説明

屋根材とこの屋根材を用いて形成した屋根構造

【課題】施工容易で遮熱効果の高い安価な屋根構造を提供する。
【解決手段】平行に設けられた複数本の支持梁と、支持梁の上に連続して敷き詰められた複数の屋根材とからなり、屋根材は突条と凹溝を交互に略平行に有する折板からなり、折板の一方の端縁側は突条の一つからなり、折板の他方の端縁側には、凹溝の底から立ち上がる傾斜部の先に延長形成された断面略クランク形の取付部が形成され、取付部は、傾斜部に続いて設けられた上平坦部と、上平坦部の先に続いて設けられた直立面部と、直立面部の先に続いて設けられた下平坦部とからなり、一の折板の取付部の下平坦部は支持梁に固定され、一の折板の取付部には、隣り合う他の折板の一方の端縁側の突条が重ねられた状態で連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工場、倉庫、事務所、店舗、畜舎、住宅等の屋根を形成する折板製の屋根材と、この屋根材を用いて形成した屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は従来の屋根構造を示す説明図、図10は従来の屋根構造の要部拡大図である。これらの図において、10は断面略H字状の支持梁であり、支持梁10は屋根の骨組みとして複数本が略平行に、且つ水平に設けられている。支持梁10は屋根の峰位置から屋根の軒先位置に向かって低くなるように所定間隔をおいて階段状に設けられている。
【0003】
支持梁10の上には屋根材18の取付金具であるタイトフレーム40が所定間隔をおいて溶接され、屋根材18がタイトフレーム40を介して支持梁10に取り付けられている。屋根材18は断面略台形の突条20と断面略逆台形の凹溝22を交互に略平行に有する折板からなる。
【0004】
この種の屋根構造は広い面積を安価に被覆・形成することができるので、工場、倉庫、事務所、店舗、畜舎、住宅等の屋根構造として広く使用されている。ただ、この屋根構造は支持梁10の上に多数のタイトフレーム40を溶接しなければならず、この溶接がかなり手間のかかる作業で、作業コストがかかるので、より省力化した、より低コストで施工できる屋根構造が望まれていた。
【特許文献1】特開2003−343047号公報
【特許文献2】特開2005−146710号公報
【特許文献3】特開2006−097355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、タイトフレームを介さないと屋根材を支持梁に取り付けることができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持梁に屋根材を直接取り付け可能とするため、突条と凹溝を交互に略平行に有する折板で屋根材を形成し、該折板の一方の端縁側は該突条の一つとし、該折板の他方の端縁側には、該凹溝の底から立ち上がる傾斜部の先に延長形成された断面略クランク形の取付部を形成し、該取付部は、該傾斜部に続いて設けられた上平坦部と、該上平坦部の先に続いて設けられた直立面部と、該直立面部の先に続いて設けられた下平坦部とからなるようにしたことを最も主要な特徴とする。
【0007】
この屋根材は、一の折板の取付部の下平坦部を支持梁に固定し、一の折板の取付部に、隣り合う他の折板の一方の端縁側の突条を重ねた状態で連結して屋根構造を形成する。前記突条は断面略台形をし、前記凹溝は断面略逆台形をしていてもよく、また、前記取付部の高さと、前記一方の端縁側の突条の高さは略同一で、前記凹溝から前記取付部に至る傾斜部の角度と、前記一方の端縁側の突条の外側の傾斜部の角度は略同一であることが望ましい。また、屋根材の下に熱反射シートを設け、屋根材と熱反射シートの間に静止空気層を形成することにより、遮熱性能の高い屋根構造とすることができる。また、一の折板の取付部に隣り合う他の折板の一方の端縁側の突条が重ねられた部分に保護キャップを取り付けてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、屋根材の端縁に断面略クランク形の取付部を設け、屋根材を支持梁に直接取り付けることができるので、タイトフレームを使用する必要が無くなり、タイトフレームを支持梁に溶接する工程が不要になり、屋根材を取り付ける際の工程数が減少し、従って、屋根を形成するコストが低減するという利点がある。
【0009】
また、本発明は、前記突条の断面形状を略台形をし、前記凹溝の断面形状を略逆台形とし、前記取付部の高さと、前記一方の端縁側の突条の高さを略同一とし、前記凹溝から前記取付部に至る傾斜部の角度と、前記一方の端縁側の突条の外側の傾斜部の角度を略同一とした場合、隣り合う屋根材は、一の屋根材の取付部に隣り合う他の屋根材の一方の端縁側の突条が重なり易く、連結され易いという利点がある。
【0010】
また、本発明は、屋根材の下に熱反射シートを設け、屋根材と熱反射シートの間に静止空気層を形成した場合、屋内と屋外で温度差が有っても、空気の対流による熱伝導が少なくなり、屋内と屋外との間の熱の移動が抑制され、屋内が暑くなり過ぎたり、寒くなり過ぎることがなく、また、冷暖房をした場合に冷暖房効率も良好になるという利点がある。
【0011】
また、本発明は、一の折板の取付部に隣り合う他の折板の一方の端縁側の突条が重ねられた部分に保護キャップを取り付けた場合、ビスを取り付けた部分や重なり合っている部分から雨が内部に侵入して、雨漏り等を生ずるおそれが無くなるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
支持梁への施工が容易な屋根材を提供するという目的を、屋根材の形状を複雑化させることなく実現した。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の一実施例に係る屋根構造の断面図、図2は図1の要部拡大図、図3は図1のA−A断面図、図4は熱反射シートの断面図である。これらの図において、10は断面略コ字状の支持梁であり、支持梁10は屋根の骨組みとして複数本が略平行に、且つ水平に設けられている。支持梁10は屋根の峰位置から屋根の軒先位置に向かって低くなるように所定間隔をおいて階段状に設けられている。
【0014】
支持梁10の上には熱反射シート12が敷き詰められている。熱反射シート12は、多孔質樹脂シート14と、多孔質樹脂シート14の表裏面に一体的に形成された一対の金属反射層16,16とにより構成されている。金属反射層16,16はアルミニウムからなる。熱反射シート12の端部はジョイントアルミテープ(図示せず)により連結され、熱反射シート12は2次元方向に広がっている。
【0015】
熱反射シート12の上には屋根材18が敷き詰められている。屋根材18は断面略台形の突条20と断面略逆台形の凹溝22を交互に略平行に有する折板(鋼板)からなる。屋根材18の一方の端縁側は突条20の一つからなり、屋根材18の他方の端縁側には、凹溝22の底から立ち上がる傾斜部24の先に延長形成された断面略クランク形の取付部26が形成されている。
【0016】
取付部26は、傾斜部24に続いて設けられた上平坦部28と、上平坦部28の先に続いて設けられた直立面部30と、直立面部30の先に続いて設けられた下平坦部32とからなる。一の屋根材18の取付部26の下平坦部32は支持梁10にビス34で固定されている。
【0017】
取付部26の高さと、一方の端縁側の突条20の高さは略同一で、凹溝22から取付部26に至る傾斜部24の角度と、一方の端縁側の突条20の外側の傾斜部25の角度は略同一になっている。屋根材18の裏側にはスポンジシート27が積層貼付されている。
【0018】
隣り合う屋根材18,18は、一の屋根材18の取付部26に隣り合う他の屋根材18の一方の端縁側の突条20が重ねられて連続し、屋根が形成されている。一の屋根材18と、隣り合う他の屋根材18は重ねられた部分でビス36により連結・固定されている。
【0019】
ここで、図5〜図7に示すように、隣り合う屋根材18,18の重なり合っている取付部26及び突条20の部分に取付金具(図示せず)を取り付け、取付金具に保護キャップ37を取り付けて、重なり合っている部分20,26を保護するようにしてもよい。このようにした場合は、ビス36を取り付けた部分や重なり合っている部分20,26から雨が内部に侵入して、雨漏り等を生ずるおそれが無くなる。
【0020】
熱反射シート12と屋根材18との間には静止空気層38が形成されている。屋外が暑い場合、屋外の熱が屋根材18を伝わって屋内側に入って来るが、屋内側に入ってきた熱は熱反射シート12の金属反射層16によって屋外側に反射されるので、屋内側が屋外側の熱によって暑くなり難く、従って、屋内を冷房している場合はその冷房効率が良くなる。
【0021】
屋外が寒い場合、屋内の熱は屋根材18を伝わって屋外側へ逃げようとするが、屋内側の熱は熱反射シート12の金属反射層16によって反射し、屋内側に戻されるので、屋内側が寒くなり難く、従って、屋内を暖房している場合はその暖房効率が良くなる。
【0022】
なお、上記実施例では熱反射シート12として図4に示すような構造のものを使用したが、単なる合成樹脂フィルムの表裏面にアルミニウムを蒸着した簡単な構造の熱反射シートを使用してもよい。このような熱反射シートを使用した場合は施工コストを低下させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は新設の屋根を形成する場合に適用されるが、既設の屋根を補修又は補強する目的で、既設の屋根の上にもう一層屋根を形成する場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例に係る屋根構造の断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】熱反射シートの断面図である。
【図5】本発明の他の実施例に係る屋根構造の断面図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】図5のB−B断面図である。
【図8】従来の屋根構造を示す説明図である。
【図9】従来の屋根構造の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0025】
10 支持梁
12 熱反射シート
14 多孔質樹脂シート
16 金属反射層
18 屋根材
20 突条
22 凹溝
24 傾斜部
25 傾斜部
26 取付部
27 スポンジシート
28 上平坦部
30 直立面部
32 下平坦部
34 ビス
36 ビス
37 保護キャップ
38 静止空気層
40 タイトフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突条と凹溝を交互に略平行に有する折板からなり、該折板の一方の端縁側は該突条の一つからなり、該折板の他方の端縁側には、該凹溝の底から立ち上がる傾斜部の先に延長形成された断面略クランク形の取付部が形成され、該取付部は、該傾斜部に続いて設けられた上平坦部と、該上平坦部の先に続いて設けられた直立面部と、該直立面部の先に続いて設けられた下平坦部とからなることを特徴とする屋根材。
【請求項2】
前記突条が断面略台形をしており、前記凹溝が断面略逆台形をしていることを特徴とする請求項1に記載の屋根材。
【請求項3】
前記取付部の高さと、前記一方の端縁側の突条の高さが略同一で、前記凹溝から前記取付部に至る傾斜部の角度と、前記一方の端縁側の突条の外側の傾斜部の角度が略同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根材。
【請求項4】
平行に設けられた複数本の支持梁と、該支持梁の上に連続して敷き詰められた複数の屋根材とからなり、該屋根材は突条と凹溝を交互に略平行に有する折板からなり、該折板の一方の端縁側は該突条の一つからなり、該折板の他方の端縁側には、該凹溝の底から立ち上がる傾斜部の先に延長形成された断面略クランク形の取付部が形成され、該取付部は、該傾斜部に続いて設けられた上平坦部と、該上平坦部の先に続いて設けられた直立面部と、該直立面部の先に続いて設けられた下平坦部とからなり、一の折板の取付部の下平坦部は該支持梁に固定され、一の折板の取付部には、隣り合う他の折板の一方の端縁側の突条が重ねられた状態で連結されていることを特徴とする屋根構造。
【請求項5】
前記突条が断面略台形をしており、前記凹溝が断面略逆台形をしていることを特徴とする請求項4に記載の屋根構造。
【請求項6】
前記取付部の高さと、前記一方の端縁側の突条の高さが略同一で、前記凹溝から前記取付部に至る傾斜部の角度と、前記一方の端縁側の突条の外側の傾斜部の角度が略同一であることを特徴とする請求項4又は5に記載の屋根構造。
【請求項7】
前記屋根材の下に静止空気層を介して熱反射シートが設けられていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の屋根構造。
【請求項8】
一の折板の取付部に隣り合う他の折板の一方の端縁側の突条が重ねられた部分に保護キャップが取り付けられていることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−127871(P2008−127871A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314602(P2006−314602)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(301066051)株式会社 桑本賢一設計事務所 (5)
【Fターム(参考)】