説明

害虫防除ネット

【課題】安価に製造でき、強力な殺虫効果を発揮できる防虫ネットの提供。
【解決手段】樹脂糸を、多数の網目3を形成するように、編んで又は織って形成された、害虫防除ネットにおいて、樹脂糸として、第1の樹脂糸1と第2の樹脂糸2とを、共に用いており、第1の樹脂糸1が、殺虫剤成分を含有しており、第2の樹脂糸2が、共力剤成分を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば蚊帳や網戸を構成する害虫防除ネット、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
殺虫剤成分を含有した樹脂糸で構成された害虫防除ネットは、例えば特許文献1、2に示されている。
一方、より強力な殺虫効果を得るために、ピレスロイド化合物等の殺虫剤成分と共力剤成分とを共に含有した防虫性アクリル繊維が、特許文献3に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−13508号公報
【特許文献2】特開平8−163950号公報
【特許文献3】特公平2−55551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、より強力な殺虫効果を有する害虫防除ネットを得るために、ネットを形成する防虫繊維に、より多くの殺虫剤成分を担持させることが、考えられる。しかしながら、1本の繊維に安定して担持できる殺虫剤成分の量には、限界がある。また、殺虫剤成分の担持量が多い場合には、洗濯等で除去される殺虫剤成分の量も多くなるので、殺虫剤成分の増量分に見合う程の、殺虫効果の増強や残効が得られない場合がある。
【0005】
本発明は、安価に製造でき、しかも、満足できる強力な殺虫効果を発揮できる、害虫防除ネットを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、樹脂糸を、多数の網目を形成するように、編んで又は織って形成された、害虫防除ネットにおいて、樹脂糸として、第1の樹脂糸と第2の樹脂糸とを、共に用いており、第1の樹脂糸が、殺虫剤成分を含有しており、第2の樹脂糸が、共力剤成分を含有している、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の害虫防除ネットによれば、害虫に対して満足できる強力な殺虫効果を発揮できる。
【0008】
しかも、本発明の害虫防除ネットによれば、第1の樹脂糸が殺虫剤成分を含有しており、第2の樹脂糸が共力剤成分を含有しているので、第1の樹脂糸及び第2の樹脂糸の各々を、殺虫剤成分及び共力剤成分の両方を含有している樹脂糸に比して、安価に製造でき、また、第1の樹脂糸及び第2の樹脂糸の割合や、編み方・織り方によって、目的に応じた種々のグレードの害虫防除ネットを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の害虫防除ネットの編構造の一例を示す図である。
【図2】本発明の害虫防除ネットの織構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の害虫防除ネットは、樹脂糸を、多数の網目を形成するように、編んで又は織って形成されている。そして、本発明では、樹脂糸として、第1の樹脂糸と第2の樹脂糸とを、共に用いている。第1の樹脂糸は、殺虫剤成分を含有している。第2の樹脂糸は、共力剤成分を含有している。
【0011】
本発明のネットは、編まれて構成された場合には編構造を有し、織られて構成された場合には織構造を有している。図1は編構造の一例を示し、図2は織構造の一例を示している。
【0012】
本発明のネットは、編構造の場合でも織構造の場合でも、各網目が、第1の樹脂糸と第2の樹脂糸とで構成されているのが、好ましい。例えば、図1の編構造は、第1の樹脂糸1と第2の樹脂糸2とを、共に縦糸として、且つ、交互に、用い、そして、これらを編んで、構成されている。それ故、各網目3は、第1の樹脂糸1と第2の樹脂糸2とで囲まれている。また、図2の織構造は、第1の樹脂糸1を縦糸として用い、且つ、第2の樹脂糸2を横糸として用い、そして、これらを織って、構成されている。それ故、各網目3は、第1の樹脂糸1と第2の樹脂糸2とで囲まれている。なお、本発明のネットは、編構造を有するのが好ましい。
【0013】
なお、網目の大きさは、防除対象とする害虫の体長に応じて適宜設定され、当該害虫がネットを通過しようとする際にネットに接触するような大きさであるのが好ましい。一般的には、網目の大きさ(ホールサイズ)は、2〜5mm、好ましくは2〜4mmの範囲である。
【0014】
第1の樹脂糸及び/又は第2の樹脂糸を構成する樹脂成分としては、通常は、熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、アクリル等が挙げられる。糸強度等の観点から、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、エチレンと炭素原子数3以上のαーオレフィンとの共重合体、ポリプロピレン単独重合体、エチレンとエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸誘導体との共重合体等)が好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。ポリオレフィンを用いると、樹脂糸に、害虫防除ネットとして満足できる耐久性を付与できる。なお、他の樹脂成分、例えばポリエステルを用いてもよい。
【0015】
第1の樹脂糸において、殺虫剤成分は、残効性の観点から、樹脂糸中に練り込まれているのが、好ましい。この場合、第1の樹脂糸は、次のようにして製造できる。すなわち、樹脂成分と殺虫剤成分とを、混合し、単軸押出機を用いて溶融混練して、ペレットに成形する。そして、そのペレットから、樹脂糸を紡糸する。これにより、殺虫剤成分が樹脂糸中に分散して存在することとなる。したがって、第1の樹脂糸においては、殺虫剤成分が糸表面にブリードし、害虫が糸表面において殺虫剤成分と接触することにより、殺虫効果が発揮される。
【0016】
なお、第1の樹脂糸において、殺虫剤成分は樹脂糸表面にコーティングされてもよい。この場合でも、害虫が糸表面において殺虫剤成分と接触することにより、殺虫効果が発揮される。
【0017】
第2の樹脂糸において、共力剤成分は、残効性の観点から、樹脂糸中に練り込まれているのが、好ましい。この場合、第2の樹脂糸は、次のようにして製造できる。すなわち、樹脂成分と共力剤成分とを、混合し、単軸押出機を用いて溶融混練して、ペレットに成形する。そして、そのペレットから、樹脂糸を紡糸する。これにより、共力剤成分が樹脂糸中に分散して存在することとなる。したがって、第2の樹脂糸においては、共力剤成分が糸表面にブリードし、害虫が糸表面において共力剤成分と接触することにより、第1の樹脂糸の殺虫剤成分による殺虫効果を高める効果が発揮される。
【0018】
なお、第2の樹脂糸において、共力剤成分は樹脂糸表面にコーティングされてもよい。この場合でも、害虫が糸表面において共力剤成分と接触することにより、第1の樹脂糸の殺虫剤成分による殺虫効果を高める効果が発揮される。
【0019】
第1の樹脂糸及び/又は第2の樹脂糸は、所定の太さを有するモノフィラメントであるのが、好ましい。これによれば、編作業や織作業が容易となる。なお、この場合の「所定の太さ」とは、害虫防除ネットとしての強度を維持できる太さである。一般に、第1の樹脂糸及び/又は第2の樹脂糸がモノフィラメントである場合には、100〜350デニールの範囲のモノフィラメントを使用することが好ましい。
【0020】
殺虫剤成分としては、ピレスロイド化合物が好ましいが、これに限るものではなく、例えば、ペルメトリン、シフェノトリン、d−フェノトリン、レスメトリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フェンプロパトリン、エトフェンプロクス、トラロメトリン、デルタメトリン、シラフルオフェン、ビフェントリン等が挙げられる。
【0021】
共力剤成分としては、例えば、次のものが挙げられる。
・α−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]−4,5−メチレンジオキシ−2−プロピルトルエン(ピペロニルブトキサイド;PBO)
・N−(2−エチルヘキシル)−1−イソプロピル−4−メチルビシクロ(2,2,2)オクト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド〔サイネピリン500〕
・ステアリン酸ブチル
・ビス−(2,3,3,3−テトラクロロプロピル)エ−テル(S−421)
・N−(2−エチルヘキシル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3ジカルボキシイミド(MGK264)
【0022】
本発明の害虫防除ネットにおいては、寄って来た害虫は、網目3を通り抜けようと試みる際に、第1の樹脂糸1及び第2の樹脂糸2に触れる。特に、網目3が第1の樹脂糸1と第2の樹脂糸2とで囲まれている場合には、害虫は、一度に且つ確実に、第1の樹脂糸1及び第2の樹脂糸2に触れる。このとき、害虫は、第1の樹脂糸1の表面において殺虫剤成分に接触し、また、第2の樹脂糸2の表面において共力剤成分に接触する。このため、害虫は、殺虫剤成分のみに接触した場合に比して高い殺虫効果を受ける。したがって、害虫は、確実に防除される。
【0023】
以上のように、本発明の害虫防除ネットによれば、害虫を、第1の樹脂糸の殺虫剤成分及び第2の樹脂糸の共力剤成分に接触させることにより、害虫に対して高い殺虫効果を及ぼすことができるので、満足できる強力な殺虫効果を発揮できる。
【0024】
また、本発明の害虫防除ネットでは、第1の樹脂糸は、殺虫剤成分を含有しているが、共力剤成分を含有してはおらず、また、第2の樹脂糸は、共力剤成分を含有しているが、殺虫剤成分を含有してはいない。したがって、次のような効果を発揮できる。
(1)第1の樹脂糸及び第2の樹脂糸の各々は、殺虫剤成分及び共力剤成分の両方を含有している樹脂糸に比して、安価に製造できる。したがって、本発明の害虫防除ネットは、安価に製造できる。
(2)第1の樹脂糸及び第2の樹脂糸の各々は、殺虫剤成分及び共力剤成分の一方のみを含有しているので、殺虫剤成分及び共力剤成分の各々について最適な担持体である樹脂を選択することができる。したがって、本発明の害虫防除ネットは、殺虫剤成分及び共力剤成分の両方を含有している樹脂糸を用いた場合に比して、製品設計上の自由度が高い。
【0025】
また、殺虫剤成分が第1の樹脂糸中に練り込まれている場合には、殺虫剤成分を糸表面に徐々にブリードできるので、殺虫効果の持続性を向上できる。また、共力剤成分が第2の樹脂糸中に練り込まれている場合には、共力剤成分を糸表面に徐々にブリードできるので、共力剤成分による効果の持続性を向上できる。
【0026】
本発明の害虫防除ネットによれば、各種の有害昆虫を防除できる。特に、次のような飛翔性害虫を防除できる。例えば、アカイエカ、コガタアカイエカなどのイエカ類;ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどのヤブカ類;シナハマダラカなどのハマダラカ類;ユスリカ類;イエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエなどのイエバエ類;クロバエ類;ニクバエ類;ショウジョウバエ類;チョウバエ類;ノミバエ類;アブ類;ブユ類;サシバエ類;ヌカカ類。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の害虫防除ネットの実施例について説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0028】
[第1実施例]
本実施例の害虫防除ネットは、図1の編構造を有しており、次のようにして作製した。
(1)第1の樹脂糸1の調製
ポリエチレン96重量部と、非晶質シリカ2重量部と、ペルメトリン2重量部とを、攪拌混合した後、単軸押出機を用いて溶融混練した。そして、得られた混合物から、円柱形状のペレットを成形した。得られたペレットの重量は、60kgであった。そして、20kgのペレットから、第1の樹脂糸1を紡糸した。第1の樹脂糸1はモノフィラメントであり、その太さは190デニールであった。
(2)第2の樹脂糸2の調製
ポリエチレン96重量部と、非晶質シリカ2重量部と、ピペロニルブトキサイド2重量部とを、攪拌混合した後、単軸押出機を用いて溶融混練した。そして、得られた混合物から、円柱形状のペレットを成形した。得られたペレットの重量は、60kgであった。そして、20kgのペレットから、第2の樹脂糸2を紡糸した。第2の樹脂糸2はモノフィラメントであり、その太さは190デニールであった。
(3)ネットの作製
第1の樹脂糸1と第2の樹脂糸2とを、共に縦糸として、且つ、交互に、用い、そして、これらを編んで、ネットを作製した。網目3の大きさは、L1が約2mm、W1が約2.5mmとなるように設定した。
【0029】
[第2実施例]
本実施例の害虫防除ネットは、図2の織構造を有しており、次のようにして作製した。
(1)第1の樹脂糸1の調製
ポリエチレン94重量部と、非晶質シリカ3重量部と、ペルメトリン3重量部とを、攪拌混合した後、単軸押出機を用いて溶融混練した。そして、得られた混合物から、円柱形状のペレットを成形した。得られたペレットの重量は、60kgであった。そして、20kgのペレットから、第1の樹脂糸1を紡糸した。第1の樹脂糸1はモノフィラメントであり、その太さは190デニールであった。
(2)第2の樹脂糸2の調製
ポリエチレン94重量部と、非晶質シリカ3重量部と、ピペロニルブトキサイド3重量部とを、攪拌混合した後、単軸押出機を用いて溶融混練した。そして、得られた混合物から、円柱形状のペレットを成形した。得られたペレットの重量は、60kgであった。そして、20kgのペレットから、第2の樹脂糸2を紡糸した。第2の樹脂糸2はモノフィラメントであり、その太さは190デニールであった。
(3)ネットの作製
第1の樹脂糸1を縦糸として用い、第2の樹脂糸2を横糸として用い、縦糸と横糸とを織って、ネットを作製した。網目3の大きさは、L2が約2mm、W2が約4mmとなるように設定した。
【0030】
[第3実施例]
本実施例の害虫防除ネットは、織構造を有しており、次のようにして作製した。
(1)第1の樹脂糸の調製
非晶質シリカ4.0重量部と、ペルメトリン8.2重量部と、ステアリン酸亜鉛2.6重量部と、BHT0.1重量部とを、攪拌混合し、その後、直鎖状低密度ポリエチレン15.2重量部と高密度ポリエチレン70.0重量部とを加えて、単軸押出機を用いて溶融混錬した。そして、得られた混合物から、円柱形状のペレットを成形した。次に、得られたペレット50.0重量部と高密度ポリエチレン50.0重量部とを、溶融混錬した。そして、得られた混合物から、加工温度200℃にて、第1の樹脂糸を紡糸した。第1の樹脂糸はモノフィラメントであり、その太さは193デニールであった。
(2)第2の樹脂糸の調製
非晶質シリカ4.0重量部と、ピペロニルブトキサイド8.2重量部と、ステアリン酸亜鉛2.6重量部と、BHT0.1重量部とを、攪拌混合し、その後、直鎖状低密度ポリエチレン15.2重量部と高密度ポリエチレン70.0重量部とを加えて、単軸押出機を用いて溶融混錬した。そして、得られた混合物から、円柱形状のペレットを成形した。次に、得られたペレット50.0重量部と高密度ポリエチレン50.0重量部とを、溶融混錬した。そして、得られた混合物から、加工温度200℃にて、第2の樹脂糸を紡糸した。第2の樹脂糸はモノフィラメントであり、その太さは203デニールであった。
(3)ネットの作製
第1の樹脂糸及び第2の樹脂糸を縦糸として用い、第1の樹脂糸を横糸として用い、縦糸と横糸とを織って、ネットを作製した。縦糸は、約2.5mm間隔で配置した。横糸は、約4.0mm間隔で配置した。縦糸においては、第2の樹脂糸を3本続けて配置し且つ第1の樹脂糸を1本配置する、というサイクルを繰り返した。
【0031】
[第4実施例]
本実施例の害虫防除ネットは、織構造を有しており、次のようにして作製した。
(1)第1の樹脂糸の調製
非晶質シリカ4.0重量部と、ペルメトリン8.2重量部と、ステアリン酸亜鉛2.6重量部と、BHT0.1重量部とを、混合攪拌し、その後、直鎖状低密度ポリエチレン15.2重量部と高密度ポリエチレン70.0重量部とを加えて、単軸押出機を用いて溶融混錬した。そして、得られた混合物から、円柱形状のペレットを成形した。次に、得られたペレット50.0重量部と高密度ポリエチレン50.0重量部とを溶融混錬した。そして、得られた混合物から、加工温度200℃にて、第1の樹脂糸を紡糸した。第1の樹脂糸はモノフィラメントであり、その太さは193デニールであった。
(2)第2の樹脂糸の調製
非晶質シリカ4.1重量部と、ピペロニルブトキサイド4.2重量部と、ステアリン酸亜鉛2.6重量部と、BHT0.1重量部とを、攪拌混合し、その後、直鎖状低密度ポリエチレン15.5重量部と高密度ポリエチレン73.5重量部とを加えて、単軸押出機を用いて溶融混錬した。そして、得られた混合物から、円柱形状のペレットを成形した。次に、得られたペレット50.0重量部と高密度ポリエチレン50.0重量部とを溶融混錬した。そして、得られた混合物から、加工温度200℃にて、第2の樹脂糸を紡糸した。第2の樹脂糸はモノフィラメントであり、その太さは188〜198デニールの範囲であった。
(3)ネットの作製
第1の樹脂糸及び第2の樹脂糸を縦糸として用い、第1の樹脂糸を横糸として用い、縦糸と横糸とを織って、ネットを作製した。縦糸は、約2.5mm間隔で配置した。横糸は、約4.0mm間隔で配置した。縦糸においては、第2の樹脂糸を3本続けて配置し且つ第1の樹脂糸を1本配置する、というサイクルを繰り返した。
【0032】
[第5実施例]
本実施例の害虫防除ネットは、図1の編構造を有しており、次のようにして作製した。
(1)第1の樹脂糸1の調製
非晶質シリカ4.0重量部と、ペルメトリン8.2重量部と、ステアリン酸亜鉛2.6重量部と、BHT0.1重量部とを、攪拌混合し、その後、ポリエチレン85.1重量部とを加えて、単軸押出機を用いて溶融混錬した。そして、得られた混合物から、円柱形状のペレットを成形した。次に、得られたペレット50.0重量部とポリエチレン50.0重量部とを、溶融混錬した。そして、得られた混合物から、加工温度200℃にて、第1の樹脂糸を紡糸した。第1の樹脂糸はモノフィラメントであり、その太さは195デニールであった。
(2)第2の樹脂糸2の調製
非晶質シリカ4.0重量部と、ピペロニルブトキサイド8.2重量部と、ステアリン酸亜鉛2.6重量部と、BHT0.1重量部とを、攪拌混合し、その後、ポリエチレン85.1重量部とを加えて、単軸押出機を用いて溶融混錬した。そして、得られた混合物から、円柱形状のペレットを成形した。次に、得られたペレット50.0重量部とポリエチレン50.0重量部とを、溶融混錬した。そして、得られた混合物から、加工温度200℃にて、第2の樹脂糸を紡糸した。第2の樹脂糸はモノフィラメントであり、その太さは197デニールであった。
(3)ネットの作製
第1の樹脂糸と第2の樹脂糸とを、共に縦糸として、且つ、交互に、用い、そして、これらを編んで、ネットを作製した。網目3の大きさは、L1が約2mm、W1が約2.5mmとなるように設定した。
【0033】
[第1比較例]
本比較例の害虫防除ネットは、図1の編構造を有しており、次のようにして作製した。
(1)第1の樹脂糸1の調製
非晶質シリカ4.0重量部と、ペルメトリン4.1重量部と、ピペロニルブトキサイド4.1重量部と、ステアリン酸亜鉛2.6重量部と、BHT0.1重量部とを、攪拌混合し、その後、ポリエチレン85.1重量部とを加えて、単軸押出機を用いて溶融混錬した。そして、得られた混合物から、円柱形状のペレットを成形した。次に、得られたペレット50.0重量部とポリエチレン50.0重量部とを、溶融混錬した。そして、得られた混合物から、加工温度200℃にて、第1の樹脂糸を紡糸した。第1の樹脂糸はモノフィラメントであり、その太さは194デニールであった。
(2)第2の樹脂糸2の調製
第2の樹脂糸として、第1の樹脂糸を用いた。
(3)ネットの作製
第1の樹脂糸1と第2の樹脂糸2とを、共に縦糸として、且つ、交互に、用い、そして、これらを編んで、ネットを作製した。網目3の大きさは、L1が約2mm、W1が約2.5mmとなるように設定した。
【0034】
[試験1]
(試験サンプル)
第3実施例及び第4実施例の害虫防除ネットをサンプルとして用いた。サンプルは、次のようにして作製した。すなわち、5cm×5cmの略正方形の金属板の表面上に、縦糸と横糸とを配置した。その際、縦糸と横糸とが直交する部分(ネット部分)の大きさを、約2.5cm×2.5cmに設定した。
【0035】
(試験方法)
まず、サンプルを、上記金属板の表面上にて30℃で48時間保管した後、別の水平面上に設置した。そして、サンプル上に、直径約4cmのシャーレを被せた。次に、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)の雌成虫10頭を、シャーレ内に放ち、3分間そのままにした後に、別のケージに放った。そして、一定時間内にノックダウンしたネッタイシマカ雌成虫の数をカウントし、その結果から、50%のネッタイシマカ雌成虫がノックダウンするまでの時間(KT50値)を求めた。
【0036】
(結果)
第3実施例のサンプルを使用した場合のKT50値は、5.5分であった。また、第4実施例のサンプルを使用した場合のKT50値は、13分であった。
【0037】
[試験2]
(試験サンプル)
第5実施例及び第1比較例の害虫防除ネットをサンプルとして用いた。すなわち、当該ネットを10cm×10cmの大きさに切り出してサンプルとした。
【0038】
(試験方法)
まず、サンプルを、アセトン200mlで洗浄し、70℃恒温槽内で2時間保管した後、平面上に固定した。そして、サンプル上に、直径約4cmのシャーレを被せた。次に、ネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)の雌成虫10頭を、シャーレ内に放ち、3分間そのままにした後に、別のケージに放った。そして、一定時間後にノックダウンしたネッタイイエカ雌成虫の数をカウントし、また、致死したネッタイイエカ雌成虫の数をカウントした。
【0039】
(結果)
第5実施例のサンプルを使用した場合、ノックダウン率は100%であり、致死率は90%であった。また、第1比較例のサンプルを使用した場合、ノックダウン率は70%であり、致死率は53%であった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の害虫防除ネットは、安価に製造でき、しかも、満足できる強力な殺虫効果を発揮できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0041】
1 第1の樹脂糸 2 第2の樹脂糸 3 網目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂糸を、多数の網目を形成するように、編んで又は織って形成された、害虫防除ネットにおいて、
樹脂糸として、第1の樹脂糸と第2の樹脂糸とを、共に用いており、
第1の樹脂糸が、殺虫剤成分を含有しており、
第2の樹脂糸が、共力剤成分を含有している、
ことを特徴とする、害虫防除ネット。
【請求項2】
各網目が、第1の樹脂糸と第2の樹脂糸とで構成されている、請求項1記載の害虫防除ネット。
【請求項3】
殺虫剤成分が、第1の樹脂糸中に練り込まれている、請求項1記載の害虫防除ネット。
【請求項4】
共力剤成分が、第2の樹脂糸中に練り込まれている、請求項1記載の害虫防除ネット。
【請求項5】
殺虫剤成分が、第1の樹脂糸の表面にコーティングされている、請求項1記載の害虫防除ネット。
【請求項6】
共力剤成分が、第2の樹脂糸の表面にコーティングされている、請求項1記載の害虫防除ネット。
【請求項7】
殺虫剤成分が、ピレスロイド化合物である、請求項1記載の害虫防除ネット。
【請求項8】
共力剤成分が、ピペロニルブトキシドである、請求項1記載の害虫防除ネット。
【請求項9】
第1の樹脂糸及び/又は第2の樹脂糸が、ポリエチレンでできている、請求項1記載の害虫防除ネット。
【請求項10】
第1の樹脂糸及び/又は及び第2の樹脂糸が、モノフィラメントである、請求項1記載の害虫防除ネット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−57476(P2010−57476A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157553(P2009−157553)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】