説明

天板取付け方法及びそれに用いる固定具

【課題】天板の取替え更新が可能で、且つ、天板取り付けも容易な方法を提供する。
【解決手段】ステンレス製又は合成樹脂製等の板材の裏面に裏張り材が固着された天板(4)で、側板(5)と背板(7)と底板(6)を有するキャビネットの上部を覆い、該天板(4)の垂下側壁(44)を前記キャビネットの側板(5)に固着させない天板取付け方法であって、該天板裏面の水栓部裏張り材(48)に後部固定具(30)を取付けるとともに、前端裏張り材(46)に前部固定具(20)を取付けた後に、前記キャビネットの後框(52)に前記天板(4)に取付けた後部固定具(30)を対向させ、一方、前框(51)の手前側から前部固定具(20)を該前框(51)に対向させて設置して、次いで、前框(51)および後框(52)に、前部固定具(20)および後部固定具(30)をネジ(11)等で螺着固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流し台、調理台、洗面台等のキャビネット用天板の取付け方法およびその天板の固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅等では住宅機器設備をよりスペース効率よく設置する必要があり、建屋壁や建屋柱間の凹凸を隙間なく利用するため、柱間いっぱいの間口でキャビネットを設置することも多く、また、賃貸住宅では一部老朽化した天板の取替え更新も必要となる。
従来のこの種キャビネットへの天板の取付け方法としては、木製合板等により箱状に組み合わされたキャビネット本体に、ステンレス板製又は合成樹脂製等の天板を、このキャビネット本体の上部を覆うように取付け、キャビネット本体の側板外面へ直接的にネジ止めして固定するようにしていた。
【0003】
その例として特許文献1を示す。本特許文献1は、天板の固定作業を簡単にし、且つ天板をキャビネットにガタ付き無く、強固に固定することができるもので、天板の前部には、垂下部と、この垂下部の下端に連設されたキャビネット本体側を向く係合縁とが設けられ、天板の後部にはキャビネット本体の背面に当接する垂れ板部が設けられており、キャビネット本体の前面上部には係合片が前後動自在に設けられると共に所望位置で固定されるようになされ、前記垂れ板部がキャビネット本体の背面に当接するように係合片が垂下部に当接させられた状態で固定され、この状態で係合片が係合縁に係合するようになされる。
【0004】
また、特許文献2には、システムキッチンの取付け設置後においても、大がかりな工事を必要とせずに簡単に取り外すことができるシステムキッチン用のキャビネットが紹介され、互いに隣接させた複数のキャビネットに跨るようにして、各キャビネット共通の天板を取り付けてなるシステムキッチンに用られるキャビネットで、そのキャビネットの正面側への引き抜きに際して天板に干渉する戸当たり用の桟材及び天板支持用の枠材を、キャビネット本体に対して干渉を回避する姿勢に切り換え可能或いは取り外し可能に設ける技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2551470号公報
【特許文献2】特開2002−213111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、キャビネットへの天板取付けに取付け用ブラケットと係合片を使用し、キャビネット本体の前面上部で係合片が前後動自在で所望位置で固定されるようなっているため、キャビネット奥行長さと天板奥行長さが多少異なる場合にあっても、前記前後動により調整して強固に固定することができるものである。この天板取付け方法は、キャビネットの前板にブラケットをネジ止め固定し該ブラケットに係合片を仮固定した後に、天板を被せ、その後に前記仮固定の係合片を位置調整して下方から上方向きのネジを締め付け固定するため、天板固定具も2部品必要であり且つ上向き固定のため扉があると作業し難いものであった
【0007】
また、特許文献2は、天板に取り付けられた裏張り材に相当する桟材及び天板支持用の枠材を、キャビネット本体に対して干渉を回避する姿勢に切り換え可能或いは取り外し可能に設け、天板からキャビネットを引き抜き交換できるものであるが、複数キャビネット内の一部を引き抜くものであり、キャビネット全体を覆う天板を取り替えることはできない。
【0008】
この発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、天板の取替え更新が可能で、且つ、天板取り付けも容易な方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の天板取付け方法は、ステンレス製又は合成樹脂製等の板材の裏面に裏張り材が固着された天板で、側板と背板と底板を有するキャビネットの上部を覆い、該天板の垂下側壁を前記キャビネットの側板に固着させない天板取付け方法であって、該天板裏面の水栓部裏張り材に後部固定具を取付けるとともに、前端裏張り材に前部固定具を取付けた後に、前記キャビネットの後框に前記天板に取付けた後部固定具を対向させ、一方、前框の手前側から前部固定具を該前框に対向させて設置して、次いで、前框および後框に、前部固定具および後部固定具をネジ等で螺着固定するものである。
【0010】
この発明にあっては、天板の裏打ち材に予め前部固定具と後部固定材をビス等で固定しておき、キャビネットの前框と後框に、天板を反転させて前記両固定具を対応させ、前後框に前後固定具をネジで螺着固定すればよく、天板の取付けが容易にできるとともに、天板の取替えに際しては、垂下側壁がキャビネット側に固定されておらず、前後框にのみ固定しているため、間口いっぱいに設置されたキャビネットであっても、前後框の固定を解除するだけで流し台の設置場所のままで天板を上方に持ち上げ取替えが容易に行なえる。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の固定具は、請求項1に記載の天板取付け方法に用いる固定具であって、該固定具は弾性体よりなり、丸穴を有する水平片と、横長穴を有する垂下片と、該水平片と該垂下片とを連結する傾斜片からなるものである。
この発明にあっては、固定具が弾性体のため天板の折り返し壁を垂下片に押し当てて前端裏張り材に固定することができ、位置合わせが容易となるとともに、折り返し壁を前端固定具に確実に係止させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明は天板の取替え更新が可能で、且つ天板取付けも容易であるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る天板取替え方法およびそれに用いる固定具を実施するための最良の形態を、図面に基づいて以下説明する。
図1は、本発明を適用する流し台の設置環境を説明する斜視図であり、図2は、流し台の分解斜視図で、図3は本発明の要部詳細を説明するための図1のA‐A断面図である。
そして、図4の(a)は後部固定具の斜視図で、(b)は前部固定具の斜視図で、(c)は前部固定具を前端裏張り材に固定した状態を説明する斜視図である。さらに、図5は前部固定具について正面図、平面図、底面図および左右側面図を表しており、図6は後部固定具の正面図、平面図、底面図、左右側面図を表している。
以下、図1、図2の紙面左下側および図3の左側を前面側(手前側)とし、紙面右上側および図3の右側を後面側(奥側)として説明する。
【0014】
図1は、本発明が適用される流し台3の設置状況の例を示している。符号3は流し台で、該流し台3が住宅のスペース効率を考慮して図の建屋壁1と建屋柱2間の間口いっぱいの幅に設置されている例を示している。流し台3は、図2に示すように、天板4と天板下方の収納部であるキャビネットから構成され、天板4には厨房用具を洗うためのシンク8や水栓9が設けられ、該天板4の奥側は水返しのための上部に突設したバックガード9が設けられる。
キャビネットは複数を連接しても良いし単独でも良いが本実施例では、調理キャビネット32とシンクキャビネット31の構成のものを例示しており、キャビネットは側板5と背板7と底板6で前方と上部が解放された箱体で、キャビネット強度維持のための前框51や後框52で構成されている。また、キャビネット奥側は、図示していないが、シンク8内の汚水を排出するための排水管や水栓9用の給水管が配置される配管スペースとして使用され、該配管のバルブ等を点検修理するための点検口71が背板7には設けられている。
【0015】
また、天板4はステンレス製又は合成樹脂製等の板材が使用され、該天板4の裏面には板材を補強するための木製の裏張り材が貼り付けられている。図2および図3の実施例はステンレス製天板を例示しており、該天板4はステンレス鋼板を折り曲げ成形して、奥側のバックガード9および該バックガード端部の垂下後壁45、両側垂下側壁44、手前側に垂下前壁41、水平壁42、折り返し壁43を有している。裏張り材は、天板前側で間口方向に長尺の前端裏張り材46を、両垂下側壁44の内側には側部裏張り材47を、そして、水栓9の設置位置の天板裏面には板材補強のための水栓部裏張り材48が接着剤で天板4に固定され一体化されている。
【0016】
本発明の天板取付け方法は、天板裏面の水栓部裏張り材48に後部固定具30を取付けるとともに、前端裏張り材46に前部固定具20を取付けた後に、天板4を反転させて、キャビネットの後框52に後部固定具30を対向させ、そして、一方の前框51側では手前側から前部固定具20を該前框51に対向させてキャビネットの上部を天板4で覆うように仮置した後に、次いで、前框51および後框52に、前部固定具20および後部固定具30をそれぞれネジ11等で螺着固定するものである。
後框52への後部固定具30の螺着固定は、本実施例では、奥側に配管スペースを持つ流し台3で最奥端より手前側に後框52を配置しているため、天板4の撓み補強を兼ねた後部固定具30とすることが好ましく、ここでは三角形状の鋼板の直角を挟む両辺を折り曲げて起立片302とし、起立片302に止め孔を設けて、該止め孔にネジ11等を挿入して天板4と後框52を固定している。
【0017】
なお、本実施例では後框52の後方から後部固定具30を当接させてネジ固定する構造であるため、背板7の点検口71よりドライバー等の工具を挿入して取付け作業を行なうが、後框52が天板4のバックガード9に近く、手前側に後部固定具30を設けることができる場合は点検口71が不要である。
一方、前框51への前部固定具20の取付けは、前框51の手前側に前部固定具20を対応させて、前部固定具20の垂下片203に設けられた框止め穴にネジ11を手前側から挿入して締め付け固定すれば良い。
【0018】
また、一方、経年劣化した天板4の取替えは、天板4の垂下側壁44はキャビネットに固定されておらず嵌合又は係止状態であるため、後框52と後部固定具30および前框51と前部固定具20との固定を解除すれば良く、後部固定具30を取り付け時の逆作業で背板7の点検口71よりドライバー等で固定ネジ11を取外し、同様に手前側から前框51へ取付けている前部固定具20も取外し解除すれば良く、天板4をキャビネットから容易に取外すことができる。
【0019】
次に請求項2に記載の固定具について説明する。図4(b)に、この固定具の斜視図を示し、図5にその展開図を示している。本実施例における固定具は、硬質樹脂製の弾性体で、図に示す如く、水平片201と傾斜片202と垂下片203を有し、傾斜片202と垂下片203は係止段部204と奥寸調整段部205を介して連接されている。水平片201にはほぼ中央部分に丸穴である天板止め穴を有し、垂下片203には横長穴である框止め穴を有している。
固定具は、図4(c)および図3に示す如く、天板4の折り返し壁43に固定具の垂下片203を押し当てて位置合わせすることができるため、前端裏張り材46に固定具を容易に取付けることができる。なお更に、係止段部204に規制突起206を延設すると天板4の折り返し壁43の長さにばらつきがあっても確実に固定具の所定位置へ折り返し壁43を当接させて位置決めすることができる。
【0020】
また、図4(a)には、後部固定具30の斜視図を示し、図6にはその展開図を示している。この後部固定具30は略直角三角形状の補強片301の直角部を挟む両辺を折り返して起立片302に成形加工して作られている。材質は鋼板でも良いし硬質合成樹脂でも良い。起立片302には丸穴である2個の止め穴303が設けられ、該止め穴303にネジ11を通して、天板側の水栓部裏張り材48やキャビネット側の後框52に固定される。
【0021】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0022】
例えば、本実施例は、天板上に水栓9とシンク8のみが設けられていた例で説明したが、それらのみに限定されるものではなく、その他の機器として天板上にガスコンロやIHなどの加熱機器が設けられていても良い。
【0023】
また、請求項2に示す固定具は、本実施例では前部固定具20として用い、後部固定具30は天板奥側の補強を兼ねた固定具で説明したが、撓み補強の必要がない構造の流し台3等にあっては、後部固定具30にも兼用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用する流し台の設置環境を説明する斜視図である。
【図2】本実施例の流し台の分解斜視図である。
【図3】本発明の要部詳細を説明するための図1のA‐A断面図である。
【図4】本発明の固定具の実施例であって、(a)は後部固定具の斜視図で、(b)は前部固定具の斜視図で、(c)は前部固定具を前端裏張り材に固定した状態を説明する斜視図である。
【図5】前部固定具の正面図、平面図、底面図、および左右側面図を示す展開図である。
【図6】後部固定具の正面図、平面図、底面図、および左右側面図を表す展開図である。
【符号の説明】
【0025】
1 建屋壁
2 建屋柱
3 流し台(厨房設備)
31 シンクキャビネット
32 調理キャビネット
4 天板
41 垂下前壁
42 水平壁
43 折り返し壁
44 垂下側壁
45 垂下後壁
46 前端裏張り材
47 側部裏張り材
48 水栓部裏張り材
5 側板
51 前框
52 後框
6 底板
7 背板
71 点検口
8 シンク
9 バックガード
10 水栓
11 ネジ
20 前部固定具
201 水平片
202 傾斜片
203 垂下片
204 係止段部
205 奥寸調整段部
206 規制突起
30 後部固定具
301 補強片
302 起立片
303 止め穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス製又は合成樹脂製等の板材の裏面に裏張り材が固着された天板(4)で、側板(5)と背板(7)と底板(6)を有するキャビネットの上部を覆い、該天板(4)の垂下側壁(44)を前記キャビネットの側板(5)に固着させない天板取付け方法であって、
該天板裏面の水栓部裏張り材(48)に後部固定具(30)を取付けるとともに、前端裏張り材(46)に前部固定具(20)を取付けた後に、
前記キャビネットの後框(52)に前記天板(4)に取付けた後部固定具(30)を対向させ、一方、前框(51)の手前側から前部固定具(20)を該前框(51)に対向させて設置して、
次いで、前框(51)および後框(52)に、前部固定具(20)および後部固定具(30)をネジ(11)等で螺着固定することを特徴とする天板取付け方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の天板取付け方法に用いる固定具であって、該固定具は弾性体よりなり、丸穴を有する水平片(201)と、横長穴を有する垂下片(203)と、該水平片(201)と該垂下片(203)とを連結する傾斜片(202)からなることを特徴とする固定具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−94424(P2010−94424A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269859(P2008−269859)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】