説明

室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物

【課題】硬化物の防カビ性が常態でも、熱水へ浸せきした後も優れると共に、紫外線の露光によっても黄変しない、各種被着体に対する接着性が優れる脱オキシムタイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】(A)25℃における粘度が100〜500,000cStであり、末端がシラノール基またはアルコキシ基で封鎖されたポリオルガノシロキサン100重量部、
(B)加水分解性オルガノシラン、その部分加水分解物又はこれらの混合物0.1〜30重量部、
(C)トリアゾリル基含有化合物0.01〜0.08重量部、
(D)ベンゾイミダゾリルカルバメート化合物0.01〜5重量部、
を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物が防カビ性、耐候性等に優れ、シーリング材等に有用な室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の水分の湿気により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、取り扱いが容易であり、その硬化物が耐候性に優れるため、建材用シーリング材等に用いられている。特に脱オキシムタイプのオルガノポリシロキサン組成物は、各種被着体に対する接着性が良好であり、しかも耐候性にも優れるため、水回り用のシーリング材として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
従来、このような水回りに用いる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物としては、硬化物にカビが発生・生育するのを防止するためにトリアゾリル基含有化合物(特許文献1)やベンズイミダゾール系化合物(特許文献2)等の防カビ剤を組成物中に混練したものが知られている。
【0004】
しかし、トリアゾリル基含有化合物を防カビ剤として十分な効力が発現する程度に含有するものは硬化物の防カビ性は極めて良好であるが、紫外線の露光を受けると著しく黄変する欠点がある。
【0005】
一方、ベンズイミダゾール系化合物を含むものは紫外線露光の黄変は極めて少なく、硬化物の常態における防カビ性は優れるものの、硬化物を熱水へ浸せきした後では防カビ性が著しく乏しくなってしまう欠点がある。
【0006】
【特許文献1】特開平9-25410号公報
【特許文献2】特開平6-40821号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、硬化物の防カビ性が常態でも、熱水へ浸せきした後も優れると共に、紫外線の露光によっても黄変せず、各種被着体に対する接着性が優れる脱オキシムタイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(A)25℃における粘度が100〜500,000cStであり、末端がシラノール基またはアルコキシ基で封鎖されたポリオルガノシロキサン100重量部、
(B)下記一般式(1):
1 a Si(ON=CR2 2(4-a) (1)
(式中、R1 は独立に1価脂肪族飽和炭化水素基であり、R2 は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは1〜2の整数である)で示される加水分解性オルガノシラン、その部分加水分解物又はこれらの混合物0.1〜30重量部、
(C)下記一般式(2):
Y−CR34 −CR56 −X (2)
(式中、R3 及びR4 は独立に水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基であり、R5 及びR6 は独立にアルコキシ基、水素原子又はアルキル基であり、Yは水酸基又はニトリル基を表し、Xはトリアゾリル基である)で表されるトリアゾリル基含有化合物0.01〜0.08重量部、
(D)下記一般式(3)

(式中、R7 は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子またはニトロ基を表わし;R8 は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のアルコキシアルキル基を表わし;R9 は水素原子、N−置換もしくは非置換のカルバモイル基、またはN−置換もしくは非置換のカルバモイルオキシ基を表わす)で示されるベンゾイミダゾリルカルバメート化合物0.01〜5重量部を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物は、防カビ性が常態でも熱水へ浸せきした後も優れると共に、紫外線の露光によっても黄変せず、各種被着体に対する接着性が優れる。したがって、建材用シーリング材、特に水回り用のシーリング材として適する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)成分は、通常この種の室温で硬化しうる縮合型ポリオルガノシロキサン組成物に用いられる、末端がシラノール基またはアルコキシ基で封鎖されたポリジオルガノシロキサンで、特に硬化前の組成物に適度の押出し性を与えるとともに、硬化後のゴム状弾性体に優れた機械的性質を与えるために、25℃における粘度が100〜500,000cSt の範囲であることが必要である。
粘度が100cSt 未満では硬化後のゴム状弾性体の機械的特性が十分でなく、500,000cSt を越えると均一な組成物が得にくく、押出し作業性も悪くなる。とくに好ましい範囲は、2,000〜100,000cSt である。
すなわち、2,000cSt 未満では、使用条件によっては硬化前に垂れ流れて周辺を汚染することがあり、100,000cSt を越えると押出作業性が悪くなる傾向がある。
【0011】
ケイ素原子に直接結合する有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルのようなアルキル基;ビニル、アリルのようなアルケニル基;フェニルのようなアリール基、2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルのようなアラルキル基;およびクロロメチル基、β−シアノエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基のような1価の置換炭化水素基などが例示されるが、合成の容易さからメチル基、ビニル基、またはフェニル基が一般に有利であり、その他の有機基は、硬化後のゴム状弾性体に耐油性や塗装適性のような特殊な性質を与えるときにのみ推奨される。
また、中でもメチル基は原料中間体が最も容易に得られるばかりでなく、シロキサンの重合度の割に最も低い粘度を与え、硬化前の組成物の押出し作業性と硬化後のゴム状弾性体の物性のバランスを有利にするので、全有機基の85%以上がメチル基であることが好ましく、実質的にすべての有機基がメチル基であることがさらに好ましい。
ただし、硬化後のゴム状弾性体に耐寒性や耐熱性を必要とするときには、有機基の一部にフェニル基を用いることが推奨される。
【0012】
本発明に用いる(B)加水分解性オルガノシランは、下記一般式(1)で表され、本発明の組成物において架橋剤として作用する。
1 a Si(ON=CR2 2(4-a) (1)
式中、R1 は不飽和基を含まない必要があり、不飽和基があると変色の原因となる。R1 の1価脂肪族飽和炭化水素基の代表例としては、炭素原子数が1〜10のものが挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基等が挙げられ、また、該脂肪族飽和炭化水素基は、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部がフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等のハロゲン置換炭化水素基や3−アミノプロピル基、シアノエチル基であってもよい。特に好適なR1 は、メチル基である。
2で示される非置換又は置換の1価炭化水素基としては、好ましくは脂肪族飽和炭化水素基であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基である。また、一般式(2)のaは、1〜2の整数である。
【0013】
このような加水分解性オルガノシランの具体例としては、例えば、メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シランなどのケトオキシムシランが挙げられる。
これらの加水分解性オルガノシラン及びその部分加水分解物は1種単独で或いは2種以上を組合せて用いてもよく、また、(B)成分としては、加水分解性オルガノシランと部分加水分解物の混合物であってもよい。
【0014】
このような加水分解性オルガノシラン、その部分加水分解物又はこれらの混合物の使用量は、前記成分(A)100重量部当たり、通常、0.1〜30重量部であり、好ましくは1〜15重量部である。この使用量が少なすぎると得られる組成物の硬化の際の架橋が不十分になり、硬化物がゴム弾性体にならない場合がある。逆に多すぎると、硬化物の機械的強度が低下する場合がある。
【0015】
本発明に用いる(C)トリアゾリル基含有化合物は、下記一般式(2)で表され、本発明の組成物に防カビ性、耐熱性及び耐紫外線性を付与する成分である。
Y−CR34 −CR56 −X (2)
式中、R3 又はR4 は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である。この1価炭化水素基としては、好ましくは脂肪族飽和炭化水素基である。また、特に好適なR3 及びR4 は、水素原子、2−(4−クロロフェニル)エチル基、t−ブチル基、4−クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、n−ブチル基である。
5 及びR6 はアルコキシ基、水素原子又はアルキル基であり、このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、さらには、これらのアルコキシ基がビフェニリル基に結合したビフェニリルアルコキシ基もここでいうアルコキシ基に含まれる。また、特に好適なR5 及びR6 は、水素原子、ビフェニリルアルコキシ基である。
また、Xはトリアゾリル基であり、Yは水酸基又はニトリル基である。
【0016】
トリアゾリル基含有化合物の具体例としては、製品名テブコナゾールである2−(4−クロロフェニル)エチル−α−(1, 1−ジメチルエチル)−1H−1, 2, 4−トリアゾール−1−イル−エタノール、製品名ヘキサコナゾールである(RS)−2−(2,4−ジクロロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ヘキサン−2−オール、製品名ミクロブタニルである2−p−クロロフェニル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ヘキサンニトリル、製品名ビテルタノールall −rac −1−(ビフェニル−4−イルオキシ)−3,3−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール等が挙げられ、中でも2−(4−クロロフェニル)エチル−α−(1, 1−ジメチルエチル)−1H−1, 2, 4−トリアゾール−1−イル−エタノール、製品名テブコナゾールが好ましい。
【0017】
このようなトリアゾリル基含有化合物の使用量は、前記成分(A)100重量部当たり、通常、0.01〜0.08重量部であり、好ましくは0.05〜0.08重量部である。この使用量が少なすぎると得られる組成物の硬化物の常態や熱水浸せき後の防カビ性が不十分になる場合がある。逆に多すぎると、増加に見合う程前記防カビ性等の効果の向上が期待できず、また硬化物が著しく黄変する欠点がある。
【0018】
(D)成分のベンゾイミダゾリルカルバメート化合物は下記一般式(3)で示され、微生物の繁殖を防ぐ働きをするものである。


この成分は、従来の防カビ剤に比べて効果の持続性があり、また組成物の物性を低下させることがない。製造法は公知で、合成の容易なことから、R7 は水素原子またはメチル基が好ましく、メチル基の場合はベンゾイミダゾール骨格の5位または6位に結合するのが好ましい。同じく合成の容易なことから、R8 はメチル基が好ましく、R9 は水素原子であるか、あるいは炭素数1〜4のアルキル基で置換されたカルバモイル基またはカルバモイルオキシ基が好ましい。
【0019】
このような化合物の具体例としては、2−ベンゾイミダゾリルカルバミン酸メチル、2−ベンゾイミダゾリルカルバミン酸エチル、2−ベンゾイミダゾリルカルバミン酸イソプロピル;N−(2−(1−(N,N−ジメチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N,N−ジメチルカルバモイル)−6−メチルベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N,N−ジメチルカルバモイル)−5−メチルベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N−メチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N−メチルカルバモイル)−6−メチルベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N−メチルカルバモイル)−5−メチルベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N,N−ジメチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸エチル、N−(2−(1−(N−メチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸エチル、N−(2−(1−(N,N−ジメチルカルバモイル)−6−メチルベンゾイミダゾリル))カルバミン酸エチル、N−(2−(1−(N−メチルカルバモイル)−6−メチルベンゾイミダゾリル))カルバミン酸エチル、N−(2−(1−(N,N−ジメチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸イソプロピル、N−(2−(1−(N−メチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸イソプロピル、N−(2−(1−(N−プロピルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N−ブチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N−プロピルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メトキシエチル、N−(2−(1−(N−ブチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メトキシエチル、N−(2−(1−(N−プロピルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸エトキシエチル、N−(2−(1−(N−ブチルカルバモイル)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸エトキシエチル、N−(2−(1−(N,N−ジメチルカルバモイルオキシ)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N−メチルカルバモイルオキシ)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N−プロピルカルバモイルオキシ)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N−ブチルカルバモイルオキシ)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N−プロピルカルバモイルオキシ)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸エトキシエチル、N−(2−(1−(N−ブチルカルバモイルオキシ)ベンゾイミダゾリル))カルバミン酸エトキシエチル、N−(2−(1−(N,N−ジメチルカルバモイル)−6−クロロベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチル、N−(2−(1−(N,N−ジメチルカルバモイル)−6−ニトロベンゾイミダゾリル))カルバミン酸メチルなどが挙げられる。
【0020】
このベンゾイミダゾリルカルバメート化合物の使用量は、前記成分(A)100重量部当たり、通常、0.01〜5重量部であり、好ましくは0.05〜2重量部である。この使用量が少なすぎると得られる組成物の硬化物の常態や熱水へ浸せき後の防カビ性が不十分になる場合がある。逆に多すぎるとやはり黄変する場合がある。
【0021】
本発明の組成物には、前記成分(A)〜(D)以外に、硬化触媒、充填剤、各種添加剤等を配合することができる。
硬化触媒としては、例えば、オクテン酸錫、ナフテン酸錫、カプリル酸第1錫、オレイン酸錫等の錫カルボン酸塩;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレート、ジフェニル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)錫、ジブチル錫ベンジルマレート等の錫化合物;テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラエトキシジルコネート等の金属アルコキシド;オクテン酸鉄、ナフテン酸鉄、ナフテン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルヘキソエート、鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物等の有機金属化合物;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン等のアミノアルキル基置換アルコキシシラン;ヘキシルアミン、リン酸ドデシルドデシルアミン等のアミン化合物及びその塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、臭酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミンなどが挙げられる。硬化触媒の使用量は、通常、前記成分(A)100重量部当たり、0〜5重量部、好ましくは0〜1重量部である。
【0022】
充填剤としては、例えば、噴霧質シリカ及び該シリカの表面をクロルシランで疎水処理したもの;粉砕シリカ、コロイダル炭酸カルシウム及びこれらの表面を脂肪酸石鹸、ロジン又はロジン酸エステルで表面処理したもの;重質炭酸カルシウム;けい藻土;酸化鉄;二酸化チタン;酸化亜鉛;炭酸マグネシウム;炭酸亜鉛;金属炭酸塩;カーボンブラック;微粉マイカ等が挙げられる。充填剤は1種単独で或いは2種以上を組み合わせて使用してもよい。充填剤の使用量は、前記成分(A)100重量部当たり、通常、5〜300重量部程度でよい。
【0023】
その他の添加剤としては、例えば、ポリエーテル化合物等のチクソトロピー性向上剤;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類やγ−グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類などの接着助剤;顔料、染料等の着色剤;ベンガラ、酸化セリウム等の耐熱性向上剤;脱水剤;防錆剤;シリコーンレジンなどを配合することができる。また、硬化物が黄変しない範囲で他の防カビ剤を配合してもよい。
【0024】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化物が経時に黄変せず、また防カビ性が優れるので、特に水回りに用いるシーリング材等に有用である。
【0025】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0026】
実施例1
25℃における粘度が20, 000cSt の分子鎖両末端がシラノール基で停止したポリジメチルシロキサン100重量部、表面をジメチルジクロロシランで処理した煙霧状シリカ10重量部、テブコナゾール{2−(4−クロロフェニル)エチル−α−(1, 1−ジメチルエチル)−1H−1, 2, 4−トリアゾール−1−イル−エタノール}0.08重量部、カーベンダジム(2−ベンゾイミダゾリルカルバミン酸メチル)0.5重量部を混合した。
次に、この混合物にメチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン8重量部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン1.0重量部、平均粒子径0.26μmのルチル型二酸化チタン2.5重量部及びジブチル錫ジオクチル酸0.1重量部を減圧下に混合し、実施例1の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0027】
実施例2
実施例1において、テブコナゾールの配合量を0.05重量部、カーベンダジムの配合量を1重量部に変更した他は実施例1と同様に行い、実施例2の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0028】
実施例3
実施例1において、テブコナゾールの配合量を0.03重量部、カーベンダジムの配合量を3重量部に変更した他は実施例1と同様に行い、実施例3の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0029】
実施例4
実施例1において、カーベンダジムの配合量を0.05重量部に変更した他は実施例1と同様に行い、実施例4の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0030】
比較例1
実施例1において、テブコナゾールの配合量を0.1重量部に変更した他は実施例1と同様に行い、比較例1の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0031】
比較例2
実施例1において、カーベンダジムの配合量を0.005重量部に変更した他は実施例1と同様に行い、比較例2の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0032】
比較例3
実施例1において、テブコナゾール0.08重量部に代えてトリアジメホン{1−(4−クロロフェノキシ)−3,3−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オン}0.08重量部を配合した他は実施例1と同様に行い、比較例3の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0033】
比較例4
実施例1において、テブコナゾール0.08重量部に代えてプロピコナゾール〔1−{[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロパン−1−イル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル}−1H−1,2,4−トリアゾール〕0.08重量部を配合した他は実施例1と同様に行い、比較例4の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0034】
比較例5
実施例1において、テブコナゾール0.08重量部に代えてペンコナゾール{1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)ペンタン−1−イル]−1H−1,2,4−トリアゾール}0.08重量部を配合した他は実施例1と同様に行い、比較例5の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0035】
比較例6
実施例1において、カーベンダジム0.5重量部に代えてチアベンダザール[2−(1,3−チアゾール−4−イル)−1H−ベンゾイミダゾール]0.5重量部を配合した他は実施例1と同様に行い、比較例6の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0036】
試験評価方法
各室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物について、以下の方法で評価を行った。
(変色試験)得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を厚さ2mmのシートに成形し、このシートを23±2℃、50±10%RHの雰囲気下に7日間放置して硬化した。硬化シート表面から10cmの距離を隔てて医療用殺菌灯で紫外線を24時間照射したものと、紫外線を照射する前の該シートとの色差[黄変度合い(Δb)]を、ミノルタカメラ社製色差計CR−300を使用して測定した。
【0037】
(防カビ性試験)変色試験に使用したもの同様のシートを作製し、常態及び80℃湯に3日間浸せきしたシートについてJIS Z2911に準拠して試験を行った。
なお、評価は次の基準で行った。
0・・・硬化シート表面において、カビの菌糸の発育が全く認められない。
1・・・硬化シート表面において、カビの菌糸の発育が認められ、該発育面積は、該シートの表面積の1/3以下である。
2・・・硬化シート表面において、カビの菌糸の発育が認められ、該発育面積は、該シートの表面積の1/3を超えている。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例の各室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物は、常態でも、熱水へ浸せきした後でも防カビ性に優れ、紫外線の露光によっても顕著な変色は見られなかった。一方、比較例の各室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物については防カビ性が劣るか顕著な変色が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃における粘度が100〜500,000cStであり、末端がシラノール基またはアルコキシ基で封鎖されたポリオルガノシロキサン100重量部、
(B)下記一般式(1):
1 a Si(ON=CR2 2(4-a) (1)
(式中、R1 は独立に1価脂肪族飽和炭化水素基であり、R2 は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは1〜2の整数である)で示される加水分解性オルガノシラン、その部分加水分解物又はこれらの混合物0.1〜30重量部、
(C)下記一般式(2):
Y−CR34 −CR56 −X (2)
(式中、R3 及びR4 は独立に水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基であり、R5 及びR6 は独立にアルコキシ基、水素原子又はアルキル基であり、Yは水酸基又はニトリル基を表し、Xはトリアゾリル基である)で表されるトリアゾリル基含有化合物0.01〜0.08重量部、
(D)下記一般式(3)

(式中、R7 は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子またはニトロ基を表わし;R8 は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のアルコキシアルキル基を表わし;R9 は水素原子、N−置換もしくは非置換のカルバモイル基、またはN−置換もしくは非置換のカルバモイルオキシ基を表わす)で示されるベンゾイミダゾリルカルバメート化合物0.01〜5重量部を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記(C)トリアゾリル基含有化合物が、2−(4−クロロフェニル)エチル−α−(1, 1−ジメチルエチル)−1H−1, 2, 4−トリアゾール−1−イル−エタノールである請求項1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
前記(D)で示されるベンゾイミダゾリルカルバメート化合物が、2−ベンゾイミダゾリルカルバミン酸メチルである請求項1又は2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

【公開番号】特開2012−57072(P2012−57072A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202594(P2010−202594)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】