説明

屋根板支持具

【課題】屋根板の伸縮を許容して音鳴りを防止できるような屋根板支持具において、金属製の固定部材に取り付けられる合成樹脂製の断熱部材の大きさを極力小さくする。また、断熱部材を、固定部材に挟まれる部位のない形状にして、低コスト化や断熱部材の割れ防止等を図る。
【解決手段】下葺屋根12の上に固定される固定金具31と、屋根板を持し屋根板の前後方向に摺動可能な摺動金具41との間に、上下方向での熱伝導を断つ断熱部材51が備えられた屋根板支持具21であって、上記固定金具31が、上下方向の嵌め合いで係合して前後方向での相対移動を阻止する従金具担体34と、左右方向の嵌め合いで係合して上下方向での相対移動を阻止する主金具担体32,33とを含む複数個の金具担体で構成され、これら金具担体32,33,34同士が、上記断熱部材を介在させない部分において締結され、断熱部材51に対する固定がなされた屋根板支持具21。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下地材の上に金属製の屋根板を支持する屋根板支持具に関し、より詳しくは、屋根板の伸縮を許容して音鳴りを防止できるような屋根板支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根板の伸縮を許容する屋根板支持具は、下地材としての下葺屋根に固定される金属製の固定金具と、固定金具に対して相対移動可能で屋根板が直接または間接的に取り付けられる金属製の摺動金具とを有する。そして、特に断熱性を持たせる場合には、固定金具と摺動金具との間に、これらを非接触にする、合成樹脂製の断熱部材が介装される。
【0003】
断熱部材は、組立て性や施工性の観点から、固定金具または摺動金具のいずれか一方に対して相対移動しないように取り付けられる(たとえば下記特許文献1、2参照)。
【0004】
相対移動不可能な取り付けは、摺動金具が摺動する屋根板の長さ方向(前後方向)は勿論のこと、上下方向でも分離しないように行われなければならない。また、固定金具が下葺屋根に対して固定する部分であり、下葺屋根は左右方向で挟み付けると固定できる形態であることから、固定金具は下葺屋根を左右方向で挟み付ける一対の金具担体で構成される。
【0005】
このため、断熱部材を固定金具に対して相対移動不可能に取り付ける場合に、その取り付けは、特許文献2のように、ボルトナットで金具担体を挟持するとともに、断熱部材の下端に垂設された被挟持片を金具担体間に挟み込んで強固に締め付けることがこれまで行われてきた。下記特許文と献3のように、被挟持片をボルトナット側に位置させるものもある。
【0006】
しかし、上述のように被挟持片を有する構造では、下葺屋根に対する固定時に合成樹脂製の被挟持片が締め付けられることになるので、固定金具の締め付ける部分と下葺屋根の締め付けられる部分との形態や、被挟持片の厚さ等との関係上、被挟持片についてひび割れ等の不測の事態を考えることができる。
【0007】
また、被挟持片を必要とする分、合成樹脂材料の使用量が多くなってしまう。合成樹脂の使用量が多いと、万が一火災で燃えた時に有害ガスの発生量が多くなる問題があるので、合成樹脂の使用量を抑えようとする要求がある。
【0008】
なお、特許文献1のように、断熱部材に被挟持片がなくとも固定金具と断熱部材との一体化を行うことは可能であるが、断熱部材には、被挟持片に代わる部位、たとえば左右方向外方に突出する部分などが必要となり、これに伴って、固定金具には、その突出する部分を挿嵌する穴などが必要であって、各部材の形状が複雑でコスト高となってしまう難点がある。
【0009】
【特許文献1】特許第3019993号公報
【特許文献2】特許第3817492号公報
【特許文献3】特開2004−162253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明は、断熱部材から被挟持部を不要にして材料の使用量を低減するとともに、各部材の形態の簡素化を図ることができるようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのための手段は、下地材の上に固定される金属製の固定金具と、屋根板を直接あるいは間接的に支持し屋根板の長さ方向である前後方向に摺動可能な金属製の摺動金具との間に、上下方向での熱伝導を断つ断熱部材が備えられた屋根板支持具であって、上記固定金具が、上下方向の嵌め合いで係合して前後方向での相対移動を阻止する第1係合部を有した金具担体と、左右方向の嵌め合いで係合して上下方向での相対移動を阻止する第2係合部を有した金具担体とを含む複数個の金具担体で構成され、これら金具担体同士が、上記第1係合部および第2係合部よりも下方における上記断熱部材を介在させない部分で締結具により締結され、断熱部材に対する固定がなされる屋根板支持具である。
【0012】
この屋根板支持具では、金属製の固定金具が複数個の金具担体で構成されており、金具担体の第1係合部と第2係合部がそれぞれ上下方向、左右方向の簡単な嵌め合いで断熱部材に係合する。この係合により、金具担体同士が不動である限り金具担体と断熱部材との相対移動は阻止される状態となる。
【0013】
上記金具担体は締結具で締結されるので、固定金具と断熱部材は相対移動不可能な状態で相互に取り付けられる。
【0014】
しかも、締結具で締結される金具担体同士は、第1係合部や第2係合部よりも下方において断熱部材を介在させることなく重合するので、断熱部材を締結具で締め付けることはない。
【0015】
固定金具に対して上記のように取り付けられた断熱部材の上を、摺動金具は屋根板の長さ方向に沿って摺動可能である。このため、屋根が伸縮をしたときにその伸縮に伴って相対移動し、屋根にたまろうとする歪を吸収する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、固定金具と断熱部材は、相互の嵌め合いで相対移動不可能に取り付けられ、この状態が締結具で保持される。このため、断熱部材には、固定金具を締め付けるための締結具を通す部分に被挟持部を設ける必要はない。
【0017】
この結果、断熱部材の大きさを小さくして、材料の使用量を低減することができる。そのうえ、相対移動不可能に取り付けるための構造を他に必要としないので、各部材の形態を簡素にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、屋根構造を示し、この図に示したように屋根11は、下葺屋根12の上に上葺屋根13を葺成して構成される。上葺屋根13の葺成に際して用いられるのが、屋根板支持具21(以下、「支持具」という。)であって、図2にも示したような外観を有する。図3は、上葺屋根13を固定するための吊子22を取り付けた状態の斜視図である。
【0019】
支持具21は、下葺屋根12の上に固定される金属製の固定金具31と、上記吊子22を介して上葺屋根13を支持し上葺屋根13の長さ方向である前後方向に摺動可能な金属製の摺動金具41と、これら固定金具31と摺動金具41との間の熱伝導を断つ合成樹脂製の断熱部材51とを有する。図4が支持具の断面図である。
【0020】
これら3種の部材のうち、固定金具31と断熱部材51とが相対移動しないように相互に取り付けられ、断熱部材51の上を摺動金具41が図5に示した如く相対移動するように取り付けられている。
【0021】
図6が固定金具31と断熱部材51の組み合わせ状態を示す斜視図であり、図7がその分解斜視図である。これらの図に示すように、固定金具31は、3個の金具担体32,33,34で構成され、これらを断熱部材51に組み合わせた上でボルト35ナット36を用いて3個の金具担体32,33,34を一体に連結することにより、固定金具31と断熱部材51とが相対移動不可能な状態で一体化する。
【0022】
固定部材31を構成する3個の金具担体32,33,34は、下葺屋根12が図1に示したように角ハゼ型であるので、左右一対の主金具担体32,33と、これらに挟まれる従金具担体34である。左右一対の金具担体のみで構成することもできるが、従金具担体34も備えたほうが強力に固定できる。また、その他の金具担体を備えてさらに強固な固定を実現させることもできる。
【0023】
主金具担体32,33は、下葺屋根12の上端における馳締部12aの平らな側面に圧接する圧接部32aを有した第1主金具担体32と、馳締部12aの突出する側の側面を包囲するような正面視略逆L字型の段部33aを有した第2主金具担体33である。これら主金具担体32,33は、外方に向けて延びる接地片32b,33bを下端に有するとともに、上記圧接部32aや段部33aより上方には、上記ボルト35を通す挿通孔32c,33cが形成され、さらにその上方に、左右方向に延びる張り出し片32d,33dが形成されている。
【0024】
これら張り出し片32d,33dは、左右方向の内側から外方、すなわち上記接地片32b,33bと同一方向、具体的には、第1主金具担体32の張り出し片32dにあっては、図面上右側に向けて、また第2主金具担体33の張り出し片33dにあっては図面上左側に向けて突出している。
【0025】
これら張り出し片32d,33dは、断熱部材51に対して左右方向の嵌め合いで断熱部材51に係合して、上下方向での相対移動を阻止する。つまり、上下方向での抜け止めを阻止する。
【0026】
従金具担体34は、上記第2主金具担体33の段部33aの内側に位置して馳締部12aの突出した部分を締め付ける締め付け部34aを有したものである。この従金具担体34の締め付け部34aより上方であって上記主金具担体32,33の挿通孔32c,33cに対応する部位には縦に長い長孔34bが形成されている。また、上端部には、上下方向の嵌め合いで係合して上下方向での移動を阻止する凹所34cが形成されている。
【0027】
すなわち、従金具担体34の前後方向の長さは、断熱部材51の前後方向の長さよりも長く設定され、長さ方向の中間部の上端に、断熱部材51の一部を嵌め込む凹所34cが形成されている。換言すれば、この凹所34cの両側、すなわち長さ方向の両側部には、上方へ突出する突片34d,34dを有し、これら突片34d,34dの内側縁が断熱部材51の前後両端面に当接して(図5、図6参照)、断熱部材51との間で前後方向での相対移動を阻止する。
【0028】
このような金具担体32,33,34からなる固定金具31が取り付けられる断熱部材51は、上記張り出し片32d,33dが入り込む空間を有した略直方体状をなす。
【0029】
すなわち、上記凹所34cに対応する長さで、前後方向に貫通する溝を有した直方体状である。溝は、下端面の開口部52から内奥に広がる形状で、下端部には、その開口部52を形成する突片53,53が形成されている。また、開口部52の上方の天井面54は平らに形成されている。そしてこの天井面54の左右方向両側から斜め上方に向けて傾斜面55,55が形成され、断面略三角形状をなす2個の傾動許容空間56が形成される。上記天井面54は、従金具担体34の凹所34cが当接する部分であり、上記傾動許容空間56は、主金具担体32,33の張り出し片32d,33dが傾動する空間である。
【0030】
断熱部材51の上面には、左右に2本のぬすみ溝57,57が形成されている。また、図中58は空洞である。
【0031】
固定部材31を断熱部材51に対して取り付けるには、主金具担体32,33を前後方向から、あるいは下から嵌め込んで、張り出し片32d,33dを突片53の上に位置させるとともに、図7に示したように、従金具担体34を下から嵌め込んで、凹所34cを天井面54に嵌め合わせる。その上で、ボルト35ナット36を用いて主金具担体32,33と従金具担体34を連結し、相対移動しない固定状態を得る。
【0032】
一方、断熱部材51の上を摺動する摺動金具41は、図8に示したように、上記断熱部材51を前後方向に相対移動可能な状態に完全に包み込むような構造である。すなわち、断熱部材51よりも前後方向に長く形成され、断面形状は略横C字型をなし、上面には屋根板を受ける受け片42と、上記吊子22を固定するための固定ボルト43とを有する。
【0033】
具体的には、図9の分解斜視図にも示したように、左右一対の金具からなり、一方の第1金具44は、水平な水平片44aと、この水平片44aの一側から垂設された垂下片44bと、この垂下片44bの下端から内側に折曲された折曲片44cとを有する形状で、水平片44aの長さ方向の両端には収納する断熱部材51を抜け止めするストッパ44dを有するとともに、水平片44aの長さ方向の中間部には、下から挿入した上記固定ボルト43が保持されている。図4中、44iは、固定ボルト43をカシメ止めするときの便宜のために形成したバカ孔である。
【0034】
他方の第2金具45は、第1金具44の水平片44aにおける反垂下片側の端部に被さるもので、水平片45aと、この水平片45aの一側から垂設された垂下片45bと、この垂下片45bの下端から内側に折曲された折曲片45cとを有する。また、上記水平片45aの反垂下片側の端から上方に向けて立ち上がる垂直片45dと、この垂直片45dの上端から外側に折曲された上記受け片42とを有する。
【0035】
このような構成の第1金具44と第2金具45は、内部に断熱部材51を収納した後、第1金具44と第2金具45の水平片44a,45aの重合部分をリベット46で止めることで一体化される。このリベット46の頭部と上記固定ボルト43の頭部をぬすむのが、断熱部材51の上面に形成された上記ぬすみ溝57,57である。
【0036】
固定金具31と摺動金具41と断熱部材51の組み付けは、先に摺動金具41と断熱部材51を組み合わせてから、その断熱部材51に固定金具31を取り付けるようにするとよい。断熱部材51は直方体状であって、しかも摺動金具41内にすっぽりと収まる大きさと形状を有するので、図8に示しした如く、固定金具31と断熱部材51とを分離したときに、2個の部分に分けることができ、これらは場所を取らずに安定して接地できるので、取り扱いが便利である。そのうえ、固定金具31を断熱部材51に対して固定する作業は、上述の如く容易に行える。
【0037】
固定金具31と摺動金具41と断熱部材51が組み合わされた支持具21は、次のようにして使用される。
【0038】
下葺屋根12に対して固定するには、ボルト35ナット36を緩めておき、図10に示したように、主金具担体32,33と従金具担体34を開く。このとき、主金具担体32,33に設けられた張り出し片32d,33dは、傾動許容空間56内を動くので、上記の開く動作が可能となる。また、従金具担体34は、断熱部材51に下から嵌め合わされているだけであるので、自由に傾く。また、ボルト35ナット36を緩めて主金具担体32,33と従金具担体34を傾けただけでは断熱部材51との一体性は解消されない。
【0039】
このため、各部材の組み合わせが外れてバラバラになることはなく、固定部材31を所定の位置に置いた後、ボルト35ナット36を締め付ければ、固定部材31が下葺屋根12の上に固定されるとともに、固定部材31と断熱部材51との結合状態も強固に保持される。
【0040】
支持具21を固定した後は、補助受け金具23(図1、図3参照。)とナット24を用いて、固定ボルト43に対して吊子22を固定しながら上葺屋根13を葺成する。
【0041】
このようにして得られた屋根11では、上葺屋根13が熱で伸縮しても、その伸縮に伴って吊子22と摺動部材41が前後方向に摺動するので、上葺屋根13に歪がたまることはなく、音鳴りを防止することができる。しかも、断熱部材51を有するので、断熱機能を得ることもできる。
【0042】
また、そのような機能を果たす断熱部材51は、上述のように直方体状に形成され、しかも、摺動金具41内に収まる大きさであるとともに、固定金具31を構成する主金具担体32,33の張り出し片32d,33dが入る溝を有した形態でもあるので、大きさも体積も小さく、突起などの部位の少ない簡素な構造である。
【0043】
このため、合成樹脂材料の使用量を抑えることができるので、万が一燃えた時の有害ガスの発生を低減できるうえに、形態の簡素化と相俟って、コストの押えることもできる。また、支持具21自体の小型化も図れる。
【0044】
さらに、断熱部材51と固定金具31との位置関係は、固定金具31を構成する主金具担体32,33の張り出し片32d,33dおよび従金具担体34の凹所34cと断熱部材51との嵌め合いで規制できるので、固定金具31で断熱部材51を挟み付けて締め付ける必要はない。このため、締め付けによって断熱部材51にひび割れが発生したりするようなことを皆無にすることができ、強固な固定状態を確実に得ることができる。
【0045】
そのうえ、断熱部材51と固定金具31の嵌め合いは、上下方向と左右方向で直線的に簡単に行えるので、組み付け作業はきわめて容易である。
【0046】
以下、その他の形態について説明する。この説明において、上記構成と同一または同等の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0047】
図11は、摺動金具41と断熱部材51を示す分解斜視図である。この摺動金具41は、左右の第1金具44と第2金具45を突き合わせた状態で固定する構造で、双方の金具44,45に、互いに当接し合う垂直片44e,45dが形成されている。第1金具44と第2金具45の結合は、垂直片44e,45dをリベット46で固定して行う。また、吊子22を固定するための固定ボルト43は、第1金具44の上端に設けられた受け片44fに形成されたねじ孔44gに上から螺合する。
【0048】
このため、摺動金具41の内面にリベットやボルトの頭部が存在しないので、断熱部材51の上面に上述のようなぬすみ溝57,57(図9参照)は必要でなく、その分、断熱部材51を薄くすることができる。この結果、断熱部材51をさらに小型にするとともに形状を簡素にすることが可能となる。
【0049】
図12は、図11の第1金具44の変形例を示し、受け片44fを二重に形成した例である。すなわち、垂直片44eから外側に向けて折曲したのち、内側に折り返して密に重合しあった二重構造にする。受け片44fの強度が向上するうえに、ねじ孔44gを長く形成することができる。
【0050】
図13は、図11の第1金具44の変形例を示し、固定ボルト43を受け片44fに対して下から固定した例である。すなわち、受け片44fの所定位置に固定ボルト43を固定するための固定孔44hが形成されるとともに、固定孔44hの下方の、水平片44aと折曲片44cとの対応位置にはバカ孔44iが形成されている。このバカ孔44iを利用すれば、固定ボルト43を受け片44fに対してカシメ固定することができる。この結果、受け片44fの水平片44aからの高さがボルトを挿通して回転できるほどに高く設定できない場合であっても、固定ボルト43を固定できる。
【0051】
図14は、図11の第2金具45の変形例を示し、固定ボルト43を第2金具45の垂直片45dに横からカシメ固定した例である。
【0052】
図15は、下葺屋根12と上葺屋根13(図1参照)が丸ハゼ型の場合に適した支持具21を示している。この場合、固定金具31は、主金具担体32,33と従金具担体34とで構成するが、従金具担体34は、馳締部12aと接触する部分を有しない板状に形成される。また、丸ハゼ型の吊子22の場合には、上葺屋根13の葺成に際して支持具21から外す必要はないので、予め固定しておく。
【0053】
図16は、固定金具12を2個の金具担体32,33で構成した例を示している。すなわち、左右の2個の金具担体32,33は、同一形状に形成され、その前後方向の長さは断熱部材51の長さよりも長く設定され、長さ方向の中間部に凹所34cが形成されるととともに、長さ方向の両側部には突片34dが形成される。そして、凹所34cの上端からは左右方向内側から外側に向けて張り出す張り出し片32d,33dが一体に形成されている。このように、1個の金具担体32(33)に凹所34cと突片34dと張り出し片32d(33d)を兼ね備えるようにすることもできる。
【0054】
図17は、図6に示した固定金具31の他の例を示し、3個の金具担体32,33,34の全てが凹所34cと突片34dを有した例である。前後方向での相対移動を阻止するための面積を広くとることができる。
【0055】
図18は、図7に示した断熱部材51と固定金具31の他の例を示し、断熱部材51に形成される空洞58を有効利用するようにした例である。すなわち、断熱部材51の天井面54に上方に向けての空洞58を形成し、この空洞58に差し込まれる差込片34eが従金具担体34の上端に形成されている。差込片34eの前後方向の長さは、図19に示したように、断熱部材51の空洞58に嵌合対応する長さに設定され、差込片34eの前後方向の両端面が空洞58の対向面に当接することで前後方向での相対移動が阻止される。また、空洞58は差込片34eの厚みよりも大きく形成されれば、固定金具31を下葺屋根12に固定する際に、従金具本体34の傾きを許容できる。
【0056】
図20は、固定金具31と断熱部材51との組み合わせの他の例を示す支持具21の正面図である。すなわち、固定金具31を構成する左右一対の主金具担体32,33に形成される張り出し片32d,33dが、左右方向の外側から内側に延びるように形成されている。具体的には、張り出し片32d,33dは、挿通孔32c,33cを有する部分の上端から延設された正面視L字状の連設部32e,33eの上端に設けられ、断熱部材51の上面に上から被さるように形成されている。
【0057】
一方、断熱部材51は、上面に開口部52を有する溝を備え、この溝に、摺動金具41が相対移動可能で抜け止め可能に保持される。
【0058】
図21は、図20の変形例を示し、下葺屋根12に対して固定する際に、主金具担体32,33を開きやすくするため、断熱部材51の上面に、張り出し片32d,33dの傾きを許容する傾動許容空間56が形成された例である。
【0059】
図22は、図20の支持具21の変形例を示し、固定金具31を構成する従金具担体34が、断熱部材51に設けられた空洞58に差し込まれる差込片34eを有した構造である。この場合、断熱部材51に形成される空洞58の大きさと形状は、差込片34eの傾きを許容しないものであっても、ボルト35ナット36を緩めることにより第1主金具担体32,33が離れるので、下葺屋根12に対する容易に固定が可能である。
【0060】
この発明の構成と、上記一形態の構成との対応において、
この発明の下地材は、上記一形態の下葺屋根12に対応し、
以下同様に、
金具担体は、第1主金具担体32、第2主金具担体33、従金具担体34に対応し、
第1係合部は、凹所34c及び突片34d又は差込片34eに対応し、
第2係合部は、張り出し片32d,33dに対応し、
締結具は、ボルト35ナット36に対応するも、
この発明は上記構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】屋根構造を示す正面図。
【図2】屋根板支持具の斜視図。
【図3】吊子を取り付けた状態の屋根板支持具の斜視図。
【図4】屋根板支持具の断面図。
【図5】作用状態を示す側面図。
【図6】要部を示す斜視図。
【図7】固定金具の分解斜視図。
【図8】屋根板支持具の分解斜視図。
【図9】摺動金具の分解斜視図。
【図10】作用状態を示す断面図。
【図11】他の例に係る摺動金具の分解斜視図。
【図12】他の例に係る摺動金具の一部の斜視図。
【図13】他の例に係る屋根板支持具の断面図。
【図14】他の例に係る屋根板支持具の断面図。
【図15】他の例に係る屋根板支持具の正面図。
【図16】他の例に係る屋根板支持具の断面図。
【図17】他の例に係る要部の斜視図。
【図18】他の例に係る屋根板支持具の断面図。
【図19】他の例に係る屋根板支持具の断面図。
【図20】他の例に係る屋根板支持具の正面図。
【図21】他の例に係る屋根板支持具の正面図。
【図22】他の例に係る屋根板支持具の正面図。
【符号の説明】
【0062】
12…下葺屋根
21…屋根板支持具
31…固定金具
32…第1主金具担体
32d…張り出し片
33…第2主金具担体
33d…張り出し片
34…従金具担体
34c…凹所
34d…突片
34e…差込片
35…ボルト
36…ナット
41…摺動金具
51…断熱部材
56…傾動許容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材の上に固定される金属製の固定金具と、屋根板を直接あるいは間接的に支持し屋根板の長さ方向である前後方向に摺動可能な金属製の摺動金具との間に、上下方向での熱伝導を断つ断熱部材が備えられた屋根板支持具であって、
上記固定金具が、上下方向の嵌め合いで係合して前後方向での相対移動を阻止する第1係合部を有した金具担体と、左右方向の嵌め合いで係合して上下方向での相対移動を阻止する第2係合部を有した金具担体とを含む複数個の金具担体で構成され、
これら金具担体同士が、上記第1係合部および第2係合部よりも下方における上記断熱部材を介在させない部分で締結具により締結され、断熱部材に対する固定がなされる
屋根板支持具。
【請求項2】
前記第1係合部を有する金具担体が、断熱部材よりも前後方向に長く形成され、前後方向の両側部に、断熱部材を前後に挟み込むように上方へ突出する突片を有した
請求項1に記載の屋根板支持具。
【請求項3】
前記第1係合部を有する金具担体が、断熱部材に対して差し込む差込片を有する
請求項1に記載の屋根板支持具。
【請求項4】
前記第2係合部が、左右方向内側から外側に向けて延びるものである
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の屋根板支持具。
【請求項5】
前記第2係合部が、左右方向外側から内側に向けて延びるものである
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の屋根板支持具。
【請求項6】
前記断熱部材が、第2係合部の傾動を許容する傾動許容空間を有する
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の屋根板支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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