屋根上パネルの装着具
【課題】部品点数が少なく強度が大きく、作業性、運搬や保管が容易であり、屋根上パネルを固定するための調節部材が斜面に沿って滑り落ち位置決めが困難または台無しになるトラブルが解消され、施工性が向上した屋根上パネルの装着具を提供する。
【解決手段】屋根上パネルを敷設材上に装着するための装着具1であって、固定部材2と調節部材5とからなり、前記固定部材2は前記調節部材5が摺動可能な摺動板2aと、固定金具を挿通可能な固定孔が穿設された下部板2bを有しており、前記調節部材5は前記屋根上パネルの周縁部を押圧可能な押圧手段5bと、前記摺動板2aの下面に配置され摺動可能な座板5aと、該押圧手段5bと該座板5aとを締結することにより前記固定部材2と前記押圧手段5bの間で屋根上パネルを挟持するための緊締手段5cと、前記摺動板2aを挟持して摺動板2a上における調節部材5の摺動を止める一時的に仮止め手段5dを有することを特徴とする屋根上パネルの装着具1である。
【解決手段】屋根上パネルを敷設材上に装着するための装着具1であって、固定部材2と調節部材5とからなり、前記固定部材2は前記調節部材5が摺動可能な摺動板2aと、固定金具を挿通可能な固定孔が穿設された下部板2bを有しており、前記調節部材5は前記屋根上パネルの周縁部を押圧可能な押圧手段5bと、前記摺動板2aの下面に配置され摺動可能な座板5aと、該押圧手段5bと該座板5aとを締結することにより前記固定部材2と前記押圧手段5bの間で屋根上パネルを挟持するための緊締手段5cと、前記摺動板2aを挟持して摺動板2a上における調節部材5の摺動を止める一時的に仮止め手段5dを有することを特徴とする屋根上パネルの装着具1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池モジュール等の屋根上パネルを屋根に固定するための装着具に関し、更に詳しくは、縦桟や横桟が不要で部品点数が少なく施工が容易であるとともに強度が強く、また、施工や運搬が容易な屋根上パネルの装着具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーコストの上昇により様々な代替エネルギーが求められているが、そのうちの1つとして、太陽エネルギーの利用が行われている。具体的には太陽光を直接電気に変換する太陽電池モジュール、太陽熱により水を温めて風呂の湯等として用いる太陽熱温水器、同じく空気を温めて暖房等に用いる空気集熱器等があるが、これらは通常パネル状のユニットとされて屋根の上に設置される(このパネル状のユニットを総称して屋根上パネルと称する)。
【0003】
このような屋根上パネルを瓦やスレート等の敷設材が敷設された屋根の上に設置する方法としては、従来、例えば長い縦桟の上に長い横桟を固着し、さらにその上に屋根上パネルを設置する取り付け構造(例えば特許文献1)や、屋根の斜面方向に伸びる取付金具の上に長い横桟を固着し、さらにその上に屋根上パネルを設置する支持装置(例えば特許文献2)が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記のような長尺の縦桟や横桟を使用する方法や構造では、部品点数が多くなりすぎ、組み立て作業が煩雑になるばかりでなく、部品の継ぎ目部分で壊れやすくなるため強度が低く耐久性が不十分となり、また、コスト高とならざるを得ない。また、縦桟と横桟があるため、配線ケーブルの配置が困難となるばかりでなく、屋根上の歩行も困難で、作業性が低下するという問題がある。更に、部品点数が多く且つ長尺物を使用するため、施工が困難であり、また、資材管理や、取り扱い性、保管や運搬も容易ではない。特に、これらの構造では縦桟の上に配された横桟の上に屋根上パネルが設置されるため、屋根と屋根上パネルとの隙間が大きくなり、この隙間に風が入り込むことにより、強風時には屋根上パネルが吹き飛ばされる恐れがあり、風の強い地方では使用が困難である。
【0005】
そこで、短尺の固定部材と当該固定部材の上を摺動する調節部材からなり、固定部材を屋根の上に固定してから調節部材で屋根上パネルを固定する構造の固定具も提案されている(例えば特許文献3)。この固定具及びこの固定具を用いた固定方法は部品点数が少なく、施工性が良好であるとともに、部品の継ぎ目部分が少なくなるので耐久性に優れ、また、配線ケーブルの配置や屋根上の歩行も容易であり、取り扱い性が良好で保管や運搬が容易である等、これまでの取り付け方法より非常に優れている。
しかしながら、通常の場合、この固定具における調節部材の摺動方向と屋根の傾斜方向が一致しているので、屋根上パネルを取り付ける際に、一つの固定具の調節部材を適当な位置に配置しても、他の固定具の調節部材の位置決めをしている間に、先に位置決めした固定具の調節部材が斜面に沿って滑り落ちて、位置決めをやり直す必要が生じることがある。その他にも、取り扱い中や運搬中に調節部材が脱落したり、固定部材が調節部材の脱落を防ぐための端面板を有する場合には該端面板に当接して音をたてるなどの問題を含んでおり、さらなる改良の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−343058号公報(図1)
【特許文献2】特開2006−322233号公報(図4)
【特許文献3】特開2010−24668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑み、上記従来技術の問題点を解決し、部品点数が少なく、施工性が良好であるとともに、部品の継ぎ目部分が少なくなるので耐久性に優れ、また、配線ケーブルの配置や屋根上の歩行も容易であり、取り扱い性が良好で保管や運搬が容易なだけでなく、調節部材が不意に滑り落ちるのを防止して施工性をさらに向上させることができる屋根上パネルの装着具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の特徴の第1は、屋根上パネルを敷設材上に装着するための装着具であって、固定部材と調節部材とからなり、前記固定部材は前記調節部材が摺動可能な摺動板と、固定金具を挿通可能な固定孔が穿設された下部板を有しており、前記調節部材は前記屋根上パネルの周縁部を押圧可能な押圧手段と、前記摺動板の下面に配置され摺動可能な座板と、該押圧手段と該座板とを締結することにより前記固定部材と前記押圧手段の間で屋根上パネルを挟持するための緊締手段と、前記摺動板を挟持して摺動板上における調節部材の摺動を止める仮止め手段を有する屋根上パネルの装着具を内容とする。
【0009】
本発明の特徴の第2は、固定孔にはブロック状の粘土状粘着剤が配置されている上記の屋根上パネルの装着具を内容とする。
【0010】
本発明の特徴の第3は、粘土状粘着剤がブチルゴムからなる上記の屋根上パネルの装着具を内容とする。
【0011】
本発明の特徴の第4は、下部板の下に緩衝材が設けられているとともに、該緩衝材には前記下部板の固定孔と連通する連通孔が設けられている上記の屋根上パネルの装着具を内容とする。
【0012】
本発明の特徴の第5は、前側の敷設材の尻部の上に後側の敷設材の頭部を重ねて敷設材が敷設されている屋根に取り付ける屋根上パネルの装着具であって、固定部材の長さは前後に配置される2枚の敷設材の頭部の間隔よりも長いことを特徴とする上記の屋根上パネルの装着具を内容とする。
【0013】
本発明の特徴の第6は、押圧手段の下にアース用通電板が設けられており、該アース用通電板の前部及び後部に屋根上パネルの絶縁皮膜を貫通又は破壊可能な爪部が設けられている上記の屋根上パネルの装着具を内容とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の屋根上パネルの装着具は、摺動板を挟持して摺動板上における調節部材の摺動を一時的に止める仮止め手段を有するので、一の調節部材を位置決めした後、他の調節部材を位置決めしている間に、先に位置決めした調節部材が斜面に沿って滑り落ちてしまう不都合が解消され、施工性が向上する。また、取り扱い中や運搬中に調節部材が固定部材から脱落したり、固定部材が調節部材の脱落を防ぐための端面板を有する場合には、該端面板に当接して音をたてるといった問題も解消される。
【0015】
固定孔にブロック状の粘土状粘着剤(以後、粘着剤ブロックと称することがある)を配置すれば、ビス等の固定金具を打ち込む際に、固定金具の先端に粘着剤ブロックが付着するので、敷設材と固定金具の間に粘着剤が入り込むと同時に、固定金具が打ち込まれた箇所の周囲で野地板(通常、野地板の上には、防水のためのルーフィング材が敷設されるので、厳密にはルーフィング材又はルーフィング材と野地板)の上に粘着剤が盛り上がって固定金具と野地板との隙間を塞ぐので、止水性が顕著に向上する。
また、施工時に粘着剤をコーキングガン等で注入する従来の方法と異なり、粘着剤の量が足りなかったり、粘着剤を盛り上げる場所が適正でなかったり、粘着剤の注入を失念する不都合が防止され、確実に止水できる。
なお、粘土状粘着剤としてはブチルゴムからなる粘着剤が好適に使用できる。
【0016】
下部板の下に緩衝材を設ければ、敷設材上に取り付けた際にもガタツキがなく、固定金具を強く打ち付けたような場合でも敷設材を傷つけにくくなり、また、緩衝材の摩擦力により取り付け前の装着具が敷設材の上を滑り落ちるような不都合を回避できる。また、固定孔に粘着剤ブロックを配置した場合に、この緩衝材に固定孔と連通する孔を設ければ、この孔が粘着剤ブロックを保護する役割を果たし、当該粘着剤ブロックが不要な箇所に接着したり、他の工具を汚したりする不都合が回避できる。
【0017】
固定部材の長さを、前後に配置される2枚の敷設材の頭部の間隔よりも長くすれば、当該固定部材を2つの敷設材の頭部に架設するだけで、当該固定部材を野地板と平行にすることができ、多数の装着具を設置する場合でも、これらを同一平面上に配置するのが容易なので、屋根上パネルの設置も容易になる。
【0018】
押圧手段の下に、屋根上パネルの絶縁皮膜を貫通又は破壊可能な爪部を設けたアース用通電板を設ければ、一番下の屋根上パネルにだけアース配線を設ければ、全ての屋根上パネルをアースしたのと同様の効果が得られ、アース配線を単純化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の屋根上パネルの装着具の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は図1のA−A断面図である。
【図3】図3は図1のB−B断面図である。
【図4】図4(a)は図1の装着具における固定部材の平面図であり、(b)はその一部切除側面図である。
【図5】図5(a)は緩衝材を設けた固定部材の例を示す説明断面図であり、(b)は緩衝材及びブロック状の粘土状粘着剤を設けた固定部材の例を示す説明断面図である。
【図6】図6(a)は調節部材の一例を示す正面図であり、(b)はその平面図、(c)はその底面図である。
【図7】図7は調節部材の別の例を示す正面図である。
【図8】図8は本発明の屋根上パネルの装着具を用いてパネルを装着する方法において、固定孔の下に位置する敷設材(化粧スレート板)に固定金具を挿通するための挿通孔を穿設した状態を示す説明図である。
【図9】図9は本発明の屋根上パネルの装着具を用いてパネルを装着する方法において、前後の敷設材の頭部に本発明の装着具を架設した状態を示す説明図である。
【図10】図10は本発明の屋根上パネルの装着具を用いてパネルを装着する方法において、固定孔及び挿通孔に挿通した固定金具を野地板に打ち込んだ状態を示す説明図である。
【図11】図11は本発明の屋根上パネルの装着具を用いてパネルを装着する方法において、パネルの位置に応じて調節部材の位置決めをして仮止め部材で仮止めした状態を示す説明図である。
【図12】図12は本発明の屋根上パネルの装着具を用いてパネルを装着する方法において、緊締手段を締め込み、調節部材の押圧手段と固定部材の載置部との間にアース用通電板を介して屋根上パネルを固定し、装着が完了した状態を示す説明図である。
【図13】図13は最前列及び最後列の屋根上パネルを固定する場合の屋根上パネルの装着具の一例を示す説明図である。
【図14】図14は敷設材として瓦を用い、その上に屋根上パネルを装着した例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の屋根上パネルの装着具は、屋根上パネルを化粧スレート板や瓦等の敷設材上に装着するためのものであり、例えば図1乃至図4に示したように、固定部材2は調節部材5が摺動可能な摺動板2aと、固定金具Vを挿通可能な固定孔2b1が穿設された下部板2bを有しており、調節部材5は屋根上パネルの周縁部を押圧可能な押圧手段5bと、前記摺動板2aの下面に配置され摺動可能な座板5aと、該押圧手段5bと該座板5aとを締結することにより固定部材2と押圧手段5bの間で屋根上パネルを挟持するための緊締手段5cと、摺動板2aを挟持して摺動板2a上における調節部材5の摺動を止める一時的に仮止め手段5dを有することを特徴とする。
【0021】
本発明において固定部材2は、少なくとも摺動板2aと、下部板2bを有している。
本発明において摺動板2aは調節部材5を固定部材2の長さ方向に摺動させるための部材であり、その構造は調節部材5が摺動可能である限り、特に限定されないが、図示した例では、摺動板2aは下部板2bから立設される2枚の側板2cの内壁から対向するように横設され、対向する摺動板2aの間の部分が長溝2aLが形成されており、緊締手段等の動きがこの長溝2aLによって規制されることにより、調節部材5の摺動方向が規制されるように構成されている。
【0022】
本発明において下部板2bは固定部材2の底板になる部分であり、図4に示すように、複数の固定孔2b1が直線状に穿設されている。
本発明において、固定孔2b1は固定部材2と敷設材Tを固定するための固定金具Vを挿通するための貫通孔である(図10参照)。固定孔2b1は下部板2bに少なくとも2個設けられるが、例えば5cm程度の間隔をあけて多数個(具体的な個数は固定部材2の長さにより異なる)の固定孔2b1を列設すれば、屋根上パネルの周縁部が配置される位置に応じて使用する固定孔2b1を変えて、固定部材2を固着する位置をずらせて調整できるので好ましい。
【0023】
本発明において固定部材2の上端付近に、屋根上パネルPを載置するための載置部2cPが設けられる。図示した例において、載置部2cPは前記下部板2bの長辺側の端縁から立設された側板2cの上端から水平方向に外側に延設されているが、これに限定されず、内側、又は内外両側に延設してもよい。このようにすれば、載置部2cPの屋根上パネルとの接触面積が大きくなるので屋根上パネルを安定的に載置、固定できるばかりでなく、また、固定部材2を補強する効果も得ることができる。勿論、水平方向に延設せずに側板2cの上端をそのまま載置部2cPとして使用することもできる。
【0024】
さらに、本発明では、調節部材5を固定部材2と組み合わせる際に、摺動板2aの下に配置される座板5aを仮置きして組み立て易くするための仮置き板2dを設けることができる。仮置き板2dは前記摺動板2aの下に、前記摺動板2aと同様の態様で設けられている。
【0025】
本発明においては、図示するように、調節部材5が脱落するのを防ぐための端面板2eを固定部材2の長さ方向端面に設けることもできる。但し、この場合、雨水等が固定部材の内部に溜まる恐れがあるので、端面板2eと固定部材2の境界付近の下部板2bに排水口2b2を設けるのが好ましい。
【0026】
固定部材2の長さは特に限定されないが、取り扱い性や作業性、更には配線ケーブルの設置の容易性、屋根上の歩行の容易性からは、50cm以下程度が好ましい。また、例えば、図4で示したように、2個以上の固定孔2b1を等間隔に列設して固定位置を調節可能とすれば、20cm以下程度にまで小さくすることも可能である。
但し、固定部材2の長さを前後に配置される2枚の敷設材Tの頭部T1の間隔よりも長くすれば、後述の理由により、屋根上パネルPを敷設材Tの上に装着するのが容易になるので、結局、固定部材2の長さは、前後に配置される敷設材Tの頭部T1の間隔より長く、且つ50cm以下とするのが好ましい。
【0027】
本発明においては、固定孔2b1にブロック状の粘土状粘着剤3(以後、粘着剤ブロック3と称することがある)を配置、好ましくは粘着剤ブロック3を固定孔2b1の下側に配置することができる。このようにすれば、固定孔2b1に固定金具Vを挿通する際に、粘着剤ブロック3が固定金具Vに付着して随伴し、敷設材Tや野地板Bと固定金具Vの隙間をシーリングするので、止水性が良好になる。
粘着剤ブロック3を配置する方法は特に限定されないが、例えば図2、図3に示されるように、粘土状粘着剤を球状に丸めて、この粘着剤ブロック3を下側から固定孔2b1に押し込んで、粘着剤ブロック3の一部が固定孔2b1のなかに入り込んで嵌着された状態にする方法が例示できる。このようにすれば、粘着剤ブロック3が固定孔2b1から脱落することがないので、作業性が高まる。
【0028】
粘土状粘着剤としては特に限定されず、固定孔2b1の下に配置された粘着剤ブロック3が容易に液状にならず、固定金具Vとの接着性が良好で、敷設材Tに挿通孔T3を開けて固定金具Vを通せば粘土状粘着剤が固定金具Vに付着したまま敷設材Tの挿通孔T3と固定金具Vの隙間を通る程度の流動性を呈する物質であればどのようなものでも使用できるが、中でもブチルゴム系粘着剤が好ましい。市販品としては、例えば、SEALER社製ブチルリボンテープ(φ5×30mm)が好適に使用できる。なお、このブチルリボンテープを用いる場合には、1本のブチルリボンテープを2枚の樹脂製の板の間でこねて丸め、ブロック状にしてから使用すると、好適に粘着剤ブロック3を固定孔2b1に嵌着できる。
なお、粘土状粘着剤の量は、固定孔及び固定金具のサイズ、即ち、両者間の隙間等にもよるが、通常、0.3〜0.7g/個程度が好ましく、約0.5g/個が更に好ましい。粘土状粘着剤の量が基準量の0.3g/個より少ないと野地板Bと固定金具Vの止水性が劣る傾向があり、0.7g/個より多ければ止水性はそれ以上改良されずにコストだけ上昇する傾向がある。
【0029】
本発明において、下部板2bの下には、図5(a)に示すように、緩衝材4を設けることもできる。これにより、装着具1を取り付ける際に該装着具1を敷設材Tに強く締め付けても敷設材Tが破損する心配がないので、作業性が高められる。また、シール性が付与され、雨水の浸入が阻止される効果もある。このような緩衝材としては、EPDMシーラー、軟質ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等が挙げられる。
なお、固定孔2b1の下に前記した粘着剤ブロック3を配置してさらに緩衝材4を設ける場合には、図2、図3に示すように、緩衝材4に前記固定孔2b1と連通する連通孔4Hを設けるほうが好ましい。このようにすれば、粘着剤ブロック3が連通孔4Hのなかに入り込むので、下部板2b側を下にして本発明の装着具1を床上等に置いた場合でも、粘土状粘着剤が床面に接着するといったトラブルが防止される。
但し、連通孔4Hは、かならずしも緩衝材4を貫通している必要はなく、例えば図5(b)に示すように底を有する窪みであってもよく、このような窪みからなる場合は、粘着剤ブロック3を固定孔2b1に嵌着する必要はなく、単に連通孔4Hのなかに粘着剤ブロック3を収容してから、緩衝材4を下部板2bに接着すればよい。
【0030】
本発明において調節部材5は、図6に示したように、座板5aと、押圧手段5bと、両者を接結する緊締手段5cと、仮止め手段5dを有する。
本発明において押圧手段5bとは、屋根上パネルの周縁部を押圧して固定するための手段であり、その形状は屋根上パネルの周縁部を押圧可能である限り特に限定されないが、例えば図6(a)に示されるような、断面U字状の基部5b1の両端から板状の押え部5b2が横設された形状にすれば、周縁部に係止バー等が設けられていない屋根上パネルであっても装着が可能であり、緊締手段5cも断面U字状の基部の中に納まり、美観にも優れるので好ましい。周縁部に係止バーPbが設けられている屋根上パネルPの場合は、図7に示すように、断面逆U字状の押圧手段5bを用いて、係止バーPbのみを押えるようにしてもよい。
なお、図6に示した例において、基部5b1の前側及び後側に設けられた押え部5b2はそれぞれ前側及び後側に配置された屋根上パネルの周縁部を押圧して、1つの調節部材5で前後2枚の屋根上パネルPを固定できるようになっている。
【0031】
また、断面U字状の基部5b1の両端から板状の押え部5b2が横設された形状の押圧手段を単独で用いた場合、基部5b1の高さが小さいと、施工時において足場の悪い現場で、押圧手段5bを屋根上パネルPの高さまで持ち上げる手間が煩雑であり、逆に基部5b1の高さが大きいと、当該基部5b1の高さより薄い屋根上パネルPに対して使用できず汎用性に欠ける。この二律背反する欠点を解消するため、図6に示したように、ナットを高さ調節部5b3として用い、基部5b1の高さを小さくして、使用する屋根上パネルの厚さに応じて高さ調節部5b3を移動させ、予め適当な高さまで押圧手段5bを持ち上げるように構成されているのが好ましい(図6(a)参照)。
【0032】
本発明において緊締手段5cとは、固定部材2の座板5aと押圧手段5bの間で屋根上パネルPを挟持するための手段であり、通常はボルト5c1及びナット5c2が用いられるが、本発明の目的を達成できる限り、これには限定されない。
【0033】
本発明において仮止め手段5dは、座板5aとの間で摺動板2aを挟持して摺動板2a上における調節部材5の摺動を一時的に止めるための手段である。図6において、仮止め手段5dは小板5d1とボルト5d2からなり、座板5aに雌ネジを切って、必要に応じボルト5d2を締め込むことにより、小板5d1と座板5aの間で摺動板2aを挟持するように構成されているが、これには限定されず、例えばクリップのような構造で常に弱い挟圧力(重力により自然に滑り落ちることはないが、手で容易に動かすことが出来る程度の挟圧力)で挟持するようにしてもよい。また、ボルト5d2を蝶ネジタイプとすることにより、工具を必要とすることなく手で操作できるので、作業性が良好になる。
【0034】
本発明においては、図6に示すように、押圧手段5bの下にアース用通電板5eを配置することにより、前後の屋根上パネルPの外装材を電気的に接続して、アース配線を簡略化することができる。このアース用通電板5eは前部及び後部に屋根上パネルPの絶縁皮膜を貫通できる程度の爪部5eCが設けられており、屋根上パネルPと固定部材2の間に介設されるように配置される。そして、緊締手段5cを締め込んだ際にその挟圧力を利用して爪部5eCが屋根上パネルPの絶縁皮膜を貫通又は破壊して、前後の屋根上パネルPの外装材を電気的に接続するように構成されている。このようにすれば、最も下の屋根上パネルだけにアース配線を設ければ、本発明の装着具1により固定された全ての屋根上パネルをアースしたのと同様の効果が得られるので、全ての屋根上パネルにアース配線を設けるような煩雑さを避けることができる。
【0035】
本発明における固定部材2、調節部材5の材質は特に限定されず、アルミニウム、鉄(防錆処理した)、銅、ステンレス等の金属や、ABS(アクリロニトリル- ブタジエン- スチレン共重合樹脂)、AAS樹脂(アクリロニトリル/アクリルゴム/スチレン)、AES樹脂(アクリロニトリル/エチレンプロピレンゴム/スチレン)、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン)、PS樹脂(ポリスチレン樹脂)、PMMA樹脂、PVC樹脂、MS樹脂(メチルメタクリレート/スチレン樹脂)、PP(ポリプロピレン樹脂)、PE(ポリエチレン樹脂)、PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)およびPC樹脂(ポリカーボネート樹脂)等の樹脂等が使用可能であるが、屋根上パネルPを好適に支持し固定できる剛性を有する点で金属が好ましく、軽量で耐腐食性が高いアルミニウムが最も好ましい。固定部材2及び調節部材5の押圧手段5bについては、アルミニウムの押出成形品が好ましい。
【0036】
以下、上記のような屋根上パネルの装着具1を用いて、化粧スレート板からなる敷設材Tの上に屋根上パネルPを装着する方法について説明する。
なお、以下の図において、野地板上のルーフィング材は省略されている。また、水平状に記載されている場合の流れ勾配は、図9の場合と同様に、図面上右から左の方向である。
図8に示すように、最初に、本発明の装着具1を敷設材Tの上に固定する。但し、本発明の屋根上パネルの装着具1は、複数個(通常は4個)で1枚の屋根上パネルPを支持固定するので、それぞれの屋根上パネルの装着具1(特に、載置部2cP)は同一平面上にある必要があるが、通常、敷設材はその頭部T1を前側に敷設された敷設材の尻部T2の上に重ねて配置するため、その勾配は野地板の勾配よりも小さくなり、一枚の敷設材Tの上に一つの装着具1を直接設置しようとすれば、それぞれの載置部2cPは、同一平面上にはならず、屋根上パネルを容易には設置できない。従って、載置部2cPを同一平面上に配置するために、載置部2cPを野地板Bと平行になるように工夫したほうが、屋根上パネルを簡単に設置できるようになるので好ましい。なお、図8では、頭部と尻部との差があまり明確でない化粧スレート板を用いるとともに、要部を拡大して示しているためわかりにくいので、頭部と尻部との差が明確な瓦を用いて示した図9を参照されたい。
載置部2cPと野地板Bを平行にする方法としては、特開2010−24668号公報(図9)に記載されているような勾配調整部材を屋根瓦と装着具1の間に介設する方法、特開2010−209541号公報(図1)に記載されているような、上面が野地板Bと平行になるように計算して設けられた台座部を有する瓦を用いる方法等が例示できるが、例えば図9に示したように、固定部材2の長さを前後に配置される2枚の敷設材の頭部T1の間隔よりも長くし、前後の頭部T1の間に固定部材2を架設すれば、容易に載置部2cPと野地板Bを平行にすることが出来る。
【0037】
また、本発明において、緊締手段5cにより締め込む前は、調節部材5は摺動板2aの上で固定部材2の長さ方向に自在に摺動可能である。従って、本発明の装着具1で屋根上パネルを固定する際には、固定部材2の位置合わせは載置部2cPの上に屋根上パネルの周縁部が載る程度の精度で十分であり、その後に調節部材5を摺動させて精密な位置合わせをすればよい。
【0038】
装着具1を敷設材Tの上に固定するには、まず、上記図8に示すように、敷設材Tに挿通孔T3を穿設して、固定孔2b1の位置と挿通孔T3の位置を合わせる。
次に、図10に示すように、固定金具Vを固定孔2b1と挿通孔T3に通して、野地板Bに固定金具Vを打ち込む。この際、固定孔2b1に粘着剤ブロック3が配置されている場合は、この粘着剤ブロック3が固定金具Vに付着し、挿通孔T3と固定金具Vの隙間で引き伸ばされて、固定金具Vの周囲が粘土状粘着剤で覆われるが、固定金具Vが野地板Bに打ち込まれる際に粘土状粘着剤は野地板Bと固定金具Vの隙間付近に団子状に盛り上がる。この結果、挿通孔T3と固定金具Vの隙間、及び野地板Bと固定金具Vの隙間はともに粘土状粘着剤により埋められるので、止水性が向上する。
【0039】
次に、装着具1に屋根上パネルPを固定するが、そのためにはまず、図11に示すように、屋根上パネルを設置する位置に応じて調節部材5の位置決めをしてから、仮止め手段5dと座板5aとの間に摺動板2aを挟み、調節部材5が摺動板2a上を不意に移動しないように仮止めする。
次に、図12に示すように、屋根上パネルPを固定部材2の載置部2cPと押圧手段5bの間に配置して緊締手段5cを締め込むことにより、屋根上パネルPの敷設材T上への装着が完了する。なお、この際にアース用通電板5eが設けられている場合は、緊締手段5cを締め込む際に爪部5eCが屋根上パネルPの底部に食い込んで絶縁皮膜を貫通又は破壊し、これにより屋根上パネルPの外装材が電気的に接続される。従って、一番下の屋根上パネルにだけアース配線を設ければ、全ての屋根上パネルPがアースされるので、配線作業が容易になる。
【0040】
なお、最前列及び最後列の屋根上パネルPを固定する場合、図6に示したような押え部5b2を前後両方に有する押圧手段5を用いれば、押圧手段5が傾いてしまい、屋根上パネルPを強固に固定できなくなる場合がある。このような場合は、図13に示したように、使用しない押え部5b2の下に屋根上パネルPの厚さと同じ高さの端部材5b4を設けて、前後のバランスをとればよい。端部材5b4の形状は特に限定されないが、断面L字型に屈折させた板状部材が例示できる。
【0041】
図14は、敷設材Tとして、化粧スレート板に代えて瓦を用い、屋根上パネルPを敷設材T上へ装着した場合の一例を示す。本例では、粘着剤ブロック3が固定金具Vに付着した状態で、固定金具Vと野地板Bとの隙間のみならず、固定金具Vと瓦との隙間も塞がれ、瓦内に水が入りにくい状態とされている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
上記したとおり、本発明の屋根上パネルの装着具は、縦桟や横桟等の長尺物を使用することなく、直接屋根上パネルを設置できるので施工が容易であるとともに、構造が簡単で継目が少ないため強度が大きく耐久性に優れている。また、仮止め手段を設けたことにより位置決めした調節部材が摺動板上を移動して位置決めが困難又は台無しになるといったトラブルが解消されて、施工性が格段に向上する。
更に、アース用通電板を使用することにより、本発明の装着具により屋根上パネルを装着すると同時にアースすることが可能となり、作業性が一層向上する。
更にまた、固定部材の下部板の固定孔にブロック状の粘土状粘着剤を配置することにより、固定金具を野地板に打ち込むと同時に粘土状粘着剤が野地板と固定金具との隙間を塞ぐので止水性が高められる。
【符号の説明】
【0043】
1 屋根上パネルの装着具
2 固定部材
2a 摺動板
2aL 長溝
2b 下部板
2b1 固定孔
2b2 排水口
2c 側板
2cP 載置部
2d 仮置き板
2e 端面板
3 ブロック状の粘土状粘着剤(粘着剤ブロック)
4 緩衝材
4H 連通孔又は窪み
5 調節部材
5a 座板
5b 押圧手段
5b1 基部
5b2 押え部
5b3 高さ調節部
5b4 端部材
5c 緊締手段
5c1 ボルト
5c2 ナット
5d 仮止め手段
5d1 小板
5d2 ボルト
5e アース用通電板
5eC 爪部
B 野地板
P 屋根上パネル
Pb 係止バー
T 敷設材
T1 頭部
T2 尻部
T3 挿通孔
V 固定金具
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池モジュール等の屋根上パネルを屋根に固定するための装着具に関し、更に詳しくは、縦桟や横桟が不要で部品点数が少なく施工が容易であるとともに強度が強く、また、施工や運搬が容易な屋根上パネルの装着具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーコストの上昇により様々な代替エネルギーが求められているが、そのうちの1つとして、太陽エネルギーの利用が行われている。具体的には太陽光を直接電気に変換する太陽電池モジュール、太陽熱により水を温めて風呂の湯等として用いる太陽熱温水器、同じく空気を温めて暖房等に用いる空気集熱器等があるが、これらは通常パネル状のユニットとされて屋根の上に設置される(このパネル状のユニットを総称して屋根上パネルと称する)。
【0003】
このような屋根上パネルを瓦やスレート等の敷設材が敷設された屋根の上に設置する方法としては、従来、例えば長い縦桟の上に長い横桟を固着し、さらにその上に屋根上パネルを設置する取り付け構造(例えば特許文献1)や、屋根の斜面方向に伸びる取付金具の上に長い横桟を固着し、さらにその上に屋根上パネルを設置する支持装置(例えば特許文献2)が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記のような長尺の縦桟や横桟を使用する方法や構造では、部品点数が多くなりすぎ、組み立て作業が煩雑になるばかりでなく、部品の継ぎ目部分で壊れやすくなるため強度が低く耐久性が不十分となり、また、コスト高とならざるを得ない。また、縦桟と横桟があるため、配線ケーブルの配置が困難となるばかりでなく、屋根上の歩行も困難で、作業性が低下するという問題がある。更に、部品点数が多く且つ長尺物を使用するため、施工が困難であり、また、資材管理や、取り扱い性、保管や運搬も容易ではない。特に、これらの構造では縦桟の上に配された横桟の上に屋根上パネルが設置されるため、屋根と屋根上パネルとの隙間が大きくなり、この隙間に風が入り込むことにより、強風時には屋根上パネルが吹き飛ばされる恐れがあり、風の強い地方では使用が困難である。
【0005】
そこで、短尺の固定部材と当該固定部材の上を摺動する調節部材からなり、固定部材を屋根の上に固定してから調節部材で屋根上パネルを固定する構造の固定具も提案されている(例えば特許文献3)。この固定具及びこの固定具を用いた固定方法は部品点数が少なく、施工性が良好であるとともに、部品の継ぎ目部分が少なくなるので耐久性に優れ、また、配線ケーブルの配置や屋根上の歩行も容易であり、取り扱い性が良好で保管や運搬が容易である等、これまでの取り付け方法より非常に優れている。
しかしながら、通常の場合、この固定具における調節部材の摺動方向と屋根の傾斜方向が一致しているので、屋根上パネルを取り付ける際に、一つの固定具の調節部材を適当な位置に配置しても、他の固定具の調節部材の位置決めをしている間に、先に位置決めした固定具の調節部材が斜面に沿って滑り落ちて、位置決めをやり直す必要が生じることがある。その他にも、取り扱い中や運搬中に調節部材が脱落したり、固定部材が調節部材の脱落を防ぐための端面板を有する場合には該端面板に当接して音をたてるなどの問題を含んでおり、さらなる改良の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−343058号公報(図1)
【特許文献2】特開2006−322233号公報(図4)
【特許文献3】特開2010−24668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑み、上記従来技術の問題点を解決し、部品点数が少なく、施工性が良好であるとともに、部品の継ぎ目部分が少なくなるので耐久性に優れ、また、配線ケーブルの配置や屋根上の歩行も容易であり、取り扱い性が良好で保管や運搬が容易なだけでなく、調節部材が不意に滑り落ちるのを防止して施工性をさらに向上させることができる屋根上パネルの装着具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の特徴の第1は、屋根上パネルを敷設材上に装着するための装着具であって、固定部材と調節部材とからなり、前記固定部材は前記調節部材が摺動可能な摺動板と、固定金具を挿通可能な固定孔が穿設された下部板を有しており、前記調節部材は前記屋根上パネルの周縁部を押圧可能な押圧手段と、前記摺動板の下面に配置され摺動可能な座板と、該押圧手段と該座板とを締結することにより前記固定部材と前記押圧手段の間で屋根上パネルを挟持するための緊締手段と、前記摺動板を挟持して摺動板上における調節部材の摺動を止める仮止め手段を有する屋根上パネルの装着具を内容とする。
【0009】
本発明の特徴の第2は、固定孔にはブロック状の粘土状粘着剤が配置されている上記の屋根上パネルの装着具を内容とする。
【0010】
本発明の特徴の第3は、粘土状粘着剤がブチルゴムからなる上記の屋根上パネルの装着具を内容とする。
【0011】
本発明の特徴の第4は、下部板の下に緩衝材が設けられているとともに、該緩衝材には前記下部板の固定孔と連通する連通孔が設けられている上記の屋根上パネルの装着具を内容とする。
【0012】
本発明の特徴の第5は、前側の敷設材の尻部の上に後側の敷設材の頭部を重ねて敷設材が敷設されている屋根に取り付ける屋根上パネルの装着具であって、固定部材の長さは前後に配置される2枚の敷設材の頭部の間隔よりも長いことを特徴とする上記の屋根上パネルの装着具を内容とする。
【0013】
本発明の特徴の第6は、押圧手段の下にアース用通電板が設けられており、該アース用通電板の前部及び後部に屋根上パネルの絶縁皮膜を貫通又は破壊可能な爪部が設けられている上記の屋根上パネルの装着具を内容とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の屋根上パネルの装着具は、摺動板を挟持して摺動板上における調節部材の摺動を一時的に止める仮止め手段を有するので、一の調節部材を位置決めした後、他の調節部材を位置決めしている間に、先に位置決めした調節部材が斜面に沿って滑り落ちてしまう不都合が解消され、施工性が向上する。また、取り扱い中や運搬中に調節部材が固定部材から脱落したり、固定部材が調節部材の脱落を防ぐための端面板を有する場合には、該端面板に当接して音をたてるといった問題も解消される。
【0015】
固定孔にブロック状の粘土状粘着剤(以後、粘着剤ブロックと称することがある)を配置すれば、ビス等の固定金具を打ち込む際に、固定金具の先端に粘着剤ブロックが付着するので、敷設材と固定金具の間に粘着剤が入り込むと同時に、固定金具が打ち込まれた箇所の周囲で野地板(通常、野地板の上には、防水のためのルーフィング材が敷設されるので、厳密にはルーフィング材又はルーフィング材と野地板)の上に粘着剤が盛り上がって固定金具と野地板との隙間を塞ぐので、止水性が顕著に向上する。
また、施工時に粘着剤をコーキングガン等で注入する従来の方法と異なり、粘着剤の量が足りなかったり、粘着剤を盛り上げる場所が適正でなかったり、粘着剤の注入を失念する不都合が防止され、確実に止水できる。
なお、粘土状粘着剤としてはブチルゴムからなる粘着剤が好適に使用できる。
【0016】
下部板の下に緩衝材を設ければ、敷設材上に取り付けた際にもガタツキがなく、固定金具を強く打ち付けたような場合でも敷設材を傷つけにくくなり、また、緩衝材の摩擦力により取り付け前の装着具が敷設材の上を滑り落ちるような不都合を回避できる。また、固定孔に粘着剤ブロックを配置した場合に、この緩衝材に固定孔と連通する孔を設ければ、この孔が粘着剤ブロックを保護する役割を果たし、当該粘着剤ブロックが不要な箇所に接着したり、他の工具を汚したりする不都合が回避できる。
【0017】
固定部材の長さを、前後に配置される2枚の敷設材の頭部の間隔よりも長くすれば、当該固定部材を2つの敷設材の頭部に架設するだけで、当該固定部材を野地板と平行にすることができ、多数の装着具を設置する場合でも、これらを同一平面上に配置するのが容易なので、屋根上パネルの設置も容易になる。
【0018】
押圧手段の下に、屋根上パネルの絶縁皮膜を貫通又は破壊可能な爪部を設けたアース用通電板を設ければ、一番下の屋根上パネルにだけアース配線を設ければ、全ての屋根上パネルをアースしたのと同様の効果が得られ、アース配線を単純化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の屋根上パネルの装着具の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は図1のA−A断面図である。
【図3】図3は図1のB−B断面図である。
【図4】図4(a)は図1の装着具における固定部材の平面図であり、(b)はその一部切除側面図である。
【図5】図5(a)は緩衝材を設けた固定部材の例を示す説明断面図であり、(b)は緩衝材及びブロック状の粘土状粘着剤を設けた固定部材の例を示す説明断面図である。
【図6】図6(a)は調節部材の一例を示す正面図であり、(b)はその平面図、(c)はその底面図である。
【図7】図7は調節部材の別の例を示す正面図である。
【図8】図8は本発明の屋根上パネルの装着具を用いてパネルを装着する方法において、固定孔の下に位置する敷設材(化粧スレート板)に固定金具を挿通するための挿通孔を穿設した状態を示す説明図である。
【図9】図9は本発明の屋根上パネルの装着具を用いてパネルを装着する方法において、前後の敷設材の頭部に本発明の装着具を架設した状態を示す説明図である。
【図10】図10は本発明の屋根上パネルの装着具を用いてパネルを装着する方法において、固定孔及び挿通孔に挿通した固定金具を野地板に打ち込んだ状態を示す説明図である。
【図11】図11は本発明の屋根上パネルの装着具を用いてパネルを装着する方法において、パネルの位置に応じて調節部材の位置決めをして仮止め部材で仮止めした状態を示す説明図である。
【図12】図12は本発明の屋根上パネルの装着具を用いてパネルを装着する方法において、緊締手段を締め込み、調節部材の押圧手段と固定部材の載置部との間にアース用通電板を介して屋根上パネルを固定し、装着が完了した状態を示す説明図である。
【図13】図13は最前列及び最後列の屋根上パネルを固定する場合の屋根上パネルの装着具の一例を示す説明図である。
【図14】図14は敷設材として瓦を用い、その上に屋根上パネルを装着した例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の屋根上パネルの装着具は、屋根上パネルを化粧スレート板や瓦等の敷設材上に装着するためのものであり、例えば図1乃至図4に示したように、固定部材2は調節部材5が摺動可能な摺動板2aと、固定金具Vを挿通可能な固定孔2b1が穿設された下部板2bを有しており、調節部材5は屋根上パネルの周縁部を押圧可能な押圧手段5bと、前記摺動板2aの下面に配置され摺動可能な座板5aと、該押圧手段5bと該座板5aとを締結することにより固定部材2と押圧手段5bの間で屋根上パネルを挟持するための緊締手段5cと、摺動板2aを挟持して摺動板2a上における調節部材5の摺動を止める一時的に仮止め手段5dを有することを特徴とする。
【0021】
本発明において固定部材2は、少なくとも摺動板2aと、下部板2bを有している。
本発明において摺動板2aは調節部材5を固定部材2の長さ方向に摺動させるための部材であり、その構造は調節部材5が摺動可能である限り、特に限定されないが、図示した例では、摺動板2aは下部板2bから立設される2枚の側板2cの内壁から対向するように横設され、対向する摺動板2aの間の部分が長溝2aLが形成されており、緊締手段等の動きがこの長溝2aLによって規制されることにより、調節部材5の摺動方向が規制されるように構成されている。
【0022】
本発明において下部板2bは固定部材2の底板になる部分であり、図4に示すように、複数の固定孔2b1が直線状に穿設されている。
本発明において、固定孔2b1は固定部材2と敷設材Tを固定するための固定金具Vを挿通するための貫通孔である(図10参照)。固定孔2b1は下部板2bに少なくとも2個設けられるが、例えば5cm程度の間隔をあけて多数個(具体的な個数は固定部材2の長さにより異なる)の固定孔2b1を列設すれば、屋根上パネルの周縁部が配置される位置に応じて使用する固定孔2b1を変えて、固定部材2を固着する位置をずらせて調整できるので好ましい。
【0023】
本発明において固定部材2の上端付近に、屋根上パネルPを載置するための載置部2cPが設けられる。図示した例において、載置部2cPは前記下部板2bの長辺側の端縁から立設された側板2cの上端から水平方向に外側に延設されているが、これに限定されず、内側、又は内外両側に延設してもよい。このようにすれば、載置部2cPの屋根上パネルとの接触面積が大きくなるので屋根上パネルを安定的に載置、固定できるばかりでなく、また、固定部材2を補強する効果も得ることができる。勿論、水平方向に延設せずに側板2cの上端をそのまま載置部2cPとして使用することもできる。
【0024】
さらに、本発明では、調節部材5を固定部材2と組み合わせる際に、摺動板2aの下に配置される座板5aを仮置きして組み立て易くするための仮置き板2dを設けることができる。仮置き板2dは前記摺動板2aの下に、前記摺動板2aと同様の態様で設けられている。
【0025】
本発明においては、図示するように、調節部材5が脱落するのを防ぐための端面板2eを固定部材2の長さ方向端面に設けることもできる。但し、この場合、雨水等が固定部材の内部に溜まる恐れがあるので、端面板2eと固定部材2の境界付近の下部板2bに排水口2b2を設けるのが好ましい。
【0026】
固定部材2の長さは特に限定されないが、取り扱い性や作業性、更には配線ケーブルの設置の容易性、屋根上の歩行の容易性からは、50cm以下程度が好ましい。また、例えば、図4で示したように、2個以上の固定孔2b1を等間隔に列設して固定位置を調節可能とすれば、20cm以下程度にまで小さくすることも可能である。
但し、固定部材2の長さを前後に配置される2枚の敷設材Tの頭部T1の間隔よりも長くすれば、後述の理由により、屋根上パネルPを敷設材Tの上に装着するのが容易になるので、結局、固定部材2の長さは、前後に配置される敷設材Tの頭部T1の間隔より長く、且つ50cm以下とするのが好ましい。
【0027】
本発明においては、固定孔2b1にブロック状の粘土状粘着剤3(以後、粘着剤ブロック3と称することがある)を配置、好ましくは粘着剤ブロック3を固定孔2b1の下側に配置することができる。このようにすれば、固定孔2b1に固定金具Vを挿通する際に、粘着剤ブロック3が固定金具Vに付着して随伴し、敷設材Tや野地板Bと固定金具Vの隙間をシーリングするので、止水性が良好になる。
粘着剤ブロック3を配置する方法は特に限定されないが、例えば図2、図3に示されるように、粘土状粘着剤を球状に丸めて、この粘着剤ブロック3を下側から固定孔2b1に押し込んで、粘着剤ブロック3の一部が固定孔2b1のなかに入り込んで嵌着された状態にする方法が例示できる。このようにすれば、粘着剤ブロック3が固定孔2b1から脱落することがないので、作業性が高まる。
【0028】
粘土状粘着剤としては特に限定されず、固定孔2b1の下に配置された粘着剤ブロック3が容易に液状にならず、固定金具Vとの接着性が良好で、敷設材Tに挿通孔T3を開けて固定金具Vを通せば粘土状粘着剤が固定金具Vに付着したまま敷設材Tの挿通孔T3と固定金具Vの隙間を通る程度の流動性を呈する物質であればどのようなものでも使用できるが、中でもブチルゴム系粘着剤が好ましい。市販品としては、例えば、SEALER社製ブチルリボンテープ(φ5×30mm)が好適に使用できる。なお、このブチルリボンテープを用いる場合には、1本のブチルリボンテープを2枚の樹脂製の板の間でこねて丸め、ブロック状にしてから使用すると、好適に粘着剤ブロック3を固定孔2b1に嵌着できる。
なお、粘土状粘着剤の量は、固定孔及び固定金具のサイズ、即ち、両者間の隙間等にもよるが、通常、0.3〜0.7g/個程度が好ましく、約0.5g/個が更に好ましい。粘土状粘着剤の量が基準量の0.3g/個より少ないと野地板Bと固定金具Vの止水性が劣る傾向があり、0.7g/個より多ければ止水性はそれ以上改良されずにコストだけ上昇する傾向がある。
【0029】
本発明において、下部板2bの下には、図5(a)に示すように、緩衝材4を設けることもできる。これにより、装着具1を取り付ける際に該装着具1を敷設材Tに強く締め付けても敷設材Tが破損する心配がないので、作業性が高められる。また、シール性が付与され、雨水の浸入が阻止される効果もある。このような緩衝材としては、EPDMシーラー、軟質ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等が挙げられる。
なお、固定孔2b1の下に前記した粘着剤ブロック3を配置してさらに緩衝材4を設ける場合には、図2、図3に示すように、緩衝材4に前記固定孔2b1と連通する連通孔4Hを設けるほうが好ましい。このようにすれば、粘着剤ブロック3が連通孔4Hのなかに入り込むので、下部板2b側を下にして本発明の装着具1を床上等に置いた場合でも、粘土状粘着剤が床面に接着するといったトラブルが防止される。
但し、連通孔4Hは、かならずしも緩衝材4を貫通している必要はなく、例えば図5(b)に示すように底を有する窪みであってもよく、このような窪みからなる場合は、粘着剤ブロック3を固定孔2b1に嵌着する必要はなく、単に連通孔4Hのなかに粘着剤ブロック3を収容してから、緩衝材4を下部板2bに接着すればよい。
【0030】
本発明において調節部材5は、図6に示したように、座板5aと、押圧手段5bと、両者を接結する緊締手段5cと、仮止め手段5dを有する。
本発明において押圧手段5bとは、屋根上パネルの周縁部を押圧して固定するための手段であり、その形状は屋根上パネルの周縁部を押圧可能である限り特に限定されないが、例えば図6(a)に示されるような、断面U字状の基部5b1の両端から板状の押え部5b2が横設された形状にすれば、周縁部に係止バー等が設けられていない屋根上パネルであっても装着が可能であり、緊締手段5cも断面U字状の基部の中に納まり、美観にも優れるので好ましい。周縁部に係止バーPbが設けられている屋根上パネルPの場合は、図7に示すように、断面逆U字状の押圧手段5bを用いて、係止バーPbのみを押えるようにしてもよい。
なお、図6に示した例において、基部5b1の前側及び後側に設けられた押え部5b2はそれぞれ前側及び後側に配置された屋根上パネルの周縁部を押圧して、1つの調節部材5で前後2枚の屋根上パネルPを固定できるようになっている。
【0031】
また、断面U字状の基部5b1の両端から板状の押え部5b2が横設された形状の押圧手段を単独で用いた場合、基部5b1の高さが小さいと、施工時において足場の悪い現場で、押圧手段5bを屋根上パネルPの高さまで持ち上げる手間が煩雑であり、逆に基部5b1の高さが大きいと、当該基部5b1の高さより薄い屋根上パネルPに対して使用できず汎用性に欠ける。この二律背反する欠点を解消するため、図6に示したように、ナットを高さ調節部5b3として用い、基部5b1の高さを小さくして、使用する屋根上パネルの厚さに応じて高さ調節部5b3を移動させ、予め適当な高さまで押圧手段5bを持ち上げるように構成されているのが好ましい(図6(a)参照)。
【0032】
本発明において緊締手段5cとは、固定部材2の座板5aと押圧手段5bの間で屋根上パネルPを挟持するための手段であり、通常はボルト5c1及びナット5c2が用いられるが、本発明の目的を達成できる限り、これには限定されない。
【0033】
本発明において仮止め手段5dは、座板5aとの間で摺動板2aを挟持して摺動板2a上における調節部材5の摺動を一時的に止めるための手段である。図6において、仮止め手段5dは小板5d1とボルト5d2からなり、座板5aに雌ネジを切って、必要に応じボルト5d2を締め込むことにより、小板5d1と座板5aの間で摺動板2aを挟持するように構成されているが、これには限定されず、例えばクリップのような構造で常に弱い挟圧力(重力により自然に滑り落ちることはないが、手で容易に動かすことが出来る程度の挟圧力)で挟持するようにしてもよい。また、ボルト5d2を蝶ネジタイプとすることにより、工具を必要とすることなく手で操作できるので、作業性が良好になる。
【0034】
本発明においては、図6に示すように、押圧手段5bの下にアース用通電板5eを配置することにより、前後の屋根上パネルPの外装材を電気的に接続して、アース配線を簡略化することができる。このアース用通電板5eは前部及び後部に屋根上パネルPの絶縁皮膜を貫通できる程度の爪部5eCが設けられており、屋根上パネルPと固定部材2の間に介設されるように配置される。そして、緊締手段5cを締め込んだ際にその挟圧力を利用して爪部5eCが屋根上パネルPの絶縁皮膜を貫通又は破壊して、前後の屋根上パネルPの外装材を電気的に接続するように構成されている。このようにすれば、最も下の屋根上パネルだけにアース配線を設ければ、本発明の装着具1により固定された全ての屋根上パネルをアースしたのと同様の効果が得られるので、全ての屋根上パネルにアース配線を設けるような煩雑さを避けることができる。
【0035】
本発明における固定部材2、調節部材5の材質は特に限定されず、アルミニウム、鉄(防錆処理した)、銅、ステンレス等の金属や、ABS(アクリロニトリル- ブタジエン- スチレン共重合樹脂)、AAS樹脂(アクリロニトリル/アクリルゴム/スチレン)、AES樹脂(アクリロニトリル/エチレンプロピレンゴム/スチレン)、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン)、PS樹脂(ポリスチレン樹脂)、PMMA樹脂、PVC樹脂、MS樹脂(メチルメタクリレート/スチレン樹脂)、PP(ポリプロピレン樹脂)、PE(ポリエチレン樹脂)、PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)およびPC樹脂(ポリカーボネート樹脂)等の樹脂等が使用可能であるが、屋根上パネルPを好適に支持し固定できる剛性を有する点で金属が好ましく、軽量で耐腐食性が高いアルミニウムが最も好ましい。固定部材2及び調節部材5の押圧手段5bについては、アルミニウムの押出成形品が好ましい。
【0036】
以下、上記のような屋根上パネルの装着具1を用いて、化粧スレート板からなる敷設材Tの上に屋根上パネルPを装着する方法について説明する。
なお、以下の図において、野地板上のルーフィング材は省略されている。また、水平状に記載されている場合の流れ勾配は、図9の場合と同様に、図面上右から左の方向である。
図8に示すように、最初に、本発明の装着具1を敷設材Tの上に固定する。但し、本発明の屋根上パネルの装着具1は、複数個(通常は4個)で1枚の屋根上パネルPを支持固定するので、それぞれの屋根上パネルの装着具1(特に、載置部2cP)は同一平面上にある必要があるが、通常、敷設材はその頭部T1を前側に敷設された敷設材の尻部T2の上に重ねて配置するため、その勾配は野地板の勾配よりも小さくなり、一枚の敷設材Tの上に一つの装着具1を直接設置しようとすれば、それぞれの載置部2cPは、同一平面上にはならず、屋根上パネルを容易には設置できない。従って、載置部2cPを同一平面上に配置するために、載置部2cPを野地板Bと平行になるように工夫したほうが、屋根上パネルを簡単に設置できるようになるので好ましい。なお、図8では、頭部と尻部との差があまり明確でない化粧スレート板を用いるとともに、要部を拡大して示しているためわかりにくいので、頭部と尻部との差が明確な瓦を用いて示した図9を参照されたい。
載置部2cPと野地板Bを平行にする方法としては、特開2010−24668号公報(図9)に記載されているような勾配調整部材を屋根瓦と装着具1の間に介設する方法、特開2010−209541号公報(図1)に記載されているような、上面が野地板Bと平行になるように計算して設けられた台座部を有する瓦を用いる方法等が例示できるが、例えば図9に示したように、固定部材2の長さを前後に配置される2枚の敷設材の頭部T1の間隔よりも長くし、前後の頭部T1の間に固定部材2を架設すれば、容易に載置部2cPと野地板Bを平行にすることが出来る。
【0037】
また、本発明において、緊締手段5cにより締め込む前は、調節部材5は摺動板2aの上で固定部材2の長さ方向に自在に摺動可能である。従って、本発明の装着具1で屋根上パネルを固定する際には、固定部材2の位置合わせは載置部2cPの上に屋根上パネルの周縁部が載る程度の精度で十分であり、その後に調節部材5を摺動させて精密な位置合わせをすればよい。
【0038】
装着具1を敷設材Tの上に固定するには、まず、上記図8に示すように、敷設材Tに挿通孔T3を穿設して、固定孔2b1の位置と挿通孔T3の位置を合わせる。
次に、図10に示すように、固定金具Vを固定孔2b1と挿通孔T3に通して、野地板Bに固定金具Vを打ち込む。この際、固定孔2b1に粘着剤ブロック3が配置されている場合は、この粘着剤ブロック3が固定金具Vに付着し、挿通孔T3と固定金具Vの隙間で引き伸ばされて、固定金具Vの周囲が粘土状粘着剤で覆われるが、固定金具Vが野地板Bに打ち込まれる際に粘土状粘着剤は野地板Bと固定金具Vの隙間付近に団子状に盛り上がる。この結果、挿通孔T3と固定金具Vの隙間、及び野地板Bと固定金具Vの隙間はともに粘土状粘着剤により埋められるので、止水性が向上する。
【0039】
次に、装着具1に屋根上パネルPを固定するが、そのためにはまず、図11に示すように、屋根上パネルを設置する位置に応じて調節部材5の位置決めをしてから、仮止め手段5dと座板5aとの間に摺動板2aを挟み、調節部材5が摺動板2a上を不意に移動しないように仮止めする。
次に、図12に示すように、屋根上パネルPを固定部材2の載置部2cPと押圧手段5bの間に配置して緊締手段5cを締め込むことにより、屋根上パネルPの敷設材T上への装着が完了する。なお、この際にアース用通電板5eが設けられている場合は、緊締手段5cを締め込む際に爪部5eCが屋根上パネルPの底部に食い込んで絶縁皮膜を貫通又は破壊し、これにより屋根上パネルPの外装材が電気的に接続される。従って、一番下の屋根上パネルにだけアース配線を設ければ、全ての屋根上パネルPがアースされるので、配線作業が容易になる。
【0040】
なお、最前列及び最後列の屋根上パネルPを固定する場合、図6に示したような押え部5b2を前後両方に有する押圧手段5を用いれば、押圧手段5が傾いてしまい、屋根上パネルPを強固に固定できなくなる場合がある。このような場合は、図13に示したように、使用しない押え部5b2の下に屋根上パネルPの厚さと同じ高さの端部材5b4を設けて、前後のバランスをとればよい。端部材5b4の形状は特に限定されないが、断面L字型に屈折させた板状部材が例示できる。
【0041】
図14は、敷設材Tとして、化粧スレート板に代えて瓦を用い、屋根上パネルPを敷設材T上へ装着した場合の一例を示す。本例では、粘着剤ブロック3が固定金具Vに付着した状態で、固定金具Vと野地板Bとの隙間のみならず、固定金具Vと瓦との隙間も塞がれ、瓦内に水が入りにくい状態とされている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
上記したとおり、本発明の屋根上パネルの装着具は、縦桟や横桟等の長尺物を使用することなく、直接屋根上パネルを設置できるので施工が容易であるとともに、構造が簡単で継目が少ないため強度が大きく耐久性に優れている。また、仮止め手段を設けたことにより位置決めした調節部材が摺動板上を移動して位置決めが困難又は台無しになるといったトラブルが解消されて、施工性が格段に向上する。
更に、アース用通電板を使用することにより、本発明の装着具により屋根上パネルを装着すると同時にアースすることが可能となり、作業性が一層向上する。
更にまた、固定部材の下部板の固定孔にブロック状の粘土状粘着剤を配置することにより、固定金具を野地板に打ち込むと同時に粘土状粘着剤が野地板と固定金具との隙間を塞ぐので止水性が高められる。
【符号の説明】
【0043】
1 屋根上パネルの装着具
2 固定部材
2a 摺動板
2aL 長溝
2b 下部板
2b1 固定孔
2b2 排水口
2c 側板
2cP 載置部
2d 仮置き板
2e 端面板
3 ブロック状の粘土状粘着剤(粘着剤ブロック)
4 緩衝材
4H 連通孔又は窪み
5 調節部材
5a 座板
5b 押圧手段
5b1 基部
5b2 押え部
5b3 高さ調節部
5b4 端部材
5c 緊締手段
5c1 ボルト
5c2 ナット
5d 仮止め手段
5d1 小板
5d2 ボルト
5e アース用通電板
5eC 爪部
B 野地板
P 屋根上パネル
Pb 係止バー
T 敷設材
T1 頭部
T2 尻部
T3 挿通孔
V 固定金具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根上パネルを敷設材上に装着するための装着具であって、固定部材と調節部材とからなり、
前記固定部材は前記調節部材が摺動可能な摺動板と、固定金具を挿通可能な固定孔が穿設された下部板を有しており、
前記調節部材は前記屋根上パネルの周縁部を押圧可能な押圧手段と、前記摺動板の下面に配置され摺動可能な座板と、該押圧手段と該座板とを締結することにより前記固定部材と前記押圧手段の間で屋根上パネルを挟持するための緊締手段と、前記摺動板を挟持して摺動板上における調節部材の摺動を止める仮止め手段を有することを特徴とする屋根上パネルの装着具。
【請求項2】
固定孔にはブロック状の粘土状粘着剤が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根上パネルの装着具。
【請求項3】
粘土状粘着剤がブチルゴムからなることを特徴とする請求項2に記載の屋根上パネルの装着具。
【請求項4】
下部板の下に緩衝材が設けられているとともに、該緩衝材には前記下部板の固定孔と連通する連通孔が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の屋根上パネルの装着具。
【請求項5】
前側の敷設材の尻部の上に後側の敷設材の頭部を重ねて敷設材が敷設されている屋根に取り付ける屋根上パネルの装着具であって、固定部材の長さは前後に配置される2枚の敷設材の頭部の間隔よりも長いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の屋根上パネルの装着具。
【請求項6】
押圧手段の下にアース用通電板が設けられており、該アース用通電板の前部及び後部に屋根上パネルの絶縁皮膜を貫通又は破壊可能な爪部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の屋根上パネルの装着具。
【請求項1】
屋根上パネルを敷設材上に装着するための装着具であって、固定部材と調節部材とからなり、
前記固定部材は前記調節部材が摺動可能な摺動板と、固定金具を挿通可能な固定孔が穿設された下部板を有しており、
前記調節部材は前記屋根上パネルの周縁部を押圧可能な押圧手段と、前記摺動板の下面に配置され摺動可能な座板と、該押圧手段と該座板とを締結することにより前記固定部材と前記押圧手段の間で屋根上パネルを挟持するための緊締手段と、前記摺動板を挟持して摺動板上における調節部材の摺動を止める仮止め手段を有することを特徴とする屋根上パネルの装着具。
【請求項2】
固定孔にはブロック状の粘土状粘着剤が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根上パネルの装着具。
【請求項3】
粘土状粘着剤がブチルゴムからなることを特徴とする請求項2に記載の屋根上パネルの装着具。
【請求項4】
下部板の下に緩衝材が設けられているとともに、該緩衝材には前記下部板の固定孔と連通する連通孔が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の屋根上パネルの装着具。
【請求項5】
前側の敷設材の尻部の上に後側の敷設材の頭部を重ねて敷設材が敷設されている屋根に取り付ける屋根上パネルの装着具であって、固定部材の長さは前後に配置される2枚の敷設材の頭部の間隔よりも長いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の屋根上パネルの装着具。
【請求項6】
押圧手段の下にアース用通電板が設けられており、該アース用通電板の前部及び後部に屋根上パネルの絶縁皮膜を貫通又は破壊可能な爪部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の屋根上パネルの装着具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−246697(P2012−246697A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120061(P2011−120061)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【特許番号】特許第4856279号(P4856279)
【特許公報発行日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(509308469)マジカナテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【特許番号】特許第4856279号(P4856279)
【特許公報発行日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(509308469)マジカナテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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