説明

射出成形装置及び長尺成形品の製造方法

【課題】精度が必要な面においてヒケを抑制する。
【解決手段】第1金型と第2金型とを型締めすることで長尺に形成され、該長手方向に直交する断面において型開き方向に沿った互いに対向する一対の第1面の寸法Aと、型開き方向と直角方向に沿った互いに対向する一対の第2面の寸法Bとの比が1となる部分が長手方向中間部に生じるように該寸法Aと該寸法Bとの比が連続的に変化する部分を含むキャビティと、前記第1金型及び前記第2金型に設けられ、前記第2面の寸法Bが前記第1面の寸法Aより大きい範囲の温度を、前記一対の第2面の温度よりも前記一対の第1面の温度が高くなるように調整する第1温調回路と、を備える。これにより、第1面よりも第2面が精度を要求される場合に、当該第2面でのヒケを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置及び長尺成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、少なくとも1つ以上の転写面を有した金型10と、非転写面の少なくとも1つ以上の面に設けられ、摺動可能なキャビティ駒11と、を備え、金型10に、溶融樹脂を射出充填した後、当該樹脂の軟化温度未満まで冷却する間に、キャビティ駒11を樹脂と離隔させ、キャビティ駒11と樹脂との間に空隙15aを形成し、所定時間後、キャビティ駒11を移動し、空隙15aを減少して空隙15bを形成する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−62870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、長手方向に直交する断面において互いに対向する一対の第1面の寸法Aと第1面と直角をなす互いに対向する一対の第2面の寸法Bとの比が1となる部分が長手方向中間部に生じるように該寸法Aと該寸法Bとの比が連続的に変化する部分を含む長尺成形品を成形する場合に、第1面及び第2面のうち精度が必要な面において、ヒケを抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、第1金型と、前記第1金型に対して相対的に移動する第2金型と、前記第1金型と前記第2金型とを型締めすることで長尺に形成され、該長手方向に直交する断面において型開き方向に沿った互いに対向する一対の第1面の寸法Aと、型開き方向と直角方向に沿った互いに対向する一対の第2面の寸法Bとの比が1となる部分が長手方向中間部に生じるように該寸法Aと該寸法Bとの比が連続的に変化する部分を含むキャビティと、前記第1金型及び前記第2金型に設けられ、前記第2面の寸法Bが前記第1面の寸法Aより大きい範囲の温度を、前記一対の第2面の温度よりも前記一対の第1面の温度が高くなるように調整する第1温調回路と、前記第1金型及び前記第2金型に設けられ、前記第2面の寸法Bが前記第1面の寸法Aより小さい範囲の温度を、前記第1温調回路により温度調整される前記一対の第1面の温度よりも当該範囲の前記一対の第1面の温度が低くなるように調整する第2温調回路と、を備える射出成形装置である。
【0006】
請求項2の発明は、前記第1金型または前記第2金型の前記第2面が可動入れ子により構成される請求項1に記載の射出成形装置である。
【0007】
請求項3の発明は、第1金型と、前記第1金型に対して相対的に移動する第2金型と、前記第1金型と前記第2金型とを型締めすることで長尺に形成され、該長手方向に直交する断面において型開き方向に沿った互いに対向する一対の第1面の寸法Aと、型開き方向と直角方向に沿った互いに対向する一対の第2面の寸法Bとの比が1となる部分が長手方向中間部に生じるように該寸法Aと該寸法Bとの比が連続的に変化する部分を含むキャビティと、前記第1金型及び前記第2金型に設けられ、前記第2面の寸法Bが前記第1面の寸法Aより小さい範囲の温度を、前記一対の第1面の温度よりも前記一対の第2面の温度が高くなるように調整する第1温調回路と、前記第1金型及び前記第2金型に設けられ、前記第2面の寸法Bが前記第1面の寸法Aより大きい範囲の温度を、前記第1温調回路により温度調整される前記一対の第2面の温度よりも当該範囲の前記一対の第2面の温度が低くなるように調整する第2温調回路と、を備える射出成形装置である。
【0008】
請求項4の発明は、前記一対の第1面の一方が可動入れ子により構成される請求項3に記載の射出成形装置である。
【0009】
請求項5の発明は、前記第1温調回路は、前記一対の第1面の温度を調整する第1面回路と、前記一対の第2面の温度を調整する第2面回路と、を有し、前記第1面回路と前記第2面回路との間で断熱構造を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形装置である。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1又は3に記載の射出成形装置の前記第1温調回路及び前記第2温調回路により、前記キャビティの温度を調整する温度調整工程と、前記キャビティに溶融樹脂を射出して、前記キャビティを溶融樹脂で満たす射出工程と、前記キャビティ中の前記溶融樹脂を冷却固化する固化工程と、前記第2の金型を型開きする型開き工程と、を備える長尺成形品の製造方法である。
【0011】
請求項7の発明は、請求項2又は4に記載の射出成形装置の前記第1温調回路及び前記第2温調回路により、前記キャビティの温度を調整する温度調整工程と、前記キャビティに溶融樹脂を射出して、前記キャビティを溶融樹脂で満たす射出工程と、前記キャビティ内の溶融樹脂を前記可動入れ子により圧縮する圧縮工程と、前記キャビティ中の前記溶融樹脂を冷却固化する固化工程と、前記第2の金型を型開きする型開き工程と、を備える長尺成形品の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1の構成によれば、第1面よりも第2面が精度を要求される場合において、第2面の寸法Bが第1面の寸法Aより大きい範囲の温度を、一対の第2面の温度よりも一対の第1面の温度が高くしない場合に比べ、当該第2面でのヒケを抑制できる。
【0013】
本発明の請求項2の構成によれば、可動入れ子を備えない構成に比べ、精度が要求される第2面を高精度に成形できる。
【0014】
本発明の請求項3の構成によれば、第2面よりも第1面が精度を要求される場合において、第2面の寸法Bが第1面の寸法Aより小さい範囲の温度を、一対の第1面の温度よりも一対の第2面の温度が高くしない場合に比べ、当該第1面でのヒケを抑制できる。
【0015】
本発明の請求項4の構成によれば、可動入れ子を備えない構成に比べ、精度が要求される第1面を高精度に成形できる。
【0016】
本発明の請求項5の構成によれば、第1面回路及び第2面回路は、一方が他方の温度に影響を受けずに温度調整を行うことができる。
【0017】
本発明の請求項6の構成によれば、請求項1又は3に記載の射出成形装置の第1温調回路及び第2温調回路によりキャビティの温度を調整する温度調整工程を備えない場合に比べ、精度が要求される第1面又は第2面においてヒケを抑制できる。
【0018】
本発明の請求項7の構成によれば、キャビティ内の溶融樹脂を前記可動入れ子により圧縮する圧縮工程を備えない場合に比べ、精度が要求される第1面又は第2面を高精度に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る射出成形装置の構成を示す概略図である。
【図2】キャビティの構成を示す斜視図である。
【図3】キャビティの長手方向に直交する直交断面を示す断面図である。
【図4】温調回路の構成を示す斜視図である。
【図5】温調回路の構成を示す側面図である。
【図6】可動側金型の枠入れ子及び固定側金型の枠入れ子における温調回路の具体的な構成を示す断面図である。
【図7】可動側金型の可動入れ子及び固定側金型の入れ子における温調回路の具体的な構成を示す断面図である。
【図8】断熱構造を示す斜視図である。
【図9】断熱構造を示す斜視図である。
【図10】fθレンズの構成を示す斜視図である。
【図11】比較例において各断面におけるヒケの発生を示す概略図である。
【図12】第2実施形態の構成を示す斜視図である。
【図13】第2実施形態におけるキャビティの長手方向に直交する直交断面を示す断面図である。
【図14】第3実施形態の構成を示す斜視図である。
【図15】第3実施形態におけるキャビティの長手方向に直交する直交断面を示す断面図である。
【図16】第3実施形態の射出成形装置における図14の直交断面D3と同一面上の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(第1実施形態に係る射出成形装置の構成)
まず、第1実施形態に係る射出成形装置の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る射出成形装置の構成を示す概略図である。尚、図1は、紙面右側にもキャビティ20を備えているが、図示を省略している。
【0021】
射出成形装置10は、長尺成形品の一例としてのfθレンズ300(図10参照)を射出成形するための装置である。fθレンズ300は、プリンタ等の画像形成装置の露光装置(光走査装置)に用いられるものであり、図10に示すように、光Lが入射する入射面302と、この入射面302から入射した光Lを出射する出射面304と、を有している。
【0022】
なお、射出成形装置10によって射出成形される長尺成形品は、fθレンズ300に限られず、他の樹脂成形品であってもよい。
【0023】
射出成形装置10は、図1に示すように、第1金型の一例としての固定側金型50と、固定側金型50に対して相対的に移動する第2金型の一例としての可動側金型30と、備えている。この固定側金型50と可動側金型30とによって、射出成形装置10における射出成形金型が構成される。固定側金型50と可動側金型30とは、パーティングライン面18で分割可能とされており、固定側金型50と可動側金型30とを型締めすることでパーティングライン面18に沿って長尺とされたキャビティ20が形成される。なお、可動側金型30は、固定側金型50に対して図1の矢印Y方向に型開きされる。
【0024】
具体的には、固定側金型50は、キャビティ20のうち、パーティングライン面18の一方側部分(図1における上側部分)を形成し、可動側金型30は、キャビティ20のうち、パーティングライン面18の他方側部分(図1における下側部分)を形成するようになっている。
【0025】
固定側金型50は、キャビティ20の第2面22(図3参照)のうち出射面304となる部分を形成するための形成面52Aを有する入れ子52と、入れ子52が収容される収容空間が形成されて矢視Nにて枠状とされた枠入れ子54と、を備えている。形成面52Aは、fθレンズ300の光学面である出射面304を成形するための転写面となる。
【0026】
可動側金型30は、キャビティ20の第2面22(図3参照)のうち入射面302となる部分を形成するための形成面32Aを有する可動入れ子32と、可動入れ子32が収容される収容空間が形成されて矢視Mにて枠状とされた枠入れ子34と、を備えている。形成面32Aは、fθレンズ300の光学面である入射面302を成形するための転写面となる。可動入れ子32は、固定側金型50へ加圧して、キャビティ20内に充填された樹脂を圧縮可能に構成されている。
【0027】
なお、射出成形装置10は、固定側金型50に設けられ溶融樹脂が注入されるスプルーブッシュ13と、スプルーブッシュ13に形成され溶融樹脂が通過するスプルー14と、可動側金型30に形成され溶融樹脂が通過するランナー15と、キャビティ20の入り口としてのゲート16と、を備えている。
【0028】
(射出成形装置10におけるキャビティ20の構成)
図2は、キャビティ20の構成を示す斜視図である。図3は、キャビティ20の長手方向に直交する直交断面を示す断面図である。
【0029】
キャビティ20は、図2に示すように、キャビティ20の長手方向(図2における矢印X方向)中央部と、その中央部の長手方向外側と、さらにその長手方向外側とで、その長手方向(図2における矢印X方向)に直交する直交断面をD1、D2、D3ととると、型開き方向(図2における矢印Y方向)に沿った互いに対向する一対の第1面21の寸法Aと、型開き方向と直角方向(図2における矢印X方向)に沿った互いに対向する一対の第2面22の寸法Bとの関係は、以下の通りとなる。すなわち、直交断面D1では、図3(A)に示すように、寸法A>寸法Bとなり、直交断面D2では、図3(B)に示すように、寸法A=寸法Bとなり、直交断面D3では、図3(C)に示すように、寸法A<寸法Bとなる。
【0030】
つまり、キャビティ20は、直交断面において一対の第1面21の寸法Aと、一対の第2面22の寸法Bとの比が1となる部分(上記の直交断面D2)が、長手方向中間部に生じるように該寸法Aと該寸法Bとの比が連続的に変化する部分を含んでいる。
【0031】
本実施形態では、キャビティ20の第2面22が、成形されるfθレンズ300において、他の面(第1面21)よりも精度の要求される光学面となる。具体的には、固定側金型50側の第2面22が、fθレンズ300の出射面304となり、可動側金型30側の第2面22が、fθレンズ300の入射面302となる。なお、詳細には、キャビティ20の第2面22のうち、キャビティ20の長手方向両端部の平面をなす部分は、光学面とはならず、その中央側の曲面をなす部分が光学面となる。なお、図2及び図3では、fθレンズ300が成形された場合における光照射方向を矢印Lにて示している。
【0032】
(射出成形装置10における温調回路の構成)
図4は、温調回路の構成を示す斜視図である。図5は、温調回路の構成を示す側面図である。
【0033】
射出成形装置10は、図4に示すように、固定側金型50及び可動側金型30に設けられ、第2面22の寸法Bが第1面21の寸法Aより大きい範囲の温度を調整する第1温調回路100を備えている。すなわち、第1温調回路100は、キャビティ20において直交断面D2よりも長手方向外側部分110(図2参照)の温度を調整する回路である。
【0034】
具体的には、第1温調回路100は、固定側金型50に設けられた固定側金型用回路150と、可動側金型30に設けられた可動側金型用回路130と、を備えて構成されている。
【0035】
固定側金型用回路150は、図4及び図5(A)に示すように、固定側金型50の枠入れ子54に設けられキャビティ20の長手方向一端側(図4における左端側)において各第1面21の温度を調整する第1面回路151・153と、固定側金型50の入れ子52に設けられキャビティ20の長手方向一端側(図4における左端側)において第2面22の温度を調整する第2面回路152と、を備えている。尚、「・」は、「及び」の意味である(以下同じ)。
【0036】
また、固定側金型用回路150は、図4及び図5(C)に示すように、固定側金型50の枠入れ子54に設けられキャビティ20の長手方向他端側(図4における右端側)において各第1面21の温度を調整する第1面回路155・157と、固定側金型50の入れ子52に設けられキャビティ20の長手方向他端側(図4における右端側)において第2面22の温度を調整する第2面回路154と、を備えている。
【0037】
可動側金型用回路130は、図4及び図5(A)に示すように、可動側金型30の枠入れ子34に設けられキャビティ20の長手方向一端側(図4における左端側)において各第1面21の温度を調整する第1面回路131・133と、可動側金型30の可動入れ子32に設けられキャビティ20の長手方向一端側(図4における左端側)において第2面22の温度を調整する第2面回路132と、を備えている。
【0038】
また、可動側金型用回路130は、図4及び図5(C)に示すように、可動側金型30の枠入れ子34に設けられキャビティ20の長手方向他端側(図4における右端側)において各第1面21の温度を調整する第1面回路135・137と、可動側金型30の可動入れ子32に設けられキャビティ20の長手方向他端側(図4における右端側)において第2面22の温度を調整する第2面回路134と、を備えている。
【0039】
さらに、射出成形装置10は、固定側金型50及び可動側金型30に設けられ、第2面22の寸法Bが第1面21の寸法Aより小さい範囲の温度を調整する第2温調回路200を備えている。すなわち、第2温調回路200は、キャビティ20において直交断面D2よりも長手方向中央側部分220(図2参照)の温度を調整する回路である。
【0040】
具体的には、第2温調回路200は、固定側金型50に設けられた固定側金型用回路250と、可動側金型30に設けられた可動側金型用回路230と、を備えて構成されている。
【0041】
固定側金型用回路250は、図4及び図5(B)に示すように、固定側金型50の枠入れ子54に設けられキャビティ20の長手方向中央側部分220において各第1面21の温度を調整する第1面回路251・253を備えて構成されている。
【0042】
可動側金型用回路230は、可動側金型30の枠入れ子34に設けられキャビティ20の長手方向中央部において各第1面21の温度を調整する第1面回路231・233を備えて構成されている。
【0043】
第1温調回路100の固定側金型用回路150においてキャビティ20の一方側(図4における奥側、図5(A)(C)において左側)の第1面21の温度調整する第1面回路151・155と、第2温調回路200の固定側金型用回路250においてキャビティ20の一方側(図4における奥側、図5(B)において左側)の第1面21の温度調整する第1面回路251とは、図6に示すように、第1面21の近傍を通過するように固定側金型50の枠入れ子54に形成された流路80に、油82を流すことで構成されている。なお、流路80は、キャビティ20の長手方向に貫通する1本の貫通孔84を形成すると共に、その貫通孔84を封止部材86で封止して3つに区画し、区画された各領域に貫通孔84に対して直交する方向へ形成され貫通孔84に接続される2つの接続孔88を形成することにより構成されている。キャビティ20の第1面21近傍には、キャビティ20において直交断面D2よりも長手方向外側部分110(図2参照)のそれぞれの温度を検知する温度センサ89と、キャビティ20において直交断面D2よりも長手方向中央側部分220(図2参照)の温度を検知する温度センサ87が設けられている。
【0044】
第1温調回路100の固定側金型用回路150においてキャビティ20の他方側(図4における手前側、図5(A)(C)において右側)の第1面21の温度調整する第1面回路153・157と、第2温調回路200の固定側金型用回路250においてキャビティ20の他方側(図4における手前側、図5(B)において右側)の第1面21の温度調整する第1面回路253とは、図示はしないが、キャビティ20の一方側(図4における奥側)の第1面回路151・155、第1面回路251と同様に形成されている。
【0045】
第1温調回路100の可動側金型用回路130においてキャビティ20の一方側(図4における奥側)の第1面21の温度調整する第1面回路131・135と、第2温調回路200の可動側金型用回路230においてキャビティ20の一方側(図4における奥側)の第1面21の温度調整する第1面回路231とは、図6に示すように、第1面21の近傍を通過するように可動側金型30の枠入れ子34に形成された流路90に、油92を流すことで構成されている。なお、流路90は、キャビティ20の長手方向に貫通する1本の貫通孔94を形成すると共に、その貫通孔94を封止部材96で封止して3つに区画し、区画された各領域に貫通孔94に対して直交する方向へ形成され貫通孔94に接続される2つの接続孔98を形成することにより構成されている。キャビティ20の第1面21近傍には、キャビティ20において直交断面D2よりも長手方向外側部分のそれぞれの温度を検知する温度センサ99と、キャビティ20において直交断面D2よりも長手方向中央側部分の温度を検知する温度センサ97が設けられている。
【0046】
第1温調回路100の可動側金型用回路130においてキャビティ20の他方側(図4における手前側)の第1面21の温度調整する第1面回路133・137と、第2温調回路200の可動側金型用回路230においてキャビティ20の他方側(図4における手前側)の第1面21の温度調整する第1面回路233とは、図示はしないが、キャビティ20の一方側(図4における奥側)の第1面回路131・135、第1面回路231と同様に形成されている。
【0047】
第1温調回路100の第2面回路152・154は、図7に示すように、固定側金型50の入れ子52に形成された流路180に油182を流すことで構成されている。なお、流路180は、入れ子52の側壁のそれぞれからキャビティ20の長手方向沿って形成された形成孔184を形成すると共に、その形成孔184を側壁部分で封止部材186により封止し、各形成孔184に対して直交する方向へ形成され形成孔184に2つの接続孔188を接続することにより構成されている。キャビティ20の第2面22近傍には、キャビティ20の第2面22において直交断面D2よりも長手方向外側部分110(図2参照)のそれぞれの温度を検知する温度センサ189と、キャビティ20の第2面22において直交断面D2よりも長手方向中央側部分220(図2参照)の温度を検知する温度センサ187が設けられている。
【0048】
第1温調回路100の第2面回路132・134は、図7に示すように、可動側金型30の可動入れ子32に形成された流路190に油192を流すことで構成されている。なお、流路190は、可動入れ子32の側壁のそれぞれからキャビティ20の長手方向沿って形成された形成孔194を形成すると共に、その形成孔194を側壁部分で封止部材196により封止し、各形成孔194に対して直交する方向へ形成され形成孔194に2つの接続孔198を接続することにより構成されている。キャビティ20の第2面22近傍には、キャビティ20の第2面22において直交断面D2よりも長手方向外側部分110(図2参照)のそれぞれの温度を検知する温度センサ199と、キャビティ20の第2面22において直交断面D2よりも長手方向中央側部分220(図2参照)の温度を検知する温度センサ197が設けられている。
【0049】
第1温調回路100では、第2面回路152・154・132・134により温度調整される一対の第2面22の温度よりも、第1面回路151・153・155・157・131・133・135・137により温度調整される一対の第1面21の温度が高くなるように温度調整を行う。このとき、温度センサの検知温度がフィードバックされ、予め定められた設定温度に温度調整がなされる。このように、第1温調回路100において、キャビティ20に充填される溶融樹脂を冷却するための冷却温度が管理される。具体的には、溶融樹脂の温度が、例えば250〜340℃とされ、第1温調回路100における温度調整は、一対の第2面22の温度が、例えば130℃とされ、一対の第1面21の温度が、例えば140℃とされる。なお、第2面22及び第1面21の温度は、これらの温度に限られるものではない。
【0050】
第2温調回路200では、第1温調回路100の第1面回路151・153・155・157・131・133・135・137により温度調整される一対の第1面21の温度よりも、第1面回路251・253・231・233により温度調整される一対の第1面の温度が低くなるように温度調整を行う。このとき、温度センサの検知温度がフィードバックされ、予め定められた設定温度に温度調整がなされる。このように、第2温調回路200において、キャビティ20に充填される溶融樹脂を冷却するための冷却温度が管理される。具体的には、第2温調回路200における温度調整は、一対の第1面21の温度が、例えば130℃とされる。なお、第2温調回路200における一対の第1面21の調整温度と、第1温調回路100における一対の第2面22の調整温度とは、異なっていてもよい。
【0051】
したがって、各回路の調整温度の関係は、第1面回路151・153・155・157・131・133・135・137>第2面回路152・154・132・134で、かつ第1面回路151・153・155・157・131・133・135・137>第1面回路251・253・231・233とされていればよい。
【0052】
(射出成形装置10における断熱構造)
図8及び図9は、断熱構造を示す斜視図である。なお、図8には、入れ子52及び可動入れ子32の一部が示されている。
【0053】
本実施形態では、図8に示すように、固定側金型50の入れ子52の4つ側壁52Bには、断熱構造を構成する複数の断熱溝58が形成されている。断熱溝58は、溝内の空気層により、入れ子52に対する熱の出入りを抑制するものである。
【0054】
可動側金型30の可動入れ子32の4つ側壁32Bには、断熱構造を構成する複数の断熱溝38が形成されている。断熱溝38は、溝内の空気層により、可動入れ子32に対する熱の出入りを抑制するものである。
【0055】
第2面回路152・154は、入れ子52に設けられており、図9に示す断熱溝58に囲まれた空間58S内に存在している。これにより、枠入れ子54に設けられる第1面回路151・153・155・157は、図9に示す断熱溝58に囲まれた空間58S外に存在し、第2面回路152・154との間で断熱されるようになっている(図5(A)(C)参照)。
【0056】
第2面回路132・134は、可動入れ子32に設けられており、図9に示す断熱溝38に囲まれた空間38S内に存在している。これにより、枠入れ子34に設けられる第1面回路131・133・135・137は、図9に示す断熱溝38に囲まれた空間38S外に存在し、第2面回路132・134との間で断熱されるようになっている(図5(A)(C)参照)。
【0057】
第2面回路152・154と第1面回路151・153・155・157との間、第2面回路132・134と第1面回路131・133・135・137との間を断熱する断熱構造としては、断熱溝38・58に限られず、例えば、発泡材などで構成された断熱材を用いてもよく、他の断熱構造を用いてもよい。
【0058】
(射出成形装置10を用いたfθレンズ300の製造方法)
次に、射出成形装置10を用いたfθレンズ300の製造方法を説明する。
【0059】
本製造方法では、まず、図1に示したように、射出成形装置10を準備し、可動側金型30を固定側金型50へ移動させて型締めする(型締め工程)。これにより、溶融樹脂が充填される空間としてのキャビティ20が形成される。
【0060】
次に、第1温調回路100及び第2温調回路200により、キャビティ20の温度を調整する(温度調整工程)。具体的には、第1温調回路100によって、一対の第1面21の寸法A<一対の第2面22の寸法Bとなる部分(直交断面D2よりも長手方向外側部分)110(図2参照)において、一対の第2面22の温度よりも、一対の第1面21の温度が高くされる。第2温調回路200によって、一対の第1面21の寸法A>一対の第2面22の寸法Bとなる部分(直交断面D2よりも長手方向中央側部分)220(図2参照)において、一対の第1面21の寸法A<一対の第2面22の寸法Bとなる部分110における一対の第1面21の温度よりも、一対の第1面21の温度が低くされる。
【0061】
次に、射出成形装置10の樹脂注入ノズル12から溶融した溶融樹脂が、固定側金型50に設けられたスプルーブッシュ13へ注入される。スプルーブッシュ13へ注入された溶融樹脂は、スプルー14、ランナー15およびゲート16を介して、キャビティ20に射出され、キャビティ20が溶融樹脂で満たされる(射出工程)。
【0062】
次に、可動側金型30の可動入れ子32を固定側金型50側へ加圧して、キャビティ20内に充填された樹脂を圧縮する(圧縮工程)。なお、この圧縮工程は、行わなくてもよい。
【0063】
次に、キャビティ20中の溶融樹脂を冷却固化する(固化工程)。溶融樹脂を冷却固化させることで、fθレンズ300の出射面304を成形するための転写面としての形成面52A、及びfθレンズ300の入射面302を成形するための転写面としての形成面32Aが、樹脂に転写される。
【0064】
そして、可動側金型30を固定側金型50に対して型開きし、fθレンズ300が製造される(型開き工程)。
【0065】
ここで、図11には、キャビティ20の第1面21及び第2面22の温度を均一とした場合に成形されたfθレンズ300における直交断面D1、D3(図2参照)を示したものである。
【0066】
図11(A)に示すように、一対の第1面21の寸法A>一対の第2面22の寸法Bとなる部分220(図2参照)では、入射面302・出射面304の冷却固化が、第1面21に対応する面321よりも先に進むので、入射面302・出射面304のスキン層が、面321よりも先に形成される。これにより、冷却固化の際に生じる成形品の収縮によって、精度が不要な面321でヒケが発生する。
【0067】
一方、図11(B)に示すように、一対の第1面21の寸法A<一対の第2面22の寸法Bとなる部分110(図2参照)では、第1面21に対応する面321の冷却固化が、入射面302・出射面304よりも先に進むので、面321のスキン層が、入射面302・出射面304よりも先に形成される。これにより、冷却固化の際に生じる成形品の収縮によって、精度が必要な入射面302・出射面304でヒケが発生する。
【0068】
また、一対の第1面21の寸法A>一対の第2面22の寸法Bとなる部分220(図2参照)における第1面21は、一対の第1面21の寸法A<一対の第2面22の寸法Bとなる部分110における第1面21よりも長く、冷却速度の差が生じ、成形されたfθレンズ300に内部応力が発生する。
【0069】
これに対して、本実施形態では、第1温調回路100によって、一対の第1面21の寸法A<一対の第2面22の寸法Bとなる部分(直交断面D2よりも長手方向外側部分)110(図2参照)において、一対の第2面22の温度よりも、一対の第1面21の温度が高くされる。これにより、図11(B)に示す場合に比べに、面321の固化速度に対する入射面302・出射面304の固化速度が速くなる。これにより、冷却固化の際に生じる成形品の収縮によって、精度が必要な入射面302・出射面304で発生するヒケが抑制される。
【0070】
また、本実施形態では、第2温調回路200によって、一対の第1面21の寸法A>一対の第2面22の寸法Bとなる部分(直交断面D2よりも長手方向中央側部分)220(図2参照)において、一対の第1面21の寸法A<一対の第2面22の寸法Bとなる部分110における一対の第1面21の温度よりも、一対の第1面21の温度が低くされる。
【0071】
一対の第1面21の寸法A>一対の第2面22の寸法Bとなる部分(直交断面D2よりも長手方向中央側部分)220(図2参照)における第1面21に対応する面321と、一対の第1面21の寸法A<一対の第2面22の寸法Bとなる部分110における第1面21に対応する面321と、の間で、冷却速度の差が小さくなるので、成形されたfθレンズ300に発生する内部応力が低減される。
【0072】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。図12は、第2実施形態に係る射出成形装置の構成を示す斜視図である。なお、第1実施形態と同一の機能を有する部分については、同一符号を付して、適宜、説明を省略する。
【0073】
第2実施形態に係るキャビティ20は、図12に示すように、キャビティ20の長手方向(図12における矢印X方向)中央部と、その中央部の長手方向外側と、さらにその長手方向外側とで、その長手方向(図12における矢印X方向)に直交する直交断面をD3、D2、D1ととると、型開き方向(図12における矢印Y方向)に沿った互いに対向する一対の第1面21の寸法Aと、型開き方向と直角方向(図12における矢印X方向)に沿った互いに対向する一対の第2面22の寸法Bとの関係は、以下の通りとなる。すなわち、直交断面D3では、図13(A)に示すように、寸法A<寸法Bとなり、直交断面D2では、図13(B)に示すように、寸法A=寸法Bとなり、直交断面D1では、図13(C)に示すように、寸法A>寸法Bとなる。
【0074】
つまり、キャビティ20は、直交断面において一対の第1面21の寸法Aと、一対の第2面22の寸法Bとの比が1となる部分(上記の直交断面D2)が、長手方向中間部に生じるように該寸法Aと該寸法Bとの比が連続的に変化する部分を含んでいる。
【0075】
本実施形態では、キャビティ20の第2面22が、成形される長尺成形品において、他の面(第1面21)よりも精度の要求される面(光学面など)となる。
【0076】
第2実施形態に係る射出成形装置10Bは、図12に示すように、固定側金型50及び可動側金型30に設けられ、第2面22の寸法Bが第1面21の寸法Aより大きい範囲の温度を調整する第1温調回路100を備えている。すなわち、第1温調回路100は、キャビティ20において直交断面D2よりも長手方向中央部分の温度を調整する回路である。
【0077】
具体的には、第1温調回路100は、固定側金型50に設けられた固定側金型用回路150と、可動側金型30に設けられた可動側金型用回路130と、を備えて構成されている。
【0078】
固定側金型用回路150は、第1実施形態における第1面回路251、253と、固定側金型50の入れ子52に設けられキャビティ20の長手方向中央部において第2面22の温度を調整する第2面回路256と、を備えている。
【0079】
可動側金型用回路130は、第1実施形態における第1面回路231、233と、可動側金型30の可動入れ子32に設けられキャビティ20の長手方向中央部において第2面22の温度を調整する第2面回路236と、を備えている。
【0080】
第2面回路256及び第2面回路236は、それぞれ、第1実施形態における第2面回路154及び第2面回路134と同様に構成されている。
【0081】
さらに、射出成形装置10Bは、固定側金型50及び可動側金型30に設けられ、第2面22の寸法Bが第1面21の寸法Aより小さい範囲の温度を調整する第2温調回路200を備えている。すなわち、第2温調回路200は、キャビティ20において直交断面D2よりも長手方向外側部分の温度を調整する回路である。
【0082】
具体的には、第2温調回路200は、固定側金型50に設けられた固定側金型用回路250と、可動側金型30に設けられた可動側金型用回路230と、を備えて構成されている。
【0083】
固定側金型用回路250は、第1実施形態における第1面回路151・153・155・157を備えている。可動側金型用回路230は、第1実施形態における第1面回路131・133・135・137を備えている。
【0084】
第1温調回路100では、第2面回路236・256により温度調整される一対の第2面22の温度よりも、第1面回路251・253・233・235により温度調整される一対の第1面21の温度が高くなるように温度調整を行う。このように、第1温調回路100において、キャビティ20に充填される溶融樹脂を冷却するための冷却温度が管理される。具体的には、溶融樹脂の温度が、例えば250〜340℃とされ、第1温調回路100における温度調整は、一対の第2面22の温度が、例えば130℃とされ、一対の第1面21の温度が、例えば140℃とされる。なお、第2面22及び第1面21の温度は、これらの温度に限られるものではない。
【0085】
第2温調回路200では、第1面回路251・253・233・235により温度調整される一対の第1面21の温度よりも、第1面回路151・153・155・157・131・133・135・137により温度調整される一対の第1面の温度が低くなるように温度調整を行う。このように、第2温調回路200において、キャビティ20に充填される溶融樹脂を冷却するための冷却温度が管理される。具体的には、第2温調回路200における温度調整は、一対の第1面21の温度が、例えば130℃とされる。なお、第2温調回路200における一対の第1面21の調整温度と、第1温調回路100における一対の第2面22の調整温度とは、異なっていてもよい。
【0086】
したがって、各回路の調整温度の関係は、第1面回路251・253・233・235>第2面回路236・256で、かつ第1面回路251・253・233・235>第1面回路151・153・155・157・131・133・135・137とされていればよい。
【0087】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1温調回路100における第2面回路236・256と第1面回路251・253・233・235との間に断熱構造を有する構成とされる。
【0088】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、型締め工程、温度調整工程、射出工程、圧縮工程、型開き工程がなされる。なお、この圧縮工程は、行わなくてもよい。
【0089】
第2実施形態における温度調整工程では、第1温調回路100によって、一対の第1面21の寸法A<一対の第2面22の寸法Bとなる部分(直交断面D2よりも中央側部分)において、一対の第2面22の温度よりも、一対の第1面21の温度が高くされる。
【0090】
これにより、第1面21と第2面22とで温度が同じ場合に比べ、精度が要求されない面(第1面に対応する面)の固化速度に対する精度が要求される面(第2面に対応する面)の固化速度が速くなる。これにより、冷却固化の際に生じる成形品の収縮によって、精度が必要な面で発生するヒケが抑制される。
【0091】
また、第2実施形態における温度調整工程では、第2温調回路200によって、一対の第1面21の寸法A>一対の第2面22の寸法Bとなる部分(直交断面D2よりも長手方向外側部分)において、一対の第1面21の寸法A<一対の第2面22の寸法Bとなる部分における一対の第1面21の温度よりも、一対の第1面21の温度が低くされる。
【0092】
一対の第1面21の寸法A>一対の第2面22の寸法Bとなる部分における第1面21に対応する面と、一対の第1面21の寸法A<一対の第2面22の寸法Bとなる部分110における第1面21に対応する面と、の間で、冷却速度の差が小さくなるので、成形された長尺成形品に発生する内部応力が低減される。
【0093】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。図14は、第3実施形態に係る射出成形装置の構成を示す斜視図である。なお、第1実施形態と同一の機能を有する部分については、同一符号を付して、適宜、説明を省略する。
【0094】
第3実施形態に係るキャビティ20は、図15に示すように、キャビティ20の長手方向(図14における矢印X方向)中央部と、その中央部の長手方向外側と、さらにその長手方向外側とで、その長手方向(図14における矢印X方向)に直交する直交断面をD3、D2、D1ととると、型開き方向(図14における矢印Y方向)に沿った互いに対向する一対の第1面21の寸法Aと、型開き方向と直角方向(図14における矢印X方向)に沿った互いに対向する一対の第2面22の寸法Bとの関係は、以下の通りとなる。すなわち、直交断面D3では、図15(A)に示すように、寸法A<寸法Bとなり、直交断面D2では、図15(B)に示すように、寸法A=寸法Bとなり、直交断面D1では、図15(C)に示すように、寸法A>寸法Bとなる。
【0095】
つまり、キャビティ20は、直交断面において一対の第1面21の寸法Aと、一対の第2面22の寸法Bとの比が1となる部分(上記の直交断面D2)が、長手方向中間部に生じるように該寸法Aと該寸法Bとの比が連続的に変化する部分を含んでいる。
【0096】
本実施形態では、キャビティ20の第1面21が、成形される長尺成形品において、他の面(第2面22)よりも精度の要求される面(光学面など)となる。
【0097】
第3実施形態に係る射出成形装置10Cは、図16に示すように、固定側金型50及び可動側金型30をまたぐように設けられ、パーティングライン面18に沿ってキャビティ20の第1面21を加圧して、キャビティ20内に充填された樹脂を圧縮する可能な可動入れ子333を備えている。なお、第3実施形態では、固定側金型50及び可動側金型30は、それぞれ、可動入れ子32及び入れ子52を有している必要は無く、入れ子構造となっていなくてもよい。
【0098】
第3実施形態に係る射出成形装置10Cは、図14に示すように、固定側金型50及び可動側金型30に設けられ、第2面22の寸法Bが第1面21の寸法Aより小さい範囲の温度を調整する第1温調回路100を備えている。すなわち、第1温調回路100は、キャビティ20において直交断面D2よりも長手方向外側部分の温度を調整する回路である。
【0099】
具体的には、第1温調回路100は、固定側金型50に設けられた固定側金型用回路150と、可動側金型30に設けられた可動側金型用回路130と、を備えて構成されている。
【0100】
固定側金型用回路150は、第1実施形態における第1面回路151・153・155・157と、第1実施形態における第2面回路152・154を備えている。可動側金型用回路130は、第1実施形態における第1面回路131・133・135・137と、第1実施形態における第2面回路132・134を備えている。
【0101】
さらに、射出成形装置10Cは、固定側金型50及び可動側金型30に設けられ、第2面22の寸法Bが第1面21の寸法Aより大きい範囲の温度を調整する第2温調回路200を備えている。すなわち、第2温調回路200は、キャビティ20において直交断面D2よりも長手方向中央部分の温度を調整する回路である。
【0102】
具体的には、第2温調回路200は、固定側金型50に設けられた固定側金型用回路250と、可動側金型30に設けられた可動側金型用回路230と、を備えて構成されている。
【0103】
固定側金型用回路250は、第2実施形態における第2面回路256を備えて構成されている。可動側金型用回路230は、第2実施形態における第2面回路236を備えて構成されている。
【0104】
第1温調回路100では、第1面回路151・153・155・157・131・133・135・137により温度調整される一対の第1面21の温度よりも、第2面回路152・154・132・134により温度調整される一対の第2面22の温度が高くなるように温度調整を行う。このように、第1温調回路100において、キャビティ20に充填される溶融樹脂を冷却するための冷却温度が管理される。具体的には、溶融樹脂の温度が、例えば250〜340℃とされ、第1温調回路100における温度調整は、一対の第2面22の温度が、例えば140℃とされ、一対の第1面21の温度が、例えば130℃とされる。なお、第2面22及び第1面21の温度は、これらの温度に限られるものではない。
【0105】
第2温調回路200では、第2面回路152・154・132・134により温度調整される一対の第2面22の温度よりも、第2面回路256・236により温度調整される一対の第2面の温度が低くなるように温度調整を行う。このように、第2温調回路200において、キャビティ20に充填される溶融樹脂を冷却するための冷却温度が管理される。具体的には、第2温調回路200における温度調整は、一対の第2面22の温度が、例えば130℃とされる。なお、第2温調回路200における一対の第2面22の調整温度と、第1温調回路100における一対の第1面21の調整温度とは、異なっていてもよい。
【0106】
したがって、各回路の調整温度の関係は、第2面回路152・154・132・134>第1面回路151・153・155・157・131・133・135・137で、かつ第2面回路152・154・132・134>第2面回路256・236とされていればよい。
【0107】
第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1温調回路100における第2面回路236・256と第1面回路251・253・233・235との間に断熱構造を有する構成とされる。
【0108】
第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、型締め工程、温度調整工程、射出工程、圧縮工程、型開き工程がなされる。なお、この圧縮工程は、行わなくてもよい。
【0109】
第3実施形態における温度調整工程では、第1温調回路100によって、一対の第1面21の寸法A>一対の第2面22の寸法Bとなる部分(直交断面D2よりも長手方向外側部分)において、一対の第1面21の温度よりも、一対の第2面22の温度が高くされる。
【0110】
これにより、第1面21と第2面22とで温度が同じ場合に比べ、精度が要求されない面(第2面に対応する面)の固化速度に対する精度が要求される面(第1面に対応する面)の固化速度が速くなる。これにより、冷却固化の際に生じる成形品の収縮によって、精度が必要な面で発生するヒケが抑制される。
【0111】
また、第3実施形態における温度調整工程では、第2温調回路200によって、一対の第1面21の寸法A<一対の第2面22の寸法Bとなる部分(直交断面D2よりも長手方向中央側部分)において、一対の第1面21の寸法A>一対の第2面22の寸法Bとなる部分における一対の第2面22の温度よりも、一対の第2面22の温度が低くされる。
【0112】
一対の第1面21の寸法A<一対の第2面22の寸法Bとなる部分における第2面22に対応する面と、一対の第1面21の寸法A>一対の第2面22の寸法Bとなる部分110における第2面22に対応する面と、の間で、冷却速度の差が小さくなるので、成形された長尺成形品に発生する内部応力が低減される。
【0113】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成しても良い。
【符号の説明】
【0114】
10 射出成形装置
10B 射出成形装置
10C 射出成形装置
20 キャビティ
21 第1面
22 第2面
30 可動側金型(第2金型の一例)
32 可動入れ子
38 断熱溝(断熱構造の一例)
50 固定側金型(第1金型の一例)
58 断熱溝(断熱構造の一例)
100 第1温調回路
131・133・135・137 第1面回路
132・134 第2面回路
151・153・155・157 第1面回路
152・154 第2面回路
200 第2温調回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型と、
前記第1金型に対して相対的に移動する第2金型と、
前記第1金型と前記第2金型とを型締めすることで長尺に形成され、該長手方向に直交する断面において型開き方向に沿った互いに対向する一対の第1面の寸法Aと、型開き方向と直角方向に沿った互いに対向する一対の第2面の寸法Bとの比が1となる部分が長手方向中間部に生じるように該寸法Aと該寸法Bとの比が連続的に変化する部分を含むキャビティと、
前記第1金型及び前記第2金型に設けられ、前記第2面の寸法Bが前記第1面の寸法Aより大きい範囲の温度を、前記一対の第2面の温度よりも前記一対の第1面の温度が高くなるように調整する第1温調回路と、
前記第1金型及び前記第2金型に設けられ、前記第2面の寸法Bが前記第1面の寸法Aより小さい範囲の温度を、前記第1温調回路により温度調整される前記一対の第1面の温度よりも当該範囲の前記一対の第1面の温度が低くなるように調整する第2温調回路と、
を備える射出成形装置。
【請求項2】
前記第1金型または前記第2金型の前記第2面が可動入れ子により構成される請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項3】
第1金型と、
前記第1金型に対して相対的に移動する第2金型と、
前記第1金型と前記第2金型とを型締めすることで長尺に形成され、該長手方向に直交する断面において型開き方向に沿った互いに対向する一対の第1面の寸法Aと、型開き方向と直角方向に沿った互いに対向する一対の第2面の寸法Bとの比が1となる部分が長手方向中間部に生じるように該寸法Aと該寸法Bとの比が連続的に変化する部分を含むキャビティと、
前記第1金型及び前記第2金型に設けられ、前記第2面の寸法Bが前記第1面の寸法Aより小さい範囲の温度を、前記一対の第1面の温度よりも前記一対の第2面の温度が高くなるように調整する第1温調回路と、
前記第1金型及び前記第2金型に設けられ、前記第2面の寸法Bが前記第1面の寸法Aより大きい範囲の温度を、前記第1温調回路により温度調整される前記一対の第2面の温度よりも当該範囲の前記一対の第2面の温度が低くなるように調整する第2温調回路と、
を備える射出成形装置。
【請求項4】
前記一対の第1面の一方が可動入れ子により構成される請求項3に記載の射出成形装置。
【請求項5】
前記第1温調回路は、前記一対の第1面の温度を調整する第1面回路と、前記一対の第2面の温度を調整する第2面回路と、
を有し、
前記第1面回路と前記第2面回路との間で断熱構造を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の射出成形装置。
【請求項6】
請求項1又は3に記載の射出成形装置の前記第1温調回路及び前記第2温調回路により、前記キャビティの温度を調整する温度調整工程と、
前記キャビティに溶融樹脂を射出して、前記キャビティを溶融樹脂で満たす射出工程と、
前記キャビティ中の前記溶融樹脂を冷却固化する固化工程と、
前記第2の金型を型開きする型開き工程と、
を備える長尺成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項2又は4に記載の射出成形装置の前記第1温調回路及び前記第2温調回路により、前記キャビティの温度を調整する温度調整工程と、
前記キャビティに溶融樹脂を射出して、前記キャビティを溶融樹脂で満たす射出工程と、
前記キャビティ内の溶融樹脂を前記可動入れ子により圧縮する圧縮工程と、
前記キャビティ中の前記溶融樹脂を冷却固化する固化工程と、
前記第2の金型を型開きする型開き工程と、
を備える長尺成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−201029(P2012−201029A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68747(P2011−68747)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【特許番号】特許第4793514号(P4793514)
【特許公報発行日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】