説明

導通ヒンジ

【課題】折畳式携帯電話機の上下筐体を、簡単な構成の導通ヒンジで確実に電気的に接続する。
【解決手段】導電性の接触子2は上側筐体に同期して動き、腕部が導電性の上側筐体に当接して電気的に接続されるとともに、シャフト1に摺動して電気的に接続される。導電性のシャフト1は下側筐体に同期して動き、シャフト1の先端が下側筐体の導体舌片に当接して、下側筐体に電気的に接続される。スプリング3の一端がケース4を押し、他端が、上側筐体に同期して動く可動カム5を押す。スプリング3に押された可動カム5が、ホルダ7を介して下側筐体に固定された固定カム6に噛み合うことで、上下筐体を特定の開き角度で保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導通ヒンジに関し、特に、折畳式携帯電話機用の部品点数の少ない導通ヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の折り畳式携帯電話では、ヒンジ部分の中央部に設けられているフレキシブルケーブルまたは同軸ケーブル等によって、上筐体と下筐体を電気的に接続している。また、導通ヒンジにより上筐体と下筐体を電気的に接続するものもある。例えば、片方の軸に導通ヒンジを使い、他方の軸にトルクヒンジを使い、中央部にケーブルを通す。このようにして、フレキシブルケーブルや同軸ケーブル等の数を減らすことができ、スペースを有効に使用できる。以下に、従来の導通ヒンジの例をいくつかあげる。
【0003】
特許文献1に開示された「ヒンジ装置」は、ヒンジ装置を構成する部品自体に導電性を持たせたヒンジ装置である。図5(a)に示すように、第一取付部と第二取付部の双方または一方を、軸部材に対して相対回動可能に設ける。第一取付部に第一導電部を付設する。第一導電部は、第一筐体の電気的接続部に接触する。第二取付部に第二導電部を付設する。第二導電部は、第二筐体の電気的接続部に接触する。第二導電部と第一導電部は、軸部材を介して電気的に接続する。第一筐体を第一取付部に取り付け、第二筐体を第二取付部に取り付けると、第一筐体の電気的接続部と第二筐体の電気的接続部とが、第一導電部と軸部材と第二導電部を介して電気的に接続される。
【0004】
特許文献2に開示された「折り畳み機器におけるヒンジ装置」は、本体部材側とカバー部材側との電気導通が確実なヒンジである。図5(b)に示すように、バネ性金属製の第1ディスクの外周縁部に、第1ヒンジ筒の外端側に向かって開く摺動片を設け、第1ヒンジ筒内に嵌め込む。第1ヒンジ筒の内壁面の軸方向に沿う凹溝に、摺動片をスライド自在に嵌める。第1ディスクは、コイルバネにより、第2ヒンジ筒内の第2ディスクに圧接される。
【0005】
特許文献3に開示された「導通ヒンジ装置」は、携帯電話機などの上筐体と下筐体を電気的に接続できる信頼性の高い導通ヒンジ装置である。図5(c)に示すように、上筐体側接触子をホルダに挿入して固定する。下筐体側接触子をケースに挿入して固定する。ホルダとケースを組み合せ、ヒンジの回転の中心軸となるシャフトを貫通させる。上筐体側接触子は、下筐体側接触子に電気的に接触して導通状態になる。導通ヒンジ装置を筐体のヒンジ部に挿入して、ホルダを上筐体に固定し、ケースを下筐体に固定する。上筐体側接触子は上筐体のアンテナに接続され、下筐体側接触子は下筐体の送受信部に接続される。
【特許文献1】特開2003-184858号公報
【特許文献2】特開2003-065319号公報
【特許文献3】特開2006-071049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の導通ヒンジには次のような問題がある。導通経路が3部品構成となっているものでは、ヒンジ装置の構成が複雑で製造の手間もかかり、接点数が多くて信頼性が高くない。2部品構成となっているものでも、構成が複雑であり、コストがかかる。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、簡単な構成で確実に上下筐体の電気的接続ができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明では、導通ヒンジを、第1筐体に同期して動き第1筐体に電気的に接続される導電性のシャフトと、第2筐体に同期して動き第2筐体に電気的に接続されシャフトに摺動して電気的に接続される導電性の接触子と、第2筐体に固定される絶縁性のケースと、ケースを一端で押すスプリングと、第1筐体に固定されるホルダと、ホルダに固定される固定カムと、スプリングに押されて固定カムに当接する可動カムと、シャフトからホルダが抜けないように止める抜止手段とを具備する構成とした。
【0009】
また、第1筐体に同期して動き第1筐体と第2筐体に電気的に接続される導電性のシャフトと、第2筐体に固定される絶縁性のケースと、一端でケースを押すスプリングと、第1筐体に固定されるホルダと、ホルダに固定される固定カムと、スプリングに押されて固定カムに当接する可動カムと、シャフトからホルダが抜けないように止める抜止手段とを具備する構成とした。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成したことにより、折畳式携帯電話機の上下筐体のアースなどを、簡単な構成で確実に電気的に接続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図5を参照しながら詳細に説明する。以下、アース接続の場合について説明するが、その他の電気的接続でも同様である。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1は、上筐体に接して電気的に接続される接触子が導電性のシャフトに摺動し、シャフトの先端部が下筐体の導体舌片に接して、上筐体のアースと下筐体のアースを接続する導通ヒンジである。
【0013】
図1は、本発明の実施例1における導通ヒンジの分解斜視図である。図1(a)は、ホルダ側から見た分解斜視図である。図1(b)は、シャフト頭部側から見た分解斜視図である。図1において、シャフト1は、導電性のヒンジ軸である。接触子2は、上筐体とシャフトを電気的に接続する導体である。スプリング3は、可動カムを固定カムに押し付けるためのコイルバネである。ケース4は、可動カムを上筐体に同期して回転させるための部材である。可動カム5は、固定カムと係合する凸部を有するカムである。固定カム6は、可動カムと係合するための凹部を有するカムである。ホルダ7は、固定カムとシャフトを下筐体に同期させるために、下筐体に固定される部材である。ストッパ8は、シャフトからホルダが抜けないようにするU字状の部材である。加締めなどの方法で止めてもよい。
【0014】
図2は、導通ヒンジの全体外観斜視図である。図3は、導通ヒンジの断面図に導通経路を示した図である。図3において、導体舌片9は、下側筐体(第1筐体)に設けられた接続用導体である。下側筐体(第1筐体)10は、折畳式携帯電話機の操作部がある筐体である。上側筐体(第2筐体)11は、折畳式携帯電話機の表示部がある筐体である。スプリングなどは図示を省略してある。図4は、可動カムの概念図である。図4(a)は、可動カムの斜視図である。図4(b)は、可動カムの断面図である。図4(c)は、固定カムと可動カムが係合した状態の断面図である。図4(d)は、オフセットを付けた可動カムの断面図である。図4(e)は、固定カムとオフセットを付けた可動カムが係合した状態の断面図である。
【0015】
上記のように構成された本発明の実施例1における導通ヒンジの機能と動作を説明する。最初に、図1と図2を参照しながら、導通ヒンジの機能の概要を説明する。第1筐体を下側筐体とし、第2筐体を上側筐体として説明するが、第1筐体を上側筐体とし、第2筐体を下側筐体としても、同様に機能する。トルクヒンジと導通ヒンジを一体化して、片軸分のスペースをあける。中央部を通していたケーブルを片軸側へ移動し、中央部のスペースをあける。すなわち、片方の軸に導通トルクヒンジを使い、他方の軸の部分にケーブルを通す。中央部は空スペースとなるので、ここにスピーカや内蔵アンテナ等の部品を配置できる。
【0016】
導電性のシャフト1は、第1の筐体である下側筐体に同期して動き、シャフト1の先端が下側筐体の導体舌片に当接して、下側筐体に電気的に接続される。導電性の接触子2は、第2の筐体である上側筐体に同期して動き、接触子2の腕部が導電性の上側筐体に当接して電気的に接続されるとともに、シャフト1に摺動して電気的に接続される。スプリング3の一端がケース4を押し、スプリング3の他端が、上側筐体に同期して動く可動カム5を押す。スプリング3に押された可動カム5が、ホルダ7を介して下側筐体に固定された固定カム6に噛み合うことで、上下筐体を特定の開き角度で保持する。図1に示す各部品を組み立てると、図2に示すような外観の導通ヒンジとなる。
【0017】
次に、図1を参照しながら、シャフト1について説明する。シャフト1の先端が、下側筐体の導体舌片に当接して、下側筐体に電気的に接続される。シャフト1は、真鍮製である。シャフト1の頭部は、筐体の外側方向の部分であり、円盤状に広がっている。この円盤状の頭部の内側に、接触子2の摺動子が当たる。シャフト1の先端部の近くに、抜け止めのストッパ8が付けられている。シャフト1は、ホルダ7に対して回転しないようにホルダ7に取り付けられている。ホルダ7は下筐体に固定されている。したがって、シャフト1は、下筐体と同期して回転する。
【0018】
次に、図1と図2を参照しながら、接触子2について説明する。接触子2は、燐青銅板製である。接触子2の腕部が導電性の上側筐体に当接して、上側筐体に電気的に接続される。シャフト1の円盤状の頭部の内側に、接触子2の摺動子が当たる。摺動子は、筐体の開閉に従って円盤状の頭部に摺動して接触する。接触子2の摺動子の撓みによる弾力で確実にシャフト1と接触し導通される。
【0019】
次に、図1を参照しながら、固定カム6について説明する。固定カム6は、ホルダ7に固定されている。ホルダ7は下筐体に固定されている。したがって、固定カム7は、下筐体と同期して回転する。固定カム7には、凹部が形成されている。凹部に、可動カム5の突起部が嵌入することにより、上下筐体が適当な角度で止まる。
【0020】
次に、図3を参照しながら、導通ヒンジを筐体に取り付けた状態における導通経路を説明する。導通ヒンジが筐体の接続部の孔に挿入されると、ホルダ7が下側筐体10に固定され、ケース4が上側筐体11に固定される。接触子2の腕部が、導電性の上側筐体に当接して電気的に接続される。接触子2の摺動子が、シャフト1に摺動して電気的に接続される。シャフト1の先端が下側筐体10の導体舌片9に当接して、下側筐体10のアース回路に電気的に接続される。したがって、上側筐体11、接触子2、シャフト1、導体舌片9が電気的に接続されて、導通経路が形成される。
【0021】
次に、図4を参照しながら、可動カム5について説明する。可動カム5は、図4(a)に示すように、突起部が、固定カム6の凹部に嵌るようになっている。その断面は、図4(b)に示すようになっている。輪環部を、スプリングで押すことにより、図4(c)に示すように、固定カム6と係合する。突起部の先端面と輪環部の先端面が同一平面となるようになっている。これを変形して、図4(d)の断面図に示すように、可動カム5を構成する。固定カム6の内部に輪環部が納まる方向に、輪環部にオフセットを付ける。図4(e)に示すように、固定カム6の内部に可動カム5の輪環部の大部分が納まる。軸方向に少しずれた輪環部にスプリング3が当たることになるので、スプリング3の長さをオフセットの分だけ長くすることができる。
【0022】
可動カム5の突起部先端面と輸環部先端面を同一平面の形状にするか、輪環部にオフセットをつけた形状にすると、ヒンジを小型化でき、耐久性が向上し、低コスト化できる。すなわち、スプリング用のスペースが増えるため、スプリングの巻数を増やすことができ、耐久性が向上する。さらに、スプリングを研削しなくてもよいため、低コスト化できる。オフセットをつけた部分にスプリングを収納するため、ヒンジを小型化できる。
【0023】
上記のように、本発明の実施例1では、導通ヒンジを、上筐体に接して電気的に接続される接触子が導電性のシャフトに摺動し、シャフトの先端部が下筐体の導体舌片に接して、上筐体のアースと下筐体のアースを接続する構成としたので、折畳式携帯電話機の上下筐体のアースを、簡単な構成で確実に接続できる。
【実施例2】
【0024】
本発明の実施例2は、上筐体の導体摺動片が導電性のシャフト頭部に摺動して電気的に接続され、シャフトの先端部が下筐体の導体舌片に接して、上筐体のアースと下筐体のアースを接続する導通ヒンジである。
【0025】
図5は、本発明の実施例2における導通ヒンジの断面図である。図5において、シャフト1は、導電性のヒンジ軸である。ケース4は、可動カムを下筐体に同期して回転させるための部材である。可動カム5は、固定カムと係合する凸部を有するカムである。固定カム6は、可動カムと係合するための凹部を有するカムである。ホルダ7は、固定カムとシャフトを上筐体に同期させるために、上筐体に固定される部材である。導体舌片9は、下側筐体(第1筐体)に設けられた接続用導体である。下側筐体(第1筐体)10は、折畳式携帯電話機の操作部がある筐体である。上側筐体(第2筐体)11は、折畳式携帯電話機の表示部がある筐体である。導体摺動片12は、シャフトの頭部と摺動して上側筐体とシャフトを電気的に接続する部材である。スプリングなどは図示を省略してある。その他の基本的な構成は実施例1と同じである。
【0026】
上記のように構成された本発明の実施例2における導通ヒンジの機能と動作を説明する。図5に示すように、導通経路がシャフトの1部品のみであり、上側筐体11のアースは、シャフト1を経由して下側筐体10のアースと接続される。シャフト1の先端が、下側筐体10の導体舌片9に当接して、下側筐体10に電気的に接続される。シャフト1の頭部は、筐体の外側方向の部分であり、円盤状に広がっている。この円盤状の頭部の内側に、導体摺動片12が摺動するように当たり、電気的に接続される。シャフト1の先端が下側筐体10の導体舌片9に当接して、下側筐体10のアース回路に電気的に接続される。したがって、上側筐体11、導体摺動片12、シャフト1、導体舌片9が電気的に接続されて、導通経路が形成される。
【0027】
上記のように、本発明の実施例2では、導通ヒンジを、上筐体の導体摺動片が導電性のシャフト頭部に摺動して電気的に接続され、シャフトの先端部が下筐体の導体舌片に接して、上筐体のアースと下筐体のアースを接続する構成としたので、折畳式携帯電話機の上下筐体のアースを、簡単な構成で確実に接続できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の導通ヒンジは、折畳式携帯電話機の上下筐体の電気的な接続をするヒンジとして最適である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1における導通ヒンジの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例1における導通ヒンジの全体外観斜視図である。
【図3】本発明の実施例1における導通ヒンジの断面図である。
【図4】本発明の実施例1における導通ヒンジの可動カムの概念図である。
【図5】本発明の実施例2における導通ヒンジの断面図である。
【図6】従来の導通ヒンジの概念図である。
【符号の説明】
【0030】
1 シャフト
2 接触子
3 スプリング
4 ケース
5 可動カム
6 固定カム
7 ホルダ
8 ストッパ
9 導体舌片
10 下側筐体(第1筐体)
11 上側筐体(第2筐体)
12 導体摺動片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体に同期して動き前記第1筐体に電気的に接続される導電性のシャフトと、第2筐体に同期して動き前記第2筐体に電気的に接続され前記シャフトに摺動して電気的に接続される導電性の接触子と、前記第2筐体に固定される絶縁性のケースと、前記ケースを一端で押すスプリングと、前記第1筐体に固定されるホルダと、前記ホルダに固定される固定カムと、前記スプリングに押されて前記固定カムに当接する可動カムと、前記シャフトから前記ホルダが抜けないように止める抜止手段とを具備することを特徴とする導通ヒンジ。
【請求項2】
前記第1筐体に固定された導体舌片に前記シャフトの先端が当接して前記第1筐体に電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載の導通ヒンジ。
【請求項3】
前記接触子の腕部が導電性の第2筐体に当接して前記第2筐体に電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載の導通ヒンジ。
【請求項4】
第1筐体に同期して動き前記第1筐体と第2筐体に電気的に接続される導電性のシャフトと、前記第2筐体に固定される絶縁性のケースと、一端で前記ケースを押すスプリングと、前記第1筐体に固定されるホルダと、前記ホルダに固定される固定カムと、前記スプリングに押されて前記固定カムに当接する可動カムと、前記シャフトから前記ホルダが抜けないように止める抜止手段とを具備することを特徴とする導通ヒンジ。
【請求項5】
前記第1筐体に固定された導体舌片に前記シャフトの先端が当接して前記第1筐体に電気的に接続されることを特徴とする請求項4記載の導通ヒンジ。
【請求項6】
前記シャフトの頭部が前記第2筐体の導体に接触して前記第2筐体に電気的に接続されることを特徴とする請求項4記載の導通ヒンジ。
【請求項7】
前記可動カムは、前記固定カムの内部に輪環部が納まる方向に前記輪環部にオフセットを付けた構成であることを特徴とする請求項1または4記載の導通ヒンジ。
【請求項8】
前記抜止手段は、ストッパであることを特徴とする請求項1または4記載の導通ヒンジ。
【請求項9】
前記抜止手段は、加締め加工による固定手段であることを特徴とする請求項1または4記載の導通ヒンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−146981(P2008−146981A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331925(P2006−331925)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(592245432)スタッフ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】