説明

射出成形用金型

【課題】平板成形品の周縁部の形状に応じて配置される外枠の取り付けや交換を簡便にできるとともに、高精度な平板状成形品を形成できる射出成形用金型を提供する。
【解決手段】射出成形用金型のミドルプレート30は、固定型板11の主面(図中の上面)11Xのほぼ中央位置に着脱自在に取り付けられるコアプレート31と、コアプレート31の外周に隣接して配置される4個の外枠32と、固定型板11の主面11X側の外周部分に着脱自在に取り付けられる外周支持枠としての外周サポートブロック33と、固定型板11の主面11X側において、外枠32と外周サポートブロック33との間に挿入される挿入部材としてのロッキングブロック34とを備えている。ロッキングブロック34は、断面くさび状(逆台形状)に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用金型に関する。さらに詳しくは、本発明は、平板成形品の周縁部の形状に応じて配置される外枠の取り付けや交換を簡便にできるとともに、高精度な平板状成形品を形成できる射出成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形品は、日用品、自動車部品、家電部品、電子部品、光学機器など、汎用から精密用途に至るまで広範囲に使用されている。射出成形品の品質と生産性の良否は、金型の良否に左右されるところが大きい。射出成形用金型の製作には、工作精度、品質の均一化、生産性など、あらゆる面で高度な技術が要求される。
【0003】
射出成形用金型は、比較的納期が長く、高価なので、射出成形品の金型償却費負担が大きい。また、成形品の切り替えごとに金型を交換すると、その手間と時間的損失が大きく、射出成形機の稼働率が低下する。特に、液晶表示装置に用いられる光拡散板や、導光板などの平板成形品では、同じサイズの液晶表示装置であっても、当該装置への取り付け方法の相違などにより、平板成形品の周縁部(いわゆる、ミミ)の形状が異なるため、射出成形用金型において、形状の異なる複数種類の外枠を用意し、この外枠を入れ替えることにより、同一の金型を用いて、異なる形状、寸法の平板成形品を成形する試みがなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、コアプレートと、このコアプレートの周囲四辺に設けられる外枠とを有し、外枠を、幅寸法や形状の異なる複数種類が交換可能な構成とし、かつ、コアプレートと外枠との間に寸法の異なる複数種類の平板状入れ子を配置可能な射出成形用金型が開示されている。このような射出成形用金型によれば、コアプレートの外周に平板状の入れ子を適宜配置することにより、有効面積の異なる2種類以上の平板成形品を形成できる。また、外枠を異なる形状のものに交換することにより、平板成形品の外形を変更することができる。
【0005】
このような射出成形用金型は、具体的には、図16,図17に示すような構成となっており、下記の手順により組み立てられる。図16は、従来の射出成形用金型の構成の一部を模式的に示す断面図である。図17は、射出成形用金型を組み立てる様子を模式的に示す分解断面図である。なお、図16,図17に示す射出成形用金型では、前記平板状入れ子が用いられていない構成となっている。
【0006】
図16に示すように、従来の射出成形用金型100は、型板110と、型板110の主面110X(図中の上面)の略中央位置に配置されるコアプレート120と、コアプレート120の外周(図中の右側)に配置される外枠130と、型板110の外周部分に配置される外周支持枠140とを備えている。
【0007】
外枠130には、形状の異なる複数種類のものが用意されている。外枠130は、型板110の法線とほぼ平行に延びるボルト101により、型板110の主面110Xに取り付けられるとともに、型板110の主面110Xに対して略平行に延びる複数のボルト102により、コアプレート120の外周部分に取り付けられている。
【0008】
外周支持枠140には、型板110の主面110Xに設けられた位置決め部材150(ピンやキー)に嵌合する凹部141が形成されている。外周支持枠140は、位置決め部材150と凹部141とを嵌合させた状態で、型板110の法線とほぼ平行に延びるボルト103により、型板110の主面110Xに取り付けられている。
【0009】
このような射出成形用金型100の組み立ての手順について説明する。
図17に示すように、まず、型板110の主面110Xにコアプレート120を取り付けた後、コアプレート120の外周に隣接して外枠130を配置し、ボルト101によって外枠130を型板110に取り付けている。この際、コアプレート120の上面120Xと外枠130の切り欠き部分の上面130Xとの間には、ほとんど段差が生じない。
【0010】
次に、複数のボルト102間の締め付け具合を調整しながら、これらのボルト102により外枠130をコアプレート120側へ押圧する。次に、型板110に設けられた位置決め部材150に、外周支持枠140の凹部141が嵌合するようにして、型板110の主面110Xに外周支持枠140を配置し、この状態で、ボルト103によって外周支持枠140を型板110の主面110Xに取り付ける。
【0011】
【特許文献1】特開2004−188612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような射出成形用金型100では、外枠130をコアプレート120側へ押し付ける際に行う、前記複数のボルト102間の締め付け具合の調整が非常に煩雑であり、外枠130の取り付けが煩雑となっていた。特に、これらのボルト102の締め付け具合の調整が不十分となる場合には、平板成形品にばりが発生することがあり、平板成形品の精度が低下することがあった。また、外枠130を異なる形状のものに交換する場合には、型板110の主面110Xと略平行に延びるボルト102を緩めるために、わざわざ、型板110から外周支持枠140を取り外さなければならないことから、作業が煩雑になるという問題もあった。
【0013】
本発明の目的は、平板成形品の周縁部の形状に応じて配置される外枠の取り付けや交換を簡便にできるとともに、高精度な平板状成形品を形成できる射出成形用金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の射出成形用金型は、固定型と、可動型とを備え、平板成形品を形成するための射出成形用金型であって、前記固定型および前記可動型は、それぞれ型板を有し、前記固定型および前記可動型のいずれかの型板Aの主面に着脱自在に取り付けられるコアプレートと、このコアプレートの外周に隣接して配置され、前記型板Aの主面に着脱自在に取り付けられる外枠と、前記型板Aの外周部分に着脱自在に取り付けられる外周支持枠と、前記型板Aの主面側において、前記外枠および前記外周支持枠に当接した状態で、前記外枠と前記外周支持枠との間に挿入される挿入部材と、前記挿入部材を前記型板Aの主面側へ押圧することにより、前記外周支持枠からの反力によって前記外枠を前記コアプレート側へ押圧する押圧手段と、を備えることを特徴とする。なお、挿入部材を挿入する方向は、型板の主面に垂直な方向としてもよいし、型板の主面に平行な方向としてもよい。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の射出成形用金型にあっては、前記外周支持枠と前記挿入部材との当接面は、前記外周支持枠側に傾斜していることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の射出成形用金型にあっては、前記外枠と前記挿入部材との当接面は、前記外枠側に傾斜していることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項4に記載の射出成形用金型にあっては、前記平板成形品が光学部材であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項5に記載の射出成形用金型にあっては、前記光学部材が熱可塑性樹脂からなる、光拡散板または導光板であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項6に記載の射出成形用金型にあっては、前記コアプレートのキャビティ面と、前記固定型の型板のキャビティ面と、前記可動型の型板のキャビティ面との少なくともいずれかのキャビティ面に、前記平板成形品の表面にパターン形状を付与するためのパターン形成部が形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項7に記載の射出成形用金型にあっては、前記コアプレートのキャビティ面と、前記固定型の型板のキャビティ面と、前記可動型の型板のキャビティ面との少なくともいずれかのキャビティ面に対応する位置に、前記平板成形品の表面にパターン形状を付与するためのパターン形成部材が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の射出成形用金型によれば、平板成形品の周縁部の形状に応じて外枠を取り付ける際に、外枠と外周支持枠とに当接した状態で、外枠と外周支持枠との間に押圧手段で挿入部材を挿入して、この挿入部材で外枠をコアプレート側へ押圧するため、従来のようなボルトを使用する場合のように、ボルト間の締め付け具合を調整する必要がなく、取り付け作業を簡便に行うことができる。
【0022】
また、外枠を交換する場合には、挿入部材を取り出すだけで、コアプレート側への外枠の押圧を解除でき、従来のように、わざわざ外周支持枠を取り外す必要がないから、外枠の交換作業を簡便に行うことができる。
【0023】
さらに、複数のボルトにより外枠をコアプレート側へ押圧する場合に比べて、挿入部材全体で外枠をコアプレート側へ押圧するため、外枠をコアプレート側へ均一な力で押圧できる。このため、外枠とコアプレートとの隙間を均一なものとすることができ、これにより、ばりのない高精度な平板成形品を形成できる。また、この隙間から送風される圧縮空気を均一に吹き出すことができて平板成形品の離型を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態に係る射出成形用金型を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る射出成形用金型1を模式的に示す断面図である。図1に示すように、射出成形用金型1は、熱可塑性樹脂からなる平板成形品を形成するためのものである。射出成形用金型1は、固定型10と、固定型10に対して進退可能な可動型20と、固定型10および可動型20の間において、固定型10および可動型20のいずれかに取り付けられるミドルプレート30とを備えている。
【0025】
固定型10は、固定型板11と、ストリッパープレート12と、固定型板11およびストリッパープレート12を、射出成形機の固定側ダイプレート(図示略)に取り付けるための取付板13とを備えている。ストリッパープレート12および取付板13には、熱可塑性樹脂を注入するためのスプルー12Aが形成されている。固定型板11には、スプルー12Aに連通するランナー11Aおよびゲート11Bが形成されている。固定型板11は、ストリッパープレート12および取付板13に対して進退自在に構成されている。ストリッパープレート12は、取付板13に対して進退自在に構成されている。また、可動型20は、可動型板21と、射出成形機の可動側ダイプレート(図示略)に可動型板21を取り付けるための取付板22とを備えている。
【0026】
図2は、固定型板11に取り付けられたミドルプレート30を示す概略斜視図であり、図3は、その部分断面図である。図2,図3に示すように、ミドルプレート30は、固定型板11の主面(図中の上面)11Xのほぼ中央位置に着脱自在に取り付けられるコアプレート31と、コアプレート31の外周に隣接して配置される4個の外枠32と、固定型板11の主面11X側の外周部分に着脱自在に取り付けられる外周支持枠としての外周サポートブロック33と、固定型板11の主面11X側において、外枠32と外周サポートブロック33との間に挿入される挿入部材としてのロッキングブロック34とを備えている。
【0027】
図3に示すように、外枠32は、矩形の頂点の一部が矩形状に切り欠かれた形状を有し、その上面32X側から、固定型板11の法線と略平行に延びるボルト4aによって、固定型板11の主面11X側に着脱自在に取り付けられている。この際、外枠32における切欠き部分の上面32Y(すなわち、前記上面32Aより一段低くなった面)は、コアプレートの上面31Xとほぼ面一となっている。
【0028】
外周サポートブロック33は、断面台形状に形成されている。
図4は、ロッキングブロック34と外周サポートブロック33とを示す分解断面図である。図3,図4に示すように、外周サポートブロック33において、外周側(図4中の右側)の面である外側面33Aは、固定型板11の主面11Xに略垂直な面となっており、この外側面33Aとは反対側に位置するロッキングブロック34側の面である内側面33Bは、外側面33Aに対して角度θ度傾斜した斜面となっている。
【0029】
また、図3に示すように、外周サポートブロック33の下面33Yには、位置決め用の凹部33Cが形成されている。一方、固定型板11の主面11Xの外周側には、図3中の上方へ突出する凸状の位置決め部材35が設けられている。外周サポートブロック33は、凹部33Cを位置決め部材35に嵌合させることにより、固定型板11に対して位置決め配置されている。
【0030】
このように位置決めされた外周サポートブロック33は、外側面33Aと略平行に延びるボルト6aによって、上面33X側から固定型板11の主面11Xに着脱自在に取り付けられている。この際、外周サポートブロック33の上面33Xは、外枠32の上面32Xとほぼ同じ高さ位置となっている。
【0031】
ロッキングブロック34は、断面くさび状(逆台形状)に形成されている。従って、外周サポートブロック33とロッキングブロック34との当接面は、その図3中の上方側が固定型板11の主面にほぼ垂直な面から外周サポートブロック33側(外側)に傾斜している。
【0032】
図3,図4に示すように、ロッキングブロック34において、外周サポートブロック33側の面である外側面34Aは、外周サポートブロック33の傾斜面である内側面33Bと略平行な、角度θ度傾斜した傾斜面となっており、外枠33側の面である内側面34Bは、外枠32の外側面32Aと同様に、固定型板11の主面11Xにほぼ垂直な垂直面となっている。
【0033】
ここで、ロッキングブロック34の外側面34Aおよび外周サポートブロック33の内側面33Bの角度θは、5〜30度の範囲が好ましく、10〜20度がより好ましく、13〜17度がさらに好ましい。角度θをこれらの範囲内とすることにより、コアプレート31に対して外枠32を効率よく押圧することができる。
【0034】
図3に示すように、外枠32と外周サポートブロック33との間にロッキングブロック34が挿入されると、ロッキングブロック34の外側面34Aが、外周サポートブロック33の内側面33Bに当接し、ロッキングブロック34の内側面34Bが、外枠32の外側面32Aに当接している。
【0035】
ロッキングブロック34は、他のボルト4a,6aと略平行に延びる、押圧手段としてのボルト5aによって、その上面34X側から固定型板11の主面11X側へ押圧された状態で、固定型板11に着脱自在に取り付けられている。
【0036】
ミドルプレート30は、下記のようにして組み立てられる。図5は、図3において、前記ミドルプレートを分解した様子を示す分解断面図である。図5に示すように、まず、固定型板11の主面11Xにコアプレート31を取り付ける。次に、固定型板11の主面11Xに設けられた位置決め部材35に、外周サポートブロック33の凹部33Cを嵌合させて、外周サポートブロック33の位置決めを行う。この状態で、ボルト6aによって、外周サポートブロック33を固定型板11の主面11Xに取り付ける。
【0037】
ロッキングブロック34のロックウェル硬さ(HRC:JIS Z2245−2005 Cスケール)は、外枠32および/または外周サポートブロック33の材質の硬さに比べて、100%〜20%であることが好ましく、80%〜30%であることがより好ましい。ロッキングブロック34のロックウェル硬さが100%より大きい場合には、外枠32等を傷つけて精度が低下するおそれがあり、20%よりも小さくするとロッキングブロック34としての機能が不十分となり耐久性に劣るおそれがある。
【0038】
また、ロッキングブロック34における外周サポートブロック33との当接面となる外側面34Aおよび外枠32との当接面となる内側面34Bにおける表面粗さは、各当接面の算術平均粗さ(Ra)が、0.02μm(鏡面)〜200μmであることが好ましく、0.1〜100μmがより好ましい。当接面の算術平均粗さが0.02μm未満の場合には、当接面間の摩擦力が大きくなって、ロッキングブロック34の取り外しが困難になるおそれがある。一方、当接面の算術平均粗さが200μmより大きい場合には、部材間の位置精度が低下するおそれがあるとともに、耐久性が低下する。
【0039】
なお、一般的には、部材間にグリスなどを使用して取り外し易くするが、成形品が光学部材である場合には、成形品にグリスが付着すると不良品となりうるため、グリスを用いることができない。そのかわりに、上記のように各部材の表面粗さを制御している。
【0040】
次に、コアプレート31の外周に隣接して外枠32を配置し、ボルト4aによって外枠32を固定型板11の主面11Xに取り付ける。この際、コアプレート31の上面31Xと外枠32の切欠き部分の上面32Yとの間には段差が生じない。
【0041】
次に、外枠32と外周サポートブロック33との間にロッキングブロック34を挿入し、ロッキングブロックの内側面34Bと外枠32の外側面32Aを当接させ、かつロッキングブロックの外側面34Aと外周サポートブロック33の内側面33Bを当接させる。この状態で、ボルト5aを締め付けることにより、固定型板11の主面11X側へ向けてロッキングブロック34を押圧する。このように、ボルト5aを締め付けてロッキングブロック34を押圧すると、面34A,33B同士、面34B,32A同士が当接しつつ、ロッキングブロック34が固定型板11側へ移動する。この際、ロッキングブロック34の内側面34Aが外周サポートブロック33の外側面33Bを押圧することによる反作用により、ロッキングブロック33が外枠32をコアプレート31側へ押圧することになる。このような状態で、ロッキングブロック34を固定型板11の主面11X側に取り付ける。
【0042】
このように、ロッキングブロック34が外枠32をコアプレート31側へ押圧するが、ロッキングブロック34の外側面34A全体で外周サポートブロック33の内側面33Bを押圧するので、ロッキングブロック34は、外枠32の長手方向に沿って均一な力で外枠32をコアプレート31側へ押圧することができる。このため、コアプレート31と外枠32との間の隙間を均一にすることができ、平板成形品に、ばり等が生じるのを抑えることができる。
【0043】
ところで、図6に示すように、外枠32におけるコアプレート31側の面である内側面32Bには、切欠部32Pが形成されている。また、切欠部32Pに隣接して送風口32Sが設けられており、成形された平板成形品をコアプレート31から離型する離型エアである圧縮空気を切欠部32Pに案内する。切欠部32Pでは圧縮空気が均一に吹き出されるため、成形された平板成形品の離型、取り出しが非常に容易となる。
【0044】
また、外枠32の上面32Xには、平板成形品を形成する際に溶融樹脂から生じ得るガス状の熱分解物を排出するための溝部32Uが形成されている。これにより、平板成形品内に気泡等が生じることを防止し、成形品の精度を高めることができる。
【0045】
ところで、図7〜図10に示すように、コアプレート31と固定型板11の位置ずれを防止するために、位置決め部材としてキー36を使用することができる。このようなキー36を配置する際には、キー36は、コアプレート31もしくは固定型板11のいずれか一方の部材が先に加熱されて膨張するかまたは冷却されて収縮する際に、後から膨張または収縮する他方の部材にゆがみ等が生じないように、熱膨張および熱収縮を逃がすことができる構造を有することが好ましい。このような構造としては、例えば、図7および図8に示すように、キー36を固定型板11の中央部一点に形成された溝11Cに配置し、この一点でコアプレート31を支持する構造とすることができる。
【0046】
また、例えば、図9および図10に示すように、位置決め部材をキー36およびキー37で構成し、固定型板11中央部一点の溝11Cにキー36を配置し、この中央部から一の方向およびこの一の方向と反対の他の方向とにそれぞれ延びる線対称な位置の放射部に形成された溝11Dに、矩形状のキー37を配置してもよい。すなわち、固定型板11およびコアプレート31との間に、キー37よりも大きな寸法で前記一および他の方向に平行に延びる溝11Dを形成した構成とすることができる。従って、固定型板11の長手方向では溝11Dの寸法が放射部キー37の寸法よりも長いので、コアプレート31もしくは固定型板11のいずれか一方の部材が膨張または収縮しても、これらの熱膨張および熱収縮を逃がすことができ、ゆがみ等を防止することができる。
【0047】
次に、外枠32を取り外す場合について説明する。例えば、液晶表示装置に用いられる光拡散板、導光板などの平板成形品は、同じ寸法であっても装置への取り付け方法の相違などにより、平板成形品の周縁部いわゆるミミの形状が異なる。例えば、図11〜図13に示すように、平板成形品24a〜24cでは、周縁部の形状が異なる。このような平板成形品24a〜24cに対しては、同一のコアプレート31を用い、周縁部の形状に応じた外枠32に交換することにより、ミミの形状の異なる平板成形品24a〜24cを成形することができる。
【0048】
外枠32を交換するためには、図3において、まず、ボルト5aを緩めることにより、ロッキングブロック34を固定型板11から取り外す。この際、ロッキングブロック34から外枠32への押圧が開放されるため、ボルト4aを簡単に緩めることができる。このため、ボルト4aを緩めるだけで、固定型板11から外周サポートブロック33を取り外すことなく、固定型板11から外枠32を簡単に取り外すことができる。従って、本実施形態の射出成形用金型1では、ロッキングブロック34を取り外すだけで外枠32の取り外しが可能となるので、外枠32を簡単に交換でき、作業が簡便になる。
【0049】
次に、射出成形用金型1を用いて、平板成形品を形成する手順について説明する。図14,図15は、射出成形用金型を使用して平板成形品を成形する操作を説明するための概略図である。図1に示すように、まず、固定型10および可動型20が閉じられた状態で、溶融状態の熱可塑性樹脂を取付板13の上方から射出し、スプルー12A、ランナー11A、ゲート11Bを介してキャビティに溶融樹脂を充填する。
【0050】
次に、溶融樹脂が冷却されて固化した後に、図14に示すように、可動型20を後退させて、可動型板21とミドルプレート30との間を開いて、平板成形品Xを露出させる。次に、図15に示すように、可動型板21をさらに後退させて、固定型板11とストリッパープレート12との間を開き、ピンポイントゲート部分の熱可塑性樹脂を切断する。
【0051】
さらに、図6に示した外枠32の切欠部32Pから離型エアである圧縮空気を吹き出し、平板成形品Xをミドルプレート30から離型して取り出す。最後に、スプルー12Aとランナー11Aとゲート11Bに対応する部分をロボットなどにより取り出した後、可動型20と固定型10とを閉じて射出成形の1サイクルを終了する。以上のようにして、平板成形品を得ることができる。
【0052】
また、周縁部の形状または寸法が異なる平板成形品の製造に移行する場合には、前述した手順で使用していた外枠32を取り外した後、前述した手順で平板成形品の周縁部形状に応じた外枠32に交換する。
【0053】
本発明の射出成形用金型を使用して成形する平板成形品としては、特に制限はないが、表面に厳しい平面性が要求される平板成形品に好適に適用することができ、特に、光学部材が好ましい。光学部材としては、光拡散板、導光板、反射板、ライティングカーテン、フレネルレンズ、およびレンチキュラーレンズ等が含まれ、光学部材の材質は、熱可塑性樹脂が好ましく、光拡散剤を配合した熱可塑性樹脂を用いることもできる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、例えば、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂、脂環式構造を有する樹脂、芳香族ビニル系単量体と低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル系単量体との共重合体、ポリエーテルスルホンなどを挙げることができる。
【0054】
これらの中で、脂環式構造を有する樹脂および芳香族ビニル系単量体と低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル系単量体との共重合体を好適に用いることができ、脂環式構造を有する樹脂を特に好適に用いることができる。脂環式構造を有する樹脂は、溶融樹脂の流動性が良好なので、ピンポイントゲートを用いて金型のキャビティを充填することができ、吸湿性が極めて低いので、寸法安定性に優れ、平板成形品に反りを生ずることがなく、比重が小さいので、平板成形品を軽量化することができる。なお、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸およびアクリル酸のことである。
【0055】
なお、本発明は前記実施形態には限定されない。
例えば、射出成形用金型1を、固定型板11、可動型板21、ミドルプレート30の3プレートからなるものとして構成したが、固定型板11および可動型板21のいずれかに、ミドルプレート30を備えた2プレートからなる構成としてもよい。
【0056】
また、固定型板11としては、その内部に加熱機構を備えたホットランナーであってもよいし、加熱機構を備えていないコールドランナーであってもよい。
さらに、平板成形品の表面に所定のパターン形状を形成するためのパターン形成部材、例えばパターンが形成された薄板のスタンパーを、可動型板21のキャビティ面および固定型板11のキャビティ面のいずれかの面に相当する位置に配置してもよい。また、コアプレート31のキャビティ面に前記パターン形成部材を配置してもよい。また、可動型板21のキャビティ面および固定型板11のキャビティ面のいずれかの面に、所定のパターン形状を形成するためのパターン形成部を直接形成してもよい。また、コアプレート31のキャビティ面に前記パターン形成部を直接形成してもよい。このようなパターン形成部材を配置しまたはパターン形成部を設けることにより、平板成形品の成形と同時に所望のパターン形状を成形品表面に形成することができるので、別途にパターン形状を形成する場合に比べて、工数を削減することができる。
【0057】
ここで、前記パターン形状とは、例えば、平板成形品が光拡散板である場合には、この光拡散板の表面に形成されることにより、入射された光を拡散して出射する凹凸形状のことである。パターン形状の具体的な形状としては、例えば、断面多角形状または断面半円状で、かつ線状に延びる線状部が複数ほぼ平行に並んだ形状等の凹凸形状とすることができる。前記多角形としては、例えば三角形や四角形等である。前記半円状には、半円に加えて、半楕円状、一部に曲線部分を有する形状等が含まれる。また、パターン形状としては、多角錐(三角錐、四角錐など)や、半球状(半球、半楕円球状、法物面状などの一部に曲面を有する形状など)などの凹凸形状とすることができる。なお、これらの凹凸形状を光拡散板の表面に形成する場合について説明したが、前記凹凸形状を光拡散板以外の他の平板成形品の表面に形成してもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、固定型板11側へのロッキングブロック34の押圧を、ボルト5aの締め付けにより行っているが、例えば油圧や、ばね等の他の押圧手段によって押圧してもよい。また、ロッキングブロック34の縦断面形状は、前述した断面くさび状には限定されず、外枠32をコアプレート31側に押圧できる形状であれば、他の形状であっても良い。また、上述した切欠部32Pの形状や寸法に特に限定されず、圧縮空気を均一に吹き出すことができればよい。
【0059】
さらに、上述した実施形態では、外周サポートブロック33とロッキングブロック34との当接面が外周サポートブロック33側に傾斜している場合について説明したが、外枠32とロッキングブロック34との当接面が外枠32側に傾斜していてもよい。さらに、外周サポートブロック33とロッキングブロック34との当接面が外周サポートブロック33側に傾斜し、同時に外枠32とロッキングブロック34との当接面が外枠32側に傾斜していてもよい。これらの場合において、外枠32とロッキングブロック34との当接面の傾斜角度は、前記外周サポートブロック33とロッキングブロック34との当接面の角度と同じ好適な範囲とすることができる。具体的には、傾斜角度は、5〜30度の範囲が好ましく、10〜20度がより好ましく、13〜17度がさらに好ましい。また、外枠32とロッキングブロック34との当接面において、外枠32の外側面32Aおよびロッキングブロック34の内側面34Bの硬さや表面粗さ等は、前記外周サポートブロック33とロッキングブロック34との当接面の硬さおよび表面粗さと同じ好適な範囲とすることができる。このようにして、外枠32とロッキングブロック34との当接面が外枠32側に傾斜している外枠32およびロッキングブロック34を使用した場合にも、上述と同様に、ロッキングブロック34を固定型板11の主面側へ押圧することにより、外周サポートブロック33からの反力によって外枠32をコアプレート31側へ押圧することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる射出成形用金型は、平板成形品の周縁部の形状に応じて外枠を交換する際に、簡略化された操作で迅速に外枠を交換することができるので、周縁部の形状が異なる平板成形品を成形する射出成形用金型に有用である。特に、厳密な平面性が要求される光拡散板、導光板、反射板などの平板成形品の成形に適している。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態による射出成形用金型を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態による射出成形用金型の主要部を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態による射出成形用金型の主要部を示す部分断面図である。
【図4】ロッキングブロックおよび外周サポートブロックを示す概略部分断面図である。
【図5】本発明の実施の形態による射出成形用金型の主要部を示す分解断面図である。
【図6】外枠を示す概略斜視図である。
【図7】固定型板を示す概略平面図である。
【図8】固定型板およびコアプレートを示す概略断面図である。
【図9】固定型板を示す概略平面図である。
【図10】固定型板およびコアプレートを示す概略断面図である。
【図11】平板成形品を示す平面図である。
【図12】平板成形品を示す平面図である。
【図13】平板成形品を示す平面図である。
【図14】射出成形用金型を使用して平板成形品を成形する操作を説明する概略図である。
【図15】射出成形用金型を使用して平板成形品を成形する操作を説明する概略図である。
【図16】従来の射出成形用金型の主要部を示す部分断面図である。
【図17】従来の射出成形用金型の主要部を示す分解断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 射出成形用金型
4a ボルト
5a ボルト
6a ボルト
10 固定型
11 固定型板
11A ランナー
11B ゲート
11C 溝
11D 溝
11X 主面
12 ストリッパープレート
12A スプルー
13 取付板
20 可動型
21 可動型板
22 取付板
30 ミドルプレート
31 コアプレート
31X 上面
32 外枠
32A 外側面
32B 内側面
32P 切欠部
32S 送風口
32U 溝部
32X 上面
32Y 上面
33 外周サポートブロック
33A 外側面
33B 内側面
33C 凹部
33X 上面
33Y 下面
34 ロッキングブロック
34A 外側面
34B 内側面
35 位置決め部材
36 キー
37 キー
X 平板成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と、可動型とを備え、平板成形品を形成するための射出成形用金型であって、
前記固定型および前記可動型は、それぞれ型板を有し、
前記固定型および前記可動型のいずれかの型板Aの主面に着脱自在に取り付けられるコアプレートと、
このコアプレートの外周に隣接して配置され、前記型板Aの主面に着脱自在に取り付けられる外枠と、
前記型板Aの外周部分に着脱自在に取り付けられる外周支持枠と、
前記型板Aの主面側において、前記外枠および前記外周支持枠に当接した状態で、前記外枠と前記外周支持枠との間に挿入される挿入部材と、
前記挿入部材を前記型板Aの主面側へ押圧することにより、前記外周支持枠からの反力によって前記外枠を前記コアプレート側へ押圧する押圧手段と、
を備えることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
前記外周支持枠と前記挿入部材との当接面は、前記外周支持枠側に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記外枠と前記挿入部材との当接面は、前記外枠側に傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記平板成形品は、光学部材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出成形用金型。
【請求項5】
前記光学部材は、熱可塑性樹脂からなる、光拡散板または導光板であることを特徴とする請求項4に記載の射出成形用金型。
【請求項6】
前記コアプレートのキャビティ面と、前記固定型の型板のキャビティ面と、前記可動型の型板のキャビティ面との少なくともいずれかのキャビティ面に、前記平板成形品の表面にパターン形状を付与するためのパターン形成部が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の射出成形用金型。
【請求項7】
前記コアプレートのキャビティ面と、前記固定型の型板のキャビティ面と、前記可動型の型板のキャビティ面との少なくともいずれかのキャビティ面に対応する位置に、前記平板成形品の表面にパターン形状を付与するためのパターン形成部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の射出成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−230058(P2007−230058A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53894(P2006−53894)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)【国等の委託研究の成果に係る記載事項】 国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化学技術戦略的開発/エネルギー使用合理化技術実証研究/低消費電力バックライトの開発と省エネ製造技術の実証研究」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】