説明

多段開閉式ネット及び採集装置

【課題】曳網設備以外の船上での付加的設備を用いずに、多段開閉式ネット単体で正確な開閉制御を簡便に行い得る多段開閉式ネットを提供する。
【解決手段】 複数のネットを有すると共に水中で用いられるWYSIWYG−NET1において、アクチュエーター部8a・8bを介して上記ネットの開閉を行うロッドレスシリンダー3a・3bと、ロッドレスシリンダー3a・3bに作動圧気を供給するSMCエアータンク6a・6bと、上記作動を制御する電磁バルブ4a・4bと、上記作動によって生じる排気圧気を封入するドレイン容器2を備えており、ロッドレスシリンダー3a・3bは、作動力を磁力によってアクチュエーター部8a・8bに伝える磁気誘導型シリンダーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランクトン・マイクロネクトンといった水中に浮遊又は、遊泳している生物の採集に用いる多段開閉式ネット、及び採集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海洋での資源量調査は、音響散乱層(SSL)と呼ばれる主に動物プランクトンや仔稚魚を含むマイクロネクトンによって構成される層を魚群探知機によって観察することで行われてきた。現在使用されている科学魚群探知機の性能は、SSLについてプランクトンからなる層と魚類からなる層との判別までは可能である。また、多周波数利用可能な科学魚群探知機を用いることによって、SSL中のプランクトンと魚類との構成比率をも推定できるようになってきている。しかし、プランクトン種や魚種の判別までは不可能である。そのため、ネットによってプランクトンや魚類を直接採集し、プランクトン種や魚種までを判別するネットサンプリングが必須である。
【0003】
例えば、非特許文献1ではマイクロネクトンを採集するための正方形の網口をもつ中層トロールネットが開示されている。この非特許文献1のトロールネットでは、正方形の定型の網口を有すると共に、従来の稚魚採集に用いられてきた採集具よりも網口面積を広くすることによって、遊泳力のある稚魚又は未成魚の採集を可能にしている。しかし、現在のネットサンプリングは、プランクトンはプランクトンネットで、仔稚魚を含むマイクロネクトンは稚魚ネットでというように個別のネットを使用している。そのため、同一の領域での正確な生物分布は調査できず、データの同時性が保証されない。また、こうした生物分布は水深層によって変化するため、水深層別での採集も必要となる。
【0004】
そのため、プランクトンとマイクロネクトンとを同時に水深層別に回収することを可能にするネットとして、例えば非特許文献2では多段開閉式ネットの1つとしてのMOCNESS(Multiple Opening/Closing Net and Environmental Sampling System)(商品名)が、非特許文献3では多段開閉式ネットの1つとしてのBIONESS(Bedford Institute of Oceanography Net and Environmental Sampling System)が開示されている。この非特許文献2に開示のMOCNESSでは、垂直方向に並んだ複数のネットを、アーマードケーブルを介して船上局からの指令により順番に開閉させることによって、水深層別のプランクトン及びマイクロネクトンの採集を可能にしている。これに対して、この非特許文献3に開示のBIONESSでは、水平方向に並んだ複数のネットを、アーマードケーブルを介して船上局からの指令により順番に開閉させることによって、水深層別のプランクトン及びマイクロネクトンの採集を可能にしている。また、MOCNESS、及びBIONESSの両方において、各ネットの下端におもりとしてのウェイトがある。そして、船上局からの指令によって、固定されている上記ウェイトの下方向への移動を可能にすることにより、上記ウェイトの下方向へ働く重力を利用してネットの開閉を行っている。上述のMOCNESS、及びBIONESSは、欧米で特に普及している。
【非特許文献1】Richard D.Methot,“FRAME TRAWL SAMPLING PELAGIC JUVENILE FISH.”CalCOFI Rep.,Vol.27,1986
【非特許文献2】D.D.SAMEMOTO,L.O.JAROSZYNSKI,and W.B.FRASER,“A Multiple Opening and Closing Plankton Sampler Based on the MOCNESS and N.I.O.Nets.”J.Fish.Res.Board Can.,34:1230−1235.,1977.
【非特許文献3】D.D.SAMEMOTO,L.O.JAROSZYNSKI,and W.B.FRASER,“BIONESS,a New Design in Multiple Net Zooplankton Samples.”J.Fish.Res.Board Can.,37:722−724.,1980.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のMOCNESS、又はBIONESSといった多段開閉式ネットでは、曳網設備以外のアーマードケーブルといった、船上操作に必要な付加的設備が必要となる。アーマードケーブルには専用のウインチが必要になることから、アーマードケーブルを用いるMOCNESS、又はBIONESSといった多段開閉式ネットの運用は簡便に行うことができない。また、曳網設備以外を持たない一般的な調査船では、アーマードケーブル専用のウインチを備えていない。そのため、MOCNESS、又はBIONESS等の使用が不可能である。
【0006】
また、MOCNESS、又はBIONESSといった多段開閉式ネットでは、ウェイトの下方向へ働く重力を利用してネットの開閉を行っていることから、ネットへの水圧等による抵抗のかかり方によっては、ウェイトの重力に対して水圧等の抵抗の影響の方が上回ってしまい、ウェイトが下に移動せずネットの開閉が正確に行えない問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、曳網設備以外の船上での付加的設備を用いずに、多段開閉式ネット単体で正確な開閉制御を簡便に行い得る多段開閉式ネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多段開閉式ネットは、上記課題を解決するために、複数のネットが開閉可能であり、水中で用いられる多段開閉式ネットにおいて、アクチュエーター部を介して上記ネットの開閉を行う空気圧シリンダーと、上記空気圧シリンダーに送りこむ作動圧気を調節することによって上記空気圧シリンダーの作動を制御する制御部と、上記空気圧シリンダーの作動によって生じる上記空気圧シリンダーからの排気圧気を封入する筐体とを備えており、上記空気圧シリンダーは、上記作動圧気によって生じる空気圧シリンダーの作動力を磁力によってアクチュエーター部に伝える磁気誘導型シリンダーであることを特徴としている。
【0009】
上記の発明によれば、上記アクチュエーター部を介し、上記空気圧シリンダーによって複数のネットを有する広範なサイズ範囲のプランクトン・マイクロネクトンを水深層別に採集し得る多段開閉式ネットの開閉を行うことができる。また、上記空気圧シリンダーは作動圧気によって生じる作動力を磁力によってアクチュエーター部に伝えるため、ロッド等を用いることによって空気圧シリンダーの作動力を外部に機械的に伝える必要がない。
【0010】
ロッド等を用いて機械的に空気圧シリンダーの作動力を外部に伝えようとした場合、水中ではロッド等に対して水圧がかかるために、空気圧シリンダーの作動力が外部に完全に伝わらない。しかし、本発明の多段開閉式ネットでは、上述の理由から、空気圧シリンダーの作動力をロッド等によって外部に機械的に伝える必要がないため、空気圧シリンダーの作動が水圧の影響をほとんど受けることがない。
【0011】
また、上記空気圧シリンダーから生じる排気圧気は上記筐体に封入される。上記筐体に排気圧気が封入されるということは、排気圧気は水中に排気されないことになる。よって、上記空気圧シリンダーの排気圧気は水中に露出することがないことになる。よって、上記空気圧シリンダーの排気圧気が水圧によって空気圧シリンダー中へ押し戻されることがない。つまり、排気圧気が外部水圧から独立していることになる。
【0012】
上述のように、上記空気圧シリンダーの作動と排気とが外部水圧と独立して行われることから、上記アクチュエーター部を介して上記空気圧シリンダーによってネットの開閉を行う本発明の多段開閉式ネットは、水中でも外部水圧の影響をほとんど受けずにネットの開閉を行うことができる。つまり、水中でも外部水圧の影響をほとんど受けずに正確なネットの開閉を行うことができる。
【0013】
また、本発明の多段開閉式ネットは作動圧気によって水中でも外部水圧の影響をほとんど受けずに上記多段開閉式ネットが備える上記空気圧シリンダーによって開閉を行える。よって、ワイヤーによる水面上からの多段開閉式ネットのネットの開閉の操作を行わなくてもネットの開閉を行うことが可能な構成である。つまり、曳網設備以外の船上設備を用いなくても、上記多段開閉式ネットのネットの開閉を行うことが可能な構成である。
【0014】
つまり、曳網設備以外の船上での付加的設備を用いずに、多段開閉式ネット単体で正確な開閉制御を簡便に行い得る構成である。
【0015】
また、本発明の多段開閉式ネットでは、所定の条件を検出した時に上記制御部に制御を行わせる検出部を備えていることが好ましい。
【0016】
これにより、所定の条件を検出した時に、多段開閉式ネットの開閉を行う空気圧シリンダーの作動を制御する上記制御部が、上記検出部によって制御される。
【0017】
つまり、所定の条件を検出した時に上記多段開閉式ネットのネットの開閉が行われる。
【0018】
よって、水中で所定の条件を検出した時に、多段開閉式ネット単体でネットの開閉が行われる。
【0019】
その結果、多段開閉式ネット単体でネットの開閉を行うことが可能になる。
【0020】
また、本発明の多段開閉式ネットでは、前記検出部は、設定される時間に応じて前記制御部を制御する電子タイマーからなることが好ましい。
【0021】
これにより、上記電子タイマーは、設定される時間に従って前記制御部を制御することにより上記空気圧シリンダーの作動を制御できる。ネットの開閉はアクチュエーター部を介して上記空気圧シリンダーによって行われるため、設定される時間に従ってネットの開閉を行うことができる。
【0022】
よって、所定の水深に到達する時間ごとに上記作動を制御するように電子タイマーを設定すれば、所定の水深ごとにネットの開閉を行うことができる。
【0023】
その結果、本発明の多段開閉式ネット単体によって自動的に所定の水深ごとにネットの開閉を行うことが可能になる。
【0024】
また、本発明の多段開閉式ネットでは、前記検出部は、設定される水圧に応じて前記制御部を制御する水圧センサーからなることが好ましい。
【0025】
これにより、上記水圧センサーは、設定される水圧に従って前記制御部を制御することによりアクチュエーター部を介して上記空気圧シリンダーの作動を制御できる。ネットの開閉はアクチュエーター部を介して上記空気圧シリンダーによって行われるため、設定される水圧に従ってネットの開閉を行うことができる。
【0026】
よって、所定の水深の水圧ごとに上記作動を制御するように水圧センサーを設定すれば、所定の水深ごとにネットの開閉を行うことができる。
【0027】
その結果、本発明の多段開閉式ネット単体によって自動的に所定の水深ごとにネットの開閉を行うことが可能になる。
【0028】
また、本発明の多段開閉式ネットでは、前記検出部は、設定される時間に応じて前記制御部を制御する電子タイマー、及び設定される水圧に応じて前記制御部を制御する水圧センサーからなることが好ましい。
【0029】
これにより、上記電子タイマー、及び上記水圧センサーは、設定した時間、及び設定した水圧に従って前記制御部を制御することにより上記空気圧シリンダーの作動をできる。ネットの開閉はアクチュエーター部を介して上記空気圧シリンダーによって行われるため、設定した時間、及び設定した水圧に従ってネットの開閉を行うことができる。
【0030】
よって、上記電子タイマーと上記水圧センサーとを併用して上記空気圧シリンダーを制御するように設定すれば、上記電子タイマーと上記水圧センサーとを併用して所定の水深ごとにネットの開閉を行うことができる。
【0031】
その結果、本発明の多段開閉式ネット単体によって自動的に所定の水深ごとにネットの開閉を行うことが可能になる。
【0032】
また、本発明の多段開閉式ネットでは、前記ネットは、上記ネットの開口部を支持する枠を備えていることが好ましい。
【0033】
これにより、上記ネットの開口部が上記枠によって支持されているので、水圧等の抵抗が上記ネットにかかった場合でも、上記ネットの開口部が水圧等の抵抗によって閉じることがない。
【0034】
よって、上記ネットの開閉が正確に行われ、その結果、精度の高い開閉を行う多段開閉式ネットが実現可能になる。
【0035】
また、本発明の多段開閉式ネットでは、前記開口部を支持する枠は、金属からなることが好ましい。
【0036】
これにより、金属は一般的に強度が高いことから、金属からなる上記枠の強度が高くなる。よって水圧等の抵抗によって上記枠が変形、又は破損する可能性を低く抑えることができる。そして、その結果、耐久性の高い多段開閉式ネットを実現することが可能になる。
【0037】
また、本発明の多段開閉式ネットでは、前記筐体は、外部水圧が上記筐体内の圧力よりも小さい場合にだけ上記筐体外に上記排気圧気の排気を行えるように作動する排気部を備えていることが好ましい。
【0038】
これにより、上記筐体内の圧力よりも外部水圧が低い、水深の浅い場所では、上記排気圧気は上記筐体外部に上記排気部を通して排気される。上記筐体内の圧力が外部水圧よりも低く、圧力の差によって外部の水が上記筐体内に流入する状態であっても、上記排気部によって外部の水は、上記筐体内に流入することはできない。よって、上記作動圧気の上記筐体外への排気のみが行われる。
【0039】
また、上記筐体内の圧力よりも外部水圧が高い水深の深い場所では、上記作動圧気は上記ドレイン容器外部に上記排気部を通して排気されない。このため、上記筐体内の圧力よりも外部水圧の方が大きいことによって生じる上記排気部を通した上記筐体内への水の流入は防がれる。よって、水深の浅い場所でも、水深の深い場所でも上記筐体内に水が流入することがない。
【0040】
その結果、水の流入によって上記筐体内部の制御部等の動作に支障をきたす恐れがないので多段開閉式ネットの水深に関わらない水中動作が確保できる。
【0041】
また、本発明の採集装置では、前記いずれかの多段開閉式ネットを備えることを特徴としている。
【0042】
これにより、曳網設備以外の船上での付加的設備を用いずに、多段開閉式ネット単体で正確な開閉制御を簡便に行うことができ、広範なサイズ範囲のプランクトン及びマイクロネクトンを水深層別に採集し得る採集装置を提供できる。
【0043】
また、本発明の採集装置では、前記多段開閉式ネットは、観察用カメラを備えることが好ましい。
【0044】
これにより、観察用カメラによって多段開閉式ネットから逃避した生物、及び多段開閉式ネットのネットの網目を逸脱した生物を確認することができる。
【0045】
多段開閉式ネットから逃避した生物、及び多段開閉式ネットの網目を逸脱した生物のデータを補間データとして用いることによって、本発明の多段開閉式ネットによって得られるデータをより正確なものにすることが可能になる。
【0046】
よって、曳網設備以外の船上での付加的設備を用いずに、多段開閉式ネット単体で正確な開閉制御を簡便に行い得るだけでなく、採集した生物から得られるデータをより正確なものにすることができる。
【0047】
また、本発明の採集装置では、水中の生物の状態を計測する生物状態計測部を備えることが好ましい。
【0048】
これにより、本発明の多段開閉式ネットを用いたプランクトン及びマイクロネクトンの採集と同時に、生物状態計測部によって、採集を行っている水中の領域に存在する生物の状態のデータを入手することができる。
【0049】
採集を行っている水中の領域に存在する生物の状態のデータは、本発明の多段開閉式ネットによって採集される生物のデータの対照データ、及び補間データとして扱うことによって、得られるデータをより正確なものにすることが可能になる。
【0050】
よって、曳網設備以外の船上での付加的設備を用いずに、多段開閉式ネット単体で正確な開閉制御を簡便に行い得るだけでなく、採集した生物から得られるデータをより正確なものにすることができる。
【0051】
なお、生物状態計測部における水中の生物の状態の計測とは、採集した水深層における生態系(例えば、生物の数、生物の大きさ等)を計測することを示す。
【0052】
また、本発明の採集装置では、水中の状態を計測する水質状態計測部を備えることが好ましい。
【0053】
これにより、本発明の多段開閉式ネットを用いたプランクトン及びマイクロネクトンの採集と同時に、水質状態計測部によって、採集を行っている領域の水中の状態のデータを入手することができる。
【0054】
採集を行っている領域の水中のデータは、本発明の多段開閉式ネットによって採集される生物のデータの補間データとして扱うことによって、得られるデータをより正確なものにすることが可能になる。
【0055】
よって、曳網設備以外の船上での付加的設備を用いずに、多段開閉式ネット単体で正確な開閉制御を簡便に行い得るだけでなく、採集した生物から得られるデータをより正確なものにすることができる。
【0056】
なお、水質状態計測部における水中の状態の計測とは、採集した水深層の水質(例えば、水温、電気伝導度、又は水圧等)を計測することを示す。
【発明の効果】
【0057】
本発明の多段開閉式ネットは、以上のように、アクチュエーター部を介して上記ネットの開閉を行う空気圧シリンダーと、上記空気圧シリンダーに送りこむ作動圧気を調節することによって上記空気圧シリンダーの作動を制御する制御部と、上記空気圧シリンダーの作動によって生じる上記空気圧シリンダーからの排気圧気を封入する筐体とを備えており、上記空気圧シリンダーは、上記作動圧気によって生じる空気圧シリンダーの作動力を磁力によってアクチュエーター部に伝える磁気誘導型シリンダーであるものである。
【0058】
それゆえ、上記空気圧シリンダーは作動圧気によって生じる作動力を磁力によってアクチュエーター部に伝えるため、空気圧シリンダーの作動力をロッド等によって外部に機械的に伝える必要がなく、空気圧シリンダーの作動が水圧の影響をほとんど受けることがない。
【0059】
また、上記空気圧シリンダーから生じる排気圧気は上記筐体に封入されることから、上記空気圧シリンダーの排気圧気を生じさせる部分は外部水圧から独立していることになる。
【0060】
以上のように、上記空気圧シリンダーの作動と排気とが外部水圧と独立して行われることから、上記空気圧シリンダーによってネットの開閉を行う本発明の多段開閉式ネットは、水中でも外部水圧の影響をほとんど受けずに正確なネットの開閉を行うことができる。
【0061】
また、本発明の多段開閉式ネットは作動圧気によって水中でも外部水圧の影響をほとんど受けずに上記多段開閉式ネットが備える上記空気圧シリンダーによって開閉を行える構成であることから、水中で多段開閉式ネット単独でネットの開閉を行うことが可能である。つまり、広範なサイズ範囲のプランクトン・マイクロネクトンを水深層別に採集し得る多段開閉式ネットの開閉を多段開閉式ネット単独で行うことが可能である。
【0062】
したがって、曳網設備以外の船上での付加的設備を用いずに、多段開閉式ネット単体で正確な開閉制御を簡便に行い得る多段開閉式ネットを提供するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施の形態について図1ないし図6に基づいて説明すれば以下の通りである。
【0064】
最初に、多段開閉式ネット(広範なサイズ範囲のプランクトン・マイクロネクトンを水深層別に採集し得るネット)としてのWYSIWYG−NET(What You See in the echogram Is What You Get by the net sampling-NET)1の各部の構成について図1を用いて説明する。図1は、本実施形態の多段開閉式ネットの概略を示す図である。
【0065】
WYSIWYG−NET1は、筐体としてのドレイン容器2、磁気誘導型の空気圧シリンダーとしてのロッドレスシリンダー3a・3b、ロッドレスシリンダー3a・3bの作動を制御する制御部としての電磁バルブ4a・4b、上記電磁バルブ4a・4bを設定時間に応じて(所定の条件を検出して)制御する検出部としての電子タイマー5、SMCエアータンク6a・6b、可動ポール7a・7b、ロッドレスシリンダー3a・3bの作動力を可動ポール7a・7bに伝えるためのアクチュエーター部8a・8b、固定ポール9a・9b、サイドカバー10、排気部としての逆止弁11、及び観察用カメラとしての生物確認用カメラ12とを備えている。本実施の形態のWYSIWYG−NET1は採集用のネットを備えているが、上記ネットを含む構成については後述する。
【0066】
ドレイン容器2は、水中での外部水圧に対して内部環境を隔離させるための筐体であって、本実施の形態では図1に示すように電磁バルブ4a・4b、及び電子タイマー5が封入されている。
【0067】
ロッドレスシリンダー3a・3bは、アクチュエーター部8a・8bを介して可動ポール7a・7bをロッドレスシリンダー3a・3bに沿ってスライドさせる磁気誘導型シリンダーであって、ドレイン容器2を挟み、ロッドレスシリンダー3aとロッドレスシリンダー3bとがお互いが平行な位置関係になるように1本ずつ配置されている。また、ドレイン容器2がロッドレスシリンダー3a・3bの図1中のB方向の端に位置するようにロッドレスシリンダー3a・3bは配置されている。
【0068】
また、アクチュエーター部8aを介してロッドレスシリンダー3aには可動ポール7aがロッドレスシリンダー3aに直交するように取り付けられ、アクチュエーター部8bを介してロッドレスシリンダー3bには可動ポール7bがロッドレスシリンダー3bに直交するように取り付けられている。本実施の形態では、ロッドレスシリンダー3a・3b及び可動ポール7a・7bの長さは1,000mmとする。
【0069】
電磁バルブ4a・4bは、ロッドレスシリンダー3a・3bに印加する作動圧、つまり作動圧気を制御することによってロッドレスシリンダー3a・3bの作動力によって動くアクチュエーター部8a・8bの動きを制御する制御部であって、前述の通り、ドレイン容器2中に封入されている。
【0070】
電子タイマー5は、上記電磁バルブ4a・4bが行う上述の制御を、設定された時間に応じて行わせるための検出部であって、外部からWYSIWYG−NET1の作動開始の指示を行うための入力部としてのトリガースイッチ19を除いてドレイン容器中に封入されている。また、電子タイマー5は、後述するロッドレスシリンダー3a・3bの4つのストロークに対応して4つ備えられており、上記4つのストロークの制御を行っている。
【0071】
また、電子タイマー5にはアクチュエーター部8a・8bの動作の最大継続時間を設定するタイマーが設けられている。
【0072】
そして、上記タイマーはSMCエアータンク6a・6bからの圧気圧、及び可動ポール7a・7bが受ける抵抗力が変化してもアクチュエーター部8a・8bが可動ポール7a・7bの全長まで作動できる動作時間を確保している。よってタイマー5には5つのタイマーが備えられている。
【0073】
本実施の形態では、電子タイマー5はドレイン容器2中に封入される図示しないバッテリーを電源として用いている。
【0074】
SMCエアータンク6a・6bは、電磁バルブ4a・4bを通じてロッドレスシリンダー3a・3bに作動圧気を供給するものであって、ロッドレスシリンダー3a・3bに沿って配置される後述するサイドカバー10に取り付けられる。
【0075】
また、SMCエアータンク6a・6bへの作動圧気の補充は、WYSIWYG−NET1の運用の終了後に外部の中圧コンプレッサから簡単に行うことができる。
【0076】
アクチュエーター部8a・8bは、ロッドレスシリンダー3a・3bの作動力を可動ポール7a・7bに伝えるためのものであって、ロッドレスシリンダー3a・3bに沿ってスライド可能に取り付けられている。また、可動ポール7a・7bに対しては、アクチュエーター部8a・8bは固定されている。
【0077】
さらに、アクチュエーター部8a・8bの内部には永久磁石が組み込まれており、ロッドレスシリンダー3a・3b内部の作動圧気受圧用ピストン(図示せず)にも永久磁石が組み込まれていることから、作動圧気によって上記作動圧気受圧用ピストンがロッドレスシリンダー3a・3b内部で移動することにより、永久磁石同士の引き合う磁力によってアクチュエーター部8a・8bも上記作動圧気受圧用ピストンの移動に合わせて移動する。
【0078】
上記作動力は、(作動圧気の圧力−排気圧気の圧力)×(ロッドレスシリンダー3a・3b内のピストンの受圧面積)の計算によって求められる。
【0079】
また、本実施の形態では、100kg程度以上の力がかからない限り脱調しない強力な永久磁石を用いる。
【0080】
固定ポール9bは、お互いが平行な位置関係になるように配置されるロッドレスシリンダー3a・3bの図1中のB方向の端部分に固定して配置されている。また、固定ポール9aは、お互いが平行な位置関係になるように配置されるロッドレスシリンダー3a・3bの図1中のA方向の端の位置に、固定ポール9bと平行になるように固定して配置されている。
【0081】
また、サイドカバー10は図1で示すように、固定ポール9a・9bと直交するように組み合わされることによって方形を作り出すように配置されている。
【0082】
逆止弁11は、外部水圧がドレイン容器2内の圧力よりも小さい時にだけドレイン容器2外に排気を行えるように作動する排気部であって、ドレイン容器2の内部と外部とを繋ぐ孔に配置される。
【0083】
生物確認用カメラ12は、水中の様子を観察する観察用カメラであって、WYSIWYG−NET1の後述する開口部の前方の様子を撮影できるようにサイドカバー10の一方に配置されている。また、生物確認用カメラ12は無線で操作可能なものを用いてもよい。
【0084】
ロッドレスシリンダー3a・3b、及びSMCエアータンク6a・6bと電磁バルブ4a・4bとは、作動圧気、及び排気圧気を外部環境(水中)から独立させるように配管(図1中では図示せず)によって接続されている。
【0085】
また、ドレイン容器2への配管は、着脱が容易であると共に密封性に優れた接続器具であるワンタッチカップラーなどを利用して容器内部圧力とは独立させて接続されている。
【0086】
さらに、可動ポール7a・7b、固定ポール9a・9b、及びサイドカバー10の材質としてはステンレス鋼SUS304等の耐錆性金属を用いている。
【0087】
なお、本実施の形態では、アクチュエーター部8a・8bの内部とロッドレスシリンダー3a・3b内部の作動圧気受圧用ピストンとに100kg程度以上の力がかからない限り脱調しない強力な永久磁石を用いているが、本発明ではこれに限らず、これ以上に強力な永久磁石を用いても良い。
【0088】
また、本実施の形態では、可動ポール7a・7b、固定ポール9a・9b、及びサイドカバー10の材質としてはステンレス鋼SUS304等の耐錆性金属を用いているが、本発明ではこれに限らない。
【0089】
次に、WYSIWYG−NET1の採集用ネットを含む構成の概略について、図2を用いて説明する。
【0090】
図2は本実施の形態のWYSIWYG−NET1をロッドレスシリンダー3bがロッドレスシリンダー3aに重なって見えなくなる方向から見た側面図である。また、図2中でCで示した方向を上部とし、Dで示した方向を下部とする。
【0091】
図2には、ロッドレスシリンダー3a、可動ポール7a・7b、アクチュエーター部8a、固定ポール9a・9b、採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18が示されている。
【0092】
可動ポール7a・7b、及び固定ポール9a・9bの並び順を説明すると、上部から順番に固定ポール9a、可動ポール7a、可動ポール7b、固定ポール9bと配置されている。
【0093】
上述したように、ロッドレスシリンダー3a・3bの端部には固定ポール9a・9bが固定されていることから、固定ポール9aと固定ポール9bとの間を可動ポール7aはアクチュエーター部8aを介して上下にスライドすることになる。
【0094】
また、図2中では、ロッドレスシリンダー3b、及びアクチュエーター部8bはロッドレスシリンダー3aに重なって見えないため図示されてはいないが、可動ポール7bはアクチュエーター部8bを介して上下にスライドすることになる。
【0095】
続いて、採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の配置の説明をする。
【0096】
採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18は袋状になっており、開口部30は採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18のそれぞれの袋状になった形状のうちの穴の縁をなす部分の周辺の部位を示すものである。
【0097】
採集ネット16の開口部30は固定ポール9aと可動ポール7aとに固定される。
【0098】
また、ダミーネット17の開口部30は可動ポール7aと可動ポール7bとに固定される。
【0099】
さらに、採集ネット18の開口部は可動ポール7bと固定ポール9bとに固定される。
【0100】
つまり、上部から順番に採集ネット16、ダミーネット17、採集ネット18と並ぶように採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開口部30がそれぞれ装着される。
【0101】
採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開閉の手順は後述するが、ロッドレスシリンダー3a・3bと可動ポール7a・7b、及び固定ポール9a・9bとによって囲まれる方形の領域内を、上記開閉に関わらず常にネットの開口部30が覆うように採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18は装着される。
【0102】
次に、ロッドレスシリンダー3a・3bの制御について図3を用いて説明する。図3は、本実施形態のロッドレスシリンダー3a・3bにおける作動圧の印加と排気圧の排気とを行う構成を示した図である。
【0103】
まず、SMCエアータンク6a・6b中に加圧充填されている空気が作動圧気として配管13a・13bを通して電磁バルブ4a・4bに伝わる。
【0104】
最初に、ロッドレスシリンダー3aの往動(図3中のA方向からB方向に向かっての移動)の制御についての説明を行う。
【0105】
図3中に示す電磁バルブ4aの3つの切り替え回路(往動:L、中立:N、復動:R)がL状態になっているときには、SMCエアータンク6aから配管13aを通して印加された作動圧が、配管14aを通してロッドレスシリンダー3aの図3中のA方向の端に作動圧を印加する。その結果、前述の作動圧気受圧用ピストンが図3中のA方向からB方向にむかって移動する。作動圧気受圧用ピストンの移動に合わせてアクチュエーター部8aがスライドすることから、この場合はアクチュエーター部8aが図3中のA方向からB方向にむかってスライドする。つまり、アクチュエーター部8aに固定された可動ポール7aが図3中のA方向からB方向に向かってスライドする。
【0106】
また、ロッドレスシリンダー3aの図3中のA方向の端から作動圧が印加され、上記作動圧気受圧用ピストンが図3中のA方向からB方向にむかって移動することによって、排気圧によって生じる排気圧気がロッドレスシリンダー3aのB方向の端から配管15aに伝わる。そして、上記排気圧によって排気圧気が配管15aを通してドレイン容器2中に排気される。また、上記の3つの切り替え回路の切り替えは電子タイマー5によって制御されている。
【0107】
ただし、上記排気圧気は、外部水圧よりもドレイン容器2の内部圧が高い場合には逆止弁11によってドレイン容器2外へと排気が行われる。
【0108】
続いて、ロッドレスシリンダー3aの復動(図3中のB方向からA方向に向かっての移動)の制御についての説明を行う。
【0109】
図3中に示す電磁バルブ4aの3つの切り替え回路がR状態になっているときには、SMCエアータンク6aから配管13aを通して印加された作動圧が、配管15aを通してロッドレスシリンダー3aの図3中のB方向の端から印加される。その結果、前述の作動圧気受圧用ピストンが図3中のB方向からA方向にむかって移動し、アクチュエーター部8aが図3中のB方向からA方向にむかってスライドする。つまり、アクチュエーター部aに固定された可動ポール7aが図3中のB方向からA方向に向かってスライドする。
【0110】
また、ロッドレスシリンダー3aの図3中のB方向の端から作動圧が印加され、上記作動圧気受圧用ピストンが図3中のB方向からA方向にむかって移動することによって、排気圧によって生じる排気圧気がロッドレスシリンダー3aのA方向の端から配管14aに伝わる。そして、上記排気圧気は配管14aを通してドレイン容器2中に排気される。
【0111】
ただし、上記排気圧気は、外部水圧よりもドレイン容器2の内部圧が高い場合には逆止弁11によってドレイン容器2外へと排気が行われる。
【0112】
また、ロッドレスシリンダー3bの往動、及び復動の制御は、上述したロッドレスシリンダー3aの往動、及び復動の制御と同様にして行われる。
【0113】
次に、本発明の多段開閉式ネットを開閉させるためのロッドレスシリンダー3a・3bそれぞれの動きについて図4、及び図5を用いて説明を行う。
【0114】
ここでは、ロッドレスシリンダー3a・3bの往動と復動とをそれぞれ1ストロークとして4ストロークで本実施の形態の多段開閉式ネットの一連の開閉運動(1サイクル)を行うものとする。
【0115】
図4では、WYSIWYG−NET1のネットの開閉1サイクル中でのロッドレスシリンダー3a・3bそれぞれの動きについて説明する。また、ロッドレスシリンダー3a内部の作動圧気受圧用ピストンをピストン20aとし、ロッドレスシリンダー3b内部の作動圧気受圧用ピストンをピストン20bとして説明する。
【0116】
初期状態では、ピストン20aはロッドレスシリンダー3a内部の図4中のA方向に押しやられており、ピストン20bは図4中のB方向に押しやられているものとする。
【0117】
1ストローク目には、ロッドレスシリンダー3bのB方向側から作動圧気が送り込まれ作動圧が印加される。その結果、ピストン20bはA方向に移動し、ピストン20bの移動によりロッドレスシリンダー3bのA方向側に排気圧が生じ、排気圧気がA方向側から排気される。
【0118】
この場合、ロッドレスシリンダー3aのB方向側では、SMCエアータンク6a内の圧気圧によってピストン20aのロッドレスシリンダー3a内の位置が保持される。
【0119】
また、ロッドレスシリンダー3bのB方向側では、1ストローク目の(作動圧−排気圧)によってピストン20bのロッドレスシリンダー3b内の位置が保持される。
【0120】
2ストローク目には、先程とは逆にロッドレスシリンダー3bのA方向側から作動圧気が送り込まれ作動圧が印加される。その結果、ピストン20bはB方向に移動し、ピストン20bの移動によりロッドレスシリンダー3bのB方向側に排気圧が生じ、排気圧気がB方向側から排気される。
【0121】
この場合、ロッドレスシリンダー3aのB方向側では、SMCエアータンク6a内の圧気圧によってピストン20aのロッドレスシリンダー3a内の位置が保持される。
【0122】
また、ロッドレスシリンダー3bのA方向側では、2ストローク目の(作動圧−排気圧)によってピストン20bのロッドレスシリンダー3b内の位置が保持される。
【0123】
以上のように、まずはロッドレスシリンダー3b側のみでピストン20bのA―B方向への往復が行われる。
【0124】
続いて、3ストローク目には、ロッドレスシリンダー3aのA方向側から作動圧気が送り込まれ作動圧が印加される。その結果、ピストン20aはB方向に移動し、ピストン20aの移動によりロッドレスシリンダー3aのB方向側に排気圧が生じ、排気圧気がB方向側から排気される。
【0125】
この場合、ロッドレスシリンダー3aのA方向側では、3ストローク目の(作動圧−排気圧)によってピストン20aのロッドレスシリンダー3a内の位置が保持される。
【0126】
また、ロッドレスシリンダー3bのA方向側では、SMCエアータンク6b内の圧気圧によってピストン20bのロッドレスシリンダー3b内の位置が保持される。
【0127】
4ストローク目には、先程とは逆にロッドレスシリンダー3aのB方向側から作動圧気が送り込まれ作動圧が印加される。その結果、ピストン20aはA方向に移動し、ピストン20aの移動によりロッドレスシリンダー3aのA方向側に排気圧が生じ、排気圧気がA方向側から排気される。
【0128】
この場合、ロッドレスシリンダー3aのB方向側では、4ストローク目の(作動圧−排気圧)によってピストン20aのロッドレスシリンダー3a内の位置が保持される。
【0129】
また、ロッドレスシリンダー3bのA方向側では、SMCエアータンク6b内の圧気圧によってピストン20bのロッドレスシリンダー3b内の位置が保持される。
【0130】
以上のように、最初にロッドレスシリンダー3b側のみでピストン20bのB―A方向への往復が行われた後に、ロッドレスシリンダー3a側のみでピストン20aのA−B方向への往復が行われる。
【0131】
本実施の形態では、上記の順番で4つのストロークが行われるように、上述した電磁バルブ4a・4bのロッドレスシリンダー3a・3bに対する作動圧の印加の制御が行われている。
【0132】
図5では、WYSIWYG−NET1のネットの開閉状態を側面図を用いて説明を行う。初期状態をSTEP1として、順番に行われるWYSIWYG−NET1のネットの開閉動作を、STEP1〜STEP5までの5段階で説明する。
【0133】
最初に、初期状態であるSTEP1の説明をすると、可動ポール7aは図5中のC方向にスライドして固定ポール9aに接して保持されており、可動ポール7bは図5中のD方向にスライドして固定ポール9bに接して保持されている。つまり初期状態では、採集ネット16、及び採集ネット18の開口部30は閉じており、ダミーネット17の開口部のみが開いている。
【0134】
続いて、STEP2では固定ポール9bに接して保持されていた可動ポール7bが図5中のC方向にスライドして可動ポール7aと接して保持される。つまり、STEP2では、STEP1と比較して、ダミーネット17の開口部30が閉じる代わりに採集ネット18の開口部30が開く。
【0135】
さらに、STEP3では可動ポール7aに接して保持されていた可動ポール7bが図5中のD方向にスライドして、再度固定ポール9bに接して保持される。つまり、STEP2と比較して、採集ネット18の開口部30が閉じる代わりにダミーネット17の開口部30が開き、STEP1と同様の状態に戻る。
【0136】
続いて、STEP4では固定ポール9aに接して保持されていた可動ポール7aが図5中のD方向にスライドして可動ポール7bと接して保持される。つまり、STEP3と比較して、ダミーネット17の開口部30が閉じる代わりに採集ネット16の開口部30が開く。
【0137】
最後に、STEP5では可動ポール7bに接して保持されていた可動ポール7aが図5中のC方向にスライドして、再度固定ポール9aと接して保持される。つまり、STEP5では、STEP4と比較して、採集ネット16の開口部30が閉じる代わりにダミーネット17の開口部30が開きSTEP1と同様の状態に戻る。
【0138】
次に、本発明のWYSIWYG−NET1を実際に水中で運用する場合のネットの開閉手順を図6を用いて説明する。本実施の形態では上層(0m〜30m)と下層(30m〜70m)また、図6中のSTEP1〜STEP5は、図5で示したSTEP1〜STEP5と同様である。
【0139】
最初に、WYSIWYG−NET1を水中に投入する前に電子タイマー5中の5つのタイマーをSW1〜SW5によって設定する。
【0140】
詳しくは、SW1〜SW4は電子タイマー5のトリガースイッチ19がONになってから何分後にピストン20a又はピストン20bを作動させるかを設定するものである。
【0141】
SW5は、SW1〜SW4がピストン20a又はピストン20bを作動させてから何秒間の間ピストン20a又はピストン20bの加圧状態を保持するのかを設定するものである。
【0142】
ピストン20a又はピストン20bの加圧状態とWYSIWYG−NET1の開閉状態STEP1〜STEP2との関係は前述した通りであるので、ここでは、詳細な説明は省く。
【0143】
最初に、SW5は、SW1〜SW4がピストン20a又はピストン20bを作動させてから30秒間ピストン20a又はピストン20bの加圧保持するように設定する。
【0144】
続いて、WYSIWYG−NET1を水中に投入する前にSW1を、トリガースイッチ19がONになってから10分後にWYSIWYG−NET1がSTEP2の状態になるように設定する。
【0145】
そして、WYSIWYG−NET1を操船によってトリガースイッチ19をONにしてから10分後に水深70mに達するようにする。これによって、トリガースイッチ19をONにしてから10分後に電子タイマー5が作動し、水深70mの位置でWYSIWYG−NET1がSTEP1からSTEP2の状態に移行する。
【0146】
STEP2の状態では採集ネット18の開口部30は開いている状態なので、採集ネット18によって水深70m付近のプランクトン・マイクロネクトンが採集される。
【0147】
続いて、SW2をトリガースイッチ19がONになってから25分後にWYSIWYG−NET1がSTEP3の状態になるように設定しておく。そして、WYSIWYG−NET1を操船によってトリガースイッチ19をONにしてから25分後に水深70mから水深30mへの移動を開始するようにする。
【0148】
これによって、トリガースイッチ19をONにしてから25分後に電子タイマー5が作動し、水深70mの位置でWYSIWYG−NET1がSTEP2からSTEP3の状態に移行する。
【0149】
STEP3の状態では採集ネット18の開口部30は閉じている状態なので、水深70mで採集されたプランクトン・マイクロネクトンは採集ネット18に閉じ込められた状態になる。
【0150】
さらに、SW3をトリガースイッチ19がONになってから30分後にWYSIWYG−NET1がSTEP4の状態になるように設定しておく。そして、WYSIWYG−NET1を操船によってトリガースイッチ19をONにしてから30分後に水深30mに達するようにする。
【0151】
これによって、トリガースイッチ19をONにしてから30分後に電子タイマー5が作動し、水深30mの位置でWYSIWYG−NET1がSTEP3からSTEP4の状態に移行する。
【0152】
STEP4の状態では採集ネット16の開口部30は開いている状態なので、採集ネット16によって水深30m付近のプランクトン・マイクロネクトンが採集される。
【0153】
続いて、SW4をトリガースイッチ19がONになってから40分後にWYSIWYG−NET1がSTEP5の状態になるように設定しておく。そして、WYSIWYG−NET1を操船によってトリガースイッチ19をONにしてから40分後に水深30mから水深0mへの移動を開始するようにする。
【0154】
これによって、トリガースイッチ19がONにしてから40分後に電子タイマー5が作動し、水深30mの位置でWYSIWYG−NET1がSTEP4からSTEP5の状態に移行する。
【0155】
STEP5の状態では採集ネット16の開口部30は閉じている状態なので、水深30mで採集されたプランクトン・マイクロネクトンは採集ネット16に閉じ込められた状態になる。
【0156】
つまり、採集ネット18はSTEP2の状態の時にだけ開口部30が開き、採集ネット16はSTEP4の状態の時にだけ開口部30が開くことから、採集ネット18によって下層の水深70m付近のプランクトン・マイクロネクトンのみが採集され、採集ネット16によって上層の水深30m付近のプランクトン・マイクロネクトンのみが採集されることになる。)
また、本実施の形態においては上層の水深を0m〜30mとし、下層の水深を30m〜70mとしているが、必ずしもこれに限定されず、目的とする生物の分布する水深に合わせて自由に水深の設定を行っても良い。
【0157】
また、本実施の形態においてはWYSIWYG−NET1がSTEP1からSTEP5の状態に段階的に移行する水深を、それぞれ70m、30mとしているが、必ずしもこれに限定されず、目的とする生物の分布する水深に合わせて自由に、WYSIWYG−NET21がSTEP1からSTEP5の状態に段階的に移行する水深の設定を行っても良い。
【0158】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、ダミーネット17は採集には用いないが、特にこれに限定するものではなく、ダミーネット17を採集に用いることも可能である。
【0159】
また、本実施の形態においてはSW1〜SW4によってWYSIWYG−NET1がSTEP1からSTEP5の状態に段階的に移行される時間を、それぞれ10分後、25分後、30分後、40分後としており、SW5によってピストン20a又はピストン20bの加圧状態が保持される時間を30秒間としているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、任意で時間の設定が可能である。
【0160】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、ロッドレスシリンダー3a・3bの2本の空気圧シリンダーを用いて採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の3つのネットの開閉を行っているが、特にこれに限定するものではなく、空気圧シリンダーの数を増やすことによってネットの数を増やすことも可能である。
【0161】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、電子タイマー5は5つ備えられているが、特にこれに限定するものではなく、電子タイマー5の数を増減することも可能である。
【0162】
また、本実施の形態の発明によれば、アクチュエーター部8a・8bを介し、ロッドレスシリンダー3a・3bによって複数のネットを有するWYSIWYG−NET1の開閉を行うことができる。
【0163】
ロッドレスシリンダー3a・3bは作動圧気によって生じる作動力を磁力によってアクチュエーター部8a・8bに伝えるため、ロッド等を用いることによってロッドレスシリンダー3a・3bの作動力を外部に機械的に伝える必要がない。
【0164】
ロッド等を用いて機械的にロッドレスシリンダー3a・3bの作動力を外部に伝えようとした場合、水中ではロッド等に対して水圧がかかるために、ロッドレスシリンダー3a・3bの作動力が外部に完全に伝わらない。しかし、本発明のWYSIWYG−NET1では、上述の理由から、ロッドレスシリンダー3a・3bの作動力をロッド等によって外部に機械的に伝える必要がないため、ロッドレスシリンダー3a・3bの作動が水圧の影響をほとんど受けることがない。
【0165】
また、ロッドレスシリンダー3a・3bから生じる排気圧気はドレイン容器2に封入される。ドレイン容器2に排気圧気が封入されるということは、排気圧気は水中に排気されないということなので、ロッドレスシリンダー3a・3bの排気圧気を生じさせる部分は、水中に露出していないことになる。よって、ロッドレスシリンダー3a・3bの排気圧気を生じさせる部分は外部水圧から独立していることになる。
【0166】
上述のように、ロッドレスシリンダー3a・3bの作動と排気とが外部水圧と独立して行われることから、アクチュエーター部8a・8bを介してロッドレスシリンダー3a・3bによって採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開閉を行う本発明のWYSIWYG−NET1は、水中でも外部水圧の影響をほとんど受けずに採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開閉を行うことができる。つまり、水中でも外部水圧の影響をほとんど受けずに正確な採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開閉を行うことができる。
【0167】
また、本発明のWYSIWYG−NET1は作動圧気によって水中でも外部水圧の影響をほとんど受けずにWYSIWYG−NET1が備えるロッドレスシリンダー3a・3bによって開閉を行える。よって、ワイヤーによる水面上からのWYSIWYG−NET1の採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開閉の操作を行わなくても採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開閉を行うことが可能な構成である。つまり、曳網設備以外の船上設備を用いなくても、WYSIWYG−NET1の採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開閉を行うことが可能な構成である。
【0168】
つまり、曳網設備以外の船上での付加的設備を用いずに、WYSIWYG−NET1単体で正確な開閉制御を簡便に行い得る構成である。
【0169】
また、本発明のWYSIWYG−NET1では、電子タイマー5は、設定される時間に従ってロッドレスシリンダー3a・3bの作動を制御できる。ネットの開閉はアクチュエーター部8a・8bを介してロッドレスシリンダー3a・3bによって行われるため、設定される時間に従ってネットの開閉を行うことができる。
【0170】
よって、所定の水深に到達する時間ごとに上記作動を制御するように電子タイマー5を設定すれば、所定の水深ごとに採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開閉を行うことができる。
【0171】
その結果、本発明のWYSIWYG−NET1単体によって自動的に所定の水深ごとに採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開閉を行うことが可能になる。
【0172】
また、本発明のWYSIWYG−NET1では、採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開口部30が可動ポール7a・7b、固定ポール9a・9b、及びサイドカバー10によって支持されているので、水圧等の抵抗が採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18にかかった場合でも、採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開口部30が水圧等の抵抗によって閉じることがない。
【0173】
よって、採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開閉が正確に行われ、その結果、精度の高い開閉を行うWYSIWYG−NET1が実現可能になる。
【0174】
また、本発明のWYSIWYG−NET1では、金属は一般的に強度が高いことから、金属からなる可動ポール7a・7b、固定ポール9a・9b、及びサイドカバー10の強度が高くなる。よって水圧等の抵抗によって可動ポール7a・7b、固定ポール9a・9b、及びサイドカバー10が変形、又は破損する可能性を低く抑えることができる。そして、その結果、耐久性の高いWYSIWYG−NET1を実現することが可能になる。
【0175】
また、本発明のWYSIWYG−NET1では、ドレイン容器2内の圧力よりも外部水圧が低い、水深の浅い場所では、上記排気圧気はドレイン容器2外部に逆止弁11を通して排気される。ドレイン容器2内の圧力が外部水圧よりも低く、圧力の差によって外部の水がドレイン容器2内に流入する状態であっても、逆止弁11によって外部の水は、ドレイン容器2内に流入することはできない。よって、上記作動圧気のドレイン容器2外への排気のみが行われる。
【0176】
また、ドレイン容器2内の圧力よりも外部水圧が高い水深の深い場所では、上記作動圧気はドレイン容器2外部に逆止弁11を通して排気されない。このため、ドレイン容器2内の圧力よりも外部水圧の方が大きいことによって生じる逆止弁11を通したドレイン容器2内への水の流入は防がれる。
【0177】
よって、水深の浅い場所でも、水深の深い場所でもドレイン容器2内に水が流入することがない。その結果、水の流入によってドレイン容器2内部の電磁バルブ4a・4b等の動作に支障をきたす恐れがないのでWYSIWYG−NET1の水深に関わらない水中動作が確保できる。
【0178】
また、本発明の採集装置では、生物確認用カメラ12によってWYSIWYG−NET1から逃避した生物、及びWYSIWYG−NET1の採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の網目を逸脱した生物を確認することができる。
【0179】
WYSIWYG−NET1から逃避した生物、及びWYSIWYG−NET1の採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の網目を逸脱した生物のデータを補間データとして用いることによって、本発明の採集装置によって得られるデータをより正確なものにすることが可能になる。
【0180】
よって、曳網設備以外の船上での付加的設備を用いずに、WYSIWYG−NET1単体で正確な開閉制御を簡便に行い得るだけでなく、採集した生物から得られるデータをより正確なものにすることができる。
【0181】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図6、及び図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0182】
本実施の形態のWYSIWYG−NET21は、前記実施の形態1のWYSIWYG−NET1の構成に加えて、少なくとも数、又は大きさを含む、水中の生物の状態を計測する生物状態計測部としてのLOPC(Laser Optical Plankton Counter)(商品名)23、少なくとも水温、電気伝導度、又は水圧を含む、水中の状態を計測する水質状態計測部としてのCTD(Conductivity Temperature and Depth Profiler)計測器24、及び水圧センサー25を有する点が異なっている。
【0183】
最初に、WYSIWYG−NET21の各部の構成について説明する。
【0184】
WYSIWYG−NET21では、図7に示すようにLOPC23、及びCTD計測器24は、2つあるうちの一方のサイドカバー10に備えつけられている。
【0185】
また、水圧センサー25は、水圧を感知するセンサー部26を除いてドレイン容器2中に封入されている。
【0186】
次に、本発明のWYSIWYG−NET21を実際に水中で運用する場合のネットの開閉手順を図6を用いて説明する。
【0187】
最初に、WYSIWYG−NET21を水中に投入する前に電子タイマー5のうちの1つを、WYSIWYG−NET21が下層の70mに到達した時にSTEP2の状態になるように設定する。これによって、STEP1の状態のWYSIWYG−NET21が下層の70mに達した時間に電子タイマー5が作動し、WYSIWYG−NET21がSTEP2の状態に移行する。
【0188】
STEP2の状態では採集ネット18の開口部30は開いている状態なので、採集ネット18によって水深70m付近のプランクトン・マイクロネクトンが採集される。
【0189】
続いて、水圧センサー25を水圧0.6MPa、つまり水深60mでWYSIWYG−NET21がSTEP3の状態になるように設定しておく。これによって、WYSIWYG−NET21が水圧0.6MPa、つまり水深60mに達した時に水圧センサー25が作動し、WYSIWYG−NET21がSTEP2からSTEP3の状態に移行する。
【0190】
STEP3の状態では採集ネット18の開口部30は閉じている状態なので、水深60mでは水深70mで採集されたプランクトン・マイクロネクトンは採集ネット18に閉じ込められた状態になる。
【0191】
さらに、水圧センサー25を水圧0.3MPa、つまり水深30mでWYSIWYG−NET21がSTEP4の状態になるように設定しておく。これによって、WYSIWYG−NET21が水圧0.3MPa、つまり水深30mに達した時に水圧センサー25が作動し、WYSIWYG−NET21がSTEP3からSTEP4の状態に移行する。
【0192】
STEP4の状態では採集ネット16の開口部30は開いている状態なので、採集ネット16によって水深30m付近のプランクトン・マイクロネクトンが採集される。
【0193】
続いて、水圧センサー25を水圧0.2MPa、つまり水深20mでWYSIWYG−NET21がSTEP5の状態になるように設定しておく。これによって、WYSIWYG−NET21が水圧0.2MPa、つまり水深20mに達した時に水圧センサー25が作動し、WYSIWYG−NET21がSTEP4からSTEP5の状態に移行する。
【0194】
STEP5の状態では採集ネット16の開口部30は閉じている状態なので、水深20mでは水深30mで採集されたプランクトン・マイクロネクトンは採集ネット16に閉じ込められた状態になる。
【0195】
つまり、採集ネット18はSTEP2の状態の時にだけ開口部30が開き、採集ネット16はSTEP4の状態の時にだけ開口部30が開くことから、採集ネット18によって下層の水深70m付近のプランクトン・マイクロネクトンのみが採集され、採集ネット16によって上層の水深30m付近のプランクトン・マイクロネクトンのみが採集されることになる。
【0196】
なお、本実施の形態においては上層の水深を0m〜30mとし、下層の水深を30m〜70mとしているが、必ずしもこれに限定されず、目的とする生物の分布する水深に合わせて自由に水深の設定を行っても良い。
【0197】
また、本実施の形態においてはWYSIWYG−NET21がSTEP1からSTEP5の状態に段階的に移行する水深を、それぞれ70m、60m、30m、20mとしているが、必ずしもこれに限定されず、目的とする生物の分布する水深に合わせて自由に、WYSIWYG−NET21がSTEP1からSTEP5の状態に段階的に移行する水深の設定を行っても良い。
【0198】
なお、本実施の形態においてはWYSIWYG−NET21がSTEP1からSTEP5の状態に段階的に移行する水圧の設定を、それぞれ0.6MPa、0.3MPa、0.2MPaとしているが、必ずしもこれに限定されない。
【0199】
また、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、ダミーネット17は採集には用いないが、特にこれに限定するものではなく、ダミーネット17を採集に用いることも可能である。
【0200】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、ロッドレスシリンダー3a・3bの2本の空気圧シリンダーを用いて採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の3つのネットの開閉を行っているが、特にこれに限定するものではなく、空気圧シリンダーの数を増やすことによってネットの数を増やすことも可能である。
【0201】
また、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、電子タイマー5は5つ備えられているが、特にこれに限定するものではなく、電子タイマー5の数を増減することも可能である。
【0202】
なお、本発明のWYSIWYG−NET21では、水圧センサー25は、設定される水圧に従ってロッドレスシリンダー3a・3bの作動を制御できる。ネットの開閉はアクチュエーター部8a・8bを介してロッドレスシリンダー3a・3bによって行われるため、設定される水圧に従って採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開閉を行うことができる。
【0203】
よって、所定の水深の水圧ごとに上記作動を制御するように水圧センサー25を設定すれば、所定の水深ごとに採集ネット16、ダミーネット17、及び採集ネット18の開閉を行うことができる。
【0204】
その結果、本発明のWYSIWYG−NET21単体によって自動的に所定の水深ごとにネットの開閉を行うことが可能になる。
【0205】
また、本発明のWYSIWYG−NET21では、電子タイマー5、及び水圧センサー25は、設定した時間、及び設定した水圧に従ってロッドレスシリンダー3a・3bの作動を制御できる。ネットの開閉はアクチュエーター部8a・8bを介してロッドレスシリンダー3a・3bによって行われるため、設定した時間、及び設定した水圧に従ってネットの開閉を行うことができる。よって、電子タイマー5と水圧センサー25とを併用してロッドレスシリンダー3a・3bを制御するように設定すれば、電子タイマー5と水圧センサー25とを併用して所定の水深ごとにネットの開閉を行うことができる。その結果、本発明のWYSIWYG−NET21単体によって自動的に所定の水深ごとにネットの開閉を行うことが可能になる。
【0206】
また、本発明の採集装置では、LOPC23を備えることによって、本発明のWYSIWYG−NET21を用いた採集を行うのと同時に、採集を行っている水中の領域に存在する生物の状態のデータを入手することができる。
【0207】
採集を行っている水中の領域に存在する生物の状態のデータは、本発明のWYSIWYG−NET21によって採集される生物のデータの対照データ、及び補間データとして扱うことによって、得られるデータをより正確なものにすることが可能になる。
【0208】
よって、曳網設備以外の船上での付加的設備を用いずに、WYSIWYG−NET21単体で正確な開閉制御を簡便に行い得るだけでなく、採集した生物から得られるデータをより正確なものにすることができる。
【0209】
また、本発明の採集装置では、CTD計測器24を備えることによって、本発明のWYSIWYG−NET21を用いた採集を行うのと同時に、採集を行っている領域の水中の状態のデータを入手することができる。
【0210】
採集を行っている領域の水中の状態のデータは、本発明のWYSIWYG−NET21によって採集される生物のデータの補間データとして扱うことによって、得られるデータをより正確なものにすることが可能になる。
【0211】
よって、曳網設備以外の船上での付加的設備を用いずに、WYSIWYG−NET21単体で正確な開閉制御を簡便に行い得るだけでなく、採集した生物から得られるデータをより正確なものにすることができる。
【0212】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0213】
以上のように、本発明のプランクトン・マイクロネクトン採集を目的にした多段開閉式ネットは、曳網設備以外の船上での付加的設備を用いない。そして、多段開閉式ネット単体で正確な開閉制御を行うことができるため、海洋における資源量調査、生物調査を高精度かつ、簡便に行うことができる。
【0214】
例えば、稚魚の餌生物である動物プランクトンの種を特定し、その分布状態を明らかにすることによって稚魚の養殖技術を確立することもできる。
【0215】
他にも、科学魚群探知機による音響計測と多段開閉式ネットを使った採集による直接計測との双方から得られるデータの比較から、相互の計測精度の向上が可能になり、海洋生物の高精度な資源量推定が行える。
【0216】
海洋生態系のピラミッドの底辺を支える低次生物の資源量推定を高精度に行うことは、低次生物を餌とする魚類等の生残量の推定に必須である。また、魚類等の生残量は漁獲量を長い年月にわたって高く維持するための漁獲量の調節に必要なデータである。
【0217】
したがって、本発明は学術的な調査だけでなく養殖及び、漁業といった水産業においても有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】本発明の実施の一形態における多段開閉式ネットの概略的構成を示した平面図である。
【図2】上記多段開閉式ネットの概略的構成を示した側面図である。
【図3】上記多段開閉式ネットの空気圧回路を示した回路図である。
【図4】上記多段開閉式ネットの空気圧シリンダーの1サイクルの動作を示した図である。
【図5】上記多段開閉式ネットのネットの開閉状態の概略を示した側面図である。
【図6】上記多段開閉式ネットを実際に水中で運用する場合の概略を示した側面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態における多段開閉式ネットの概略的構成を示した平面図である。
【符号の説明】
【0219】
1 WYSIWYG−NET(多段開閉式ネット)
2 ドレイン容器(筐体)
3a ロッドレスシリンダー(空気圧シリンダー)
3b ロッドレスシリンダー(空気圧シリンダー)
4a 電磁バルブ(制御部)
4b 電磁バルブ(制御部)
5 電子タイマー(検出部)
6a SMCエアータンク
6b SMCエアータンク
7a 可動ポール(枠)
7b 可動ポール(枠)
8a アクチュエーター部
8b アクチュエーター部
9a 固定ポール(枠)
9b 固定ポール(枠)
10 サイドカバー(枠)
11 逆止弁(排気部)
12 生物確認用カメラ(観察用カメラ)
13a 配管
13b 配管
14a 配管
14b 配管
15a 配管
15b 配管
16 採集ネット(ネット)
17 ダミーネット(ネット)
18 採集ネット(ネット)
19 トリガースイッチ
20a ピストン
20b ピストン
21 WYSIWYG−NET
23 LOPC(生物状態計測部)
24 CTD計測器(水質状態計測部)
25 水圧センサー
29 センサー部
30 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のネットが開閉可能であり、水中で用いられる多段開閉式ネットにおいて、
アクチュエーター部を介して上記ネットの開閉を行う空気圧シリンダーと、
上記空気圧シリンダーに送りこむ作動圧気を調節することによって上記空気圧シリンダーの作動を制御する制御部と、
上記空気圧シリンダーの作動によって生じる上記空気圧シリンダーからの排気圧気を封入する筐体とを備えており、
上記空気圧シリンダーは、上記作動圧気によって生じる空気圧シリンダーの作動力を磁力によってアクチュエーター部に伝える磁気誘導型シリンダーであることを特徴とする多段開閉式ネット。
【請求項2】
所定の条件を検出した時に上記制御部に制御を行わせる検出部を備えていることを特徴とする請求項1記載の多段開閉式ネット。
【請求項3】
前記検出部は、設定される時間に応じて前記制御部を制御する電子タイマーからなることを特徴とする請求項1記載の多段開閉式ネット。
【請求項4】
前記検出部は、設定される水圧に応じて前記制御部を制御する水圧センサーからなることを特徴とする請求項1記載の多段開閉式ネット。
【請求項5】
前記検出部は、設定される時間に応じて前記制御部を制御する電子タイマー、及び設定される水圧に応じて前記制御部を制御する水圧センサーからなることを特徴とする請求項1記載の多段開閉式ネット。
【請求項6】
前記ネットは、上記ネットの開口部を支持する枠を備えていることを特徴とする請求項1記載の多段開閉式ネット。
【請求項7】
前記開口部を支持する枠は、金属からなることを特徴とする請求項5記載の多段開閉式ネット。
【請求項8】
前記筐体は、外部水圧が上記筐体内の圧力よりも小さい場合にだけ上記筐体外に上記排気圧気の排気を行えるように作動する排気部を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の多段開閉式ネット。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の多段開閉式ネットを備えることを特徴とする採集装置。
【請求項10】
観察用カメラを備えることを特徴とする請求項9記載の採集装置。
【請求項11】
水中の生物の状態を計測する生物状態計測部を備えることを特徴とする請求項9、又は10に記載の採集装置。
【請求項12】
水中の状態を計測する水質状態計測部を備えることを特徴とする請求項9、10、又は11に記載の採集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−89521(P2007−89521A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285566(P2005−285566)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年3月31日 社団法人日本水産学会発行の「2005(平成17)年度 日本水産学会大会『日本農学大会水産部会』 講演要旨集」に発表
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】