定着装置及びこれを用いた画像形成装置
【課題】 定着後の記録材から熱回収を行い、定着前の記録材へ熱伝達を行うに際し、直接的な熱回収伝達を行うことで、加熱エネルギーを少なくする。
【解決手段】 記録材5上のトナー像を加熱する定着ユニット1と、定着ユニット1から送り出された記録材5の熱を回収して定着ユニット1に送り込まれる記録材5に伝達する熱回収伝達ユニット2とを備えた定着装置において、熱回収伝達ユニット2は、複数の張架部材4に張架されて循環移動し且つ記録材5を搬送するベルト部材3を有し、このベルト部材3のうち、定着ユニット1の下流側には記録材5に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱回収せしめられる熱回収部HCを設けると共に、定着ユニット1の上流側には記録材5に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱伝達せしめられる熱伝達部HTを設ける。
【解決手段】 記録材5上のトナー像を加熱する定着ユニット1と、定着ユニット1から送り出された記録材5の熱を回収して定着ユニット1に送り込まれる記録材5に伝達する熱回収伝達ユニット2とを備えた定着装置において、熱回収伝達ユニット2は、複数の張架部材4に張架されて循環移動し且つ記録材5を搬送するベルト部材3を有し、このベルト部材3のうち、定着ユニット1の下流側には記録材5に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱回収せしめられる熱回収部HCを設けると共に、定着ユニット1の上流側には記録材5に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱伝達せしめられる熱伝達部HTを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式等を採用した複写機やプリンタ等の画像形成装置で用いられる定着装置及びこれを用いた画像形成装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の画像形成装置としては、感光体等に形成された各色成分トナー像を中間転写体に順次一次転写し、中間転写体上の多色トナー像を二次転写装置(一括転写装置)にて用紙に一括転写するようにしたものが知られている。
このようなカラー画像形成装置では、近年、高速化、小型化、省エネ化への要求が強く、中でも、画像形成プロセス上最もエネルギーを消費する熱定着器について、環境負荷低減を狙った省エネルギー化技術(省電力化技術)が必要とされてきている。
このような要請に対し、定着器から搬出された定着済の用紙の熱を直接的又は間接的に定着前の用紙に伝達させ、用紙を定着前に予備加熱することで、その後の定着に要する加熱エネルギーを削減したり、加熱電力を増大させずに定着速度を速めるような技術が提示されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−328412号公報(実施例、図2〜15)
【特許文献2】特開2000−338803号公報(発明の実施の形態、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような技術において、定着後の用紙を直接定着前の用紙に接触させるようにした構成にあっては、用紙が連続紙(ロール紙)の場合のみの適用に限られ、用紙がカット紙の場合は不可となり、適用可能な用紙の汎用性に欠ける問題がある。
また、図16に示すように、感光体201のトナー像が転写された用紙202を定着装置203にて定着する際、定着装置203の上流側部位204と下流側部位205との間にブロック付きヒートパイプ206を設け、下流側部位205での定着後の用紙202の熱を上流側部位204に伝達する方式が提案されている(例えば特許文献1参照)。
このようなブロック付きヒートパイプの例や、更には、伝熱ブロック、伝熱板、伝熱ロールとベルトとの組み合わせ等の伝熱手段を介して、定着後の用紙の熱を定着前の用紙に伝えるようにした構成にあっては、カット紙の適用が可能となり用紙の汎用性は確保されるが、伝熱手段での熱量が定常化して熱回収/熱伝達効果が十分に得られるには、伝熱手段そのものが用紙からの熱伝導により温度上昇を繰り返し、定着後の用紙温度に近づく必要がある。すなわち、かかる構成では、上述した伝熱手段の昇温に時間がかかるため、すぐには定着の加熱エネルギーを低減することができないという問題がある。
【0005】
特に、このような場合、数十枚以下のプリント、コピー動作を間欠的に行うことが多い中小型の画像形成装置では効果が得にくいことに繋がる。
更に、熱回収/熱伝達効果をすぐさま行う(立ち上がりを速くする)ようにしようとして、伝熱手段に補助加熱を加えるような方法では、却って多くのエネルギーを消費することもあり、省エネルギー化にとって得策とは言えない。
【0006】
また、図17に示すように、転写ベルト301と用紙搬送ベルト302とを対向配置させ、転写ベルト301の内側にヒータ303を有し、このヒータ303の両側(上流及び下流側)に圧接板304を設けて転写ベルト301と用紙搬送ベルト302との圧接状態を構成し、転写ベルト301と用紙搬送ベルト302との間で用紙305を搬送させるようにしたものにおいて、用紙搬送ベルト302の内側に用紙搬送ベルト302の移動方向とは逆向きに移動する熱伝達ベルト306を設けて、ヒータ303の下流側での吸熱を上流側に移動させ、用紙305を予備加熱しようとする提案もなされている(例えば特許文献2参照)。
しかしながら、かかる構成にあっては、用紙を搬送する搬送ベルトが熱の伝達媒体ではなく、搬送ベルトとは別体に設けた熱伝達ベルト306を用いる点から、構成が複雑且つ熱伝達効率も悪くなる。
【0007】
以上のように、これらの先行技術にあっては、いずれも定着後の用紙の熱を熱回収伝達部材を介して間接的に定着前の用紙に伝達しているに過ぎない。
本発明は、上述したような技術的課題を解決するためのものであり、定着後の記録材から熱回収を行い、定着前の記録材へ熱伝達を行うに際し、直接的な熱回収伝達を行うことで、加熱エネルギーの少ない定着装置及びこの定着装置を用いた画像形成装置を提供するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る定着装置の基本的構成は、図1(a)(b)に示すように、記録材5上のトナー像を加熱する定着ユニット1と、定着ユニット1から送り出された記録材5の熱を回収して定着ユニット1に送り込まれる記録材5に伝達する熱回収伝達ユニット2とを備えた定着装置において、熱回収伝達ユニット2は、複数の張架部材4に張架されて循環移動し且つ記録材5を搬送するベルト部材3を有し、このベルト部材3のうち、定着ユニット1の下流側には記録材5に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱回収せしめられる熱回収部HCを設けると共に、定着ユニット1の上流側には記録材5に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱伝達せしめられる熱伝達部HTを設けることを特徴とするものである。
そのため、先行技術にあっては、記録材5の搬送機能を有する搬送部材とは別に、熱回収伝達機能を持った部材を用いて間接的に熱回収伝達を行う態様であったのに対し、本願においては、ベルト部材3が記録材5に対する搬送機能と熱回収伝達機能を兼ね備え、直接的に熱回収伝達を行うようにした点が大きく異なる。
【0009】
このような技術的手段において、本願に係る定着装置は、記録材5上に形成されたトナー像を定着する際に、定着ユニット1を利用して行うものを対象とし、このとき、定着ユニット1としては記録材5上のトナー像を定着するために促進されるものであればよく、加熱単独で定着する方式や、例えば熱に圧力等を併用した方式等も含む。
また、熱回収伝達ユニット2としてベルト部材3を用いることで、比較的熱容量を小さく、記録材5との接触面積も広くすることができることから、効率的な熱の回収伝達が可能となる。
【0010】
そして、熱回収部HC及び熱伝達部HTは、ベルト部材3と記録材5との接触領域で構成され、熱回収部HCで有効に熱回収を行うことで、加熱前の記録材5へ有効に熱伝達を行うことができ、熱効率を向上させることができる。尚、ベルト部材3の数量は特に限定されず、例えば記録材5を挟み込むように2個のベルト部材3を使用しても、定着ユニット1の下流側及び上流側に熱回収部HC及び熱伝達部HTを備える態様であればよく、この場合、記録材5の搬送部材(本願のベルト部材3が相当)そのものが熱回収及び熱伝達を行うため、構成が簡単且つ熱効率がよい定着装置を実現することができる。
尚、「当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態」とは、ベルト部材3と記録材5との接触面の周囲では大気によって断熱される態様や断熱部材と接触する態様を含む。尚、記録材5をベルト部材3で両面から挟み込む態様であっても差し支えない。
【0011】
更に、本発明においては、ベルト部材3の耐熱劣化を防ぎ、長寿命化する観点から、図1(a)に示すように、ベルト部材3を定着ユニット1から迂回配置することが好ましく、また、耐熱性のベルト部材3を用いて装置構成を簡略化させる観点から、図1(b)に示すように、ベルト部材3は定着ユニット1の加熱部位を通過配置させるようにすればよい。この通過配置をさせる態様は、熱回収部HCとして定着ユニット1のニップ域から下流側の長い領域を有効に使用することができ、ベルト部材3の熱回収が早期に実施されるようになり、例えばプロセス速度が上昇しても適用できるようになる。
【0012】
そして、本発明における張架部材4は、ベルト部材3の循環経路を維持し、ベルト部材3を循環移動させるもので、ベルト部材3に熱回収部HCで有効に熱を回収し、回収された熱を有効に熱伝達部HTまで搬送する観点から、断熱層4aを備えることが好ましい。
張架部材4が断熱層4aを備えることで、ベルト部材3で回収された熱エネルギーを張架部材4との接触で減衰される量(熱伝導で張架部材4に吸熱される量)が少なくなり、ベルト部材3での熱回収/熱伝達を一層有効に作用させることができるようになる。尚、断熱層4aは、張架部材4表面に断熱材を層状に形成してもよいし、例えば張架部材4自体を断熱材で構成することも含み、層の厚さ等は特に限定されない。
【0013】
また、断熱層4aとして弾性発泡体を使用することで、発泡体の気泡の断熱効果も手伝って、断熱性能が向上するようになる。このとき、弾性発泡体の代表的態様としては、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂の発泡体が挙げられる。
更に、断熱層4aは、ベルト部材3との接触面積を小さくするように、表面に凹凸面を備えるようにすれば、張架部材4とベルト部材3との接触時に、互いの接触面積を減らすことができ、張架部材4へ吸熱される熱が少なくなり、断熱効果が一層向上する。また、このときの断熱層4aの形状は、ベルト部材3を循環可能にできる形状であれば特に限定されないが、例えば張架部材4の回転軸と交差する方向に凸形状を離散的に配置した形状としてもよいし、回転軸に傾斜する方向に離散的に配置した形状としてもよい。
【0014】
そして、本発明においては、張架部材4として中空状の金属製ロール表面に断熱層4aを備えるようにすれば、加工性、剛性に優れた張架部材4が実現できる。また、張架部材4のロールを中空態様とすることで、張架部材4自体の熱容量が一層小さくなり、ベルト部材3の熱が断熱層4aを経由して金属製ロールに伝達されても短時間に温度上昇を飽和させることができ、ベルト部材3から張架部材4への吸熱も減り、ベルト部材3による記録材5への有効な熱の伝達が短期に可能になる。更に、中空状の金属ロールを特に薄肉形状とすれば、張架部材4の熱容量が更に小さくなり、上述の効果が更に向上するようになる。
【0015】
更に、本発明にあっては、記録材5からの熱回収及び記録材5への熱伝達を有効に行う観点から、熱回収部HC及び熱伝達部HTでは、ベルト部材3は記録材5の片面のみと接するようにする方がよい。そのことにより、記録材5の熱を回収/伝達するベルト部材3の熱容量を記録材5の両面で接する場合に比べ大きくでき、更に、記録材5の片面を熱伝導率が非常に小さい大気にさらすことができ、記録材5からの熱回収及び記録材5への熱伝達が一層効率的になる。
また、この場合、ベルト部材3は、熱回収部HC及び熱伝達部HTでは記録材5のトナー像面とは逆の面で接触するようにすることが好ましく、このことにより、ベルト部材3と未定着トナー像が接触することを避けることができ、画質を損なうことがない。尚、熱回収部HC及び熱伝達部HTでは、ベルト部材3と接する記録材5の方向(記録材5がベルト部材3の上方に位置するか又は下方に位置するか)は特に限定されないが、記録材5が鉛直下方側に位置する場合、記録材5は必要な部位で上方に位置するベルト部材3に静電吸着又は吸引等により接触保持させるようにすればよい。
【0016】
更に、本発明においては、図2に示すように、ベルト部材3が定着ユニット1を迂回配置される態様において、熱伝達部HT及び熱回収部HCにて記録材5とベルト部材3との接触を有効に保つ観点から、熱伝達部HT及び熱回収部HCには、静電気力にてベルト部材3に記録材5を吸着させる静電吸着装置6を設けることが好ましい。
また、ベルト部材3への不要な電荷蓄積を防ぐ観点から、熱伝達部HT及び熱回収部HCに配設される二つの静電吸着装置6(6a,6b)は、ベルト部材3の帯電極性が互いに逆方向になるように構成されることが好ましい。
【0017】
そして、熱伝達部HTに設けられる静電吸着装置6aとしては、トナー像面への影響をなくし、画質を維持する観点から、記録材5のトナー像面と非接触配置されることが好ましい。この場合、トナー像面側からコロナ帯電器によって記録材5を静電吸着する態様や、張架部材4にトナーの帯電極性と異なる極性のバイアスを印加するようにした態様が挙げられる。
一方、熱回収部HCに設けられる静電吸着装置6bとしては、記録材5に対し非接触配置されるコロナ帯電器の態様や、トナー像面に対し接触配置される板状若しくはフィルム状の帯電部材の態様が挙げられる。尚、この板状若しくはフィルム状の帯電部材を使用する態様においては、記録材5との摩擦力を減少させ記録材5の送りをスムーズにする観点及び浮遊トナー等異物の付着を防止する観点から、帯電部材の表面には離型層が施されることが好ましい。
【0018】
更に、ベルト部材3への記録材5の吸着条件を安定化させる観点から、静電吸着装置6の駆動は、少なくともベルト部材3が駆動されている間に行われるものとすることが好ましい。また、この場合、ベルト部材3の一部が異常にチャージアップすることも防ぐことができるようになる。
【0019】
そして、本発明は、上述した定着装置のみならず、画像形成装置をも対象とするものであり、この場合、記録材5上にトナー像を形成する作像手段と、この記録材5上に形成されたトナー像を定着する定着装置とを備え、この定着装置として上述の定着装置を配設するようにすればよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の基本的構成によれば、記録材上のトナー像を加熱する定着ユニットと、定着ユニットから送り出された記録材の熱を回収して定着ユニットに送り込まれる記録材に伝達する熱回収伝達ユニットとを備えた定着装置において、複数の張架部材に張架されて循環移動し且つ記録材を搬送するベルト部材を有し、このベルト部材のうち、定着ユニットの下流側には記録材に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱回収せしめられる熱回収部を設けると共に、定着ユニットの上流側には記録材に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱伝達せしめられる熱伝達部を設けた熱回収伝達ユニットを備えたので、ベルト部材が記録材の搬送機能と記録材への熱回収伝達機能を兼ね備え、記録材への直接的な熱回収伝達を行うことができる。そのため、従来の間接的な熱回収伝達方式に比べ、定着時の加熱エネルギーを大きく低減することが可能となり、省電力化された定着装置が実現できる。
【0021】
また、本発明においては、記録材をベルト部材に静電吸着装置を用いて吸着させるようにしたので、トナー像面への影響を防ぎ、画質を維持した状態で記録材からの熱回収並びに記録材への熱伝達を有効に行うことが可能になる。
【0022】
更に、記録材上にトナー像を形成する作像手段と、記録材上に形成されたトナー像を定着する定着装置を備えた画像形成装置において、定着装置として、上述の定着装置を備えるようにすれば、省電力化された画像形成装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
図3は、本発明が適用された画像形成装置の実施の形態1を示す概要図である。
同図において、本実施の形態の画像形成装置は、プラテン11上の原稿を読み取る原稿読取装置10と、例えば電子写真方式にて四つの各色成分(本実施の形態ではイエロ、マゼンタ、シアン、ブラック)画像(トナー像)を形成する画像形成ユニット20(20a〜20d)と、各画像形成ユニット20(20a〜20d)にて形成された各色成分画像が順次転写(一次転写)されて保持される中間転写ベルト30と、中間転写ベルト30上に転写された重ね画像を用紙(記録材)に一括転写(二次転写)する二次転写装置31と、二次転写された画像を用紙上に定着させる定着装置70と、各種サイズの用紙を供給する給紙トレイ51〜53と、トナー像形成を終えた用紙を収容する排紙トレイ55と、給紙トレイ51〜53から排紙トレイ55までの用紙搬送を行う複数の用紙搬送経路とを備えたものである。
【0024】
本実施の形態において、原稿読取装置10は、例えば、プラテン11の下方に配置された原稿読取部12とプラテン11の上方に配置されたADF(Auto Document Feeder)13にて構成されている。原稿読取部12は、プラテン11上にセットされた原稿面に光を照射する光源と、原稿面からの反射光を電気信号に変換するCCD等の光電変換素子と、原稿面からの反射光を光電変換素子に導く経路を形成する適宜数のミラーと、原稿面からの反射光を光電変換素子の結像面上に結像させる結像レンズ等を備えている。そのため、原稿読取装置10では、プラテン11上にマニュアルでセットされた原稿やADF13を介してセットされた原稿を読み取り、対応する画像データに変換するようになっている。
【0025】
また、各画像形成ユニット20(20a〜20d)は、夫々感光体ドラム21を有し、各感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21が帯電される帯電ロール等の帯電装置22、帯電された感光体ドラム21上に静電潜像(主としては原稿読取装置10で読み取られた画像データ又は他の記録媒体等から取り込まれた画像データに基づく静電潜像)を書き込むレーザスキャナ等の露光装置23、感光体ドラム21上に書き込まれた静電潜像を各色成分トナーにて現像する現像装置24、感光体ドラム21上のトナー像を中間転写ベルト30上に転写する転写ロール等の一次転写装置25及び感光体ドラム21上の残留トナーを除去するドラムクリーナ26を夫々配設したものである。
尚、符号27(27a〜27d)は、現像装置24へトナーを補給するトナー補給装置であり、各色トナーが夫々の現像装置24へ補給されるようになっている。
【0026】
更に、中間転写ベルト30は、例えば、ポリイミド樹脂に導電性カーボンブラックを混練した、体積抵抗率が109〜1012Ω・cm程度のフィルム状の無端ベルトからなり、3個の張架ロール32〜34に掛け渡されている。
そして、本実施の形態では、張架ロール33を張架ロール32より下方に配置することで、中間転写ベルト30を斜め下向きになるように配置し、各画像形成ユニット20(20a〜20d)は、張架ロール33と張架ロール34との間の中間転写ベルト30に沿って、中間転写ベルト30の下方側に配置されている。そのため、画像形成ユニット20でのトナー飛散が中間転写ベルト30上に影響せず、汚れの少ない高画質な画像を維持できるようになっている。
また、本実施の形態においては、張架ロール32が二次転写装置31のバックアップロールとして働いており、画像形成ユニット20にて中間転写ベルト30上に形成されたトナー像を二次転写装置31で用紙上に一括転写するようになっている。そのため、中間転写ベルト30上にトナー像が形成された後、すぐに用紙上に二次転写されることから、中間転写ベルト30上でのトナー像の乱れを防ぎ、画質を一層向上させた画像形成が可能となっている。尚、図中の符号35は、中間転写ベルト30上の残留トナーを清掃するベルトクリーナである。
【0027】
そして、本実施の形態における定着装置70は、二次転写位置に対し略水平方向に配置され、図4に示すような構成となっている。
同図において、定着装置70は、用紙S上のトナーを溶融定着する定着ユニット80と、用紙S上の熱を定着ユニット80の下流側の熱回収部HCにて回収し、定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTにて後続の用紙Sに回収した熱を伝達する熱回収ベルト91と、この熱回収ベルト91を張架する7個の張架ロール92とで構成される熱回収伝達ユニットとしてのベルトユニット90とが設けられている。
【0028】
定着ユニット80は、図5に示すように、上部ユニット80aと下部ユニット80bとで構成されている。上部ユニット80aは、加圧ロール81と、加圧ロール81を覆うように設けられた断熱カバー82aとを有し、下部ユニット80bは、内部にヒータ87を配置した加熱ロール86と、この加熱ロール86を覆うように設けられた断熱カバー82bとを有している。また、断熱カバー82a,82bは、夫々加圧ロール81及び加熱ロール86側に金属の熱輻射板85a,85bを備え、その外側を真空断熱材84a,84bで覆った形状を採っている。尚、符号83a,83bは外装カバーである。
本実施の形態では、加圧ロール81及び加熱ロール86と夫々の断熱カバー82a,82bとは、例えば3〜20mmの距離を隔てて配置され、断熱カバー82a,82bが加圧ロール81及び加熱ロール86を互いに上下方向から挟み込むような形となっている。また、本実施の形態では、加圧ロール81と加熱ロール86とが鉛直方向に対向配置されているため、このニップ域を用紙Sが略水平方向に移動するようになっている(図4参照)が、本願における用紙搬送方向は特にこれに限定されるものではない。
【0029】
一方、熱回収ベルト91は、75μm厚のポリイミドフィルムで構成され、定着ユニット80の下流側の熱回収部HCで用紙Sと接触して用紙Sの熱を回収し、そのまま循環移動した後、定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTで用紙Sと接触し、回収した熱を用紙Sへ伝達するようになっている。
【0030】
本実施の形態における熱回収ベルト91としては、用紙Sからの熱回収及び用紙Sへの熱伝達を行う上で、その熱容量を適宜選択する必要がある。
すなわち、熱回収ベルト91の熱容量が小さすぎると、熱回収ベルト91自体の温度の立ち上がりは速くなるが、用紙Sから熱を回収しても、後続の用紙Sへの熱伝達を行うまでに回収した熱が消散し易く、また、定着前の用紙Sへ熱伝達を行う際にも十分用紙Sを加熱することができないこともあり、有効な熱伝達を行うことが困難となる。
また、反対に熱回収ベルト91の熱容量が大きすぎると、熱回収ベルト91の温度の立ち上がりは遅くなり、安定するまでの時間が必要となる。そのため、定着前の用紙Sへの有効な熱伝達を行うまでには時間がかかり、例えば数枚程度のプリントを繰り返すような使用形態では定着前の用紙Sに予備加熱を加えることが有効に行えない。
よって、熱回収ベルト91で有効に熱回収/熱伝達を行うには、使用する用紙S程度の熱容量(単位面積当たり)から数倍程度の熱容量までが好ましい。
本実施の形態では、ポリイミドの75μmのフィルムを使用していることから、用紙Sの1枚目からの熱回収を可能にしている。
【0031】
更に、本実施の形態では、熱回収ベルト91による熱回収/熱伝達をより効果的に行うようにするため、熱回収ベルト91と接触する張架ロール92への吸熱を少なくするようにしている。
本実施の形態での張架ロール92は、図6の平面図及び図7の断面図に示すように、肉厚の薄いステンレス(SUS)パイプ921上を表面が凹凸形状をしたウレタン樹脂よりなる発泡層922で覆ったもので、発泡層922の凹部922aと凸部922bとは、張架ロール92の軸に直交する方向に形成されている。尚、図6中、符号92a,92bは、張架ロール92の両端に設けられた回転軸である。
本実施の形態では、張架ロール92の表面を発泡層922で覆い、更に、発泡層922の表面を凹凸形状としたことで、熱回収ベルト91と張架ロール92との接触域では熱回収ベルト91の熱が張架ロール92側に吸収されることを少なくしている。また、肉厚の薄いSUSパイプ921を使用することで、張架ロール92自体の熱容量を小さくすることができ、熱伝導等で張架ロール92の温度が上昇しても、速く飽和することができ、張架ロール92での余分な熱の吸収が少なくなるようになっている。
そのため、熱回収ベルト91での熱回収/熱伝達を一層効率的に行うことができるようになっている。
【0032】
更に、本実施の形態では、定着ユニット80の上流側で熱回収ベルト91の内側には、熱回収ベルト91へ用紙Sを吸着するための帯電電荷を付与するコロトロン等の帯電装置(図示せず)が配置されている。
【0033】
また、図3に示すように、本実施の形態において給紙トレイ51〜53は、画像形成装置の上方と下方に分かれて設けられ、上方に設けた給紙トレイ51に頻度の高い用紙を適用させるようにすれば、給紙トレイ51への用紙補給時に、ユーザーが楽な姿勢で対応できるようになる。更に、本実施の形態においては、排紙トレイ55を給紙トレイ51の上方に設けているので、排紙トレイ55に排紙された用紙を回収する際にもユーザーが楽な姿勢で対応できるようになっている。尚、図中、符号54は、画像形成装置の側方に設けた手差し用紙が投入可能な手差しトレイである。
【0034】
更にまた、本実施の形態での用紙搬送経路は、次のように構成されている。給紙トレイ51から略鉛直下方に延びる第1搬送路61と、給紙トレイ52,53から上方に延びる第2搬送路62と、手差しトレイ54から延びる第3搬送路63とがあり、これらの搬送路は二次転写部位で合流し、主搬送路64へと繋がり、排紙トレイ55まで延びている。
また、この主搬送路64の途中から、用紙を反転して二次転写部位に戻す反転搬送路65が繋がっている。そして、これらの搬送路には、多数の搬送ロールが設置され、用紙の搬送が確実になされるようになっている。
【0035】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の基本的な画像形成プロセスについて、図3を基に説明する。今、原稿読取装置10にて読み取られた各色成分画像(イエロ、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像データが各画像形成ユニット20(20a〜20d)の露光装置23に送出されると、各画像形成ユニット20の感光体ドラム21上には各色成分毎の静電潜像が形成されると共に、対応する色トナーが収容された現像装置24にて静電潜像が顕像化され、感光体ドラム21上に各色未定着トナー像が形成される。
そして、各色成分の未定着トナー像は、各感光体ドラム21と中間転写ベルト30とが接する一次転写部位において、一次転写装置25によって中間転写ベルト30上に順次一次転写され、重ね合わせられる。
【0036】
このようにして中間転写ベルト30に一次転写された未定着トナー像は、中間転写ベルト30の回転に伴って、第1搬送路61、第2搬送路62及び第3搬送路63の合流点である二次転写部位へと搬送される。
二次転写部位では、二次転写装置31と張架ロール32との間に印加された図示外の転写バイアスにより、例えば給紙トレイ51等から搬送された用紙上に、前記中間転写ベルト30上の未定着トナー像が一括転写される。用紙上に一括転写された未定着トナー像は、定着装置70にて定着された後、主搬送路64を通って排紙トレイ55へと排出される。
【0037】
このような画像形成プロセスにおける定着装置70の作動について、図4を中心に詳細に説明する。
二次転写され未定着トナー像が転写された用紙Sは、図示外の帯電装置によって帯電された熱回収ベルト91の位置まで達すると、熱回収ベルト91側へ吸着される。本実施の形態では、用紙Sの鉛直下方側に未定着トナー像が転写されていることから、熱回収ベルト91側へ用紙Sが吸着されても、特にトナー像を劣化させることもない。
そして、定着ユニット80に達する前に、用紙Sの腰を利用したり、剥離爪等を使用して熱回収ベルト91から用紙を剥離するようにして、定着ユニット80側へ向かわせ、定着ユニット80中の加圧ロール81と加熱ロール86とのニップ域を通過させることで、用紙S上の未定着トナー像は定着される。定着を終えた用紙Sは、帯電された熱回収ベルト91に再度吸着され、熱回収ベルト91から用紙の腰を利用して剥離される。尚、熱回収ベルト91の移動速度と定着ユニット80の加圧ロール81と加熱ロール86とのニップ域での用紙速度は同じになるようにしているため、用紙Sの搬送性に特に支障はない。
【0038】
このような定着装置70にて、定着ユニット80から排出された用紙Sは、加熱ロール86による加熱を受け、温度が高くなっている(通常、定着時には使用するトナーの融点以上になるため、定着ユニット80から排出された直後もほぼ同様の温度を保っている)が、定着ユニット80の下流側の熱回収部HCでは、用紙Sが熱回収ベルト91と接することで用紙Sの熱が熱回収ベルト91側へ熱伝導を行い、熱回収ベルト91の温度を上昇させる。このとき、熱回収ベルト91として、適正な熱容量のベルトを使用していることから、熱回収ベルト91の熱容量はある程度小さくでき、その温度上昇速度(熱回収による)を速くすることができる。また、このとき、用紙Sの片側は大気にさらされているため、用紙Sの熱は熱抵抗の小さい熱回収ベルト91側へ有効に伝達され、熱回収される。
更に、熱回収部HCで熱回収を終えた熱回収ベルト91は、そのまま循環経路を循環して定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTで次に搬送される用紙Sと接触し、熱回収部HCで事前に回収した熱を用紙Sに伝達し、予備加熱するようになる。
【0039】
すなわち、本実施の形態では、75μmのポリイミドフィルムを熱回収ベルト91としたことで、用紙に対する熱回収及び熱伝達が可能な熱回収ベルト91を実現している。更に、この熱回収ベルト91を支持する張架ロール92として、上述の張架ロール92を使用することで、熱回収ベルト91が接触する張架ロール92への吸熱(張架ロール92に熱を取られ、熱回収ベルト91の温度が余分に低下する)を抑えている。
したがって、本実施の形態においては、有効に定着前の用紙を予備加熱することができるため、定着時の熱エネルギーを小さくでき、省電力化に適した画像形成装置を実現できる。また、熱回収ベルト91による熱回収の立ち上がりが速いため、熱回収ベルト91の1周目から熱回収及び後続用紙への予備加熱が可能になり、10枚以下のプリントを繰り返すような使用形態にあっても、定着時の加熱エネルギーを低減できる。更に、熱容量の小さい熱回収ベルト91を使用したので、熱回収ベルト91と用紙との熱交換が短時間で可能になり、装置の小型化が可能で、かつ、高速化も可能となる。尚、熱回収ベルト91は、適用する装置の条件によって適切な構成が異なることは云うまでもない。
【0040】
本実施の形態では、定着装置70へ進入する際のトナー像面を下方にしたが、例えばトナー像面を熱回収ベルト91側に接するようにしても、トナー飛散を防ぐように熱回収ベルト91と用紙との移動速度を制御するようにすれば使用できる。
また、熱回収ベルト91そのものを用紙搬送経路の主搬送路64(例えば図3参照)の下方側に設けることも可能で、更に、定着ユニット80の加熱源として、ロールの代わりに例えばランプヒータを使用して非接触加熱することも可能である。更にまた、加熱源を用紙の上方に配置したり、用紙の上下に配置することも可能である。
また、本実施の形態では、定着ユニット80の下流側の熱回収部HCと上流側の熱伝達部HTでの用紙Sとの接触時間をほぼ同等としたが、熱回収ベルト91と用紙Sとの温度差や装置構成の都合等により、熱回収部HCと熱伝達部HTでの用紙Sとの接触時間を変えるようにしてもよい。
【0041】
そして、本実施の形態では、熱回収ベルト91を用紙Sと片面で接触する態様を示したが、例えば熱回収ベルト91を2個設け、定着時には用紙を熱回収ベルト91で挟み込むようにしても差し支えない。この場合、用紙Sを搬送する搬送部材としての熱回収ベルト91自体が、熱回収/熱伝達を行うようになり、熱回収ベルト91側に用紙Sを吸着するための例えば帯電電荷を付与するための帯電装置等を設ける必要がなく、用紙搬送構成が簡略化される。尚、このとき、2個の熱回収ベルト91にて同等に用紙との熱交換を行うように、同様の厚さの熱回収ベルト91を設けてもよいし、厚さを変えて片側の熱回収ベルト91側に多くの熱交換を行わせるようにしてもよい。
【0042】
また、図8は、上述した実施の形態で使用した張架ロール92(例えば図6参照)と形状のみが異なる張架ロール92であり、断熱層としての発泡層922の表面形状(凹凸形状)を同図のように加工したものである。
この張架ロール92は、ロール軸に対し斜めに凸部922bを設けたもので、凸部922bが図の矢印A方向に回転するように回転軸92a,92bをセットするようにすれば、張架ロール92が回転する際、熱回収ベルト91(例えば図4参照)を絶えずベルトの外側(ベルトの移動方向と直交する方向)に向かって張る方向に力を作用させることができ、熱回収ベルト91の循環姿勢を一層安定させることができる。
このとき、上述した実施の形態と同様の発泡層922が形成されているため、この例によっても、熱回収ベルト91からの吸熱を抑えることができ、省電力化を実現した画像形成装置が可能になる。
【0043】
◎実施の形態2
図9は、本発明に係る画像形成装置に用いられる定着装置70の実施の形態2を示す。
本実施の形態に係る画像形成装置の基本的構成は、実施の形態1と同様のため省略し、定着装置70のみ示す。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様の符号を付してここではその詳細な説明は省略する。
【0044】
本実施の形態における定着装置70は、熱回収ベルト91を定着ユニット80内まで経由させたベルトニップ方式の定着装置70である。
定着ユニット80の構成は実施の形態1と同様であるが、熱回収ベルト91がこの定着ユニット80の加圧ロール81と加熱ロール86のニップ域を通過するため、熱回収ベルト91の昇温速度が実施の形態1より速くなっている。
また、本実施の形態における熱回収ベルト91は、上述のニップ域により従動され、循環移動するようになっているため、定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTで熱回収ベルト91に吸着した用紙Sは、熱回収ベルト91の移動と共に、そのまま排出位置(熱回収ベルト91の最下流側)まで移動する。
本実施の形態では、熱回収ベルト91によって用紙Sが吸着搬送されるため、定着ユニット80への巻きつきジャム防止効果がある。
【0045】
このような構成のため、本実施の形態にあっては、熱回収ベルト91での熱回収は、定着ユニット80下流側の熱回収部HCが、定着ユニット80のニップ域から排出位置までの長い距離になり、有効に熱回収を行うことができる。そのため、熱回収ベルト91の昇温速度を速めることができ、熱回収ベルト91の熱容量を実施の形態1より大きくすることも可能で、熱伝達部HTでの用紙Sへの熱伝達に際しても、十分熱伝達が可能になる。このとき、ニップ域で熱回収ベルト91を直接加熱すると却って定着エネルギーを消費するため、本実施の形態では用紙Sを介して熱回収ベルト91を昇温させるようにしている。また、本実施の形態では、熱回収ベルト91を耐熱性の高いポリイミド樹脂を使用することで、定着ユニット80内に熱回収ベルト91を通しても、熱回収ベルト91の熱劣化を抑止できるようになっている。
したがって、本実施の形態にあっても、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0046】
◎実施の形態3
図10は、本発明に係る画像形成装置に用いられる定着装置70の実施の形態3を示す。本実施の形態に係る画像形成装置の基本的構成は、実施の形態1と同様のため省略し、定着装置70のみ示す。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様の符号を付してここではその詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施の形態の定着装置70は、実施の形態1の定着装置(例えば図4参照)と略同様に構成されるが、熱伝達部HT及び熱回収部HCの入口部分の張架ロール92に対向して、熱回収ベルト91と離間した位置に例えばコロトロン等のコロナ帯電器93,94が配設されている点が異なる。
この2個のコロナ帯電器93,94は、夫々図示外の電源により、熱回収ベルト91の帯電電位が熱伝達部HTではプラス側(トナーの帯電電荷と異なる極性)、熱回収部HCではマイナス側になるようにしている。用紙Sが定着ユニット80に入る前は熱回収ベルト91がトナーを引きつける方向に作用することから、トナー画像の乱れを抑えることができ、定着後は逆極性とすることで、熱回収ベルト91自体に不要なチャージアップを来すことがないようになっている。
尚、コロナ帯電器93,94と対向する張架ロール92は、コロナ帯電器93,94の対向電極を構成することから、張架ロール92の断熱層の厚さ等は適宜選定されることはいうまでもない。例えば、張架ロール92表面に断熱性を有する導電性樹脂(カーボンブラック等)を配合したフッ素系樹脂等を用いることで、断熱効果と静電的な用紙吸着効果を得るようにすることもできる。
更に、本実施の形態では、コロナ帯電器93,94への電圧印加は、熱回収ベルト91が駆動される時間内に限って行われるようになっているため、熱回収ベルト91の一部がチャージアップすることもない。
【0048】
更に、本実施の形態では、ベルトユニット90の上部には、ベルトユニット90からの放熱を防ぐために、図11に示すような遮熱フード100が設けられている。この遮熱フード100は、ベルトユニット90を覆うように設けられ、ベルトユニット90の張架ロール92の両端部を回転可能に支持する2枚の支持プレート101(101a,101b)と、ベルトユニット90を上部から覆う2枚の天板102,103とで構成されている。これらの遮熱フード100は、いずれもポリカーボネート樹脂で作製され、熱回収ベルト91等からの熱の伝導、対流、輻射を抑え、熱回収ベルト91の熱が十分維持されるようになっている。
【0049】
そして、本実施の形態では、ベルトユニット90の駆動は、定着装置70を小型化するために、図12に示すような駆動機構となっている。
同図において、駆動モータ111の回転軸に装着された駆動ギア112に噛合した中間ギア113と、定着ユニット80の加熱ロール86に装着されたロールギア116が噛合するように配設されている。また、中間ギア113からギア114を介して張架ロール92のロールギア115が回転するように各ギアが噛合している。
したがって、本実施の形態では、駆動モータ111の回転によって、定着ユニット80の加熱ロール86と熱回収ベルト91の張架ロール92とが共に駆動回転されるようになっていることから、加熱ロール86と熱回収ベルト91との回転又は移動が同期を持って行われるようになる。尚、図12では、駆動される張架ロール92は熱回収部HCの入口のものとしたがこれに限るものではなく、他の張架ロール92であっても差し支えない。また、図中の定着ユニット80の加熱ロール86側の断熱カバーは省略している。
【0050】
本実施の形態における定着装置70の作動について、図10を中心に詳細に説明する。
二次転写され未定着トナー像が転写された用紙Sは、熱伝達部HTに設けられたコロナ帯電器93によって帯電された熱回収ベルト91の位置まで到達すると、熱回収ベルト91側へ吸着される。本実施の形態では、用紙Sの鉛直下方側に未定着トナー像が転写されていることから、熱回収ベルト91側へ用紙Sが吸着されても、特にトナー像を劣化させることもない。
そして、定着ユニット80に達する前に、用紙Sの腰を利用したり、剥離爪等を使用して熱回収ベルト91から用紙Sを剥離するようにして、定着ユニット80側へ向かわせ、定着ユニット80中の加圧ロール81と加熱ロール86とのニップ域を通過させることで、用紙S上の未定着トナー像は定着される。定着を終えた用紙Sは、熱回収部HCに設けられたコロナ帯電器94によって帯電された熱回収ベルト91に再度吸着され、そのまま搬送される。そして、用紙Sの腰を利用したり、剥離爪等を使用して熱回収ベルト91から剥離され、定着装置70以降の工程に搬送される。
このとき、加熱ロール86と熱回収ベルト91とは同期して回転又は移動するようになっていることから、熱回収ベルト91の移動速度と定着ユニット80の加圧ロール81と加熱ロール86とのニップ域での用紙速度は同じになるようになっているため、用紙Sの搬送性に特に支障はない。
【0051】
したがって、本実施の形態においても、熱回収部HCで熱回収を終えた熱回収ベルト91は、そのまま循環経路を循環して定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTで次に搬送される用紙Sと接触し、熱回収部HCで事前に回収した熱を用紙Sに伝達し、効果的な予備加熱が行われるようになる。
また、コロナ帯電器93,94に印加する極性や印加タイミングを考慮したので、熱回収ベルト91での不要なチャージアップを抑えることができ、長期的にも安定した用紙Sの吸着性能が確保され、効果的な予備加熱を行うことが可能になる。
【0052】
更に、本実施の形態では、熱回収ベルト91を張架する張架ロール92の断熱性を考慮し、遮熱フード100も設けたので、一層有効に熱の回収並びに伝達が行えるようになる。
また、遮熱フード100はポリカーボネート樹脂に限らず、耐熱性及び遮熱性が得られれば、他の樹脂材料でもよいし、金属等の表面処理を工夫して行うようにしても差し支えない。
【0053】
◎実施の形態4
図13は、本発明に係る画像形成装置に用いられる定着装置70の実施の形態4を示す。本実施の形態に係る画像形成装置の基本的構成は、実施の形態1と同様のため省略し、定着装置70のみを示す。また、本実施の形態の定着装置70は実施の形態3の定着装置と略同様に構成されるが、実施の形態3の定着装置70で使用した静電吸着装置としてのコロナ帯電器の代わりに、帯電部材を用いた点が実施の形態3と異なる。尚、実施の形態3と同様な構成要素については実施の形態3と同様の符号を付してここではその詳細な説明は省略する。
【0054】
本実施の形態における定着装置70は、熱伝達部HTの入口にある張架ロール92を帯電部材としている。そのため、張架ロール92には、張架ロール92をプラス側とするバイアス電源95が接続されている。
また、熱回収部HCの入口で定着ユニット80の下流直後には、熱回収ベルト91の外側にバイアス電源97が接続された板状帯電器96が熱回収ベルト91に軽く接触するようにして配設されている。この板状帯電器96は、板状帯電器96側がプラス側になるようにバイアス電源97が接続されている。尚、板状帯電器96としては、金属等の導電性部材によって構成され、定着後の用紙Sのトナーをオフセットさせないように、その表面にはフッ素系樹脂等の高離型性コート層が施されている。
【0055】
本実施の形態では、熱伝達部HTの入口にある張架ロール92にバイアス電源95を接続したことで、熱回収ベルト91側をプラスとし、マイナストナーが転写された用紙Sを熱回収ベルト91側に吸着させることができる。
一方、熱回収部HCでは、板状帯電器96によって熱回収ベルト91が熱伝達部HTと異なる極性になるように帯電される。そして、定着ユニット80を通過した用紙Sは、そのまま熱回収部HCで熱回収ベルト91に再吸着される。尚、このとき、熱回収部HCの入口にある張架ロール92を接地することで、熱回収ベルト91の帯電が安定するようになっている。
【0056】
そのため、熱回収ベルト91と用紙Sとの密着は、熱伝達部HT及び熱回収部HCの双方共に確保された状態で熱回収並びに熱伝達を行うことができ、実施の形態1と同様の効果を奏する。また、本実施の形態においても、熱伝達部HTと熱回収部HCで熱回収ベルト91には異なる極性が付与されることから、熱回収ベルト91の一部で不要なチャージアップを起こすことを防いでいる。
また、本実施の形態では、特に熱回収ベルト91の周りに構成物が少なくて済むことから、特に小型化が可能になる。更に、これにより、紙詰まり等のジャムに際して用紙の除去を行うことも容易となる利点もある。
【実施例】
【0057】
◎実施例1
本実施例は、実施の形態1と同等の構成にて、具体的な用紙の予備加熱効果を確認するために温度測定を行ったものである。
このときの各種条件は次のようにした。
使用した熱回収ベルトは、75μm厚のポリイミドフィルムとした。
張架ロールは、外径13mm、肉厚0.5mmのSUSパイプ表面に厚さ3mmの硬質ウレタンフォーム(熱伝導率0.01〜0.05W/(m・K))を被覆したものを使用した。尚、本実施例では、簡略化のため張架ロールの断熱層表面は凹凸形状とせず、平坦な形状の断熱層(発泡層)を被覆した構造とした。
また、使用した用紙は、A4判、富士ゼロックス(株)製P紙(坪量65gsm)を横送り(LEF)で給紙した。
【0058】
以上のような条件下で、定着ユニットの加熱ロールの表面温度を160℃に維持し、毎分45枚のプリント(定着ユニットでの用紙送り速度は210mm/s)を行ったところ、1枚目の用紙から熱回収を行い熱回収ベルトが1周したときに後続の用紙へ熱伝達がなされることが確認された。具体的な結果は、室温25℃に対し35℃に上昇することが観測された。また、熱回収ベルトが10周(A4判用紙24枚相当)後の用紙温度は、38℃となった。
すなわち、定着開始時の用紙温度が高くなった分、定着ユニットでの加熱エネルギーが低減できた。
また、比較として、張架ロールを表面に断熱層のないSUSパイプのみで構成し、上記内容と同様の試験を行ったところ、熱回収ベルト1周での温度は26℃であり、熱回収効果がないことが確認された。よって、張架ロールに断熱層を備える効果が明確な有意差として確認された。
【0059】
◎実施例2
本実施例は、実施例1と同様の方法でテストを行ったもので、使用した張架ロールの構成が実施例1と異なるものである。
本実施例では、実施の形態1の形状の張架ロール(例えば図6,7参照)とし、肉厚0.5mmのSUSパイプ表面に、幅1.5mm、高さ3mmの突起を7mmピッチで設けたものとした。また、本実施例で使用した断熱層の材料は、実施例1と異なり、熱伝導率は0.2W/(m・K)以下の樹脂とした。
本実施例では、張架ロールとして実施例1より熱伝導率の高い樹脂(発泡体ではない)を使用しても、その表面に凹凸を設けることで、張架ロールと熱回収ベルトとの接触面積が減り、実施例1と同様の効果が得られることが確認された。
尚、張架ロールと熱回収ベルトとの接触面積(突起部の面積)を小さくする方が、熱回収ベルトから熱を奪うことが少なくなる点で好ましいが、この接触面積は熱回収ベルトの剛性状態によっても変化するもので、熱回収ベルトの張力によっては突起部からベルトにしわが入ることにもなり、用紙の熱回収ベルトへの吸着に影響を生じることも想定される。したがって、突起部は、このようなことがないように選定する必要がある。
【0060】
◎実施例3
本実施例は、実施例1の構成で、熱回収ベルトの熱容量を変えたときの予備加熱効果を評価したものである。
本実施例では、熱回収ベルトとして、厚さ75μmと厚さ300μmのベルトとを使用した。このとき、厚さ75μmのベルトは75μmのポリイミドフィルムとし、厚さ300μmのベルトは75μmのポリイミドフィルムの裏面にシリコーンゴムシートを積層した構成とした。
尚、張架ロールは、実施例1と同様に、外径13mm、肉厚0.5mmのSUSパイプ表面に厚さ3mmの硬質ウレタンフォーム(熱伝導率0.01〜0.05W/(m・K))を被覆したものを使用し、表面は凹凸形状とせず、平坦な形状とした。
【0061】
予備加熱効果の測定は、定着ユニットへの進入直前の用紙温度を測定し、定着開始(用紙通紙開始)からの時間経過による変化を観た。
結果は、図14に示すように、厚さ75μmのベルトでは、立ち上がりが速く、10sec程度で38℃に達し、ほぼ飽和状態となった。一方、厚さ300μmのベルトでは立ち上がりが遅く、10secでは約33℃であり、50sec後も飽和に至らず、徐々に上昇している。また、約30sec後には、75μmのベルトの温度38℃を超えている。
すなわち、用紙と同程度の厚さ(熱容量)のベルト(本実施例の75μmのベルト)は立ち上がりが速く、厚いベルトは立ち上がりが遅いが、通紙時間が長くなるとベルトの蓄熱効果により厚いベルトの方が熱回収温度(効率)が高くなる。
このことは、装置の使われ方に応じてベルト厚を変えることで、熱回収効率の最適化が可能であることを示している。すなわち、数枚のプリント動作が散発的に行われるような装置の使用形態では、ベルト厚さを薄くするのがよく、一方、数十枚のプリント動作が多くなるような使用形態や連続的にプリントするような動作が行われる使用形態の場合では、ベルト厚さを比較的厚めにする方がよい。
【0062】
◎実施例4
本実施例は、実施の形態3の構成にて、実施例1と同様の評価を行ったものである。
定着前のコロナ帯電器には、用紙裏面(トナー担持面の反対側)の転写電荷と逆極性の電圧(−6.5kV)を印加した。このとき、トナーはマイナストナーを使用していることから、用紙へのトナー転写時には用紙裏面側にプラス電荷を与えて転写していることから、このような極性を印加している。尚、使用するトナーの極性が異なるときは、この逆の極性になるようにすればよい。
一方、定着後のコロナ帯電器には、定着前のコロナ帯電器と異なる極性を付与するため+6.5kVを印加するようにしている。
このように、熱回収ベルトが定着前と定着後で逆の極性の帯電を受けるので、熱回収ベルトの電位が片方の極性にチャージアップしてしまうのを防ぐことができ、別途ベルトの除電手段を設ける必要がない。また、コロナ帯電器の電圧は、熱回収ベルトが駆動される時間内に限って印加しているため、熱回収ベルトの一部が不要にチャージアップすることもない。
尚、本実施例では、実施例1同様、簡略化のため張架ロールの断熱層表面は凹凸形状とせず、平坦な形状の断熱層を被覆した構造とした。また、熱伝達部及び熱回収部の入口に位置する張架ロールでは、外径16mm、肉厚0.5mmのSUSパイプ表面に厚さ約0.5mmの断熱層(導電性フッ素樹脂層)を被覆した。
【0063】
以上のような条件下で、実施例1と同様の評価を行ったところ、本実施例においても1枚目の用紙から熱回収を行い熱回収ベルトが1周したときに後続の用紙へ熱伝達がなされることが確認された。具体的な結果は、実施例1と同様、室温25℃に対し35℃に上昇することが観測された。また、熱回収ベルトが10周(A4判用紙24枚相当)後の用紙温度は、38℃となった。
したがって、定着開始時の用紙温度が高くなった分、定着器での加熱エネルギーが低減できることが確認された。また、このとき、定着されたトナー像には乱れやオフセットによる欠落もなく、良好な定着像が得られることが確認された。
【0064】
◎実施例5
本実施例は、実施の形態4の構成にて、実施例1と同様の評価を行ったものである。
定着前の熱伝達部入口の張架ロールとして、外径16mm、肉厚0.5mmのSUSパイプに、約0.5mm厚の断熱層(導電性フッ素樹脂層)を被せたものを使用し、トナーと逆極性の電圧+4.0kVを印加した。
一方、定着後は、フッ素系樹脂をコートした0.2mm厚のSUS製板状帯電器に+4.0kVの電圧を印加した。尚、この板状帯電器と対向配置されている張架ロールは、熱伝達部入口の張架ロールと同様の構成とし、接地するようにしている。
【0065】
このような構成において、実施例1と同様、A4判、富士ゼロックス(株)製P紙(坪量65gsm)を横送り(LEF)で給紙し、連続プリントを行ったところ、実施例1と同様の結果が得られた。
尚、本実施例では、板状帯電器として0.2mm厚のSUS板を使用したが、これに限らず、板状帯電器としては、金属板の他、導電性又は半導電性の樹脂板やフィルム材を用いることができる。
【0066】
◎比較例
本比較例は、実施例1の比較のために確認したもので、図15に示すように、実施例1のコロナ帯電器の位置にて、代わりに熱回収ベルトへ接触するロール151,152を配設した構成となっている。
このロール151,152は、トナーの付着防止のために、高離型性のPFA(フッ素系樹脂)が表面にコートされた外径20mmの金属ロールとなっており、定着前のロールには−3.0kVを、定着後のロール152には+3.0kVを印加している。
このような構成にて、実施例1と同様、A4判、富士ゼロックス(株)製P紙(坪量65gsm)を横送り(LEF)で給紙し、連続プリントを行ったところ、熱回収ベルト91への用紙の吸着は特に問題なく行われたが、定着前の用紙上の未定着トナーがロール151の表面にオフセットし、画像の欠落や乱れが生じ、正常な画像が殆ど得られなかった。
したがって、本比較例から、定着前の静電吸着部材は、用紙のトナー面から離すことによる効果が大きいことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(a)(b)は本発明に係る定着装置の概要を示す説明図である。
【図2】本発明に係る定着装置の他の概要を示す説明図である。
【図3】実施の形態1に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図4】実施の形態1の定着装置を示す説明図である。
【図5】実施の形態1の定着装置内の定着ユニットを示す説明図である。
【図6】実施の形態1の定着装置の張架ロールの概観を示す説明図である。
【図7】実施の形態1の張架ロールの断面を示す説明図である。
【図8】実施の形態1の張架ロールの変形例を示す説明図である。
【図9】実施の形態2に係る定着装置の概要を示す説明図である。
【図10】実施の形態3に係る定着装置の概要を示す説明図である。
【図11】実施の形態3の遮熱フードを示す説明図である。
【図12】実施の形態3の定着装置の駆動機構を示す説明図である。
【図13】実施の形態4に係る定着装置を示す説明図である。
【図14】実施例3の結果を示す説明図である。
【図15】比較例としての定着装置を示す説明図である。
【図16】従来のヒートパイプを用いた定着装置を示す説明図である。
【図17】従来の熱伝達ベルトを用いた定着装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1…定着ユニット,2…熱回収伝達ユニット,3…ベルト部材,4…張架部材,4a…断熱層,5…記録材,6(6a,6b)…静電吸着装置,HC…熱回収部,HT…熱伝達部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式等を採用した複写機やプリンタ等の画像形成装置で用いられる定着装置及びこれを用いた画像形成装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の画像形成装置としては、感光体等に形成された各色成分トナー像を中間転写体に順次一次転写し、中間転写体上の多色トナー像を二次転写装置(一括転写装置)にて用紙に一括転写するようにしたものが知られている。
このようなカラー画像形成装置では、近年、高速化、小型化、省エネ化への要求が強く、中でも、画像形成プロセス上最もエネルギーを消費する熱定着器について、環境負荷低減を狙った省エネルギー化技術(省電力化技術)が必要とされてきている。
このような要請に対し、定着器から搬出された定着済の用紙の熱を直接的又は間接的に定着前の用紙に伝達させ、用紙を定着前に予備加熱することで、その後の定着に要する加熱エネルギーを削減したり、加熱電力を増大させずに定着速度を速めるような技術が提示されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−328412号公報(実施例、図2〜15)
【特許文献2】特開2000−338803号公報(発明の実施の形態、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような技術において、定着後の用紙を直接定着前の用紙に接触させるようにした構成にあっては、用紙が連続紙(ロール紙)の場合のみの適用に限られ、用紙がカット紙の場合は不可となり、適用可能な用紙の汎用性に欠ける問題がある。
また、図16に示すように、感光体201のトナー像が転写された用紙202を定着装置203にて定着する際、定着装置203の上流側部位204と下流側部位205との間にブロック付きヒートパイプ206を設け、下流側部位205での定着後の用紙202の熱を上流側部位204に伝達する方式が提案されている(例えば特許文献1参照)。
このようなブロック付きヒートパイプの例や、更には、伝熱ブロック、伝熱板、伝熱ロールとベルトとの組み合わせ等の伝熱手段を介して、定着後の用紙の熱を定着前の用紙に伝えるようにした構成にあっては、カット紙の適用が可能となり用紙の汎用性は確保されるが、伝熱手段での熱量が定常化して熱回収/熱伝達効果が十分に得られるには、伝熱手段そのものが用紙からの熱伝導により温度上昇を繰り返し、定着後の用紙温度に近づく必要がある。すなわち、かかる構成では、上述した伝熱手段の昇温に時間がかかるため、すぐには定着の加熱エネルギーを低減することができないという問題がある。
【0005】
特に、このような場合、数十枚以下のプリント、コピー動作を間欠的に行うことが多い中小型の画像形成装置では効果が得にくいことに繋がる。
更に、熱回収/熱伝達効果をすぐさま行う(立ち上がりを速くする)ようにしようとして、伝熱手段に補助加熱を加えるような方法では、却って多くのエネルギーを消費することもあり、省エネルギー化にとって得策とは言えない。
【0006】
また、図17に示すように、転写ベルト301と用紙搬送ベルト302とを対向配置させ、転写ベルト301の内側にヒータ303を有し、このヒータ303の両側(上流及び下流側)に圧接板304を設けて転写ベルト301と用紙搬送ベルト302との圧接状態を構成し、転写ベルト301と用紙搬送ベルト302との間で用紙305を搬送させるようにしたものにおいて、用紙搬送ベルト302の内側に用紙搬送ベルト302の移動方向とは逆向きに移動する熱伝達ベルト306を設けて、ヒータ303の下流側での吸熱を上流側に移動させ、用紙305を予備加熱しようとする提案もなされている(例えば特許文献2参照)。
しかしながら、かかる構成にあっては、用紙を搬送する搬送ベルトが熱の伝達媒体ではなく、搬送ベルトとは別体に設けた熱伝達ベルト306を用いる点から、構成が複雑且つ熱伝達効率も悪くなる。
【0007】
以上のように、これらの先行技術にあっては、いずれも定着後の用紙の熱を熱回収伝達部材を介して間接的に定着前の用紙に伝達しているに過ぎない。
本発明は、上述したような技術的課題を解決するためのものであり、定着後の記録材から熱回収を行い、定着前の記録材へ熱伝達を行うに際し、直接的な熱回収伝達を行うことで、加熱エネルギーの少ない定着装置及びこの定着装置を用いた画像形成装置を提供するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る定着装置の基本的構成は、図1(a)(b)に示すように、記録材5上のトナー像を加熱する定着ユニット1と、定着ユニット1から送り出された記録材5の熱を回収して定着ユニット1に送り込まれる記録材5に伝達する熱回収伝達ユニット2とを備えた定着装置において、熱回収伝達ユニット2は、複数の張架部材4に張架されて循環移動し且つ記録材5を搬送するベルト部材3を有し、このベルト部材3のうち、定着ユニット1の下流側には記録材5に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱回収せしめられる熱回収部HCを設けると共に、定着ユニット1の上流側には記録材5に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱伝達せしめられる熱伝達部HTを設けることを特徴とするものである。
そのため、先行技術にあっては、記録材5の搬送機能を有する搬送部材とは別に、熱回収伝達機能を持った部材を用いて間接的に熱回収伝達を行う態様であったのに対し、本願においては、ベルト部材3が記録材5に対する搬送機能と熱回収伝達機能を兼ね備え、直接的に熱回収伝達を行うようにした点が大きく異なる。
【0009】
このような技術的手段において、本願に係る定着装置は、記録材5上に形成されたトナー像を定着する際に、定着ユニット1を利用して行うものを対象とし、このとき、定着ユニット1としては記録材5上のトナー像を定着するために促進されるものであればよく、加熱単独で定着する方式や、例えば熱に圧力等を併用した方式等も含む。
また、熱回収伝達ユニット2としてベルト部材3を用いることで、比較的熱容量を小さく、記録材5との接触面積も広くすることができることから、効率的な熱の回収伝達が可能となる。
【0010】
そして、熱回収部HC及び熱伝達部HTは、ベルト部材3と記録材5との接触領域で構成され、熱回収部HCで有効に熱回収を行うことで、加熱前の記録材5へ有効に熱伝達を行うことができ、熱効率を向上させることができる。尚、ベルト部材3の数量は特に限定されず、例えば記録材5を挟み込むように2個のベルト部材3を使用しても、定着ユニット1の下流側及び上流側に熱回収部HC及び熱伝達部HTを備える態様であればよく、この場合、記録材5の搬送部材(本願のベルト部材3が相当)そのものが熱回収及び熱伝達を行うため、構成が簡単且つ熱効率がよい定着装置を実現することができる。
尚、「当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態」とは、ベルト部材3と記録材5との接触面の周囲では大気によって断熱される態様や断熱部材と接触する態様を含む。尚、記録材5をベルト部材3で両面から挟み込む態様であっても差し支えない。
【0011】
更に、本発明においては、ベルト部材3の耐熱劣化を防ぎ、長寿命化する観点から、図1(a)に示すように、ベルト部材3を定着ユニット1から迂回配置することが好ましく、また、耐熱性のベルト部材3を用いて装置構成を簡略化させる観点から、図1(b)に示すように、ベルト部材3は定着ユニット1の加熱部位を通過配置させるようにすればよい。この通過配置をさせる態様は、熱回収部HCとして定着ユニット1のニップ域から下流側の長い領域を有効に使用することができ、ベルト部材3の熱回収が早期に実施されるようになり、例えばプロセス速度が上昇しても適用できるようになる。
【0012】
そして、本発明における張架部材4は、ベルト部材3の循環経路を維持し、ベルト部材3を循環移動させるもので、ベルト部材3に熱回収部HCで有効に熱を回収し、回収された熱を有効に熱伝達部HTまで搬送する観点から、断熱層4aを備えることが好ましい。
張架部材4が断熱層4aを備えることで、ベルト部材3で回収された熱エネルギーを張架部材4との接触で減衰される量(熱伝導で張架部材4に吸熱される量)が少なくなり、ベルト部材3での熱回収/熱伝達を一層有効に作用させることができるようになる。尚、断熱層4aは、張架部材4表面に断熱材を層状に形成してもよいし、例えば張架部材4自体を断熱材で構成することも含み、層の厚さ等は特に限定されない。
【0013】
また、断熱層4aとして弾性発泡体を使用することで、発泡体の気泡の断熱効果も手伝って、断熱性能が向上するようになる。このとき、弾性発泡体の代表的態様としては、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂の発泡体が挙げられる。
更に、断熱層4aは、ベルト部材3との接触面積を小さくするように、表面に凹凸面を備えるようにすれば、張架部材4とベルト部材3との接触時に、互いの接触面積を減らすことができ、張架部材4へ吸熱される熱が少なくなり、断熱効果が一層向上する。また、このときの断熱層4aの形状は、ベルト部材3を循環可能にできる形状であれば特に限定されないが、例えば張架部材4の回転軸と交差する方向に凸形状を離散的に配置した形状としてもよいし、回転軸に傾斜する方向に離散的に配置した形状としてもよい。
【0014】
そして、本発明においては、張架部材4として中空状の金属製ロール表面に断熱層4aを備えるようにすれば、加工性、剛性に優れた張架部材4が実現できる。また、張架部材4のロールを中空態様とすることで、張架部材4自体の熱容量が一層小さくなり、ベルト部材3の熱が断熱層4aを経由して金属製ロールに伝達されても短時間に温度上昇を飽和させることができ、ベルト部材3から張架部材4への吸熱も減り、ベルト部材3による記録材5への有効な熱の伝達が短期に可能になる。更に、中空状の金属ロールを特に薄肉形状とすれば、張架部材4の熱容量が更に小さくなり、上述の効果が更に向上するようになる。
【0015】
更に、本発明にあっては、記録材5からの熱回収及び記録材5への熱伝達を有効に行う観点から、熱回収部HC及び熱伝達部HTでは、ベルト部材3は記録材5の片面のみと接するようにする方がよい。そのことにより、記録材5の熱を回収/伝達するベルト部材3の熱容量を記録材5の両面で接する場合に比べ大きくでき、更に、記録材5の片面を熱伝導率が非常に小さい大気にさらすことができ、記録材5からの熱回収及び記録材5への熱伝達が一層効率的になる。
また、この場合、ベルト部材3は、熱回収部HC及び熱伝達部HTでは記録材5のトナー像面とは逆の面で接触するようにすることが好ましく、このことにより、ベルト部材3と未定着トナー像が接触することを避けることができ、画質を損なうことがない。尚、熱回収部HC及び熱伝達部HTでは、ベルト部材3と接する記録材5の方向(記録材5がベルト部材3の上方に位置するか又は下方に位置するか)は特に限定されないが、記録材5が鉛直下方側に位置する場合、記録材5は必要な部位で上方に位置するベルト部材3に静電吸着又は吸引等により接触保持させるようにすればよい。
【0016】
更に、本発明においては、図2に示すように、ベルト部材3が定着ユニット1を迂回配置される態様において、熱伝達部HT及び熱回収部HCにて記録材5とベルト部材3との接触を有効に保つ観点から、熱伝達部HT及び熱回収部HCには、静電気力にてベルト部材3に記録材5を吸着させる静電吸着装置6を設けることが好ましい。
また、ベルト部材3への不要な電荷蓄積を防ぐ観点から、熱伝達部HT及び熱回収部HCに配設される二つの静電吸着装置6(6a,6b)は、ベルト部材3の帯電極性が互いに逆方向になるように構成されることが好ましい。
【0017】
そして、熱伝達部HTに設けられる静電吸着装置6aとしては、トナー像面への影響をなくし、画質を維持する観点から、記録材5のトナー像面と非接触配置されることが好ましい。この場合、トナー像面側からコロナ帯電器によって記録材5を静電吸着する態様や、張架部材4にトナーの帯電極性と異なる極性のバイアスを印加するようにした態様が挙げられる。
一方、熱回収部HCに設けられる静電吸着装置6bとしては、記録材5に対し非接触配置されるコロナ帯電器の態様や、トナー像面に対し接触配置される板状若しくはフィルム状の帯電部材の態様が挙げられる。尚、この板状若しくはフィルム状の帯電部材を使用する態様においては、記録材5との摩擦力を減少させ記録材5の送りをスムーズにする観点及び浮遊トナー等異物の付着を防止する観点から、帯電部材の表面には離型層が施されることが好ましい。
【0018】
更に、ベルト部材3への記録材5の吸着条件を安定化させる観点から、静電吸着装置6の駆動は、少なくともベルト部材3が駆動されている間に行われるものとすることが好ましい。また、この場合、ベルト部材3の一部が異常にチャージアップすることも防ぐことができるようになる。
【0019】
そして、本発明は、上述した定着装置のみならず、画像形成装置をも対象とするものであり、この場合、記録材5上にトナー像を形成する作像手段と、この記録材5上に形成されたトナー像を定着する定着装置とを備え、この定着装置として上述の定着装置を配設するようにすればよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の基本的構成によれば、記録材上のトナー像を加熱する定着ユニットと、定着ユニットから送り出された記録材の熱を回収して定着ユニットに送り込まれる記録材に伝達する熱回収伝達ユニットとを備えた定着装置において、複数の張架部材に張架されて循環移動し且つ記録材を搬送するベルト部材を有し、このベルト部材のうち、定着ユニットの下流側には記録材に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱回収せしめられる熱回収部を設けると共に、定着ユニットの上流側には記録材に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱伝達せしめられる熱伝達部を設けた熱回収伝達ユニットを備えたので、ベルト部材が記録材の搬送機能と記録材への熱回収伝達機能を兼ね備え、記録材への直接的な熱回収伝達を行うことができる。そのため、従来の間接的な熱回収伝達方式に比べ、定着時の加熱エネルギーを大きく低減することが可能となり、省電力化された定着装置が実現できる。
【0021】
また、本発明においては、記録材をベルト部材に静電吸着装置を用いて吸着させるようにしたので、トナー像面への影響を防ぎ、画質を維持した状態で記録材からの熱回収並びに記録材への熱伝達を有効に行うことが可能になる。
【0022】
更に、記録材上にトナー像を形成する作像手段と、記録材上に形成されたトナー像を定着する定着装置を備えた画像形成装置において、定着装置として、上述の定着装置を備えるようにすれば、省電力化された画像形成装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
図3は、本発明が適用された画像形成装置の実施の形態1を示す概要図である。
同図において、本実施の形態の画像形成装置は、プラテン11上の原稿を読み取る原稿読取装置10と、例えば電子写真方式にて四つの各色成分(本実施の形態ではイエロ、マゼンタ、シアン、ブラック)画像(トナー像)を形成する画像形成ユニット20(20a〜20d)と、各画像形成ユニット20(20a〜20d)にて形成された各色成分画像が順次転写(一次転写)されて保持される中間転写ベルト30と、中間転写ベルト30上に転写された重ね画像を用紙(記録材)に一括転写(二次転写)する二次転写装置31と、二次転写された画像を用紙上に定着させる定着装置70と、各種サイズの用紙を供給する給紙トレイ51〜53と、トナー像形成を終えた用紙を収容する排紙トレイ55と、給紙トレイ51〜53から排紙トレイ55までの用紙搬送を行う複数の用紙搬送経路とを備えたものである。
【0024】
本実施の形態において、原稿読取装置10は、例えば、プラテン11の下方に配置された原稿読取部12とプラテン11の上方に配置されたADF(Auto Document Feeder)13にて構成されている。原稿読取部12は、プラテン11上にセットされた原稿面に光を照射する光源と、原稿面からの反射光を電気信号に変換するCCD等の光電変換素子と、原稿面からの反射光を光電変換素子に導く経路を形成する適宜数のミラーと、原稿面からの反射光を光電変換素子の結像面上に結像させる結像レンズ等を備えている。そのため、原稿読取装置10では、プラテン11上にマニュアルでセットされた原稿やADF13を介してセットされた原稿を読み取り、対応する画像データに変換するようになっている。
【0025】
また、各画像形成ユニット20(20a〜20d)は、夫々感光体ドラム21を有し、各感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21が帯電される帯電ロール等の帯電装置22、帯電された感光体ドラム21上に静電潜像(主としては原稿読取装置10で読み取られた画像データ又は他の記録媒体等から取り込まれた画像データに基づく静電潜像)を書き込むレーザスキャナ等の露光装置23、感光体ドラム21上に書き込まれた静電潜像を各色成分トナーにて現像する現像装置24、感光体ドラム21上のトナー像を中間転写ベルト30上に転写する転写ロール等の一次転写装置25及び感光体ドラム21上の残留トナーを除去するドラムクリーナ26を夫々配設したものである。
尚、符号27(27a〜27d)は、現像装置24へトナーを補給するトナー補給装置であり、各色トナーが夫々の現像装置24へ補給されるようになっている。
【0026】
更に、中間転写ベルト30は、例えば、ポリイミド樹脂に導電性カーボンブラックを混練した、体積抵抗率が109〜1012Ω・cm程度のフィルム状の無端ベルトからなり、3個の張架ロール32〜34に掛け渡されている。
そして、本実施の形態では、張架ロール33を張架ロール32より下方に配置することで、中間転写ベルト30を斜め下向きになるように配置し、各画像形成ユニット20(20a〜20d)は、張架ロール33と張架ロール34との間の中間転写ベルト30に沿って、中間転写ベルト30の下方側に配置されている。そのため、画像形成ユニット20でのトナー飛散が中間転写ベルト30上に影響せず、汚れの少ない高画質な画像を維持できるようになっている。
また、本実施の形態においては、張架ロール32が二次転写装置31のバックアップロールとして働いており、画像形成ユニット20にて中間転写ベルト30上に形成されたトナー像を二次転写装置31で用紙上に一括転写するようになっている。そのため、中間転写ベルト30上にトナー像が形成された後、すぐに用紙上に二次転写されることから、中間転写ベルト30上でのトナー像の乱れを防ぎ、画質を一層向上させた画像形成が可能となっている。尚、図中の符号35は、中間転写ベルト30上の残留トナーを清掃するベルトクリーナである。
【0027】
そして、本実施の形態における定着装置70は、二次転写位置に対し略水平方向に配置され、図4に示すような構成となっている。
同図において、定着装置70は、用紙S上のトナーを溶融定着する定着ユニット80と、用紙S上の熱を定着ユニット80の下流側の熱回収部HCにて回収し、定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTにて後続の用紙Sに回収した熱を伝達する熱回収ベルト91と、この熱回収ベルト91を張架する7個の張架ロール92とで構成される熱回収伝達ユニットとしてのベルトユニット90とが設けられている。
【0028】
定着ユニット80は、図5に示すように、上部ユニット80aと下部ユニット80bとで構成されている。上部ユニット80aは、加圧ロール81と、加圧ロール81を覆うように設けられた断熱カバー82aとを有し、下部ユニット80bは、内部にヒータ87を配置した加熱ロール86と、この加熱ロール86を覆うように設けられた断熱カバー82bとを有している。また、断熱カバー82a,82bは、夫々加圧ロール81及び加熱ロール86側に金属の熱輻射板85a,85bを備え、その外側を真空断熱材84a,84bで覆った形状を採っている。尚、符号83a,83bは外装カバーである。
本実施の形態では、加圧ロール81及び加熱ロール86と夫々の断熱カバー82a,82bとは、例えば3〜20mmの距離を隔てて配置され、断熱カバー82a,82bが加圧ロール81及び加熱ロール86を互いに上下方向から挟み込むような形となっている。また、本実施の形態では、加圧ロール81と加熱ロール86とが鉛直方向に対向配置されているため、このニップ域を用紙Sが略水平方向に移動するようになっている(図4参照)が、本願における用紙搬送方向は特にこれに限定されるものではない。
【0029】
一方、熱回収ベルト91は、75μm厚のポリイミドフィルムで構成され、定着ユニット80の下流側の熱回収部HCで用紙Sと接触して用紙Sの熱を回収し、そのまま循環移動した後、定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTで用紙Sと接触し、回収した熱を用紙Sへ伝達するようになっている。
【0030】
本実施の形態における熱回収ベルト91としては、用紙Sからの熱回収及び用紙Sへの熱伝達を行う上で、その熱容量を適宜選択する必要がある。
すなわち、熱回収ベルト91の熱容量が小さすぎると、熱回収ベルト91自体の温度の立ち上がりは速くなるが、用紙Sから熱を回収しても、後続の用紙Sへの熱伝達を行うまでに回収した熱が消散し易く、また、定着前の用紙Sへ熱伝達を行う際にも十分用紙Sを加熱することができないこともあり、有効な熱伝達を行うことが困難となる。
また、反対に熱回収ベルト91の熱容量が大きすぎると、熱回収ベルト91の温度の立ち上がりは遅くなり、安定するまでの時間が必要となる。そのため、定着前の用紙Sへの有効な熱伝達を行うまでには時間がかかり、例えば数枚程度のプリントを繰り返すような使用形態では定着前の用紙Sに予備加熱を加えることが有効に行えない。
よって、熱回収ベルト91で有効に熱回収/熱伝達を行うには、使用する用紙S程度の熱容量(単位面積当たり)から数倍程度の熱容量までが好ましい。
本実施の形態では、ポリイミドの75μmのフィルムを使用していることから、用紙Sの1枚目からの熱回収を可能にしている。
【0031】
更に、本実施の形態では、熱回収ベルト91による熱回収/熱伝達をより効果的に行うようにするため、熱回収ベルト91と接触する張架ロール92への吸熱を少なくするようにしている。
本実施の形態での張架ロール92は、図6の平面図及び図7の断面図に示すように、肉厚の薄いステンレス(SUS)パイプ921上を表面が凹凸形状をしたウレタン樹脂よりなる発泡層922で覆ったもので、発泡層922の凹部922aと凸部922bとは、張架ロール92の軸に直交する方向に形成されている。尚、図6中、符号92a,92bは、張架ロール92の両端に設けられた回転軸である。
本実施の形態では、張架ロール92の表面を発泡層922で覆い、更に、発泡層922の表面を凹凸形状としたことで、熱回収ベルト91と張架ロール92との接触域では熱回収ベルト91の熱が張架ロール92側に吸収されることを少なくしている。また、肉厚の薄いSUSパイプ921を使用することで、張架ロール92自体の熱容量を小さくすることができ、熱伝導等で張架ロール92の温度が上昇しても、速く飽和することができ、張架ロール92での余分な熱の吸収が少なくなるようになっている。
そのため、熱回収ベルト91での熱回収/熱伝達を一層効率的に行うことができるようになっている。
【0032】
更に、本実施の形態では、定着ユニット80の上流側で熱回収ベルト91の内側には、熱回収ベルト91へ用紙Sを吸着するための帯電電荷を付与するコロトロン等の帯電装置(図示せず)が配置されている。
【0033】
また、図3に示すように、本実施の形態において給紙トレイ51〜53は、画像形成装置の上方と下方に分かれて設けられ、上方に設けた給紙トレイ51に頻度の高い用紙を適用させるようにすれば、給紙トレイ51への用紙補給時に、ユーザーが楽な姿勢で対応できるようになる。更に、本実施の形態においては、排紙トレイ55を給紙トレイ51の上方に設けているので、排紙トレイ55に排紙された用紙を回収する際にもユーザーが楽な姿勢で対応できるようになっている。尚、図中、符号54は、画像形成装置の側方に設けた手差し用紙が投入可能な手差しトレイである。
【0034】
更にまた、本実施の形態での用紙搬送経路は、次のように構成されている。給紙トレイ51から略鉛直下方に延びる第1搬送路61と、給紙トレイ52,53から上方に延びる第2搬送路62と、手差しトレイ54から延びる第3搬送路63とがあり、これらの搬送路は二次転写部位で合流し、主搬送路64へと繋がり、排紙トレイ55まで延びている。
また、この主搬送路64の途中から、用紙を反転して二次転写部位に戻す反転搬送路65が繋がっている。そして、これらの搬送路には、多数の搬送ロールが設置され、用紙の搬送が確実になされるようになっている。
【0035】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の基本的な画像形成プロセスについて、図3を基に説明する。今、原稿読取装置10にて読み取られた各色成分画像(イエロ、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像データが各画像形成ユニット20(20a〜20d)の露光装置23に送出されると、各画像形成ユニット20の感光体ドラム21上には各色成分毎の静電潜像が形成されると共に、対応する色トナーが収容された現像装置24にて静電潜像が顕像化され、感光体ドラム21上に各色未定着トナー像が形成される。
そして、各色成分の未定着トナー像は、各感光体ドラム21と中間転写ベルト30とが接する一次転写部位において、一次転写装置25によって中間転写ベルト30上に順次一次転写され、重ね合わせられる。
【0036】
このようにして中間転写ベルト30に一次転写された未定着トナー像は、中間転写ベルト30の回転に伴って、第1搬送路61、第2搬送路62及び第3搬送路63の合流点である二次転写部位へと搬送される。
二次転写部位では、二次転写装置31と張架ロール32との間に印加された図示外の転写バイアスにより、例えば給紙トレイ51等から搬送された用紙上に、前記中間転写ベルト30上の未定着トナー像が一括転写される。用紙上に一括転写された未定着トナー像は、定着装置70にて定着された後、主搬送路64を通って排紙トレイ55へと排出される。
【0037】
このような画像形成プロセスにおける定着装置70の作動について、図4を中心に詳細に説明する。
二次転写され未定着トナー像が転写された用紙Sは、図示外の帯電装置によって帯電された熱回収ベルト91の位置まで達すると、熱回収ベルト91側へ吸着される。本実施の形態では、用紙Sの鉛直下方側に未定着トナー像が転写されていることから、熱回収ベルト91側へ用紙Sが吸着されても、特にトナー像を劣化させることもない。
そして、定着ユニット80に達する前に、用紙Sの腰を利用したり、剥離爪等を使用して熱回収ベルト91から用紙を剥離するようにして、定着ユニット80側へ向かわせ、定着ユニット80中の加圧ロール81と加熱ロール86とのニップ域を通過させることで、用紙S上の未定着トナー像は定着される。定着を終えた用紙Sは、帯電された熱回収ベルト91に再度吸着され、熱回収ベルト91から用紙の腰を利用して剥離される。尚、熱回収ベルト91の移動速度と定着ユニット80の加圧ロール81と加熱ロール86とのニップ域での用紙速度は同じになるようにしているため、用紙Sの搬送性に特に支障はない。
【0038】
このような定着装置70にて、定着ユニット80から排出された用紙Sは、加熱ロール86による加熱を受け、温度が高くなっている(通常、定着時には使用するトナーの融点以上になるため、定着ユニット80から排出された直後もほぼ同様の温度を保っている)が、定着ユニット80の下流側の熱回収部HCでは、用紙Sが熱回収ベルト91と接することで用紙Sの熱が熱回収ベルト91側へ熱伝導を行い、熱回収ベルト91の温度を上昇させる。このとき、熱回収ベルト91として、適正な熱容量のベルトを使用していることから、熱回収ベルト91の熱容量はある程度小さくでき、その温度上昇速度(熱回収による)を速くすることができる。また、このとき、用紙Sの片側は大気にさらされているため、用紙Sの熱は熱抵抗の小さい熱回収ベルト91側へ有効に伝達され、熱回収される。
更に、熱回収部HCで熱回収を終えた熱回収ベルト91は、そのまま循環経路を循環して定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTで次に搬送される用紙Sと接触し、熱回収部HCで事前に回収した熱を用紙Sに伝達し、予備加熱するようになる。
【0039】
すなわち、本実施の形態では、75μmのポリイミドフィルムを熱回収ベルト91としたことで、用紙に対する熱回収及び熱伝達が可能な熱回収ベルト91を実現している。更に、この熱回収ベルト91を支持する張架ロール92として、上述の張架ロール92を使用することで、熱回収ベルト91が接触する張架ロール92への吸熱(張架ロール92に熱を取られ、熱回収ベルト91の温度が余分に低下する)を抑えている。
したがって、本実施の形態においては、有効に定着前の用紙を予備加熱することができるため、定着時の熱エネルギーを小さくでき、省電力化に適した画像形成装置を実現できる。また、熱回収ベルト91による熱回収の立ち上がりが速いため、熱回収ベルト91の1周目から熱回収及び後続用紙への予備加熱が可能になり、10枚以下のプリントを繰り返すような使用形態にあっても、定着時の加熱エネルギーを低減できる。更に、熱容量の小さい熱回収ベルト91を使用したので、熱回収ベルト91と用紙との熱交換が短時間で可能になり、装置の小型化が可能で、かつ、高速化も可能となる。尚、熱回収ベルト91は、適用する装置の条件によって適切な構成が異なることは云うまでもない。
【0040】
本実施の形態では、定着装置70へ進入する際のトナー像面を下方にしたが、例えばトナー像面を熱回収ベルト91側に接するようにしても、トナー飛散を防ぐように熱回収ベルト91と用紙との移動速度を制御するようにすれば使用できる。
また、熱回収ベルト91そのものを用紙搬送経路の主搬送路64(例えば図3参照)の下方側に設けることも可能で、更に、定着ユニット80の加熱源として、ロールの代わりに例えばランプヒータを使用して非接触加熱することも可能である。更にまた、加熱源を用紙の上方に配置したり、用紙の上下に配置することも可能である。
また、本実施の形態では、定着ユニット80の下流側の熱回収部HCと上流側の熱伝達部HTでの用紙Sとの接触時間をほぼ同等としたが、熱回収ベルト91と用紙Sとの温度差や装置構成の都合等により、熱回収部HCと熱伝達部HTでの用紙Sとの接触時間を変えるようにしてもよい。
【0041】
そして、本実施の形態では、熱回収ベルト91を用紙Sと片面で接触する態様を示したが、例えば熱回収ベルト91を2個設け、定着時には用紙を熱回収ベルト91で挟み込むようにしても差し支えない。この場合、用紙Sを搬送する搬送部材としての熱回収ベルト91自体が、熱回収/熱伝達を行うようになり、熱回収ベルト91側に用紙Sを吸着するための例えば帯電電荷を付与するための帯電装置等を設ける必要がなく、用紙搬送構成が簡略化される。尚、このとき、2個の熱回収ベルト91にて同等に用紙との熱交換を行うように、同様の厚さの熱回収ベルト91を設けてもよいし、厚さを変えて片側の熱回収ベルト91側に多くの熱交換を行わせるようにしてもよい。
【0042】
また、図8は、上述した実施の形態で使用した張架ロール92(例えば図6参照)と形状のみが異なる張架ロール92であり、断熱層としての発泡層922の表面形状(凹凸形状)を同図のように加工したものである。
この張架ロール92は、ロール軸に対し斜めに凸部922bを設けたもので、凸部922bが図の矢印A方向に回転するように回転軸92a,92bをセットするようにすれば、張架ロール92が回転する際、熱回収ベルト91(例えば図4参照)を絶えずベルトの外側(ベルトの移動方向と直交する方向)に向かって張る方向に力を作用させることができ、熱回収ベルト91の循環姿勢を一層安定させることができる。
このとき、上述した実施の形態と同様の発泡層922が形成されているため、この例によっても、熱回収ベルト91からの吸熱を抑えることができ、省電力化を実現した画像形成装置が可能になる。
【0043】
◎実施の形態2
図9は、本発明に係る画像形成装置に用いられる定着装置70の実施の形態2を示す。
本実施の形態に係る画像形成装置の基本的構成は、実施の形態1と同様のため省略し、定着装置70のみ示す。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様の符号を付してここではその詳細な説明は省略する。
【0044】
本実施の形態における定着装置70は、熱回収ベルト91を定着ユニット80内まで経由させたベルトニップ方式の定着装置70である。
定着ユニット80の構成は実施の形態1と同様であるが、熱回収ベルト91がこの定着ユニット80の加圧ロール81と加熱ロール86のニップ域を通過するため、熱回収ベルト91の昇温速度が実施の形態1より速くなっている。
また、本実施の形態における熱回収ベルト91は、上述のニップ域により従動され、循環移動するようになっているため、定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTで熱回収ベルト91に吸着した用紙Sは、熱回収ベルト91の移動と共に、そのまま排出位置(熱回収ベルト91の最下流側)まで移動する。
本実施の形態では、熱回収ベルト91によって用紙Sが吸着搬送されるため、定着ユニット80への巻きつきジャム防止効果がある。
【0045】
このような構成のため、本実施の形態にあっては、熱回収ベルト91での熱回収は、定着ユニット80下流側の熱回収部HCが、定着ユニット80のニップ域から排出位置までの長い距離になり、有効に熱回収を行うことができる。そのため、熱回収ベルト91の昇温速度を速めることができ、熱回収ベルト91の熱容量を実施の形態1より大きくすることも可能で、熱伝達部HTでの用紙Sへの熱伝達に際しても、十分熱伝達が可能になる。このとき、ニップ域で熱回収ベルト91を直接加熱すると却って定着エネルギーを消費するため、本実施の形態では用紙Sを介して熱回収ベルト91を昇温させるようにしている。また、本実施の形態では、熱回収ベルト91を耐熱性の高いポリイミド樹脂を使用することで、定着ユニット80内に熱回収ベルト91を通しても、熱回収ベルト91の熱劣化を抑止できるようになっている。
したがって、本実施の形態にあっても、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0046】
◎実施の形態3
図10は、本発明に係る画像形成装置に用いられる定着装置70の実施の形態3を示す。本実施の形態に係る画像形成装置の基本的構成は、実施の形態1と同様のため省略し、定着装置70のみ示す。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様の符号を付してここではその詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施の形態の定着装置70は、実施の形態1の定着装置(例えば図4参照)と略同様に構成されるが、熱伝達部HT及び熱回収部HCの入口部分の張架ロール92に対向して、熱回収ベルト91と離間した位置に例えばコロトロン等のコロナ帯電器93,94が配設されている点が異なる。
この2個のコロナ帯電器93,94は、夫々図示外の電源により、熱回収ベルト91の帯電電位が熱伝達部HTではプラス側(トナーの帯電電荷と異なる極性)、熱回収部HCではマイナス側になるようにしている。用紙Sが定着ユニット80に入る前は熱回収ベルト91がトナーを引きつける方向に作用することから、トナー画像の乱れを抑えることができ、定着後は逆極性とすることで、熱回収ベルト91自体に不要なチャージアップを来すことがないようになっている。
尚、コロナ帯電器93,94と対向する張架ロール92は、コロナ帯電器93,94の対向電極を構成することから、張架ロール92の断熱層の厚さ等は適宜選定されることはいうまでもない。例えば、張架ロール92表面に断熱性を有する導電性樹脂(カーボンブラック等)を配合したフッ素系樹脂等を用いることで、断熱効果と静電的な用紙吸着効果を得るようにすることもできる。
更に、本実施の形態では、コロナ帯電器93,94への電圧印加は、熱回収ベルト91が駆動される時間内に限って行われるようになっているため、熱回収ベルト91の一部がチャージアップすることもない。
【0048】
更に、本実施の形態では、ベルトユニット90の上部には、ベルトユニット90からの放熱を防ぐために、図11に示すような遮熱フード100が設けられている。この遮熱フード100は、ベルトユニット90を覆うように設けられ、ベルトユニット90の張架ロール92の両端部を回転可能に支持する2枚の支持プレート101(101a,101b)と、ベルトユニット90を上部から覆う2枚の天板102,103とで構成されている。これらの遮熱フード100は、いずれもポリカーボネート樹脂で作製され、熱回収ベルト91等からの熱の伝導、対流、輻射を抑え、熱回収ベルト91の熱が十分維持されるようになっている。
【0049】
そして、本実施の形態では、ベルトユニット90の駆動は、定着装置70を小型化するために、図12に示すような駆動機構となっている。
同図において、駆動モータ111の回転軸に装着された駆動ギア112に噛合した中間ギア113と、定着ユニット80の加熱ロール86に装着されたロールギア116が噛合するように配設されている。また、中間ギア113からギア114を介して張架ロール92のロールギア115が回転するように各ギアが噛合している。
したがって、本実施の形態では、駆動モータ111の回転によって、定着ユニット80の加熱ロール86と熱回収ベルト91の張架ロール92とが共に駆動回転されるようになっていることから、加熱ロール86と熱回収ベルト91との回転又は移動が同期を持って行われるようになる。尚、図12では、駆動される張架ロール92は熱回収部HCの入口のものとしたがこれに限るものではなく、他の張架ロール92であっても差し支えない。また、図中の定着ユニット80の加熱ロール86側の断熱カバーは省略している。
【0050】
本実施の形態における定着装置70の作動について、図10を中心に詳細に説明する。
二次転写され未定着トナー像が転写された用紙Sは、熱伝達部HTに設けられたコロナ帯電器93によって帯電された熱回収ベルト91の位置まで到達すると、熱回収ベルト91側へ吸着される。本実施の形態では、用紙Sの鉛直下方側に未定着トナー像が転写されていることから、熱回収ベルト91側へ用紙Sが吸着されても、特にトナー像を劣化させることもない。
そして、定着ユニット80に達する前に、用紙Sの腰を利用したり、剥離爪等を使用して熱回収ベルト91から用紙Sを剥離するようにして、定着ユニット80側へ向かわせ、定着ユニット80中の加圧ロール81と加熱ロール86とのニップ域を通過させることで、用紙S上の未定着トナー像は定着される。定着を終えた用紙Sは、熱回収部HCに設けられたコロナ帯電器94によって帯電された熱回収ベルト91に再度吸着され、そのまま搬送される。そして、用紙Sの腰を利用したり、剥離爪等を使用して熱回収ベルト91から剥離され、定着装置70以降の工程に搬送される。
このとき、加熱ロール86と熱回収ベルト91とは同期して回転又は移動するようになっていることから、熱回収ベルト91の移動速度と定着ユニット80の加圧ロール81と加熱ロール86とのニップ域での用紙速度は同じになるようになっているため、用紙Sの搬送性に特に支障はない。
【0051】
したがって、本実施の形態においても、熱回収部HCで熱回収を終えた熱回収ベルト91は、そのまま循環経路を循環して定着ユニット80の上流側の熱伝達部HTで次に搬送される用紙Sと接触し、熱回収部HCで事前に回収した熱を用紙Sに伝達し、効果的な予備加熱が行われるようになる。
また、コロナ帯電器93,94に印加する極性や印加タイミングを考慮したので、熱回収ベルト91での不要なチャージアップを抑えることができ、長期的にも安定した用紙Sの吸着性能が確保され、効果的な予備加熱を行うことが可能になる。
【0052】
更に、本実施の形態では、熱回収ベルト91を張架する張架ロール92の断熱性を考慮し、遮熱フード100も設けたので、一層有効に熱の回収並びに伝達が行えるようになる。
また、遮熱フード100はポリカーボネート樹脂に限らず、耐熱性及び遮熱性が得られれば、他の樹脂材料でもよいし、金属等の表面処理を工夫して行うようにしても差し支えない。
【0053】
◎実施の形態4
図13は、本発明に係る画像形成装置に用いられる定着装置70の実施の形態4を示す。本実施の形態に係る画像形成装置の基本的構成は、実施の形態1と同様のため省略し、定着装置70のみを示す。また、本実施の形態の定着装置70は実施の形態3の定着装置と略同様に構成されるが、実施の形態3の定着装置70で使用した静電吸着装置としてのコロナ帯電器の代わりに、帯電部材を用いた点が実施の形態3と異なる。尚、実施の形態3と同様な構成要素については実施の形態3と同様の符号を付してここではその詳細な説明は省略する。
【0054】
本実施の形態における定着装置70は、熱伝達部HTの入口にある張架ロール92を帯電部材としている。そのため、張架ロール92には、張架ロール92をプラス側とするバイアス電源95が接続されている。
また、熱回収部HCの入口で定着ユニット80の下流直後には、熱回収ベルト91の外側にバイアス電源97が接続された板状帯電器96が熱回収ベルト91に軽く接触するようにして配設されている。この板状帯電器96は、板状帯電器96側がプラス側になるようにバイアス電源97が接続されている。尚、板状帯電器96としては、金属等の導電性部材によって構成され、定着後の用紙Sのトナーをオフセットさせないように、その表面にはフッ素系樹脂等の高離型性コート層が施されている。
【0055】
本実施の形態では、熱伝達部HTの入口にある張架ロール92にバイアス電源95を接続したことで、熱回収ベルト91側をプラスとし、マイナストナーが転写された用紙Sを熱回収ベルト91側に吸着させることができる。
一方、熱回収部HCでは、板状帯電器96によって熱回収ベルト91が熱伝達部HTと異なる極性になるように帯電される。そして、定着ユニット80を通過した用紙Sは、そのまま熱回収部HCで熱回収ベルト91に再吸着される。尚、このとき、熱回収部HCの入口にある張架ロール92を接地することで、熱回収ベルト91の帯電が安定するようになっている。
【0056】
そのため、熱回収ベルト91と用紙Sとの密着は、熱伝達部HT及び熱回収部HCの双方共に確保された状態で熱回収並びに熱伝達を行うことができ、実施の形態1と同様の効果を奏する。また、本実施の形態においても、熱伝達部HTと熱回収部HCで熱回収ベルト91には異なる極性が付与されることから、熱回収ベルト91の一部で不要なチャージアップを起こすことを防いでいる。
また、本実施の形態では、特に熱回収ベルト91の周りに構成物が少なくて済むことから、特に小型化が可能になる。更に、これにより、紙詰まり等のジャムに際して用紙の除去を行うことも容易となる利点もある。
【実施例】
【0057】
◎実施例1
本実施例は、実施の形態1と同等の構成にて、具体的な用紙の予備加熱効果を確認するために温度測定を行ったものである。
このときの各種条件は次のようにした。
使用した熱回収ベルトは、75μm厚のポリイミドフィルムとした。
張架ロールは、外径13mm、肉厚0.5mmのSUSパイプ表面に厚さ3mmの硬質ウレタンフォーム(熱伝導率0.01〜0.05W/(m・K))を被覆したものを使用した。尚、本実施例では、簡略化のため張架ロールの断熱層表面は凹凸形状とせず、平坦な形状の断熱層(発泡層)を被覆した構造とした。
また、使用した用紙は、A4判、富士ゼロックス(株)製P紙(坪量65gsm)を横送り(LEF)で給紙した。
【0058】
以上のような条件下で、定着ユニットの加熱ロールの表面温度を160℃に維持し、毎分45枚のプリント(定着ユニットでの用紙送り速度は210mm/s)を行ったところ、1枚目の用紙から熱回収を行い熱回収ベルトが1周したときに後続の用紙へ熱伝達がなされることが確認された。具体的な結果は、室温25℃に対し35℃に上昇することが観測された。また、熱回収ベルトが10周(A4判用紙24枚相当)後の用紙温度は、38℃となった。
すなわち、定着開始時の用紙温度が高くなった分、定着ユニットでの加熱エネルギーが低減できた。
また、比較として、張架ロールを表面に断熱層のないSUSパイプのみで構成し、上記内容と同様の試験を行ったところ、熱回収ベルト1周での温度は26℃であり、熱回収効果がないことが確認された。よって、張架ロールに断熱層を備える効果が明確な有意差として確認された。
【0059】
◎実施例2
本実施例は、実施例1と同様の方法でテストを行ったもので、使用した張架ロールの構成が実施例1と異なるものである。
本実施例では、実施の形態1の形状の張架ロール(例えば図6,7参照)とし、肉厚0.5mmのSUSパイプ表面に、幅1.5mm、高さ3mmの突起を7mmピッチで設けたものとした。また、本実施例で使用した断熱層の材料は、実施例1と異なり、熱伝導率は0.2W/(m・K)以下の樹脂とした。
本実施例では、張架ロールとして実施例1より熱伝導率の高い樹脂(発泡体ではない)を使用しても、その表面に凹凸を設けることで、張架ロールと熱回収ベルトとの接触面積が減り、実施例1と同様の効果が得られることが確認された。
尚、張架ロールと熱回収ベルトとの接触面積(突起部の面積)を小さくする方が、熱回収ベルトから熱を奪うことが少なくなる点で好ましいが、この接触面積は熱回収ベルトの剛性状態によっても変化するもので、熱回収ベルトの張力によっては突起部からベルトにしわが入ることにもなり、用紙の熱回収ベルトへの吸着に影響を生じることも想定される。したがって、突起部は、このようなことがないように選定する必要がある。
【0060】
◎実施例3
本実施例は、実施例1の構成で、熱回収ベルトの熱容量を変えたときの予備加熱効果を評価したものである。
本実施例では、熱回収ベルトとして、厚さ75μmと厚さ300μmのベルトとを使用した。このとき、厚さ75μmのベルトは75μmのポリイミドフィルムとし、厚さ300μmのベルトは75μmのポリイミドフィルムの裏面にシリコーンゴムシートを積層した構成とした。
尚、張架ロールは、実施例1と同様に、外径13mm、肉厚0.5mmのSUSパイプ表面に厚さ3mmの硬質ウレタンフォーム(熱伝導率0.01〜0.05W/(m・K))を被覆したものを使用し、表面は凹凸形状とせず、平坦な形状とした。
【0061】
予備加熱効果の測定は、定着ユニットへの進入直前の用紙温度を測定し、定着開始(用紙通紙開始)からの時間経過による変化を観た。
結果は、図14に示すように、厚さ75μmのベルトでは、立ち上がりが速く、10sec程度で38℃に達し、ほぼ飽和状態となった。一方、厚さ300μmのベルトでは立ち上がりが遅く、10secでは約33℃であり、50sec後も飽和に至らず、徐々に上昇している。また、約30sec後には、75μmのベルトの温度38℃を超えている。
すなわち、用紙と同程度の厚さ(熱容量)のベルト(本実施例の75μmのベルト)は立ち上がりが速く、厚いベルトは立ち上がりが遅いが、通紙時間が長くなるとベルトの蓄熱効果により厚いベルトの方が熱回収温度(効率)が高くなる。
このことは、装置の使われ方に応じてベルト厚を変えることで、熱回収効率の最適化が可能であることを示している。すなわち、数枚のプリント動作が散発的に行われるような装置の使用形態では、ベルト厚さを薄くするのがよく、一方、数十枚のプリント動作が多くなるような使用形態や連続的にプリントするような動作が行われる使用形態の場合では、ベルト厚さを比較的厚めにする方がよい。
【0062】
◎実施例4
本実施例は、実施の形態3の構成にて、実施例1と同様の評価を行ったものである。
定着前のコロナ帯電器には、用紙裏面(トナー担持面の反対側)の転写電荷と逆極性の電圧(−6.5kV)を印加した。このとき、トナーはマイナストナーを使用していることから、用紙へのトナー転写時には用紙裏面側にプラス電荷を与えて転写していることから、このような極性を印加している。尚、使用するトナーの極性が異なるときは、この逆の極性になるようにすればよい。
一方、定着後のコロナ帯電器には、定着前のコロナ帯電器と異なる極性を付与するため+6.5kVを印加するようにしている。
このように、熱回収ベルトが定着前と定着後で逆の極性の帯電を受けるので、熱回収ベルトの電位が片方の極性にチャージアップしてしまうのを防ぐことができ、別途ベルトの除電手段を設ける必要がない。また、コロナ帯電器の電圧は、熱回収ベルトが駆動される時間内に限って印加しているため、熱回収ベルトの一部が不要にチャージアップすることもない。
尚、本実施例では、実施例1同様、簡略化のため張架ロールの断熱層表面は凹凸形状とせず、平坦な形状の断熱層を被覆した構造とした。また、熱伝達部及び熱回収部の入口に位置する張架ロールでは、外径16mm、肉厚0.5mmのSUSパイプ表面に厚さ約0.5mmの断熱層(導電性フッ素樹脂層)を被覆した。
【0063】
以上のような条件下で、実施例1と同様の評価を行ったところ、本実施例においても1枚目の用紙から熱回収を行い熱回収ベルトが1周したときに後続の用紙へ熱伝達がなされることが確認された。具体的な結果は、実施例1と同様、室温25℃に対し35℃に上昇することが観測された。また、熱回収ベルトが10周(A4判用紙24枚相当)後の用紙温度は、38℃となった。
したがって、定着開始時の用紙温度が高くなった分、定着器での加熱エネルギーが低減できることが確認された。また、このとき、定着されたトナー像には乱れやオフセットによる欠落もなく、良好な定着像が得られることが確認された。
【0064】
◎実施例5
本実施例は、実施の形態4の構成にて、実施例1と同様の評価を行ったものである。
定着前の熱伝達部入口の張架ロールとして、外径16mm、肉厚0.5mmのSUSパイプに、約0.5mm厚の断熱層(導電性フッ素樹脂層)を被せたものを使用し、トナーと逆極性の電圧+4.0kVを印加した。
一方、定着後は、フッ素系樹脂をコートした0.2mm厚のSUS製板状帯電器に+4.0kVの電圧を印加した。尚、この板状帯電器と対向配置されている張架ロールは、熱伝達部入口の張架ロールと同様の構成とし、接地するようにしている。
【0065】
このような構成において、実施例1と同様、A4判、富士ゼロックス(株)製P紙(坪量65gsm)を横送り(LEF)で給紙し、連続プリントを行ったところ、実施例1と同様の結果が得られた。
尚、本実施例では、板状帯電器として0.2mm厚のSUS板を使用したが、これに限らず、板状帯電器としては、金属板の他、導電性又は半導電性の樹脂板やフィルム材を用いることができる。
【0066】
◎比較例
本比較例は、実施例1の比較のために確認したもので、図15に示すように、実施例1のコロナ帯電器の位置にて、代わりに熱回収ベルトへ接触するロール151,152を配設した構成となっている。
このロール151,152は、トナーの付着防止のために、高離型性のPFA(フッ素系樹脂)が表面にコートされた外径20mmの金属ロールとなっており、定着前のロールには−3.0kVを、定着後のロール152には+3.0kVを印加している。
このような構成にて、実施例1と同様、A4判、富士ゼロックス(株)製P紙(坪量65gsm)を横送り(LEF)で給紙し、連続プリントを行ったところ、熱回収ベルト91への用紙の吸着は特に問題なく行われたが、定着前の用紙上の未定着トナーがロール151の表面にオフセットし、画像の欠落や乱れが生じ、正常な画像が殆ど得られなかった。
したがって、本比較例から、定着前の静電吸着部材は、用紙のトナー面から離すことによる効果が大きいことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(a)(b)は本発明に係る定着装置の概要を示す説明図である。
【図2】本発明に係る定着装置の他の概要を示す説明図である。
【図3】実施の形態1に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図4】実施の形態1の定着装置を示す説明図である。
【図5】実施の形態1の定着装置内の定着ユニットを示す説明図である。
【図6】実施の形態1の定着装置の張架ロールの概観を示す説明図である。
【図7】実施の形態1の張架ロールの断面を示す説明図である。
【図8】実施の形態1の張架ロールの変形例を示す説明図である。
【図9】実施の形態2に係る定着装置の概要を示す説明図である。
【図10】実施の形態3に係る定着装置の概要を示す説明図である。
【図11】実施の形態3の遮熱フードを示す説明図である。
【図12】実施の形態3の定着装置の駆動機構を示す説明図である。
【図13】実施の形態4に係る定着装置を示す説明図である。
【図14】実施例3の結果を示す説明図である。
【図15】比較例としての定着装置を示す説明図である。
【図16】従来のヒートパイプを用いた定着装置を示す説明図である。
【図17】従来の熱伝達ベルトを用いた定着装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1…定着ユニット,2…熱回収伝達ユニット,3…ベルト部材,4…張架部材,4a…断熱層,5…記録材,6(6a,6b)…静電吸着装置,HC…熱回収部,HT…熱伝達部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材上のトナー像を加熱する定着ユニットと、定着ユニットから送り出された記録材の熱を回収して定着ユニットに送り込まれる記録材に伝達する熱回収伝達ユニットとを備えた定着装置において、
熱回収伝達ユニットは、複数の張架部材に張架されて循環移動し且つ記録材を搬送するベルト部材を有し、
このベルト部材のうち、定着ユニットの下流側には記録材に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱回収が行われる熱回収部を設けると共に、定着ユニットの上流側には記録材に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱伝達が行われる熱伝達部を設けることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
ベルト部材の熱回収部及び熱伝達部は、記録材の片面のみと接触することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1記載の定着装置において、
ベルト部材は、定着ユニットを迂回配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1記載の定着装置において、
ベルト部材は、定着ユニットの加熱部位を通過配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1記載の定着装置において、
張架部材は、断熱層を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項2記載の定着装置において、
ベルト部材は、熱回収部及び熱伝達部では記録材のトナー像面とは逆の面で接触することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項5記載の定着装置において、
張架部材は、中空状の金属製ロール表面に断熱層を備えるものであることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項5記載の定着装置において、
断熱層は、弾性発泡体によって構成されることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項5記載の定着装置において、
断熱層は、ベルト部材との接触面積を小さくするように、表面に凹凸面を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項3記載の定着装置において、
熱伝達部及び熱回収部には、静電気力にてベルト部材に記録材を吸着させる静電吸着装置を設けることを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項10記載の定着装置において、
熱伝達部及び熱回収部に配設される二つの静電吸着装置は、ベルト部材の帯電極性が互いに逆方向になるように構成されることを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項10記載の定着装置において、
熱伝達部に設けられる静電吸着装置は、記録材のトナー像面と非接触配置されることを特徴とする定着装置。
【請求項13】
請求項12記載の定着装置において、
熱伝達部に設けられる静電吸着装置は、コロナ帯電器であることを特徴とする定着装置。
【請求項14】
請求項12記載の定着装置において、
熱伝達部に設けられる静電吸着装置は、ベルト部材の張架部材にトナーの帯電極性と異なる極性のバイアスを印加するものであることを特徴とする定着装置。
【請求項15】
請求項10記載の定着装置において、
熱回収部に設けられる静電吸着装置は、記録材に対し非接触配置されるコロナ帯電器であることを特徴とする定着装置。
【請求項16】
請求項10記載の定着装置において、
熱回収部に設けられる静電吸着装置は、記録材のトナー像面に対し接触配置される板状若しくはフィルム状の帯電部材であることを特徴とする定着装置。
【請求項17】
請求項16記載の定着装置において、
前記帯電部材の表面は、離型層が施されていることを特徴とする定着装置。
【請求項18】
請求項10記載の定着装置において、
静電吸着装置の駆動は、少なくともベルト部材が駆動されている間に行われるものであることを特徴とする定着装置。
【請求項19】
記録材上にトナー像を形成する作像エンジンと、
この記録材上に形成されたトナー像を定着する請求項1記載の定着装置とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
記録材上のトナー像を加熱する定着ユニットと、定着ユニットから送り出された記録材の熱を回収して定着ユニットに送り込まれる記録材に伝達する熱回収伝達ユニットとを備えた定着装置において、
熱回収伝達ユニットは、複数の張架部材に張架されて循環移動し且つ記録材を搬送するベルト部材を有し、
このベルト部材のうち、定着ユニットの下流側には記録材に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱回収が行われる熱回収部を設けると共に、定着ユニットの上流側には記録材に接触し且つ当該接触部位に面した領域周囲を断熱した状態で熱伝達が行われる熱伝達部を設けることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
ベルト部材の熱回収部及び熱伝達部は、記録材の片面のみと接触することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1記載の定着装置において、
ベルト部材は、定着ユニットを迂回配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1記載の定着装置において、
ベルト部材は、定着ユニットの加熱部位を通過配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1記載の定着装置において、
張架部材は、断熱層を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項2記載の定着装置において、
ベルト部材は、熱回収部及び熱伝達部では記録材のトナー像面とは逆の面で接触することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項5記載の定着装置において、
張架部材は、中空状の金属製ロール表面に断熱層を備えるものであることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項5記載の定着装置において、
断熱層は、弾性発泡体によって構成されることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項5記載の定着装置において、
断熱層は、ベルト部材との接触面積を小さくするように、表面に凹凸面を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項3記載の定着装置において、
熱伝達部及び熱回収部には、静電気力にてベルト部材に記録材を吸着させる静電吸着装置を設けることを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項10記載の定着装置において、
熱伝達部及び熱回収部に配設される二つの静電吸着装置は、ベルト部材の帯電極性が互いに逆方向になるように構成されることを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項10記載の定着装置において、
熱伝達部に設けられる静電吸着装置は、記録材のトナー像面と非接触配置されることを特徴とする定着装置。
【請求項13】
請求項12記載の定着装置において、
熱伝達部に設けられる静電吸着装置は、コロナ帯電器であることを特徴とする定着装置。
【請求項14】
請求項12記載の定着装置において、
熱伝達部に設けられる静電吸着装置は、ベルト部材の張架部材にトナーの帯電極性と異なる極性のバイアスを印加するものであることを特徴とする定着装置。
【請求項15】
請求項10記載の定着装置において、
熱回収部に設けられる静電吸着装置は、記録材に対し非接触配置されるコロナ帯電器であることを特徴とする定着装置。
【請求項16】
請求項10記載の定着装置において、
熱回収部に設けられる静電吸着装置は、記録材のトナー像面に対し接触配置される板状若しくはフィルム状の帯電部材であることを特徴とする定着装置。
【請求項17】
請求項16記載の定着装置において、
前記帯電部材の表面は、離型層が施されていることを特徴とする定着装置。
【請求項18】
請求項10記載の定着装置において、
静電吸着装置の駆動は、少なくともベルト部材が駆動されている間に行われるものであることを特徴とする定着装置。
【請求項19】
記録材上にトナー像を形成する作像エンジンと、
この記録材上に形成されたトナー像を定着する請求項1記載の定着装置とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−72300(P2006−72300A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67792(P2005−67792)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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