説明

多段光増幅器及びその制御方法

【課題】SN比の高い多段光増幅器及びその制御方法を提供する。
【解決手段】初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段光増幅器及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信はpoint to point(電話回線を通じてコンピュータをネットワークに接続すること)伝送やメトロ/アクセスネットワークにおける超高速・大容量通信の為に必要不可欠な技術のひとつであり、これまで多くの技術が開発されてきた。
【0003】
現在、そしてこれからの光ファイバ通信を支える技術として、波長分割多重と光増幅器があげられる。WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)は、光パルスのスペクトルを周波数軸上で直交させて伝送する方法である。これにより、伝送容量が飛躍的に増大し、周波数利用効率の改善も期待できる。1990年のエルビウム添加光ファイバ増幅器の実用化は、光ファイバの損失を周期的に補償することを可能とし、伝送距離が大幅に伸びることとなった。この両技術を組み合わせた光増幅器は帯域内の利得を一定にする機能を有している(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2003−174421号公報
【特許文献2】特開2006−166478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高速、大容量の通信を実現しようとする際には光増幅器で発生する自然放出光雑音が問題となる。この自然放出光雑音による信号劣化を表す指標のひとつとして雑音指数がある。
光増幅器では一般的にトータルパワー制御を行うので、すべての光エネルギーを検出してしまい、信号光と自然放出光雑音との区別が出来ない。その為、光増幅器の利得を所望の値に制御しても信号光の利得を所望の値に制御することは出来ないので、発生する自然放出光雑音を考慮して利得を増やす必要がある。自然放出光雑音による信号劣化を補正するパラメータとして自然放出光雑音補正量を定義する。この自然放出光雑音補正量を出力パワーに加算することで信号光の利得を一定にすることが出来る。
ここで、トータルパワーとは、雑音を含む光出力であり、信号光パワーとは雑音を含まない光出力である。
【0005】
しかし、利得一定制御の多段光増幅器の場合、各段の利得を一定にして出力部で自然放出光雑音補正を行うと、波長数が少ない場合、入力パワーが低くなる場合に、初段の信号光利得が非常に小さくなってしまい、雑音指数の劣化(SN比の低下)を招く。
【0006】
そこで、本発明の目的は、SN比の高い多段光増幅器及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、利得が一定になるようにした多段光増幅器において、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得より大きくしたことによって自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧するようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、複数の光増幅部を直列接続して利得が一定になるようにした多段光増幅器において、初段の光増幅部は、希土類添加光ファイバ増幅回路と、該希土類添加光ファイバ増幅回路の入力端及び出力端の少なくとも一方に励起光を入力する励起光源と、前記希土類添加光ファイバ増幅回路の入出力端にそれぞれ接続された受光素子と、前記両受光素子からの出力信号の差分を一定にすると共に自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得より大きくしたことで抑圧するように制御する制御回路とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、複数の光増幅部を直列接続して利得が一定になるようにした多段光増幅器において、各光増幅部は、希土類添加光ファイバ増幅回路と、該希土類添加光ファイバ増幅回路の入力端及び出力端の少なくとも一方に励起光を入力する励起光源と、前記希土類添加光ファイバ増幅回路の入出力端にそれぞれ接続された受光素子と、前記両受光素子からの出力信号の差分を一定にするように制御する制御回路とを備え、初段の光増幅器の制御回路は、自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得より大きくしたことで抑圧するようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、複数の光増幅部を直列接続して利得が一定になるようにした多段光増幅器において、各光増幅部は、希土類添加光ファイバ増幅回路と、該希土類添加光ファイバ増幅回路の入力端及び出力端の少なくとも一方に励起光を入力する励起光源と、前記希土類添加光ファイバ増幅回路の入出力端にそれぞれ接続された受光素子と、前記両受光素子からの出力信号の差分を一定にするように制御する制御回路とを備え、初段の光増幅器の制御回路は、各光増幅器の利得の初期設定値に基づいて信号入力パワー、波長数を変更し、信号出力パワーが期待値に等しい場合にはその利得に設定し、信号出力パワーが期待値より小さい場合には利得を大きくし、信号出力パワーが期待値より大きい場合には利得を小さくすることで自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧するようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、利得が一定になるように制御する多段光増幅器の制御方法において、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得より大きくしたことによって自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧することを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、利得が一定になるように制御する多段光増幅器の制御方法において、初段の光増幅器の制御回路は、各光増幅器の利得の初期設定値に基づいて信号入力パワー、波長数を変更し、信号出力パワーが期待値に等しい場合にはその利得に設定し、信号出力パワーが期待値より小さい場合には利得を大きくし、信号出力パワーが期待値より大きい場合には利得を小さくすることで 自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧することを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る多段光増幅器の一実施の形態は、利得が一定になるようにした多段光増幅器において、 初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得より大きくしたことによって自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧するようにしたことを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【0022】
本発明に係る多段増幅器の他の実施の形態は、複数の光増幅部を直列接続して利得が一定になるようにした多段光増幅器において、初段の光増幅部は、希土類添加光ファイバ増幅回路と、希土類添加光ファイバ増幅回路の入力端及び出力端の少なくとも一方に励起光を入力する励起光源と、希土類添加光ファイバ増幅回路の入出力端にそれぞれ接続された受光素子と、両受光素子からの出力信号の差分を一定にすると共に 自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得より大きくしたことで抑圧するように制御する制御回路とを備えたことを特徴とする。
【0023】
ここで、希土類元素としては、エルビウム(Er)、プラセオジム(Pr)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)が挙げられる。
例えば、希土類元素としてエルビウムを用いた場合には、1.53〜1.62μmの光信号を増幅し、プラセオジム(Pr)を用いた場合には、1.3μm帯の光信号を増幅し、ツリウム(Tm)を用いた場合には1.45〜1.51μm帯の光信号を増幅する。
【0024】
上記構成によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【0025】
本発明に係る多段増幅器の他の実施の形態は、複数の光増幅部を直列接続して利得が一定になるようにした多段光増幅器において、各光増幅部は、希土類添加光ファイバ増幅回路と、希土類添加光ファイバ増幅回路の入力端及び出力端の少なくとも一方に励起光を入力する励起光源と、希土類添加光ファイバ増幅回路の入出力端にそれぞれ接続された受光素子と、両受光素子からの出力信号の差分を一定にするように制御する制御回路とを備え、初段の光増幅器の制御回路は、自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得より大きくしたことで抑圧するようにしたことを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【0027】
本発明に係る多段増幅器の他の実施の形態は、複数の光増幅部を直列接続して利得が一定になるようにした多段光増幅器において、各光増幅部は、希土類添加光ファイバ増幅回路と、希土類添加光ファイバ増幅回路の入力端及び出力端の少なくとも一方に励起光を入力する励起光源と、希土類添加光ファイバ増幅回路の入出力端にそれぞれ接続された受光素子と、両受光素子からの出力信号の差分を一定にするように制御する制御回路とを備え、初段の光増幅器の制御回路は、各光増幅器の利得の初期設定値に基づいて信号入力パワー、波長数を変更し、信号出力パワーが期待値に等しい場合にはその利得に設定し、信号出力パワーが期待値より小さい場合には利得を大きくし、信号出力パワーが期待値より大きい場合には利得を小さくすることで 自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧するようにしたことを特徴とする。
【0028】
上記構成によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【0029】
本発明に係る多段増幅器の制御方法の一実施の形態は、利得が一定になるように制御する多段光増幅器の制御方法において、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得より大きくしたことによって自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧することを特徴とする。
【0030】
上記構成によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【0031】
本発明に係る多段増幅器の制御方法の他の実施の形態は、利得が一定になるように制御する多段光増幅器の制御方法において、初段の光増幅器の制御回路は、各光増幅器の利得の初期設定値に基づいて信号入力パワー、波長数を変更し、信号出力パワーが期待値に等しい場合にはその利得に設定し、信号出力パワーが期待値より小さい場合には利得を大きくし、信号出力パワーが期待値より大きい場合には利得を小さくすることで 自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧することを特徴とする。
【0032】
上記構成によれば、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得よりも大きくすることにより、自然放出光によって減少した信号成分を初段で増加させて相対的に雑音を減少させることができ、得られた高いSN比の信号が他段で維持されるので、高いSN比を得ることができる。
【0033】
すなわち、本発明によれば、利得一定制御の光増幅器の初段利得に自然放出光雑音補正量を加算することで雑音指数劣化を低減することができる。また、信号光劣化の補正をEDF初段で実施することで、特に波長数が少ない場合やチャネル辺りの入力パワーが低い場合の雑音指数の増加を抑圧することができる。
【0034】
なお、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【実施例1】
【0035】
〔発明の特徴〕
本発明は、光増幅器を用いた波長分割多重光伝送システムに関し、多段光増幅器において利得一定制御時に自然放出光雑音による雑音指数増加を抑圧することを特徴としている。
図1は、本発明に係る多段光増幅器の一実施例を示す概念図である。
図1において、光増幅部1では、信号光がEDF10に入射された際に、励起LD13から励起光を供給することにより増幅して出力する。光入力部11の入力パワーを測定する受光素子14と光出力部12の出力パワーを測定する受光素子15の差分をある一定の値とすることで利得一定制御を実現する。尚、図1において、制御回路は省略されている。
光増幅部2、光増幅部3でも同様の操作を行う。
光増幅部1、光増幅部2、及び光増幅部3を合わせて多段光増幅器100とする。このような多段光増幅器100に対して、トータルパワーで利得一定制御を行うと、EDFで発生する自然放出光雑音により信号光が劣化するので、自然放出光雑音による信号光劣化分の利得補正を行う。この利得補正の際に、励起LD13から供給する励起光を増加させて、光出力部32で必要な信号光利得にすることで雑音指数の増加を抑圧する。
このようにして、本願発明では、光増幅部による信号光劣化を初段の光増幅部の利得を増加させて信号光劣化を抑えているので、自然放出光雑音による雑音指数増加を抑圧することができる。
【0036】
(各部の構成)
図1を参照すると、本発明の一実施例としての多段光増幅器100が示されている。
図1において、多段光増幅器100は信号光がEDF10に入射された際に励起LD13から励起光を供給することにより増幅して出力される。光入力部11の入力パワーを測定する受光素子14と光出力部12の出力パワーを測定する受光素子15の差分を一定とすることで利得一定制御を実現する。
光増幅部2、光増幅部3でも同様の操作を行う。
光増幅部1,2間及び光増幅部2,3間にはなんらかの損失が挿入されることを想定している。この多段光増幅器100において、EDF10,EDF20,EDF30で発生した自然放出光雑音により信号光が劣化する。このとき光増幅部1の利得を増加させるために励起LD13から供給する励起光を増加させて、光出力部32で必要な信号光利得にすることで雑音指数の増加を抑圧する。
【0037】
図2は、図1に示した光増幅部1の詳細な構成図である。
図2において、必要な利得増加量は入力パワーに依存するので、受光素子14で検知した入力パワーに応じて制御回路16にて電流源17を制御して励起LD13に与える電流値を変動させる。この時光増幅部1の利得が想定している利得よりも低い場合には励起LD13に与える電流値を増加させ、低い場合には励起LD13に与える電流値を減少させる。光増幅部2では入力パワーを測定する受光素子24と出力パワーを測定する受光素子25の差分を一定とすることで利得一定制御を実現する。光増幅部3では入力パワーを測定する受光素子34と出力パワーを測定する受光素子35の差分を一定とすることで利得一定制御を実現する。これは各光増幅部において利得増加量を計算するよりも、制御が簡単になり、また雑音指数の抑圧効果も上昇するためである。
【0038】
本構成において、励起LDは前方励起のみで記載しているが、後方励起のみ、もしくは双方向励起で構成してもよい。
本構成において、励起LDの励起光の波長については980nm帯、1480nm帯のどちらで構成してもよい。
本構成において、EDFは他の希土類元素を含む増幅媒体で構成してもよい。
本構成において、多段光増幅器は3段構成としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、2段や4段、またはそれ以上の段数で構成してもよい。
【0039】
図3は、図1に示した多段光増幅器の動作を説明するための説明図である。図4は、本発明に係る多段光増幅器の制御方法の一実施例を示すフローチャートの一例である。
図1に示した多段光増幅器の利得一定制御光増幅器の動作について述べる。
光増幅部1前後での利得をG1とし、光増幅部2前後での利得をG2とし、光増幅部3前後での利得をG3とする。尚、光増幅部1前後での初期の利得をG1'とする(ステップS1)。
各光増幅部の信号入力パワー及び波長数を変更する(ステップS2)。
信号出力パワーを確認する(ステップS3)。
信号出力パワーが期待値に等しい場合にはその利得としてのG'1に設定し(ステップS4)、信号出力パワーが期待値より小さい場合には利得を大きくし(ステップS5)、信号出力パワーが期待値より大きい場合には利得を小さくする(ステップS6)ことで自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧することができる。
【0040】
ここで、光増幅部1,2間の損失をL12とし、光増幅部2,3間の損失をL23とすると、光増幅器としての利得はG1-L12+G2-L23+G3となる。
【0041】
今、Psigの信号光が入力されたとすると、補正前のトータル出力パワーは、数式(1)となる。
Ptotal = Psig+ G1-L12+G2-L23+G3 …(1)
この際、光増幅部1で発生する自然放出光雑音のパワーをPase1とし、光増幅部2で発生する自然放出光雑音のパワーをPase2とし、光増幅部3で発生する自然放出光雑音のパワーをPase3とすると、信号光の出力パワーは数式(2)となる。
Psig+ G1-L12+G2-L23+G3-(Pase1+Pase2+Pase3) …(2)
ここでG1'=G1+Pase1+Pase2+Pase3とすると、信号光の出力パワーをPtotalとすることが出来る。
G2、G3を変更することでも信号光の出力パワーを目標値にすることは可能であるが、初段の利得を増加させた方が、より雑音指数の改善量が大きくなる。
【0042】
実際のシミュレーション結果を以下に示す。
G1=20dBとし、G2=10dBとし、G3=18dBとし、L12=4dBとし、L23=12dBとする。Psig=-30dBmとし、信号出力パワーの目標値を+2dBmとする。この時、信号光の出力パワーは-4.5dBmであり、自然放出光雑音のパワーは+0.9dBmであった。また、この時、G1を変更して信号光出力パワーを目標値にした時の雑音指数=6.7dBとG2とを変更して信号光出力パワーを目標値にした時の雑音指数は7.9dBであり、G3を変更して信号光出力パワーを目標値にした時の雑音指数は8.4dBであった。
【0043】
〔効果の説明〕
以上説明したように、本発明においては、以下に記載するような効果を奏する。
第1の効果は、利得一定制御の光増幅器の場合、初段の利得を固定すると入力パワーが小さくなると信号光利得がより小さくなるので雑音指数の劣化がより顕著に表れるが、入力パワーが小さい時に利得を大きくすることで、伝送特性の改善ができることである。
【0044】
第2の効果は、利得一定制御の光増幅器の場合、必要な励起LD最大出力は出力パワーの最大値によって支配的となるが、本方式を用いると自然放出光雑音発生量が小さくなるので、必要な信号利得を得るために必要な励起LD最大出力を低くすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、WDM光増幅器を用いた波長分割多重光伝送システムや、多段光増幅器を用いた装置、例えば、線形中継器に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る多段光増幅器の一実施例を示す概念図である。
【図2】図1に示した光増幅部1の詳細な構成図である。
【図3】図1に示した多段光増幅器の動作を説明するための説明図である。
【図4】本発明に係る多段光増幅器の制御方法の一実施例を示すフローチャートの一例である。
【符号の説明】
【0047】
1〜3 光増幅部
10、20、30 EDF(光増幅回路)
11、21、31 光入力部
12、22、32 光出力部
14、24、34 受光素子
13、23、33 励起LD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利得が一定になるようにした多段光増幅器において、
初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得より大きくしたことによって自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧するようにしたことを特徴とする多段光増幅器。
【請求項2】
複数の光増幅部を直列接続して利得が一定になるようにした多段光増幅器において、
初段の光増幅部は、希土類添加光ファイバ増幅回路と、該希土類添加光ファイバ増幅回路の入力端及び出力端の少なくとも一方に励起光を入力する励起光源と、前記希土類添加光ファイバ増幅回路の入出力端にそれぞれ接続された受光素子と、前記両受光素子からの出力信号の差分を一定にすると共に 自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得より大きくしたことで抑圧するように制御する制御回路とを備えたことを特徴とする多段光増幅器。
【請求項3】
複数の光増幅部を直列接続して利得が一定になるようにした多段光増幅器において、
各光増幅部は、希土類添加光ファイバ増幅回路と、該希土類添加光ファイバ増幅回路の入力端及び出力端の少なくとも一方に励起光を入力する励起光源と、前記希土類添加光ファイバ増幅回路の入出力端にそれぞれ接続された受光素子と、前記両受光素子からの出力信号の差分を一定にするように制御する制御回路とを備え、
初段の光増幅器の制御回路は、自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を、初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得より大きくしたことで抑圧するようにしたことを特徴とする多段光増幅器。
【請求項4】
複数の光増幅部を直列接続して利得が一定になるようにした多段光増幅器において、
各光増幅部は、希土類添加光ファイバ増幅回路と、該希土類添加光ファイバ増幅回路の入力端及び出力端の少なくとも一方に励起光を入力する励起光源と、前記希土類添加光ファイバ増幅回路の入出力端にそれぞれ接続された受光素子と、前記両受光素子からの出力信号の差分を一定にするように制御する制御回路とを備え、
初段の光増幅器の制御回路は、各光増幅器の利得の初期設定値に基づいて信号入力パワー、波長数を変更し、信号出力パワーが期待値に等しい場合にはその利得に設定し、信号出力パワーが期待値より小さい場合には利得を大きくし、信号出力パワーが期待値より大きい場合には利得を小さくすることで自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧するようにしたことを特徴とする多段光増幅器。
【請求項5】
利得が一定になるように制御する多段光増幅器の制御方法において、
初段の増幅器の利得を他段の増幅器の利得より大きくしたことによって自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧することを特徴とする多段光増幅器の制御方法。
【請求項6】
利得が一定になるように制御する多段光増幅器の制御方法において、
初段の光増幅器の制御回路は、各光増幅器の利得の初期設定値に基づいて信号入力パワー、波長数を変更し、信号出力パワーが期待値に等しい場合にはその利得に設定し、信号出力パワーが期待値より小さい場合には利得を大きくし、信号出力パワーが期待値より大きい場合には利得を小さくすることで自然放出光による信号成分の減少に伴う雑音の増加を抑圧することを特徴とする多段光増幅器の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−227411(P2008−227411A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67347(P2007−67347)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】