説明

容量素子モジュール

【課題】容量素子モジュールにおいて、互いに逆方向に並走する電流経路による相互インダクタンスの低下の影響を抑制することである。
【解決手段】容量素子モジュール10は、複数の筒形状の容量素子12,13と、一対のバスバー20,30とを含んで構成される。バスバー20は、容量素子12,13の負極側電極14を相互に接続する接続板部22と外部接続用の外部接続部24とを有する。バスバー30は、容量素子12,13の正極側電極16を相互に接続する接続板部32と外部接続用の外部接続部34とを有し、接続板部32から外部接続部34に向かって引き出される引出板部36を含み、引出板部36とこれに最近接する容量素子12との間には、予め定められた空隙間隔Dが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量素子モジュールに係り、特に、対向する両端に電極を有する複数の容量素子を一対のバスバーで接続して構成される容量素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両に代表される車両駆動用途や産業用途などのパワーインバータシステムに用いられる平滑コンデンサには、大容量で定格電圧が高く、耐電流の大きなコンデンサが要求される。コンデンサは2つの電極の間の電荷によって静電容量を形成する容量素子である。定格電圧が高く耐電流性能に優れる容量素子としてフィルムコンデンサが知られるが、1つ1つの素子の容量が小さいため、複数個の容量素子を必要な個数接続した容量素子モジュールが用いられる。
【0003】
ところで、複数の容量素子を接続すると、電流が必ずしも均等に流れずに、局部的に電流集中が生じ、そのために発熱が不均一となって、耐熱性能を満たさないことが生じ得る。
【0004】
例えば、特許文献1には、両端に電極を有する複数の筒状のコンデンサ素子を互いに交差する2方向に並べて形成されたコンデンサモジュールにおいて、相互のコンデンサ素子の電極を接続するために第1バスバーと第2バスバーを用い、コンデンサモジュールの同一側面に第1バスバーから第1電極端子、第2バスバーから第2電極端子を取り出す場合に、各電極端子に近いコンデンサ素子に電流集中が起こることを指摘している。ここでは、各バスバーに、第1電極端子と第2電極端子が接続される部分から各バスバーの中央に向かって延びるようにスリットを設けて、これによって各コンデンサ素子に均等に電流が流れるようにする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−311634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術によれば、電流経路の長さを均等化するように、あるいは隣接する電流経路の干渉を抑制するために、バスバー等にスリットを設けることが示されている。
【0007】
ところで、2つの電流経路が互いに逆方向で並走する場合には、この2つの電流によって誘起される磁界が相互に相殺されるので、その部分の相互インダクタンスが非常に低い値となることが生じる。局部的に相互インダクタンスが低いところが生じると、高周波成分の電流がその部分に集中し、局部的な発熱と温度上昇を生じる。
【0008】
本発明の目的は、互いに逆方向に並走する電流経路による相互インダクタンスの低下の影響を抑制することができる容量素子モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る容量素子モジュールは、対向する2つの端面の一方端面に一方側電極が他方端面に他方側電極が設けられ、各端面がそれぞれ同一平面上に位置するように並列に配列された複数の容量素子と、各容量素子の一方端面の一方側電極を相互に接続する一方側接続板部と外部接続用の一方側外部接続部とを有する一方側バスバーと、各容量素子の他方端面の他方側電極を相互に接続する他方側接続板部と外部接続用の他方側外部接続部とを有する他方側バスバーであって、他方側接続板部から他方側外部接続部に向かって容量素子の1つの側面に平行に配置されながら引き出される引出板部を含む他方側バスバーと、を備え、引出板部は、最近接する容量素子に対し予め定めた空隙距離を設けて配置されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る容量素子モジュールにおいて、複数の容量素子は、予め設定された体積利用効率の下で配置された構成から、引出板部に最も近接する容量素子を省略し、引出板部と次に近接する容量素子の側面との間に予め定めた空隙距離を確保することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る容量素子モジュールにおいて、予め定めた空隙間隔を設けるか否かは、容量素子モジュールの耐熱特性に応じて決定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成により、容量素子モジュールは、一対のバスバーのうち、接続板部から外部接続部に向かって容量素子の1つの側面に平行に配置されながら引き出される引出板部を含むバスバーにおいて、引出板部は、最近接する容量素子の側面に対し予め定めた空隙距離を設けて配置される。互いに逆方向に並走する電流経路による相互インダクタンスの低下の影響は、並走する電流経路の間の距離が近いほど大きく、遠いほど小さい。引出板部とこれに最近接する容量素子に対し予め定めた空隙距離を設けることで、相互インダクタンスの低下の影響を適切に抑制することができる。
【0013】
また、複数の容量素子は、予め設定された体積利用効率の下で配置された構成から、引出板部に最も近接する容量素子を省略し、引出板部と次に近接する容量素子の側面との間に予め定めた空隙距離を確保するので、簡単な処理で相互インダクタンスの低下の影響を適切に抑制することができる。
【0014】
また、予め定めた空隙間隔を設けるか否かは、容量素子モジュールの耐熱特性に応じて決定されるので、耐熱特性からみて必要な場合にのみ、引出板部とこれに最近接する容量素子に対し予め定めた空隙距離を設けるものとできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る容量素子モジュールの構成を説明する斜視図である。
【図2】本発明に係る容量素子モジュールの構成を説明する平面図である。
【図3】従来技術の容量素子モジュールにおいて、互いに逆方向に並走する電流によって相互インダクタンスが低下する理由を説明し、これと比較して本発明に係る容量素子モジュールの作用効果を説明する図である。
【図4】本発明に係る容量素子モジュールにおいて、引出板部とこれに最近接する容量素子に対し予め定めた空隙距離を設けるか否かの手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、容量素子モジュールが用いられる対象として、ハイブリッド車両の駆動回路に用いられる平滑コンデンサを説明するが、対向する両端に電極を有する複数の容量素子を一対のバスバーで接続して構成される容量素子モジュールであればよく、産業用途等、他の用途に用いられるものであってもよい。
【0017】
以下では、容量素子モジュールを構成する容量素子をフィルムコンデンサとして説明するが、対向する両端に電極を有する容量素子であればよく、フィルムコンデンサ以外のセラミックコンデンサ、電解コンデンサ等であってもよい。また、容量素子モジュールを構成する容量素子の数を12個として説明するが、勿論、これ以外の個数であっても構わない。
【0018】
また、以下で説明する材料、温度等は説明のための例示であって、容量素子モジュールの仕様に応じて適宜変更が可能である。
【0019】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0020】
図1は、容量素子モジュール10の構成を説明する斜視図であり、図2はその平面図である。容量素子モジュール10は、ハイブリッド車両の駆動回路の平滑コンデンサとして用いられるもので、複数の容量素子を並列に接続して、ハイブリッド車両駆動回路用として必要な静電容量を形成するコンデンサモジュールである。
【0021】
図1には、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸、Z軸方向が示されている。ここでは、Z軸が容量素子12の筒形状の軸方向に平行に取られ、Z軸に垂直な平面をXY平面とするようにX軸とY軸とが取られている。なお、図2以下にも、この3軸に対応する方向がそれぞれ示した。
【0022】
容量素子モジュール10は、12個の筒形状の容量素子12と、一対のバスバー20,30とを含んで構成される。12個の筒状の容量素子12は、Y方向に平行に4個、3個、5個と配置され、これらの3つの列がX方向に沿って配置され、全体として、XY平面上においてほぼ矩形面積の中に12個が配置されている。このように、12個の容量素子12が配置された容量素子モジュール10は、XZ平面に平行な側面とYZ面に平行な側面とを有する。
【0023】
なお、図1、図2から分かるように、12個の容量素子12から構成される容量素子モジュール10は、13個の容量素子12,13を配置した方が体積利用効率の面からいえばよい。その13個の容量素子12,13のうちで1つの容量素子13を省略し、後述する引出板部36とこれに最も近接する容量素子12との間に適当な空隙距離Dを確保するものとしている。そのことを示すために、空隙間隔Dを確保するために省略した容量素子13が想像線で示されている。この省略した容量素子13と、実際に配置されている12個の容量素子12はいずれも同じ形状、同じ特性を有し、相互の間で区別が無い。
【0024】
容量素子12は、筒形状のフィルムコンデンサであり、ここでは12個で1つの容量素子モジュール10を構成する。各容量素子12のそれぞれは、対向する2つの端面の一方端面に一方側電極が他方端面に他方側電極が設けられる。図1の例では、Z軸方向に各容量素子12が筒形状の軸方向を揃えて配置され、Z軸の正方向である筒形状の上方側に負極側電極14、Z軸の負方向である下方側に正極側電極16がそれぞれ同一平面上に位置するように並列に配置される。同一平面はXY平面に平行な平面である。すなわち、筒形状の上方側の端面が一方側端面で、下方側の端面が他方側端面で、負極側電極14が一方側電極、正極側電極16が他方側電極に相当する。
【0025】
一対のバスバー20,30のうち、バスバー20は、各容量素子12の負極側電極14を相互に接続する導体板である。バスバー20は、1枚の導体板の端部の一部を折り曲げた形状を有し、折り曲げる元々の本体部に相当する平板部分が各容量素子12の負極側電極14と相互に接続される接続板部22である。
【0026】
この接続板部22の端部の一部を折り曲げて適当な外部接続用穴を設けた部分が外部接続部24である。接続板部22は、XY平面に平行として各容量素子12の上方側に配置され、その端部の一部がXZ平面に平行に折り曲げられ、そのXZ平面に平行な折り曲げ面に外部接続部24が設けられる。外部接続部24は、容量素子モジュール10の負極側電極接続部、つまり、マイナス端子またはN端子に相当することになる。なお、負極側を一方側とするので、接続板部22は一方側接続板部に相当し、外部接続部24は一方側外部接続部に相当する。
【0027】
かかるバスバー20としては、適当な金属板をプレス成形等で所望の形状に加工したものを用いることができる。容量素子12の負極側電極14との接続には、半田付け等の適当な接続方法を用いることができる。
【0028】
一対のバスバー20,30のうち、バスバー30は、各容量素子12の正極側電極16を相互に接続する導体板である。バスバー20に関連して説明したように、導体板としては適当な金属板を用いることができ、接続方法としては半田付け等を用いることができる。
【0029】
バスバー30は、1枚の導体板の端部を折り曲げた形状を有し、折り曲げる元々の本体部に相当する平板部分が各容量素子12の正極側電極16と相互に接続される接続板部32である。外部と接続するために適当な外部接続用穴を設けた部分が外部接続部34は、この接続板部32の端部を折り曲げた先端部に設けられる。外部接続部34は、容量素子モジュール10の正極側電極接続部、つまり、プラス端子またはP端子に相当することになる。正極側を他方側とするので、接続板部32は他方側接続板部に相当し、外部接続部34は他方側接続部に相当する。
【0030】
バスバー30は、この接続板部32から外部接続部34に向かって、容量素子12の1つの側面に平行に配置されながら引き出される引出板部36を有する。図1、図2では、引出板部36は、省略された容量素子13の1つの側面に平行に配置されながら引き出される様子が示されている。
【0031】
バスバー20に引出板部36に相当するものが設けられずに、バスバー30に引出板部36が設けられるのは、バスバー20の外部接続部24とバスバー30の外部接続部34の高さ関係を同じとするためである。なお、高さとは、容量素子モジュール10において、容量素子12の筒形状の軸方向であるZ方向に沿った寸法である。すなわち、引出板部36の高さは、容量素子12の筒形状の軸方向高さに対応した寸法に設定される。
【0032】
また、接続板部32からの引出板部36の折り曲げは、バスバー30の外部接続部34がバスバー20の外部接続部24と平行になるように、容量素子モジュール10の4つの側面の中の1つの側面に沿って行われる。
【0033】
図1の例では、接続板部32はXY平面に平行として容量素子12の下方に配置される。すなわち、バスバー30の接続板部32は、容量素子12を介して、バスバー20の接続板部22と平行に配置される。
【0034】
そして、引出板部36は、接続板部32の端部においてXZ平面に平行に折り曲げられて形成される。つまり、容量素子モジュール10は、XZ平面に平行な側面と、YZ平面に平行な側面とを有するが、バスバー30の引出板部36は、容量素子モジュール10におけるXZ平面に平行な側面に沿って接続板部32から折り曲げられる。したがって、バスバー30の外部接続部34は、XZ平面に平行な面を有する。
【0035】
上記のように、バスバー20の外部接続部24もXZ平面に平行な面を有するので、2つの外部接続部24,34は、XZ平面に平行な面を有して、さらにZ方向の高さ関係が揃えられていることになる。このように、バスバー20の外部接続部24とバスバー30の外部接続部34を互いに平行な面を有するようにして、その高さ関係を同じとすることで、ハイブリッド車両の駆動回路に容量素子モジュール10を接続することが容易になる。
【0036】
バスバー30の引出板部36は、上記のように、接続板部32からXZ平面に平行となるように折り曲げられて引き出されるが、これに最も近接する容量素子12に対し予め定めた空隙距離Dを設けて配置される。図1、図2の場合、引出板部36に最も近接する容量素子12として、X軸の最も負方向に配置される4個の容量素子12の列の中で引出板部36に最も近い容量素子12が採られているが、配置によっては、X軸に沿って中央の列に配置される3個の容量素子12の中で引出板部36に最も近い容量素子12の場合もあり得る。
【0037】
いずれにしても、引出板部36とこれに最近接の容量素子12との間には予め定めた空隙距離Dが設けられる。この空隙距離Dは、引出板部36とこれに最近接の容量素子12との間で互いに逆方向に並走する電流経路による相互インダクタンスの低下の影響を抑制することができるように設定される。具体的には、相互インダクタンスの低下によって容量素子モジュール10に局部的な温度差が生じるが、その温度差が、容量素子モジュール10に要求される耐熱特性を満たす範囲となるように、空隙距離Dが設定される。
【0038】
図1、図2では、この空隙距離Dは、円筒状の容量素子12の軸方向断面における径寸法よりも小さいことが予め分かっていたとして、ちょうど、1つの容量素子13を省略し、空隙距離Dをそれにより確保した例が示されている。
【0039】
上記構成の作用効果について、図3を用いて、堆積利用効率を考えて空隙間隔Dを特別に設けない従来技術と比較して説明する。なお、図3では、引出板部36の近傍のみを抜き出して示してある。図3において上段に示される図は、予め設定された体積利用効率の下で容量素子を配置した容量素子モジュール8の構成を示す正面図である。
【0040】
ここでは、図1では省略された容量素子13が引出板部36に僅かな隙間を空けて配置されている。この配置は、図1、図2に示される12個の容量素子12で構成される容量素子モジュール10について想像線で示された容量素子13を加えて、合計13個の容量素子12,13によって容量素子モジュール8を構成したものに相当する。
【0041】
図3の上段の図において、容量素子モジュール8をハイブリッド車両の駆動回路の正極母線と負極母線との間に接続配置することを考えると、容量素子モジュール8のプラス端子であるバスバー30の外部接続部34が駆動回路の正極母線に、マイナス端子であるバスバー20の外部接続部24が駆動回路の負極母線に接続されることになる。
【0042】
このときに、容量素子モジュール8から放電が行われるとすると、バスバー30の外部接続部34から駆動回路の正極母線側に電流が流れる。これに対応し、各容量素子12,13には、バスバー20に接続される負極側電極14からバスバー30に接続される正極側電極16に向かって電流50が流れ、バスバー30の接続板部32から引出板部36を経由し外部接続部34に向かって電流54が流れる。なお、図3の上段の図では、引出板部36に最も近接する容量素子13に流れる電流50のみが示されている。
【0043】
このように、容量素子モジュール8が静電容量として機能するときは、引出板部36に流れる電流54と、容量素子13に流れる電流50とは、互いに逆方向で並走することになる。したがって、電流50によって誘起される磁界52と、電流54によって誘起される磁界56とは、その方向が互いに逆となり相殺しあうことになる。これにより、引出板部36に対する容量素子13の相互インダクタンスが小さい値となる。
【0044】
この互いに逆方向となる磁界52,56の相殺によって相互インダクタンスが低下する効果は、互いに逆方向に並走する電流50,54の間の距離が近いほど顕著になる。図3の上段の図の例では、引出板部36に最も近接する容量素子13において、相互インダクタンスの低下が顕著となり、磁界52,56がほぼ相殺されるような極端な場合には、相互インダクタンスが極端に小さい値となる。
【0045】
このように、容量素子13において相互コンダクタンスが他の容量素子12に比べ極端に低い値となると、例えば、高周波リップル信号等による電流成分が容量素子13に集中的に流れることになり、電流のアンバランスが容量素子モジュール8の中で生じる。その結果、容量素子モジュール8において、容量素子13の発熱が他の容量素子12よりも多くなり、局所的な温度上昇が生じることになる。
【0046】
図3の下段の図は、図1、図2で説明したように、引出板部36に最も近接する容量素子12との間に空隙間隔Dを設ける容量素子モジュール10の正面図である。ここでは、空隙間隔Dを確保するために、図3の上段の図で説明した容量素子13を省略してある。
【0047】
図3の上段の図と比較して、引出板部36に僅かな隙間で配置されていた容量素子13が省略されるので、この円筒状の容量素子13の軸方向断面の径寸法分は引出板部36とこれに最も近接する容量素子12との間の空隙間隔が確保される。したがって、容量素子13が省略されたときに引出板部36に最も近接する容量素子12を流れる電流50と、引出板部36を流れる電流54とは空隙間隔Dよりも十分に離間する。
【0048】
これによって、電流50によって誘起される磁界52と、電流52によって誘起される磁界56とは互いに逆方向ではあるが、その間が図3の上段の図に比べ十分に離間しているので、磁界52,56の間の相殺の程度が少なくなる。したがって、図3の下段の図において引出板部36に最も近接している容量素子12における相互インダクタンスの低下の程度は、図3の上段の図における容量素子13における相互インダクタンスの低下の程度よりも少なくなる。
【0049】
このように、引出板部36とこれに最も近接する容量素子12との間に予め定めた空隙間隔Dを設けることで、空隙間隔Dを設けない場合に比して、容量素子モジュール10における相互インダクタンスの低下による電流アンバランスを抑制でき、温度差を抑制することができる。
【0050】
上記のように、引出板部36とこれに最も近接する容量素子12との間に予め定めた空隙間隔Dを設ける方法として、予め設定された体積利用効率の下で配置された構成から、引出板部に最も近接する容量素子を省略できる。この方法は、特に、予め設定された体積利用効率の下で配置された構成の容量素子モジュール8が標準的仕様のときに効果的である。すなわち、通常の仕様においては、13個の容量素子12,13から構成される容量素子モジュール8を用い、通常よりも使用温度が高く耐熱特性に余裕が無い高温仕様においては、容量特性を考慮しながら、引出板部に最も近接する容量素子から順に省略してゆく。このようにすることで、高温仕様のための特別の構成設計を要せずに対応が可能となる。
【0051】
図4は、容量素子モジュールにおいて、引出板部とこれに最近接する容量素子に対し予め定めた空隙距離を設けるか否かの手順を説明するフローチャートである。具体的には、予め設定された体積利用効率の下で配置された通常仕様の構成から、引出板部に最も近接する容量素子を省略できるか否かの手順に関するフローチャートである。
【0052】
図4において、まず、容量素子モジュールの仕様から見て、容量素子温度が予め定めた耐熱温度T0以下で収まるか否かを判断する(S10)。収まれば、通常仕様の構成のままの容量素子モジュールを使用する(S12)。通常仕様の構成の容量素子モジュールとは、図3の上段の図で説明したように、体積利用効率を考慮して13個の容量素子を用いる構成である。
【0053】
S10の判断が否定されると、次に、通常仕様の容量素子モジュールから1つの容量素子を省略しても静電容量の仕様を満足するか否かが判断される(S14)。静電容量の仕様は、寿命劣化を考慮して判断される。例えば、13個から1つの容量素子を省略すると、公称の静電容量は12/13に減少し、寿命劣化を考慮した静電容量も12/13に低下する。例えば、13個の構成の場合、13年の製品寿命としたとき、1個省略すると12年の製品寿命となると考えることができる。
【0054】
高温仕様の場合、12年の製品寿命でよい、と判断されるときはS14の判断が肯定され、引出板部に最も近接する容量素子を1つ省略する。場合によって、耐熱特性から見て2つの容量素子を省略することが必要な場合も同様にして、それらの省略が可能か否かについてS14において判断される。
【0055】
S14の判断が否定されると、容量素子の省略ができないので、その場合には高温仕様についての特別な構成のための設計変更が行われる(S18)。設計変更の内容としては、引出板部において、互いに逆向きで並走する電流成分を抑制するような工夫が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る容量素子モジュールは、ハイブリッド車両に代表される車両駆動用途や産業用途などのパワーインバータシステムに用いられる平滑コンデンサとして利用される。
【符号の説明】
【0057】
8,10 容量素子モジュール、12,13 容量素子、14 負極側電極、16 正極側電極、20,30 バスバー、22,32 接続板部、24,34 外部接続部、36 引出板部、50,54 電流、52,56 磁界。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの端面の一方端面に一方側電極が他方端面に他方側電極が設けられ、各端面がそれぞれ同一平面上に位置するように並列に配列された複数の容量素子と、
各容量素子の一方端面の一方側電極を相互に接続する一方側接続板部と外部接続用の一方側外部接続部とを有する一方側バスバーと、
各容量素子の他方端面の他方側電極を相互に接続する他方側接続板部と外部接続用の他方側外部接続部とを有する他方側バスバーであって、他方側接続板部から他方側外部接続部に向かって容量素子の1つの側面に平行に配置されながら引き出される引出板部を含む他方側バスバーと、
を備え、
引出板部は、最近接する容量素子に対し予め定めた空隙距離を設けて配置されることを特徴とする容量素子モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載される容量素子モジュールにおいて、
複数の容量素子は、予め設定された体積利用効率の下で配置された構成から、引出板部に最も近接する容量素子を省略し、引出板部と次に近接する容量素子の側面との間に予め定めた空隙距離を確保することを特徴とする容量素子モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載される容量素子モジュールにおいて、
予め定めた空隙間隔を設けるか否かは、容量素子モジュールの耐熱特性に応じて決定されることを特徴とする容量素子モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−96785(P2011−96785A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248113(P2009−248113)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】