太陽電池モジュールの設置構造および太陽電池モジュールユニット
【課題】太陽電池モジュールを特にシート状の対象物に設置した場合において、その対象物を展張したときにも太陽電池モジュールが破断したり対象物から剥離したりしないようにする。
【解決手段】太陽電池モジュールの設置構造である。シート状の太陽電池モジュール13と弾性体層14とが積層されて積層体12が構成されている。弾性体層14が太陽電池を設置すべき対象シート状体11に貼り付けられることで、積層体12が対象シート状体11に取り付けられている。
【解決手段】太陽電池モジュールの設置構造である。シート状の太陽電池モジュール13と弾性体層14とが積層されて積層体12が構成されている。弾性体層14が太陽電池を設置すべき対象シート状体11に貼り付けられることで、積層体12が対象シート状体11に取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの設置構造、および同設置構造に用いることができる太陽電池モジュールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池として、住宅やその他の建造物の屋根に設置されて用いられるものが知られている。たとえば、近年においては、倉庫用テント、緊急災害時などにおいて用いられる仮設テント、商店の軒だしテントなどにも太陽電池を設置することが検討されている。
【0003】
しかし、これらのテントは設置時に展張されるものであり、しかも張力を掛けて曲面形状に展張されることも多い。これらのテントに用いられる太陽電池としてはシート状のものを挙げることができるが、その場合には、同様に太陽電池にも展張力が作用し、また同様に太陽電池も曲面形状に展張されることになる。しかし、シート状の太陽電池は、その構造上、曲面形状に変形させることは可能であるものの、テントと同様に展張されるときの展張力に耐えることが困難である。
【0004】
一方、シート状の太陽電池は、屋外に設置されて用いられることから、耐候性の高いフッ素系樹脂やシリコン系樹脂にて形成された保護層をその表面に有するのが通例である。ところが、テント地は一般に織物にオレフィンやエステルなどの樹脂を積層や含浸させたものであり、このテント地と表面に上記の保護層を有する太陽電池とを接着一体化させることは困難である。
【0005】
すなわち、上記のようにシート状の太陽電池は、通常はフッ素形樹脂やシリコン系樹脂にて形成された保護層をその表面に有するものであるため、設置対象物との固定に工夫が必要である。
【0006】
たとえば特許文献1には、シート状の太陽電池モジュールとシート状の設置対象物とを糸状材料で縫い付けるようにした固定方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、対象物の表面に設置されたシート状の太陽電池モジュールを、同モジュールよりも面積の大きな熱可塑性樹脂フィルムで覆い、同フィルムの縁部を対象物に溶着することで同モジュールを固定するようにしたものが開示されている。
【0008】
特許文献3には、シート状の太陽電池モジュールと屋根用基板との間に特殊な接着剤層を形成したもの、すなわち両者の間に感圧型シート状接着剤と反応硬化型接着剤とを配したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−144947号公報
【特許文献2】特開平11−046007号公報
【特許文献3】特開2008−053419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1のものは、固定強度が弱く、外れやすい。特許文献2のものは、熱可塑性樹脂フィルムが表面層を構成することになることから、このフィルムにシワやキズが生じやすく、このため太陽電池の発電効率が低下しやすい。特許文献3のものでは、上述のように設置対象物がテントなどのように展張されるものである場合には、その展張時に設置対象物は伸長するがシート状の太陽電池は伸長しないため、両者間に伸長差(歪み)が生じる。このため、接着力が弱いと剥離が生じ、反対に強固に接着されていると太陽電池が破断してしまう。
【0011】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、太陽電池モジュールを特にシート状の対象物に設置した場合において、その対象物を伸長や収縮したときにも太陽電池モジュールが破断したり対象物から剥離したりしないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明の太陽電池モジュールの設置構造は、シート状の太陽電池モジュールと弾性体層とが積層されて積層体が構成され、前記弾性体層が太陽電池を設置すべき対象シート状体に貼り付けられることで、前記積層体が前記対象シート状体に取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
この太陽電池モジュールの設置構造においては、太陽電池モジュールと弾性体層とが、および、弾性体層と対象シート状体とが、接着または粘着により積層一体化されていることが好適である。
【0014】
本発明の別の太陽電池モジュールの設置構造は、シート状の太陽電池モジュールと弾性体層とベースシートとがこの順で積層一体化されることでモジュールユニットが構成され、前記ベースシートが太陽電池を設置すべき対象シート状体に取り付けられることで、前記モジュールユニットが前記対象シート状体に取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
この太陽電池モジュールの設置構造においては、太陽電池モジュールと弾性体層とが、および、弾性体層とベースシートとが、接着または粘着により積層一体化されていることが好適である。
【0016】
本発明の太陽電池モジュールユニットは、シート状の太陽電池モジュールと、弾性体層と、粘着剤層または接着剤層と、前記粘着剤層または接着剤層に対する剥離性を有する剥離シートとがこの順に積層されたものであることを特徴とする。
【0017】
本発明の別の太陽電池モジュールユニットは、シート状の太陽電池モジュールと弾性体層とベースシートとがこの順で積層一体化されたものであることを特徴とする。
【0018】
本発明の太陽電池モジュールの設置構造および太陽電池モジュールユニットにおいては、太陽電池を設置すべき対象シート状体が面方向に展張または収縮したときに、弾性体層を構成する弾性体が前記展張または収縮に追従して変形するように構成されていることが好適である。
【0019】
本発明の太陽電池モジュールの設置構造および太陽電池モジュールユニットにおいては、弾性体層を構成する弾性体が、独立気泡にて構成された発泡スポンジゴムであることが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、太陽電池モジュールと設置対象シート状体との間に弾性体層を介在させたため、設置対象シート状体が伸長や収縮したときには、その伸長や収縮を弾性体層によって吸収させることが可能である。このため、伸長や収縮に基づき太陽電池シートに生じる歪みを緩和することができて、太陽電池シートに破断や設置対象シート状体からの剥離が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態の太陽電池モジュールの設置構造の立体図である。
【図2】図1に示された部分の挙動を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の太陽電池モジュールユニットを示す図である。
【図4】図3の太陽電池モジュールユニットを用いた設置構造を示す図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の太陽電池モジュールユニットを示す図である。
【図6】図5の太陽電池モジュールユニットを用いた設置構造を示す図である。
【図7】太陽電池モジュールの設置例を示す立体図である。
【図8】太陽電池モジュールの他の設置例を示す立体図である。
【図9】図8に示す部分の正面図である。
【図10】太陽電池モジュールのさらに他の設置例を示す立体図である。
【図11】太陽電池モジュールのさらに他の設置例を示す立体図である。
【図12】図11に示す部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1において、11は太陽電池モジュールを設置すべき対象シート状体であり、倉庫用テント、緊急災害時などにおいて用いられる仮設テント、商店の軒だしテント、トラックの幌などを構成するためのものである。このような用途に供されるシート状体11は、織物に合成樹脂を積層や含浸させたものにて構成される。シート状体11は、例えば、織物にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニルなどのオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのエステル系樹脂や、アクリル系樹脂や、フッ素系樹脂や、シリコン系樹脂などを積層や含浸させたものにて構成されてよい。なかでも、難燃性と耐候性とが共に優れる観点から、シート状体11は、織物にポリ塩化ビニル樹脂を積層や含浸させて構成されることが好ましい。
【0023】
シート状体11には、積層体12が、接着や粘着によって貼り付けられている。この積層体12は、シート状の太陽電池モジュール13と弾性体層14とが接着や粘着によって積層一体化されたものである。
【0024】
太陽電池モジュール13は、シート状の太陽電池と、この太陽電池の表面を覆う保護層とを有した構成である。保護層は、太陽電池の表面のみを覆う構成であってよく、又は太陽電池の表裏面を覆う構成であってもよい。太陽電池の表面を覆う保護層は、透明でかつ耐候性の高いフッ素系樹脂やシリコン系樹脂にて形成されていることが好ましい。また、太陽電池の裏面を覆う保護層は、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、PET樹脂や薄い鋼板を用いることもできる。弾性体層14は、太陽電池モジュール13とシート状体11との間に介在されるもので、たとえばスポンジ状のゴム材によって形成されている。
【0025】
このような構成において、シート状体11がテントに用いられる場合には、その設置に際し、このシート状体11が展張される。すなわち、シート状体11にその面方向の引張力が作用され、それによってシート状体11はその面方向に伸びる。図2において、(a)は積層体12が貼り付けられたシート状体11が展張される前の状態を示し、(b)は展張された後の状態を示す。この展張によってシート状体11は1%〜数%程度伸びるが、太陽電池モジュール13は、そのような伸びは許容できない。太陽電池モジュール13は、そのような伸びに対応する引張応力が作用すると破断するに至る。
【0026】
しかし、上述の構成であると、弾性体層14がそのような応力を吸収することで、太陽電池モジュール13にそのような応力が作用することを防止できる。すなわち、図2(b)に示すように、弾性体層14は、その厚み方向に沿ったシート状体11に近い部分が、シート状体11の伸びに追従して伸びる。これに対し弾性対層14におけるその厚み方向に沿った太陽電池モジュール13に近い部分には、そのような伸びは生じない。これにより、伸びすなわち伸長歪みを緩和することができて、太陽電池モジュール13がシート状体から剥離したり、剥離せずに破断したりすることを確実に防止できる。この意味において、弾性体層14は、変形追従部材層として機能するものである。
【0027】
太陽電池モジュール13が低温の冬期に設置された場合には、高温の夏期にシート状体11が伸長するが、この場合においても同様に弾性体層14が伸長歪を吸収することになる。反対に太陽電池モジュール13が高温の夏期に設置された場合には、低温の冬期にシート状体11が収縮するが、この場合は弾性体層14が収縮歪を吸収することになる。シート状体11は、テントとして用いられた場合に経年たるみにもとづく伸びが生じることがあるが、その場合にも弾性体層14が伸長歪を吸収することになる。
【0028】
弾性体層14を構成する弾性体は、このような機能を発揮するものであれば、適宜の材料によって形成することができる。例えば、弾性体は、ゴム材料からなる織物、編物、不織布、成形体、発泡体などである。なかでも、上述のスポンジ状のゴム材を好適に用いることができる。スポンジ状のゴム材は、発泡ゴム(ゴム材料の発泡体)にて構成されたものである。発泡スポンジゴムとしては、各気泡が互いに連通せずに独立している独立気泡のものと、各気泡が互いに連通している連続気泡のものと、独立気泡と連続気泡とが混在した半連泡のものとが知られている。太陽電池モジュール13は屋外で使用されるものであるが、弾性体層14に雨水がしみ込むと接着剤や粘着剤が劣化しやすくなるため、雨水がしみこみにくい独立気泡のものが、防水性および耐水性の観点で好適である。また、スポンジ状のゴム材であると、通常のゴム材と比べて軽量であり、このためテントなどに設置しても、その重量でテントが崩れるなどの事故の発生を防止できる。しかも、軽量であるために運搬が容易である。ゴムとしては、適宜のものを使用でき、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロスルフォン化ポリメセンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等の合成ゴムや、天然ゴムを用いることができる。なかでも、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムやブチルゴムが、耐候性に優れていることから特に好ましい。
【0029】
弾性体層14の厚みは、0.5mm〜30mmであることが好ましい。弾性体層の厚みが0.5mm以上であると、一時的に台風などの強風に受けて、後述の太陽電池モジュールユニットがはためいて、テントの骨組みなどに太陽電池モジュールユニットが振動衝突しても、その衝撃を弾性体層が吸収することができるため、太陽電池モジュールが損傷することを抑制することができ、上述の変形追従部材層としての機能もより優れた構成となり、一方、30mm以下であると、経済的である。かかる効果を顕著に得る観点から、弾性体層の厚みは1mm〜10mmであることがより好ましく、1.2mm〜5mmであることが最も好ましい。
【0030】
弾性体層を構成する弾性体は、JIS K6251(1993)に従って測定される切断時伸びが110%〜800%であることが好ましく、130%〜600%であることがより好ましく、150%〜400%であることが特に好ましい。切断時伸びがこの範囲であると、展張時に破断するおそれがない。
【0031】
弾性体層を構成する弾性体は、JIS K6251(1993)に従って測定される引張強さが300kPa〜1500kPaであることが好ましく、400kPa〜1000kPaであることがより好ましく、500kPa〜800kPaであることが特に好ましい。引張強さがこの範囲であると、シート状体11の展張時に破断するおそれがない。
【0032】
図1に示される設置構造は、例えば、図3に示される太陽電池モジュールユニット15を用いて構成される。この太陽電池モジュールユニット15においては、シート状の太陽電池モジュール13と弾性体層14とが接着剤層16を介して積層一体化され、かつ弾性体層14と剥離シート17とが、両面粘着材などを用いた粘着剤層18を介して積層一体化されている。剥離シート17は、粘着剤層18に対する剥離性を有する。接着剤層16に代えて、同様に粘着剤層を用いることもできる。接着剤層16(あるいは粘着剤層)は、フッ素系樹脂やシリコン系樹脂からなる保護層が表面に形成されている太陽電池モジュール13とゴム材などにて形成されている弾性体層14とを接合できるものであれば、適宜の材料にて構成することができる。粘着剤層18は、弾性体層14と設置対象のシート状体11とを接合できるものであれば、同様に適宜の材料にて構成することができる。具体的には、太陽電池モジュールユニット15は、幅0.5〜1m程度、長さ1〜5m程度の短冊状に形成される。
【0033】
このような太陽電池モジュールユニット15を用いて、太陽電池モジュール13をシート状体11における所要位置に設置するときには、図3に示されるように剥離シート17を剥がすことで、粘着剤層18を露出させ、この露出した粘着剤層18の表面をシート状体11に押し付ける。こうすることで、図4に示すように積層体12がシート状体11に接合一体化される。
【0034】
なお、図3および図4以外の図面では、簡単のために接着剤層16や粘着剤層18は省略して描いていない。
【0035】
図5を参照して、本発明の他の実施の形態の太陽電池モジュールユニット20について説明する。この太陽電池モジュールユニット20においては、太陽電池モジュール13と弾性体層14とベースシート21とが、図示を省略した接着剤層や粘着剤層によって積層一体化されている。この太陽電池モジュールユニット20も、具体的には、幅0.5〜2m程度、長さ1〜10m程度の短冊状に形成される。
【0036】
ベースシート21は、適宜の材料で形成することができる。たとえばシート状体11と同じ材料で形成することもできる。図示のように、ベースシート21は、太陽電池モジュール13および弾性体層14よりも一回り大きく形成され、それによって、これら太陽電池モジュール13および弾性体層14の周囲に、これら太陽電池モジュール13および弾性体層14が存在しない周縁部22を有している。例えば、周縁部22の幅は、5cm〜100cmに形成される。
【0037】
図5では、ベースシート21に太陽電池モジュール13および弾性体層14が1つ配置された形状を示しているが、太陽電池モジュールユニット20は、ベースシート21に太陽電池モジュール13が2以上配置されていてもよい。
【0038】
図6は、太陽電池モジュールユニット20をシート状体11に取り付けたときの構造を示す。太陽電池モジュールユニット20は、たとえば接着剤を用いてベースシート21をシート状体11に接着することによって、または粘着材を用いてベースシート21をシート状体11に接合することによって、シート状体11に取り付けることができる。あるいは、詳細は後述するが、周縁部22に紐状体を通し、この紐状体を、たとえばシート状体11にて構築されたテントの骨組みに縛り付けることによって、シート状体11に取り付けることもできる。その他、周縁部22を利用した適宜の手法によってシート状体11に取り付けることもできる。
【0039】
図7は、倉庫用テント23に太陽電池モジュールユニット15(剥離シート17を剥がしたもの、以下同様)や太陽電池モジュールユニット20を設置した例を示す。図示のように、短冊状の多数の太陽電池モジュールユニット15、20が、倉庫用テント23の屋根における南向きの部分24に設置されている。この場合は、テント23を設置した後に、すなわちテント23の屋根における南向きの部分24を展張した後に、太陽電池モジュールユニット15、20を設置することができる。あるいは、テントを構成するシート状体にあらかじめ太陽電池モジュールユニット15、20を設置した後に、このシート状体を展張して、倉庫用テント23を構築することもできる。この場合においては、前述のように展張の際に太陽電池モジュールの剥離や破断が防止される。この図に示された倉庫用テント23では、屋根は平面状であり、したがって太陽電池モジュールユニット15、20には、屋根24の展張などに伴う伸縮力は作用するが、曲げ応力は作用しない。
【0040】
図8および図9は、別の倉庫用テント25の屋根における南向きの部分24に太陽電池モジュールユニット15、20を設置した例を示す。この例では、図示のようにテント25は屋根が曲面にて形成されている。したがって、太陽電池モジュールユニット15、20をテント25の屋根に沿って設置すると、太陽電池モジュールユニット15、20には、屋根24の展張に伴う伸縮力と曲げ応力とがともに作用する。なお、一般に用いられている太陽電池モジュールは、建物の屋根に沿う程度に曲げ変形されても、それに十分に追従することができる。
【0041】
図10は、図7に示されたのと同様の倉庫用テント23に、図5に示された太陽電池モジュールユニット20を、紐状体26を用いて取り付けた構造を示す。ここで、27は倉庫用テント23を構築するための骨組みであって、金属材料などによって形成されている。この骨組み27を用いて、シート状体11を展張することで、テント23が構築される。紐状体26は、図5に示される太陽電池モジュールユニット20のベースシート21の周縁部22に通されるとともに、骨組み27に巻き掛けられる。これによって、太陽電池モジュールユニット20を倉庫用テント23に設置することができる。
【0042】
図11および図12は、太陽電池モジュールユニット15、20を商店の軒だしテント28に設置した例を示す。29は設置対象のシート状体11としてのテント地、30はテントの骨組みである。この場合もテント地29に太陽電池モジュールユニット15、20を設置した後にこのテント地29を展張して軒だしテント28を構築することができる。その場合は、図示のように太陽電池モジュールユニット15、20はテント地29とともに骨組み30の外周に沿うように鈍角状に曲げ変形されたうえで展張される。しかし、一般的な軒だしテント28に設置する場合には、このような曲げ変形や展張が行われても、太陽電池モジュールユニット15、20には限度を超えた応力は作用しない。
【0043】
なお、上述では、太陽電池モジュールに太陽光があたりやすい方向に設置する観点から、南向き部分を選択して、太陽電池モジュールユニット15、20を設置する例を示したが、太陽電池モジュールユニット15、20は、南向きに限らず、テントの全面又は一部分に設置することができる。
【0044】
また、太陽電池モジュールユニット15を貼り付けたシート状体11や太陽電池モジュールユニット20は他の方法で展張されてもよく、例えば、三角ペケットなどを設けたシート状体11と太陽電池モジュールユニット15、20とをゴムバンドなどで繋いで展張することもできる。展張方向は、特に限定されず、面方向に展張されてよく、向かい合う1組又は2組以上の辺を外側に展張してよい。
【実施例】
【0045】
太陽電池モジュールとして、幅0.46m、長さ1.7m、厚さ1mmのフィルム型アモルファス太陽電池(商品名:FWAVE、富士電機ホールディングス社製)を用いた。
弾性体層としてスポンジ状の発泡ゴムを用いた。詳細には、幅0.46m、長さ1.7m、厚さ2mmで独立気泡のエチレン−プロピレン−ジエンゴム(商品名:EPT、ダイワボウプログレス社製)を準備した。
【0046】
ベースシートとして、ポリエステル織物の表面に塩化ビニル樹脂層を積層した厚さ0.35mmの樹脂シート(商品名:APC400−F、カンボウプラス社製)であって、幅0.51m、長さ1.8mに裁断したものを用いた。
【0047】
そして、太陽電池モジュールの裏面に両面粘着材(商品名:スリオンテープNo.5938(スーパーブチルテープ)、スリオンテック社製のブチルゴム系粘着材)を貼り付け、この粘着材の上面にスポンジ状の発泡ゴムを貼り付けて中間体を作成した。次いで、この中間体におけるスポンジ状の発泡ゴムの表面に上記と同じ両面粘着材を貼り付け、その上面にベースシートを貼り付けて、本発明の実施例の太陽電池モジュールユニットを得た。
【0048】
既設の仮設テントの屋根の部分に上記の太陽電池モジュールユニットを設置した。このとき、風による「はためき」を防止する程度の張力を加えて、面方向に太陽電池モジュールユニットを展張しながら、仮設テントに設置した。そうしたところ、展張時に太陽電池モジュールがベースシートから剥離することはなかった。また太陽電池モジュールユニットの耐候性を調査するために、設置してから一か月経過後に同太陽電池モジュールユニットを仮設テントから取り外し、観察した。そうしたところ、太陽電池モジュールは破断しておらず、また太陽電池モジュールはベースシートから剥離していなかった。また雨水によってスポンジ状の発泡ゴムが剥離することもなかった。すなわち、スポンジ状のゴムにおいて、雨水の浸入跡は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の太陽電池モジュールの設置構造及び太陽電池モジュールユニットは、野営用テント、キャンプ用テント、倉庫用テント、イベントや緊急災害時などにおいて用いられる仮設テント、商店の軒だしテント、トラックの幌、カーポート、アーケード、パビリオン施設上屋、開閉式ドームなどの膜構造物などに好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
11 シート状体
12 積層体
13 太陽電池モジュール
14 弾性体層
15 太陽電池モジュールユニット
20 太陽電池モジュールユニット
21 ベースシート
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの設置構造、および同設置構造に用いることができる太陽電池モジュールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池として、住宅やその他の建造物の屋根に設置されて用いられるものが知られている。たとえば、近年においては、倉庫用テント、緊急災害時などにおいて用いられる仮設テント、商店の軒だしテントなどにも太陽電池を設置することが検討されている。
【0003】
しかし、これらのテントは設置時に展張されるものであり、しかも張力を掛けて曲面形状に展張されることも多い。これらのテントに用いられる太陽電池としてはシート状のものを挙げることができるが、その場合には、同様に太陽電池にも展張力が作用し、また同様に太陽電池も曲面形状に展張されることになる。しかし、シート状の太陽電池は、その構造上、曲面形状に変形させることは可能であるものの、テントと同様に展張されるときの展張力に耐えることが困難である。
【0004】
一方、シート状の太陽電池は、屋外に設置されて用いられることから、耐候性の高いフッ素系樹脂やシリコン系樹脂にて形成された保護層をその表面に有するのが通例である。ところが、テント地は一般に織物にオレフィンやエステルなどの樹脂を積層や含浸させたものであり、このテント地と表面に上記の保護層を有する太陽電池とを接着一体化させることは困難である。
【0005】
すなわち、上記のようにシート状の太陽電池は、通常はフッ素形樹脂やシリコン系樹脂にて形成された保護層をその表面に有するものであるため、設置対象物との固定に工夫が必要である。
【0006】
たとえば特許文献1には、シート状の太陽電池モジュールとシート状の設置対象物とを糸状材料で縫い付けるようにした固定方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、対象物の表面に設置されたシート状の太陽電池モジュールを、同モジュールよりも面積の大きな熱可塑性樹脂フィルムで覆い、同フィルムの縁部を対象物に溶着することで同モジュールを固定するようにしたものが開示されている。
【0008】
特許文献3には、シート状の太陽電池モジュールと屋根用基板との間に特殊な接着剤層を形成したもの、すなわち両者の間に感圧型シート状接着剤と反応硬化型接着剤とを配したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−144947号公報
【特許文献2】特開平11−046007号公報
【特許文献3】特開2008−053419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1のものは、固定強度が弱く、外れやすい。特許文献2のものは、熱可塑性樹脂フィルムが表面層を構成することになることから、このフィルムにシワやキズが生じやすく、このため太陽電池の発電効率が低下しやすい。特許文献3のものでは、上述のように設置対象物がテントなどのように展張されるものである場合には、その展張時に設置対象物は伸長するがシート状の太陽電池は伸長しないため、両者間に伸長差(歪み)が生じる。このため、接着力が弱いと剥離が生じ、反対に強固に接着されていると太陽電池が破断してしまう。
【0011】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、太陽電池モジュールを特にシート状の対象物に設置した場合において、その対象物を伸長や収縮したときにも太陽電池モジュールが破断したり対象物から剥離したりしないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明の太陽電池モジュールの設置構造は、シート状の太陽電池モジュールと弾性体層とが積層されて積層体が構成され、前記弾性体層が太陽電池を設置すべき対象シート状体に貼り付けられることで、前記積層体が前記対象シート状体に取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
この太陽電池モジュールの設置構造においては、太陽電池モジュールと弾性体層とが、および、弾性体層と対象シート状体とが、接着または粘着により積層一体化されていることが好適である。
【0014】
本発明の別の太陽電池モジュールの設置構造は、シート状の太陽電池モジュールと弾性体層とベースシートとがこの順で積層一体化されることでモジュールユニットが構成され、前記ベースシートが太陽電池を設置すべき対象シート状体に取り付けられることで、前記モジュールユニットが前記対象シート状体に取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
この太陽電池モジュールの設置構造においては、太陽電池モジュールと弾性体層とが、および、弾性体層とベースシートとが、接着または粘着により積層一体化されていることが好適である。
【0016】
本発明の太陽電池モジュールユニットは、シート状の太陽電池モジュールと、弾性体層と、粘着剤層または接着剤層と、前記粘着剤層または接着剤層に対する剥離性を有する剥離シートとがこの順に積層されたものであることを特徴とする。
【0017】
本発明の別の太陽電池モジュールユニットは、シート状の太陽電池モジュールと弾性体層とベースシートとがこの順で積層一体化されたものであることを特徴とする。
【0018】
本発明の太陽電池モジュールの設置構造および太陽電池モジュールユニットにおいては、太陽電池を設置すべき対象シート状体が面方向に展張または収縮したときに、弾性体層を構成する弾性体が前記展張または収縮に追従して変形するように構成されていることが好適である。
【0019】
本発明の太陽電池モジュールの設置構造および太陽電池モジュールユニットにおいては、弾性体層を構成する弾性体が、独立気泡にて構成された発泡スポンジゴムであることが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、太陽電池モジュールと設置対象シート状体との間に弾性体層を介在させたため、設置対象シート状体が伸長や収縮したときには、その伸長や収縮を弾性体層によって吸収させることが可能である。このため、伸長や収縮に基づき太陽電池シートに生じる歪みを緩和することができて、太陽電池シートに破断や設置対象シート状体からの剥離が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態の太陽電池モジュールの設置構造の立体図である。
【図2】図1に示された部分の挙動を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の太陽電池モジュールユニットを示す図である。
【図4】図3の太陽電池モジュールユニットを用いた設置構造を示す図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の太陽電池モジュールユニットを示す図である。
【図6】図5の太陽電池モジュールユニットを用いた設置構造を示す図である。
【図7】太陽電池モジュールの設置例を示す立体図である。
【図8】太陽電池モジュールの他の設置例を示す立体図である。
【図9】図8に示す部分の正面図である。
【図10】太陽電池モジュールのさらに他の設置例を示す立体図である。
【図11】太陽電池モジュールのさらに他の設置例を示す立体図である。
【図12】図11に示す部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1において、11は太陽電池モジュールを設置すべき対象シート状体であり、倉庫用テント、緊急災害時などにおいて用いられる仮設テント、商店の軒だしテント、トラックの幌などを構成するためのものである。このような用途に供されるシート状体11は、織物に合成樹脂を積層や含浸させたものにて構成される。シート状体11は、例えば、織物にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニルなどのオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのエステル系樹脂や、アクリル系樹脂や、フッ素系樹脂や、シリコン系樹脂などを積層や含浸させたものにて構成されてよい。なかでも、難燃性と耐候性とが共に優れる観点から、シート状体11は、織物にポリ塩化ビニル樹脂を積層や含浸させて構成されることが好ましい。
【0023】
シート状体11には、積層体12が、接着や粘着によって貼り付けられている。この積層体12は、シート状の太陽電池モジュール13と弾性体層14とが接着や粘着によって積層一体化されたものである。
【0024】
太陽電池モジュール13は、シート状の太陽電池と、この太陽電池の表面を覆う保護層とを有した構成である。保護層は、太陽電池の表面のみを覆う構成であってよく、又は太陽電池の表裏面を覆う構成であってもよい。太陽電池の表面を覆う保護層は、透明でかつ耐候性の高いフッ素系樹脂やシリコン系樹脂にて形成されていることが好ましい。また、太陽電池の裏面を覆う保護層は、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、PET樹脂や薄い鋼板を用いることもできる。弾性体層14は、太陽電池モジュール13とシート状体11との間に介在されるもので、たとえばスポンジ状のゴム材によって形成されている。
【0025】
このような構成において、シート状体11がテントに用いられる場合には、その設置に際し、このシート状体11が展張される。すなわち、シート状体11にその面方向の引張力が作用され、それによってシート状体11はその面方向に伸びる。図2において、(a)は積層体12が貼り付けられたシート状体11が展張される前の状態を示し、(b)は展張された後の状態を示す。この展張によってシート状体11は1%〜数%程度伸びるが、太陽電池モジュール13は、そのような伸びは許容できない。太陽電池モジュール13は、そのような伸びに対応する引張応力が作用すると破断するに至る。
【0026】
しかし、上述の構成であると、弾性体層14がそのような応力を吸収することで、太陽電池モジュール13にそのような応力が作用することを防止できる。すなわち、図2(b)に示すように、弾性体層14は、その厚み方向に沿ったシート状体11に近い部分が、シート状体11の伸びに追従して伸びる。これに対し弾性対層14におけるその厚み方向に沿った太陽電池モジュール13に近い部分には、そのような伸びは生じない。これにより、伸びすなわち伸長歪みを緩和することができて、太陽電池モジュール13がシート状体から剥離したり、剥離せずに破断したりすることを確実に防止できる。この意味において、弾性体層14は、変形追従部材層として機能するものである。
【0027】
太陽電池モジュール13が低温の冬期に設置された場合には、高温の夏期にシート状体11が伸長するが、この場合においても同様に弾性体層14が伸長歪を吸収することになる。反対に太陽電池モジュール13が高温の夏期に設置された場合には、低温の冬期にシート状体11が収縮するが、この場合は弾性体層14が収縮歪を吸収することになる。シート状体11は、テントとして用いられた場合に経年たるみにもとづく伸びが生じることがあるが、その場合にも弾性体層14が伸長歪を吸収することになる。
【0028】
弾性体層14を構成する弾性体は、このような機能を発揮するものであれば、適宜の材料によって形成することができる。例えば、弾性体は、ゴム材料からなる織物、編物、不織布、成形体、発泡体などである。なかでも、上述のスポンジ状のゴム材を好適に用いることができる。スポンジ状のゴム材は、発泡ゴム(ゴム材料の発泡体)にて構成されたものである。発泡スポンジゴムとしては、各気泡が互いに連通せずに独立している独立気泡のものと、各気泡が互いに連通している連続気泡のものと、独立気泡と連続気泡とが混在した半連泡のものとが知られている。太陽電池モジュール13は屋外で使用されるものであるが、弾性体層14に雨水がしみ込むと接着剤や粘着剤が劣化しやすくなるため、雨水がしみこみにくい独立気泡のものが、防水性および耐水性の観点で好適である。また、スポンジ状のゴム材であると、通常のゴム材と比べて軽量であり、このためテントなどに設置しても、その重量でテントが崩れるなどの事故の発生を防止できる。しかも、軽量であるために運搬が容易である。ゴムとしては、適宜のものを使用でき、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロスルフォン化ポリメセンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等の合成ゴムや、天然ゴムを用いることができる。なかでも、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムやブチルゴムが、耐候性に優れていることから特に好ましい。
【0029】
弾性体層14の厚みは、0.5mm〜30mmであることが好ましい。弾性体層の厚みが0.5mm以上であると、一時的に台風などの強風に受けて、後述の太陽電池モジュールユニットがはためいて、テントの骨組みなどに太陽電池モジュールユニットが振動衝突しても、その衝撃を弾性体層が吸収することができるため、太陽電池モジュールが損傷することを抑制することができ、上述の変形追従部材層としての機能もより優れた構成となり、一方、30mm以下であると、経済的である。かかる効果を顕著に得る観点から、弾性体層の厚みは1mm〜10mmであることがより好ましく、1.2mm〜5mmであることが最も好ましい。
【0030】
弾性体層を構成する弾性体は、JIS K6251(1993)に従って測定される切断時伸びが110%〜800%であることが好ましく、130%〜600%であることがより好ましく、150%〜400%であることが特に好ましい。切断時伸びがこの範囲であると、展張時に破断するおそれがない。
【0031】
弾性体層を構成する弾性体は、JIS K6251(1993)に従って測定される引張強さが300kPa〜1500kPaであることが好ましく、400kPa〜1000kPaであることがより好ましく、500kPa〜800kPaであることが特に好ましい。引張強さがこの範囲であると、シート状体11の展張時に破断するおそれがない。
【0032】
図1に示される設置構造は、例えば、図3に示される太陽電池モジュールユニット15を用いて構成される。この太陽電池モジュールユニット15においては、シート状の太陽電池モジュール13と弾性体層14とが接着剤層16を介して積層一体化され、かつ弾性体層14と剥離シート17とが、両面粘着材などを用いた粘着剤層18を介して積層一体化されている。剥離シート17は、粘着剤層18に対する剥離性を有する。接着剤層16に代えて、同様に粘着剤層を用いることもできる。接着剤層16(あるいは粘着剤層)は、フッ素系樹脂やシリコン系樹脂からなる保護層が表面に形成されている太陽電池モジュール13とゴム材などにて形成されている弾性体層14とを接合できるものであれば、適宜の材料にて構成することができる。粘着剤層18は、弾性体層14と設置対象のシート状体11とを接合できるものであれば、同様に適宜の材料にて構成することができる。具体的には、太陽電池モジュールユニット15は、幅0.5〜1m程度、長さ1〜5m程度の短冊状に形成される。
【0033】
このような太陽電池モジュールユニット15を用いて、太陽電池モジュール13をシート状体11における所要位置に設置するときには、図3に示されるように剥離シート17を剥がすことで、粘着剤層18を露出させ、この露出した粘着剤層18の表面をシート状体11に押し付ける。こうすることで、図4に示すように積層体12がシート状体11に接合一体化される。
【0034】
なお、図3および図4以外の図面では、簡単のために接着剤層16や粘着剤層18は省略して描いていない。
【0035】
図5を参照して、本発明の他の実施の形態の太陽電池モジュールユニット20について説明する。この太陽電池モジュールユニット20においては、太陽電池モジュール13と弾性体層14とベースシート21とが、図示を省略した接着剤層や粘着剤層によって積層一体化されている。この太陽電池モジュールユニット20も、具体的には、幅0.5〜2m程度、長さ1〜10m程度の短冊状に形成される。
【0036】
ベースシート21は、適宜の材料で形成することができる。たとえばシート状体11と同じ材料で形成することもできる。図示のように、ベースシート21は、太陽電池モジュール13および弾性体層14よりも一回り大きく形成され、それによって、これら太陽電池モジュール13および弾性体層14の周囲に、これら太陽電池モジュール13および弾性体層14が存在しない周縁部22を有している。例えば、周縁部22の幅は、5cm〜100cmに形成される。
【0037】
図5では、ベースシート21に太陽電池モジュール13および弾性体層14が1つ配置された形状を示しているが、太陽電池モジュールユニット20は、ベースシート21に太陽電池モジュール13が2以上配置されていてもよい。
【0038】
図6は、太陽電池モジュールユニット20をシート状体11に取り付けたときの構造を示す。太陽電池モジュールユニット20は、たとえば接着剤を用いてベースシート21をシート状体11に接着することによって、または粘着材を用いてベースシート21をシート状体11に接合することによって、シート状体11に取り付けることができる。あるいは、詳細は後述するが、周縁部22に紐状体を通し、この紐状体を、たとえばシート状体11にて構築されたテントの骨組みに縛り付けることによって、シート状体11に取り付けることもできる。その他、周縁部22を利用した適宜の手法によってシート状体11に取り付けることもできる。
【0039】
図7は、倉庫用テント23に太陽電池モジュールユニット15(剥離シート17を剥がしたもの、以下同様)や太陽電池モジュールユニット20を設置した例を示す。図示のように、短冊状の多数の太陽電池モジュールユニット15、20が、倉庫用テント23の屋根における南向きの部分24に設置されている。この場合は、テント23を設置した後に、すなわちテント23の屋根における南向きの部分24を展張した後に、太陽電池モジュールユニット15、20を設置することができる。あるいは、テントを構成するシート状体にあらかじめ太陽電池モジュールユニット15、20を設置した後に、このシート状体を展張して、倉庫用テント23を構築することもできる。この場合においては、前述のように展張の際に太陽電池モジュールの剥離や破断が防止される。この図に示された倉庫用テント23では、屋根は平面状であり、したがって太陽電池モジュールユニット15、20には、屋根24の展張などに伴う伸縮力は作用するが、曲げ応力は作用しない。
【0040】
図8および図9は、別の倉庫用テント25の屋根における南向きの部分24に太陽電池モジュールユニット15、20を設置した例を示す。この例では、図示のようにテント25は屋根が曲面にて形成されている。したがって、太陽電池モジュールユニット15、20をテント25の屋根に沿って設置すると、太陽電池モジュールユニット15、20には、屋根24の展張に伴う伸縮力と曲げ応力とがともに作用する。なお、一般に用いられている太陽電池モジュールは、建物の屋根に沿う程度に曲げ変形されても、それに十分に追従することができる。
【0041】
図10は、図7に示されたのと同様の倉庫用テント23に、図5に示された太陽電池モジュールユニット20を、紐状体26を用いて取り付けた構造を示す。ここで、27は倉庫用テント23を構築するための骨組みであって、金属材料などによって形成されている。この骨組み27を用いて、シート状体11を展張することで、テント23が構築される。紐状体26は、図5に示される太陽電池モジュールユニット20のベースシート21の周縁部22に通されるとともに、骨組み27に巻き掛けられる。これによって、太陽電池モジュールユニット20を倉庫用テント23に設置することができる。
【0042】
図11および図12は、太陽電池モジュールユニット15、20を商店の軒だしテント28に設置した例を示す。29は設置対象のシート状体11としてのテント地、30はテントの骨組みである。この場合もテント地29に太陽電池モジュールユニット15、20を設置した後にこのテント地29を展張して軒だしテント28を構築することができる。その場合は、図示のように太陽電池モジュールユニット15、20はテント地29とともに骨組み30の外周に沿うように鈍角状に曲げ変形されたうえで展張される。しかし、一般的な軒だしテント28に設置する場合には、このような曲げ変形や展張が行われても、太陽電池モジュールユニット15、20には限度を超えた応力は作用しない。
【0043】
なお、上述では、太陽電池モジュールに太陽光があたりやすい方向に設置する観点から、南向き部分を選択して、太陽電池モジュールユニット15、20を設置する例を示したが、太陽電池モジュールユニット15、20は、南向きに限らず、テントの全面又は一部分に設置することができる。
【0044】
また、太陽電池モジュールユニット15を貼り付けたシート状体11や太陽電池モジュールユニット20は他の方法で展張されてもよく、例えば、三角ペケットなどを設けたシート状体11と太陽電池モジュールユニット15、20とをゴムバンドなどで繋いで展張することもできる。展張方向は、特に限定されず、面方向に展張されてよく、向かい合う1組又は2組以上の辺を外側に展張してよい。
【実施例】
【0045】
太陽電池モジュールとして、幅0.46m、長さ1.7m、厚さ1mmのフィルム型アモルファス太陽電池(商品名:FWAVE、富士電機ホールディングス社製)を用いた。
弾性体層としてスポンジ状の発泡ゴムを用いた。詳細には、幅0.46m、長さ1.7m、厚さ2mmで独立気泡のエチレン−プロピレン−ジエンゴム(商品名:EPT、ダイワボウプログレス社製)を準備した。
【0046】
ベースシートとして、ポリエステル織物の表面に塩化ビニル樹脂層を積層した厚さ0.35mmの樹脂シート(商品名:APC400−F、カンボウプラス社製)であって、幅0.51m、長さ1.8mに裁断したものを用いた。
【0047】
そして、太陽電池モジュールの裏面に両面粘着材(商品名:スリオンテープNo.5938(スーパーブチルテープ)、スリオンテック社製のブチルゴム系粘着材)を貼り付け、この粘着材の上面にスポンジ状の発泡ゴムを貼り付けて中間体を作成した。次いで、この中間体におけるスポンジ状の発泡ゴムの表面に上記と同じ両面粘着材を貼り付け、その上面にベースシートを貼り付けて、本発明の実施例の太陽電池モジュールユニットを得た。
【0048】
既設の仮設テントの屋根の部分に上記の太陽電池モジュールユニットを設置した。このとき、風による「はためき」を防止する程度の張力を加えて、面方向に太陽電池モジュールユニットを展張しながら、仮設テントに設置した。そうしたところ、展張時に太陽電池モジュールがベースシートから剥離することはなかった。また太陽電池モジュールユニットの耐候性を調査するために、設置してから一か月経過後に同太陽電池モジュールユニットを仮設テントから取り外し、観察した。そうしたところ、太陽電池モジュールは破断しておらず、また太陽電池モジュールはベースシートから剥離していなかった。また雨水によってスポンジ状の発泡ゴムが剥離することもなかった。すなわち、スポンジ状のゴムにおいて、雨水の浸入跡は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の太陽電池モジュールの設置構造及び太陽電池モジュールユニットは、野営用テント、キャンプ用テント、倉庫用テント、イベントや緊急災害時などにおいて用いられる仮設テント、商店の軒だしテント、トラックの幌、カーポート、アーケード、パビリオン施設上屋、開閉式ドームなどの膜構造物などに好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
11 シート状体
12 積層体
13 太陽電池モジュール
14 弾性体層
15 太陽電池モジュールユニット
20 太陽電池モジュールユニット
21 ベースシート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の太陽電池モジュールと弾性体層とが積層されて積層体が構成され、前記弾性体層が太陽電池を設置すべき対象シート状体に貼り付けられることで、前記積層体が前記対象シート状体に取り付けられていることを特徴とする太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項2】
太陽電池モジュールと弾性体層とが、および、弾性体層と対象シート状体とが、接着または粘着により積層一体化されていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項3】
シート状の太陽電池モジュールと弾性体層とベースシートとがこの順で積層一体化されることでモジュールユニットが構成され、前記ベースシートが太陽電池を設置すべき対象シート状体に取り付けられることで、前記モジュールユニットが前記対象シート状体に取り付けられていることを特徴とする太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項4】
太陽電池モジュールと弾性体層とが、および、弾性体層とベースシートとが、接着または粘着により積層一体化されていることを特徴とする請求項3記載の太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項5】
太陽電池を設置すべき対象シート状体が面方向に展張または収縮したときに、弾性体層を構成する弾性体が前記展張または収縮に追従して変形するように構成されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項6】
弾性体層を構成する弾性体が、独立気泡にて構成された発泡スポンジゴムであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項7】
シート状の太陽電池モジュールと、弾性体層と、粘着剤層または接着剤層と、前記粘着剤層または接着剤層に対する剥離性を有する剥離シートとがこの順に積層されたものであることを特徴とする太陽電池モジュールユニット。
【請求項8】
シート状の太陽電池モジュールと弾性体層とベースシートとがこの順で積層一体化されたものであることを特徴とする太陽電池モジュールユニット。
【請求項9】
弾性体層を構成する弾性体が、独立気泡にて構成された発泡スポンジゴムであることを特徴とする請求項7または8記載の太陽電池モジュールユニット。
【請求項1】
シート状の太陽電池モジュールと弾性体層とが積層されて積層体が構成され、前記弾性体層が太陽電池を設置すべき対象シート状体に貼り付けられることで、前記積層体が前記対象シート状体に取り付けられていることを特徴とする太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項2】
太陽電池モジュールと弾性体層とが、および、弾性体層と対象シート状体とが、接着または粘着により積層一体化されていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項3】
シート状の太陽電池モジュールと弾性体層とベースシートとがこの順で積層一体化されることでモジュールユニットが構成され、前記ベースシートが太陽電池を設置すべき対象シート状体に取り付けられることで、前記モジュールユニットが前記対象シート状体に取り付けられていることを特徴とする太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項4】
太陽電池モジュールと弾性体層とが、および、弾性体層とベースシートとが、接着または粘着により積層一体化されていることを特徴とする請求項3記載の太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項5】
太陽電池を設置すべき対象シート状体が面方向に展張または収縮したときに、弾性体層を構成する弾性体が前記展張または収縮に追従して変形するように構成されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項6】
弾性体層を構成する弾性体が、独立気泡にて構成された発泡スポンジゴムであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の太陽電池モジュールの設置構造。
【請求項7】
シート状の太陽電池モジュールと、弾性体層と、粘着剤層または接着剤層と、前記粘着剤層または接着剤層に対する剥離性を有する剥離シートとがこの順に積層されたものであることを特徴とする太陽電池モジュールユニット。
【請求項8】
シート状の太陽電池モジュールと弾性体層とベースシートとがこの順で積層一体化されたものであることを特徴とする太陽電池モジュールユニット。
【請求項9】
弾性体層を構成する弾性体が、独立気泡にて構成された発泡スポンジゴムであることを特徴とする請求項7または8記載の太陽電池モジュールユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−33681(P2012−33681A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171521(P2010−171521)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000104412)カンボウプラス株式会社 (15)
【出願人】(000002923)ダイワボウホールディングス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000104412)カンボウプラス株式会社 (15)
【出願人】(000002923)ダイワボウホールディングス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]