説明

多重化されたTDM回線の回線エミュレーション方法及び受信側装置

【課題】多重アクセスのTDM回線をパケット網等の非同期通信網で回線エミュレーションする。
【解決手段】多重化した回線ごとに、書き込みアドレスを生成し、この書き込みアドレスに基づいて、読み出しアドレスを生成し、この読み出しアドレスで読み出すことによりフレームを成形する。また、基準となる回線の書き込みアドレスに基づいて、書き込みアドレスを生成し、互いに近くになるように書き込んだ後、フレームを成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期通信サービス(ISDN、STM、SONET/SDHなど)において伝送されるTDM信号を、同期通信網の代わりに非同期通信網(イーサネット(登録商標)、IPなど)を介して伝送するTDM回線エミュレーションにおいて、1つの拠点が複数の拠点と同時に通信回線を設定して通信を行う多重アクセスを実現するための方法及び受信側装置に関する。
【背景技術】
【0002】
TDM回線エミュレーション技術は、同期通信網において伝送される同期信号を非同期通信網を介して伝送する技術であり、関連する標準としては、例えば、TDM網とMPLS網の相互接続のための機能を規定するITU−T勧告Y.1413「TDM-MPLS network interworking - User plane interworking」や、TDM網とIP網の相互接続のための機能を規定するITU−T勧告Y.1453「TDM-IP interworking - User plane interworking」などがある。また、TDM信号のイーサネット網での伝送を規定するMEF8「Implementation Agreement for the Emulation of PDH Circuits over Metro Ethernet Networks」などもある。
【0003】
多重アクセスとは、1つの場所に設置される複数のTDM回線を1つのインタフェース上に多重化するものである。それらの複数の回線の他端は、通常、別々の異なる場所に設置される。図1に多重アクセスサービスの概略を示す。図1のユーザビル#1内のNT(Network Termination)で3個の回線を多重している。ユーザビル#2から#4は、この回線の他端であり、各ユーザビル内のNTに回線が接続されている。この多重アクセスにおいては、回線を終端する装置の個数が少なくて済むというメリットがある。例えば、図1のユーザビル#1内では、3回線を使用しているが回線終端装置であるNTは1台である。このように、多重アクセスは、回線終端装置を調達するコストを低く抑えることが出来る。
【0004】
同期通信サービスのユーザインタフェース上でやり取りされる信号はフレームの形式である場合が多い。例えば、東日本電信電話株式会社が提供する高速ディジタル伝送サービスの1544kbit/sUNIインタフェースの場合、論理信号は193ビットのフレームで伝送される。そのフレーム構成を図2に示す。
【0005】
2つの端末間に回線を設定して通信を行う場合、ユーザデータを伝送するために、フレーム内の一つまたは複数のタイムスロットを用い、そのタイムスロットにユーザデータが入れられる。通信を開始する前に、使用するタイムスロットのフレーム内位置が予め両端末に設定される。通信時において、信号を送信する場合、端末装置は当該タイムスロットに信号を入れてフレームを送信する。信号を受信する場合は、端末装置は受信したフレームの当該タイムスロットから信号を取り出す。
【0006】
さて、多重アクセスの場合、同様にユーザデータを伝送するためにタイムスロットが使用され、そのタイムスロットの位置は回線ごとに設定される。多重アクセスの場合のフレーム構成とタイムスロットの使用の例を図3に示す。図3では、タイムスロット1〜12を使用する768kbit/s、タイムスロット16〜19を使用する256kbit/s、およびタイムスロット20を使用する64kbit/sの3回線の例を示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の同期通信の回線エミュレーションでは、1端末対1端末を対象にしたものは存在したが、1端末対多端末、すなわち、多重アクセスを対象にしたものは存在しなかった。そのため、多重アクセスの場合は、非同期通信網を介して同期通信の回線エミュレーションを行えないという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するため、多重アクセスのTDM回線をパケット網等の非同期通信網で回線エミュレーションする方法及び受信側装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明による多重化されたTDM回線エミュレーション方法は、多重化された同期通信サービスのTDM信号を、非同期通信ネットワークを介して伝送するTDM回線エミュレーションの方法であって、受信したパケットのタイムスロット信号の回線を識別することにより、該パケットを該回線ごとに振り分ける振分ステップと、前記振り分けられたパケットを、タイムスロット信号とシーケンス番号に分離する分離ステップと、前記シーケンス番号に基づいて書き込みアドレスを前記回線ごとに生成し、前記タイムスロット信号を回線ごとのバッファに書き込む書き込みステップと、前記回線ごとの書き込みアドレスに基づいて、前記回線ごとの読み出しアドレスを生成する生成ステップと、前記回線ごとの読み出しアドレスで、前記回線ごとのバッファから、前記タイムスロット信号を読み出して、フレームを成形する成形ステップと、を含んでいる。
【0010】
また、前記回線ごとの読み出しアドレスは、前記回線ごとの書き込みアドレスの初期値を初期値として生成されることが好ましい。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明による多重化されたTDM回線エミュレーション方法は、多重化された同期通信サービスのTDM信号を、非同期通信ネットワークを介して伝送するTDM回線エミュレーションの方法であって、多重化された回線の中から、基準となる回線を決定する決定ステップと、受信したパケットを、タイムスロット信号とシーケンス番号に分離する分離ステップと、前記シーケンス番号、及び、前記基準となる回線の書き込みアドレスに基づいて、前記基準となる回線以外の書き込みアドレスを生成する生成ステップと、前記書き込みアドレスで前記タイムスロット信号をバッファに書き込む書き込みステップと、前記バッファから前記タイムスロット信号を読み出して、フレームを成形する成形ステップと、を含んでいる。
【0012】
また、前記基準となる回線以外の書き込みアドレスは、前記基準となる回線の直近の書き込みアドレスであることが好ましい。
【0013】
また、前記基準となる回線は、最初に受信したパケットが含まれる回線であることが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明による受信側装置は、多重化された同期通信サービスのTDM信号を、非同期通信ネットワークを介して伝送するTDM回線エミュレーションの受信側装置であって、受信したパケットのタイムスロット信号の回線を識別することにより、該パケットを該回線ごとに振り分ける振分手段と、前記振り分けられたパケットを、タイムスロット信号とシーケンス番号に分離する分離手段と、前記シーケンス番号に基づいて書き込みアドレスを前記回線ごとに生成し、前記タイムスロット信号を前記回線ごとのバッファに書き込む書き込み手段と、前記回線ごとの書き込みアドレスに基づいて、前記回線ごとの読み出しアドレスを生成する生成手段と、前記回線ごとの読み出しアドレスで、前記回線ごとのバッファから、前記タイムスロット信号を読み出して、フレームを成形する成形手段と、を備える。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明による受信側装置は、多重化された同期通信サービスのTDM信号を、非同期通信ネットワークを介して伝送するTDM回線エミュレーションの受信側装置であって、多重化された回線の中から、基準となる回線を決定する決定手段と、受信したパケットを、タイムスロット信号とシーケンス番号に分離する分離手段と、前記シーケンス番号、及び、前記基準となる回線の書き込みアドレスに基づいて、前記基準となる回線以外の書き込みアドレスを生成する生成手段と、前記書き込みアドレスで前記タイムスロット信号をバッファに書き込む書き込み手段と、前記バッファから前記タイムスロット信号を読み出して、フレームを成形する成形手段と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、同期通信サービスの多重アクセス回線をパケット網等によってエミュレーションを可能にする方法及び受信側装置を提供している。受信側装置のデータ処理方法及びこの処理方法を実現する受信側装置に関するものであり、本発明により、受信時にエミュレーション装置のバッファで生じる伝送遅延時間をどの回線も同程度の時間にすることが可能になる。これにより、極端に遅延時間が大きい回線が発生する可能性を排除でき、高い通信品質の多重化されたTDM回線の回線エミュレーション方法及び受信側装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
多重アクセスのTDM回線を、非同期通信網で回線エミュレーションし、同一拠点で多重の回線を受信した場合、以下のような課題が発生する。単純に多重アクセス技術と回線エミュレーション技術を組み合わせただけでは、回線エミュレーションとしては課題を有していることになる。本発明では、第1の実施形態及び第2の実施形態により、この課題を解決した多重アクセスのTDM回線をパケット網等の非同期通信網で回線エミュレーションする方法及び受信側装置を提供している。
【0018】
最初に、多重アクセスを回線エミュレーションし、同一の拠点で多重の回線を受信した場合における課題を説明する。同期通信回線をパケット網でエミュレーションする場合、エミュレーション装置は端末装置から受信したフレームに含まれるタイムスロットの信号(タイムスロット信号)をパケットにカプセル化して伝送する。エミュレーション装置を含む網構成例を図4に示す。この図は、図1と同じく、ユーザビル#1内で3回線を使用しており、本課題は、ユーザビル#1が3重の回線を受信した場合に発生する。ここで、カプセル化は、フレームの全ての信号をカプセル化するのではなく、使用するタイムスロットのみをカプセル化しても良い。この場合、どのタイムスロットを使用するかは予めエミュレーション装置に設定しておく。タイムスロット信号をカプセル化する際、カプセル化される順にパケットにシーケンス番号が付与される。パケットにシーケンス番号を付与する方法は、例えば、ITU−T勧告Y.1413等に記述されている。カプセル化された順にシーケンス番号がパケットに付与され、この順に伝送されるため、受信側では、受信したパケットのシーケンス番号の順になるようにタイムスロット信号の順序を揃えることにより、元のタイムスロット信号を復元できる。タイムスロット信号の順序を揃えるために、受信したタイムスロット信号をバッファに一時的に格納する。そして、バッファからタイムスロット信号を取り出してフレームに成形して出力する。バッファには、タイムスロット信号を、その出力する順序、すなわちシーケンス番号の順序と、バッファ内の格納位置を示すアドレスの順序とが一致するように格納しておくことにより、バッファからアドレス順に読み出して出力すれば元のフレームが出力できるようになる。この場合、通信に使用されないタイムスロットには、例えば適切な固定値の信号を入れておく。これを実現するために、バッファにタイムスロット信号を書き込むときのバッファの書き込みアドレスが、シーケンス番号の順序通りになるように作る。書き込みアドレスの作り方としては、例えば、シーケンス番号に所定のオフセットを加算した値をアドレスする方法が考えられる。シーケンス番号の値の範囲よりアドレスの値の範囲の方が小さい場合、アドレスの値の範囲またはそれ以下の所定の数を法としてアドレスを計算する。例えば、シーケンス番号をSN、アドレス計算に用いるオフセットをOFFSET、アドレスの範囲をMとすると、アドレスの値Aは、
A=(SN%M)+OFFSET (式1)
で計算できる。ただし、%は剰余演算子である。
【0019】
多重アクセスの場合、複数の回線が設定され、それらの回線を同時に使用して通信を行うが、それらの回線で使用されるシーケンス番号は通常は全く違うものである。例えば、ある回線から受信したパケットのシーケンス番号が10であるとき、同時刻に別の回線から受信したパケットのシーケンス番号が2000のこともありえる。これは、シーケンス番号の初期値が異なっていたり、通信を開始する時刻が異なっていたりするからであり、むしろ、同じ値であることの方がまれである。タイムスロット信号を格納するバッファのアドレスを、そのタイムスロット信号を運んできたパケットのシーケンス番号に基づいて生成する場合、回線ごとにシーケンス番号の値が大きく違っていると、格納されるアドレスも大きく異なることになる。パケット受信時におけるエミュレーション装置でのタイムスロット信号のバッファへの格納に関係する処理の機能ブロック構成図を用いて、バッファにタイムスロット信号がバラバラの位置に格納される様子を図5に示す。
【0020】
この構成は、図4のユーザビル#1の受信側装置が3重の回線で受信する場合の処理であり、768kbit/s、256kbit/s、64kbit/sの3回線が受信される。ここで、タイムスロットグループ(TSG)とは、1つの回線を構成するタイムスロットの集合を表している。例えば、768kbit/sの回線の場合、タイムスロットグループ#1(TSG#1)は、図3のTS1からTS12のタイムスロットの集合である。TSG#2、TSG#3も同様である。
【0021】
受信したパケットは、回線識別手段により、回線識別情報が取り出される。これにより、受信したパケットが運んでいるタイムスロット信号の回線を識別することができる。
【0022】
パケットが運んでいるタイムスロット信号の回線の識別方法としては、回線ごとに別VLANとして、VLAN IDで区別する方法が考えられる。別の識別方法として、フレーム内の別フィールドを用いて識別する方法も考えられ、例えば、カプセル化方法がITU−T勧告Y.1453準拠であればUDP port numberフィールドを使う方法が考えられる。別の方法として、カプセル化方法がMEF8準拠であれば、ECIDフィールドを使う方法も考えられる。もちろん、新たにフィールドを定義して使用する方法も考えられる。
【0023】
この回線識別情報よりタイムスロットの位置情報が求められ、この情報はバッファにタイムスロット信号を書き込む際に使用される。この後、パケットはシーケンス番号分離部によって、シーケンス番号とタイムスロット信号に分離される。このシーケンス番号により、(式1)に従って、書き込みアドレスが生成され、タイムスロット信号がタイムスロット信号バッファに格納される。この時、TSGごとにシーケンス番号の系列が異なるため書き込み開始アドレスが異なり、図5のようにタイムスロット信号は各々バラバラな位置に格納される。
【0024】
図5ではバッファが一つであり、格納されているタイムスロット信号を読み出す際の読み出しアドレスは1つである。ある読み出しアドレスでタイムスロット信号を読み出したとき、そのアドレスに格納されていたタイムスロット信号は、バッファに格納されてから読み出されるまでの滞留時間が回線によって大きく異なることになる。つまり、回線によっては、バッファに書き込まれてから読み出されるまでの時間が長いために伝送遅延時間が大きくなる。その一方で伝送遅延時間が短い回線が存在する可能性もある。一般に、同期通信は企業向け専用線に用いられることが多く、高い通信品質が求められるため、遅延時間の増大は好ましくない。
【0025】
次に、上記の課題を解決した本発明の第1の実施形態について説明する。本実施形態は、どの回線の遅延時間も同程度の時間となるように、回線ごとにバッファを設け、読み出しアドレスを、書き込みアドレスの初期値に応じて決定する方法である。シーケンス番号が回線ごとにバラバラの値であるため、書き込みアドレスは、回線ごとにバラバラであるが、読み出しアドレスを書き込みアドレスと関連付けることにより、バッファ内での滞留時間をどの回線も同程度の時間にすることが可能になる。受信側装置の機能ブロック構成図を図6に示す。
【0026】
この構成は、受信側装置が4回線を受信する場合の処理である。パケットが受信された場合、パケットフィルタリングによって、パケットが運んでいるタイムスロット信号の回線を識別して、対応するタイムスロット信号格納部に振り分ける。
【0027】
タイムスロット信号格納部は、上述の方法と同様にパケットをシーケンス番号とタイムスロット番号に分離して、(式1)に従い、書き込みアドレスを生成し、タイムスロット信号バッファに格納する。
【0028】
この受信側装置が、ある回線のタイムスロット信号バッファにタイムスロット信号を格納し始めるのは、当該回線の最初のパケットを受信したときである。最初のパケットのシーケンス番号から算出されるアドレス以降の位置にタイムスロット信号が書き込まれていく。その最初のアドレスが、図6の「書き込みアドレス初期値」である。本実施例の方法では、バッファからタイムスロット信号を読み出してフレームを成形するとき、読み出す最初の読み出しアドレスは書き込みアドレスの初期値である。ただし、書き込まれてすぐに読み出しを開始するのではなく、パケット網の伝送遅延揺らぎを考慮に入れて、ある程度時間が経過してから読み出しを開始する。その経過時間がバッファ内の滞留時間になる。回線ごとにその経過時間を設定することにより、タイムスロット信号のバッファ内での滞留時間を制御できるため、伝送遅延時間をどの回線でも同程度にすることが出来る。
【0029】
各タイムスロット信号格納部のタイムスロット信号バッファから読み出された信号を、タイムスロット位置情報に基づいてフレーム内の位置を決定し、同期フレームを成形し出力する。なお、タイムスロット位置情報は、上述の方法と同じく回線識別手段(図示せず)により取り出される。
【0030】
次に、別の方法で上記の課題を解決した本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、図5において、タイムスロット信号をシーケンス番号のみに基づいて書き込むのではなく、他の回線のタイムスロット信号が書き込まれたアドレスの近くに書き込む、という方法である。図5では、ある回線のタイムスロット信号を書き込むときに、他の回線のタイムスロット信号が書き込まれた位置を考慮していないために、バラバラに格納され、結果として、一つの読み出しアドレスで読み出すときに回線によって伝送遅延時間にばらつきが発生した。そこで、書き込むときに、基準となる回線を決めておき、別の回線のタイムスロット信号を書き込むときは、当該基準となる回線のタイムスロット信号の書き込みアドレスに近い値の書き込みアドレスで書き込むことにする。
【0031】
基準となる回線の決め方は、基準となる回線がまだ決定されていないときは、最初に受信したパケットに含まれるTDM回線とする。
【0032】
最初に受信したパケットが伝送するTDM回線を回線_Aとし、そのパケットに含まれるシーケンス番号をSNA_0とする。そのパケットのTDM信号はSNA_0に基づいたアドレスTSAA_0に書き込まれる。例えば、シーケンス番号の値のアドレスにタイムスロット番号を書き込む場合は、
TSAA_0=SNA_0 mod M (式2)
である。ここで、Mはバッファのアドレスの値の範囲であり、mod MはMを法とすることを意味する。
【0033】
次に、別のTDM回線である回線_Bのパケットを受信したとし、そのパケットのシーケンス番号をSNB_0で表す。このパケットが運んできたタイムスロット信号を書き込むアドレスTSAB_0は、直近の回線_Aのタイムスロット信号を書き込んだアドレスをTSAA_1とすると、
TSAB_0=TSAA_1 (式3)
とする。このときの、TSAB_0とSNB_0との間の関係は、以降に受信する回線_Bのパケットのタイムスロット信号の書き込みアドレスTSABとそのパケットのシーケンス番号SNBにおいても保持する。つまり、TSAB_0とSNB_0の差をOFFSET_Bで表すと、
TSAB_0=SNB_0+OFFSET_B mod M (式4)
であり、
TSAB=SNB+OFFSET_B mod M (式5)
でもある。このようにすれば、パケット網における伝送遅延時間に揺らぎがなければ、回線_Bのタイムスロット信号が書き込まれるアドレスは常に回線_Aのタイムスロット信号が書き込まれるアドレスの近傍になる。他の回線についてもこの方法によってアドレスを決定すれば、全ての回線について、タイムスロット信号バッファ内において、どのタイムスロット信号も互いに近くに格納されるため、読み出すまでのバッファ内滞留時間がどの回線についても同じ程度になり、バッファ内残留時間が原因の伝送遅延時間の増大を回避できる。また、パケット網における伝送遅延時間に揺らぎがある場合は、ある時点では、どの回線も互いに近くに格納されていても、別の時点では、遅く到着するものや、早く到着するものがあるために、シーケンス番号が比較的小さいものや大きいものが現れ、結果として、バッファ内にある程度バラバラに分散して格納される。従って、読み出されるまでの時間にも、ある程度の時間差が発生する。しかし、この時間差は元々パケット網の伝送遅延揺らぎに起因するものであって、その伝送遅延時間差がそのままバッファ内に持ち越されただけである。従って、これは本実施形態に起因する伝送遅延時間の増大ではなく、パケット網の伝送遅延時間揺らぎによる伝送遅延時間差のみである。
【0034】
本発明の第2の実施形態の受信側装置の機能ブロック構成を図7に示す。本実施形態を実現するためには、パケットが伝送するTDM回線を識別し、回線ごとにオフセット値を管理する必要がある。TDM回線の識別方法は、第1の実施形態の場合と同じであるため、ここでは省略する。書き込みアドレスオフセット設定部は、各回線ごとのオフセットを決定する。オフセット値の決め方は、(式3)と(式4)から、TDM回線の最初のパケットを受信したときに、基準となる回線の書き込みアドレス値TSAA_1からそのパケットのシーケンス番号SNB_0を引いた値とする。ただし引き算は、Mを法として計算する。このようにして計算されたオフセット値を書き込みアドレスオフセット設定部に格納しておき、その回線のパケットを受信して、タイムスロット信号をタイムスロット信号バッファに書き込む際に書き込みアドレスを計算するために参照する。
【0035】
バッファからタイムスロット信号を読み出してフレームに成形するとき、読み出す最初の読み出しアドレスは、書き込みアドレスの初期値である。書き込まれてすぐに読み出しを開始するのではなく、パケット網の伝送遅延時間揺らぎを考慮に入れて、ある程度時間が経過してから読み出しを開始する。各TDM回線ごとに書き込みアドレスオフセットを管理することにより、各回線のタイムスロット信号は、バッファ内のお互いに近い場所に格納され、バッファ内の滞留時間をどの回線でも同程度にして、タイムスロット信号を読み出すことが可能になる。
【0036】
また、以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】多重アクセスサービスの概略を示す。
【図2】1544kbit/sUNIインタフェースのフレーム構成を示す。
【図3】多重アクセスの場合のフレーム構成とタイムスロットの使用の例を示す。
【図4】多重アクセスの回線エミュレーションの網構成例を示す。
【図5】パケット受信時に、回線ごとにアドレスを生成し単一のバッファに格納する場合の例を示す。
【図6】本発明の第1の実施形態における受信側装置の機能ブロック構成図を示す。
【図7】本発明の第2の実施形態における受信側装置の機能ブロック構成図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重化された同期通信サービスのTDM信号を、非同期通信ネットワークを介して伝送するTDM回線エミュレーションの方法であって、
受信したパケットのタイムスロット信号の回線を識別することにより、該パケットを該回線ごとに振り分ける振分ステップと、
前記振り分けられたパケットを、タイムスロット信号とシーケンス番号に分離する分離ステップと、
前記シーケンス番号に基づいて書き込みアドレスを前記回線ごとに生成し、前記タイムスロット信号を回線ごとのバッファに書き込む書き込みステップと、
前記回線ごとの書き込みアドレスに基づいて、前記回線ごとの読み出しアドレスを生成する生成ステップと、
前記回線ごとの読み出しアドレスで、前記回線ごとのバッファから、前記タイムスロット信号を読み出して、フレームを成形する成形ステップと、
を含んでいることを特徴とする多重化されたTDM回線エミュレーションの方法。
【請求項2】
前記回線ごとの読み出しアドレスは、前記回線ごとの書き込みアドレスの初期値を初期値として生成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多重化された同期通信サービスのTDM信号を、非同期通信ネットワークを介して伝送するTDM回線エミュレーションの方法であって、
多重化された回線の中から、基準となる回線を決定する決定ステップと、
受信したパケットを、タイムスロット信号とシーケンス番号に分離する分離ステップと、
前記シーケンス番号、及び、前記基準となる回線の書き込みアドレスに基づいて、前記基準となる回線以外の書き込みアドレスを生成する生成ステップと、
前記書き込みアドレスで前記タイムスロット信号をバッファに書き込む書き込みステップと、
前記バッファから前記タイムスロット信号を読み出して、フレームを成形する成形ステップと、
を含んでいることを特徴とする多重化されたTDM回線エミュレーションの方法。
【請求項4】
前記基準となる回線以外の書き込みアドレスは、前記基準となる回線の直近の書き込みアドレスであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基準となる回線は、最初に受信したパケットが含まれる回線であることを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
多重化された同期通信サービスのTDM信号を、非同期通信ネットワークを介して伝送するTDM回線エミュレーションの受信側装置であって、
受信したパケットのタイムスロット信号の回線を識別することにより、該パケットを該回線ごとに振り分ける振分手段と、
前記振り分けられたパケットを、タイムスロット信号とシーケンス番号に分離する分離手段と、
前記シーケンス番号に基づいて書き込みアドレスを前記回線ごとに生成し、前記タイムスロット信号を前記回線ごとのバッファに書き込む書き込み手段と、
前記回線ごとの書き込みアドレスに基づいて、前記回線ごとの読み出しアドレスを生成する生成手段と、
前記回線ごとの読み出しアドレスで、前記回線ごとのバッファから、前記タイムスロット信号を読み出して、フレームを成形する成形手段と、
を備えることを特徴とする多重化されたTDM回線エミュレーションの受信側装置。
【請求項7】
多重化された同期通信サービスのTDM信号を、非同期通信ネットワークを介して伝送するTDM回線エミュレーションの受信側装置であって、
多重化された回線の中から、基準となる回線を決定する決定手段と、
受信したパケットを、タイムスロット信号とシーケンス番号に分離する分離手段と、
前記シーケンス番号、及び、前記基準となる回線の書き込みアドレスに基づいて、前記基準となる回線以外の書き込みアドレスを生成する生成手段と、
前記書き込みアドレスで前記タイムスロット信号をバッファに書き込む書き込み手段と、
前記バッファから前記タイムスロット信号を読み出して、フレームを成形する成形手段と、
を備えることを特徴とする多重化されたTDM回線エミュレーションの受信側装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−199162(P2008−199162A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30250(P2007−30250)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】