説明

安定化された農薬粉剤組成物

【課題】農園芸用殺菌剤であるシメコナゾ−ルの保存安定性に優れた農薬粉剤組成物を提供する。
【解決手段】有効成分であるシメコナゾールに、DLクレー、多価アルコール、樹脂、ブチルヒドロキシトルエン等の特定の増量剤または助剤を配合した農薬粉剤組成物は、シメコナゾールの保存安定性が優れ、かつ、その他物性も良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シメコナゾールを含有する農薬粉剤組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シメコナゾールは化学名が(RS)−2−(4−フルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−3−トリメチルシリルプロパン−2−オールである公知の農園芸用殺菌剤であり、特許文献1に記載されている。シメコナゾールを有効成分として含有する農薬組成物は特に稲もん枯れ病防除剤、大豆の紫斑病防除剤として有用である。
【0003】
農薬はその生物効力を最大限に発揮させるために種々の剤型の検討がなされている。粉剤は、安価であり、散布が比較的容易であるという点で広く普及しており、稲もん枯れ病防除剤及び大豆の紫斑病防除剤としても、粉剤の剤型でよく使用されている。その粉剤の増量剤としてクレーが広く一般的に使用されている。
【0004】
しかしながら、増量剤としてクレーを使用して製造したシメコナゾールを有効成分として含有する粉剤を種々の条件下で保存すると、有効成分であるシメコナゾールが経時的に分解してしまい、商品価値がなくなってしまうという問題が生じた。また、シメコナゾールと稲及び大豆用の殺虫剤であるイソキサチオン(化学名:O,O−diethyl O−(5−phenyl−3−isoxazolyl) phosphorothioate)(非特許文献1)を有効成分として含有し、増量剤としてクレーを使用した粉剤を上記シメコナゾール単独を有効成分として含有する粉剤と同様に種々の条件下で保存すると、有効成分の一つであるシメコナゾールが経時的にさらに加速されて分解した。種々原因を追求したところ、シメコナゾールを含まない、イソキサチオン単剤の粉剤では有効成分は比較的安定であることなどから、シメコナゾールはクレー中では不安定であるということ、及び、シメコナゾールとイソキサチオンはクレー中では主剤安定性面で配合禁忌であるということが示唆された。したがって、シメコナゾールの保存安定性が優れた製剤技術の開発が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2088949号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】The Pesticide Manual 11th Edition p739−740
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らはシメコナゾールの保存安定性に優れた農薬粉剤組成物の開発を目指して、鋭意検討した結果、特定の増量剤又は助剤をシメコナゾールとともに処方中に配合することにより、有効成分であるシメコナゾールの保存安定性が優れ、かつ、その他物性も良好な農薬粉剤組成物を得ることができることを見出した。また、シメコナゾールとイソキサチオンを有効成分として含有する粉剤においても、特定の増量剤及び助剤を配合することで、有効成分の一つであるシメコナゾールの経時安定性が優れ、かつ、その他物性も良好な農薬粉剤組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(A)(1)シメコナゾール及び(2)DLクレー又は多価アルコールを含有することを特徴とする農薬粉剤組成物及びその製造方法に関する。
本発明の農薬粉剤組成物は、好適には、
(B)イソキサチオンを含有する農薬粉剤組成物であり、
(C)DLクレー及び多価アルコールを合わせて含有する農薬粉剤組成物であり、
(D)ブチルヒドロキシトルエンを含有する農薬粉剤組成物であり、
(E)樹脂を含有する農薬粉剤組成物であり、
(F)多価アルコールが、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール及びグリセリンからなる群から選ばれた1種以上の多価アルコールである農薬粉剤組成物であり、
(G)多価アルコールがグリセリンである農薬粉剤組成物であり、
(H)樹脂が石油樹脂である農薬粉剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
特定の増量剤又は助剤をシメコナゾールとともに配合することにより、シメコナゾールの保存安定性が優れた農薬粉剤組成物を見出した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、「DLクレー」は、通常、クレーの20μm以下をアンダーカットしたものであるが、各社により、製品規格は異なる。例えば、啓和炉材株式会社製DLクレーのアンダー部分の製品規格として、10μm以下の粒子量20%以下となっている。実施例に示すように、増量剤としてクレーを使用するかあるいはDLクレーを使用するかにより、シメコナゾールを含有する粉剤の場合、主剤の経時安定性が大きく異なる。DLクレーとして、例えば、啓和炉材株式会社製、フバサミクレー株式会社製、株式会社五島鉱山製、ジークライト株式会社製又は浅田製粉株式会社製があり、好適には、啓和炉材株式会社製のDLクレー(啓和)である。
用いられるDLクレーの含有量は、通常、農薬粉剤組成物中に30〜99質量部であり、好適には、50〜95質量部である。
【0011】
本発明において、「多価アルコール」は炭化水素の複数個の水素を水酸基で置換したアルコール類であり、例えば、アルキレングリコール、PEG200(第一工業株式会社製)等のポリアルキレングリコール又は精製グリセリンD(ライオン株式会社製)等のグリセリンであり、好適にはポリエチレングリコール又はグリセリンであり、より好適にはグリセリンである。
【0012】
用いられる多価アルコールの含有量は、通常、農薬粉剤組成物中に0.01〜20質量部であり、好適には、0.05〜10質量部であり、より好適には、0.1〜5質量部である。
【0013】
本発明において、「ブチルヒドロキシトルエン」は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールであり、例えば、ヨシノックスBHT−P(吉富製薬株式会社)である。
【0014】
用いられるブチルヒドロキシトルエンの含有量は、通常、農薬粉剤組成物中に0.1〜20質量部であり、好適には、1〜10質量部である。
【0015】
本発明において、「樹脂」は複雑な有機酸及びその誘導体からなる物質である。樹脂はもろい無定形の固体または半固体で、水に溶けず、アルコール、エーテルなどによく溶けるという特徴を有している。樹脂はこれらの性質を有しているものであれば、天然樹脂であっても合成樹脂であってもよく、例えば、ロジン等の天然樹脂、芳香族系石油樹脂等の石油樹脂及びこれらの2種以上の混合物であり得、好適には、石油樹脂である。
【0016】
樹脂には、粉末状、粒状又は塊状のもの等があり、本発明においてはこれらのいずれも使用することができ、好適には、粉末状又は粒状のものである。具体的な樹脂の例は、トーホーハイレジン#90(東邦化学株式会社製)、YSレジンA800(ヤスハラケミカル株式会社製)及び三菱クマロン樹脂(三菱化成株式会社製)である。
【0017】
用いられる樹脂の含有量は、通常、農薬粉剤組成物中に0.1〜20質量部であり、好適には、0.5〜5質量部である。
【0018】
本発明において、シメコナゾールの含有量は、通常、農薬粉剤組成物中に0.05〜10質量部であり、好適には、0.1〜5質量部である。
【0019】
本発明において、イソキサチオンの含有量は、通常、農薬粉剤組成物中に0.1〜10質量部であり、好適には、0.5〜5質量部である。
【0020】
本発明において、シメコナゾールとイソキサチオンの配合比は、例えば、0.4:2.0である。
【0021】
本発明において、(1)シメコナゾール及び(2)DLクレー又は多価アルコールを含有することを特徴とする農薬粉剤組成物の具体例としては、シメコナゾール及びDLクレー;シメコナゾール及び精製グリセリンD;シメコナゾール及びPEG200;シメコナゾール、イソキサチオン、DLクレー及び精製グリセリンD;シメコナゾール、イソキサチオン、DLクレー、精製グリセリンD及びヨシノックスBHT−P;シメコナゾール、イソキサチオン、DLクレー、精製グリセリンD、ヨシノックスBHT−P及びトーホーハイレジン#90;並びにシメコナゾール、イソキサチオン、DLクレー、精製グリセリンD、ヨシノックスBHT−P及びYSレジンA800が挙げられ、好適にはシメコナゾール、イソキサチオン、DLクレー、精製グリセリンD及びヨシノックスBHT−Pである。
【0022】
本発明の農薬粉剤組成物には種々の目的でその他の助剤を配合することができる。その他の助剤は吸油剤、着色剤又は増量剤などである。
【0023】
吸油剤は、通常オイル状、低融点性の有効成分又は助剤を含む場合に用いられる。
【0024】
吸油剤は、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、ホワイトカーボン、発泡パーライト又は珪藻土であり、具体的には、カープレックス#80D、カープレックス#1120,カープレックス22S(塩野義製薬株式会社)、トクシールGU−N,トクシールN,トクシールP(株式会社トクヤマ)ニップシールNS,ニップシールNS−K(日本シリカ工業株式会社)ロカヘルプ439、ロカヘルプB−409、B−439(三井金属鉱業株式会社)、宇部パーライト(宇部興産株式会社)、トプコ#31、#34、#54(東興パーライト株式会社)、信濃パーライト株式会社、フヨーパーライト株式会社、東邦パーライト株式会社日本セメント株式会社、日本パーライト株式会社、ダイカライトオリエント株式会社ラヂオライト#200、イソライトCP−F,イソライトCP(イソライト工業株式会社)、ラヂオライトスペシャルフロー(昭和化学工業株式会社)、セライト350,セライト500(東京興業貿易株式会社)、シリカ300S,シリカ300SA(ユニオン化成株式会社)、ゼムライト3−Y(林化成株式会社),ケイソウ土S(日本タルク株式会社)、セライト350,セライト500(東京興業貿易商会株式会社)又はシリカ100F(中央シリカ株式会社)などである。
【0025】
用いられる吸油剤の含有量は、通常、オイル状又は低融点性の有効成分又は助剤1に対して、0.1〜10であり、好適には、1〜5である。
【0026】
着色剤は、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、色素であり、具体的には、セイカファストエロー(大日精化工業)又はクロムイエロー(大日精化工業製)である。
【0027】
用いられる着色剤の含有量は、通常、農薬粉剤組成物中に、0.01〜0.5%であり、好適には、0.05〜0.3%である。
【0028】
増量剤として、DLクレー以外に他の増量剤をさらに配合できる。DLクレー以外の増量剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ベントナイト(豊順ベントナイト株式会社製)、クレー(風ヒ)(啓和炉剤株式会社製)又はカルフィン600(足立石灰工業株式会社製)等の一般的に農薬のキャリアーとして用いられる鉱物質微粉の他に、塩化ビニル、塩素化ポリエチレン若しくは塩素化ポリプロピレン等の樹脂粉末、グルコース、砂糖若しくは乳糖等の糖類、カルボキシメチルセルロース及びその塩類、澱粉及びその誘導体、微結晶セルロース、木粉、米糠、ふすま若しくは籾殻の粉末、コーヒー豆粉末、セルロース粉末、甘草粉末等の有機物、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム若しくは塩化カリウム等の水溶性無機塩類又は尿素である。
【0029】
用いられるDLクレー以外の増量剤の含有量は、通常、農薬粉剤組成物中に、0.1〜40%であり、好適には、1〜10%である。
【0030】
本発明の農薬粉剤組成物は、必要に応じて、シメコナゾール、イソキサチオン以外の有効成分を配合できる。有効成分としてはシメコナゾールと同様、稲用及び大豆用に処理が可能な有効成分が好ましい。例えば、CYAP、MPP、MEP、ダイアジノン、ピリダフェンチオン、クロルピリホスメチル、マラソン、PAP、PMP、プロチホホス、テトラクロルビンホス、ジメチルビンホス、プロパホス、BPMC、DEP、NAC、プロポキスル、XMC、チオジカルブ、シクロプロトリン、エトフェンプロックス、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ、イミダクロプリド、ニテンピラム、ブプロフェジン、クロマフェノジド、テブフェノジド、ベンゾエピン、メタアルデヒド、シラフルオフェン、ピロキロン、プロベナゾール、イプロベンホス、トリシクラゾール、フィプロニル、フルトラニル、フラメトピル(S−658)、メプロニル、MON−240、テクロフタラム又はモンガードを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0031】
本発明において、農薬粉剤組成物の製造方法は、通常、農薬粉剤組成物を製造する方法であれば、特に限定はなく、例えば全量混合後、粉砕する方法である。
【0032】
混合において、各成分を混合する順番に特に限定はなく、例えば、任意のニ種以上の成分を混合し、更に一種若しくはニ種以上の任意の成分を混合することを繰り返してもよく、又は全ての成分を一度に混合してもよい。
【0033】
用いられる粉砕機は、通常、農薬成分を粉砕する際に用いられる粉砕機であれば、特に限定はなく、例えば、アトマイザー(株式会社ダルトン)である。
【0034】
本発明において、農薬粉剤組成物の使用方法は、通常、農薬粉剤組成物の使用方法であれば、特に限定はなく、例えば、ミゼットダスター又はパイプダスター等を用いて散布する方法などである。
【0035】
本発明において、有効成分の保存安定性の他にも優れた物性を見出しており、例えば、粉末度、流動性又は見掛け比重などである。
【0036】
以下に実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
シメコナゾール原体(96.0%)0.521質量部、カルフィン600(足立石灰工業株式会社製)8.00質量部及びDLクレー(啓和)(啓和炉剤株式会社製)91.479質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型(不二パウダル株式会社製のハンマーミル)にて全量粉砕してシメコナゾール0.5%含有する粉剤を得た。
【0038】
[実施例2]
シメコナゾール原体(96.0%)0.521質量部、精製グリセリンD(ライオン株式会社製)3.00質量部、カルフィン600 5.00質量部及びクレー(風ヒ)(啓和炉剤株式会社製)91.479質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール0.5%含有する粉剤を得た。
【0039】
[実施例3]
シメコナゾール原体(96.0%)1.56質量部、PEG200(第一工業株式会社製)1.50質量部、ベントナイト(豊順ベントナイト株式会社製)25.0質量部及びカルフィン600 71.94質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール1.5%含有する粉剤を得た。
【0040】
[実施例4]
シメコナゾール原体(96.0%)0.417質量部、イソキサチオン原体(92.0%)2.17質量部、精製グリセリンD 3.00質量部、カープレックス#80D 6.00質量部、カルフィン600 5.00質量部及びDLクレー(啓和)83.413質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール0.4%及びイソキサチオン2%含有する粉剤を得た。
【0041】
[実施例5]
シメコナゾール原体(96.0%)0.417質量部、イソキサチオン原体(92.0%)2.17質量部、精製グリセリンD 3.00質量部、ヨシノックスBHT−P(吉富製薬株式会社製)5.00質量部、カープレックス#80D 6.00質量部、カルフィン600 5.00質量部及びDLクレー(啓和) 78.413質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール0.4%及びイソキサチオン2%含有する粉剤を得た。
【0042】
[実施例6]
シメコナゾール原体(96.0%)0.417質量部、イソキサチオン原体(92.0%)2.17質量部、精製グリセリンD 3.00質量部、ヨシノックスBHT−P 1.00質量部、トーホーハイレジン#90(東邦化学株式会社製)2.00質量部、カープレックス#80D 6.00質量部、カルフィン600 5.00質量部及びDLクレー(啓和) 80.413質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール0.4%及びイソキサチオン2%含有する粉剤を得た。
【0043】
[実施例7]
シメコナゾール原体(96.0%)0.417質量部、イソキサチオン原体(92.0%)2.17質量部、精製グリセリンD 3.00質量部、ヨシノックスBHT−P 1.00質量部、YSレジンA800(ヤスハラケミカル株式会社製)2.00質量部、カープレックス#80D 6.00質量部、カルフィン600 5.00質量部及びDLクレー(啓和) 80.413質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール0.4%及びイソキサチオン2%含有する粉剤を得た。
【0044】
[実施例8]
シメコナゾール原体(96.0%)0.417質量部、イソキサチオン原体(92.0%)2.17質量部、精製グリセリンD 0.20質量部、ヨシノックスBHT−P 2.50質量部、カープレックス#80D 6.00質量部、カルフィン600 5.00質量部及びDLクレー(啓和) 83.713質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール0.4%及びイソキサチオン2%含有する粉剤を得た。
【0045】
[実施例9]
シメコナゾール原体(96.0%)0.417質量部、イソキサチオン原体(92.0%)2.17質量部、精製グリセリンD 0.50質量部、ヨシノックスBHT−P 2.50質量部、カープレックス#80D 6.00質量部、カルフィン600 5.00質量部及びDLクレー(啓和) 83.413質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール0.4%及びイソキサチオン2%含有する粉剤を得た。
【0046】
[実施例10]
シメコナゾール原体(96.0%)0.417質量部、イソキサチオン原体(92.0%)2.17質量部、精製グリセリンD 1.00質量部、ヨシノックスBHT−P 2.50質量部、カープレックス#80D 6.00質量部、カルフィン600 5.00質量部及びDLクレー(啓和) 82.913質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール0.4%及びイソキサチオン2%含有する粉剤を得た。
【0047】
[実施例11]
シメコナゾール原体(96.0%)0.417質量部、イソキサチオン原体(92.0%)2.17質量部、精製グリセリンD 1.50質量部、ヨシノックスBHT−P 2.50質量部、カープレックス#80D 6.00質量部、カルフィン600 5.00質量部及びDLクレー(啓和) 82.413質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール0.4%及びイソキサチオン2%含有する粉剤を得た。
【0048】
[実施例12]
シメコナゾール原体(96.0%)0.417質量部、イソキサチオン原体(92.0%)2.17質量部、精製グリセリンD 2.00質量部、ヨシノックスBHT−P 2.50質量部、カープレックス#80D 6.00質量部、カルフィン600 5.00質量部及びDLクレー(啓和) 81.913質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール0.4%及びイソキサチオン2%含有する粉剤を得た。
【0049】
[比較例1]
シメコナゾール原体(96.0%)0.521質量部、カルフィン600 8.00質量部及びクレー(風ヒ)(啓和炉剤株式会社製)91.479質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール0.5%含有する粉剤を得た。
【0050】
[比較例2]
シメコナゾール原体(96.0%)1.56質量部、ベントナイト 25.0質量部及びカルフィン600 73.44質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール1.5%含有する粉剤を得た。
【0051】
[比較例3]
シメコナゾール原体(96.0%)0.417質量部、イソキサチオン原体(92.0%)2.17質量部、カープレックス#80D 6.00質量部、カルフィン600 5.00質量部及びクレー(風ヒ) 86.413質量部を混合後、エックサンプルミルKIIW−1型にて全量粉砕してシメコナゾール0.4%及びイソキサチオン2%含有する粉剤を得た。
【0052】
[試験例1]
実施例1〜3及び比較例1〜2で製造した粉剤をポリエスニウム包装に詰め、50℃虐待経時試験(試験粉剤を50℃で14日間放置した)を行ない、シメコナゾールの分解率を測定した。試験結果を表1に示す。
【0053】
【表1】


実施例1と比較例1を比較する。比較例1では、増量剤としてクレーを用いているが、実施例1ではDLクレーを用いている。比較例1に比べ、実施例1ではシメコナゾールの分解が抑えられている。
【0054】
実施例2と比較例1を比較する。実施例2では、比較例1と異なり、増量剤であるクレーを3.00質量部減少させ、代わりに多価アルコールである精製グリセリンDを3.00質量部用いている。比較例1に比べ、実施例2ではシメコナゾールの分解が抑えられている。
【0055】
実施例3と比較例2を比較する。実施例3では、比較例2と異なり、増量剤であるカルフィン600を1.50質量部減少させ、代わりに多価アルコールであるPEG200を1.50質量部用いている。比較例2に比べ、実施例3ではシメコナゾールの分解が抑えられている。
【0056】
シメコナゾールを含有する粉剤(ただしイソキサチオンを含有しない)では、DLクレー及び多価アルコールが存在しないと経時的に激しく分解するが、DLクレー又は多価アルコールを添加することにより、シメコナゾールの分解が抑えられる。
【0057】
[試験例2]
実施例4〜12及び比較例3で製造した粉剤をポリエスニウム包装に詰め、50℃虐待経時試験(試験粉剤を50℃で14日間放置した)を行ない、シメコナゾール及びイソキサチオンの分解率を測定した。試験結果を表2に示す。
【0058】
【表2】


実施例4と比較例3を比較する。比較例3では、増量剤としてクレーを86.413質量部用いているが、実施例4ではDLクレーを83.413質量部及び多価アルコールである精製グリセリンDを3.00質量部用いている。比較例3に比べ、実施例4ではシメコナゾール及びイソキサチオンの分解が抑えられている。
【0059】
実施例5と比較例3を比較する。比較例3では、増量剤としてクレーを86.413質量部用いているが、実施例5ではDLクレーを78.413質量部、精製グリセリンDを3.00質量部及びブチルヒドロキシトルエンであるヨシノックスBHT−Pを5.00質量部用いている。比較例3に比べ、実施例5ではシメコナゾール及びイソキサチオンの分解が抑えられている。
【0060】
実施例6と比較例3を比較する。比較例3では、増量剤としてクレーを86.413質量部用いているが、実施例6ではDLクレーを80.413質量部、精製グリセリンDを3.00質量部、ヨシノックスBHT−Pを1.00質量部及び樹脂であるトーホーハイレジン#90を2.00質量部用いている。比較例3に比べ、実施例6ではシメコナゾール及びイソキサチオンの分解が抑えられている。
【0061】
実施例7と比較例3を比較する。比較例3では、増量剤としてクレーを86.413質量部用いているが、実施例7ではDLクレーを80.413質量部、精製グリセリンDを3.00質量部、ヨシノックスBHT−Pを1.00質量部及び樹脂であるYSレジンA800を2.00質量部用いている。比較例3に比べ、実施例7ではシメコナゾール及びイソキサチオンの分解が抑えられている。
【0062】
実施例5及び実施例8〜12と比較例3を比較する。実施例5及び実施例8〜12は、DLクレーと精製グリセリンDの配合比が異なるのみである。実施例5と比較例3を比較した場合と同様に、比較例3に比べ、実施例5及び実施例8〜12ではシメコナゾール及びイソキサチオンの分解が抑えられている。
【0063】
シメコナゾールとイソキサチオンをともに含有する粉剤では、DLクレー及び多価アルコールが存在しないと経時的にさらに加速的に分解し、DLクレー又は多価アルコールを単独に添加するだけでは、安定化効果はあるもののその効果は不十分であり、DLクレー及び多価アルコール;DLクレー、多価アルコール及びブチルヒドロキシトルエン;又はDLクレー、多価アルコール、ブチルヒドロキシトルエン及び樹脂を添加することにより、シメコナゾールの分解はさらに抑制され、実用上問題がなくなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)シメコナゾール及び(2)DLクレー又は多価アルコールを含有することを特徴とする農薬粉剤組成物。
【請求項2】
DLクレー及び多価アルコールを合わせて含有する請求項1に記載の農薬粉剤組成物。
【請求項3】
ブチルヒドロキシトルエンを含有する請求項1又は2に記載の農薬粉剤組成物。
【請求項4】
樹脂を含有する請求項1乃至3のいずれか1つに記載の農薬粉剤組成物。
【請求項5】
多価アルコールが、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール及びグリセリンからなる群から選ばれた1種以上の多価アルコールである、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の農薬粉剤組成物。
【請求項6】
多価アルコールがグリセリンである、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の農薬粉剤組成物。
【請求項7】
樹脂が石油樹脂である、請求項4乃至6のいずれか1つに記載の農薬粉剤組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の農薬粉剤組成物を混合後、粉砕することを特徴とする農薬粉剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−143953(P2009−143953A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33498(P2009−33498)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【分割の表示】特願2003−43432(P2003−43432)の分割
【原出願日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【出願人】(303020956)三井化学アグロ株式会社 (70)
【Fターム(参考)】