説明

封印シール及び収容体

【課題】本発明は、痕跡を残さずに不正に開封することが困難な封印シールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、基材21と、前記基材21の第1面に設けられた情報層22と、前記情報層22の上面に設けられた離型層13と、前記離型層23の上面に設けられた第一の接着層25と、前記基材21の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第二の接着層26と、を有したことを特徴とする封印シール20である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に物品が収容された収容体の開口を封印する封印シール及び該封印シール付きの収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ台やいわゆるパチスロ器等の遊戯装置において、当選確率等を制御するプログラムが格納されたメモリ、例えば、いわゆるロム(ROM:リードオンリーメモリ)は、当該遊戯装置内に配置された箱状の回路ボックス内に収容されている。これらの遊戯装置においては、回路ボックスを開封して収容されたROMを当選確率の異なる不正ROMと差し替えるという不正行為が行われることを防止するために、前記回路ボックスの蓋に封印シールが取り付けられていて、回路ボックスを封印するようにしている。
【0003】
この場合、封印シールとして、通常のシールを用いると、外観を損なわずに封印シールを剥して上述の不正行為を行うことが比較的容易である。これを困難にするために特殊な加工を施したシールを封印シールとして使用することがある。例えば、特許文献1には、シール基材の破断強度より接着強度の方が大きくなるよう設計された易破壊性の貼付材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−226784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の貼付材においては、温度によってシール基材の破断強度と接着強度との相対関係が変化する。一般に粘着材として使用される樹脂材料の強度や粘度は、温度の上昇に伴って低下するという特性がある。このため、加温手段を用いて基材及び粘着材の温度を上げると、接着強度が低下してシール基材の破断強度より小さくなることがある。この場合、貼付材を破壊せずに剥すことが比較的可能となり、不正行為が容易であるという問題があった。
【0006】
上述の貼付材に用いられるような粘着剤の多くは、有機溶剤に膨潤ないし溶解するので、適切な有機溶剤を使用すると、痕跡を残さずに剥すことができ、さらに前記の加温による方法も併用することができ、不正行為が可能であるという問題もあった。
【0007】
また、シールを剥すための器具としては、カッター、スクレパー(へら)などが挙げられ、主にシールの粘着材と被接着体の境界面を、被接着体の平面に沿って器具の鋭利な先端を進ませて巧妙に剥す手法が知られている。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、痕跡を残さずに不正に開封することが困難な封印シールと収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、基材と、前記基材の第1面に設けられた情報層と、前記情報層の上面に設けられた離型層と、前記離型層の上面に設けられた第一の接着層と、前記基材の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第二の接着層と、を有したことを特徴とする封印シールである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の封印シールにおいて、前記基材は、前記接着層の接着強度以下の力で破断される脆性材料から形成されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、基材と、前記基材の第1面に設けられた離型層と、前記離型層の上面に設けられた情報層と、前記情報層の上面に設けられた第一の接着層と、前記基材の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第二の接着層と、を有することを特徴とする封印シールである。
請求項4の発明は、内部に物品が収容される筐体と、前記筐体に開閉自在に取り付けられた蓋と、を有する収容体本体を備え、前記筐体の一部の面と前記蓋の一部の面が対面し、その対面する面が、この面間に配置される請求項1、請求項2または請求項3に記載された封印シールで接着されることを特徴とする収容体である。
請求項5の発明は、請求項4に記載の収容体において、前記筐体の一部の面と前記蓋の一部の面には、複数の連なる突起が形成されていることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項4に記載の収容体において、前記筐体の一部の面と前記蓋の一部の面には、複数の連続する突起が形成されていることを特徴とする。
請求項7は、請求項4、請求項5または請求項6に記載の収容体において、前記蓋が閉じる位置で前記蓋の一部の面と対面する前記筐体の一部の面に前記蓋の一部の面側へ突き出すシールテーブルを備え、前記蓋の一部には前記シールテーブルの突出し部と前記封印シールを収納するシールテーブル格納穴を形成し、このシールテーブル格納穴の奥面を前記蓋の一部の面としたことを特徴とする。
請求項8は、請求項7に記載の収容体において、前記シールテーブルの突出し部の外周側面に、前記蓋が閉じる位置で前記シールテーブル格納穴の内周面に接するパッキングを設けたことを特徴とする。
請求項9は、請求項8に記載の収容体において、前記パッキングは前記シールテーブル格納穴に対して気密性が弱い箇所を形成して設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、痕跡を残さずに不正に開封することが困難な封印シールとその封印シールを備えた収容体を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の回路ボックス(収容体本体)のカバー部が開いた状態の斜視図である。
【図2】前記回路ボックス(収容体本体)の封印シール貼り付け部の側面図である。
【図3】前記回路ボックス(収容体本体)の封印シール貼り付け部の上面図である。
【図4】前記封印シールが貼り付けられた状態にある封印シール貼り付け部の側面図である。
【図5】本発明の封印シールの側面図である。
【図6】回路ボックス(収容体本体)が不正に開かれた時の封印シールの状態を示す側面図である。
【図7】前記回路ボックス(収容体本体)の変形例における、封印シールが貼り付けられた状態にある封印シール貼り付け部の拡大側面図である。
【図8】前記回路ボックス(収容体本体)の変形例における、封印シール貼り付け部の上面図である。
【図9】前記回路ボックス(収容体本体)の変形例における、封印シールが貼り付けられた状態にある封印シール貼り付け部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第一の実施の形態の収容体及び封印シールについて、図1から図6を参照して説明する。
【0013】
図1に本発明に係る回路ボックス(収容体)1の、蓋10が開いた状態の斜視図を示す。
【0014】
回路ボックス1は、ポリカーボネートなどの樹脂材料で作られた透明無色の材料で形成されており、この回路ボックス1の中には、パチンコ台等の遊戯装置を制御するための不図示の回路基板が入っている。この回路基板上には遊技内容(当選確率等)を決定するための情報を記憶したメモリ、例えばいわゆるロム(ROM)等の記録装置が搭載されている。回路ボックス1は蓋10を閉じることでその回路ボックス1内に収納した回路基板(メモリを含む)を保護することができるようになっている。
【0015】
図2から図4において、本発明の特徴である封印シール貼り付け部を示す。回路ボックス1の本体部2にはその内部の内側方向へ開口端面と略平行に飛び出すよう設けられた支持体3が設けられており、この支持体3の上面(表側の表面)は開口端面と略平行に形成されている。支持体3の上面(表側の表面)には、シールテーブル4が設けられている。このシールテーブル4の中央部には、図1〜4に示すような円形形状でかつ表裏に接着層を備えた封印シール20が貼り付けられている。
【0016】
図2に示すように、蓋10の裏側には、支持体3の上面から突き出したシールテーブル4を格納するための凹部がシールテーブル格納穴11として設けられている。図2は蓋10が閉じられる直前の状態が示されている。蓋10が閉じられた後の状態は図4で示されている。図4で示すように蓋10が閉じられた後の状態ではシールテーブル格納穴11の中にシールテーブル4が入り込んでいる。ここでは、蓋10が閉じられた後の状態ではシールテーブル4の全体がシールテーブル格納穴11の中に入り込むようになっている。
【0017】
この蓋10が閉じられた状態では、表裏に接着層を備えた封印シール20は、シール表面(上面)の接着層の接着力で、シールテーブル格納穴11の孔奥の面にも貼り付いている状態となる。すなわち、本発明の封印シール20は、該シールの表裏に接着層を備えた両面接着型の封印シールといえる。
【0018】
一方、被接着体である回路ボックス1には、前記封印シールの両面接着の特徴を活かすために、シールテーブル4とシールテーブル格納穴11とが設けられ、前記封印シール20の裏面の接着層はシールテーブル4の平坦部に接着され、前記封印シール20の表面の接着層はシールテーブル格納穴11の奥面に接着され、自身の接着力によってそれぞれに接着される。
【0019】
シールテーブル格納穴11の奥面は、蓋10を上部から見たときに封印シール20のシール表面が最も良く見える透視可能な部分及び位置であり、さらに、シールテーブル格納穴11の奥面の部分は蓋10の中で板厚が最も薄い箇所であるために透明性が高まる。このことからシールテーブル格納穴11の奥面に位置する蓋10の部分をシール視認窓13の領域としている。このシール視認窓13は、本発明の収容体及び封印シールが実際に適用された際に封印シール20に剥された痕跡がないかを調べるための確認用窓ともなる。シールの視認性および蓋10の透明性から機械的な強度が許せば、窓部の厚さは蓋10の他の部分よりもできるだけ薄い方がよい。
【0020】
なお、シールテーブル4とシールテーブル格納穴11の形状としては本実施の形態では平面視で円形とした場合に限らず、例えば、楕円、四角形など他の形状のものであっても構わない。
【0021】
図2に示すように、シールテーブル4の突き出し部の外側周面には、パッキン6が後述する理由により設けられている。円筒形状のシールテーブル4の円筒側面には、その側面を一周するように微細な溝が設けられており、この溝に、パッキン6の内側一部を嵌め込むことにより、パッキン6自身の固定と蓋10の開閉時にパッキン6がずれるのを防止している。このパッキン6は別名Oリングとも呼ばれているゴム材質でできたパッキンであってもよい。
【0022】
シールテーブル4は図3に示すように上面(平面視)からみて円形であるが、一方、このシールテーブル4を格納するためのシールテーブル格納穴11は上面(平面視)からみて若干ではあるが楕円形状になっており、または偏心した位置関係にしてもよい。そのことによりパッキン6は全周が均一の圧力でシールテーブル格納穴11の内側周面に当たっているわけではない。すなわち、シールテーブル4の上面とシールテーブル格納穴11の奥面との間には気密状態の空間ではあるが、後述する理由によりパッキン6の一部においては作為的に気密性が弱い箇所が設けられている。また、パッキン6自体の一部を気密性が弱い箇所として形成してもよい。
【0023】
支持体3と蓋10の互いに対応する部分にはそれぞれ固定用孔12が設けられている。この固定用孔12はビス、ボルト等の固定具によって支持体3と蓋10を密着固定するための孔である。
【0024】
次に、前記封印シール20について、図5および図6を参照して説明する。
この封印シール20は基材21を有し、基材21の表面方向(上方向)の面には情報層22が形成されている。情報層22の上面には離型層23がパターン化されて形成されている。さらに、離型層23の上面及び離型層23のない情報層22の上面には第一の接着層25が形成されている。ここでの接着層25は情報層22の全面領域にわたり形成されている。また、離型層23がパターン化されて形成されているので情報層22は離型層23に覆われる部分と接着層25によって直接に覆われる部分が部分的及び分散してある状態になっている。
【0025】
一方、基材21の裏面方向(下方向)の面には別の離型層24が設けられ、この離型層24の領域と離型層23の領域とは封印シール20を上面から見るときに互いに重ならないようにパターン化されて形成されている。もっとも、離型層24の領域と離型層23の領域とは封印シール20を上面から見るときに一部重なるものや一部交差するものであってもよい。ここで、離型層23または離型層24のパターン形状としては、帯状、点状、格子状などの部分的な模様のパターン形状のものを含む。模様は分散したものでも連続したものでもよい。
【0026】
また、離型層24を設けた基材21の裏面の下面には基材21の下面及び離型層24のない基材21の下面には第二の接着層26が形成されている。ここでの接着層26は基材21の下面の全面領域にわたり形成されている。
【0027】
基材21としては、塑性変形し、さらに破断、破壊される脆性材料からなるものが好ましく、接着層25および接着層26の接着強度より小さい引張負荷で破壊されるものがより好ましい。基材21の材質としては、例えば、カオリン、炭酸カルシウムなどの可塑剤を適量混合して脆質化した脆性塩化ビニル、脆性ポリエステルなどの合成樹脂フィルムや、又は、セルロースアセテート、低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイドなどの高結晶性プラスチック素材を溶液成膜により形成したフィルムなどが挙げられる。その他の材質としては、いわゆるUV(紫外線)硬化法合成樹脂又はカオリン、炭酸カルシウムなどの粉体を適量混合したUV硬化型合成樹脂を用い、その樹脂薄膜をUV照射により硬化乾燥させて成膜したフィルムなどが挙げられる。
【0028】
情報層22は、文字や画像、格子等の幾何学的形状等を、単独若しくは組み合わされてなる任意の図案を、公知のセキュリティインキを含め各種印刷インキを使用してオフセット印刷、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等の印刷方法によって形成することができる。印刷以外では公知のOVD(Optical Variable Device)などのセキュリティデバイスを形成してもよい。ここで、OVDとは、光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現できるホログラムや回折格子、光学特性の異なる薄膜を重ねることにより見る角度により色の変化を生じる多層薄膜の総称である。
【0029】
回路ボックス1が不正に開封され封印シールが壊れてしまっても、封印シールそのものが偽造され、その偽装封印シールを再び回路ボックス1の中に戻し開封された痕跡を残さないという不正行為も十分に考えられるので、情報層22に形成される情報は簡単には偽造できないものが望ましい。
【0030】
離型層23および離型層24の材料としては、シリコン等の適宜の離型剤を用いる。
【0031】
接着層25および接着層26は、封印シール20の封印対象である回路ボックス1に接着するための層であり、この層の材料としては、アクリル系粘着材、ポリエステル系粘着材、ウレタン系粘着材等の公知の各種粘着材を採用することができる。
【0032】
接着層25および接着層26は、これらの粘着材を上述の公知の各種印刷方法や塗布等の方法で基材21の表裏面に形成することができ、その厚みは必要に応じて、1〜20μm程度の範囲で適宜設定することができる。
【0033】
次に、この封印シール20をシールテーブル4とシールテーブル格納穴11に貼り付けた状態で、蓋10が開けられた場合、特に、基材21に対して上下の接着面を平行に引き離した場合の結果の状態が図6に示されている。つまり、離型層23、離型層24と接着層25、接着層26との境界面では、接着層の接着力がないことから、その境界面で剥がれる現象が起きる。また、基材21は、前述のとおり破断、破壊される脆性材料であることから図6に示すように離型層23と離型層24の間において縦方向に断裂が続いて起きる。
【0034】
蓋10が開けられた場合において、これらの現象により情報層22にも断裂が起きることになる。したがって、蓋10を再び閉じたとしても、一旦断裂した情報層22は、まず、印刷で形成された部分では、断裂した箇所で接合面が元に戻らず、また、OVDが形成された部分では、平滑性が元に戻らないために情報層22のこれらの変化を開封された痕跡としてシール視認窓13から目視で確認することができる。
【0035】
前述のとおり接着層25および接着層26の厚さがそれぞれ1〜20μm程度なので、使用する接着層の粘性(粘度)にもよるが、シールテーブル4の上面とシールテーブル格納穴11の奥面との距離が50μm以上離れることで、基材21は、確実に断裂し、その結果として情報層22には開封された痕跡が残る。
【0036】
回路ボックス1そのものを有機溶剤の液体の中に長時間ドブ漬けし、有機溶剤の浸透力によって封印シール20の接着層を溶解して剥す不正行為も考えられる。しかし、蓋10が閉じられた状態では、シールテーブル4の上面とシールテーブル格納穴11の奥面との間の空間においては、シールテーブル4の側面の設けられたパッキン6の作用により気密状態が作られる。この気密状態によって封印シール20の接着層への有機溶剤の浸透を防ぐことができる。
【0037】
また、ドブ漬け状態のまま封印シール20の接着層を溶解する目的で蓋10を少しずつ開いて有機溶剤を浸透させようとしても、シールテーブル4の側面の設けられたパッキン6がシールテーブル格納穴11の内側側面を摺動することで、気密状態は保たれ、その結果として、有機溶剤の浸透を防ぐことができる。なお、蓋10を少しずつ開くといっても、前述のとおりシールテーブル4の上面とシールテーブル格納穴11の奥面との距離が50μm以上離れることで基材21は断裂するので、その開口量は極わずかしかない。
【0038】
次に、第二の実施の形態の回路ボックス1について図7から図9を参照しながら説明する。
【0039】
シール視認窓13の裏面、すなわちシールテーブル格納穴11の奥面には、図7に示すように離型層23のパターン形状に連携するように複数の突起30が設けられている。
【0040】
他方、シールテーブル4の上面にも離型層24のパターンに連携するように同様に複数の突起31が設けられている。なお、突起30および突起31は、前述の基材21の断裂箇所と同一の場所に設けられている。
【0041】
突起31は、上面からみた平面視の場合、図8に示すように、シールテーブル4の上面に格子状に連続した造形で設けられており、また、シールテーブル格納穴11の奥面においても同様の造形で突起30が設けられている。ただし、突起30および突起31の一部の箇所では後述する理由により連続性はない。突起30および突起31は鋭利な先端を持つ。
【0042】
また、突起31においては、鋭利な先端を持つ突起先端が、脆性材料からなる基材21に突き刺さり、突起先端付近の一部では亀裂、破断が起きており、それが格子状に封印シール20の全体に起きていることとなる。前述のとおり、固定用ビス孔12に挿入されたビス、ボルト等の固定具によって締め付けることで、蓋10と支持体3は密着固定されると同時に突起31の先端が基材21に突き刺さる。
【0043】
なお、図8は、突起30および突起31の上面からみた造形であるが、本実施の形態の格子状に限らずどのような造形であっても構わない。
【0044】
図9は、シール視認窓13の上面にOVDなどのセキュリティ層14が、後述する理由により付加された図である。セキュリティ層14は、透明ホログラムなどの層の厚さが薄く(100μm以下)、かつ透明性を有するOVDを、シール視認窓13の上面に熱転写などの方法で設けられた層である。
【0045】
シール視認窓13の一部に細い穴を開け、その穴より圧力を掛けて有機溶剤を注入することで、シールテーブル4の上面とシールテーブル格納穴11の奥面との間の気密状態の空間に有機溶剤を満たして、有機溶剤の浸透力によって封印シール20の接着層を溶解して剥す不正行為も考えられる。なお、シール視認窓13に開けられた細い穴は、開封後に透明の樹脂などで巧妙に埋められ一見して分からないようすることも可能である。
【0046】
第二の実施の形態は、前記の不正行為に対する対策を第一の実施の形態に付加したものである。
【0047】
シール視認窓13の一部に開けられた細い穴より、圧力を掛けて有機溶剤が注入された場合、突起30および突起31の連続性が切れた箇所の方向に有機溶剤は進行し、外側のパッキン6に到達し、その間で有機溶剤が満たされていくが、前述のとおり、パッキン6の一部には内部圧力に対して弱い部分があるためにその部分から有機溶剤が洩れることによって、シールテーブル4の上面とシールテーブル格納穴11の奥面との間の気密状態の空間一杯に有機溶剤が満たされることはない。
【0048】
他方、突起30および突起31の連続性が切れていない区画(図8の格子状になった正方形の部分を区画と称する)では、それらが隔壁になり有機溶剤の浸透は少ない。
【0049】
なお、有機溶剤が進行した部分の情報層22では、それが印刷インキで印刷された文字や画像、格子等の幾何学的形状等の印刷層であった場合には、その印刷インキが有機溶剤に反応することで、にじみ等が発生し、不正の痕跡を残すことになる。
【0050】
シール視認窓13に開けられた細い穴は、開封後に透明の樹脂などで巧妙に埋められ一見して分からないようすることも可能であるが、シール視認窓13の上面にOVDなどのセキュリティ層14を設けることで下記の抑止効果が期待できる。
【0051】
透明ホログラムなどの層の厚さが薄く(100μm以下)、かつ透明性を有するOVDでは、その構造上、微細パターンであることから部分(穴を開けた部分)修復は非常に困難であるため、開封の痕跡を残さないという面ではかなりの抑止効果になる。
【0052】
なお、セキュリティ層14の替わりに、シール視認窓13の上面にレーザー光などで直接同様の微細パターンを設けてもよく、セキュリティ層14と同様に部分修復は非常に困難である。
【0053】
以上のことから、本発明の収容体及び封印シールは、シールの表裏に接着層を備えた両面接着型の封印シールが収容体の内部に貼られた状態では、収容体の構造上、カッター、スクレパー(へら)などでシールの粘着材と被接着体の境界面に沿って鋭利な先端を進めることができず、さらに封印シールを剥離しようとして基材を引き剥がすこともできない。したがって、封印シールの外観を損なわずに回路ボックス(収容体)から剥離することは困難であり、剥離できたとしても、その痕跡が封印シールに残りやすい。よって、痕跡を残さずに開封して収容されたROMを入れ替える等の不正行為を行うことが困難で、かつその痕跡が残りやすい回路ボックスを構成することができる。
【0054】
以上、本発明の各実施の形態について説明してきたが、本発明の技術範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、各実施の形態は他の各実施の形態のものと組み合わせることも可能である。
【0055】
上述の実施の形態においては、基材21の上に情報層22としたが、離型層23を基材21の上に設けその上に情報層22を設ける構成であってもよく、この場合基材21は脆性材料でなくても構わない。前述のような不正な剥離行為があった場合、離型層23と基材21の境界面では、接着力がないことからその境界面ではがれる現象が起き結果的に情報層22が断裂する。さらに情報層22の下面にはRFIDの銀ペーストインキで印刷されたアンテナパターンを設けることもできる。情報層22によってアンテナパターンは隠蔽され、不正な剥離行為があった場合には情報層22と共にアンテナパターンが断線し、その結果通信機能も失うことになる。
【0056】
以上の層構成は、表裏が逆の構成であっても、情報層22が両面にあってもよい。
上述の実施の形態においては、収容体が回路ボックスである例を説明したが、本発明はこれには限定されない。また、本発明は、内部に収容された物品が不正にすりかえられていない等の信頼性を確保する必要があるものであれば、あらゆる物品の収容体に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 … 回路ボックス(収容体本体)
2 … 本体部
3 … 支持体
4 … シールテーブル
6 … パッキン
10 … 蓋
11 … シールテーブル格納穴
12 … 固定用ビス孔
13 … シール視認窓
14 … セキュリティ層
20 … 封印シール
21 … 基材
22 … 情報層
23 … 離型層
24 … 離型層
25 … 接着層
26 … 接着層
30 … 突起
31 … 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の第1面に設けられた情報層と、
前記情報層の上面に設けられた離型層と、
前記離型層の上面に設けられた第一の接着層と、
前記基材の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第二の接着層と、
を有したことを特徴とする封印シール。
【請求項2】
前記基材は、前記接着層の接着強度以下の力で破断される脆性材料から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の封印シール。
【請求項3】
基材と、
前記基材の第1面に設けられた離型層と、
前記離型層の上面に設けられた情報層と、
前記情報層の上面に設けられた第一の接着層と、
前記基材の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第二の接着層と、
を有することを特徴とする封印シール。
【請求項4】
内部に物品が収容される筐体と、
前記筐体に開閉自在に取り付けられた蓋と、
を有する収容体本体を備え、前記蓋が閉じる位置で前記筐体の一部の面と前記蓋の一部の面が対面し、その対面する面が、この面間に配置される請求項1、請求項2または請求項3に記載された封印シールで接着されることを特徴とする収容体。
【請求項5】
前記筐体の一部の面と前記蓋の一部の面には、複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の収容体。
【請求項6】
前記筐体の一部の面と前記蓋の一部の面には、複数の連続する突起が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の収容体。
【請求項7】
前記蓋が閉じる位置で前記蓋の一部の面と対面する前記筐体の一部の面に前記蓋の一部の面側へ突き出すシールテーブルを備え、前記蓋の一部には前記シールテーブルの突出し部と前記封印シールを収納するシールテーブル格納穴を形成し、このシールテーブル格納穴の奥面を前記蓋の一部の面としたことを特徴とする請求項4、請求項5または請求項6に記載の収容体。
【請求項8】
前記シールテーブルの突出し部の外周側面に前記蓋が閉じる位置で前記シールテーブル格納穴の内周面に接するパッキングを設けたことを特徴とする請求項7に記載の収容体。
【請求項9】
前記パッキングは前記シールテーブル格納穴に対して気密性が弱い箇所を形成して設けたことを特徴とする請求項8に記載の収容体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−50555(P2013−50555A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187932(P2011−187932)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】