説明

天然で未変性のCDTに対する抗体、抗体の製造方法、ハイブリドーマ、及び免疫測定方法

【課題】アルコール中毒患者を同定することができる抗体、該抗体の製造方法、該抗体を産生するハイブリドーマ、該抗体を用いた簡易な免疫測定方法を提供する。
【解決手段】提供する抗体は、未変性で天然の炭水化物欠失トランスフェリン(CDT)に選択的に反応する抗体である。該抗体を用いることにより、体液を変性処理する必要がなく直接CDT濃度を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルコール中毒患者を同定することができる抗体、該抗体の製造方法、該抗体を産生するハイブリドーマ、該抗体を用いた簡易な免疫測定方法に関する。該抗体は、未変性で天然の炭水化物欠失トランスフェリン(CDT)に選択的に反応する抗体であって、該抗体を用いて、体液を変性処理する必要がなく直接CDT濃度を測定することができる。
【背景技術】
【0002】
アルコール中毒は、アルコール中毒患者とかれらの関係者に多大の損害をもたらすばかりか、アルコール中毒に関連する生産性の損失及び莫大な年間健康管理費用をもたらす。従って、アルコール中毒への早期認識と治療とが個人及び社会にとって最善且つ費用効果的である。このような状況下において、高感度で特異的、しかも迅速で費用のかからない検査方法が必要である。
【0003】
例えば、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(γ−GTP)、平均血球容積(mean corpuscular volume) (MCV)、アスパラギン酸アミノトランスアミナーゼ(AST)又はアラニンアミノトランスアミナーゼ(ALT)、α−リポタンパク質及びフェリチンのような臨床検査項目が、アルコール乱用の生化学的マーカーとして多年にわたって用いられてきたが、これらの検査の診断的感度及び特異性は満足のいくものではなかった。
【0004】
Stibler らは、トランスフェリンの中で高い等電点を持つアイソフォームが1週間以上にわたって毎日60g以上のエタノールを摂取した者の81%で増加し、10日以上にわたって禁酒する場合に高い等電点を持つアイソフォームが正常レベルに戻ることを報告している(Acta Med Scan, 206, 275-281,(1979) :非特許文献1)。
【0005】
血清トランスフェリンは、79.5kDの分子量を有し、二つのN−連結の多糖鎖を有する一本のポリペプチド鎖から成る糖タンパクである。これらの多糖鎖は、分岐状であり、かつ末端シアル酸残基を有している。Wongおよび Regoeczi は、Int.J.Peptide Res. 9, 241-248, (1977) (非特許文献2)において、ヒトトランスフェリンは天然ではシアル化のレベルにより種々のアイソフォームが存在すると述べている。事実、6 種のアイソフォームとしてペンタシアロ、テトラシアロ、トリシアロ、ジシアロ、モノシアロおよびアシアロトランスフェリンが存在する。
【0006】
正常な健康個体に比べて、アルコール中毒患者の血液中には、アシアロ、モノシアロ、ジシアロトランスフェリンが上昇したレベルで存在することが見出されている (van Eijk et al, Clin Chim Acta 132, 167-171, (1983) :非特許文献3、Stibler, Clin Chem, 37, 2029-2037, (1991) :非特許文献4、および Stibler et al, "Carbohydrate-deficient transferrin (CDT) in serum as a marker of high alcohol consumption", Advances in the Biosciences, (Ed Nordmann et al), Pergamon, 1988, Vol.71, pages 353-357 ):非特許文献5)。
【0007】
アシアロ、モノシアロ及びジシアロトランスフェリンは、炭水化物(糖鎖)欠失トランスフェリン(略語:CDT)と呼ばれている。CDTは、アルコール消費、特に慢性アルコール消費を検出およびモニターするための有効なマーカーであることが見出されている。CDTの免疫学的検査法としてWO96/26444(特許文献1)および Heil et al, Anaesthesist, 43, 447-453, (1994)(非特許文献6)等が報告されている。これらの手法では、希釈血清サンプルをアニオン性イオン交換樹脂に通し、正常なトランスフェリンイソ型を樹脂に保持させる一方、CDT分画の通過を可能にしている。この溶出液のCDT含量は、免疫比濁法 (immunoturbidimetric assay)等によって測定される。その他、高速液体クロマト法によりCDTを定量する方法もWO95/04932(特許文献2)により知られている。
【0008】
前記アルコール中毒患者の従来の検査手法の全ては、イオン交換樹脂或いは高速液体クロマト法を適用する等比較的複雑な手順に基づくものであった。
【0009】
一方、Makhloufらは、CDTのみを直接測定するために、CDTに対するモノクローナル抗体の作製を試みた。彼らは、トランスフェリンの糖鎖が結合している413番目と611番目のアスパラギンを中心として前後6個のアミノ酸の合成ペプチドを免疫原として抗体を作製し、その抗体をCDT測定のための免疫測定法に応用することを考えた(WO93/06133:特許文献3)。
【0010】
これに対して、ER.Trimbleらは、Makhloufらの手法による、合成ペプチドを免疫原として作製したモノクローナル抗体はCDTには反応しなかったことからそのエピトープはトランスフェリン分子内に隠匿されており検出に応用できないと述べた(Biochem Soc Trans, 26(1), S48(1998) :非特許文献7)。
【0011】
一方、特開2004−051633(特許文献4)には、CDTと水溶液中で選択的に結合し、CDTを固相に結合させる必要がない抗体に関して記載されている。該抗体は、遺伝子組み換え手法により得たリコンビナント非糖化トランスフェリンを免疫原に使用し、或いは、酵素による脱糖化反応して非糖化トランスフェリンとしたものを免疫原として使用して、得た抗体である。即ち、人為的に作製したCDTを免疫原に使用して得られた抗体である。
【特許文献1】WO96/26444
【特許文献2】WO95/04932
【特許文献3】WO93/06133
【特許文献4】特開2004−051633
【非特許文献1】Acta Med Scan, 206, 275-281,(1979 )
【非特許文献2】Int.J.Peptide Res. 9, 241-248, (1977)
【非特許文献3】Clin Chim Acta 132, 167-171, (1983)
【非特許文献4】Clin Chem, 37, 2029-2037, (1991)
【非特許文献5】Advances in the Biosciences, Pergamon, 1988, Vol.71, pages 353-357
【非特許文献6】Anaesthetist, 43, 447-453, (1994)
【非特許文献7】Biochem Soc Trans, 26(1), S48(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
体液中のCDTを簡易に検出するために、体液中のCDTを前処理することなく測定できることが望ましく、そのためには天然のCDTの構造を認識する抗体を取得する必要がある。
【0013】
一方、上述したように糖鎖欠失部位の近傍の領域は、ER.Trimbleらの報告(非特許文献7)からも理解されるように、CDT分子内に隠匿されている可能性があり、トランスフェリン分子内のジスルフィド結合数の多さからも強固な立体構造を形成しており、糖鎖欠失部位の近傍のエピトープを認識する抗体の取得は困難であると想定される。
【0014】
また、免疫抗原として人為的に作製したCDTは、天然のCDTとは大きく異なるという問題がある。例えば、前記特許文献4の遺伝子組換え体の場合、ジスルフィド結合を含むためタンパク質の立体構造が不完全になり易く、また、酵素による脱糖化物の場合、調製の際に変性処理が必要である。さらに遺伝子組換え体と脱糖化物はアミノ酸の置換を生じるという問題がある。
【0015】
また、体液中から天然のCDTを精製するための方法として、一般的には抗トランスフェリン抗体が結合したカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーが使用される。しかしながら、この方法はカラム中の抗トランスフェリン抗体にトランスフェリンを結合させた後に、この抗原抗体複合体を酸性条件で変性させることによりCDTを含むトランスフェリンを溶出させて精製する方法がある。しかしながら、該方法により得られるCDTは変性している可能性が高いので、免疫原としては好ましくない。
【0016】
本発明はかかる問題点を鑑みて、体液中のCDTに対して反応しないような抗体を生ずる恐れのある、人為的に作製したCDTを免疫原に使用することなく、天然のCDTと選択的に結合し、既存の方法で測定したCDT濃度と相関性が高いアルコール中毒患者を同定するための抗体、該抗体の製造方法、ハイブリドーマ及び該抗体を用いた簡便な免疫測定法を提供することを目的とする。
【0017】
さらに、前記した目的に加えて、本発明は、前記変性が行われることがない、未変性で天然のCDT調製法を構築し、未変性で天然のCDTの構造を認識する抗CDT抗体を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は鋭意研究の結果、変性が行われることがない、未変性で天然のCDT調製法を構築し、未変性で天然のCDTの構造を認識する抗CDT抗体を取得した。
【0019】
即ち、本発明の抗CDT抗体は、未変性で天然のCDTに選択的に反応し、グリコシダーゼ消化トランスフェリンに反応しない又は実質的に反応しない抗CDT抗体である。本発明の抗CDT抗体は、未変性で天然のCDTの一次構造を認識せず、立体構造を認識する抗体である。
【0020】
本明細書において使用する用語「天然」とは、合成ペプチド、遺伝子組換体或いは酵素消化物という人工的に作製したCDTを免疫原に使用したものではないという意味で使用しており、また、「未変性」とは、天然(生体由来)の抗原も精製方法等で、pHの変動、熱、有機溶媒、界面活性剤(可溶化剤)等により変性させることも可能であることから、このような変性が無い意味で使用している。また、「非変性条件下」とは、未変性の状態を維持し変性させることのない条件下という意味で使用している。本明細書中に単に「天然のCDT」という場合は、未変性の生体由来のCDTを一般的に意味する。
【0021】
本発明の抗CDT抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよい。
【0022】
特に好ましいモノクローナル抗体は、特許生物寄託センター(IPOD)に寄託したハイブリドーマNCDT503(FERM AP−20844)から産生される抗体である。
【0023】
本発明の抗CDTモノクローナル抗体は次のP1−P6のペプチド領域に対して反応性を有しないか又は実質的に反応性を有しない。P1及びP2は、本発明者が作製したものであるが、特許文献3(WO93/06133の請求項3)に示されたペプチド配列に含まれる抗体認識部位に対応する。P3−P6は、本発明者が作製したものであるが、特許文献4(特開2004−051633の請求項4)に示されたペプチド配列に含まれる抗体認識部位に対応する。P1−P6のペプチド配列において下線部は、特許文献3又は特許文献4の抗体認識部位を示す。
P1: VLAENYNKSDNCE(配列番号1)
P2: QHLFGSNVTDCSG(配列番号2)
P3: VVARSMGGKEDLIWELL(配列番号3)
P4: IAKIMNGEADAMSL (配列番号4)
P5: YEKYLGEEYVKAV(配列番号5)
P6: SKLSMGSGLNLSEPN(配列番号6)
本発明の抗体は、未変性で天然のCDT抗原を免疫原として動物に免疫し、該動物から採取する方法により得ることができる。
【0024】
好ましくは、本発明の抗体は、アルコール中毒患者の体液を用い、非変性条件下にCDT抗原を精製又は部分的精製して得た、未変性で天然のCDT抗原を免疫原として動物に免疫し、該動物から採取して得ることができる。
【0025】
本発明の抗体生産方法に用いる免疫原は、例えば、非変性条件下でアルコール中毒患者等の血清等の体液から精製又は部分的に精製したものを用いることができ、好ましくは、体液を鉄飽和溶液と接触させ、その後、イオン交換クロマトグラフィー等の非変性条件下により調製したCDTを免疫原とすることができる。さらに好ましくは、体液を鉄飽和溶液と接触させ、その後、アルブミン、グロブリン等の夾雑タンパク質を除去し、次いで、イオン交換クロマトグラフィー等の非変性条件下により分画調製したCDTを免疫原とすることができる。前記アルブミンを除去するためにはブルーセファロースカラムを用いて除去することができ、前記グロブリンを除去するためにはProtein G カラムを用いて除去することができる。これらの夾雑タンパク質除去の手段、及び分画調製手段は、CDTを非変性条件下で精製する手段として有用である。
【0026】
本発明のポリクローナル抗体、ハイブリドーマ、及びモノクローナル抗体は、上記免疫原を動物に免疫することにより、該動物から採取することができる。動物を免疫する方法は公知の手法が適用でき、それに必要な免疫プロトコールは当業者にとって容易に決定し得る。例えば、本発明の抗体は、アジュバントと混合した免疫原を適当な宿主動物(ウサギ、ヤギ、ウマまたはその他の哺乳類)に注射することにより、作製し得る。免疫原の注射は、適当な力価の抗血清が得られるまで続けられる。抗血清は回収後、必要に応じてアフィニティークロマトやイオン交換クロマト法等の既知技術を用いて更に精製されることが好ましい。
【0027】
また、本発明の抗体は、免疫された動物(例えば、ラット、ハムスター、マウスまたはその他の哺乳類)から得た細胞と不死化細胞とを融合することによって得られる融合細胞(ハイブリドーマ)から得ることができる。例えばマウスを使用することが可能である。この場合、免疫原を既知技術により免疫した後、免疫したマウスから回収した脾臓細胞とマウスミエローマ細胞を用いてケーラーとミルシュタインの方法(ネイチャー256巻495頁1975年)により目的のハイブリドーマを得ることが可能である。目的とする抗体を産生するハイブリドーマの選択は、免疫原として用いたCDTやCDT以外のトランスフェリンを固相化した酵素免疫測定法或いは抗マウスIgG抗体を固相化し、上記ハイブリドーマの培養上清を反応させ、更に溶液状態のCDTやCDT以外のトランスフェリンを反応後、抗トランスフェリン抗体で検出するサンドイッチELISAでなされ、CDT以外のトランスフェリンには反応せず、CDTのみに強く反応するものを選択する。最終的には限界希釈法にてクローニングを施し、目的とするハイブリドーマを得る。モノクローナル抗体は、得られたハイブリドーマから既知技術である培養系またはマウス腹腔内で作製し、前記抗血清の場合と同様に、アフィニティークロマトやイオン交換クロマト法等の既知技術により精製することができる。
【0028】
本発明はまた、体液に、前記した本発明の抗体を接触させ、該抗体に選択的に反応するCDTを検出、又は定量化することを特徴とする免疫測定方法である。例えば、体液に、抗CDT抗体と抗トランスフェリン抗体を接触させ、CDTを検出または、定量化する方法である。本発明のCDTを検出又は、定量化する方法において、体液に、認識部位の異なる複数の抗CDT抗体を接触させ、検体中に含まれるCDTを検出または、定量化してもよい。
【0029】
本発明の免疫測定法に用いるのに適した抗CDT抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよく、抗血清またはその精製分画、あるいは既知のイソタイプまたはサブクラスでもよい。更には、必要に応じて抗原と結合できる抗体フラグメントであってもよい。即ち、抗体に関する唯一の条件は、それが少なくともアルコール中毒患者に多く、非アルコール中毒患者に少ないことが有意な差異で測定されるCDTに対して選択的に反応し得ることである。
【0030】
本発明の免疫測定方法に適用可能な方法には、不均一系測定方法としては、放射性同位体元素標識免疫測定法、酵素標識免疫測定法、蛍光標識免疫測定法等が挙げられる。均一系としては蛍光消光法、蛍光増強法、エネルギートランスファー法、凝集法、比濁法等が挙げられる。本発明の免疫測定方法は如何なる反応形式で行われてもよく、均一系でも不均一系でも何れであってもよい。これらの免疫測定法は用手法あるいは自動化されてもよい。
【0031】
前記免疫測定方法において、放射性同位体元素標識免疫測定法、酵素標識免疫測定法、蛍光標識免疫測定法に用いられる試薬の一つは、体液中のCDTの検出または定量化を可能にするために、標識される必要があるが、それらの標識物質については公知のものを使用してもよく、例えば、以下のものが挙げられる。
【0032】
1)酵素:アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコース−6−フォスフェートデヒドロゲナーゼ、アセチルコリンエステラーゼ等
2)蛍光体:フルオレセインイソシアネート、ローダミン、テキサスレッド等
3)放射性同位体元素:I125 、I131
4)生物発光体:ルシフェリン、エクオリン等
5)化学発光体:イソルミノール、アクリジニウムエステル、オキサレートエステル等 所望の試薬へのこれらの標識体の結合は、公知の技術を用いて行うことができる。
【0033】
前記免疫測定方法において、不均一系測定方法である放射性同位体元素標識免疫測定法、酵素標識免疫測定法、蛍光標識免疫測定法、ならびに均一系の中で担体を必要とする凝集法等に用いられる試薬の一つは、抗体を固相化する必要がある。抗体の固相化に用いる担体の材質及び形状は、測定用途によって公知のものから選択できる。例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド、ガラス、アガロース、ニトロセルロース等が挙げられる。形状としては、マイクロタイタープレート、バイアル、ラテックスビーズ、ディップストリップ等が挙げられる。
【0034】
本発明の免疫測定方法の対象となる体液は、血清、血漿、唾液またはその他の体液であってもよいが、血清であることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、未変性で天然のCDTに選択的に反応し、グリコシダーゼ消化トランスフェリンに反応しない又は実質的に反応しない抗CDT抗体を提供できるので、体液、特に、アルコール中毒患者から得られた、未変性で天然のCDTが含まれる体液に対して、簡単な手法で、精度よく検出又は定量することが可能となる。該抗体を用いることにより、体液を変性処理する必要がなく直接CDT濃度を測定することができる。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明を実施例及び添付した図を参照して詳述する。
【0037】
[実施例1]:未変性で天然のCDT分画の調製
CDT高値ヒト血清10mlに鉄飽和溶液(0.5M NaHCO3 250μlと10mM FeCl3 180μl)を加え、4℃で一時間インキュベート後、脱脂溶液(100g/l デキストラン硫酸 100μlと1M CaCl2 500μl)を加えた溶液の上清を回収した。さらにブルーセファロースカラム(Blue Sepharose 6 Fast Flow:商品名、GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)を用いてアルブミンを除去し、次いで、Protein Gカラム(Hi Trap Protein G HP:商品名:GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)を用いてグロブリンを除去することにより、トランスフェリン以外のタンパク質を除去した後、陰イオン交換カラム(MonoQ HR 5/5:商品名、GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)を用いて未変性のジシアロトランスフェリンとアシアロトランスフェリンを含むCDT分画を調製した。
【0038】
図1は陰イオン交換クロマトグラフィーによるCDT分画溶出プロファイルを示すグラフである。図1における矢印Aは波長280の吸光度曲線を示す。矢印Bは波長460の吸光度曲線を示す。図1の溶出プロファイルに示した各分画のSDS−PAGE(NuPAGE gel:商品名、インビトロジェン株式会社製)及び等電点電気泳動についての銀染色とウエスタンブロットの写真を図2に示す。図2に示すようにトランスフェリンの糖鎖の量に応じた5種のアイソフォームとしてテトラシアロ、トリシアロ、ジシアロ、モノシアロおよびアシアロトランスフェリンを未変性で高純度に調製することができたことがわかる。
【0039】
[実施例2]:変性条件下におけるグリコシダーゼ消化トランスフェリンの調製
ヒトトランスフェリン(PENTEX HUMAN TRANSFERRIN:商品名、MILES DIAGNOSTICS社製)20mgを10%ドデシル硫酸ナトリウム(略語:SDS)10μlと10mMリン酸緩衝食塩液(pH7.2)(略語:PBS)90μlを加え、37℃で1時間変性させた。この溶液に10%Tween20(TweenはICI Chemicals & Polymers社の登録商標、和光純薬工業株式会社製、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を50μlと0.1M EDTA10μlとPBS 900μlと10単位のグリコシダーゼ(N−グリコシダーゼF、リコンビナント:商品名、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製)を加えて37℃で24時間反応させた。反応後の溶液はトリクロロ酢酸とアセトンを用いたタンパク質の沈殿を行い、SDSを除去した後、レクチン(ConA)アフィニティークロマトカラム(ConA−Agarose:商品名、株式会社ホーネンコーポレーション製)を通過させることにより、グリコシダーゼで未消化のトランスフェリンを吸着除去し、且つグリコシダーゼ消化トランスフェリン粗分画を得る。次いで、該分画に対して陰イオン交換カラム(MonoQ HR 5/5:商品名、GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)を用いたクロマトグラフィーを実施することにより純度が高められたグリコシダーゼ消化トランスフェリンを調製した。
【0040】
また、グリコシダーゼを添加しない以外は同様にして対照となる変性トランスフェリンを調製した。
【0041】
図3はレクチン(ConA)アフィニティークロマトグラフィーにおけるグリコシダーゼ消化トランスフェリンの溶出プロファイルを示すグラフである。続いて実施した陰イオン交換カラム(MonoQ HR 5/5:商品名、GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)を用いたクロマトグラフィーで分離したプロファイルのグラフを図4に示す。得られた分画のSDS−PAGE及び等電点電気泳動の写真を図5に示す。図5に示したようにグリコシダーゼ消化によりトランスフェリンの糖鎖が除去されていることがわかる。
【0042】
[実施例3]:ハイブリドーマの調製
前記実施例1で得られたジシアロトランスフェリンとアシアロトランスフェリンを含む分画をCDT抗原として用いた。該抗原を濃度0.5mg/mlの抗原溶液に調製した。該抗原溶液500μlにアジュバンド500μl(TiterMax Gold:商品名、 TiterMax Co.製)を混和して乳化させ、5週令のBALB/cマウスの皮下に免疫した。追加免疫として同様に調製したものを2週おきに3回繰り返した。その間免疫時に採血をして抗原に対する血中の抗体活性を測定した。最終免疫から14日後に100μlの抗原溶液を腹腔内に投与し、3日後、脾臓を摘出した。脾細胞はマウスミエローマ細胞(P3x63Ag8.653)とポリエチレングリコール4000(商品名、メルク社製)の存在下で2分間反応させることにより融合させた。融合後、HAT選択培地に懸濁して96ウェルの培養プレートに分注し、37℃のCO2 インキュベーターで培養し、ハイブリドーマを調製した。また、比較のために前記実施例2で調製したグリコシダーゼ消化トランスフェリンを免疫抗原として用い、前記と同様にハイブリドーマを調製した。
【0043】
[実施例4]:CDT分画に対する抗体産生ハイブリドーマの選抜
前記実施例3で得られた各ハイブリドーマについて、本発明の抗体産生ハイブリドーマの選抜はサンドイッチELISAにより行った。96ウェルのマイクロプレートにPBSで10μg/mlに調製した抗マウス抗体を1ウェル当たりそれぞれ50μl加え、4℃で一昼夜反応させた。その後PBSで1回洗浄し、0.5%BSA−PBSでブロッキングを行いスクリーニング用のプレートとした。ハイブリドーマの増殖の認められたウェルの培養上清50μlをウェルに加え、室温で1時間反応させた。引き続き洗浄液(0.05%Tween−PBS)で洗浄後、前記実施例1に記載したCDT分画を室温で1時間反応させ、同様に洗浄後、アルカリフォスファターゼ標識抗トランスフェリンポリクローナル抗体50μlを加え、室温で1時間反応させた。なお、該アルカリフォスファターゼ標識抗トランスフェリンポリクローナル抗体は、抗トランスフェリンポリクローナル抗体(株式会社シバヤギ製)にアルカリフォスファターゼ(ロシュ社製)を過ヨウ素酸法で結合させることにより調製したものを使用した。再び洗浄後、アルカリフォスファターゼ活性をKind−King法にて発色させ、マイクロプレートリーダーで490nmの吸光度を測定し、該CDT分画に対する抗体活性を持つモノクローナル抗体産生ハイブリドーマNCDT503を選抜した。比較のために実施したグリコーダーゼ消化トランスフェリンを免疫原として得られたハイブリドーマの中からモノクローナル抗体産生ハイブリドーマTFNG405を選抜した。
【0044】
[実施例5]:CDT分画に対する抗体産生ハイブリドーマのクローニング
前記実施例4で選抜した各ハイブリドーマを限界希釈法により、クローニングを二回実施し、樹立株を各々得た。得られたハイブリドーマNCDT503は特許生物寄託センター(IPOD)に寄託した(受領日:平成18年3月14日、受領番号:FERM AP−20844)。比較のためにグリコシダーゼ消化トランスフェリンを免疫抗原として用いて調製し、前記実施例4で選抜したハイブリドーマTFNG405についても、同様にして樹立株を得た。
【0045】
[実施例6]:抗体の調製
前記実施例5で得られた各樹立株について、CDT分画に対する抗体活性を持つモノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、モノクローナル抗体の大量産生のためマウス腹腔内にて増殖させた。こうして得られた各マウス腹水中のモノクローナル抗体は、プロテインGカラム(GE社製)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0046】
[実施例7]: 抗体のサブクラスの決定
前記実施例6で得られた各モノクローナル抗CDT抗体のサブクラスはIsostrip(登録商標、ロシュ社製)を使用して決定した。
【0047】
各抗体のサブクラスを下記の表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
[実施例8]:サンドイッチELISAを用いた抗体の特異性の確認
前記実施例6で調製した各モノクローナル抗体(ハイブリドーマNCDT503産生抗体、ハイブリドーマTFNG405産生抗体)についてサンドイッチELISAを用いて、前記実施例1で調製したトランスフェリンアイソフォームに対する特異性の確認を行った。96ウェルのマイクロプレートにPBSで10μg/mlに調製した抗体を1ウェル当たりそれぞれ50μl加え、4℃で一昼夜反応させた。その後PBSで1回洗浄し、0.5%BSA−PBSでブロッキングを行った。その後、前記実施例1で調製したトランスフェリンアイソフォーム50μlをウェルに加え、室温で1時間反応させた。引き続き洗浄液(0.05%Tween−PBS)で洗浄後、アルカリフォスファターゼ標識抗トランスフェリンポリクローナル抗体(前記実施例4で調製したものと同じ)50μlを加え、室温で1時間反応させた。再び洗浄後、アルカリフォスファターゼ活性をKind−King法にて発色させ、マイクロプレートリーダーで490nmの吸光度を測定し、トランスフェリンアイソフォームに対する反応の強さを比較することで各抗体の特異性を確認した。その結果を下記の表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
表2に示すように本発明のモノクローナル抗体(ハイブリドーマNCDT503産生抗体)は溶液中の天然のCDT分画(アシアロトランスフェリンとジシアロトランスフェリン)に対して特異的に反応したが、CDT以外のトランスフェリンであるテトラシアロトランスフェリンと人工的に作製したCDTであるグリコシダーゼ消化トランスフェリンに対して反応しなかった。一方、N−グリコシダーゼF消化トランスフェリンを免疫して得られた比較のためのハイブリドーマTFNG405産生抗体は、表2に示すように天然のCDT分画(アシアロトランスフェリンとジシアロトランスフェリン)と人工的に作製したCDT(グリコシダーゼ消化トランスフェリン)の両方に反応した。
【0052】
[実施例9]:ウエスタンブロットを用いた抗体の特異性の確認
前記実施例6で調製したモノクローナル抗体(ハイブリドーマNCDT503産生抗体)について、ウエスタンブロットを用いて、前記実施例1で調製したトランスフェリンアイソフォームに対する特異性の確認を行った。等電点電気泳動用ゲル(Novex IEFゲル:商品名、インビトロジェン株式会社製、pH3−7)にCDT分画およびCDT以外のトランスフェリンを1レーンあたり各5μgになるように専用のサンプルバッファーで希釈後に添加し、専用の泳動バッファーで泳動後、専用のバッファーでPVDF膜に転写した。転写後のPVDF膜はブロックエース(商品名、大日本製薬株式会社製)でブロッキング後、PBSで10μg/mlに調製した抗体と室温で1時間反応させた。さらにPBSで3回洗浄後、アルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG抗体(Goat F(ab') Anti-Mouse Ig' s, Alkaline Phosphatase Conjugate AMI4405: 商品名、BIOSOURCE 社製)と室温で1時間反応させた。再び洗浄後、BCIP NBT試薬(商品名、日本バイオ・ラッドラボラトリーズ株式会社製)で発色させた。その結果をウエスタンブロット法による抗体の特異性(トランスフェリンアイソフォームに対する反応の強さ)を示す写真として図6に示す。
【0053】
図6に示したように本発明のモノクローナル抗体(ハイブリドーマNCDT503産生抗体)はウエスタンブロットにおいて天然のCDT分画(アシアロトランスフェリンとジシアロトランスフェリン)と特異的に反応したことがわかる。
【0054】
[実施例10]:抗トランスフェリンポリクローナル抗体と組み合わせたサンドイッチELISAを用いた相関性試験
前記実施例6で調製したモノクローナル抗体(ハイブリドーマNCDT503産生抗体)を用い、サンドイッチELISA法で、健常者とアルコール中毒患者の血清合計32検体を測定した。対照試験としてバイオラッド社製の試薬を用いて測定した。該対照試験は、カラムを用いたトランスフェリン中の%CDTを測定する方法であり、カラムでの分離前の総トランスフェリンの量と、分離後のCDTの量を測定し、検体中のCDT濃度と%CDT(総トランスフェリンに対するCDTの割合)を算出した。
【0055】
前記サンドイッチELISAによる測定は96ウェルのマイクロプレートにPBSで10μg/mlに調製した抗体を1ウェル当たりそれぞれ50μl加え、4℃で一昼夜反応させた。その後PBSで1回洗浄し、0.5%BSA−PBSでブロッキングを行った。その後、健常者とアルコール中毒患者の各血清50μlをウェルに加え、室温で1時間反応させた。引き続き洗浄液(0.05%Tween−PBS)で洗浄後、アルカリフォスファターゼ標識抗トランスフェリンポリクローナル抗体(前記実施例4で調製したものと同じ)50μlを加え、室温で1時間反応させた。再び洗浄後、アルカリフォスファターゼ活性をKind−King法にて発色させ、マイクロプレートリーダーで490nmの吸光度を測定し、対照試験測定値との相関性を確認した。その結果を図7に示す。
【0056】
図7に示したように未変性で天然のCDT分画を免疫原にして得られた本発明の抗体は対照試験CDT濃度と良好な相関を示した。一方、比較のために用いたグリコシダーゼ消化トランスフェリンを免疫原にして得られたモノクローナル抗体(ハイブリドーマTFNG405産生抗体)は対照試験CDT濃度と良い相関を示さなかった。したがって、本発明のハイブリドーマNCDT503産生抗体は、検体中のCDT濃度に応じて吸光度が相関しているので、吸光度の値を測定することにより、検体中のCDT濃度を定量することができる。
【0057】
[実施例11]:抗体の抗原認識部位の確認
前記実施例6で調製したモノクローナル抗体(ハイブリドーマNCDT503産生抗体)の反応性を次のようにして調べた。下記のP1−P6に示す6種類のアミノ酸配列のペプチドをELISAプレートに結合させた後、10μg/mlに調製した抗体を1ウェル当たりそれぞれ50μl加え、室温で1時間反応させた。引き続き洗浄液(0.05%Tween−PBS)で洗浄後、アルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG抗体(Goat F(ab') Anti-Mouse Ig' s, Alkaline Phosphatase Conjugate AMI4405: 商品名、BIOSOURCE 社製)50μlを加え、室温で1時間反応させた。再び洗浄後、アルカリフォスファターゼ活性をKind−King法にて発色させ、マイクロプレートリーダーで490nmの吸光度を測定した。
【0058】
P1−P6のペプチド配列において下線部は、特許文献3又は特許文献4の抗体認識部位を示す。その結果を下記の表3に示す。
P1 VLAENYNKSDNCE (配列番号1)
P2 QHLFGSNVTDCSG (配列番号2)
P3 VVARSMGGKEDLIWELL (配列番号3)
P4 IAKIMNGEADAMSL (配列番号4)
P5 YEKYLGEEYVKAV (配列番号5)
P6 SKLSMGSGLNLSEPN (配列番号6)
【0059】
【表3】

【0060】
表3によれば、モノクローナル抗体(ハイブリドーマNCDT503産生抗体)は、P1−P6(特許文献3又は特許文献4の抗体の認識部位を含むペプチド)に対して認識しないことがわかる。
【0061】
次に前記実施例6で調製した抗体の抗原認識部位を調べるために、最初に抗原タンパク質の一次構造への反応性について次のようにして確認した。即ち、CDT抗原をELISAプレート(イモビライザーアミノ:商品名、ヌンク社製)に共有結合させた後、4M尿素による変性、0.1M DTTで還元処理を行ったウェルに10μg/mlに調製した抗体を1ウェル当たりそれぞれ50μl加え、室温で1時間反応させた。引き続き洗浄液(0.05%Tween−PBS)で洗浄後、アルカリフォスファターゼ標識抗トランスフェリンポリクローナル抗体(前記実施例4で調製したものと同じ)50μlを加え、室温で1時間反応させた。再び洗浄後、アルカリフォスファターゼ活性をKind−King法にて発色させ、マイクロプレートリーダーで490nmの吸光度を測定し、タンパク質の一次構造を認識するかを確認した。その結果を下記の表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
表4に示すように本発明の抗体(ハイブリドーマNCDT503産生抗体)は、グリコシダーゼ消化トランスフェリンを免疫して得られた抗体(ハイブリドーマTFNG405産生抗体)が認識するCDT抗原を変性・還元処理した一次構造に対して反応しないことがわかる。また、本発明の抗体はCDT抗原の一次構造を認識しておらず、立体構造を認識していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の抗CDT抗体は、体液を変性処理することなく直接CDT濃度を測定する方法に用いることができる。
【0065】
本発明の抗CDT抗体は、天然のCDTと選択的に結合し、既存の方法で測定したCDT濃度と相関性が高いアルコール中毒患者を同定するための簡便な免疫測定法に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによるCDT分画溶出プロファイルを示すグラフである。
【図2】図1の溶出プロファイルに示した各分画のSDS-PAGE及び等電点電気泳動の写真を示す。
【図3】レクチン(ConA)アフィニティークロマトグラフィーにおけるN−グリコシダーゼF消化トランスフェリンの溶出プロファイルを示すグラフである。
【図4】レクチン(ConA)アフィニティークロマトグラフィー後の陰イオン交換クロマトグラフィーで分離したプロファイルを示すグラフである。
【図5】図4で得られた分画のSDS-PAGE及び等電点電気泳動を示す写真である。
【図6】ウエスタンブロット法による抗体の特異性(トランスフェリンアイソフォームに対する反応の強さ)を示す写真である。
【図7】抗トランスフェリンポリクローナル抗体と組み合わせたサンドイッチELISAによる相関性試験を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未変性で天然のCDT抗原に選択的に反応し、グリコシダーゼ消化トランスフェリンに反応しない又は実質的に反応しない抗CDT抗体。
【請求項2】
前記抗体が立体構造を認識する請求項1記載の抗CDT抗体。
【請求項3】
未変性で天然のCDT抗原を免疫原として動物に免疫し、該動物から採取された請求項1又は2記載の抗CDT抗体。
【請求項4】
アルコール中毒患者の体液を用い、非変性条件下にCDT抗原を精製又は部分的精製して得た、未変性で天然のCDT抗原を免疫原として動物に免疫し、該動物から採取された請求項1又は2記載の抗CDT抗体。
【請求項5】
前記抗体がモノクローナル抗体である請求項1−4の何れか1項に記載の抗CDT抗体。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体がハイブリドーマNCDT503(FERM AP−20844)から産生される請求項5記載の抗CDT抗体。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体が次のP1−P6のペプチド領域に対して反応性を有しないか又は実質的に反応性を有しない請求項5又は6記載の抗CDT抗体。
P1: VLAENYNKSDNCE
P2: QHLFGSNVTDCSG
P3: VVARSMGGKEDLIWELL
P4: IAKIMNGEADAMSL
P5: YEKYLGEEYVKAV
P6: SKLSMGSGLNLSEPN
【請求項8】
前記抗体がポリクローナル抗体である請求項1−4の何れか1項に記載の抗CDT抗体。
【請求項9】
未変性で天然のCDTに選択的に反応し、グリコシダーゼ消化トランスフェリンに反応しない又は実質的に反応しないモノクローナル抗体を産生する能力を有するハイブリドーマNCDT503(FERM AP−20844)。
【請求項10】
アルコール中毒患者の体液を用い、非変性条件下にCDT抗原を精製又は部分的精製して、CDT抗原を取得することを特徴とするCDT抗原の調製方法。
【請求項11】
アルコール中毒患者の体液を鉄飽和溶液と接触させ、次いで、非変性条件下で夾雑タンパク質を除去し、次いで、非変性条件下で分画してCDT抗原を取得することを特徴とするCDT抗原の調製方法。
【請求項12】
請求項10又は11記載のCDT抗原の調製方法により得たCDT抗原を免疫原として動物に免疫することにより、該動物の体内に、CDT抗原に対して選択的に反応し、N−グリコシダーゼ消化トランスフェリンに反応しない又は実質的に反応しない抗CDT抗体を産生させ、
該動物から該抗CDT抗体を採取することを特徴とする抗CDT抗体の製造方法。
【請求項13】
体液に、請求項1−8の何れか1項に記載の抗CDT抗体を接触させ、該抗体に選択的に反応するCDTを検出、又は定量化することを特徴とする免疫測定方法。
【請求項14】
体液に、請求項1−8の何れか1項に記載の抗CDT抗体を接触させ、反応させてなる反応液の吸光度を計測することにより、該抗体に選択的に反応するCDTを検出又は定量化することを特徴とする免疫測定方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−254428(P2007−254428A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84304(P2006−84304)
【出願日】平成18年3月25日(2006.3.25)
【出願人】(000226862)日水製薬株式会社 (35)
【Fターム(参考)】