説明

太陽電池付電子時計

【課題】 文字板外周部に、この文字板表面に対してほぼ垂直にソーラーセルを配置した太陽電池付電子時計構造において、太陽電池と回路基板とを接続する接続バネが見えてしまう問題があった。
【解決手段】 時刻表示部を構成する文字板と、時計駆動部と、時計駆動部を動作させるための電力を発生する太陽電池であって、受光面に出力端子を有するとともに、受光面が時刻表示部の中心側を向きながら文字板の外周に環状に配置された太陽電池と、太陽電池の電力を時計駆動部の回路基板に導通させるための接続部材とを有する太陽電池付電子時計において、接続部材と太陽電池との接続位置が、時刻表示部の6時位置を挟んで3時位置から9時位置の範囲内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池付電子時計の構造に関し、とくに太陽電池を時計文字板の表面に対してほぼ垂直に配置する太陽電池付電子時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池を時計ムーブメントに配置する電子時計は、電池交換の必要がないことから、広く一般的に普及してきており、通常の秒針分針時針を有する3針タイプの時計だけでなく、クロノグラフ機能や標準電波を受信する自動時刻修正機能付などの付加機能を搭載した製品が実用化されている。
太陽電池を搭載する電子時計は、文字板を光半透過性の材料で形成し、この文字板と時計駆動部の間に、板状の太陽電池を配設する構造が一般的である。
上記の配置構造を採用した場合、文字板を光半透過性の材料で形成する必要があることから、文字板のデザインに制約が生じる問題点がある。
このような文字板のデザイン制約を解消するために、例えば特許文献1に記載されたように、太陽電池を文字板の下ではなく、文字板の外周に環状に配置した太陽電池付電子時計が提案されている。この時計では太陽電池の受光面(発電面)が時刻表示部の中心側を向くように文字板の外周に配置されているので、文字板はデザイン面での制約を受けることがなくなった。
また特許文献1の時計では、太陽電池の受光面が文字板面に対してほぼ垂直に配置されるので、光を受ける面では従来より多少不利になる。それを補うために特許文献1の時計では、文字板外縁と太陽電池の間に配置された導光部材によって太陽電池に対して効率良く光を導くようにしている。さらに、導光部材によって太陽電池の発電面が有する暗褐色を見え難くして使用者に太陽電池の存在を意識させないようにもしている。
さらに特許文献1では、太陽電池の発電面が時刻表示部の中心側を向いて、かつ文字板の面に対してほぼ垂直に配置されているので、発電面にある出力電極と時計駆動部の回路基板とを、弾性を有する接続バネで導通するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−130974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように太陽電池と回路基板とを導通する接続バネがあると、接続バネの一部が視認される問題があった。特許文献1の場合、同文献の図5に示したように、接続バネの一部は時刻表示領域の2時位置にあるので、一般的な6時位置と12時位置に装着用のバンドが取り付けられている時計では、使用者が時刻を確認するときに、接続バネの金色が視野に入ってくることになる。接続バネの位置は文字板の表面よりも下側なので、一見すると見えないと思われるが、実際には導光部材を通して文字板の下側まで導かれた光の一部が接続バネまで到達し、それが接続バネ表面で反射して導光部材にもどり、それが視認されていると考えられる。
文字板外縁と接続バネを結ぶ直線上に文字板スペーサー等で遮蔽を設けることで接続バネの金色を直接確認することは出来なくなるが、それでもソーラーセル、文字板スペーサーの暗褐色の中では、接続バネの金色の光沢は反射により僅かながら外観に漏れ出して視認される場合がある。
また同様な問題として太陽電池の端部も視野に入る問題があった。特許文献1の時計で使用する太陽電池は帯の形状をしたフィルム状の太陽電池である。そして文字板外縁に環状
に湾曲させて配置しているが、通常ソーラーセルの長さは、文字板外縁の長さよりも少し長くなるように設定され、両端部は重ねて配置するようにしている。その重なり部分が視認されてしまうという問題もあった。
本発明は上記の太陽電池付電子時計において、文字板の外縁部に配置したソーラーセルと時計駆動部の回路基板とを導通する接続バネの存在を視認し難くさせるための時計構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明における太陽電池付電子時計は下記記載の手段を採用する。
時刻表示部を構成する文字板と、時計駆動部と、前記時計駆動部を動作させるための電力を発生する太陽電池であって、受光面に出力端子を有するとともに、前記受光面が前記時刻表示部の中心側を向きながら前記文字板の外周に環状に配置された太陽電池と、前記太陽電池の電力を前記時計駆動部の回路基板に導通させるための接続部材とを有する太陽電池付電子時計において、前記接続部材と前記太陽電池との接続位置は、時計使用者が時刻を視認したときに死角になる位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、時計駆動部の回路基板と太陽電池とを導通させるための導通部材の接続位置が、時計使用者が時刻を視認したときに死角になる位置に配置されているので、時刻を確認する場合に接続部材が視認され難くなる。
本発明を限定するものではないが、例えば一般的な時計の時刻表示部の構造では、6時位置を挟んで3時から9時位置の範囲内に接続バネを配置した場合、6時位置が使用者の手前になり使用者の視界からはケース内縁により接続バネから反射される光は遮られるので、接続部材から反射される不快な光は、使用者に認識され難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態における太陽電池付電子時計を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態における太陽電池付電子時計の6時位置における断面図である。
【図3】本発明の実施形態における太陽電池付電子時計に使用するソーラーセルを示す平面図である。
【図4】(a)は腕時計使用者が6時側を手前にして時刻を視認したときの表示状態を示す説明図であり、(b)は(a)の状態で時刻を視認したときに四角となる領域を斜線で示した説明図である。
【図5】本発明の実施形態における太陽電池付電子時計を腕に装着した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態における太陽電池付電子時計の構成を詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態における太陽電池付電子時計を示す断面図であり、図2は6時位置における断面図である。図3は、本発明の実施形態におけるソーラーセルの平面図である。図4は本発明の実施形態における太陽電池付電子時計の外観を示す平面図である。図5は本発明の実施形態における太陽電池付電子時計を使用した状態を示す説明図である。
図1において、10は時計駆動部、3は時計駆動部10に搭載された文字板である。2は太陽電池、4は太陽光などの光を太陽電池2へ導くとともに、太陽電池2を見えにくくするためのプリズムである。5はケース、6は時刻表示部を覆うガラスである。1は太陽電池2とプリズム4を保持するとともに、時計駆動部10と文字板3をケース5に適合させ
るために介在している支持部材である。図1に示すように、支持部材1は時計駆動部10の外周側に配置されて時計駆動部10と文字板3を保持する。そして時計駆動部10を保持した支持部材1はケース5内に収納される。
時計駆動部10は、図示しないが、時計駆動部10の基台となって、図示しない輪列機構や回路基板などの構成要素を保持する地板と輪列受との間に、指針を駆動する輪列を回転可能に軸支している。
さらに地板には、時間基準源となる水晶振動子や半導体集積回路を保持した回路基板などが配置されている。本実施例の太陽電池付時計は、回路基板に実装した半導体集積回路装置によって水晶振動子の基準信号を分周して、ステップモータのロータを所定周期、たとえば1秒周期で回転している。ロータの回転は、減速輪列である四番車および三番車を介して中心車に伝達し、中心車は1時間で1回転する。中心車の回転は、減速輪列である日の裏車を介して筒車に伝達し、筒車は12時間で1回転する。
図1に示す支持部材1は樹脂材料からなり、その外周部に凸部1fと、この凸部1fと少し間隔をあけてさらに外周部側にソーラーセルガイド1bを設けてある。
凸部1fは、文字板3の端面3aが対向する内側壁1cと、ソーラーセルガイド1bと所定の間隙を介して対向する外側壁1gと、内側壁1cと外側壁1gとの間の頂部1eを有する。さらに支持部材1には、文字板3を載置して、文字板裏面3bと接する文字板受面1dを設けてある。
ソーラーセルガイド1bの内周壁面と外側壁1gとの間の間隙は、ソーラーセル2を収納保持するソーラーセル収納部1aになっている。ソーラーセル収納部1aに収納保持されるソーラーセル2は、凸部1fの外側壁1gによって斜めに傾くことを抑えられ、文字板3の表面に対して発電面(符号つけること)をほぼ垂直に保持可能となっている。
ソーラーセル2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエーテルニトリル(PEN)に代表される樹脂基板上に、導電型が異なるアモルファスシリコン層を積層して構成している。樹脂材料からなる基板は可撓性を有しており、発電の特性を損なうことなく、ソーラーセル2はある程度自由に丸めたり曲げたりすることができるようになっている。
ソーラーセル2の受光面2a側には、透光性材料からなる環状のプリズム4が配設されている。プリズム4は、ソーラーセル2をガラス6側から視認したとき、ソーラーセル2を見にくくする役割と、ガラス6を透過してプリズム4に入射する光を屈折させてソーラーセル2の受光面に効率よく光照射させる役割とをもつ。
プリズム4は、プリズム面を具備し、6つの面をもつ断面形状を有する。
プリズム4は、支持部材1の頂部1eとケース5の鍔部5aとの間に挟持されて固定されている。
このプリズム4は、光を透過しやすい無色透明のポリカーボネート材で形成する。したがって、ガラス6を透過して文字板3側から入射する光は、プリズム4を透過してソーラーセル2の発電面へと入射し、ソーラーセル2に光起電力が発生する。
ケース5のガラス6固定面と反対側には、ケース5内部を密閉する裏蓋11が固定されている。
ソーラーセル2は、前述のように、樹脂材料からなる基板上に形成していることから、支持部材1のソーラーセル収納部1aに組み込むと、樹脂基板の弾性力によって広がろうとする力が働き、ソーラーセルガイド1bの内壁壁面に張り付くように保持される。
また、ソーラーセル2の長さは、文字板3の外周長さより長くなるように構成されている。このため、ソーラーセル2をソーラーセル収納部1aに組み込むと、図2に示すように、6時位置のソーラーセルガイド1bと凸部1f間で、ソーラーセル2の長さ方向の両端部が重なって配置されている。
このように、ソーラーセル2の長さ方向の端部が重なるようにソーラーセル収納部1aに収納保持することによって、ソーラーセル2を支持部材1に組み込んだ後におけるハンドリングや組立て工程において、ソーラーセル2がソーラーセルガイド1bから外れることはなく、作業性が良好となる効果を得ることができる。
この効果を発揮させるために、ソーラーセルガイド1bの内側壁面と外側壁1gとの間の間隙寸法、すなわちソーラーセル収納部1aの幅寸法は、ソーラーセル2の厚さ寸法の2倍より若干大きくなるように設定している。
ソーラーセル2と時計駆動部10の回路基板との接続構造は次にようになっている。図2に示すように、ソーラーセル2はソーラーセル受光部2aとソーラーセル電極部2bとからなり、支持部材1の文字板の6時表示位置に配置するソーラーセルガイド1h部分に、ソーラーセル電極部2bが形成されている一端を挿入して固定する。
本発明の一番の特徴は、ソーラーセル2と接続バネ7とのとの接続位置が、時刻表示部の6時位置を挟んで3時位置から9時位置の範囲内に配置されていることである。本実施例では、6時位置に接続バネ7とソーラーセル2との接続位置を配置し、接続バネ7は時計駆動部10の回路基板10a面に配置して固定されている。つまり、6時位置において、ソーラーセル出力端子部2bが形成されたソーラーセル2の一方の端部は、支持部材1のソーラーセル接続端子収納部1aの底面を貫通させた部分に挿入されて位置決めされており、ソーラーセル受光部2aは支持部材1のソーラーセル収納部1aに沿って1周環状に配置され、他方の端部はソーラーセル接続端子部2bが形成された一方の端部の内周部分で重なるように配置されている。
そして、接続バネ7とソーラーセル接続端子部2bを導通させるために、支持部材1のソーラーセルガイド1bでソーラーセル接続端子部2bが形成された端部を保持している。ソーラーセルガイド1bは図2に示すように、文字板3よりさらに下にある接続バネ7側まで延長した形状になっている。これによりソーラーセル2の背面を保持して、ソーラーセル接続端子部2bから時計駆動部10の回路基板10aに、接続バネ7でソーラーセル2により得られた電気的エネルギーを導通させている。
このように構成した太陽電池付時計を視認したときの状態を図4、図5に示す。図4(a)は腕時計使用者が6時側を手前にして時刻を視認したときの表示状態を示す説明図であり、図4(b)は図4(a)の状態で時刻を視認したときに死角となる領域を斜線で示した説明図である。図5は、本発明の実施形態における太陽電池付電子時計を腕に装着した状態を示す説明図である。
通常時刻表示部を視認する場合は、図5に示したように、6時側が手前になる。したがって、図4(a)に示すように、12時を挟んで3時から9時の領域13は、その内側内面が使用者からも視認できる状態になるが、使用者の手間になる6時側は死角となって時刻表示領域の縁の部分が見え難くなる。つまり図4(b)に斜線部で示したように、文字板の6時位置斜め上方より文字板3を見た場合には、ケース内縁5aにより遮られる領域12が発生する。
このケース内縁5aにより遮られる領域12は、6時位置を挟んで3時位置から9時位置の範囲内になるので、接続バネ7とソーラーセル2の接続端子2bとの接続位置をこの領域内に配置することにより、時計使用者から接続バネ7で反射される光を視認されることがなくなる。同様にソーラーセル2の両端が重なる位置もこの領域内に配置することにより、視認されることがなくなる。
なお本実施例では、腕時計を実施例として説明したが、本発明は腕時計に限定されるものではない。例えば、壁掛け時計などは目線よりもやや高い壁面に配置されることが多いので、腕時計と同様に効果がある。
また時計のデザインによっては、必ずしも時計使用者の死角になる範囲が6時位置を挟んで3時位置から9時位置の範囲内にならないデザインになる場合もあるが、その場合は適宜、時計使用者の死角になる範囲に接続バネ7とソーラーセル2の接続端子2bとの接続位置を配置すればよい。本発明の特徴を逸脱しない範囲での改良は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0009】
1 支持部材
1a ソーラーセル収納部
1b ソーラーセルガイド
1f 凸部
2 ソーラーセル
3 文字板
4 プリズム
5 ケース
6 ガラス
8 文字板装飾部
10 ムーブメント主要部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻表示部を構成する文字板と、時計駆動部と、前記時計駆動部を動作させるための電力を発生する太陽電池であって、受光面に出力端子を有するとともに、前記受光面が前記時刻表示部の中心側を向きながら前記文字板の外周に環状に配置された太陽電池と、前記太陽電池の電力を前記時計駆動部の回路基板に導通させるための接続部材とを有する太陽電池付電子時計において、前記接続部材と前記太陽電池との接続位置は、時計使用者が時刻を視認したときに死角になる位置に配置されていることを特徴とする太陽電池付電子時計。
【請求項2】
前記時計使用者が時刻を視認したときに死角になる位置が、前記時刻表示部の6時位置を挟んで3時位置から9時位置の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池付電子時計。
【請求項3】
前記太陽電池は、矩形で帯状のフィルム状太陽電池であり、前記太陽電池の長さは、前記文字板の外縁の長さよりも長く、両端部は重ねて配置されており、重なった前記両端部が前記範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池付電子時計。
【請求項4】
前記接続部材が弾性を有するバネ部材である請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の太陽電池付電子時計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−29469(P2013−29469A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167138(P2011−167138)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】