説明

尿中ヒトメガリンを測定することを含む腎疾患検出方法

【課題】腎疾患を診断する為の診断キットおよび診断マーカーの提供。
【解決手段】尿中に存在する以下の(i)〜(iii)の完全長ヒトメガリンまたはヒトメガリンのフラグメントの少なくとも1つのヒトメガリンを測定することを含む、腎疾患を検出する方法:
(i) 完全長ヒトメガリン;
(ii) ヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメント;または
(iii) ヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腎疾患を診断する為の診断キットおよび診断マーカーに関する。本発明はまた、尿中ヒトメガリンを腎疾患の診断用マーカーとして診断の指標とする腎疾患の診断方法に関する。さらに、本発明は腎疾患の治療効果の評価法に関する。
【背景技術】
【0002】
Glycoprotein330(gp330)あるいはLow Density Lipoprotein(LDL)-receptor related protein 2(LRP2)としても知られるメガリン(Megalin)は、腎臓の近位尿細管上皮細胞に発現する分子量が約600kDaの糖タンパク質である(非特許文献1、2)。
【0003】
腎臓においては、メガリンは尿排泄前に近位尿細管腔内のタンパク質等のエンドサイトーシス・再吸収に関係するエンドサイトーシス受容体として機能する。再吸収されたタンパク質等のリガンドは、その後、近位尿細管上皮細胞中のリソゾームにより分解される(非特許文献3)。
【0004】
近年、Flavia F.J.らは腎臓の近位尿細管上皮細胞を用いた細胞培養実験において、メガリンが膜結合型の完全長メガリンと、細胞内領域を欠いたSoluble-Form(細胞外領域含有フラグメント)の二種類が存在していることを報告している(非特許文献4)。
【0005】
更にこのSoluble-Form(細胞内領域を欠いた細胞外領域含有フラグメント)の形成は、Notch様の切断機序で起こり、そこにはメタロプロテアーゼでの細胞膜近傍の細胞外領域(Ectodomain)の第一段階目の切断と、その後引き続くγ‐セクレターゼでの膜内在の膜貫通領域の第二段階目の切断の2段階によって媒介されていることが報告されている(非特許文献5、6、7、8)。
【0006】
多くの細胞膜貫通型糖タンパク質は、その細胞外ドメインが細胞から遊離して周囲に放出されること(shedding)が古くから知られている。近年、sheddingは膜タンパク質が細胞内外のシグナルを引き金として特定のプロテアーゼによって切断を受けるために生じることがわかり、さらにこの切断は連鎖的に細胞膜貫通部や細胞内ドメインにも生じ、切断後の断片が細胞内外でシグナル分子として機能していることが明らかとなってきている。メガリンの切断機序についても同様であり、シグナル機能分子の形成からの近位尿細管上皮細胞の機能調節をつかさどっている報告がなされている(非特許文献6、7)。これら一連の切断を担う酵素はメタロプロテアーゼとセクレターゼと総称される2種類の酵素群であり、その活性は各種膜タンパク質の機能制御に関与し、細胞の分化、増殖などの基本的な生理機能のみならず、癌やアルツハイマー病などの疾患においてもきわめて重要であることが解明されつつある。Ectodomain-shedingが確認されている膜タンパク質としては、EGF受容体(EGF receptor ; EGFR)ファミリーを代表とするチロシンキナーゼ型増殖因子受容体、各種インターロイキン(interleukin ; IL)受容体、接着分子などがあり、LDL受容体(LRP)もこの群に属する。先述の様にメガリンはLDL受容体スーパーファミリーに属する膜貫通型糖タンパク質であり、非特許文献5、6、7、8に報告されている様にectodomain-sheddingを受けることはわかっていた。
【0007】
また、尿中へのメガリンの排泄量を測定する方法について報告されていた(特許文献1)。しかしながら、生体内でのプロテアーゼによるShedding等の切断修飾を受けたヒトメガリンの尿中への排泄パターンの評価には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第WO 2007/119563号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Christensen E.I. , Willnow T.E. (1999) J.Am.Soc.Nephrol. 10 , 2224-2236
【非特許文献2】Zheng G , McCluskey R.T. et al. (1994) J.Histochem. Cytochem. 42 , 531-542
【非特許文献3】Mausbach A.B. , Christensen E.I. (1992) Handbook of physiology : Renal Physiology , Windhager , editor , New York , Oxford University Press , 42-207
【非特許文献4】Flavia F.J. , Julie R.I. et al. (1998) Kidney. International. 53 , 358-366
【非特許文献5】Zou Z. , Biemesderfer D. et al. (2004) J. Biol. Chem. 279 (33) 34302-34310
【非特許文献6】Biemesderfer D. (2006) Kidney Int. 69 (10) , 1717-1721
【非特許文献7】Li Y. , Biemesderfer D. et al. (2008) Am. J. Physiol. Cell. Physiol. 295 (2) C529-537
【非特許文献8】Xia W. , Wolfe M.S. (2003) J. Cell. Sci. 116 (Pt14) , 2839-2844
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は腎疾患を診断する為の診断キットおよび診断マーカーの提供を目的とする。また、本発明は、尿中ヒトメガリンを腎疾患の診断用マーカーとして診断の指標とする腎疾患の診断方法の提供を目的とする。さらに、本発明は腎疾患の治療効果の評価法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、先に尿中へのメガリンの排泄量の測定方法について報告している(国際公開第WO 2007/119563号明細書)。しかしながら、生体内でのプロテアーゼによるShedding等の切断修飾を受けたヒトメガリンの尿中への排泄パターンの評価には至っていない。よって、国際公開第WO 2007/119563号明細書に記載の技術によっては、腎疾患の病態の全容を把握できていないことが問題となっていた。
【0012】
本発明者らは、腎疾患の病態の全容の把握という上記の目標を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、尿中へのメガリンの排泄量を測定することによって、および、3種類のヒトメガリン測定方法によりヒトメガリンの尿中排泄パターンを鑑別評価することで、腎機能の病態変化に関する情報の全容を認識・解析できること、ならびに尿中ヒトメガリンは病態診断および治療にも利用することができることを見出した。ここで、3種類のヒトメガリン測定方法とは、尿中ヒトメガリン細胞外領域に結合するリガンドを用いた測定方法、尿中完全長ヒトメガリンに結合するリガンドを用いた測定方法および尿中ヒトメガリン細胞内領域に結合するリガンドを用いた測定をいう。完全長ヒトメガリンは、細胞外領域と細胞内領域を含むため、細胞外領域に結合するリガンドを用いた測定方法では、細胞外領域フラグメントだけではなく完全長ヒトメガリンも測定でき、細胞内領域に結合するリガンドを用いた測定方法では、細胞内領域フラグメントだけではなく完全長ヒトメガリンも測定できる。従って、尿中の前記の3種類のヒトメガリン測定方法により測定値を得て、尿中ヒトメガリン細胞外領域に結合するリガンドを用いた測定の測定値から尿中完全長ヒトメガリンに結合するリガンドを用いた測定の測定値を差引いたものを、細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントの真(正味)の尿中濃度と評価し、尿中ヒトメガリン細胞内領域に結合するリガンドを用いた測定の測定値から尿中完全長ヒトメガリンに結合するリガンドを用いた測定の測定値を差引いたものを、細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントの真(正味)の尿中濃度と評価する。ヒトメガリンは、sheddingの機序により、細胞膜近傍の細胞外領域(Ectodomain)と細胞膜内在の膜貫通領域の2つの領域で、異なる二つの特異的切断酵素によって切断・分解され、切断・分解の産物として、細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメント、細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントの2種が形成される。一方、細胞膜からの脱落によって完全長ヒトメガリンも生体内で形成される。すなわち、本発明者らは、上述のsheddingの機序とは独立して、完全長ヒトメガリンが尿中に排泄されることも見出した。つまり、尿中には、ヒトメガリン細胞外領域フラグメント、ヒトメガリン細胞内領域フラグメント、完全長ヒトメガリンの3パターンのヒトメガリンが排泄される可能性がある。このように、本発明者らは、上記の切断産物および完全長ヒトメガリンの3パターンのヒトメガリンが尿中に排泄されることを見出した。さらに、これら3パターンのヒトメガリンの尿中排泄動態が腎疾患の早期診断・病態把握に効果を奏することを始めて見出した。これら3パターンの尿中ヒトメガリンは何れも、腎疾患の病態把握の指標となり得るものであり、それぞれに独立した臨床的意義が存在する。
【0013】
すなわち本発明は以下の通りである。
[1] 尿中に存在する以下の(i)〜(iii)の完全長ヒトメガリンまたはヒトメガリンのフラグメントの少なくとも1つのヒトメガリンを測定することを含む、腎疾患を検出する方法:
(i) 完全長ヒトメガリン;
(ii) ヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメント;または
(iii) ヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメント。
[2] 尿中に存在する以下の(i)〜(iii)の完全長ヒトメガリンまたはヒトメガリンのフラグメントを測定し、(i)〜(iii)の完全長ヒトメガリンまたはヒトメガリンのフラグメントの尿中への排泄パターンを分析することを含む、腎疾患を検出する方法:
(i) 完全長ヒトメガリン;
(ii) ヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメント;および
(iii) ヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメント。
[3] 完全長ヒトメガリンが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4655番目のアミノ酸配列からなる、[1]または[2]の腎疾患を検出する方法。
[4] ヒトメガリン細胞内領域フラグメントが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4655番目のアミノ酸配列、第4438番目から4655番目のアミノ酸配列の全部または一部からなる、[1]または[2]の腎疾患を検出する方法。
[5] ヒトメガリン細胞外領域フラグメントが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸配列、第26番目から314番目のアミノ酸配列、または第4362番目から4437番目のアミノ酸配列の全部または一部からなる、[1]または[2]の腎疾患を検出する方法。
[6] 固相に結合したヒトメガリンに結合性を有する第1のリガンドと尿検体を反応させ、かつヒトメガリンに結合性を有する第2のリガンドと尿検体とを反応させ、尿検体中のヒトメガリンとヒトメガリンに結合性を有するリガンドとの複合体形成により固相に結合したヒトメガリンに結合性を有する第2のリガンドを測定するか、または尿検体と粒子に結合されたヒトメガリンに結合性を有するリガンドとを反応させ、凝集反応を生起させた後、得られた凝集により前記ヒトメガリンを測定することを含む、[1]〜[5]のいずれかの腎疾患を検出する方法。
[7] 第1のリガンドが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸配列、第26番目から314番目のアミノ酸配列からなるヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを認識する抗体であり、第2のリガンドが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4438番目から4655番目のアミノ酸配列、または第4447番目から4655番目のアミノ酸配列からなるヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを認識する抗体であるか、あるいは第1のリガンドが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4438番目から4655番目のアミノ酸配列、または第4447番目から4655番目のアミノ酸配列からなるヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを認識する抗体であり、第2のリガンドが配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸配列、第26番目から314番目のアミノ酸配列からなるヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを認識する抗体である[6]の腎疾患を検出する方法。
[8] 第1のリガンドおよび第2のリガンドが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4655番目のアミノ酸配列ヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体であるか、第4438番目から4655番目のアミノ酸配列ヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体であるか、または第4447番目から4655番目のアミノ酸配列からなるヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体である、[6]の腎疾患を検出する方法。
[9] 第1のリガンドおよび第2のリガンドが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸配列ヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体であるか、第26番目から314番目のアミノ酸配列ヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体であるか、または第4362番目から4437番目のアミノ酸配列からなるヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体である、[6]の腎疾患を検出する方法。
[10] 尿中のヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントの真の測定値を、ヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合するリガンドを用いた測定により得られた測定値から、完全長ヒトメガリンの測定値を差し引くことにより得る、[1]〜[9]のいずれかの腎疾患を検出する方法。
[11] 尿中のヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントの真の測定値を、ヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合するリガンドを用いた測定により得られた測定値から、完全長ヒトメガリンの測定値を差し引くことにより得る、[1]〜[9]のいずれかの腎疾患を検出する方法。
[12] ヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合するリガンドを用いた測定により得られた測定値を、尿中のヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントの真の測定値とみなす、[1]〜[11]のいずれかの腎疾患を検出する方法。
[13] ヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合するリガンドを用いた測定により得られた測定値を、尿中のヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントの真の測定値とみなす、[1]〜[11]のいずれかの腎疾患を検出する方法。
[14] 以下の(i)〜(iii)の完全長ヒトメガリンまたはヒトメガリンのフラグメントからなる、腎疾患検出用マーカー:
(i) 完全長ヒトメガリン;
(ii) ヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメント;および
(iii) ヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメント。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、尿中ヒトメガリンの排泄量を測定できると共に、ヒトメガリン細胞外領域フラグメント、ヒトメガリン細胞内領域フラグメント、完全長ヒトメガリンの3パターンの尿中メガリン排泄動態を鑑別評価でき、本発明によって得られた尿中ヒトメガリン排泄量および該排泄動態を評価することによって、腎疾患特に尿細管障害の病態把握が可能となる。よって、尿中ヒトメガリンを腎疾患の診断マーカーとして使用することで、腎疾患の予後予測および疾患の障害の程度(病態の進展)を的確かつ早期に判別することに効力を有し、より早期からの予防医療の立場から有用と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】2型糖尿病性腎症(71例)、IgA腎症(81例)、ネフローゼ症候群(18例)での細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図2】少数例のその他の腎症例での細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図3】2型糖尿病性腎症(71例)でのアルブミン尿分類(障害の重傷度分類)での細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図4】IgA腎症(59例)での組織学的予後分類での細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図5】2型糖尿病性腎症(71例)、IgA腎症(81例)、ネフローゼ症候群(18例)での細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図6】少数例のその他の腎症例での細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図7】2型糖尿病性腎症(71例)でのアルブミン尿分類(障害の重傷度分類)での細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図8】IgA腎症(59例)での組織学的予後分類での細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図9】2型糖尿病性腎症(71例)での尿中β2-ミクログロブリン濃度と細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量の関係(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図10】2型糖尿病性腎症(71例)、IgA腎症(81例)、ネフローゼ症候群(18例)での完全長ヒトメガリンの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図11】少数例のその他の腎症例での完全長ヒトメガリンの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図12】尿中完全長ヒトメガリン濃度と細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中濃度の相関性を示す図である。
【図13】2型糖尿病性腎症(71例)、IgA腎症(81例)、ネフローゼ症候群(18例)での細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図14】少数例のその他の腎症例での細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図15】2型糖尿病性腎症(71例)でのアルブミン尿分類(障害の重傷度分類)での細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントの尿中排泄量(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図16】IgA腎症(59例)での組織学的予後分類での細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントの尿中排泄量(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図17】尿中完全長ヒトメガリン濃度と細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中濃度の相関性を示す図である。
【図18】2型糖尿病性腎症(71例)、IgA腎症(81例)、ネフローゼ症候群(18例)での細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図19】少数例のその他の腎症例での細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントの尿中排泄量測定結果(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図20】2型糖尿病性腎症(71例)でのアルブミン尿分類(障害の重傷度分類)での細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントの尿中排泄量(クレアチニン補正値)を示す図である。
【図21】IgA腎症(59例)での組織学的予後分類での細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントの尿中排泄量(クレアチニン補正値)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、完全長ヒトメガリンは、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4655のアミノ酸配列からなる。配列番号1には、ヒトメガリンの塩基配列を示す。配列番号2に示すアミノ酸配列の第1番目から第25番目の配列は、シグナルペプチドの配列である。ヒトメガリンのアミノ差配列は、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のAccession No.:NP_004516 (RefSeq protein ID:126012573)に開示されている。
【0017】
ヒトメガリンは細胞外領域、膜貫通領域、細胞内領域の3領域から構成されている一回膜貫通型糖タンパク質である。本発明において、ヒトメガリンの細胞内領域とは、ヒトメガリンが細胞膜貫通型糖タンパク質として細胞膜に発現したときのヒトメガリンの細胞膜より内側の細胞質側の領域をいい、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4447番目から第4655番目のアミノ酸からなる領域をヒトメガリンの細胞内領域という。同様に配列番号2に示すアミノ酸配列の第4425番目から4446番目のアミノ酸からなる領域をヒトメガリンの膜貫通領域という。更に、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から4424番目のアミノ酸からなる領域をヒトメガリンの細胞外領域という。また、本発明において、ヒトメガリンの細胞内領域フラグメントとは、細胞内領域の全部を含み、且つ配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4655番目のアミノ酸からなる領域の一部または全部を意味するフラグメントをいい、細胞外領域の大部分を欠いている。更に、該ヒトメガリン細胞内領域フラグメントは配列番号2に示すアミノ酸配列の第4438番目から第4655番目のアミノ酸からなる領域に限定される場合は、細胞外領域を完全に欠いている。一方、ヒトメガリンの細胞外領域フラグメントとは、細胞外領域の一部または全部を含み、且つ配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4424番目のアミノ酸からなる領域の一部または全部を意味するフラグメントをいい、細胞内領域を欠いている。
【0018】
細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントは、ヒトメガリン全長配列がメタロプロテアーゼで切断されてできた一時切断産物であり、膜貫通型タンパク質である。細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントとして、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4655番目のアミノ酸配列からなるフラグメントが挙げられる。さらに、細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントとして、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4438番目から第4655番目のアミノ酸配列からなるフラグメントが挙げられる。該フラグメントは、前述の配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4655番目のアミノ酸配列からなる一次切断産物からγセクレターゼによって更に切断された二次切断産物である。
【0019】
細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントとして、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸配列からなるフラグメントが挙げられる。該フラグメントは、前記の配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4655番目のアミノ酸配列からなる一次切断産物形成過程にて生じた残りの細胞外領域側フラグメントである。さらに、細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントとして、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4437番目のアミノ酸配列からなるフラグメントが挙げられる。該フラグメントは、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4438番目から第4655番目のアミノ酸配列からなる、前述の二次切断産物形成過程において生じた残りの細胞外領域含有フラグメントである。
【0020】
完全長ヒトメガリン、一次切断産物である細胞内領域フラグメント、二次切断産物である細胞内領域フラグメントおよび完全長ヒトメガリンから前記の一次・二次切断産物形成過程において生じた残りの細胞外領域フラグメントは、被験者個々によっては一部変異が存在する場合も想定され、本発明の完全長ヒトメガリン、一次切断産物である細胞内領域フラグメント、二次切断産物である細胞内領域フラグメントおよび完全長ヒトメガリンから前記の一次・二次切断産物形成過程において生じた残りの細胞外領域フラグメントには、変異体も包含される。
【0021】
ここで、変異体の配列と元のタンパク質またはペプチドとのアミノ酸配列の配列同一性は限定されないが、例えば、本発明の完全長ヒトメガリンのアミノ酸配列は、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4655のアミノ酸配列において、少なくとも1個、好ましくは1もしくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じたものが含まれる。ここで、1個または数個とは、1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは4個、3個、2個もしくは1個をいう。このような配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4655のアミノ酸配列において、少なくとも1個、好ましくは1もしくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じたものとして、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4655のアミノ酸配列と、BLAST等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータを用いて)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の同一性を有しているものが挙げられる。
【0022】
また、本発明のヒトメガリンの細胞内領域フラグメントは、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4655番目のアミノ酸配列、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4438番目から第4655番目のアミノ酸配列において、少なくとも1個、好ましくは1もしくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じたものが含まれる。ここで、1個または数個とは、1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは4個、3個、2個もしくは1個をいう。このような配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4655番目のアミノ酸配列、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4438番目から第4655番目のアミノ酸配列において、少なくとも1個、好ましくは1もしくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じたものとして、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4655番目のアミノ酸配列、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4438番目から第4655番目のアミノ酸配列と、BLAST等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータを用いて)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の同一性を有しているものが挙げられる。
【0023】
さらに、本発明のヒトメガリンの細胞外領域フラグメントは、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸配列、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4437番目のアミノ酸配列において、少なくとも1個、好ましくは1もしくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じたものが含まれる。ここで、1個または数個とは、1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは4個、3個、2個もしくは1個をいう。このような配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸配列、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4437番目のアミノ酸配列において、少なくとも1個、好ましくは1もしくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じたものとして、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸配列、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4437番目のアミノ酸配列と、BLAST等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータを用いて)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の同一性を有しているものが挙げられる。
【0024】
上記の完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントおよび細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントは、完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに結合性のリガンドを用いて測定することができる。すなわち、本発明においては、尿中に排泄され存在している完全長ヒトメガリン、尿中に排泄され存在しているヒトメガリン細胞内領域フラグメントおよび尿中に排泄され存在しているヒトメガリン細胞外領域フラグメントを測定する。本発明においては、ヒトメガリンに結合し得るリガンドを用いて測定するが、この際、ヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定、ヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合するリガンドを用いての測定および完全長ヒトメガリンに結合するリガンドを用いての測定を行い、それぞれの測定値を得ることができる。測定は、例えば国際公開第WO 2007/119563号明細書の記載を参考にして行うことができる。
【0025】
例えば、完全長ヒトメガリンに結合するリガンドを用いての測定は、固相に結合した完全長ヒトメガリンに結合性を有する第1のリガンドおよび完全長ヒトメガリンに結合性を有する第2のリガンドを用い、固相に結合した完全長ヒトメガリンに結合性を有する第1のリガンドと検体を反応させ、かつ完全長ヒトメガリンに結合性を有する第2のリガンドと検体とを反応させ、検体中の完全長ヒトメガリンと完全長ヒトメガリンに結合性を有するリガンドとの複合体形成により固相に結合した完全長ヒトメガリンに結合性を有する第2のリガンドを測定すればよい。この際、尿中に完全長ヒトメガリンの他、細胞内領域フラグメントや細胞外領域フラグメントが共存する場合に第1の結合リガンドおよび第2の結合リガンドの両方が細胞外領域フラグメントに結合する場合、あるいは第1の結合リガンドおよび第2の結合リガンドの両方が細胞内領域フラグメントに結合する場合、完全長ヒトメガリンだけでなく、細胞内領域フラグメントまたは細胞外領域フラグメントも測定される。そこで、完全長フラグメントのみを測定するためには、第1のリガンドと第2のリガンドが別の領域フラグメントに結合するように、リガンドを選択する必要がある。すなわち、第1のリガンドが細胞内領域フラグメントに結合する場合、第2のリガンドとしては細胞外領域フラグメントに結合するものを選択し、第1のリガンドが細胞外領域フラグメントに結合する場合、第2のリガンドとしては細胞内領域フラグメントに結合するものを選択する。
【0026】
細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定は、固相に結合したヒトメガリンの細胞内領域フラグメントに結合性を有する第1のリガンドおよびヒトメガリンの細胞内領域フラグメントに結合性を有する第2のリガンドを用い、固相に結合したヒトメガリンの細胞内領域フラグメントに結合性を有する第1のリガンドと検体を反応させ、かつヒトメガリンの細胞内領域フラグメントに結合性を有する第2のリガンドと検体とを反応させ、検体中のヒトメガリンの細胞内領域フラグメントとヒトメガリンの細胞内領域フラグメントに結合性を有するリガンドとの複合体形成により固相に結合した細胞内領域フラグメントに結合性を有する第2のリガンドを測定すればよい。この場合、尿中に完全長ヒトメガリンが存在する場合、完全長ヒトメガリンと細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントの両方を測定することになる。従って、細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定を細胞内領域を含むヒトメガリンの測定ということもできる。ここで、細胞内領域を含むヒトメガリンとは、少なくとも細胞内領域含むフラグメントと、完全長ヒトメガリンが含まれる。従って、細胞内領域フラグメントの真(正味)の値は、ヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定による測定値から、完全長ヒトメガリンの測定値を差し引いた値となる。ただし、ヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定による測定値を細胞内領域フラグメントの真(正味)の値とみなして、腎疾患の検出等の腎疾患に関連する評価を行うことができる。本発明においては、ヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定による測定値を細胞内領域フラグメントの真(正味)の値とみなして、腎疾患の検出等の腎疾患に関連する評価を行うことを、ヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定による測定値を以って近似評価するということがある。
【0027】
細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合するリガンドを用いての測定は、固相に結合したヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに結合性を有する第1のリガンドおよびヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに結合性を有する第2のリガンドを用い、固相に結合したヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに結合性を有する第1のリガンドと検体を反応させ、かつヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに結合性を有する第2のリガンドと検体とを反応させ、検体中のヒトメガリンの細胞外領域フラグメントとヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに結合性を有するリガンドとの複合体形成により固相に結合した細胞外領域フラグメントに結合性を有する第2のリガンドを測定すればよい。この場合、尿中に完全長ヒトメガリンが存在する場合、完全長ヒトメガリンと細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントの両方を測定することになる。従って、細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定を細胞外領域を含むヒトメガリンの測定ということもできる。ここで、細胞外領域を含むヒトメガリンとは、少なくとも細胞外領域含むフラグメントと、完全長ヒトメガリンが含まれる。従って、細胞外領域フラグメントの真(正味)の値は、ヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定による測定値から、完全長ヒトメガリンの測定値を差し引いた値となる。ただし、ヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定による測定値を細胞外領域フラグメントの真(正味)の値とみなして、腎疾患の検出等の腎疾患に関連する評価を行うことができる。本発明においては、ヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定による測定値を細胞外領域フラグメントの真(正味)の値とみなして、腎疾患の検出等の腎疾患に関連する評価を行うことを、ヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定による測定値を以って近似評価するということがある。
【0028】
これらの方法は、第1のリガンドと第2のリガンドを用いて、完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを挟んで測定するサンドイッチアッセイである。この場合、固相としては、従来の免疫分析において用いられている何れのものをも用いることができ、例えば、プラスチック製のマイクロタイタープレートのウェルや、磁性粒子等を好ましく用いることができる。
【0029】
ヒトメガリンに結合性を有するリガンドとしては、例えば完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに対する抗体が挙げられ、モノクローナル抗体もポリクローナル抗体も用いることができる。なお、固相あるいは標識に用いる抗ヒトメガリン抗体は、完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに対して特異的なFabやF(ab’)2のような免疫グロブリン断片、あるいは、組換え体として発現されたscFv、dsFv、diabody、minibody等の組換え抗体であってもよい。本発明において、「抗体」という語は、完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに特異的なこれらの断片をも包含する。これらの断片の調製方法はこの分野において周知である。
【0030】
細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いて測定する場合、抗体は細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを認識する2種類の抗体であって、互いに認識するエピトープが異なる2種類の抗体、すなわち細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体を第1のリガンドおよび第2のリガンドとして用いればよい。例えば配列番号2に示すアミノ酸配列の第4447番目から第4655番目のアミノ酸からなる細胞内領域をエピトープとして認識する2種類の抗体であって、互いに認識するエピトープが異なる2種類の抗体が挙げられる。細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いて測定する場合、抗体は細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを認識する2種類の抗体であって、互いに認識するエピトープが異なる2種類の抗体を第1のリガンドおよび第2のリガンドとして用いればよい。例えば配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸からなる細胞外領域をエピトープとして認識する2種類の抗体であって、互いに認識するエピトープが異なる2種類の抗体を用いればよい。完全長ヒトメガリンに結合するリガンドを用いて測定する場合は、上記のように細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメント上のエピトープを認識する抗体および細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメント上のエピトープを認識する抗体を2種類のリガンドとして用いればよい。
【0031】
第2のリガンドを、酵素、蛍光、ビオチン、放射標識等で標識して酵素標識体を作製しておき、これらの標識を測定することにより固相に結合したヒトメガリンに結合性を有する第2のリガンドを測定することができる。これらのうち、酵素あるいは蛍光による標識が好ましく、酵素としてはペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β‐ガラクトシダーゼ及びグルコースオキシダーゼ等が、蛍光としてはFluorescein Isothiocyanate(FITC)等が挙げられるがこの限りではない。標識の検出は、対応する基質と酵素標識体とを反応させ、反応の結果生じる色素、蛍光、発光等を測定することにより行うことができる。上記の方法は、固相に結合された第1のリガンドと検体を反応させ、次いで洗浄し、その後に第2のリガンドを反応させる2ステップからなる方法である。固相に結合された第1のリガンドと検体との反応と検体と第2のリガンドとの反応を同時に行わせる1ステップからなる方法を採用してもよい。
【0032】
さらに、本発明は、完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに結合性を有するリガンドを用いて検体中の完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを測定する方法であって、検体と粒子に結合した完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに結合性を有するリガンドとを反応させ、凝集反応を生起させた後、得られた凝集の程度に基づいて完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを測定する方法を包含する。該方法において用いられる粒子としては、直径0.05〜10μmの、好ましくは直径0.1〜0.4μmのラテックス、直径0.5〜10μmのゼラチン粒子及び動物赤血球を挙げることができる。粒子への抗体の結合方法は、この分野において周知であり、物理吸着あるいは共有結合のどちらの結合様式をも適応可能である。該方法において、粒子上に完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに対する抗体等のリガンドが結合されている粒子と検体とを、例えば、黒色のスライドグラス上で混合し、凝集して沈殿する粒子の有無を観察することにより尿中の完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを検出することができる。また、この凝集の吸光度測定により完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを定量することもできる。更にまた、Pulse Immunoassayにより検出することも可能である。
【0033】
上記のように、尿中の完全長ヒトメガリンに対するリガンドを用いて得られた測定値は、完全長ヒトメガリンのみの測定値であるが、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントに対するリガンドを用いて得られた測定値は、尿中に完全長ヒトメガリンが存在する場合、完全長ヒトメガリンと細胞内領域フラグメントの両者の測定値の合計となる。また、細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントに対するリガンドを用いて得られた測定値は、尿中に完全長ヒトメガリンが存在する場合、完全長ヒトメガリンと細胞外領域フラグメントの両者の測定値の合計となる。そこで、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントの真(正味)の含有量は、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントの測定値から、完全長ヒトメガリンの測定値を差し引いて得られる。同様に、細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントの真の含有量は、細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントの測定値から、完全長ヒトメガリンの測定値を差し引いて得られる。
【0034】
本発明の方法によって、尿中の完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを測定することができ、これらの測定値より3パターンのヒトメガリンの尿中排泄動態を決定することができる。また、尿中の全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントの個々のいずれかの測定値に基づいて腎疾患を検出し、早期診断・病態把握することができる。また、腎疾患の予後予測や障害の程度を腎症早期から評価することが可能となる。本発明で検出し得る腎疾患としては、2型糖尿病性腎症やIgA腎症等が挙げられる。
【0035】
さらに、尿中の全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントおよび細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントの測定値より尿中に排泄されるそれぞれのヒトメガリンの排泄パターンを決定することができる。本発明では、この排泄パターンを3タイプのヒトメガリンの尿中排泄パターンといい、該3パターンの尿中排泄パターンから尿中ヒトメガリンの排泄動態を分析することができる。この排泄動態の分析に基づいて、腎疾患を検出し、早期診断・病態把握することができる。また、腎疾患の予後予測や障害の程度を腎症早期から評価することが可能となる。
【0036】
本発明では、腎疾患を検出するという場合、腎疾患を検出し、早期診断・病態把握すること、腎疾患の予後予測や障害の程度を腎症前期から評価することを含む。
【0037】
例えば、完全長ヒトメガリン、細胞外領域を欠いたヒトメガリンの細胞内領域フラグメントまたは細胞内領域を欠いたヒトメガリンの細胞外領域フラグメントの尿中排泄量が多い場合、腎疾患の重篤度が高いと判断することができ、また、予後が不良になるおそれがあると評価することができる。
【0038】
この際、ヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定による測定値を細胞内領域フラグメントの真(正味)の値とみなして、腎疾患の検出等の腎疾患に関連する近似評価を行うことができ、さらに、ヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての測定による測定値を細胞外領域フラグメントの真(正味)の値とみなして、腎疾患の検出等の腎疾患に関連する近似評価を行うことができる。
【0039】
尿中へのメガリンの排泄は、腎組織中でのメガリンの発現の程度と、腎組織からの逸脱の程度の複合的な結果を捉えている。腎疾患に伴う尿細管障害の進展に伴い、メガリンの排泄が増えるが、病的進展に伴って、メガリンの組織発現量は減少する。さらに、細胞外領域フラグメントについては、排泄量の増大の要因に代償性の要素が含まれる。完全長メガリンや細胞内領域フラグメントの場合は、代償性の要素はなく、各ステージまたは疾患での規定排泄レベルが異なっていると理解される。しかし、細胞外領域フラグメントについては、健常人でもある一定の規定排泄レベルが存在し、機能亢進状態に移行すると、その規定レベルを超すものが現れ、超えたものが病的進行リスクが高く増悪ステージに移行すると判断することができる。よって、細胞外領域フラグメントの挙動においては、健常人に比して疾患群で変わらないポピュレーションが存在し得る。基準値を超えた個々の患者の症例が進行リスクが高いと評価できる点が、細胞外領域フラグメントの排泄動態を分析することの最大の利点である。
【実施例】
【0040】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1 抗ヒトメガリン・マウスモノクローナル抗体の作製
配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第314番目のアミノ酸配列の領域(以下、LBD1と略す)を大腸菌組換え技術を用いて抗ヒトメガリン細胞外領域モノクローナル抗体作出用免疫抗原として作製した。同様に、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4447番目から第4655番目のアミノ酸配列の領域(以下、Ctailと略す)も大腸菌組換え技術を用いて抗ヒトメガリン細胞内領域モノクローナル抗体作出用免疫抗原として作製した。得られた組換えLBD1抗原あるいは組換えCtail抗原をマウスに免疫した。
【0041】
組換えLBD1抗原50μgあるいは組換えCtail抗原50μgをマウス腹腔にアジュバントと共に数回免疫し、その血清力価が上昇したことを確認した。追加免疫(静脈内)後3日目に脾臓を取り出し、脾細胞を得た。これとマウスミエローマ細胞をポリエチレングリコール3500の存在下(10:1細胞)で融合させ、ハイブリドーマ細胞を作製した。この細胞を1週間CO2気下37℃で培養し、その培養上清中の抗ヒトメガリン抗体の有無を調べた。そこで抗体産生を認めた陽性ウェル中の細胞を限界希釈法により希釈し2週間培養し、同様に培養上清の抗ヒトメガリン抗体の有無を調べた。更にその後、抗体産生を認めた陽性ウェル中の細胞を再度限界希釈し、同様の培養を行った。この段階で抗ヒトメガリン抗体を産生している細胞を、フラスコにて培養し、その一部をジメチルスルホキシド(DMSO) 10%含有ウシ胎児血清(FCS)にサスペンドし(5×106個/mL)、液体窒素中に保存した。
【0042】
次に各ウェルの上清を用い、ヒトメガリンに対する培養上清中の産生抗体の反応性を調べた。ヒトメガリンを140mM NaCl,2.7mM KCl,10mM Na2HPO4,1.8mM KH2PO4,pH7.3(以下、PBS,pH7.3と略す)に溶解した。プラスチック製マイクロタイタープレート(Nunc-ImmunoTM Module F8 MaxisorpTM Surface plate, Nalge Nunc International社製)のウェルに、1ウェル当たり100μLの、上記ヒトメガリン/PBS,pH7.3溶液を加え、3pmol/ウェル、4℃、12時間の条件下で、ヒトメガリンをマイクロタイタープレート上に固相化した。12時間後、ウェルに加えておいたヒトメガリン/PBS,pH7.3溶液をデカンテーションにより除去し、そのマイクロタイタープレートのウェルへ、洗浄液を200μL/ウェルで添加し、デカンテーションによる除去を行い、ウェル内の吸着過剰分のヒトメガリンを洗浄した。この洗浄工程を計2回行った。その後、抗原固相プレートブロッキング液を200μL/ウェルで添加し、4℃、12時間の条件下でヒトメガリン固相化マイクロタイタープレートのウェル内のブロッキングを行った。12時間経過後、4℃のままで保存状態とした。培養上清中の抗体の反応性を確認する為に、このブロッキング完了後のヒトメガリン固相化マイクロタイタープレートを用いた。上記ヒトメガリン固相化マイクロタイタープレートのウェルへ、ハイブリドーマ培養上清を100μL/ウェルで加え、37℃、1時間加温した。その後、ウェルに加えておいた培養上清をデカンテーションにより除去し、そのマイクロタイタープレートのウェルへ洗浄液を200μL/ウェルで添加し、デカンテーションによる除去を行い、ウェル内の洗浄をした。この洗浄工程を計3回行った。その後、ウェルへPeroxidase-Conjugated Goat Anti-Mouse Immunoglobulins(DAKO社製)を100μL/ウェル(2000倍希釈:0.55μg/mL)で加え、37℃、1時間加温した。この酵素標識抗体の希釈には、酵素標識抗体希釈液を用いた。その後、ウェルに加えておいた酵素標識抗体をデカンテーションにより除去し、そのマイクロタイタープレートのウェルへ洗浄液を200μL/ウェルで添加し、デカンテーションによる除去を行い、ウェル内の洗浄をした。この洗浄工程を計3回行った。その後、ウェルへ3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine(以下、TMBと略す)溶液(TMB One-Step Substrate System:DAKO社製)をペルオキシダーゼ酵素反応基質溶液として、100μL/ウェルで加え、25℃、30分放置した。その後直ちに、そのウェル内の基質反応液へ反応停止液を100μL/ウェルで添加し、ウェル内での酵素反応を停止させた。その後、本ウェルの吸光度を測定し、450nmの吸光度から630nmの吸光度を差し引いた数値を反応性評価の指標とした。
【0043】
その結果、固相化したヒトメガリンへ抗ヒトメガリン抗体の強い反応性を示すモノクローナル化ハイブリドーマ細胞を選択し、本培養上清中のイムノグロブリンのクラスとサブクラスをImmunoglobulin Typing Kit,Mouse(和光純薬工業社製)を用いて、培養上清原液100μLから、各クローン毎に確認した。その結果を基に、得られた単クローン細胞ライブラリーの中から、IgGクラスに限定して後述する腹水化へ移行した。
【0044】
次に、これらの細胞を25mLのフラスコで培養し、更に75mLのフラスコで培養した。この細胞をプリスタン処理マウス腹腔中に注射し、腹水を採取した。
【0045】
実施例2 抗ヒトメガリン・マウスモノクローナル(IgG)抗体の精製
得られた腹水(10mL)と混濁血清処理剤(FRIGEN(登録商標)II:協和純薬工業社製)を、腹水1.5容に対してFRIGEN(登録商標)IIを1容の比率で混和し、1〜2分攪拌振とうすることで、腹水からの脱脂を行った。遠心機で3000rpm(1930×g)、10分間遠心分離を行い、清澄化された腹水遠心上清(10mL)を分取した。この腹水遠心上清(10mL)に硫安分画処理(終濃度50%飽和硫安)を氷浴中で1時間施し、沈降したイムノグロブリン画分をPBSで懸濁溶解させた。この硫安分画操作を計2回行い、腹水からのイムノグロブリン粗画分を得た。得られたイムノグロブリン粗画分(10mL)に対して等量の20mMリン酸ナトリウム, pH7.0(以下、20mM NaPB,pH7.0と称す)を混合し、プロテインGカラム(HiTrap Protein G HP,5mL:GEヘルスケア社製)を用いてアフィニティー精製を行った。サンプルをプロテインGカラムに吸着後、20mM NaPB,pH7.0(50mL)をプロテインGカラム内に通し、サンプル中のIgG以外の夾雑物を洗浄除去した。その後、プロテインGカラムにアフィニティー吸着したIgGは、0.1M グリシン-HCl,pH2.7で溶出させ、カラムからの溶出直後の溶出画分を1M Tris(hydroxymethyl)aminomethane-HCl,pH9.0(以下、Tris(hydroxymethyl)aminomethaneをTrisと略す)で中和し回収した。中和後、アフィニティー精製物に対して500倍容のPBSで4℃、6時間の透析を行い、本透析は計2回行った。本透析操作に用いた透析膜は透析用セルロースチューブ(Viskase Companies社製)で行った。そこで得られたIgG溶出画分を、抗ヒトメガリンモノクローナル抗体の精製物とし、4℃での保存および後述する操作に用いることとした。尚、本精製には、BioLogic LPシステム(Bio Rad Laboratories社製)に上述のプロテインGカラムを接続し、流速は1mL/minで一貫して行った。
【0046】
実施例3 細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量測定
抗ヒトメガリン細胞内領域フラグメントモノクローナル抗体を用いて細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量を測定した。抗ヒトメガリン細胞内領域フラグメントモノクローナル抗体とは、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4447番目から4655番目のアミノ酸からなる細胞内領域(Ctail)に存在するエピトープを認識するマウスモノクローナル抗体である。Ctail中の異なる二つのエピトープを認識する抗ヒトメガリンCtailモノクローナル抗体Aと抗ヒトメガリンCtailモノクローナル抗体Bを用いて測定評価した。抗ヒトメガリンCtailモノクローナル抗体A固相化マイクロタイタープレートと、ALP標識化抗ヒトメガリンCtailモノクローナル抗体Bを用いて、尿中の細胞内領域を含むヒトメガリンを測定した。先ず、原尿90μLと2M Tris-HCl,0.2M Ethylenediamine-N,N,N’,N’-tetraacetic acid(以下、Ethylenediamine-N,N,N’,N’-tetraacetic acidをEDTAと略す),10%(vol./vol.) Polyethylene Glycol Mono-p-isooctylphenyl Ether(以下、Polyethylene Glycol Mono-p-isooctylphenyl EtherをTriton X-100と略す)、pH8.0溶液10μLを混合し、該混合液100μLを抗ヒトメガリンCtailモノクローナル抗体A固相化マイクロタイタープレート(FluoroNuncTMModule F16 Black-MaxisorpTM Surface plate , Nalge Nunc International社製)のウェルへ加えた。37℃で1時間放置し、その後、ウェルに加えておいた尿サンプル溶液をデカンテーションにより除去し、そのマイクロタイタープレートのウェルへ、洗浄液を200μL/ウェルで添加し、デカンテーションによる洗浄液の除去を行い、洗浄を行った。この洗浄工程を計3回行った。その後、ALP標識化抗ヒトメガリンCtailモノクローナル抗体B(0.5ng/mL)溶液を100μL/ウェルで加えた。ALP標識化抗ヒトメガリンCtailモノクローナル抗体Bは標識抗体希釈液にて調製した。37℃で1時間放置し、その後、ウェルに加えておいたALP標識化抗体溶液をデカンテーションにより除去し、そのマイクロタイタープレートのウェルへ、洗浄液を200μL/ウェルで添加し、デカンテーションによる洗浄液の除去を行い、洗浄を行った。この洗浄工程を計4回行った。その後、そのマイクロタイタープレートのウェルへ、20mM Tris-HCl , 1mM MgCl2、pH9.8(以下、Assay Bufferと略す)を200μL/ウェルで添加し、デカンテーションによるAssay Bufferの除去を行い、洗浄を行った。この洗浄工程を計2回行った。次に、ウェルへCDP-Star(登録商標)Chemiluminescent Substrate for Alkaline Phosphatase Ready-to-Use (0.4mM) with Emerald-IITM Enhancer(ELISA-LightTM System:Applied Biosystems社製)をALP酵素反応基質溶液として、100μL/ウェルで加え、37℃、30分遮光放置した。その後直ちに、本ウェルの1秒間の積算発光強度を測定し、測定値を細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中濃度の測定評価の指標とした。化学発光強度の測定には、Microplate Luminometer Centro LB960とMicroWin2000 software(Berthold社製)を用いた。検量線の標準品としては、腎臓から抽出したNative-ヒトメガリンを使用した。尚、実際の細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中濃度測定の臨床結果については、図1および図2に示した。測定対象とした2型糖尿病性腎症患者(71例)、IgA腎症患者(81例)およびネフローゼ症候群患者(18例)の患者背景を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
さらに、2型糖尿性腎症またはIgA腎症と細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中濃度測定値との関連性を図3および図4に示した。2型糖尿病性腎症患者(71例)およびIgA腎症患者(81例)の病態の重篤度別の患者背景を表2および表3に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
この結果、健常人に比して、腎疾患患者で有意に、尿中へ細胞内領域を含むヒトメガリンの排泄が認められた(図1および2)。尚、尿中へのメガリン排泄量の評価に際しては、尿中メガリン濃度を尿中クレアチニン濃度で割って濃度補正したクレアチニン補正値を以って評価した。これは尿排泄時の濃縮率の影響ではないことを検証する為に、尿中バイオマーカーに常用されているものである。本実施例によって、細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中濃度が特異的に測定評価でき、細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量は2型糖尿病性腎症の障害の程度やIgA腎症の予後分類に応じて排泄増多が見られた(図3および4)。すなわち、2型糖尿病性腎症においては、第I期(腎症前期)や第II期(早期腎症期)患者において、健常人に比べ、尿中に排泄される細胞内領域を含むヒトメガリンの濃度が高く、さらに第III期(顕性腎症期)患者において、第I期(腎症前期)や第II期(早期腎症期)患者に比べて高かった。また、IgA腎症において、予後の状態により患者を予後良好&比較的良好群、予後比較的不良群、予後不良群に分けた場合、これらの群の患者の尿中に排泄される細胞内領域を含むヒトメガリンの濃度は健常人に比べ高く、さらに予後良好&比較的良好群、予後比較的不良群、予後不良群と予後が不良である患者ほど高い傾向が認められた。従って、腎症の病態把握および診断に効果を奏するものと考えられた。
【0052】
実施例4 細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いての細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量測定
抗ヒトメガリン細胞外領域フラグメントモノクローナル抗体を用いて細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量を測定した。抗ヒトメガリン細胞外領域フラグメントモノクローナル抗体とは、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第314番目のアミノ酸配列からなる領域(LBD1)に存在するエピトープを認識するマウスモノクローナル抗体である。LBD1中の異なる二つのエピトープを認識する抗ヒトメガリンLBD1モノクローナル抗体Aと抗ヒトメガリンLBD1モノクローナル抗体Bを用いて測定評価した。抗ヒトメガリンLBD1モノクローナル抗体A固相化マイクロタイタープレートと、ALP標識化抗ヒトメガリンLBD1モノクローナル抗体Bを用いて、尿中の細胞外領域を含むヒトメガリンを測定した。先ず、原尿90μLと2M Tris-HCl,0.2M EDTA,10%(vol./vol.) Triton X-100、pH8.0溶液10μLを混合し、該混合液100μLを抗ヒトメガリンLBD1モノクローナル抗体A固相化マイクロタイタープレート(FluoroNuncTMModule F16 Black-MaxisorpTM Surface plate , Nalge Nunc International社製)のウェルへ加えた。37℃で1時間放置し、その後、ウェルに加えておいた尿サンプル溶液をデカンテーションにより除去し、そのマイクロタイタープレートのウェルへ、洗浄液を200μL/ウェルで添加し、デカンテーションによる洗浄液の除去を行い、洗浄を行った。この洗浄工程を計3回行った。その後、ALP標識化抗ヒトメガリンLBD1モノクローナル抗体B(0.5ng/mL)溶液を100μL/ウェルで加えた。ALP標識化抗ヒトメガリンLBD1モノクローナル抗体Bは標識抗体希釈液にて調製した。37℃で1時間放置し、その後、ウェルに加えておいたALP標識化抗体溶液をデカンテーションにより除去し、そのマイクロタイタープレートのウェルへ、洗浄液を200μL/ウェルで添加し、デカンテーションによる洗浄液の除去を行い、洗浄を行った。この洗浄工程を計4回行った。その後、そのマイクロタイタープレートのウェルへ、Assay Bufferを200μL/ウェルで添加し、デカンテーションによるAssay Bufferの除去を行い、洗浄を行った。この洗浄工程を計2回行った。次に、ウェルへCDP-Star(登録商標)Chemiluminescent Substrate for Alkaline Phosphatase Ready-to-Use (0.4mM) with Emerald-IITM Enhancer(ELISA-LightTM System:Applied Biosystems社製)をALP酵素反応基質溶液として、100μL/ウェルで加え、37℃、30分遮光放置した。その後直ちに、本ウェルの1秒間の積算発光強度を測定し、測定値を細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中濃度の測定評価の指標とした。化学発光強度の測定には、Microplate Luminometer Centro LB960とMicroWin2000 software(Berthold社製)を用いた。検量線の標準品としては、腎臓から抽出したNative-ヒトメガリンを使用した。尚、実際の細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中濃度測定の臨床結果については、図5および図6に示した。測定対象とした2型糖尿病性腎症患者(71例)、IgA腎症患者(81例)およびネフローゼ症候群患者(18例)の患者背景を表1に示す。この結果、健常人に比して、腎疾患患者および腎疾患予備軍で有意に、尿中へ細胞外領域を含むヒトメガリンの排泄が認められた(図5および6)。尚、尿中へのメガリン排泄量の評価に際しては、尿中メガリン濃度を尿中クレアチニン濃度で割って濃度補正したクレアチニン補正値を以って評価した。本実施例によって、細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中濃度が特異的に測定評価でき、細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量は糖尿病性腎症の障害の程度やIgA腎症の予後分類に応じて排泄増多が見られたことから(図7および8)、腎症の病態把握および診断に効果を奏するものと考えられた。2型糖尿病性腎症患者(71例)およびIgA腎症患者(81例)の病態の重篤度別の患者背景を表2および表3に示す。また、β2‐ミクログロブリンは血液由来のタンパク質であるが、通常、腎糸球体の濾過スリットを透過し、近位尿細管上皮細胞でメガリンを介して再吸収される物質である。尿中へのβ2‐ミクログロブリン排泄量の増加は、近位尿細管でのメガリンを介した再吸収の機能障害の結末として出現すると考えられているが、細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量は、腎臓でのメガリンの再吸収のキャパシティを評価する為に有用であると考えられる。細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量の低下は、腎組織中のメガリンの発現量の消失と捉えることができ、その結果、腎臓でのメガリンを介した再吸収能の低下から尿中へβ2‐ミクログロブリン排泄量が増加してくるものと考えられる(図9)。一方、細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄量の増加は、再吸収の過剰亢進状態を意味する。再吸収の過剰亢進の結果、代償性に細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄増加が惹起されると考えられる。この細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中排泄増加が見られる代償期においては、再吸収の過剰亢進状態に伴って、尿中へのβ2‐ミクログロブリン排泄量は正常レベルに維持されている(図9)が、細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中濃度の測定により腎臓への負苛が起こっているかどうかを評価することができる。従って、細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中濃度は、早期診断および早期治療に繋がる有用な指標になると考えられる(図9)。
【0053】
実施例5 完全長ヒトメガリンの尿中排泄量測定
抗ヒトメガリン細胞外領域フラグメントモノクローナル抗体と抗ヒトメガリン細胞内領域フラグメントモノクローナル抗体を用いて完全長ヒトメガリンの尿中排泄量を測定した。抗ヒトメガリン細胞外領域フラグメントモノクローナル抗体とは、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第314番目のアミノ酸配列からなる領域(LBD1領域)に存在するエピトープを認識するマウスモノクローナル抗体である。抗ヒトメガリン細胞内領域フラグメントモノクローナル抗体とは、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4447番目から第4655番目のアミノ酸配列からなる領域(Ctail)に存在するエピトープを認識するマウスモノクローナル抗体である。
【0054】
抗ヒトメガリンLBD1モノクローナル抗体固相化マイクロタイタープレートと、アルカリフォスファターゼ(以下ALPと略す)標識化抗ヒトメガリンCtailモノクローナル抗体を用いて、尿中の完全長ヒトメガリンを測定した。先ず、原尿90μLと2M Tris-HCl,0.2M EDTA,10%(vol./vol.) Triton X-100、pH8.0溶液10μLを混合し、該混合液100μLを抗ヒトメガリンLBD1モノクローナル抗体固相化マイクロタイタープレート(FluoroNuncTMModule F16 Black-MaxisorpTM Surface plate , Nalge Nunc International社製)のウェルへ加えた。37℃で1時間放置し、その後、ウェルに加えておいた尿サンプル溶液をデカンテーションにより除去し、そのマイクロタイタープレートのウェルへ、洗浄液を200μL/ウェルで添加し、デカンテーションによる洗浄液の除去を行い、洗浄を行った。この洗浄工程を計3回行った。その後、ALP標識化抗ヒトメガリンCtailモノクローナル抗体(0.5ng/mL)溶液を100μL/ウェルで加えた。ALP標識化抗ヒトメガリンCtailモノクローナル抗体は標識抗体希釈液にて調製した。37℃で1時間放置し、その後、ウェルに加えておいたALP標識化抗体溶液をデカンテーションにより除去し、そのマイクロタイタープレートのウェルへ、洗浄液を200μL/ウェルで添加し、デカンテーションによる洗浄液の除去を行い、洗浄を行った。この洗浄工程を計4回行った。その後、そのマイクロタイタープレートのウェルへ、Assay Bufferを200μL/ウェルで添加し、デカンテーションによるAssay Bufferの除去を行い、洗浄を行った。この洗浄工程を計2回行った。次に、ウェルへCDP-Star(登録商標)Chemiluminescent Substrate for Alkaline Phosphatase Ready-to-Use (0.4mM) with Emerald-IITM Enhancer(ELISA-LightTM System:Applied Biosystems社製)をALP酵素反応基質溶液として、100μL/ウェルで加え、37℃、30分遮光放置した。その後直ちに、本ウェルの1秒間の積算発光強度を測定し、測定値を尿中完全長ヒトメガリン測定評価の指標とした。化学発光強度の測定には、Microplate Luminometer Centro LB960とMicroWin2000 software(Berthold社製)を用いた。検量線の標準品としては、腎臓から抽出したNative-ヒトメガリンを使用した。尚、実際の尿中ヒトメガリン測定の臨床結果については、図10および図11に示した。測定対象とした2型糖尿病性腎症患者(71例)、IgA腎症患者(81例)およびネフローゼ症候群患者(18例)の患者背景を表1に示す。この結果、尿中へ完全長のヒトメガリンの排泄が認められた(図10および11)。尚、尿中へのメガリン排泄量の評価に際しては、尿中メガリン濃度を尿中クレアチニン濃度で割って濃度補正したクレアチニン補正値を評価した。
【0055】
実施例6 尿中ヒトメガリン細胞内領域フラグメントの鑑別評価
実施例1の細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いて得られた細胞内領域を含むヒトメガリンの測定値とは、完全長ヒトメガリンとヒトメガリン細胞内領域フラグメントの総和を反映するものである。よって、実施例1で得られた細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中測定値から、実施例3で得られた完全長ヒトメガリンの尿中測定値を差引いたものが、尿中ヒトメガリン細胞内領域フラグメントの真(正味)の値となる。よって実施例1の測定値から実施例3の測定値を差引いた値を以って、腎疾患の診断の指標となり得るかを評価した。実施例1の細胞内領域を含むヒトメガリンの尿中測定値は実施例3で得られた完全長ヒトメガリンの尿中測定値に比して多く、一次の相関性があることから(図12)、尿中には細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントが完全長ヒトメガリンの排泄と関連した機序で排泄されることがわかった。また、該細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントの尿中排泄量の測定は、腎症の病態把握および診断に効果を奏するものと考えられた(図13〜16)。すなわち、細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントの尿中排泄量(真の値)は、2型糖尿病性腎症の障害の程度やIgA腎症の予後分類に応じて排泄増多が見られた。測定対象とした2型糖尿病性腎症患者(71例)、IgA腎症患者(81例)およびネフローゼ症候群患者(18例)の患者背景を表1に示す。2型糖尿病性腎症患者(71例)およびIgA腎症患者(81例)の病態の重篤度別の患者背景を表2および表3に示す。
【0056】
実施例7 尿中ヒトメガリン細胞外領域フラグメントの鑑別評価
実施例2の細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合し得るリガンドを用いて得られた細胞外領域を含むヒトメガリンの測定値とは、完全長ヒトメガリンとヒトメガリン細胞外領域フラグメントの総和を反映するものである。よって、実施例2で得られた細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中測定値から、実施例3で得られた完全長ヒトメガリンの尿中測定値を差引いたものが、尿中ヒトメガリン細胞外領域フラグメントの真(正味)の値となる。よって実施例2の測定値から実施例3の測定値を差引いた値を以って、腎疾患の診断の指標となり得るかを評価した。実施例2の細胞外領域を含むヒトメガリンの尿中測定値は実施例3で得られた完全長ヒトメガリンの尿中測定値に比して多く、相関性も無いことから(図17)、尿中には細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントが完全長ヒトメガリンの排泄とは独立した機序で多量に排泄されることがわかった。また、該細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントの尿中排泄量の測定は、腎症の病態把握および診断に効果を奏するものと考えられた(図18〜21)。測定対象とした2型糖尿病性腎症患者(71例)、IgA腎症患者(81例)およびネフローゼ症候群患者(18例)の患者背景を表1に示す。2型糖尿病性腎症患者(71例)およびIgA腎症患者(81例)の病態の重篤度別の患者背景を表2および表3に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿中に存在する以下の(i)〜(iii)の完全長ヒトメガリンまたはヒトメガリンのフラグメントの少なくとも1つのヒトメガリンを測定することを含む、腎疾患を検出する方法:
(i) 完全長ヒトメガリン;
(ii) ヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメント;または
(iii) ヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメント。
【請求項2】
尿中に存在する以下の(i)〜(iii)の完全長ヒトメガリンまたはヒトメガリンのフラグメントを測定し、(i)〜(iii)の完全長ヒトメガリンまたはヒトメガリンのフラグメントの尿中への排泄パターンを分析することを含む、腎疾患を検出する方法:
(i) 完全長ヒトメガリン;
(ii) ヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメント;および
(iii) ヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメント。
【請求項3】
完全長ヒトメガリンが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4655番目のアミノ酸配列からなる、請求項1または2に記載の腎疾患を検出する方法。
【請求項4】
ヒトメガリン細胞内領域フラグメントが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4655番目のアミノ酸配列、第4438番目から4655番目のアミノ酸配列の全部または一部からなる、請求項1または2に記載の腎疾患を検出する方法。
【請求項5】
ヒトメガリン細胞外領域フラグメントが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸配列、第26番目から314番目のアミノ酸配列、または第4362番目から4437番目のアミノ酸配列の全部または一部からなる、請求項1または2に記載の腎疾患を検出する方法。
【請求項6】
固相に結合したヒトメガリンに結合性を有する第1のリガンドと尿検体を反応させ、かつヒトメガリンに結合性を有する第2のリガンドと尿検体とを反応させ、尿検体中のヒトメガリンとヒトメガリンに結合性を有するリガンドとの複合体形成により固相に結合したヒトメガリンに結合性を有する第2のリガンドを測定するか、または尿検体と粒子に結合されたヒトメガリンに結合性を有するリガンドとを反応させ、免疫凝集反応を生起させた後、得られた凝集により前記ヒトメガリンを測定することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の腎疾患を検出する方法。
【請求項7】
第1のリガンドが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸配列、第26番目から314番目のアミノ酸配列からなるヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを認識する抗体であり、第2のリガンドが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4438番目から4655番目のアミノ酸配列、または第4447番目から4655番目のアミノ酸配列からなるヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを認識する抗体であるか、あるいは第1のリガンドが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4438番目から4655番目のアミノ酸配列、または第4447番目から4655番目のアミノ酸配列からなるヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを認識する抗体であり、第2のリガンドが配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸配列、第26番目から314番目のアミノ酸配列からなるヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを認識する抗体である請求項6記載の腎疾患を検出する方法。
【請求項8】
第1のリガンドおよび第2のリガンドが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第4362番目から第4655番目のアミノ酸配列ヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体であるか、第4438番目から4655番目のアミノ酸配列ヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体であるか、または第4447番目から4655番目のアミノ酸配列からなるヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体である、請求項6記載の腎疾患を検出する方法。
【請求項9】
第1のリガンドおよび第2のリガンドが、配列番号2に示すアミノ酸配列の第26番目から第4361番目のアミノ酸配列ヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体であるか、第26番目から314番目のアミノ酸配列ヒトメガリンの細胞内領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体であるか、または第4362番目から4437番目のアミノ酸配列からなるヒトメガリンの細胞外領域フラグメントを独立して認識する2種類の抗体である、請求項6記載の腎疾患を検出する方法。
【請求項10】
尿中のヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントの真の測定値を、ヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合するリガンドを用いた測定により得られた測定値から、完全長ヒトメガリンの測定値を差し引くことにより得る、請求項1〜9のいずれか1項に記載の腎疾患を検出する方法。
【請求項11】
尿中のヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントの真の測定値を、ヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合するリガンドを用いた測定により得られた測定値から、完全長ヒトメガリンの測定値を差し引くことにより得る、請求項1〜9のいずれか1項に記載の腎疾患を検出する方法。
【請求項12】
ヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントに結合するリガンドを用いた測定により得られた測定値を、尿中のヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメントの真の測定値とみなす、請求項1〜11のいずれか1項に記載の腎疾患を検出する方法。
【請求項13】
ヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントに結合するリガンドを用いた測定により得られた測定値を、尿中のヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメントの真の測定値とみなす、請求項1〜11のいずれか1項に記載の腎疾患を検出する方法。
【請求項14】
以下の(i)〜(iii)の完全長ヒトメガリンまたはヒトメガリンのフラグメントからなる、腎疾患検出用マーカー:
(i) 完全長ヒトメガリン;
(ii) ヒトメガリンの細胞外領域を欠いたヒトメガリン細胞内領域フラグメント;および
(iii) ヒトメガリンの細胞内領域を欠いたヒトメガリン細胞外領域フラグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−256250(P2010−256250A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108498(P2009−108498)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【出願人】(502285457)学校法人順天堂 (64)
【出願人】(591125371)デンカ生研株式会社 (72)
【Fターム(参考)】