説明

安定化された水性除草剤組成物

【課題】 N−ホスホノメチルグリシンのナトリウム塩および2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩を除草効果を示すことができる配合割合で含む水性除草剤組成物であって、低温でも結晶析出を起こさず、製造時および保存時安定性に優れた組成物を提供する。
【解決手段】 第1成分として、N−ホスホノメチルグリシンのナトリウム塩;第2成分として、2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩;および有機塩基を含み、組成物のpHが6.5〜7.5であることを特徴とする、水性除草剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種広葉雑草、イネ科雑草、ツユクサ科雑草、およびカヤツリグサ科雑草、なかでもヨシ類、ススキ類、オギ類若しくはササ類などを防除することを目的とする、新規であり、保存安定性に優れた水性除草剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、農耕地または非農耕地用として数多くの除草剤が使用されているが、防除の対象となる雑草は、種類も多く発生も長期にわたるため、より除草効果が高く、幅広い殺草スペクトルを持った除草剤の開発が望まれている。河川敷き、水路、道路の端、放任地などの非農耕地や水辺などでは、特にヨシ、ススキ、ササやハマスゲなどの多年生の強害雑草が繁茂し、これらの雑草管理として、主に機械的な防除が行われている。しかしながら、これらの機械的な防除は、重労働であり、また、常に負傷する危険を伴うため、これらの強害雑草の発生や成長を長期間抑制することのできる薬剤が求められている。
【0003】
これらの雑草のなかでもヨシ、ハマスゲ、ススキ、ササ、ススキなどの雑草を防除するために、式:
【化3】

【0004】
で示される2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸またはそのナトリウム塩(テトラピオン)が、非農耕地や林地におけるススキやササの除草剤として用いられ、出芽前から出芽初期に処理すると長期間にわたってその発生と成長を抑制することができることが知られている(非特許文献1)。しかし、その投下薬量はかなり多く、10アールあたりの必要な有効成分が1kgであることもあり、環境に対する配慮および労働力の削減などの観点から、他剤との配合により薬量を下げることが望まれている。
【0005】
一方、式:
【化4】

【0006】
で示されるグリホサート(N−ホスホノメチルグリシン)もまた、非農耕地または耕起前もしくは作物植付け前の農耕地において、各種一年生雑草および多年生雑草の除草に使用されている(非特許文献2)。
【0007】
特許文献1には、グリホサートまたはその塩と2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸またはその塩を有効成分として含有する除草剤組成物が、農耕地および非農耕地、とりわけ非農耕地に発生する広葉雑草、イネ科雑草、ツユクサ科雑草、カヤツリグサ科雑草のような広範囲の雑草を防除し、特に、ヨシ類、ススキ類、オギ類またはササ類を防除し、しかもその除草効果はそれら有効成分を単独で用いる場合に比較して相乗的に増大することが記載されている。
【0008】
一方、非特許文献3には、グリホサートのイソプロピルアミン塩とテトラピオンの組成物が、特定のイネ科雑草であるCoolatai grassに対し、相乗的除草作用を示さず、相加的除草作用を示すことが記載されている。しかしながら、当該文献には、Coolatai grass以外の雑草に対する除草作用の記述はなく、また、イソプロピルアミン塩以外のグリホサート又はその塩を含有する組成物に関する記述もない。
【0009】
これらの2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸およびグリホサートは、塩の形ではない場合は長期保存安定性の点で劣り、またグリホサートについては塩ではない場合には必ずしも良好な効果を発揮することができないといった理由のため、これらの成分を併用して除草剤組成物とする場合には、除草活性を満足しうる十分な濃度の両成分を塩の形で配合した水性製剤が、物理的化学的にも安定であり、調製面、保存安定性面、および生物効果面においても好適であると考えられた。
【0010】
しかし、グリホサートは、3塩基酸であって、pHによっては5種類の解離形態をとり、一、二または三塩基塩を形成するため、グリホサートを、同様に水解離性化合物である2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸と一緒に配合した水性混合製剤とする場合には、両成分が共に水に溶解し、かつ除草活性を示すことができるように、適当な塩と製剤のpHを選択する必要があった。しかし、2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩と、グリホサートのイソプロピルアミンまたはアンモニウム塩とを配合すると、イソプロピルアミンまたはアンモニアが遊離してしまう。またグリホサートのナトリウム塩と、2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩とを配合すると、pHによってはグリホサートナトリウム塩の結晶が析出してしまうといった問題があった。
【特許文献1】特開2000−247817号公報
【非特許文献1】ペスティサイド・マニュアル(The Pesticide Manual)第11版第585〜586ページ(1997年)
【非特許文献2】ペスティサイド・マニュアル(The Pesticide Manual)第11版第646〜649ページ(1997年)
【非特許文献3】オーストラリアン・ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・アグリカルチャー(Australian Journal of Experimental Agriculture)第34巻第479〜485頁(1994年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、上記の両成分の塩を除草効果を示すことができる配合割合で含む水性除草剤組成物であって、低温でも結晶析出を起こさず、製造時および保存時安定性に優れた組成物の開発が求められていた。本発明者らは、このような除草剤組成物を開発するために鋭意研究をおこなった結果、グリホサートナトリウム塩と2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸ナトリウム塩を配合した水性除草剤組成物に特定の有機塩基を添加することによりその組成物のpHを6.5〜7.5に調製することによって、製造時および保存時安定性にすぐれた組成物が得られることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1成分として、式:
【0013】
【化5】


で表されるN−ホスホノメチルグリシンのナトリウム塩;
【0014】
第2成分として、式:
【化6】

【0015】
で表される2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩;および
有機塩基;
を含み、組成物のpHが6.5〜7.5であることを特徴とする、水性除草剤組成物に関する。
【0016】
また本発明は、上記の水性除草剤組成物の製造方法であって、N−ホスホノメチルグリシンおよび2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸を含む水性混合物を調製し、水酸化ナトリウムを添加することにより両成分をすべてナトリウム塩とし、ついで有機塩基を添加することにより、得られる水性除草剤組成物のpHを6.5〜7.5に調整することを特徴とする方法に関する。
【0017】
また本発明は、上記の水性除草剤組成物の製造方法であって、N−ホスホノメチルグリシンのナトリウム塩の水性溶液および2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩の水性溶液を混合し、ついで有機塩基を添加することにより、得られる水性除草剤組成物のpHを6.5〜7.5に調整することを特徴とする方法に関する。
【0018】
更に本発明は、ヨシ類、ススキ類、オギ類またはササ類を除草する方法であって、上記の水性除草剤組成物を散布することを特徴とする方法にも関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水性除草剤組成物は、N−ホスホノメチルグリシンのナトリウム塩および2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩を、除草効果を示すことができる配合割合で含むと共に、低温でも結晶析出を起こさず、製造時および保存時安定性に優れている。具体的には、本発明の水性除草剤組成物は、製造時においては結晶の析出を示さず、また製造後に本組成物をボトルに小分けした後でも−15〜50℃の範囲では結晶の析出を示さず、更に二層分離や濁りを生じない。また−15℃のような極寒条件下で結晶析出や凍結がおこっても、一般的な室温(すなわち該水性除草剤組成物が使用されうる時期の気温)に戻すと、これらの現象は、速やかに消失する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の水性除草剤組成物は、第1成分として、N−ホスホノメチルグリシンのナトリウム塩;第2成分として、2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩;および有機塩基を含み、本組成物のpHは、約6.5〜7.5、好ましくは約6.5〜7.0である。
【0021】
第1成分および第2成分は、必要に応じて任意の割合で配合することができる。第1成分の配合量は、好ましくは組成物100質量部中約5〜20質量部、特に好ましくは組成物100質量部中約10〜20質量部である。また第2成分の配合量は、好ましくは組成物100質量部中約10〜25質量部、特に好ましくは組成物100質量部中約15〜25質量部である。
【0022】
本発明の水性除草剤組成物に配合する有機塩基は、本組成物のpHを調整することにより製造時安定性および保存時安定性を確保するために添加するものである。このような有機塩基としては、分子構造内に窒素原子を有し、自然条件下において揮発性のない、あるいは100℃以上の高沸点を有するものであれば特に限定されず、任意の有機塩基を用いることができる。なかでも、ピペラジン、ピペリジン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、またはトリエタノールアミンなどといったものを挙げられ、特にモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、またはトリエタノールアミンから選ばれる有機塩基を好ましく用いることができる。
【0023】
有機塩基の配合量は、最終的に得られる除草剤組成物のpHが約6.5〜7.5、好ましくは約6.5〜7.0となる範囲で決定することができる。但し、本発明に関する水性除草剤組成物中の有効成分のナトリウム塩が上記の追加塩基によって完全置換される量が添加されるものであってはならない。
【0024】
本発明の水性除草剤組成物には、上記の成分のほか、必要に応じて除草効果を最大限に発揮させるために、界面活性剤を配合することができる。
【0025】
このような界面活性剤としては、農薬製剤の湿展のために通常用いられる界面活性剤であれば任意のものを用いることができ、一般的なアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、または両性界面活性剤の各種界面活性剤を用いることができる。アニオン性界面活性剤としては、アルキルリン酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルアリールリン酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキルフェノールリン酸塩、アルキルフェノールリン酸エステル塩、アルキルフェノール硫酸塩、アルキルフェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール硫酸エステル塩、スチリルフェノールリン酸塩、スチリルフェノールリン酸エステル塩、スチリルフェノール硫酸塩、スチリルフェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノールリン酸塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノールリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノール硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノール硫酸エステル塩、ジスチリルフェノールリン酸塩、ジスチリルフェノールリン酸エステル塩、ジスチリルフェノール硫酸塩、ジスチリルフェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノールリン酸塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノールリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール硫酸塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール硫酸エステル塩、トリスチリルフェノールリン酸塩、トリスチリルフェノールリン酸エステル塩、トリスチリルフェノール硫酸塩、トリスチリルフェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノールリン酸塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノールリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール硫酸塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール硫酸エステル塩、アルキルサクシネートスルホン酸塩、ジアルキルサクシネートスルホン酸塩またはポリオキシアルキレンジアルキルサクシネートスルホン酸塩などを用いることができる。カチオン性界面活性剤としては、脂肪族第三級アミンまたはその塩、脂肪族第三級アミン脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物またはその塩、脂肪族第四級アミン塩などを用いることができる。ノニオン性界面活性剤としては、脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレンオキシ脂肪酸エステル、ソルビタン系界面活性剤またはそのアルキレンオキサイド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリサッカライド系界面活性剤、シュクログリセライド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノールエーテルなどを用いることができる。また、両性界面活性剤としては、アルキルジメチルベタイン、アルキルアミノプロピオン酸塩などを用いることができる。これらの界面活性剤の配合量は、その種類に応じて適宜決定することができる。
【0026】
本発明の水性除草剤組成物には、上記の成分に加えて、保存安定性を向上させる安定化剤、助剤などを更に配合することができる。このような安定化剤としては、ピペラジン、ピペリジン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、またはトリエタノールアミンなどを用いることができる。その量は、安定化剤の種類に応じて適宜決定することができる。
【0027】
本発明の水性除草剤組成物には、更に他の除草剤または殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺菌剤若しくは植物生長調節剤などを配合することもできる。
本発明の水性除草剤組成物は、上記の成分を水性溶媒に含むものである。このような水性溶媒としては、水または水混和性の極性溶媒を用いることができる。水混和性の極性溶媒としては、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、およびこれらの混合物を用いることができる。このような水混和性の極性溶媒としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、3−メチル−3−メトキシブタノールのような1価のアルコール類;メチルグリコール、メチルジグリコール、メチルトリグリコール、メチルポリグリコール、イソプロピルグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、イソブチルグリコール、イソブチルジグリコール、ヘキシルグリコール、ヘキシルジクリコール、2−エチルヘキシルグリコール、2−エチルヘキシルジグリコール、アリルグリコール、フェニルグリコール、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、メチルプロピレングリコール、メチルプロピレンジグリコール、メチルプロピレントリグリコール、プロピルプロピレングリコール、プロピルプロピレンジグリコール、ブチルプロピレングリコール、ブチルプロピレンジグリコール、フェニルプロピレングリコール、メチルプロピレングリコールアセテート、ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、ジエチルジグリコール、ジブチルジグリコール、ジメチルプロピレンジグリコールなどのグリコールエーテル類を挙げることができる。ただし、水のみの使用が好ましい。
【0028】
本発明の水性除草剤組成物は、N−ホスホノメチルグリシンおよび2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸を含む水性混合物を調製し、水酸化ナトリウムを添加することにより両成分をすべてナトリウム塩とし、ついで有機塩基を添加することによって、得られる水性除草剤組成物のpHを約6.5〜7.5に調整することによって調製することができる。両成分をすべてナトリウム塩とする量の水酸化ナトリウムとは、成分1モル当たり約1.1モル程度の量の水酸化ナトリウムである。具体的には、所定量の各成分に適量の水などの溶剤を加え、スラリー状とした後に、所定量の水酸化ナトリウムを加えてナトリウム塩を形成させ、必要であれば界面活性剤、助剤などを加え、ついで適量の有機塩基を加え、更に適量の溶剤を加えることによって、pHを約6.5〜7.5に調整して、所定の量とする。
【0029】
あるいは、本発明の水性除草剤組成物は、N−ホスホノメチルグリシンのナトリウム塩の水性溶液および2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩の水性溶液を混合し、ついで有機塩基を添加することにより、得られる水性除草剤組成物のpHを約6.5〜7.5に調整することによっても調製することもできる。
【0030】
あるいは、一方の成分のみ遊離酸を用いて水酸化ナトリウムによりナトリウム塩を形成させた後に、もう一方の成分のナトリウム塩を添加してもよい。
【0031】
本製造方法を用いて製造された本発明の水性除草剤組成物は、低温環境下で製造した場合であっても、製造時に、調製タンク、循環ポンプ、ろ過装置または小分け設備において、有効成分の結晶の析出を示すことがなく、保存安定性にも優れている。
【0032】
本発明の水性除草剤組成物は、例えば、休耕田、水田の畦畔、果樹園、牧草地、森林または非農耕地などにおいて、そのまままたは水などで希釈して用いることができる。
【0033】
本発明の水性除草剤組成物は、例えば、雑草の出芽前または出芽後に、雑草またはその周辺に散布処理することができる。
【0034】
本発明の水性除草剤組成物は、各種雑草の防除に用いることができる。例えば、ソバカズラ、サナエタデ、ギシギシ、スベリヒユ、ハコベ、シロザ、アオゲイトウ、ダイコン、ノハラガラシ、ナズナ、タネツケバナ、アメリカツノクサネム、エビスグサ、イチビ、アメリカキンゴジカ、フィールドパンジー、ヤエムグラ、アメリカアサガオ、マルバアサガオ、セイヨウヒルガオ、ヒメオドリコソウ、ホトケノザ、シロバナチョウセンアサガオ、イヌホウズキ、オオイヌノフグリ、オナモミ、オニノゲシ、ヒマワリ、イヌカミツレ、コーンマリーゴールド、ヨモギ、オオアレチノギク、セイタカアワダチソウのような広葉雑草;カモジグサ、ヒエ、イヌビエ、エノコログサ、メヒシバ、スズメノカタビラ、ノスズメノテッポウ、エンバク、カラスムギ、セイバンモロコシ、シバムギ、ウマノチャヒキ、ギョウギシバ、ススキ類、オギ類、ササ類、チガヤ、ヨシ類のようなイネ科雑草;ツユクサのようなツユクサ科雑草;およびコゴメガヤツリ、ハマスゲのようなカヤツリグサ科雑草などの防除に用いることができる。本発明の水性除草剤組成物は、特にイネ科雑草、なかでもヨシ類、ススキ、オギおよびササ類に対して顕著な除草効果を示す。
本発明の水性除草剤組成物の施用量は、有効成分の混合比、製剤形態、対象雑草の種類、気象条件などにより異なるが、通常、1ヘクタール当たりの総有効成分量が100g〜10kgであり、好適には、200g〜8kgである。施用するに際しては、通常、その所定量を1ヘクタール当たり100〜1000リットルの水で希釈して施用する。希釈する水には必要により展着剤などの補助剤を添加してもよく、補助剤としては、前記の界面活性剤の他に、ポリオキシエチレン樹脂酸およびそのエステル、リグニンスルホン酸塩、アビエチン酸塩、ジナフチルメタンジスルホン酸塩、パラフィン、ペトロレウムオイルなどを用いることができる。
次に、実施例および試験例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【実施例】
【0035】
実施例1
外気温10〜15℃条件下、10Lステンレス製バット内において、スリーワンモーターによる攪拌条件下のもと、水31.48質量部に対し、グリホサート原体(純度95.0%)13.34質量部を添加し、グリホサート原体のスラリーとしたものに、25%液体苛性ソーダ液(呉羽化学工業(株)社製)13.18質量部(グリホサートのモル換算で1に対し、1.1モルに相当する水酸化ナトリウム)を徐々に添加し、グリホサートナトリウム水溶液を得た。このときのグリホサートナトリウム塩水溶液のpHは4.2であった。次いで、フレノック原体(2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩、テトラピオン60.0%水溶液)を35.14質量部添加し、グリホサートナトリウムとテトラピオンの混合溶液を得た。次いで、この混合液に、ニューコールTA420(日本乳化剤(株)製、牛脂アミンエチレンオキサイド20モル付加物)2.0質量部を添加後、モノエタノールアミン((株)日本触媒製、純度99.0%以上)3.8質量部を添加し、最終的に100質量部となるように水を添加した。該組成物は最終的に、ブフナロートにろ紙No.2(アドバンテック社製)、次いでラジオライト#200をプレコートした濾過条件により濾過を行い、グリホサートナトリウム14.31質量部、テトラピオン21.08質量部を含有する澄明な水性除草剤組成物を得た。このときの組成物の試製量は6.0Kgであり、組成物の原液pHは6.80であった。次いで、得られた組成物を500ml容量単層プラボトル10本に各約500mlずつ小分けした。
【0036】
比較例1
実施例1と同様な方法で同外気温条件下、水31.48質量部に対し、グリホサート原体(純度95.0%)7.96質量部を添加し、グリホサート原体のスラリーとしたものに、25%液体苛性ソーダ液(NaOH 25.0%水溶液;呉羽化学工業(株)社製)8.29質量部(グリホサートのモル換算で1に対し、1.1モルに相当する水酸化ナトリウム)を徐々に添加し、グリホサートナトリウム水溶液を得た。この際、中和熱による発熱で、液温が40℃に上昇した。このときのグリホサートナトリウム塩水溶液のpHは4.1であった。次いで、フレノック原体(テトラピオン純度60.0%水溶液)を22.17質量部添加し、グリホサートナトリウムとテトラピオンの混合溶液を得た。該組成物は最終的に、ブフナロートにろ紙No.2(アドバンテック社製)、次いでラジオライト#200をプレコートした濾過条件により濾過を行い、グリホサートナトリウム9.0質量部、テトラピオン13.3質量部を含有する澄明な水性除草剤組成物を得た。このときの組成物の試製量は6.0Kgであり、原液pHは4.10であった。次いで、得られた組成物を、実施例1と同様な方法により同外気温条件下で調製・小分けした。
【0037】
比較例2
モノエタノールアミンを添加しない以外は、実施例1と同様な方法により同外気温条件下で調製・小分けした。最終的に、澄明な水性除草剤組成物を得た。このときの組成物の原液pHは4.25であった。
【0038】
比較例3
モノエタノールアミンの替わりに水酸化ナトリウム(96.0%、和光試薬)4.3質量部を更に添加した以外は、実施例1と同様な方法により同外気温条件下で調製・小分けした。濾過工程時、濾液捕集容器の壁に付着した濾液から結晶析出がおこったが、液を加温させ、攪拌することにより再溶解させた。最終的に、澄明な水性除草剤組成物を得た。このときの組成物の原液pHは7.87であった。
【0039】
比較例4
モノエタノールアミンの替わりに水酸化ナトリウム(96.0%、和光試薬)2.61質量部を更に添加した以外は、実施例1と同様な方法により同外気温条件下で調製・小分けした。濾過工程時、濾液捕集容器の壁に付着した濾液から結晶析出がおこったが、液を加温させ、攪拌することにより再溶解させた。最終的に、澄明な水性除草剤組成物を得た。このときの組成物の原液pHは6.88であった。
【0040】
比較例5
モノエタノールアミンを3.2質量部を更に添加した以外は、実施例1と同様な方法により同外気温条件下で調製・小分けした。このときの組成物の原液pHは6.23であった。
【0041】
試験例1.試製時における結晶析出の有無
実施例、比較例の全試製工程間(濾過操作、小分け操作を含む)において、試製容器内組成物、濾過後の組成物、および小分け後の単層プラボトル内での組成物の結晶析出の確認を目視により行なった。その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
試験例2.冷却および耐寒性試験
実施例、比較例により得られた組成物の小分け品(500ml×10本)をキャップし、ナガノ恒温機にて−5℃および−15℃条件下にて各7日間放置した。その結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
試験例3.結晶析出物の特定
試験1、試験2で発生した結晶析出物をメタノール:水=50:50の溶媒にて洗浄後、濾集し、HPLC分析により結晶の特定を行なった。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】


なお、全実施例、比較例とも40℃×90日による虐待経時試験による両有効成分の分解は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の除草剤組成物は、有効成分であるグリホサートナトリウム塩と2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩が製造時および保存時において結晶析出することなく、保存安定性に優れた水性除草剤組成物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成分として、式:
【化1】


で表されるN−ホスホノメチルグリシンのナトリウム塩;
第2成分として、式:
【化2】


で表される2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩;および
有機塩基;
を含み、組成物のpHが6.5〜7.5であることを特徴とする、水性除草剤組成物。
【請求項2】
第1成分であるN−ホスホノメチルグリシンのナトリウム塩を組成物100質量部中5〜20質量部含有し、第2成分である2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩を組成物100質量部中10〜25質量部含有する、請求項1記載の水性除草剤組成物。
【請求項3】
有機塩基が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、またはトリエタノールアミンから選ばれる、請求項1または2に記載の水性除草剤組成物。
【請求項4】
カチオン、アニオン、ノニオン、または両性界面活性剤を更に含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性除草剤組成物。
【請求項5】
ヨシ類、ススキ類、オギ類またはササ類の除草用である、請求項1〜4のいずれか1項記載の水性除草剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の水性除草剤組成物の製造方法であって、N−ホスホノメチルグリシンおよび2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸を含む水性混合物を調製し、水酸化ナトリウムを添加することにより両成分をすべてナトリウム塩とし、ついで有機塩基を添加することにより、得られる水性除草剤組成物のpHを6.5〜7.5に調整することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項記載の水性除草剤組成物の製造方法であって、N−ホスホノメチルグリシンのナトリウム塩の水性溶液および2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸のナトリウム塩の水性溶液を混合し、ついで有機塩基を添加することにより、得られる水性除草剤組成物のpHを6.5〜7.5に調整することを特徴とする方法。
【請求項8】
ヨシ類、ススキ類、オギ類またはササ類を除草する方法であって、請求項1〜5のいずれか1項記載の水性除草剤組成物を散布することを特徴とする方法。

【公開番号】特開2006−56784(P2006−56784A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237167(P2004−237167)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(303020956)三共アグロ株式会社 (70)
【Fターム(参考)】