の全ての小片基板をスキップ対象とする。多数枚取り基板1Xの例では、具体的には小片基板B4をスキップ対象とする(図中の破線の×印参照)。そして、チップシュータ6およびチッププレーサ8における部品実装工程は、スキップ対象となったグループ番号G1の小片基板B1X及びB4には実施されず(スキップ処理)、それ以外のグループ番号G2の小片基板B2及びB5ならびにグループ番号G3の小片基板B3及びB6に対して実施される。
【0036】
また、例えば、図5に例示されるように、基板外観検査機7によって多数枚取り基板1Yのボード番号B5の小片基板B5Yで部品実装不良が発見されると、当該不良小片基板B5Yをスキップ対象(図中の実線の×印参照)とする。さらに、当該不良小片基板B5Yのグループ番号G2と同じグループ番号G2の全ての小片基板をスキップ対象とする。多数枚取り基板1Yの例では、具体的には小片基板B2をスキップ対象とする(図中の破線の×印参照)。そして、チッププレーサ8における部品実装工程は、スキップ対象となったグループ番号G2の小片基板B2及びB5Yには実施されず(スキップ処理)、それ以外のグループ番号G1の小片基板B1及びB4ならびにグループ番号G3の小片基板B3及びB6に対して実施される。
【0037】
上述のスキップ処理は、部品実装シーケンスおよび実装CADデータがグループを単位として設定されていることから、容易に実施できる。また、はんだ検査機5および基板外観検査機7以外で不良が発見されたときにも、同様にスキップ対象の設定が行われる。例えば、チップシュータ6で部品実装を良好に行えなかったことが明らかな場合、基板外観検査機7の検査結果を待たずにスキップ対象としてもよい。不良の原因もはんだ不良と部品実装不良に限定されず、例えば、はんだ印刷機4に搬入された多数枚取り基板1自体に欠陥がある場合も含まれる。なお、図略のリフロー機および基板分離機では、スキップ対象が設定されているか否かに関わらず、多数枚取り基板1全体を一括してリフロー工程および基板分離工程を実施する。
【0038】
さらに、第1実施形態の多数枚取り基板1の生産管理方法では、不良が発見されずに部品実装工程が良好に終了した小片基板からなる製品構成グループの数量が製品の生産予定数に達すると、部品実装工程を終了する。つまり、良好な小片基板からなる製品構成グループの生産数を逐次カウントアップし、生産予定数に達すると部品実装工程を終了する。図1に例示される多数枚取り基板1では、不良が発見されないと生産数は3ずつ増加する。また、図4および図5に例示される多数枚取り基板1Xおよび1Yではそれぞれ、生産数は2だけ増加する。
【0039】
なお、製品構成グループの生産数が製品の生産予定数に達した時点で基板生産ライン3の途中に残っている生産途中の多数枚取り基板1については、最後の基板分離工程まで終了させるようにしてもよい。また、製品の生産予定数ちょうどでなく若干の余裕を持って生産グループ数を管理してもよい。これらにより、最小限必要な予備の製品構成グループを持つことができる。
【0040】
第1実施形態の多数枚取り基板1の生産管理方法では、多数枚取り基板1のグループG1〜G3内の或る小片基板(例えばB1X、B5Y)で不良が発見されたときに、グループ内の他の小片基板(例えばB4、B2)へは以降の部品実装工程を実施しない。したがって、当該不良小片基板の片割れになる小片基板を無駄に生産することが無くなる。また、部品実装工程が良好に終了した小片基板からなる製品構成グループの数量が製品の生産予定数に達すると、部品実装工程を終了する。したがって、製品の生産予定数を越える余分な小片基板を生産することが無くなる。これらにより、仕掛品・在庫品の発生を抑制して歩留りを向上できる。また、余分な小片基板を生産することによる部品の浪費がなく、生産時間が余分にかかって生産効率が低下することもない。
【0041】
さらに、多数枚取り基板1に実装する複数の部品の実装順序を定める部品実装シーケンスを、製品構成グループG1〜G3内で完結させている。つまり、部品実装シーケンスは、多数枚取り基板1内のグループG1〜G3内の小片基板の間で往き来できるものとし、グループ間を越えて往き来しないものとしている。これにより、複数の部品の実装順序の自由度が従来よりも大きくなって、生産効率を向上できる余地が拡がる。また、不良が発生したときにグループ単位でスキップ対象の設定を行えるので、実装順序を細かく変更制御する必要がなく、生産効率が低下することもない。仮に、自由度をさらに大きくするためにグループ間を越えて往き来する部品実装シーケンスを用いると、不良が発見されたときに当該グループの小片基板への実装をスキップさせる変更制御が著しく煩雑化し、生産効率も低下する。
【0042】
次に、第2実施形態の多数枚取り基板の生産管理方法について、第1実施形態と異なる点を主に説明する。図6は、第2実施形態の生産管理方法の対象となる複数の多数枚取り基板101〜103を例示説明する図である。多数枚取り基板101〜103の形状は第1実施形態の多数枚取り基板1と同一であり、各小片基板に基板種類名CAD1、CAD2、ボード番号B1〜B6、およびグループ番号G1〜G3が表示されている点も同様である。また、図2に示される基板生産ライン3によって生産される点も同様である。
【0043】
第2実施形態では、複数の多数枚取り基板101〜103の各小片基板B1〜B6を固有に識別するボードID番号をさらに用いる。具体的には、図6に示されるように、第1の多数枚取り基板101の6枚の小片基板B1〜B6のそれぞれの表面の左側上方寄りにはボードID番号「ID1−1」〜「ID1−6」が表示されている。同様に、第2の多数枚取り基板102の6枚の小片基板B1〜B6にはボードID番号「ID2−1」〜「ID2−6」が表示され、第3の多数枚取り基板103の6枚の小片基板B1〜B6にはボードID番号「ID3−1」〜「ID3−6」が表示されている。
【0044】
ボードID番号は、各小片基板を固有に識別することができれば任意の番号を用いることができ、表示方法も文字表示やバーコード表示など自由であり、表示位置も図6に限定されない。また、ボードID番号、基板種類名、ボード番号、およびグループ番号のうちの2つ以上を1つに複合化させた複合番号を用いて表示することもできる。
【0045】
次に、第2実施形態におけるボードID番号「ID1−1」〜の「ID3−6」の用法について説明する。図7は、第2実施形態でボードID番号「ID1−1」〜の「ID3−6」の用法を説明する図である。図7では、便宜的にボードID番号「ID1−1」〜「ID2−6」と同じ符号を各小片基板に付している。図中の生産管理データベース200は、基板生産ライン3とは別に設置され、単一のコンピュータまたは複数のコンピュータが連携して構成される生産管理装置である。生産管理データベース200は、製品P1〜P4に組み込まれる小片基板「ID1−1」〜「ID2−6」およびその他の部品や部材のトレーサビリティ情報(履歴情報)を管理する。
【0046】
第2実施形態では、基板生産ライン3で小片基板「ID1−1」〜「ID2−6」を生産したときに、そのボードID番号と生産時のトレーサビリティ情報とを対応付けて生産管理データベース200に登録する。トレーサビリティ情報には、スキップ対象とされたこと、所定の部品が実装されていないことなどが当然含まれている。生産された小片基板「ID1−1」〜「ID2−6」は、製品組立現場に輸送されて、製品P1〜P4の組み立てに提供される。
【0047】
製品組立現場で、組立作業者は生産管理データベース200にアクセスし、小片基板「ID1−1」〜「ID2−6」に表示されているボードID番号に基づいてトレーサビリティ情報を照会する。これにより、組立作業者は、小片基板「ID1−1」〜「ID2−6」の使用可否を判断することができる。例えば、スキップ対象とされた履歴が残されている小片基板「ID1−1」、「ID1−4」、「ID2−2」、および「ID2−5」を未使用とし、他は使用可と判断する。
【0048】
これにより、組立作業者は、2種類の基板種類名CAD1、CAD2からなる2枚1組の小片基板の組み合わせを固定して製品P1〜P4に組み込む。さらに、組立作業者は、組み込んだ結果を生産管理データベース200に登録して、製品ID番号とボードID番号とを対応付ける。図7の例では、製品ID番号P1とボードID番号「ID1−2」および「ID1−5」とを対応付ける。同様に、製品ID番号P2とボードID番号「ID1−3」および「ID1−6」とを対応付け、製品ID番号P3とボードID番号「ID2−1」および「ID2−4」とを対応付け、製品ID番号P4とボードID番号「ID2−3」および「ID2−6」とを対応付ける。
【0049】
第2実施形態では、前述したようにボードID番号を用いて製品ID番号との対応付けを行うことで、製品に組み込まれた小片基板のトレーサビリティ情報をサーチすることが容易になる。
【0050】
なお、本発明は、複数種類の小片基板の組み合わせを固定せず、自由に組み合わせる場合にも応用できる。また、上述の第1および第2実施形態の他にも、様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1、1X、1Y、101〜103:多数枚取り基板 11:ミシン目 12:外枠
3:基板生産ライン
4:はんだ印刷機
5:はんだ検査機(SPI=Solder-Paste Inspector)
6:チップシュータ(Chip Shooter)
7:基板外観検査機(AOI=Automatic Outlook Inspector)
8:チッププレーサ(Chip Placer)
91〜95:基板搬送装置
200:生産管理データベース
CAD1、CAD2:基板種類名
B1〜B6:ボード番号(小片基板)
B1X、B5Y:不良小片基板
G1〜G3:グループ番号(製品構成グループ)
「ID1−1」〜「ID3−6」:ボードID番号
P1〜P4:製品ID番号(製品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の小片基板からなる製品構成グループの複数グループ分の前記小片基板が当初一体的に結合され、部品実装工程で所定の部品が実装された後に基板分離工程で各前記小片基板に分離され、各前記小片基板が前記製品構成グループ単位でそれぞれ製品に組み込まれる多数枚取り基板の生産管理方法であって、
前記小片基板の種類を表す基板種類名と、前記多数枚取り基板内で前記小片基板を区別するボード番号と、前記多数枚取り基板内で前記製品構成グループを区別するグループ番号とを用いる多数枚取り基板の生産管理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記部品実装工程が終了する以前にいずれかの多数枚取り基板の或る小片基板で不良が発見された場合に、当該の多数枚取り基板の当該不良小片基板および前記当該不良小片基板と同じグループ番号の小片基板をスキップ対象として、以降の部品実装工程を実施しない多数枚取り基板の生産管理方法。
【請求項3】
請求項1または2において、不良が発見されずに前記部品実装工程が良好に終了した小片基板からなる製品構成グループの数量が前記製品の生産予定数に達すると、前記部品実装工程を終了する多数枚取り基板の生産管理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、前記部品実装工程で前記多数枚取り基板に実装する複数の部品の実装順序を定める部品実装シーケンスを、各前記製品構成グループ内で完結させた多数枚取り基板の生産管理方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、複数の多数枚取り基板の各前記小片基板を固有に識別するボードID番号をさらに用い、前記製品を固有に識別する製品ID番号と当該製品に組み込まれた小片基板のボードID番号とを対応付ける多数枚取り基板の生産管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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