説明

多管構造を有している釣竿およびその製造方法

【課題】従来技術の短所を克服する釣竿およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】互いに接合される多数の複合管が備わっている釣竿システムのための構造であって、窓穴、あるいは「穴」が上記複合管の間で成形され、釣竿の剛性、強度、空気力学および快適性が改善されている。すなわち、釣竿10は複合材料から作られるのが好ましい2つ以上の管22から形成されている。これらの管22の第1部分22aは、釣竿10の外壁10aを形成しているとともに、竿内部10bを画定している。これらの管22の第2部分22bは、竿内部10bを横断して延びているとともに、少なくとも釣竿10のある長さに沿って互いに接合されており、それによって、内部補強用壁24が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釣竿に関するものであり、さらに詳しくは、多管の複合構造を有している釣竿に関するものである。この発明はまた、釣竿の製造方法に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
改善された空気力学、軽量、改善された曲げ剛性、および改善された強度が組み合わされた特徴構成を有している改良型釣竿についての要望が引き続いて存在している。
【0003】
釣竿の性能は、重量、曲げ柔軟性、曲げ柔軟性分布度、ねじり剛性、および強度のようないくつかの要因によって決定される。
【0004】
伝統的な釣竿は、先細の円形断面と中空の内部とがある単一の管状構造からなっている。壁の厚さは、特定の性能要求に備えるために、その長さに沿って変わることがある。竿構造体のために、軽量の複合材料が広く使用されている。釣竿の重量は性能を決定する際の重要な特徴である。竿の重量が軽ければ軽いほど、竿を振り動かしやすく、より長いキャスティング距離(casting distance)がもたらされる。
【0005】
それゆえ、これらの性能目標を達成するために、最も軽量の材料および設計が利用されている。近年の釣竿設計のための最も一般的な高性能材料は、実際に手頃な価格の任意の材料における、重量に対する強度および剛性の比が最大であることから、炭素繊維補強型エポキシ樹脂(CFE)である。その結果、CFEによれば、いろいろな剛性がもたらさされるとともに、優れた強度が備わったきわめて軽量の釣竿を提供することができる。
【0006】
釣竿の剛性および剛性分布度もまた、釣竿の性能を決定する際の重要な要因である。適切な復元性を有していて意図された標的へ餌を送り出すためには、釣竿の曲げ剛性が、キャスティング運動(casting motion)によって生じた加速度で作り出された力に釣り合う必要がある。
【0007】
おびただしい数のキャスティング運動およびキャスティング方向がある。例えば、あるキャスティング(casting)は、鉛直キャスティング平面から水平キャスティング平面まで変わることができる。これら2つのキャスティング運動によって、竿は互いに垂直な方向に偏向されるであろう。鉛直キャスティング、すなわちオーバーヘッドキャスティングは、より大きい加速度を可能にし、従って、竿により大きい偏向を加えることができる。水平キャスティングは、例えば運動が制限される木の枝の下における、より調整されたキャスティングであり、従ってより柔軟な竿のためになるであろう。
【0008】
炭素繊維複合体は、きわめて高い対重量剛性比をもたらし、また、提供されたそれらの異方性のために、釣竿の長さに沿った相異なる方向および部位に異なった剛性をもたらすために適応させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の単一管釣竿の伝統的な設計に基づいた制約がある。さらに、強度要件を考慮するときには、釣竿構造のために使用される炭素繊維に基づく材料に関する制約もある。炭素繊維複合材料から作られた釣竿は、薄い壁からなる管の座屈を引き起こす過剰な圧縮力によって生じる壊滅的破損に陥りやすい。
【0010】
実際のところ、釣竿は多くの応力状況を受けやすい。主に、キャスティングあるいは魚の引き寄せによる曲げ荷重がある。また、衝撃荷重および振動荷重もある。加えて、リールが竿に連結されている部位では高い応力集中がある。リールを竿に取り付けるための締付機構によって、この区域における竿に大きい周方向圧縮応力が加わることがある。さらにまた、釣糸ガイドによって、これらの部位における竿に力が働くことがある。こういう訳で、竿の壁厚はこれらの区域において最も大きい。その結果、竿は所望のものよりも重くなりがちである。
【0011】
上記のように、過去20年にわたる釣竿技術の発展は、軽量、剛性および強度の改善に主眼が置かれてきた。しかしながら、有意に改善されたキャスティング距離が備わっているかあるいは相異なる方向にもたらされた異方的作用が備わっている釣竿はまだ存在していない。
【0012】
伝統的な釣竿は、比較的複雑で費用のかかる製法で製造されている。伝統的な複合型釣竿の最も一般的な方法はまず第一に、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂で含浸された補強用繊維である「プリプレグ」("prepreg")として知られたシート形態にある原材料である。この樹脂は、熱および圧力の印加で容易に硬化することのできる「B段階」("B Stage")の液体形態にある。上記繊維は、布地のように織られていてもよく、あるいは、一方向性で、炭素、アラミド、ガラス、その他のようなさまざまな種類の高性能補強繊維であってもよい。プリプレグは、一般に連続状ロールの形態で提供されるか、あるいはより短いシート長部分をもたらすドラム型巻取具の形態である。プリプレグは正確な繊維方位を達成するためにさまざまな角度で切断され、また、これらの細長片は典型的には、ある機能を形成するために、それらをマンドレルに巻き上げることのできる「レイアップ」("lay−up")の形態に重ね合わされて置かれる。プリプレグの層を加圧するとともに強固にするためには、外圧を加えなければならない。このことは一般に、硬化炉の中で熱を加えるのに際して圧力が加えられる予備成形物の外面の周りにポリマー製「収縮テープ」("shrink tape")を巻き付けることによって、行われる。マンドレルによって釣竿の内部形態が決定される。強固にされた重ね合わせ層の厚さによって竿の外部形態が決定されるが、その断面は、回転製法のために一般に円形である。
【0013】
この構成/製法を記載している、Scott氏に付与された米国特許第2,749,643号、Hubbard氏に付与された米国特許第3,421,347号、およびLindler氏およびTaras氏に付与された米国特許第4,061,806号のような、おびただしい数の特許が存在している。
【0014】
単一の中空管を製造するための他の注目すべき特許は、ヒグチ氏に付与された米国特許第4,178,713号、イノウエ氏に付与された米国特許第4,653,216号、Hsu氏に付与された米国特許第6,454,691号、オノ氏らに付与された米国特許第6,601,334号、およびAhn氏に付与された米国特許第7,043,868号である。
【0015】
他の注目すべきデザインには竿の内部に伸びている釣糸が含まれ、これらのデザインのいくつかには、この特徴構成を容易にするための内部構造が含まれる。これらの例は、ツルフジ氏に付与された米国特許第5,564,214号、スナガ氏らに付与された米国特許第6,048,425号および第6,543,178号、コムラ氏らに付与された米国特許第6,243,981号、およびアキバ氏らに付与された米国特許第6,266,913号、第6,334,272号および第6,351,909号である。
【0016】
特に留意すべきものはDavis氏らによる米国特許出願第60/879,421号であり、これには、中空管の両側面における同心穴を通って延びる穴(port)がある単一の主管の備わっている釣竿が記載されている。
【0017】
この発明の主要目標は、従来技術の上記短所を克服する釣竿およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そして、この発明によれば、特許請求の範囲における請求項1による釣竿が提供される。
【0019】
大まかに言えば、この発明の設計の基本は、単一管部分を多管、例えば二管の構造に置き換えることであり、それによれば、内壁を形成するためにそれらの長さの大部分に沿っていっしょに溶融される。
【0020】
好ましいのは、二重の対向状アーチとして作用するとともに改善された空気力学、軽量、改善された曲げ剛性、および改善された強度をもたらす窓穴を形成するために、これらの管が特定部位で互いに隔てられていることである。このことによって、耐久性がありかつ信頼度が高い構成であり、キャスティングの間における空気力学が改善される改良型釣竿を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明による釣竿は、特定の剛性帯が竿の長さに沿ったさまざまな方位および部位で備わっているように構成することができる。従って、竿のねじり剛性を著しく改善することができるとともに、優れた強度および疲労抵抗、改善された衝撃吸収性および改善された振動減衰特性を達成することができる。
【0022】
この発明による釣竿には、特有の外観と改善された美しさとがこれまた備わっている。この発明によれば、特許請求の範囲における請求項14による釣竿の製造方法もまた提供される。
【0023】
以下でいっそう明らかになるように、このような製造方法は、工業的水準で、材料および労力の双方に関して低いコストで、容易にかつ効率的に実施することができる。
【0024】
この発明とその利点とをいっそうよく理解するために、添付図面およびその中の記述的事項への参照が行われるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、この発明のある実施形態によって構成された釣竿の等角投影図である。
【図1A】図1Aは、図1の線1A−1Aに沿って描かれた釣竿の断面図である。
【図1B】図1Bは、図1の線1B−1Bに沿って描かれた釣竿の断面図である。
【図1C】図1Cは、図1に示された釣竿のある部分の切欠等角投影図である。
【図2】図2は、この発明の代わりの実施形態によって構成された釣竿の側面図である。
【図2A】図2Aは、図2の線2A−2Aに沿って描かれた釣竿のある部分の縦断面図である。
【図3】図3は、多管設計で構成された釣竿の等角投影図である。
【図3A】図3Aは、図3の線3A−3Aに沿って描かれた図3の釣竿の断面図である。
【図3B】図3Bは、図3の線3B−3Bに沿って描かれた図3の釣竿の断面図である。
【図3C】図3Cは、図3に示された釣竿のある部分の切欠等角投影図である。
【図4】図4は、多管構造において多数の穴(port)がどのように方位付けされているかの代わりの例を示している。
【図4A】図4Aは、図4の線4A−4Aに沿った断面図である。
【図5A】図5Aは、穴の1つの形状を示している。
【図5B】図5Bは、穴の1つの形状を示している。
【図5C】図5Cは、穴の1つの形状を示している。
【図5D】図5Dは、穴の1つの形状を示している。
【図6】図6は、相異なる2つの材料からフレーム部材を形成するための製法を模式的に示している斜視図である。
【図7】図7は、相異なる2つの材料からフレーム部材を形成するための製法を模式的に示している斜視図である。
【図8】図8は、釣竿の柄区域の代わりの設計の等角投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面である図1〜図8に基づいて、この発明の好ましい実施形態を説明する。なお、これらによってこの発明が限定されるものではない。さまざまな図を通して、同一の参照符号は同一の部分を指している。
【0027】
添付図面を参照すると、この発明は釣竿10に関するものであり、釣竿10は複合材料から作られるのが好ましい2つ以上の管22から形成されている。
【0028】
これらの管22の第1部分22aは、この釣竿10の外壁10aを形成しているとともに、竿内部10bを画定している。これらの管22の第2部分22bは、竿内部10bを横断して延びているとともに、釣竿10の少なくともある長さに沿って互いに接合されており、それによって、内部補強用壁24が形成されている。この共通の壁24は、この構造を座屈させることのある圧縮荷重に耐える筋かいとして作用することで、釣竿10の曲げ強度が改善される。
【0029】
しかしながら、特定部位で、管22の対向面22bは、開口20,20aを形成するために、成形の間に離れた状態に維持される。
【0030】
これらの開口20,20aは、比較的大きく形成することができ、また、釣竿10のためには全体部分を貫通しているのが好ましい。これらの開口20,20aの一方の側面において、これらの管22は互いに接合されている。穴を開けたり補強繊維を切断したりすることなくこのように形成された開口20,20aは、簡潔さを目的として、これ以降、「穴」(port)と称される。
【0031】
結果として得られる構造は、いくつかの理由のために、優れた性能特性が備わっていることが分かっている。これらの穴は、この構造を撓ませて穴を変形させ、かつ、いっそうの弾性で復元する二重対向状アーチの形状にある。
【0032】
これらの穴によれば、釣竿の空気力学が改善され、空気が穴を通過することができ、その結果、より確実なキャスティング距離がもたらされる。これらの穴によれば、伝統的な単一管設計において伝統的に達成されるであろう場合よりも大きい曲げ柔軟性もまた可能になる。中空管どうしの間の上記内壁によって強度が増大し、圧縮座屈荷重に耐えることができる。
【0033】
図面のうち図1を特に参照すると、釣竿10は幾何学的形状を特徴としており、それによって、柔軟性、強度および他の使用特性が改善される。釣竿10には、普通はグリップおよびリールが取り付けられる柄端部12と、ループ形状の釣糸ガイドが取り付けられる先端部14とが備わっている。
【0034】
釣竿10は、エポキシ結合剤で互いに保持された整列状炭素フィラメント、すなわち、いわゆる「グラファイト」材料の多重層から作られているのが好ましい。さまざまな層における繊維は互いに平行であるが、これらのさまざまな層には変化する繊維方位があるのが好ましい。もちろん、釣竿10には、他の複合材料、プラスチック材料あるいは金属材料のような他の材料から作られた部分が備わっていてもよい。
【0035】
釣竿10には長くてほぼ中空の構造があるが、その部分はどのような形状のものでもよい。好ましいのは、釣竿10に、竿の長手軸100に沿って変化するとともに柄端部12から先端部14まで好ましくは先細になる直径があることである。
【0036】
釣竿10には、好ましくは柄端部12の近傍に複数の穴20が形成されている。これらの穴20は、以下でさらに説明するように釣竿10の対向壁どうしの間に広がっている。それぞれの穴20は形状が楕円形であるのが好ましく、その楕円形の長軸は釣竿10の長手軸に沿っている。それぞれの穴20は、釣竿10の前方側面と後方側面との間を延びる周壁30によって画定されている。
【0037】
この明細書において使用されたように、釣竿10の前方側面とは、オーバーヘッドキャスティングの方向において、釣竿10の釣糸ガイド(図示略)が取り付けられる面をいう。釣竿10の対向側面とは、長手軸100に対して上記面に対向する別の面を言う。穴20は、この構造体を曲げることができ、穴20を変形させ、さらにいっそうの弾性で復元することのできる二重の対向状アーチの形状にあるのが好ましい。
【0038】
これらの穴20によって、穴軸201のある面内におけるキャスティングスイングのためのより大きい曲げ柔軟性もまた可能になるが、その理由は釣竿10の開放構造によって部分特性が減少するからである。加えて、強度は伝統的な単一管設計において伝統的に達成されるであろうものよりも大きいが、その理由は管22とそれぞれの穴20の内側柱との間の内壁24が薄肉の管状釣竿の座屈破損の防止に役立つからである。
【0039】
穴20の軸201がキャスティング方向200に沿っているときには、空気力学的利点がもたらされ、空気が釣竿10を通ることができ、その結果、より速いスイング速度とさらに大きいキャスティングとがもたらされる。最後に、穴20によって、釣竿10への特有の外観がもたらされる。
【0040】
図1Aは、この実施形態における釣竿10の構造を形成する2つの中空管22を示している。これらの中空管22は互いに接合されて、内壁24が形成されている。内壁24の好ましい部位は釣竿10の長手軸100の近傍である。両方の中空管22は、成形されるときにほぼ同一の寸法であって、「D」字形状を形成するべきである。
【0041】
図1Bは、穴20の部位で、中空管22が互いに隔てられていて穴20を画定するための壁を形成している、ことを示している。好都合であるのは、応力集中が減少するとともに成形処理が促進されるように穴の中へ引き込まれる半径(すなわち丸みのある縁26)があることである。
【0042】
図1Cは、1つの穴20で切り離された釣竿10の等角投影図であり、2つの中空管22と内壁24とを示している。また、湾曲壁30によって形成された穴20も示されており、これは円筒の一部の形状をしている。この特定の例では、穴の軸はこの管の主軸100に対して90度をなしている。
【0043】
図2に示されたように、代わりの実施形態は穴20aを形成するためのものであり、これらの穴20aは、軸201がキャスティングの方向200に対して垂直であるように方位付けされている。このようにして方位付けされた穴20によって、釣竿10の増大強度の利点とともに、キャストの平面内における釣竿10のいっそう伝統的な剛性がもたらされる。加えて、釣竿10が曲がるとこれらの穴20が変形するとともに復元するような、より大きい弾性の釣竿10がもたらされる。
【0044】
これに対して、このようにして方位付けされた穴20によって、曲がっている平面の外についてはいっそう柔軟な釣竿が作られるが、この方位は穴20の軸に関する平面内におけるキャスティング方向を意味している。
【0045】
図2Aは、図2の線2A−2Aに沿って描かれた縦断面図である。図2Aによれば、穴20以外の部位で、中空管22は、横並びに配置されているとともに、これらの長さの大部分に沿って互いに溶融されて、釣竿10の直径を横断して延びる、すなわち釣竿内部10bを二分する共通壁24が形成されている。
【0046】
上記のように、内壁24によって、変形および座屈破損に耐えるための構造的補強がもたらされる。
【0047】
特定部位、例えば穴20が形成される部位では、これらの管22の対向面30aおよび30bは、二重対向状アーチの形状にある窓穴20aを形成して穴20aの壁30を形成するために、成形の間に隔てられる。これらの対向状アーチは、変形および復元が可能な幾何学的支持部として作用する。
【0048】
図3には、多管構造から構成された釣竿10の代わりの実施形態が示されており、この構造によって、穴20および20aを相異なる角度で方位付けすることができる。この特定の例では、先端部14に近い穴20aは、この領域におけるいっそう大きい柔軟性をもたらすために、キャスティングの方向200に沿っている。柄端部12に近い穴20は、キャスティングの方向200に対して垂直に方位付けされており、これらによって、増大強度とともに伝統的剛性がもたらされるであろう。
【0049】
従って、この型の設計による釣竿には柔軟な先端領域といっそう伝統的な柄領域とが備わっているとみなされるであろう。所望により、逆の組み合わせあるいは任意の組み合わせにすることもまた可能である。
【0050】
図3の線3A−3Aに沿って描かれた図3Aの例では、4つの管42,43,44,45は、「X」の形態にある内壁46を作り出すとともに管状部を作り出すために使用されている。図3の線3B−3Bに沿って描かれた断面図3Bは、キャスティング方向に対して平行に方位付けされた穴20aの領域におけるものである。この例では、中空管42および43はいっしょに残されており、中空管44および45も同様である。中空管42および43は、穴20aを作り出すための成形の間に中空管44および45から隔てられる。
【0051】
図3Cは、図3の釣竿の切欠部分の等角投影図であり、キャスティング方向200に対して平行に方位付けられた穴20aと、キャスティング方向200に対して垂直に方位付けられた穴20とを示している。
【0052】
図3Aおよび図3Bに関して上で説明されたように、穴は2つの管を他の2つの管から隔てることによって形成することができる。この例では、穴20aを形成するために、中空管42および43はいっしょに残されており、中空管44および45も同様である。穴20を形成するために、中空管42および45はいっしょに残されており、中空管43および44も同様である。
【0053】
図4は、すべての管のための穴が同一部位にある4管構造体52の切欠等角投影図である。この例では、中空管47,48,49,50はすべて、同一部位で隔てられていて、それらの間に4つの穴51が形成されている。
【0054】
図4Aは、図4の線4A−4Aに沿って描かれた図4の管構造体52の断面図である。ここで、中空管はすべて隔てられているので、4つの開口51a〜51dがある穴51が存在している、ということがわかる。この特定の実施形態によれば、同一部位での平面内状態および平面外状態の両方について、いっそうの柔軟性および弾性がもたらされるであろう。
【0055】
多管設計では、任意の数の穴および穴の方位があってもよいが、これらは中空管の数に左右され、また、いくつかはこれらの穴を形成するために隔てられる。加えて、例えば三管設計では、穴の軸201は必ずしも釣竿の中心を通る必要はないであろう。
【0056】
図5A〜図5Dは、穴のために使用される可能性のあるさまざまな形状のいくつかの例を示している。特定の部位での構造体に必要な性能に左右されるが、より装飾的な穴形状を使用することができる。
【0057】
この発明の好ましい実施形態では、多数の複合管が使用されるのが都合よく、これらの管は、釣竿10におけるさまざまな部位での二重対向状アーチ30a,30bの形態にある窓穴を形成するために隔てられており、それによって、穴20,20aが画定されている。
【0058】
単一の中空管は複合型釣竿を設計しかつ製造するための伝統的なやり方であった。慣性の諸特性を最大にするために材料が管の中心軸から離れてずらされるので、単一の中空管によれば曲げおよび軽量の特性が最大化される、ということは効率の観点から筋道が通っている。単一の中空管に充分な壁厚があるときには、例えば重量が決定的なものでないときには、その設計によって適切な剛性と強度とが充分もたらされる。しかしながら、先に説明したように、壁厚が管の直径に対して薄くなると、管状部は、釣竿に常に存在している圧縮力の下で壁の座屈を受けやすい。
【0059】
この発明によれば、釣竿10を形成する従来の単一中空管は、中間に内壁24が接合された多管22で置き換えられる。内壁24は、荷重を受けたときに断面の変形に耐え、圧縮力を受けたときにその壁の座屈に耐える。
【0060】
この発明によれば、釣竿10それ自体の幾何学的形状に加えて、釣竿における部品の寸法、数、方位および間隔を変えることによって、釣竿10をその剛性および弾性に関して特別仕様に調整することができる。
【0061】
この発明は、釣竿10に成形されるさまざまな断面形状についても可能である。例えば、釣竿10には楕円形の断面があってもよく、あるいは成形された隆起部があってもよい。釣竿10は、釣竿10の外面に1つ以上の隆起部を加えることで、より堅く作ることができる。例えば、釣竿における穴の配置によって、穴20,20aを画定している区域における釣竿の剛性が減少する傾向がある。
【0062】
これらの区域における剛性は、これらの穴の近傍に隆起部を画定することによって増大させることができる。このような隆起部は、長手方向にあるいは周方向に配置することができ、また、制限された長さのものであってもよく、あるいは釣竿の全長に延びるものであってもよい。加えて、釣竿の断面形状によってもまた、剛性に影響が及ぶことがあり、とりわけ、多角形あるいは涙滴形のような断面形状によって角部が画定されているときには、剛性に影響が及ぶことがある。
【0063】
均等な剛性が必要でないときには、いくつかの区域に隆起部を加えてその剛性を増大させ、他の区域における剛性をそのままにしておくことができる、ことに留意すべきである。隆起部がまったくないときには、釣竿の剛性は、先に検討したように、基本的な中空釣竿を形成するためにプリプレグの細長片が配置されるやり方および角度によって規定されるであろう。
【0064】
複合材料による成形の処理によって、構造体における多管の使用が容易になる。
【0065】
基本的に、この発明による釣竿には、多管および形成用穴の使用においてプリプレグ層を強固にするための内圧が必要であるため、伝統的な成形技術とは異なる成形技術が必要であろう。例えば、2つのプリプレグ管60a,60b(図6および図7)を使用して同一の釣竿を成形するときには、それぞれの管は寸法が単一管の寸法のおよそ半分になるであろう。ポリマー製の膨張性ブラダー64を、それぞれのプリプレグ管の中心に挿入することができるとともに、加熱の際に内圧の発生によって上記の層を強固にするために使用することができる。
【0066】
この成形充填製法は、それぞれのプリプレグ管および内部ブラダーを手に入れて金型キャビティ(図示略)の中へ配置することから構成されており、また、空気継手(図示略)が上記ブラダーへ取り付けられる。この製法は、使用される数に左右されるそれぞれの管について繰り返される。
【0067】
これらの管どうしの間に形成された内壁が適正に方位付けられるように、それぞれの管の位置について注意が払われるべきであり、また、加圧の間に穴を形成するために、ピン(図示略)をこれらの管どうしの間に挿入することができる。これらのピンは、金型の部分の中に固定されるとともに、容易に取り出すことができる。
【0068】
この金型は加熱されたプラテンプレスの中で閉鎖状に圧縮され、また、それぞれの管のための空気圧は、それぞれの管およびこれらの間に形成された壁の寸法および位置を保持するために同時に加えられるべきである。この釣竿は金型の内側における内部加圧によって形成されるので、その金型キャビティによって、必要に応じて任意のものであってよい釣竿の形状が画定される。
【0069】
同時に、これらの管は、穴20,20aを形成するために上記ピンの周りに形成される。
【0070】
金型の中で温度が上昇すると、エポキシ樹脂の粘度が減少するとともにこれらの管は膨張し、これらの管は、これらの膨張が完全であってエポキシ樹脂が架橋されて硬化するまで互いに加圧される。次いで、金型は開放され、ピンは除去され、また、部品は金型から除去される。
【0071】
成形された管状部の内壁によって、その管状部の構造的性質が顕著に改善される。例えば、曲げたわみあるいはねじりたわみの間に、釣竿の形状がいっそう良好に維持され、断面が座屈する傾向が排除される。この壁の方位は、それによってもたらされる異方性を利用するために特定することができる。より大きい曲げ柔軟性が必要であれば、上記の壁は曲げの中立軸に沿って配置することができる。より大きい剛性が必要であれば、上記の壁は、その曲げ剛性を改善するために上記中立軸に対して90度で「I形梁」のように配置することができる。
【0072】
上記管状部を多管の使用によって成形すると、より多くの設計選択肢が可能になる。この管どうしの間の大きい楕円形開口を成形するために、上記中空管を釣竿に沿った特定の軸部位で分けると、釣竿の諸特性を必要に応じて変えることができる。
【0073】
特定の部位での窓穴あるいは穴の成形によって、二重対向状アーチの構成がもたらされる。この構造に寄与するのは、形状が楕円形であって2つの対向状アーチを作り出す穴の「二重アーチ効果」であり、一方、この管の断面形状は、穴によってもたらされた3次元壁構造体のために、保持される。
【0074】
例えば、穴開きの二管構造には外壁どうしの組み合わせがあり、これらの外壁は連続状であって上記構造体の大部分を形成しており、また、上記外壁に対してある角度で方位付けされた穴開き壁によって、上記管状構造に対する補強部のような筋かいがもたらされる。穴の円筒壁によって、管の断面がつぶれるのが防止され、上記構造体の強度が顕著に改善される。
【0075】
穴開き二管構造体の剛性および弾性は、標準的な単一中空管よりも大きくなるようにあるいは小さくなるように調整することができる。これは、穴の寸法、形状および位置とともに管どうしの間の内壁を方位付けする選択肢があるからである。
【0076】
穴は、この構造体の所望の性能特性をもたらすために、所望により堅いものであってもよく、いっそうのたわみおよび復元が可能なような弾性があってもよく、または、異なった材料あるいは異なった繊維角のレイアップを使用して設計されてもよい。
【0077】
この構造体は3つ以上の管を使用してさらに改良することができる。例えば、3つの管を使用すると、窓穴に120度ずつの隔たりが生じ、これらの方向に沿って加減される特定の剛性がもたらされる。
【0078】
4つの管を使用すると、特有の性能および美的水準を達成するために、互いに90度の角度で、また、代わりに上記管状部の長さに沿って配置された窓穴のある可能性がもたらされる。
【0079】
別の選択肢は、開放トラスの設計をより多く達成するために、同一の部位に多数の穴を配置することである。
【0080】
別の選択肢は、単一の複合管に多管の複合設計を組み合わせることである。この例では、単一の複合管は、100%多管構造の代わりにより低いコストで製造するために、先に説明した伝統的な方法で作られて多管とともに成形された釣竿の一部であってよい。
【0081】
再び図6および図7を参照すると、この構造体を作るために、膨張性ブラダー64がそれぞれに備わっている一対のプリプレグ管60a,60bの前方端部62が、伝統的な複合管66の一方端部の中へ挿入される。
【0082】
このユニットは、プリプレグ管60a,60bおよび複合管66の少なくとも継ぎ目70で、同一形状の複合管66が備わっている金型の中に置かれる。
【0083】
ピンあるいは金型部材(図示略)が、穴30の形成されるプリプレグ管60a,60bどうしの間に置かれる。次いで、金型が閉じられて加熱され、ブラダー64が膨張すると、プリプレグ管60a,60bは金型の形状を呈し、金型部材は穴30を形成するために対向壁71a,71bを隔てた状態に維持する。示されたように、プリプレグ管60a,60bによって、継ぎ目72で共通壁が形成されるであろう。プリプレグ管60a,60bが硬化した後に、フレーム部材74が金型から取り出され、また、金型部材あるいはピンが穴30を残して取り出される。この実施形態では、フレーム部材74のグラファイト部分60a, 60bどうしの間の継ぎ目70と複合管部分66とは同一平面上にある。
【0084】
管部分66は金属から作られていてもよい。
【0085】
この発明によって作られた釣竿にはきわめて目立つ外観がある。穴はきわめて目立つものであり、それによって、管状部がごく軽量であるように見えるが、このことは釣竿の市場取引において重要である。穴には異なった色を塗ることもでき、それによって、この技術の特徴的外観がさらに強調される。
【0086】
二重対向状アーチ構造を考慮すると、限りない選択肢の組み合わせがある。穴は、形状、寸法、位置、方位および個数によって変えることができる。穴は、剛性、弾性、強度、快適性および美観を強調するために使用することができる。例えば、応力が低い領域では、穴の寸法は、その効果および外観を最大にするために、きわめて大きいものであってもよい。
【0087】
たわみあるいは弾性がいっそう必要であるときには、窓穴の形状は、より大きい柔軟性を可能にするために、きわめて大きくかつ狭いものにすることができる。穴は、その製品により強い訴求力を付与するために、デザイナーによる形状を利用することもできる。
【0088】
より大きい振動減衰が必要であるときには、穴は、特定の角度で方位付けされかつ形成することができ、また、アラミドのような繊維あるいは液晶ポリマーを使用して構成することができる。穴が釣竿のたわみの結果として変形するので、その形状の復元は、振動減衰が増大するであろうこれらの粘弾性材料で調整することができる。
【0089】
振動減衰を増大させる別の方法は、穴の内側にエラストマー材料を挿入することである。
【0090】
この発明の別の利点は、リールへの取り付けが容易になることである。リールが取り付けられるであろう釣竿の柄部分に穴があると、リールを釣竿へいっそう良好に取り付けるための機械的手段がもたらされる。
【0091】
図8には、内壁24をそれらの間に形成する2つの管22を使用して成形された釣竿10の柄端部12のそのような例が示されている。この釣竿10には、リール82の足部80を収容するための凹状区域78が形成されている。凹状区域78の中には、リール82の足部80の中における穴86に一列に並ぶ穴84が形成されている。穴86および穴84を通り抜ける固定手段によって、足部80が凹状区域78へ取り付けられる。
【0092】
凹状区域78の利点は、リールの軸から釣竿10の中心までの距離が減少することである。これによって、感触がよくなるのに加えて、増大したキャスティング距離のためのガイドを通して釣糸の放出が容易になる。
【0093】
別の選択肢は、釣糸がリールから釣竿における穴を通して釣竿の反対側面へ進むことである。これによって、釣竿の上方側面に作用しさらに釣糸を位置させるとともに、いっそう安定しているために好ましい位置である釣竿の下方側面において案内される釣糸のリール設計のための利点がもたらされるであろう。そのような解決法は従来の釣竿設計では可能でないことに留意すべきである。
【0094】
上記説明に関して、寸法、材料、形状、形態、機能および作用方法、組立および使用が含まれるこの発明の部品についての最適な寸法関係は、当業者にとって容易に明らかになりかつ疑う余地のないものであるように見えるとともに、添付図面において示されかつこの明細書に記載されたそれらへのすべての均等な関係は、この発明によって包含されるように意図されている、ということに気が付くであろう。
【0095】
従って、上記のことはこの発明の原理だけの例示とみなされる。さらに当業者には多数の修正および変更が容易に心に浮かぶので、この発明は、示されかつ記載された正確な構成および作用に限定されることが意図されておらず、従って、すべての適切な修正および均等物はこの発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
10・・・釣竿
10a・・外壁
10b・・内部
12・・・柄端部
14・・・先端部
20・・・穴(開口)
20a・・穴(開口)
20b・・穴(開口)
22・・・中空管
22a・・第1部分
22b・・第2部分
24・・・壁
30・・・壁
42・・・管
43・・・管
44・・・管
45・・・管
60a・・プリプレグ管
60b・・プリプレグ管
64・・・ブラダー
100・・・軸
200・・・キャスティングの方向
201・・・軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの中空管(22)を備えてなる釣竿(10)であって、
前記管の第1部分(22a)が、前記釣竿の外壁(10a)を形成しているとともに前記釣竿の内部(10b)を画定しており、前記管の第2部分(22b)が、前記釣竿の内部を横断して延びているとともに前記釣竿の長さの少なくともいくらかに沿って互いに接合されており、それによって、内部補強用壁(24)が形成されていることを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記釣竿は、二管構造体から形成されていることを特徴とする請求項1記載の釣竿。
【請求項3】
前記釣竿は、三管構造体から形成されていることを特徴とする請求項1記載の釣竿。
【請求項4】
前記釣竿は、4つの管から形成されていることを特徴とする請求項1記載の釣竿。
【請求項5】
前記第2部分は、少なくとも1つの穴(20a,20b)を形成するために、少なくとも1つの軸部位で互いに隔てられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の釣竿。
【請求項6】
前記少なくとも1つの穴は、二重対向状アーチ構造を有していることを特徴とする請求項5記載の釣竿。
【請求項7】
前記第2部分は、多数の穴を形成するために、特定部位で互いに隔てられていることを特徴とする請求項5または6記載の釣竿。
【請求項8】
前記釣竿は、多数の二重対向状アーチ形の穴を有していることを特徴とする請求項7記載の釣竿。
【請求項9】
前記穴は、それを貫通する軸(201)を有し、前記穴の少なくとも2つは、相異なる軸方位を有していることを特徴とする請求項8記載の釣竿。
【請求項10】
前記釣竿は、寸法が変動する穴を含んでいることを特徴とする請求項8または9記載の釣竿。
【請求項11】
前記釣竿は、少なくとも3つの穴を含み、それぞれの穴は、それを貫通する中心軸を有し、前記少なくとも3つの穴の軸は、互いに間隔をおいて配されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1つに記載の釣竿。
【請求項12】
次の材料、すなわち複合材料、金属材料、プラスチック材料のうちの1つ以上から作られた部分を少なくとも備えていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の釣竿。
【請求項13】
リールと、前記リールに作動的に結合された釣糸とを備え、前記釣糸は、前記リールから前記釣竿の少なくとも1つの穴を通り抜けて進むことを特徴とする請求項5〜12のいずれか1つに記載の釣竿。
【請求項14】
以下の諸工程、すなわち
内部に配置された膨張性ブラダー(64)をそれぞれが内側に有している少なくとも一対のプリプレグ管(60a,60b)を用意する工程と、
前記プリプレグ管のそれぞれを金型のキャビティの中へ定置する工程と、
前記金型を閉じて加熱するとともに、前記膨張性ブラダーを加圧する工程と
を含んでいることを特徴とする釣竿の製造方法。
【請求項15】
以下の工程、すなわち
1つ以上の穴を形成するために、前記プリプレグ管どうしの間に1つ以上のピンを挿入する工程
をさらに含んでいることを特徴とする請求項14に記載の釣竿の製造方法。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図4A】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−165472(P2009−165472A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1630(P2009−1630)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(503433752)プリンス、スポーツ、インコーポレーテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】PRINCE SPORTS, INC.
【Fターム(参考)】