説明

害虫忌避シート

【課題】害虫を忌避して衛生を確保することができ、なおかつ、食器等が直接食器棚等に接触して傷付くのを防止する。
【解決手段】害虫忌避シート10において、薬剤保持層11の表面を覆うように設けられている表層部材12には、例えばほふく害虫の脚或いは触覚が薬剤保持層11に接触し得る大きさの開口面積を有した開口部13が複数設けられることになる。このため、ゴキブリ等の害虫を十分に忌避することができる。また、開口部13が小さいため、害虫忌避シート10の上に載置した食器等が薬剤保持層11に接触するのを防止することができ、且つ食器等が直接食器棚等に接触して傷付くのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫、例えばゴキブリ等のほふく害虫等を忌避するとともに食器や食物を衛生的に載置することができる害虫忌避シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食器棚や流し台内部等のキッチン内部には、調味料や食べ残しがあり、常に薄暗く湿った状態で、適度な温度に保たれているため、ゴキブリ等の害虫の好む場所となっている。このため、衛生の観点から害虫を忌避したり駆除したりする必要があり、例えば、特許文献1のようなものが提案されている。
【0003】
この特許文献1では、忌避薬剤を含む層、光反射層、粘着材層、及び前記忌避薬剤を透過しない層を順次積層してなる害虫忌避シートが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−208403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、食器棚には食器や調味料等を入れ、キッチン内部には鍋や釜、あるいはホークや箸等が載置されるが、直接これらを載置するのは、衛生確保の観点で好ましくなく、更に食器棚やキッチン内部を傷つけるおそれがある。このため、食器が棚にぶつかって棚を傷つける等を防止するためのキッチンシートが一般的に用いられている。
【0006】
一方、食器棚やキッチン内部等には、ゴキブリ等のほふく害虫が浸入するおそれがあり、食器や鍋等に害虫が接触することは、非衛生的であり、前述したような害虫忌避シートを併用するのが望ましい。
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の害虫忌避シートのように、表面層が忌避薬剤を含む層である構造であるため、その上に載せた食器等に直接忌避薬剤が付着してしまうという不都合があった。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、害虫を忌避して衛生を確保することができ、なおかつ、食器等が直接食器棚等に接触して傷付くのを防止することができる害虫忌避シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、下記の構成により達成される。
(1) 害虫を忌避するための薬剤を保持する薬剤保持層と、
前記薬剤保持層の表面を覆うように設けられている表層部材と、
を有する害虫忌避シートであって、
当該表層部材には、複数の開口部が、前記薬剤保持層が露出されるようにそれぞれ設けられており、且つ
当該複数の開口部それぞれは、少なくとも前記害虫の脚或いは触角が前記薬剤保持層に接触し得る大きさの開口面積を有している
ことを特徴とする害虫忌避シート。
(2) 前記複数の開口部の前記開口面積がそれぞれ9mm以上である
ことを特徴とする上記(1)の害虫忌避シート。
(3) 前記複数の開口部の総開口面積が前記表層部材の表面積全体の30%以上になるように設けられている
ことを特徴とする上記(1)又は(2)の害虫忌避シート。
(4) 前記複数の開口部が略等間隔に配置されている
ことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つの害虫忌避シート。
(5) 前記薬剤は、常温で難揮散性である
ことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つの害虫忌避シート。
【0010】
上記(1)の構成によれば、薬剤保持層の表面を覆うように設けられている表層部材には、例えばほふく害虫等の害虫の脚或いは触覚が薬剤保持層に接触し得る大きさの開口面積を有した開口部が複数設けられることになる。このため、ゴキブリ等の害虫を忌避して衛生を確保することができる。また、開口部が小さいので、害虫忌避シートの上に載置した食器等が薬剤保持層に接触するのを防止することができ、且つキッチンシートとしても機能して食器等が直接食器棚等に接触して傷付くのを防止することができる。
上記(2)の構成によれば、表層部材に設けられた開口部の開口面積がそれぞれ9mm以上であるので、ゴキブリ等の害虫に対し、少なくともこの害虫の脚或いは触覚が確実に薬剤保持層に接触することになり、確実に害虫を忌避することができる。
上記(3)の構成によれば、表層部材に設けられた開口部の総開口面積が、表層部材の表面積の30%以上であるので、より確実にゴキブリ等の害虫を忌避することができる。
上記(4)の構成によれば、表面部材に設けられた開口部が、それぞれ略等間隔に配置されているので、害虫忌避シートの全面にわたって害虫忌避効果を発揮することができる。
上記(5)の構成によれば、薬剤が常温で難揮散性であるので、薬剤保持層から薬剤が揮散して食器等に許容量以上付着するのを防止することができ、且つ薬剤の作用の持続性を高めることができる。なお、「難揮散性」とは、常温(約10〜約40℃)で揮散しにくい状態を意味し、例えば、20℃において蒸気圧が1×10−6mmHg以下の基準を示すことができる。
【0011】
前述のような薬剤としては、害虫を忌避するための薬剤、即ち害虫忌避剤を用いることができ、例えば、イミプロトリン、フタルスリン、アレスリン、ビフェントリン、レスメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、サイパーメスリン、エトフェンプロックス、シフルスリン、デルタメスリン、フェンバレレート、フェンプロパスリン、シラフルオフェン、フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、ピリダフェンチオン、プロチオホス、ホキシム、クロルピリホス、カルバリル、プロポクスル、メソミル、チオジカルブ、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト、ジノテフラン、イミダクロプリド、メトプレン、ピリプロキシフェン、クロルフェナピル、エチルブチルアセチルアミノプロピオネート等の1種又は2種以上が挙げられる。
更に溶剤、或いはバインダーとして、塗料用樹脂等の固着剤、界面活性剤、油脂又はシリコーン等を併せて用いてもかまわない。また、これに加えて埃や塵の付着を抑えるために帯電防止剤を用いてもよい。更に、必要に応じて、香料、色素、消臭剤、殺菌剤等を添加してもよい。
また、前述の薬剤を薬剤保持層に保持される方法は特に限定されず、例えば、塗布、薬剤の付いたフィルムや紙等のテープやシートの貼り付け、或いは樹脂等自体への練り込み、噴霧、浸漬等適宜必要に応じて種々の方法を採用することができる。
また、薬剤保持層における、前述の薬剤の保持量は50〜800mg/m、より好ましくは100〜500mg/mにすると良い。
【0012】
また、薬剤保持層に用いる材質としては、例えば、PET、EVA、PP、PE、アルミ、アルミ蒸着PEフィルム、発泡樹脂、紙、繊維等を1種または2種以上を組み合わせたものを用いることができる。
【0013】
表層部材に用いる材質としては、例えば、PET、EVA、PP、PE、アルミ、アルミ蒸着PEフィルム、発泡体、成型物、紙、繊維(レース状や網状に編んだもの)、発泡インク、ホットメルト等、載せた食器類が直接下方の薬剤保持層に触れないような形状であれば特に限定するものではない。
【0014】
また、本発明に係る害虫忌避シートが適用される害虫としては、例えば、ゴキブリ、アリ、クモ、ゲジ等のほふく害虫を例示することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、害虫を忌避して衛生を確保することができ、なおかつ、食器等が直接食器棚等に接触して傷付くのを防止することができる害虫忌避シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の害虫忌避シートに係る第1実施形態を示す断面図である。図2(A)は害虫忌避シートの平面図である。図2(B)は開口部の拡大平面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る害虫忌避シート10は、ゴキブリ等のほふく害虫に対し忌避作用を有する薬剤(接触型忌避剤)を保持する薬剤保持層11と、薬剤保持層11の表面を覆うように設けられた表層部材12と、を有しており、そして、この表層部材12には、複数の開口部13がその薬剤保持層11が露出されるようにそれぞれ設けられている。また、この開口部13それぞれは、少なくとも害虫の脚或いは触角が薬剤保持層11に接触し得る大きさの開口面積(後述)を有している。
また、薬剤保持層11と表面部材12とは、例えば、接着剤等を用いて、密着した状態で接合されている。
【0018】
なお、図示中、薬剤保持層11の下側には、薬剤保持層11を支持する基材14が設けられているが、この基材14そのものに薬剤が塗布或いは含浸されて薬剤保持層11を構成するようにしても良い。また、基材14(あるいは薬剤保持層11)の下側に、ゴム等から形成される滑り止め(図示省略)、例えば、粘着シート、吸盤、マジックテープ(商品名)等を設けて、食器等を上に載置した際に安定するようにすることもできる。
【0019】
そして、図2(A)及び(B)に示すように、表層部材12に設けられる開口部13の形状は任意であり、開口部13の面積は、9mm以上であることが好ましく、この場合には、ゴキブリ等の害虫に対し、少なくともこの害虫の脚或いは触覚が確実に薬剤保持層11に接触することになり、確実に害虫を忌避することができる。
また、ここでは、この開口部13の形状としては、例えば細長の略菱形状のものが示されており、開口部13の大きさは、L1(短寸方向の寸法)×L2(長寸方向の寸法)×1/2=2.6mm×7.0mm×1/2とし、開口部13の面積を9.1mmとすることができる。
また、表層部材12の厚さtを、0.2mm〜3.0mmの範囲になるように設定するとよい(図1参照)。これは、薄すぎると食器等と薬剤保持層11とが近接して薬剤が付着する可能であり好ましくなく、一方、厚すぎると害虫と薬剤保持層11の接触を阻害してしまう嫌いがある。また、害虫がゴキブリとされる場合には、その厚さtの範囲は、0.2mm〜2.0mmの範囲にすると良い。
さらに、開口部13の形状が細長の略菱形状とされる場合には、その長寸方向の寸法は7mm〜40mmの範囲であればよく、更に人間の手指の形状を考慮すると10mm以下であることが好ましい。
なお、これら前述した数値及びその範囲は、ゴキブリ等の害虫の生物学的特徴、例えば脚、触角の長さ及びその動作範囲等を研究、検討して得られたものである。
【0020】
また、このとき、開口部13の総開口面積が表層部材12の表面積全体の30%以上になるようにするのが好ましい。これより少なすぎると十分な忌避作用を得ることができず、したがって、この範囲になるように開口部13を複数設けることにより、より確実にゴキブリ等の害虫を忌避することができる。なお、逆に大きすぎると食器等と薬剤保持層11とが接触してしまうので、その割合を適宜、害虫忌避シート10に載置されるものに応じて選択する。
【0021】
また、開口部13が略等間隔に配置されていることが好ましい。これにより、害虫忌避シート10の全面にわたって害虫忌避効果を発揮することができる。
【0022】
また、忌避剤が常温(約10℃〜約40℃)で難揮散性であることが好ましく、より具体的には、その難揮散性を示す数値範囲として、20℃において蒸気圧が1×10−6mmHg以下の基準を例示することができる。これにより、薬剤保持層1から揮散した薬剤が食器等に許容量以上付着するのを防止することができ、且つ薬剤の作用の持続性を高めることができる。
【0023】
次に、本実施形態に係る害虫忌避シート10の効果を確認するために、複数の試験を行った。この試験内容及び結果についてそれぞれ以下に示す。
【0024】
<定着阻害試験−1>
まず、個々の開口部13の開口面積が、害虫の定着阻害率に及ぼす影響について試験を行った。
検体10(即ち、前述した本発明に係る害虫忌避シート10)としては、開口部13の大きさを変えた表層部材12の下に、薬剤保持層11として、害虫忌避剤(シフェノトリン)の保持量が300mg/mになるようにシフェノトリン4%を含むインキを印刷(グラビア印刷)したPET(ポリエチレンテレフタレート)シートを設けて固定したものを用いて、定着阻害試験を行った。なお、開口部13の大きさ及び形状以外の材質等の条件を揃えて試験を行った。また、いずれのシートも、開口部13の総開口面積が表層部材12の表面積全体の約50〜60%になるように設定した。
この試験の内容及び結果を図3及び図4に示す。
図3は試験の概略を示す平面図である。図4(A)〜(E)は開口部の形状及び寸法と試験結果である定着阻害率が示されている。
【0025】
図3に示すように、1辺45cmの正方形バット20の2箇所に検体10と、表層部材12のみからなる比較マット21(いずれも10cm×10cm)と、を置き、この状態で、この検体10とこの比較マット21に、2辺に出入り口を設けた透明樹脂製のシェルター22(φ10×4.5cm)を上から被せた。クロゴキブリ(雄/雌=1/1)15頭を入れ、暗室にて1晩放置後、各シェルター22内のゴキブリの数をカウントし、定着阻害率を次式から求めた。なお、試験は2回行った。
定着阻害率(%)=100×(無処理区の頭数−処理区の頭数)/(無処理区の頭数+処理区の頭数)
なお、図4(C)〜(E)の場合は、図3における正方形バット20下半部にも同様の検体10、比較マット21、及びシェルター22を設け、ゴキブリを30頭入れて試験を行った(図3中破線、括弧書きで表示)。
【0026】
図4(A)に示した検体10では、略菱形状の開口部13の大きさをL1(短寸方向の寸法)×L2(長寸方向の寸法)×1/2=2.6mm×7.0mm×1/2にして、開口部13の開口面積を9.1mmにした。
試験の結果、図4(A)の表からわかるように、開口部の開口面積を9.1mm(>9.0mm)とした検体10を用いた処理区においては、ゴキブリが1頭も観察されず、一方、比較マット21を用いた無処理区のシェルター22内では5頭のゴキブリが観察された。これにより、本検体10によれば、定着阻害率が100%を示し、確実にゴキブリを忌避(定着阻害)していることがわかった。
【0027】
図4(B)に示した検体10では、略菱形状の開口部の大きさをL1×L2×1/2=1.8mm×5.0mm×1/2にして、開口面積を4.5mmにした。
試験の結果、図4(B)の表からわかるように、開口部の開口面積を4.5mm(<9.0mm)とした検体10を用いた処理区においては、ゴキブリが2頭観察され、一方、比較マット21を用いた無処理区のシェルター22内では4〜6頭のゴキブリが観察された。これにより、本検体10によれば、定着阻害率が42.9%を示している。これは、ゴキブリの脚や触覚が薬剤保持層11に接触するには、開口部の開口面積が小さすぎると考えられる。
【0028】
図4(C)に示した検体10では、略菱形状の開口部の大きさをL1×L2×1/2=2.0mm×3.0mm×1/2にして、開口面積を3.0mmにした。
試験の結果、図4(C)の表からわかるように、開口部の開口面積を3.0mm(<9.0mm)とした検体10を用いた処理区においては、ゴキブリが6〜9頭観察され、一方、比較マット21を用いた無処理区のシェルター22内では15〜17頭のゴキブリが観察された。これにより、本検体10によれば、定着阻害率が36.2%を示している。これは、ゴキブリの脚や触覚が薬剤保持層11に接触するには、開口部の開口面積が小さすぎると考えられる。
【0029】
図4(D)に示した検体10では、略菱形状の開口部の大きさをL1×L2×1/2=1.5mm×1.5mm×1/2にして、開口面積を1.1mmにした。
試験の結果、図4(D)の表からわかるように、開口部の開口面積を1.1mm(<9.0mm)とした検体10を用いた処理区においては、ゴキブリが3〜4頭観察され、一方、比較マット21を用いた無処理区のシェルター22内では7〜10頭のゴキブリが観察された。これにより、本検体10によれば、定着阻害率が41.7%を示し、ゴキブリの脚や触覚が薬剤保持層11に接触するには、開口部の開口面積が小さすぎると考えられる。
【0030】
図4(E)に示した検体10では、略菱形状の開口部の大きさをL1×L2×1/2=3.0mm×5.0mm×1/2にして、開口面積を7.5mmにした。
試験の結果、図4(E)の表からわかるように、開口部の開口面積を7.5mm(<9.0mm)とした検体10を用いた処理区においては、ゴキブリが3〜4頭観察され、一方、比較マット21を用いた無処理区のシェルター22内では9〜12頭のゴキブリが観察された。これにより、本検体10によれば、定着阻害率が50.0%を示し、ゴキブリの脚や触覚が薬剤保持層11に接触するには、開口部の開口面積が小さすぎると考えられる。
【0031】
以上の試験結果から、開口部13の形状にかかわらず、十分な忌避効果(定着阻害効果)を得るには、開口部13の面積は、9.0mm以上にする必要がある。
【0032】
<定着阻害試験−2>
表面部材12の表面積全体に対する開口部の総開口面積の割合(以下、開口割合Rともいう。)が、害虫の定着阻害率に及ぼす影響について試験を行った。
検体(即ち、害虫忌避シート10)としては、この割合が3つ異なるものを用意した。即ち、この検体10として、10cm×10cmの、害虫忌避剤(シフェノトリン)の保持量が300mg/mになるようにシフェノトリン4%を含むインキを印刷(グラビア印刷)したフィルムの上に、表層部材12として紙を載置して試験を行い、そして、この紙に、開口部13を6箇所設けたもの(即ち、開口割合Rが約20%のもの)、9箇所設けもの(即ち、開口割合Rが約30%のもの)、の2種類を用意すると共に、設けないもの(即ち、開口割合Rが0%のもの;比較マット21)を用意して試験を行った。
なお、表面部材12及び薬剤保持層11の大きさはいずれも10cm×10cmであり、開口部13の大きさはいずれもφ20mmであり、開口部13の数以外の条件は同じにした。
この試験の内容及び結果を図5及び図6に示す。
図5は試験の概略を示す平面図である。図6(A)〜(B)は開口部の配置及び開口割合と試験結果である定着阻害率が示されている。
【0033】
図5に示すように、φ100cmの円形バット30に4箇所、前述の<定着阻害試験−1>と同様に、検体10と比較マット21と、を置き、この状態で、この検体10と比較マット21に、4辺に出入り口を設けた透明樹脂製のシェルター32(12cm×12cm×3cm)を上から被せた。クロゴキブリ(雄/雌=1/1)30頭を入れ、暗室にて1晩放置後、各シェルター32内のゴキブリの数をカウントし、定着阻害率を次式から求めた。なお、試験は2回行った。
定着阻害率(%)=100×(無処理区の頭数−処理区の頭数)/(無処理区の頭数+処理区の頭数)
【0034】
図6(A)に示した検体10では、開口部13を6箇所設けて、開口割合Rを約20%にした。
試験の結果、図6(A)の表からわかるように、開口割合Rが約20%の検体10を用いた処理区においては、ゴキブリが合計7頭観察され、一方、比較マット21を用いた無処理区のシェルター内では合計22頭のゴキブリが観察された。これにより、定着阻害率が51.7%を示し、開口割合Rが約20%では十分にゴキブリを忌避(定着阻害)することができないことがわかった。
【0035】
図6(B)に示した害虫忌避シート10では、開口部13を9箇所設けて、開口割合Rを約30%にした。
試験の結果、図6(B)の表からわかるように、開口割合Rが約30%の検体10を用いた処理区においては、ゴキブリが観察されず、一方、比較マット21を用いた無処理区のシェルター32内では合計22頭のゴキブリが観察された。これにより、定着阻害率が100%を示し、開口割合Rが約30%あれば十分にゴキブリを忌避(定着阻害)することができることがわかった。
【0036】
以上の試験結果から、開口割合Rが約30%以上にするのが好ましいことがわかった。
【0037】
<開口部の形状の確認試験>
開口部13の、害虫忌避シート10の上に載置した食器等が薬剤保持層に接触しない大きさを確認するための試験を行った。
φ5〜50mmの開口部13を設けた表面部材12(t=5mm)が接合された害虫忌避シート10に対し、開口部外径50mmのコップを用いて、このコップの縁部がこの害虫忌避シートに接触しない開口部13の径を確認した。
試験の結果、φ40mm以下であれば通常の状態で害虫忌避シート10に接触しないことがわかった。
【0038】
以上、説明した害虫忌避シート10によれば、薬剤保持層11の表面を覆うように設けられている表層部材12には、例えばほふく害虫の脚或いは触覚が薬剤保持層11に接触し得る大きさの開口面積を有した開口部13が複数設けられることになる。このため、ゴキブリ等の害虫を十分に忌避することができる。また、開口部13が小さいため、害虫忌避シート10の上に載置した食器等が薬剤保持層11に接触するのを防止することができ、且つ食器等が直接食器棚等に接触して傷付くのを防止することができる。
【0039】
なお、本発明の害虫忌避シート10は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。例えば、前述した実施形態では、開口部13を細長の略菱形状に形成されたものとして説明したが、これに限らず、本発明の範囲を逸脱しなければ種々の形状を採用することができ、例えば三角形、四角形、多角形、円形、楕円形、或いは星型、動植物を模した形状、キャラクター等の意匠を施した形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の害虫忌避シートに係る実施形態を示す断面図である。
【図2】(A)は害虫忌避シートの平面図であり、(B)は開口部の拡大平面図である。
【図3】定着阻害試験の概略を示す平面図である。
【図4】(A)〜(E)は開口部の形状及び寸法と試験結果である定着阻害率を示す図及び表である。
【図5】試験の概略を示す平面図である。
【図6】(A)〜(B)は開口部の配置及び開口割合と試験結果である定着阻害率を示す図及び表である。
【符号の説明】
【0041】
10 害虫忌避シート
11 薬剤保持層
12 表層部材
13 開口部
14 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫を忌避するための薬剤を保持する薬剤保持層と、
前記薬剤保持層の表面を覆うように設けられている表層部材と、
を有する害虫忌避シートであって、
当該表層部材には、複数の開口部が、前記薬剤保持層が露出されるようにそれぞれ設けられており、且つ
当該複数の開口部それぞれは、少なくとも前記害虫の脚或いは触角が前記薬剤保持層に接触し得る大きさの開口面積を有している
ことを特徴とする害虫忌避シート。
【請求項2】
前記複数の開口部の前記開口面積がそれぞれ9mm以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の害虫忌避シート。
【請求項3】
前記複数の開口部の総開口面積が前記表層部材の表面積全体の30%以上になるように設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の害虫忌避シート。
【請求項4】
前記複数の開口部が略等間隔に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の害虫忌避シート。
【請求項5】
前記薬剤は、常温で難揮散性である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の害虫忌避シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−221130(P2009−221130A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66114(P2008−66114)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】