説明

天然ガス処理方法

【課題】天然ガスからNGLとセールスガスとをベースロードで供給する主製品として、LNGを副製品としての要求がある場合に、これらの製品を低コストで生産することができる天然ガス処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の天然ガス処理方法は、精製天然ガスを得る前処理工程と、前処理工程で得られた精製天然ガスを冷却して炭素数が2以上のNGL製品を回収するとともに、リーンガスを分離するNGL回収工程と、前記NGL回収工程にて分離されたリーンガスの一部を圧縮して高圧ガスを得るとともに、セールスガス生産工程と、前記NGL回収工程にて分離されたリーンガス圧縮して高圧ガスを得た後、その高圧ガスを冷却してLNG製品を得る天然ガス液化工程と、を備え、前記天然ガス液化工程のガス圧縮手段として、前記セールスガス生産工程のガス圧縮手段を用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガスから天然ガス液とセールス用高圧ガスとを主製品とし、液化天然ガスを副製品として回収する方法に用いて好適な天然ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に天然ガスからは、天然ガス液(Natural Gas Liquids、以下「NGL」ともいう。)と、液化天然ガス(Liquefied Natural Gas、以下「LNG」ともいう。)と、セールス用高圧ガス(以下「セールスガス」ともいう。)とが市場の需要などを考慮してそれぞれ分離、回収されている。
井戸元の設備で自己消費する自家用燃料を除き、天然ガスから製品として販売されるものは、上記NGL、LNGおよびセールスガスの3種類であるが、これらの3種類の製品のすべてを同一の井戸元から生産している実例は知られていない。
具体的には、ガス田の近くに消費地がある場合や地続きである場合は、井戸元から消費地までガスパイプランを敷設することが経済的であり、その場合にはNGLとセールスガスとを製品とし、LNGを生産しないのが一般である。一方、天然ガス産出量が一定以上で、例えば中東で生産しアジアへ輸送するなどの例のように消費地が遠い場合には、LNGを主製品とし、セールスガスを生産しないのが一般である。これは、LNGを生産する液化施設の設備コストが高額であることに起因して、製造単価を下げるために、設備の大型化による大量生産を指向し、その投資を回収するためにLNG製品を長期間に亘って安定供給する仕組みで対応していることによる。
【0003】
ところで、実際の生産設備の有無にかかわらず、天然ガスから上記の3種類の製品を同時に生産する提案は知られている。
特許文献1には、天然ガスから、天然ガス液(特許文献1中では液体生成物)と、液化天然ガス(特許文献1中ではLNG)と、高圧ガス(特許文献1中では残存ガス)とをそれぞれ分離し、回収するプロセスを備えたLNG製造法が開示されている。
特許文献1の図1には、LNGを生産せずにNGLと高圧ガスである残存ガスの2種類を生産する先行技術例が開示され、図2〜図8には、NGLと残存ガスにLNGを加えた3種類全部を生産する例が開示されている。図2と図3も同特許文献1の従来技術例に関するものであり、図2には、天然ガスから3種類の製品をそれぞれ独立して生産する例が開示され、図3には、NGLを生産する際の冷熱をLNGの製造に利用している例が開示されている。図4〜図8は、この特許文献1の発明に関するものであり、LNGとNGLを主製品として生産する方法を提案している。
このLNG製造法では、NGL回収工程とLNG製造工程との熱交換を主として、エネルギーを節約している。
【特許文献1】特表2004−534116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている天然ガスを処理する方法においては、熱交換により冷熱を有効活用する点と、圧縮機(コンプレッサ)と膨張機(エクスパンダ)とを同軸に構成して、圧縮機と膨張機の間で動力エネルギーを互いに補完し動力を節約する点とが開示され、エネルギーを統合的に利用している点が開示されているものの、装置構成が複雑になり、天然ガスの処理設備全体の建設コスト、すなわち生産コストを十分に下げるまでには至っておらず、設備費が安価で各製品の生産を自由に制御できる天然ガスの処理方法が要求されていた。特に、天然ガスからNGLとセールスガスとをベースロードとして一定量を安定供給する主製品とし、LNGはベースロード製品ではなく副製品としての要求がある場合には、これらの技術は設備コストが大幅に高くなるため実用的ではなかった。そのため、セールスガスとNGLを主製品、LNGを副製品とする場合において、低コストで生産することができる天然ガスの処理方法が望まれていた。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、天然ガスからNGLとセールスガスとをベースロードで供給する主製品として、LNGを副製品としての要求がある場合に、これらの製品を低コストで生産することができる天然ガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る天然ガス処理方法は、天然ガスから天然ガス液(NGL)とセールス用高圧ガス(セールスガス)とを主製品とし、液化天然ガス(LNG)を副製品として回収する天然ガス処理方法であって、原料天然ガス(1)から不純物を除去して精製天然ガスを得る前処理工程(5)と、前処理工程(5)で得られた精製天然ガスを、炭素数が2以上の炭化水素が凝縮液化する温度まで冷却して炭素数が2以上のNGL製品(2)を回収するとともに、メタンを主成分としたリーンガスを分離するNGL回収工程(11)と、前記NGL回収工程(11)にて分離されたリーンガスの一部をガス圧縮手段(12)により圧縮して高圧ガスを得るとともに、セールスガス(3)として出荷するセールスガス生産工程(6)と、前記NGL回収工程(11)にて分離されたリーンガスの残りの一部をガス圧縮手段(12)により圧縮して臨界圧力を超える高圧ガス(19)を得た後、その高圧ガス(19)をメタンが凝縮液化する温度まで冷却してLNG製品を得る天然ガス液化工程(15)と、を備え、前記天然ガス液化工程(15)のガス圧縮手段(12)として、前記セールスガス生産工程(6)のガス圧縮手段(12)を用いることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項1に係る天然ガス処理方法において、前記天然ガス液化工程(15)は、この工程に供給される臨界圧力を超えた高圧のリーンガスであるLNG原料ガス(19)の一部(20)を、LNG製品を生産する際(22)発生する低温ガス(27)との熱交換(23)により冷却し、液膨張機(24)により断熱膨張させる工程Aと、前記工程Aに供給した残りのLNG原料ガス(21)を、プロパン冷媒との熱交換(25)により冷却した後、ガス膨張機(26)により断熱膨張させて液化する工程Bと、を備え、前記工程Aにて生成したLNGと、前記工程Bにて生成したLNGとを合流させて(22)LNG製品を(4)得ることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項2に係る天然ガス処理方法において、前記工程Aの冷却に用いたLNG製品を生産する際発生する低温ガス(27)を、前記セールスガス生産工程のガス圧縮手段(12)へ戻すことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項1ないし3のいずれか1項に係る天然ガス処理方法において、前記天然ガス液化工程(15)に供給するLNG原料ガス(19)を、セールスガス生産工程(6)よりもさらに高圧化して(41)、臨界圧力を超えた状態で用いることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項1に係る天然ガス処理方法において、前記天然ガス液化工程(15)は、この工程に供給される臨界圧力を超えた高圧のリーンガスであるLNG原料ガス(19)の一部(20)を、LNG製品を生産する際(22)発生する低温ガス(27)との熱交換(23)により冷却し、液膨張機(24)により断熱膨張させる工程A1と、前記工程A1に供給したLNG原料ガスの残り(21)の一部(70)を、プロパン冷媒との熱交換(25)により冷却し、さらに前記工程A1に供給したLNG原料ガスの残り(21)の残部(71)を含むLNG原料ガスからなる流体を冷却した自己冷媒体(77)との熱交換により冷却した後、ガス膨張機(26)により断熱膨張して液化し、LNGを得る工程Cと、を備え、前記工程A1にて生成したLNGと、前記工程Cにて生成したLNGとを合流させて(22)LNG製品(4)を得ることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項5に係る天然ガス処理方法において、前記自己冷媒体(77)は、前記工程A1に供給したLNG原料ガスの残り(21)の残部(71)とプロパン冷媒との熱交換(25)により冷却されたガスの一部(73)とからなり、前記残部(71)を熱交換(74)により冷却した後、前記ガスの一部(73)と合流させた後、ガス膨張機(75)により断熱膨張させ、その断熱膨張させた流体を自己冷媒体(77)としてプロパン冷媒との熱交換(25)により冷却されたガスの残部(72)と熱交換させる(76)ことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項7に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項6に係る天然ガス処理方法において、前記自己冷媒体(77)は、前記工程A1に供給したLNG原料ガスの残り(21)の残部(71)を、熱交換(74)により冷却した後、ガス圧縮機(81)により圧縮され、前記セールスガス生産工程(6)のガス圧縮手段(12)へ戻される(82)ことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項8に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項5に係る天然ガス処理方法において、前記工程A1の冷却に用いたLNG製品を生産する際(22)発生する低温ガス(27)を、前記セールスガス生産工程(6)のガス圧縮手段(12)へ戻すことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項9に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項1に係る天然ガス処理方法において、前記天然ガス液化工程(15)は、この工程に供給される臨界圧力を超えた高圧のリーンガスであるLNG原料ガス(19)の一部(20)を、LNG製品を生産する際(22)発生する低温ガス(27)との熱交換により冷却し、液化した後、液膨張機(24)により断熱膨張させる工程A1と、前記工程A1に供給したLNG原料ガスの残り(21)をプロパン冷媒との熱交換(25)により冷却し、そのガスをLNG原料用と冷媒用とに分離し、LNG原料用ガス(120)を、冷媒用ガス(121)を断熱膨張した自己冷媒体(125)との熱交換(124)により冷却した後、ガス膨張機(26)により断熱膨張して液化し、LNGを得る工程Dと、を備え、前記工程A1にて生成したLNGと、前記工程Dにて生成したLNGとを合流させて(22)LNG製品(4)を得ることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項10に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項9に係る天然ガス処理方法において、前記冷媒用ガス(121)を、ガス膨張機(123)により断熱膨張させ、その断熱膨張させた流体を、前記LNG原料用ガス(120)と熱交換(124)させることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項11に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項9に係る天然ガス処理方法において、前記自己冷媒体(125)は、この自己冷媒体(125)がガス圧縮機(129,131)により圧縮されたガスの一部(133)を、熱交換(122)により冷却した後、ガス膨張機(123)により断熱膨張させ、その断熱膨張させた流体を、前記LNG原料用ガス(120)と熱交換(124)した後、熱交換(122)により加熱され、前記ガス圧縮機(129,131)により圧縮される循環サイクルを形成することを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項12に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項11に係る天然ガス処理方法において、前記ガス圧縮機(129,131)により圧縮されたガスは、その一部(133)を前記冷媒ガス(124)と熱交換させた(122)後、前記プロパン冷媒との熱交換(25)により冷却されたガスの残部(121)と合流させ、その残部(132)を前記工程A1に供給したLNG原料ガスの残り(21)と合流させることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項13に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項5ないし12のいずれか1項に係る天然ガス処理方法において、前記天然ガス液化工程(15)に供給するLNG原料ガス(19)を、セールスガス生産工程(6)よりもさらに高圧化して(41,91,141)、臨界圧力を超えた状態で用いることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項14に係る天然ガス処理方法は、本発明の請求項1ないし13のいずれか1項に係る天然ガス処理方法において、前記天然ガス液化工程(15)に供給する高圧ガス(19,19´)の圧力は、40bara以上、150bara以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の天然ガス処理方法によれば、天然ガスから、天然ガス液とセールスガスとをベースロードで供給する主製品とし、液化天然ガスを副製品として回収する場合に、全体のプラント設備を有効利用することになり、結果として製品全体を低コストで生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の天然ガス処理方法を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0022】
(1)第一の実施形態
図1は、本発明の天然ガス処理方法の第一の実施形態にて用いられる天然ガス処理設備を示す概略構成図である。
図1中、符号1は原料天然ガス、2はNGL、3はセールスガス、4はLNG、5は前処理設備、6はセールスガス生産設備、10は全体の天然ガス処理設備、11はNGL回収設備、12はセールスガス圧縮機、13はライン、14はセールスガスパイプライン、15は天然ガス液化設備、16はLNG貯蔵タンク、17、18、19、20、21はライン、22はフラッシュドラム、23は第一熱交換器、24は液膨張機、25は第二熱交換器、26は第一ガス膨張機、27はオフガスライン、28は液体ライン、29はポンプ、30は回収ライン、31は第一ガス膨張機26と同軸の第一ガス圧縮機、32はブースター圧縮機をそれぞれ示している。
【0023】
この天然ガス処理設備10は、前処理設備5と、セールスガス生産設備6と、NGL回収設備11と、天然ガス液化設備15とから概略構成されている。
セールスガス生産設備6は、セールスガス圧縮機12と、ライン13と、セールスガスパイプライン14とから概略構成されている。
天然ガス液化設備15は、セールスガス圧縮機12と、フラッシュドラム22と、第一熱交換器23と、液膨張機24と、第二熱交換器25と、第一ガス膨張機26と、この第一ガス膨張機26と同軸の第一ガス圧縮機31と、ブースター圧縮機32とから概略構成されている。
【0024】
NGL回収設備11は、ライン17,18を介してセールスガス圧縮機12A,12B,12C,12D,12Eと接続されている。
このガス圧縮機12A,12B,12C,12D,12Eは、ライン13を介してセールスガスパイプライン14と接続され、高圧化したセールスガス3を連続的に供給可能となっている。
また、セールスガス圧縮機12A,12B,12C,12D,12Eは、中途にてライン20とライン21に分岐するライン19を介して、フラッシュドラム22に接続されている。また、ライン20とライン21とは、中間は分岐するがフラッシュドラム22の直前にて合流している。
【0025】
LNG原料ガスが供給されるライン20の中途には、ガスの送出方向に沿って順に第一熱交換器23、液膨張機24が設けられている。
ライン21の中途には、ガスの送出方向に沿って順に第二熱交換器25、第一ガス膨張機26が設けられている。
【0026】
フラッシュドラム22の上部には、LNGのオフガスを抜き出すためのオフガスライン27が設けられ、このオフガスライン27は第一熱交換器23に接続されている。
また、フラッシュドラム22の下部にはLNGを抜き出す液体ライン28が接続され、この液体ライン28の中途に設けられたポンプ29を介してLNG貯蔵タンク16に接続されている。
【0027】
第一熱交換器23を経由するオフガスライン27は、オフガス回収用の回収ライン30、ライン18を経由してセールスガス圧縮機12に接続されている。
回収ライン30の中途には、ガスの送出方向に沿って順に第一ガス膨張機26と同軸の第一ガス圧縮機31、ブースター圧縮機32が設けられている。
【0028】
次に、この天然ガス処理設備10の作用を説明するとともに、この実施形態の天然ガス処理方法を説明する。
まず、井戸元から産出される原料天然ガス1は、前処理設備5において、天然ガスに含まれる種々の不純物、例えば、炭酸ガス、硫化水素などの酸性ガス、メルカプタンなどの硫黄化合物、水分、水銀などの金属などの不純物を、それぞれ必要に応じて分離除去し、精製天然ガスを得る(前処理工程)。
【0029】
次いで、NGL回収設備11にて、炭素数が2以上の炭化水素が凝縮液化する温度まで冷却し、炭素数が2以上の炭化水素からなるNGLを回収するとともに、メタンを主成分とするガス(以下、「リーンガス」という。)を分離する。
ここで、NGL回収設備11とは、炭素数が5以上のコンデンセート、炭素数が3と4のLPGを必須とし、必要に応じて設ける炭素数が2のエタンをそれぞれ別々に回収する設備を含み、本発明では、これらをまとめて炭素数2以上の炭化水素として回収するとした。NGL製品2としては、炭素数3と4のプロパンとブタンからなるLPG(液化石油ガス)と、炭素数5〜8の天然ガソリンが代表的な製品である。
また、本発明では、後述する天然ガス液化工程で使用する冷媒用のプロパンも別途回収する(NGL回収工程)。
本発明におけるNGLを回収して残ったメタンを主成分とするリーンガスの組成の一例は、窒素4mol%、メタン95mol%、エタン1mol%である。メタンを主成分とするリーンガスは、圧力60bara、温度60℃である。
【0030】
次いで、上記で得られたリーンガスを、セールスガス圧縮機12により圧縮し、高圧にする(セールスガス生産工程と天然ガス液化工程の前段)。
このセールスガス圧縮機12により圧縮され高圧にされたリーンガスの一部は、そのまま本発明の主製品であるセールスガスとして生産される。
ここで主製品とは、天然ガスから得られる製品の中で質量が50%以上を占める製品のことであり、代表的には、ベースロード製品として井戸元から得られる天然ガスからの少なくとも質量比で60%以上を占めるような製品のことである。
【0031】
この高圧にされたリーンガスの大部分をセールスガスパイプライン14へ送り、最終的に、セールスガス製品としてセールスガスパイプライン14を介してユーザーに供給する(セールスガス生産工程)。
【0032】
また、このセールスガス圧縮機12により臨界圧力以上の高圧にしたリーンガスのうち、セールスガスを生産した残りのガスはLNG原料ガスとして用いる。
すなわち、LNG原料ガスとして供給される高圧ガスの一部は、ライン19より天然ガス液化工程に供給され、後述するように液化されて、LNG製品となる(天然ガス液化工程)。
なお、セールスガス圧縮機12により供給ガスを圧縮し、臨界圧力以上の高圧にすることによって得られた高圧ガスの一例としては、圧力105bara、温度60℃の高圧ガスが挙げられ、その例にて以下説明する。
本発明において、天然ガス液化工程に供給する高圧ガスの圧力としては、40〜150baraから適宜選択されるが、基本的にLNGの回収量を上げるためには、天然ガス液化工程に供給する圧力は高い程好ましく、80bara以上が特に好ましい。
【0033】
次に、天然ガス液化工程について説明する。
ライン19へ送られるLNG原料ガスは、一部がライン20へ送られ以下の工程A−1と工程A−2とからなる工程Aにて処理され、残部はすべて分岐したライン21へ送られ、以下の工程B−1と工程B−2とからなる工程Bにて処理されて、それぞれ液化処理されLNG粗製品を得る。
【0034】
上記ライン20へ送られたLNG原料ガスは、第一熱交換器23にて、フラッシュドラム22内のLNGを生産する際発生する低温ガスと熱交換されて冷却される。すなわち、LNGのオフガスライン27を介して送られてくる−161℃のガスとの熱交換により、−158℃まで冷却される(工程A−1)。
次いで、冷却されたLNG原料ガスの一部は、液膨張機24により断熱膨張させることによって減圧され、LNG粗製品として回収される(工程A−2)。
【0035】
上述したように、ライン20へ送られる高圧ガスは、LNG原料ガスの一部であるが、このライン20へ送出される高圧ガスの量は、フラッシュドラム22から送られるオフガスと熱交換して冷却された後、液膨張機24へ−158℃まで冷却して供給が可能な範囲の量として規定される。したがって、本発明において液膨張機24へ供給されるLNG原料ガスを、LNG原料ガス全体の10%以上、30%以下とすることができ、本発明に必須の工程である。
【0036】
一方、ライン21へ送られるLNG原料ガスの残りは、第二熱交換器25にて、前記NGL回収工程で回収したプロパンを主成分とする冷媒により、−33℃まで冷却される(工程B−1)。
次いで、第二熱交換器25にて冷却されたLNG原料ガスは、第一ガス膨張機26により断熱膨張することによって、その一部が液化され、LNG粗製品が得られる(工程B−2)。
【0037】
次いで、工程Aにて生成したLNG粗製品と、工程Bにて生成したLNG粗製品とを、フラッシュドラム22の直前で合流させ、フラッシュドラム22へ送る。
【0038】
次いで、フラッシュドラム22へ送られたLNG粗製品の圧力を調整し、LNG製品として供給される。
なお、フラッシュドラム22は、圧力1.1baraで運転されており、その上部にはオフガスライン27が設けられ、−161℃の低温オフガスを分離して、上記の第一熱交換器23へ送るようになっている。また、フラッシュドラム22の下部には、生成したLNGを、ポンプ29により、液体ライン28を介してLNG貯蔵タンク16へ送り、回収するようになっている。
【0039】
また、フラッシュドラム22から第一熱交換器23へ送られ、LNG原料ガスの冷却に用いられたオフガスは、熱交換により温度が30℃程度まで上がる。このオフガスは、第一ガス膨張機26と同軸の第一ガス圧縮機31により圧縮されて、圧力2.5baraとされ、さらに、ブースター圧縮機32により圧縮されて、セールスガス圧縮機12の入口における供給ガスの圧力(30bara)まで昇圧した後、ライン18を介してセールスガス圧縮機12へ送られる。
【0040】
この実施形態の天然ガス処理方法によれば、セールスガス圧縮機12により圧縮された高圧ガスの一部は、そのままセールスガスとして生産されるとともに、残る高圧ガスをLNG原料として供給し、その一部がフラッシュドラム22により分離された低温オフガスとの熱交換によって冷却されてから、液膨張機により断熱膨張させて減圧する工程Aと、プロパン冷媒によって冷却されてから、ガス膨張させて液化する工程Bとを組み合わせた簡易な方法により液化天然ガスを生成するので、天然ガス液化工程のために独立した昇圧設備を別途設ける必要がないばかりでなく、液化を簡易な方法で行うことを組み合わせることにより、従来の処理方法よりも生産コストを大幅に削減することができる。また、この実施形態の天然ガス処理方法によれば、フラッシュドラム22により分離され、高圧ガスの冷却に用いられた低温オフガスは、圧縮された後、再びセールスガス圧縮機12に送られてセールスガスと液化天然ガスを生成する工程に供されるため、無駄が生じない。
【0041】
(2)第二の実施形態
図2は、本発明の天然ガス処理方法の第二の実施形態にて用いられる天然ガス処理設備を示す概略構成図である。
図2において、図1に示した天然ガス処理設備10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この天然ガス処理設備40が、上述の天然ガス処理設備10と異なる点は、ライン19,19´の間、かつ、ライン20とライン21との分岐点よりも前に、LNG原料ガスのみを圧縮する第二ガス圧縮機41を設けている点であり、それ以外は上述の第一の実施形態と基本的に同じ構成である。
【0042】
以下、この天然ガス処理設備40の作用を説明するとともに、この実施形態の天然ガス処理方法を説明する。
まず、井戸元から産出される原料天然ガス1を、前処理工程、NGL回収工程でそれぞれ処理することは、上述の第一の実施形態と同様である。
次いで、不純物を除去し、NGLを回収してメタンを主成分とするリーンガスを、上述の第一の実施形態と同様にして、圧力30bara、温度60℃にて分離回収し、ライン17,18を介してセールスガス圧縮機12(12A,12B,12C,12D,12E)へ送る。
なお、この精製ガスの組成は、前記と同様である。
【0043】
本実施態様では、前記リーンガスを、セールスガス圧縮機12で高圧にする際、第一の実施形態に比べ低い圧力、例えば圧力56bara、温度60℃にて運転することができる。
セールスガス生産工程では、上記セールスガス圧縮機12で得られる圧力56baraの高圧ガスの一部を、セールスガスパイプライン14を経由して製品のセールスガス3として生産する。
【0044】
一方、天然ガス液化工程においては、上記セールスガス圧縮機12で高圧にされた圧力56baraの高圧ガスの一部、すなわち、上記セールスガス生産工程に用いた高圧ガスの残りの全ての高圧ガスをLNG原料ガスとし、このLNG原料ガスを第二ガス圧縮機41でさらに圧縮し、臨界圧力以上の高圧にする。具体的には、天然ガス液化工程に導入される圧力56baraのLNG原料ガスのみを、第二ガス圧縮機41で圧力105baraとすることができる。
【0045】
そして、第二ガス圧縮機41にて圧縮されてさらに高圧にされたLNG原料ガス一部を、第一の実施形態と同様にライン20へ送り、第一の実施形態と同様の工程Aで処理し、残りのガスの全てをライン21へ送り、第一の実施形態と同様の工程Bで処理することができる。すなわち、第一の実施形態と同様に処理することができる。
【0046】
この実施形態の天然ガス処理方法によれば、セールスガスに要求される圧力がそれほど高くない、例えば上記のように56baraである場合、セールスガス圧縮機12によりリーンガスをセールスガスの要求圧力に合わせて圧縮し、その後天然ガス液化工程に供給するLNG原料ガスのみを第二ガス圧縮機41により昇圧することができる(105bara)。この場合、天然ガス液化工程の圧力を第一の実施形態と同じにできるので、LNG製品の生産量を落とすことなく、セールスガス圧縮機12を有効に利用することができ、全体の電力エネルギーを節約しながらLNGの生産も確保できるものである。
【0047】
(3)第三の実施形態
図3は、本発明の天然ガス処理方法の第三の実施形態にて用いられる天然ガス処理設備50を示す概略構成図である。
図3において、図1に示した天然ガス処理設備10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施態様の天然ガス処理設備50が、上述の天然ガス処理設備10と異なる点は、天然ガス液化設備55において、ライン19の中途でライン20と分岐するライン21に接続する部分が異なる。具体的には、ライン21のLNG原料ガスをさらに分岐し、LNG原料として液化処理されて製品化されるライン以外に、LNG原料ガスを冷却する冷媒として利用するラインを設けている点であり、それ以外は上述の第一の実施形態と基本的に同じ構成である。
図3中、符号50は天然ガス処理設備、55は天然ガス液化設備、70、71、72、73はそれぞれラインであり、74は第三熱交換器、75は第二ガス膨張機、76は第四熱交換器、77はライン、81は第二ガス膨張機と同軸の第二ガス圧縮機、82はラインをそれぞれ示している。
【0048】
この天然ガス処理設備50は、前処理設備5と、セールスガス生産設備6と、NGL回収設備11と、天然ガス液化設備55とから概略構成され、この天然ガス液化設備55は、セールスガス圧縮機12と、フラッシュドラム22と、第一熱交換器23と、液膨張機24と、第二熱交換器25と、第一ガス膨張機26と、第三熱交換器74と、第二ガス膨張機75と、第四熱交換器76と、第一ガス膨張機26と同軸の第一ガス圧縮機31と、ブースター圧縮機32と、第二ガス膨張機と同軸の第二ガス圧縮機81とから概略構成されている。
【0049】
NGL回収設備11でNGLを回収して残るリーンガスは、ライン17,18を介してセールスガス圧縮機12に接続され、このセールスガス圧縮機12はセールスガスを供給するセールスガスパイプライン14に接続され、さらにLNGを生成するライン19に接続されている。
ライン19は、中途にてライン20とライン21に分岐し、それぞれLNGを生成するフラッシュドラム22に接続されている。
【0050】
ライン20の中途には、ガスの送出方向に沿って順に第一熱交換却器23、液膨張機24が設けられている。
ここまでは、第一の実施形態と同様であるが、ライン21は、中途にてライン70と71とに分岐している。さらに、ライン70は、中途にてライン72と73とに分岐している。そして、ライン70の中途、かつ、ライン72とライン73との分岐点よりも前に、プロパン冷媒と熱交換する第二熱交換器25が設けられている。
ライン71は、第三熱交換器74を介して、第二ガス膨張機75に接続されている。
また、ライン71とライン73とは、第三熱交換器74と第二ガス膨張機75の間にて合流している。
【0051】
ライン72の中途には、ガスの送出方向に沿って順に、第四熱交換器76、第一ガス膨張機26が設けられている。
また、ライン20とライン72とは、フラッシュドラム22の直前にて合流している。
【0052】
第二ガス膨張機75は、その中途に、ガスの送出方向に沿って順に、第四熱交換器76、第三熱交換器74が設けられているライン77を介して、第二ガス膨張機と同軸の第二ガス圧縮機81に接続されている。
【0053】
フラッシュドラム22は、ライン27を介して第一熱交換器23に接続されている。また、フラッシュドラム22は、ライン28と、このライン28の中途に設けられたポンプ29とを介してLNG貯蔵タンク16に接続されている。
【0054】
第一熱交換器23は、ライン30を介して第一ガス膨張機26と同軸の第一ガス圧縮機31に接続するライン30に接続されている。
ライン30の中途には、ガスの送出方向に沿って順に第一ガス圧縮機31、ブースター圧縮機32が設けられている。
ライン30は、セールスガス圧縮機12の入口近傍にて、第二ガス膨張機と同軸の第二ガス圧縮機81から延出されたライン82と合流している。
【0055】
次に、この天然ガス処理設備50の作用を説明するとともに、この実施形態の天然ガス処理方法を説明する。
NGL回収設備11にて、炭素数が2以上の炭化水素が凝縮液化する温度まで冷却し、炭素数が2以上の炭化水素からなるNGL製品2を回収するとともに、メタンを主成分とするリーンガスを分離する(NGL回収工程)。
NGL回収工程にて分離されたリーンガスは、セールスガスおよびLNG原料ガスとして、圧力30bara、温度60℃にて、ライン17,18を介してセールスガス圧縮機12(12A,12B,12C,12D,12E)へ送られる。
なお、リーンガスの組成は、窒素4mol%、メタン95mol%、エタン1mol%である。
【0056】
セールスガス生産工程は、上述の第一の実施形態と同様の操作により、セールスガスを生産することができる。
なお、セールスガス圧縮機12により供給ガスを圧縮し、臨界圧力以上の高圧にすることによって得られた高圧ガスは、圧力105bara、温度60℃となる。
【0057】
次に、天然ガス液化工程について説明する。
ライン19へ送られるLNG原料ガスは、一部がライン20へ送られ、第一の実施形態の液化工程Aと同様の液化工程A1で処理され、残部は全て分岐したライン21へ送られ液化工程Cにて処理され、それぞれLNG製品を得る。
【0058】
ライン20へ送られたLNG原料ガスは、第一熱交換器23にて−158℃まで冷却され(工程A1−1)、次いで、液膨張機24により断熱膨張させることによって減圧され(工程A1−2)、この工程A1−1と工程A1−2とからなる液化工程AにてLNG粗製品として回収される。
【0059】
一方、ライン21へ送られたLNG原料ガスは、以下の工程C−1、C−2、C−3、C−4およびC−5からなる液化工程Cにて処理される。
すなわち、ライン21に供給されるLNG原料ガスは、ライン70とライン71へ分岐して送られる(工程C−1)。
ライン70へ送られたLNG原料ガスは、第二熱交換器25にて、プロパン冷媒により、−33℃まで冷却される(工程C−2)。
次いで、第二熱交換器25にて冷却した原料ガスを、ライン72とライン73へ分岐して送る(工程C−3)。
ライン72へ送られた原料ガスは、第三熱交換器74からライン77を介して送られる流体を冷媒とする第四熱交換器76により、−97℃まで冷却される(工程C−4)。
次いで、第四熱交換器76にて冷却した流体を、第一ガス膨張機26により断熱膨張させることによってLNG粗製品を得る(工程C−5)。
【0060】
次いで、前記工程A1にて生成したLNG粗製品と、上記工程Cにて生成したLNG粗製品とを、フラッシュドラム22の直前で合流させ、フラッシュドラム22へ送る。
【0061】
次いで、フラッシュドラム22へ送られたLNG粗製品は、その圧力を調整し、LNG製品としてライン28を経由しポンプ29により、LNG貯蔵タンク16へ送出し、LNG製品として回収する。
なお、フラッシュドラム22は、圧力1.1baraで運転されている。
【0062】
また、フラッシュドラム22からの−161℃のオフガスは、ライン27を経由して第一熱交換器23でLNG原料ガスと熱交換されて温度が33℃となる。この33℃のオフガスを、第一ガス膨張機26と同軸の第一ガス圧縮機31により圧縮されて、圧力1.8baraとされ、さらに、ブースター圧縮機32により圧縮されて、セールスガス圧縮機12の入口における供給ガスの圧力(30bara)まで昇圧した後、ライン18を介してセールスガス圧縮機12へ送られる。
【0063】
また、上記のLNGを得る工程Cにおいて、LNG原料ガスの一部はLNG製品とはならず、冷媒ガスとしてプロセス内を循環する。以下、このガスを自己冷媒ガスといい、自己冷媒ガスの流れについて、工程CC−1から工程CC−6で説明する。
ライン21からさらに分岐してライン71へ送られる60℃の自己冷媒ガスは、まず第三熱交換器74で、−37℃の冷媒ガスとの熱交換により−33℃まで冷却される(工程CC−1)。
この工程CC−1の他方のガスとなる第三熱交換器74の冷媒ガスは、60℃の自己冷媒ガスとの熱交換により−37℃から45℃に加熱される。
【0064】
次いで、この−33℃まで冷却された自己冷媒ガスと、前記工程C−3においてLNG製品のラインと分岐するライン73へ送られる−33℃の自己冷媒ガスとを合流させ、第二ガス膨張機75へ送る(工程CC−2)。
上記工程CC−2で得られた−33℃の自己冷媒ガスを、第二ガス膨張機75により膨張させることによって、温度を−102℃まで低下させる(工程CC−3)。
【0065】
次いで、−102℃となった自己冷媒流体は、第四熱交換器76へ送られ、上記工程C−2における−33℃のLNG原料ガスと熱交換して−37℃となり、上記工程CC−1の冷媒ガスとなる(工程CC−4)。
この工程CC−4の他方のガスとなる第四熱交換器76のLNG原料ガスは、−102℃の自己冷媒ガスとの熱交換により−33℃から−97℃に冷却される。
【0066】
上記工程CC−4で得られる−37℃の自己冷媒ガスは、上記工程CC−1の他方のガスであり、第三熱交換器74で、60℃のガスとの熱交換により45℃まで加熱される(工程CC−5)。
上記CC−5で得られた45℃の自己冷媒ガスは、第二ガス膨張機75と同軸の第二ガス圧縮機81により圧縮されて、セールスガス圧縮機12の入口における供給ガスの圧力(30bara)まで昇圧した後、ライン82、ライン18を介して、セールスガス圧縮機12へ送られる(工程CC−6)。
【0067】
この実施形態の天然ガス処理方法によれば、LNG原料ガスの一部を冷媒ガスとして用いるため、LNGの生産量は上述の第一の実施形態と比べて減少するものの、LNG原料ガスを液化する効率を向上させることができる。
特に、冷媒ガスとして原料ガスをそのまま利用することができるので生産プロセス自体の設計に自由度が大きく、さらに原料ガスとして循環利用しているので原料費として無駄も全く発生しない。
【0068】
(4)第四の実施形態
図4は、本発明の天然ガス処理方法の第四の実施形態にて用いられる天然ガス処理設備を示す概略構成図である。
図4において、図3に示した天然ガス処理設備50と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この天然ガス処理設備90が、上述の天然ガス処理設備50と異なる点は、LNG原料ガスが供給されるラインライン19,19´の間、かつ、ライン20とライン21との分岐点よりも前に、LNG原料ガスのみを圧縮する第四ガス圧縮機91が設けられている点であり、それ以外は上述の第三の実施形態と同じ構成である。
【0069】
この天然ガス処理設備90の作用について、上述の第三の実施形態との相違点を中心に説明する。
本実施形態では、NGL回収設備11から供給されるリーンガスを、セールスガス圧縮機12で高圧にする際、第三の実施形態に比べて低い圧力、例えば56baraで運転することができ、セールスガス3を製品として生産する。
一方、天然ガス液化工程においては、LNG原料ガスのみを上記の第四ガス圧縮機91でさらに臨界圧力以上に昇圧し、上記の場合、例えば56baraを105baraまで圧縮することにより、以後の天然ガス液化工程は上述の第三の実施形態と全く同様の条件で運転することができる。
【0070】
この実施形態の天然ガス処理方法によれば、セールスガスに要求される圧力がそれほど高くない場合(56bara)であっても、天然ガス液化工程に供給するLNG原料ガスをのみを第四ガス圧縮機91により昇圧することができるので(105bara)、第三の実施形態と同様の工程により処理ができ、LNG製品の生産量を落とすことなく、セールスガス圧縮機12の動力を有効に利用することができ、全体の電力エネルギーを節約しながらLNGの生産も確保できるものである。
【0071】
(5)第五の実施形態
図5は、本発明の天然ガス処理方法の第五の実施形態にて用いられる天然ガス処理設備100を示す概略構成図である。
図5において、図3に示した天然ガス処理設備50と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図5中、符号100は天然ガス処理設備、105は天然ガス液化設備、120、121はライン、122は第三熱交換器、123は第二ガス膨張機、124は第四熱交換器、125はライン、129は第二ガス膨張機123と同軸の第三ガス圧縮機、130はライン、131は第四ガス圧縮機、132はラインをそれぞれ示している。
【0072】
この天然ガス処理設備100は、前処理設備5と、セールスガス生産設備6と、NGL回収設備11と、天然ガス液化設備105とから概略構成されている。
天然ガス液化設備105は、セールスガス圧縮機12と、フラッシュドラム22と、第一熱交換器23と、液膨張機24と、第二熱交換器25と、第一ガス膨張機26と、第三熱交換器122と、第二ガス膨張機123と、第四熱交換器124と、第二ガス膨張機123と同軸の第三ガス圧縮機129と、第四ガス圧縮機131とから概略構成されている。
【0073】
本実施態様の天然ガス液化設備105が、上述の第三の実施形態の天然ガス液化設備55と異なる点は、天然ガス液化設備105において、LNG原料ガスを自己冷媒ガスとして利用する系が異なり、本実施形態は自己冷媒ガスとして循環させるものであり、前記の実施形態がセールスガス圧縮機12にまで戻している点である。具体的には、LNG原料ガスが分岐して供給されるライン21のプロパン冷媒との熱交換をする第二熱交換器25の後段で、ライン120とライン121とに分岐し、前者をLNG生産用のラインとし、後者を自己冷媒ガスとしてのみのラインとしたものであり、後者の自己冷媒ガスの一部をプロパン冷媒との熱交換をする第二熱交換器25の前に戻してライン21のガスに合流させ、循環するものである。それ以外は、上述の第三の実施形態と同じ構成である。
【0074】
以下、上述の第三の実施形態との相違点を中心に本実施形態を説明する。
ライン21において、プロパン冷媒と熱交換する第二熱交換器25の後段でライン120と121に分岐する。後者のライン121は、第三熱交換器122と第二ガス膨張機123の間にて、自己冷媒ガスが循環するライン130に合流している。
第二ガス膨張機123は、その中途にガスの送出方向に沿って順に第四熱交換器124、第三熱交換器122が設けられたライン125を介して、第二ガス膨張機123と同軸の第三ガス圧縮機129に接続されている。
【0075】
第三ガス圧縮機129は、さらにガスの送出方向に沿って順に第四ガス圧縮機131、第三熱交換器122が設けられたライン130を介して、第二ガス膨張機123に接続されている。
このように、ライン130とライン125により自己冷媒ガスの循環ループを形成している。
また、自己冷媒ガスの循環ループを形成するライン130から分岐したライン132は、第二熱交換器25の直前にて、ライン21と合流している。
【0076】
次に、この天然ガス処理設備100の作用を説明するとともに、この実施形態の天然ガス処理方法を説明するが、上述の実施形態と同様の部分については省略し、天然ガス液化工程について説明する。
【0077】
本実施形態の天然ガス液化工程について説明する。
ライン19へ送られるLNG原料ガスは、一部がライン20に送られ、第一の実施形態の液化工程Aと同様の液化工程A2で処理され、残りは全て分岐したライン21へ送られ、液化工程Dにて処理され、それぞれLNG製品を得る。
【0078】
ライン20へ送られたLNG原料ガスは、第一熱交換器23にて−158℃まで冷却され(工程A2−1)、次いで、液膨張機24により断熱膨張させることによって減圧され(工程A2−2)、この工程A2−1と工程A2−2とからなる液化工程A2にてLNG粗製品として回収される。
【0079】
一方、ライン21へ送られたLNG原料ガスは、以下の工程D−1、D−2およびD−3からなる液化工程Dにて処理される。
すなわち、ライン21に供給される60℃のLNG原料ガスは、第二熱交換器25でプロパン冷媒との熱交換により−33℃まで冷却された後、ライン120とライン121へ分岐して送られる(工程D−1)。
【0080】
ライン120へ送られたLNG原料ガスは、第三熱交換器122からライン125を経由して送られる高圧流体を冷媒とする第四熱交換器124により、−97℃まで冷却される(工程D−2)。
次いで、上記で得られた−97℃に冷却された原料ガスを、第一ガス膨張機26により断熱膨張させることによってLNG粗製品を得る(工程D−3)。
【0081】
次いで、工程A2にて生成したLNG粗製品と、工程Dにて生成したLNG粗製品とを、フラッシュドラム22の直前で合流させ、フラッシュドラ22へ送る。
【0082】
次いで、フラッシュドラム22へ送られたLNG粗製品は、その圧力を調整し、LNG製品としてライン28を経由しポンプ29により、LNG貯蔵タンク16へ送出し、LNG製品4として回収する。
なお、フラッシュドラム22は、圧力1.1baraで運転されている。
【0083】
また、フラッシュドラム22からの−161℃のオフガスを、上述の実施形態と同様に第一ガス圧縮機31により圧縮して、圧力1.8baraとし、さらに、ブースター圧縮機32により圧縮して、セールスガス圧縮機12の入口における供給ガスの圧力(30bara)まで昇圧した後、ライン18を介してセールスガス圧縮機12へ送る。
【0084】
また、上記のLNGを得るために工程Dにおける自己冷媒ガスの流れについて、工程DD−1から工程DD−9で説明する。
ライン21に設けられた第二熱交換器25でプロパン冷媒と熱交換されて−33℃に冷却されたLNG原料ガスの一部が、自己冷媒ガスとしてライン121として分岐供給される。この分岐された配管の合流先は、第三熱交換器122と第二ガス膨張機123との間のライン133である(工程DD−1)。
【0085】
ライン130に供給された自己冷媒ガスは、第二ガス膨張機123により断熱膨張して−102℃まで冷却される(工程DD−2)。
上記工程DD−2で得られた−102℃の自己冷媒ガスは、ライン125経由して第四熱交換器124に供給される(工程DD−3)。
【0086】
上記工程DD−3で第四熱交換器124に供給された自己冷媒流体は、−33℃のLNG原料ガスとの熱交換により−37℃になる(工程DD−4)。
次いで、−37℃の自己冷媒ガスは、ライン125を経由して第三熱交換器122に供給する(工程DD−5)。
第三熱交換器122に供給された−37℃の自己冷媒ガスは、60℃の自己冷媒ガスとの熱交換により45℃となる(工程DD−6)。
【0087】
次いで、45℃となった自己冷媒ガスを、上記第二ガス膨張機123と同軸の第三ガス圧縮機129により圧縮して、圧力30baraとした後、ライン130を介して、第四ガス圧縮機131へ送る(工程DD−7)。
次いで、第四ガス圧縮機131へ送られた自己冷媒高圧ガスは、この第四ガス圧縮機131により105baraまで昇圧した後、この自己冷媒ガスの一部は、ライン130を介して第三熱交換器122へ送られ、熱交換により−33℃となる(工程DD−8)。
また、上記工程DD−8の自己冷媒ガスの残りは、ライン132を経由してライン21へ送られ、LNG原料ガスの一部と合流されてプロパン冷媒との熱交換に供される(工程DD−9)。このライン132を経由する自己冷媒ガス量は、ライン121を経由してライン133へ戻るガス量と同じである。
【0088】
この実施形態の天然ガス処理方法によれば、上述の第三の実施形態以上の効果を奏することができる。すなわち、上述の第一の実施形態と同様の効果を奏するとともに、冷媒ガスを循環させることにより、冷媒ガスを調整する動力は増加するものの、LNG原料ガスを液化する能力を向上させることができるので、LNG製品の回収率を向上させることができる。したがって、LNG製品の価格と、動力を消費する価格とのバランスから最適な生産システムを構築できるものである。
特に、冷媒ガスとして原料ガスをそのまま利用することができるので生産プロセス自体の設計に自由度が大きく、さらに原料ガスとして循環利用しているので原料費として無駄も全く発生しない。
【0089】
(6)第六の実施形態
図6は、本発明の天然ガス処理方法の第六の実施形態にて用いられる天然ガス処理設備を示す概略構成図である。
図6において、図5に示した天然ガス処理設備100と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この天然ガス処理設備140が、上述の天然ガス処理設備100と異なる点は、LNG原料ガスが供給されるライン19の中途、かつ、ライン20とライン21との分岐点よりも前に、LNG原料ガスのみを臨界圧力以上になるように圧縮する第五ガス圧縮機141が設けられている点であり、それ以外は第五の実施形態と同じ構成である。
【0090】
この天然ガス処理設備140の作用について、上述の第五の実施形態との相違点を中心に説明する。
本実施形態では、NGL回収設備から供給されるリーンガスをセールスガス圧縮機12で高圧にする際、第五の実施形態に比べて低い圧力、例えば56baraで運転することができ、セールスガス3を製品として生産する。
一方、天然ガス液化工程においては、LNG原料ガスのみを上記第五ガス圧縮機141でさらに臨界圧力以上に昇圧し、上記の場合、例えば56baraを105baraまで圧縮することにより、以後の天然ガス液化工程は上述の第五の実施形態と全く同様の条件で運転することができる。
【0091】
この実施形態の天然ガス処理方法によれば、セールスガスに要求される圧力がそれほど高くない場合(56bara)であっても、天然ガス液化工程に供給するLNG原料ガスをのみを第五ガス圧縮機141により昇圧することができるので(105bara)、第五の実施形態と同様の工程により処理ができ、LNG製品の生産量を落とすことなく、セールスガス圧縮機12の動力を有効に利用することができ、全体の電力エネルギーを節約しながらLNGの生産も確保できるものである。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
図1に示す天然ガス処理設備10を用いて天然ガスの処理を行った。
ライン18に供給されるリーンガス(組成:窒素4mol%、メタン95mol%、エタン1mol%)の、セールスガス圧縮機12への供給量を2000(MMSCFD)とし、このうちの10%の200(MMSCFD)をLNG原料ガスとし、90%の1800MMSCFDをセールスガス用とした。
処理に必要な条件として、セールスガス圧縮機12の動力、ブースターガス圧縮機32の動力、第二熱交換器25(プロパン冷媒冷却用)の動力を、それぞれ表1に示す。
また、1(MMBTU)当たり、セールスガスを2(US$)、LNGを4(US$)と想定して販売額を計算した(以下の実施例も同様)。
その結果、液化天然ガスの回収量は0.56(MTA)であり、セールスガスとLNGの販売総額は1328(MMUS$/年)であった。
また、LNG単位重量を生産するために必要な圧縮機の動力(スペシフィックパワー)は、0.430(kW・hr/kg−LNG)であった。
【0094】
(実施例2)
図3に示す天然ガス処理設備50を用いて天然ガスの処理を行った。
上記実施例1と同様のリーンガスを使用し、セールスガスとLNG原料ガスの配分も同様とした。
処理に必要な条件として、セールスガス圧縮機12の動力、ブースターガス圧縮機32の動力、第二熱交換器25(プロパン冷媒冷却用)の動力を、それぞれ表1に示す。
その結果、液化天然ガスの回収量は0.39(MTA)であり、セールスガスとLNGの販売総額は1294(MMUS$/年)であった。
また、LNG単位重量を生産するために必要な圧縮機の動力(スペシフィックパワー)は、0.363(kW・hr/kg−LNG)であった。
【0095】
(実施例3)
図5に示す天然ガス処理設備105を用いて天然ガスの処理を行った。
上記実施例1と同様のリーンガスを使用し、セールスガスとLNG原料ガスの配分も同様とした。
処理に必要な条件として、セールスガス圧縮機12の動力、ブースターガス圧縮機32の動力、第二熱交換器25(プロパン冷媒冷却用)の動力、自己冷媒用の第四ガス圧縮機131の動力を、それぞれ表1に示す。
その結果、液化天然ガスの回収量は0.91(MTA)であり、セールスガスとLNGの販売総額は1397(MMUS$/年)であった。
また、LNG単位重量を生産するために必要な圧縮機の動力(スペシフィックパワー)は、0.363(kW・hr/kg−LNG)であった。
【0096】
【表1】

【0097】
(実施例4)
図1に示す天然ガス処理設備10を用いて天然ガスの処理を行った。
上記実施例1と同様のリーンガスを仕様し、セールスガスを80%の1600(MMSCFD)とし、LNG原料ガスを20%の400(MMSCFD)とした。
処理に必要な条件として、セールスガス圧縮機12の動力、ブースターガス圧縮機32の動力、第二熱交換器25(プロパン冷媒冷却用)の動力を、それぞれ表2に示す。
その結果、液化天然ガスの回収量は1.12(MTA)であり、セールスガスとLNGの販売総額量は1304(MMUS$/年)であった。
また、LNG単位重量を生産するために必要な圧縮機の動力(スペシフィックパワー)は、0.430(kW・hr/kg−LNG)であった。
【0098】
(実施例5)
図3に示す天然ガス処理設備50を用いて天然ガスの処理を行った。
上記実施例1と同様のリーンガスを使用し、実施例4と同様のセールスガスとLNG原料ガスの量と配分とした。
処理に必要な条件として、セールスガス圧縮機12の動力、ブースターガス圧縮機32の動力、第二熱交換器25(プロパン冷媒冷却用)の動力を、それぞれ表2に示す。
その結果、液化天然ガスの回収量は0.78(MTA)であり、セールスガスとLNGの販売総額は1237(MMUS$/年)であった。
また、LNG単位重量を生産するために必要な圧縮機の動力(スペシフィックパワー)は、0.363(kW・hr/kg−LNG)であった。
【0099】
(実施例6)
図5に示す天然ガス処理設備105を用いて天然ガスの処理を行った。
上記実施例1と同様のリーンガスを使用し、実施例4と同様のセールスガスとLNG原料ガスの量と配分とした。
処理に必要な条件として、セールスガス圧縮機12の動力、ブースターガス圧縮機32の動力、第二熱交換器25(プロパン冷媒冷却用)の動力を、それぞれ表2に示す。
その結果、液化天然ガスの回収量は1.82(MTA)であり、セールスガスとLNGの販売総額は1442(MMUS$/年)であった。
また、LNG単位重量を生産するために必要な圧縮機の動力(スペシフィックパワー)は、0.363(kW・hr/kg−LNG)であった。
【0100】
【表2】

【0101】
(実施例7)
図1に示す天然ガス処理設備10を用いて天然ガスの処理を行った。
上記実施例1と同様のリーンガスを仕様し、セールスガスを60%の1200(MMSCFD)とし、LNG原料ガスを40%の800(MMSCFD)とした。
処理に必要な条件として、セールスガス圧縮機12の動力、ブースターガス圧縮機32の動力、第二熱交換器25(プロパン冷媒冷却用)の動力を、それぞれ表3に示す。
その結果、液化天然ガスの回収量は2.24(MTA)であり、セールスガスとLNGの販売総額量は1255(MMUS$/年)であった。
また、LNG単位重量を生産するために必要な圧縮機の動力(スペシフィックパワー)は、0.430(kW・hr/kg−LNG)であった。
【0102】
(実施例8)
図3に示す天然ガス処理設備50を用いて天然ガスの処理を行った。
上記実施例1と同様のリーンガスを使用し、実施例7と同様のセールスガスとLNG原料ガスの量と配分とした。
処理に必要な条件として、セールスガス圧縮機12の動力、ブースターガス圧縮機32の動力、第二熱交換器25(プロパン冷媒冷却用)の動力を、それぞれ表3に示す。
その結果、液化天然ガスの回収量は1.56(MTA)であり、セールスガスとLNGの販売総額は1120(MMUS$/年)であった。
また、LNG単位重量を生産するために必要な圧縮機の動力(スペシフィックパワー)は、0.363(kW・hr/kg−LNG)であった。
【0103】
(実施例9)
図5に示す天然ガス処理設備105を用いて天然ガスの処理を行った。
上記実施例1と同様のリーンガスを使用し、実施例7と同様のセールスガスとLNG原料ガスの量と配分とした。
処理に必要な条件として、セールスガス圧縮機12の動力、ブースターガス圧縮機32の動力、第二熱交換器25(プロパン冷媒冷却用)の動力を、それぞれ表3に示す。
その結果、液化天然ガスの回収量は3.64(MTA)であり、セールスガスとLNGの販売総額は1533(MMUS$/年)であった。
また、LNG単位重量を生産するために必要な圧縮機の動力(スペシフィックパワー)は、0.363(kW・hr/kg−LNG)であった。
【0104】
【表3】

【0105】
(参考例1)
セールスガスを生産回収するために、実施例1で用いられた供給ガスを2000(MMSCFD)にて供給し、100%セールスガスとして生産した。
セールスガス圧縮機の必要な動力は122.5(MW)である。
その結果、セールスガスの販売額は1352(MMUS$/年)であった。
【0106】
(参考例2)
上記参考例1で用いられた供給ガスを1800(MMSCFD)にて供給し、100%セールスガスとして回収した。
セールスガス圧縮機の必要な動力は110.25(MW)である。
その結果、セールスガスの販売額は1217(MMUS$/年)であった。
【0107】
(参考例3)
上記参考例1で用いられた供給ガスを1600(MMSCFD)にて供給し、100%セールスガスとして回収した。
セールスガス圧縮機の必要な動力は98(MW)である。
その結果、セールスガスの販売額は1082(MMUSS$/年)であった。
【0108】
(参考例4)
上記参考例1で用いられた供給ガスを1200(MMSCFD)にて供給し、100%セールスガスとして回収した。
セールスガス圧縮機の必要な動力は73.5(MW)である。
その結果、セールスガスの回収量は811(MMUS$/年)であった。
【0109】
上記実施例1〜9および参考例1〜4の結果とそれらをまとめた表1〜3の結果から、本発明が、セールスガスとNGLとを主製品として供給する天然ガス処理プラントにおいて、LNGを副製品として、それほどの投資も必要なく生産できることがわかる。
表1〜3の結果から、実施例1〜9は、液化天然ガスを効率的に回収できることが確認された。特に、セールスガスの生産がフルに行われていない場合、余剰のセールスガス圧縮機の動力を、天然ガス液化設備への供給ガスの昇圧のための動力として使用することにより、プラントの経済性を向上できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の天然ガス処理方法は、新たな天然ガス処理プラントのみならず、特に、既存のセールスガスとNGLとを供給しているプラントにおいても、簡単な改造でLNGを併産することができるプラントとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の天然ガス処理方法の第一の実施形態にて用いられる天然ガス処理設備を示す概略構成図である。
【図2】本発明の天然ガス処理方法の第二の実施形態にて用いられる天然ガス処理設備を示す概略構成図である。
【図3】本発明の天然ガス処理方法の第三の実施形態にて用いられる天然ガス処理設備50を示す概略構成図である。
【図4】本発明の天然ガス処理方法の第四の実施形態にて用いられる天然ガス処理設備を示す概略構成図である。
【図5】本発明の天然ガス処理方法の第五の実施形態にて用いられる天然ガス処理設備100を示す概略構成図である。
【図6】本発明の天然ガス処理方法の第六の実施形態にて用いられる天然ガス処理設備を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0112】
1・・・原料天然ガス、2・・・NGL、3・・・セールスガス、4・・・LNG、5・・・前処理設備、6・・・セールスガス生産設備、10,40,50,90,100,140・・・天然ガス処理設備、11・・・NGL回収設備、12・・・セールスガス圧縮機、13・・・ライン、14・・・セールスガスパイプライン、15,55,105・・・天然ガス液化設備、16・・・LNG貯蔵タンク、17,18,19,20,21・・・ライン、22・・・フラッシュドラム、23・・・第一熱交換器、24・・・液膨張機、25・・・第二熱交換器、26・・・第一ガス膨張機、27・・・オフガスライン、28・・・液体ライン、29・・・ポンプ、30・・・回収ライン、31・・・第一ガス圧縮機、32・・・ブースター圧縮機、41・・・第二ガス圧縮機、66,116・・・第二ガス膨張機、70,71,72,73・・・ライン、74・・・第三熱交換器、75・・・第二ガス膨張機、76・・・第四熱交換器、77・・・ライン、81・・・第二ガス圧縮機、82・・・ライン、91・・・第四ガス圧縮機、120,121・・・ライン、122・・・第三熱交換器、123・・・第二ガス膨張機、124・・・第四熱交換器、125・・・ライン、129・・・第三ガス圧縮機、130・・・ライン、131・・・第四ガス圧縮機、132・・・ライン、141・・・第五ガス圧縮機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガスから天然ガス液(NGL)とセールス用高圧ガス(セールスガス)とを主製品とし、液化天然ガス(LNG)を副製品として回収する天然ガス処理方法であって、
原料天然ガス(1)から不純物を除去して精製天然ガスを得る前処理工程(5)と、
前処理工程(5)で得られた精製天然ガスを、炭素数が2以上の炭化水素が凝縮液化する温度まで冷却して炭素数が2以上のNGL製品(2)を回収するとともに、メタンを主成分としたリーンガスを分離するNGL回収工程(11)と、
前記NGL回収工程(11)にて分離されたリーンガスの一部をガス圧縮手段(12)により圧縮して高圧ガスを得るとともに、セールスガス(3)として出荷するセールスガス生産工程(6)と、
前記NGL回収工程(11)にて分離されたリーンガスの残りの一部をガス圧縮手段(12)により圧縮して臨界圧力を超える高圧ガス(19)を得た後、その高圧ガス(19)をメタンが凝縮液化する温度まで冷却してLNG製品を得る天然ガス液化工程(15)と、を備え、
前記天然ガス液化工程(15)のガス圧縮手段(12)として、前記セールスガス生産工程(6)のガス圧縮手段(12)を用いることを特徴とする天然ガス処理方法。
【請求項2】
前記天然ガス液化工程(15)は、この工程に供給される臨界圧力を超えた高圧のリーンガスであるLNG原料ガス(19)の一部(20)を、LNG製品を生産する際(22)発生する低温ガス(27)との熱交換(23)により冷却し、液膨張機(24)により断熱膨張させる工程Aと、
前記工程Aに供給した残りのLNG原料ガス(21)を、プロパン冷媒との熱交換(25)により冷却した後、ガス膨張機(26)により断熱膨張させて液化する工程Bと、を備え、
前記工程Aにて生成したLNGと、前記工程Bにて生成したLNGとを合流させて(22)LNG製品を(4)得ることを特徴とする請求項1に記載の天然ガス処理方法。
【請求項3】
前記工程Aの冷却に用いたLNG製品を生産する際発生する低温ガス(27)を、前記セールスガス生産工程のガス圧縮手段(12)へ戻すことを特徴とする請求項2に記載の天然ガス処理方法。
【請求項4】
前記天然ガス液化工程(15)に供給するLNG原料ガス(19)を、セールスガス生産工程(6)よりもさらに高圧化して(41)、臨界圧力を超えた状態で用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の天然ガス処理方法。
【請求項5】
前記天然ガス液化工程(15)は、この工程に供給される臨界圧力を超えた高圧のリーンガスであるLNG原料ガス(19)の一部(20)を、LNG製品を生産する際(22)発生する低温ガス(27)との熱交換(23)により冷却し、液膨張機(24)により断熱膨張させる工程A1と、
前記工程A1に供給したLNG原料ガスの残り(21)の一部(70)を、プロパン冷媒との熱交換(25)により冷却し、さらに前記工程A1に供給したLNG原料ガスの残り(21)の残部(71)を含むLNG原料ガスからなる流体を冷却した自己冷媒体(77)との熱交換により冷却した後、ガス膨張機(26)により断熱膨張して液化し、LNGを得る工程Cと、を備え、
前記工程A1にて生成したLNGと、前記工程Cにて生成したLNGとを合流させて(22)LNG製品(4)を得ることを特徴とする請求項1に記載の天然ガス処理方法。
【請求項6】
前記自己冷媒体(77)は、前記工程A1に供給したLNG原料ガスの残り(21)の残部(71)とプロパン冷媒との熱交換(25)により冷却されたガスの一部(73)とからなり、前記残部(71)を熱交換(74)により冷却した後、前記ガスの一部(73)と合流させた後、ガス膨張機(75)により断熱膨張させ、その断熱膨張させた流体を自己冷媒体(77)としてプロパン冷媒との熱交換(25)により冷却されたガスの残部(72)と熱交換させる(76)ことを特徴とする請求項5に記載の天然ガス処理方法。
【請求項7】
前記自己冷媒体(77)は、前記工程A1に供給したLNG原料ガスの残り(21)の残部(71)を、熱交換(74)により冷却した後、ガス圧縮機(81)により圧縮され、前記セールスガス生産工程(6)のガス圧縮手段(12)へ戻される(82)ことを特徴とする請求項6に記載の天然ガス処理方法。
【請求項8】
前記工程A1の冷却に用いたLNG製品を生産する際(22)発生する低温ガス(27)を、前記セールスガス生産工程(6)のガス圧縮手段(12)へ戻すことを特徴とする請求項5に記載の天然ガス処理方法。
【請求項9】
前記天然ガス液化工程(15)は、この工程に供給される臨界圧力を超えた高圧のリーンガスであるLNG原料ガス(19)の一部(20)を、LNG製品を生産する際(22)発生する低温ガス(27)との熱交換により冷却し、液化した後、液膨張機(24)により断熱膨張させる工程A1と、
前記工程A1に供給したLNG原料ガスの残り(21)をプロパン冷媒との熱交換(25)により冷却し、そのガスをLNG原料用と冷媒用とに分離し、LNG原料用ガス(120)を、冷媒用ガス(121)を断熱膨張した自己冷媒体(125)との熱交換(124)により冷却した後、ガス膨張機(26)により断熱膨張して液化し、LNGを得る工程Dと、を備え、
前記工程A1にて生成したLNGと、前記工程Dにて生成したLNGとを合流させて(22)LNG製品(4)を得ることを特徴とする請求項1に記載の天然ガス処理方法。
【請求項10】
前記冷媒用ガス(121)を、ガス膨張機(123)により断熱膨張させ、その断熱膨張させた流体を、前記LNG原料用ガス(120)と熱交換(124)させることを特徴とする請求項9に記載の天然ガス処理方法。
【請求項11】
前記自己冷媒体(125)は、この自己冷媒体(125)がガス圧縮機(129,131)により圧縮されたガスの一部(133)を、熱交換(122)により冷却した後、ガス膨張機(123)により断熱膨張させ、その断熱膨張させた流体を、前記LNG原料用ガス(120)と熱交換(124)した後、熱交換(122)により加熱され、前記ガス圧縮機(129,131)により圧縮される循環サイクルを形成することを特徴とする請求項9に記載の天然ガスの処理方法。
【請求項12】
前記ガス圧縮機(129,131)により圧縮されたガスは、その一部(133)を前記冷媒ガス(124)と熱交換させた(122)後、前記プロパン冷媒との熱交換(25)により冷却されたガスの残部(121)と合流させ、その残部(132)を前記工程A1に供給したLNG原料ガスの残り(21)と合流させることを特徴とする請求項11に記載の天然ガス処理方法。
【請求項13】
前記天然ガス液化工程(15)に供給するLNG原料ガス(19)を、セールスガス生産工程(6)よりもさらに高圧化して(41,91,141)、臨界圧力を超えた状態で用いることを特徴とする請求項5ないし12のいずれか1項に記載の天然ガス処理方法。
【請求項14】
前記天然ガス液化工程(15)に供給する高圧ガス(19,19´)の圧力は、40bara以上、150bara以下であることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の天然ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−169244(P2008−169244A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1187(P2007−1187)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】