説明

工作機械、及び、センサモジュール

【課題】距離伸縮機構を備えてワークの直径を機内で測定できるにもかかわらず、センサの長寿命化を図ることのできる工作機械の提供。
【解決手段】ワークを加工する旋盤100であって、工具取り付け面110に取り付けられ、タレット刃物台107の径方向に伸縮する支柱122と、棒状のプローブの基端に設けられた接続子と前記基端を収容するハウジングに設けられる端子との離隔を電気的に検出することにより前記ワークと前記プローブとの接触を検知する、前記支柱122の先端に取り付けられるセンサ124とを備え、前記支柱122は、前記タレット刃物台107が回転した場合に、前記支柱122及び前記センサ124が前記旋盤100の他の構成部に干渉しない長さまで縮み、前記支柱122が縮んだ状態では、前記接続子と前記端子との接続状態が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タレット刃物台に設置された刃物で金属加工を行う工作機械に関し、特に加工対象物であるワークを計測するセンサを前記タレット刃物台に備える工作機械等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械の1つとして、回転式の工具選択機構であるタレットを備えたタレット旋盤が使用されている。
【0003】
図35は、一般的な従来のタレット旋盤の一例を示す外観斜視図である。同図に示すようにタレット旋盤100は、主軸102及びタレット103を備える。
【0004】
主軸102は、ベッド104に設けられる主軸台105に支持され、主軸チャック106にてワーク(図示せず)を把持し回転する。
【0005】
タレット103は、タレット刃物台107、インデックス機構108、及びタレットスライド109からなる。
【0006】
タレット刃物台107は、回転軸の周囲に複数の工具取り付け面110を有し、インデックス機構108によって回転可能に支持されている。工具取り付け面110には、バイトやドリルなどの工具111が工具ステーション111aを介して装着される。
【0007】
なお、主軸102の回転軸とタレット刃物台107の回転軸とを結ぶ直線は、図中に示すX軸(水平面内)に平行である。
【0008】
インデックス機構108は、タレットスライド109に設置され、モータ駆動によって、タレット刃物台107を回転させることで特定の工具取り付け面110をワーク側に位置させることができる。
【0009】
図36は、タレット旋盤100におけるタレット刃物台107と主軸102との位置関係を示す正面図である。
【0010】
同図に示すように、ワーク112の加工を行うために選択された工具は、タレット刃物台107を回転させることにより、切削位置に配置される。ここで切削位置とは、主軸102の回転軸を通りX軸に平行な直線上であって、ワーク112側の位置である。なお、この切削位置にバイト等の工具を位置させることを、一般に、工具を「割り出す」といい、以下においても使用する。
【0011】
インデックス機構108は、モータ駆動によりタレット刃物台107を主軸102の回転軸に平行な方向であるZ軸方向に移動させることができる。
【0012】
タレットスライド109は、ベッド104上に、X軸方向に移動可能に設置され、モータ駆動によって、タレット刃物台107及びインデックス機構108と共にX軸方向に移動する。
【0013】
インデックス機構108とタレットスライド109とにより、タレット刃物台107は、X軸方向及びZ軸方向に移動することができる。従って、割り出された工具は、回転する主軸102に把持されたワーク112を、径方向、及び、軸方向に加工することができる。
【0014】
以上説明した構成は、通常は筐体(図示せず)に収められ、筐体内にてワークの加工が行われる。
【0015】
ここで、タレット旋盤などの工作機械には、ワークを主軸から取り外すことなく機内でワークの寸法を計測する機能が設けられることがある。この機能を用いることにより、ワークを機外に取り出すことなく寸法計測を行えるため、工作機械の作業効率を向上させることができる。また、温度変化などの機内の環境変化によるワークや機体の変位を計測し工作機械に対する制御量を校正することで高い寸法精度を維持できる。
【0016】
例えば、タレット刃物台の工具取り付け面に工具ステーションまたは同様の取付具を介してセンサを取り付け、ワークの直径などを計測する機能を有するタレット旋盤が存在する。
【0017】
図37は、一般的なタレット旋盤における、工具ステーションを含むタレット刃物台の最大回転半径と可動範囲とを示す図である。
【0018】
同図に示すように、従来のタレット旋盤100では、タレット刃物台107は、切削位置にある工具111が、主軸102の回転軸をわずかに越える程度の範囲でX軸方向に移動する。
【0019】
タレット刃物台107のX軸方向の可動範囲がこのような範囲であることは、ワーク112の外周の切削及び中ぐり加工等を行う上では何ら問題はない。
【0020】
しかし、工具ステーション111a等の取付具にセンサを取り付けた場合、主軸102の回転軸を挟んでタレット刃物台107とは反対側の位置を計測することはできない。
【0021】
勿論、取付具の径方向の長さが長ければ、主軸102の回転軸より向こう側のワークの側面位置を計測することも可能である。
【0022】
しかしながら、工具ステーション111a等の取付具及び取り付けられる工具等を含むタレット刃物台107の最大回転半径Rは、短くすることが望まれる。
【0023】
これは、タレット刃物台107が回転する際に取付具及び工具等が機内の他の構成部に干渉しないため、タレット旋盤100の全体のコンパクト化のため、及び、工具のタレット刃物台107に対する位置精度を担保するため等の理由による。
【0024】
このように、主軸102の回転軸より一方の側のワークの外周位置を計測することで直径を算出した場合、温度変化などの機内の環境変化によるワークや機体の歪み等により、正確な値を得ることは困難である。
【0025】
そこで、ワークの直径の両端の位置を計測することでワークの直径を直接的に計測する機構を有するタレット旋盤も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0026】
図38は、ワークの直径を直接的に計測するための機構を備えた従来のタレット刃物台の一例を示す概要図である。同図(A)は前面図であり、同図(B)は上面図である。
【0027】
同図(A)及び同図(B)に示すタレット旋盤100は、タレット刃物台107の前方でタレット刃物台107中心の非回転部材に旋回可能に支持されるレール31を備えている。また、レール31の先端部には検出器32が取り付けられている。
【0028】
このレール31の長さは、タレット刃物台107が主軸102に近接した際に、ワーク112の直径の両端(P1とP2)のうち、主軸102の回転軸を挟んでタレット刃物台107とは反対側の一端(P2)の位置を検出器32が計測可能な長さである。
【0029】
タレット旋盤100は、このような構成を採用することにより、同図(B)に示すように、ワーク112の直径の両端であるP1およびP2の位置を計測することができる。このようにして得たP1とP2との差分からワーク112の直径を求めることができる。
【0030】
しかしながら、従来の技術によれば、センサを取り付けるためのアームをタレット刃物台とは別体に設けるので、タレット旋盤の小型化は困難である。
【0031】
また、同図(A)及び同図(B)に示すように、アームの回転半径は比較的大きなものになるため、アームの設置自体が不可能な場合もある。
【0032】
さらに、アームをタレット刃物台の前方に設けるので、工具交換の際にアームが邪魔になりやすい。
【0033】
そこで、本願発明者らは、鋭意努力の結果、センサをタレット刃物台の刃物取り付け面に取り付けると共に、センサをタレット刃物台の径方向に移動可能とする距離伸縮機構を備える工作機械を見出だすに至った。当該工作機械は、前記距離伸縮機構によりセンサ距離を伸ばすことで、ワークの直径を測定することができ、距離伸縮機構によりセンサ距離を縮めることで、タレット刃物台を回転させても、他の構成物と干渉することがない。
【特許文献1】実開平7−3902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
ところが、タレット刃物台に先端にセンサ備える距離伸縮機構をとりつけた場合、タレット刃物台の回転や、タレット刃物台の他の位置に取り付けられた切削工具によりワークを切削する際などに発生する振動により、センサの寿命が著しく短くなってしまうという課題を見出した。
【0035】
これは、距離伸縮機構の構造上、タレット刃物台の振動を直接、または、増幅してセンサに伝達することに起因し、センサの可動部分とセンサの固定部分とが前記振動により擦り合わされることで摩耗してしまうことが原因であることを突き止めた。
【0036】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、距離伸縮機構を備えてワークの直径を機内で測定できるにもかかわらず、センサの長寿命化を図ることのできる工作機械の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる工作機械は、主軸に把持されたワークを加工する工作機械であって、複数の工具取り付け面を有するタレット刃物台と、棒状のプローブの基端に設けられた接続子と前記基端を収容するハウジングに設けられる端子との離隔を電気的に検出することにより前記ワークと前記プローブとの接触を検知するセンサと、前記センサを保持し、前記工具取り付け面に取り付けられ、当該工具取り付け面と前記センサとの間の前記タレット刃物台の径方向の距離であるセンサ距離を伸縮させる距離伸縮機構とを備え、前記距離伸縮機構の前記径方向の長さは、前記センサ距離を縮めた状態では、前記タレット刃物台が回転した場合に、前記距離伸縮機構及び前記センサが前記工作機械の他の構成部に干渉しない長さであり、前記センサは、前記距離伸縮機構により前記センサ距離を縮めた状態において、前記接続子と前記端子との接続状態を解除可能な解除手段を備えることを特徴とする。
【0038】
これにより、距離伸縮機構を介して振動がセンサに伝わったとしても、センサの接点が前記振動により摩耗することがないため、ワークの直径が測れるなどの距離伸縮機構の効果を享受しながら、センサの長寿命化を図ることができる。
【0039】
さらに、前記距離伸縮機構によりセンサ距離が縮んだ状態では、前記センサを覆い、前記距離伸縮機構によりセンサ距離が伸びる際には、前記センサを開放するカバーを備えることが好ましい。
【0040】
これにより、センサを切り子や切削油などから保護することができ、センサの寿命をさらに長くすることが可能となる。
【0041】
さらに、駆動機構と、前記駆動機構の駆動力を前記距離伸縮機構によるセンサ距離の伸縮に変換する第1変換手段と、前記駆動機構の駆動力を前記センサの前記接続子と前記端子との離接動作に変換する第2変換手段とを備えるか、または、駆動機構と、前記駆動機構の駆動力を前記距離伸縮機構によるセンサ距離の伸縮に変換する第1変換手段と、前記駆動機構の駆動力を前記センサの前記接続子と前記端子との離接動作に変換する第2変換手段と、前記駆動機構の駆動力を前記カバーの開閉動作に変換する第3変換手段とを備えてもよい。
【0042】
これにより、一つの駆動機構(アクチュエータ)により、距離伸縮機構によるセンサ距離の伸縮と、センサにおける接続子と端子との接続状態の解除と、さらには、カバーの開閉を行うことができるため、工作機械の部品点数が減少し、制御が容易になる。また、コストダウンに寄与し、製品の長寿命化や信頼度向上にも寄与する。
【0043】
また、前記工具取り付け面に取り付けられる基台と、先端部に前記センサを有し、前記基台に回動可能に取り付けられ、センサ距離を変更自在な可動部とを備え、前記可動部を前記工具取り付け面に垂直な平面内で回転させる回転駆動機構と、前記可動部の前記基台に対する回転運動を、前記回転運動の回転軸方向の並進運動に変換する変換機構と、前記並進運動によって前記カバーを開閉させるリンク機構とを備えることが好ましい。
【0044】
これにより、堅牢な構成とすることができる。
また、前記距離伸縮機構は、前記工具取り付け面に取り付けられる基台と、先端部に前記センサを有し、前記基台に直動可能に取り付けられ、センサ距離を変更自在な可動部とを備え、前記工作機械は、さらに、前記可動部と一端部とが回動自在に接続され、前記基台と他端部とが回動自在に接続され、中間部に回動自在な第1関節を有する第1リンク機構と、前記可動部と一端部とが回動自在に接続され、前記基台と他端部とが回動自在に接続され、中間部に回動自在な第2関節を有する第2リンク機構と、前記第1関節と前記第2関節とが近づく方向に付勢する弾性体とを備えることが好ましい。
【0045】
これにより、弾性体により、距離伸縮機構が伸びた状態を維持することができ、また、距離伸縮機構が縮んだ状態を維持することも可能となる。つまり、リンク機構の死点を挟んだ2態様を弾性体により維持し続けることが可能となる。
【0046】
また、上記目的を達成するために、本願発明にかかるセンサモジュールは、複数の工具取り付け面を有するタレット刃物台に取り付けられた刃物によって主軸に把持されたワークを加工する工作機械に備えられるセンサモジュールであって、前記工具取り付け面に取り付けられ、前記タレット刃物台の径方向に伸縮する距離伸縮機構と、棒状のプローブの基端に設けられた接続子と前記基端を収容するハウジングに設けられる端子との離隔を電気的に検出することにより前記ワークと前記プローブとの接触を検知する、前記距離伸縮機構の先端に取り付けられるセンサとを備え、前記距離伸縮機構は、前記タレット刃物台が回転した場合に、前記距離伸縮機構及び前記センサが前記工作機械の他の構成部に干渉しない長さまで縮み、前記距離伸縮機構が縮んだ状態では、前記接続子と前記端子との接続状態が解除される。
【0047】
これにより、上記効果を享受しつつ、取り付け可能な工作機械に対し汎用的な運用を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、距離伸縮機構により、タレット刃物台の振動が直接、または、増幅されてセンサに伝達されたとしても、センサの可動部分とセンサの固定部分とが摩耗することなく、センサの寿命の長期化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0050】
図1は、本実施の形態にかかるタレット旋盤の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、タレット旋盤100は、ワークを把持して回転する主軸102及び回転式の工具選択機構であるタレット103を備えている。
【0051】
さらに、タレット旋盤100は、特徴的な構成部としてさらにセンサモジュール120を備えている。
【0052】
センサモジュール120は、タレット刃物台107の径方向にセンサ距離を伸縮させる距離伸縮機構としての支柱122及び基台121と、ワークの寸法を計測するためのセンサ124とを備えている。
【0053】
また、センサモジュール120は、工具ステーション111aと同様にタレット刃物台107の工具取り付け面110に取り付けられている。
【0054】
つまり、センサ124はあたかも1つの工具かのような態様でタレット刃物台107に取り付けられている。
【0055】
なお、本実施の形態のタレット旋盤100において、主軸102の回転軸とタレット刃物台107の回転軸とは平行であり、これら2つの回転軸を含む平面はX軸に平行である。
【0056】
図2は、センサモジュール120が縮んだ状態の外観を示す斜視図である。
図2に示すように、センサモジュール120は、工具取り付け面110に取り付けられる基台121と、基台121からタレット刃物台107の径方向に起立する支柱122と、計測を行う際の姿勢で支柱頭部122bに固定されるセンサ124とを有する。
【0057】
支柱122は、分離された基台と一体となされる支柱脚部122aと可動部としての支柱頭部122bとからなる。支柱脚部122aは、支柱122の起立方向に往復動する駆動力を発生させる駆動機構としてのエアシリンダ123を内部に備えている。
【0058】
支柱頭部122bは、可動部として機能するものであり、エアシリンダ123と第1変換手段としての接続部材132を介して接続されている。
【0059】
ここで接続部材132は、駆動力を前記支柱の伸縮に変換する部材である。本実施の形態の場合、エアシリンダ123が往復の駆動力を発生させるため、接続部材132は単なる板状の部材である。なお、駆動機構が回転の駆動力を発生させるもの、例えばモータであった場合は、第1変換手段は、モータに取り付けられるピニオンと、ピニオンの回転を往復動に変換するラックとで構成される装置になる。
【0060】
このエアシリンダ123により支柱122が伸縮するための駆動力が発生する。つまり、エアシリンダ123によりセンサモジュール120全体がタレット刃物台107の径方向に伸縮することとなる。
【0061】
ここで、タレット刃物台107には、切粉のブロー等のためにエアーが供給されている場合がある。この場合は、このタレット刃物台107に供給されるエアーを利用してエアシリンダ123を駆動させ、センサモジュール120を伸縮させることができるため、駆動機構としてエアシリンダ123を好適に採用しうる。
【0062】
図3は、実施の形態におけるセンサモジュール120が伸びた状態の外観を示す斜視図である。
【0063】
図3に示すように、支柱122が伸長することにより、センサモジュール120が全体として伸長する。
【0064】
センサ124は、本実施の形態においては、物体との接触を検出するいわゆるタッチ式のセンサである。
【0065】
センサ124は、センサモジュール120が伸びた状態でタレット刃物台107が移動することで、ワーク112の直径の両端の位置を検出することができる。
【0066】
タレット旋盤100またはタレット旋盤100に接続されたコンピュータ等は、このようにして得られるワーク112の直径の両端の位置の差分を求めるとこで、ワーク112の直径を得ることができる。
【0067】
なお、センサ124の詳細については後述する。
このようなセンサモジュール120の伸縮及びタレット刃物台107の移動等の動作はタレット旋盤100が備える制御部により制御される。
【0068】
図4は、実施の形態のタレット旋盤100の主要な機能構成を示すブロック図である。
図4に示すように、タレット旋盤100は、主要な機能構成として上述のタレット刃物台107等を含む機構部140と、制御部141とを備えている。
【0069】
制御部141は、機構部140の動作を制御する機能を有し、例えば、中央演算装置(CPU)、記憶装置、及び情報の入出力を行うインターフェース等を有するコンピュータにより実現される。
【0070】
例えば、ワークの直径を計測する場合、制御部141は、タレット刃物台107の回転位置が、センサ124がワーク側に位置する回転位置であるとき、センサモジュール120を縮んだ状態から伸びた状態に変化させる。さらに、センサ124とワークとの距離を変更するように前記タレット刃物台107を移動させる。
【0071】
このような制御に従いセンサモジュール120が伸び、タレット刃物台107が移動することで、当該ワークの直径の両端位置が計測される。
【0072】
なお、ワークの加工前、加工の途中、または加工後など、所定のタイミングでワークの直径の計測が行われるようにプログラミングすることも可能である。
【0073】
次に、図5及び図6を用いてセンサモジュール120が伸縮することによる効果を説明する。
【0074】
図5は、センサモジュール120が縮んだ状態の外観を示す正面図である。
なお、図5に示す、ワーク112の外周上の2点であるP1及びP2は、主軸102の回転軸(=ワーク112の回転軸)とタレット刃物台107の回転軸とを含む平面上にあり、P1とP2との距離がワークの直径となる。
【0075】
当該平面は、図5においては主軸102の回転軸とタレット刃物台107の回転軸とを通る直線で表されており、X軸に平行である。
【0076】
また、P1は、本発明の計測方法における位置計測の対象である第1端の一例であり、P2は第2端の一例である。
【0077】
図5に示すように、センサモジュール120のタレット刃物台107の径方向の長さは、支柱122が縮んだ状態、つまり、センサ距離を縮めた状態では、タレット刃物台107が回転した場合に、支柱122及びセンサ124がタレット旋盤100の他の構成部に干渉しない長さである。つまりセンサモジュール120の全体が他の構成部に干渉しない長さである。
【0078】
例えば、工具が取り付けられた場合のタレット刃物台107の最大回転半径(R1)内になる長さであれば、タレット刃物台107が回転してもセンサモジュール120が他の構成部に干渉することはない。
【0079】
従って、このように支柱122が縮んだ状態、つまり、センサ距離を縮めた状態であれば、タレット刃物台107は、センサモジュール120の存在に影響されることなく、ワークの加工または工具の交換等のために自由に回転することができる。
【0080】
なお、図5に示すように、R1をタレット刃物台107の回転軸から工具ステーション111aの先端までの距離と規定した場合、センサモジュール120の一部がR1を越える場合も考えられる。
【0081】
このような場合であっても、タレット刃物台107が回転したときに、センサモジュール120が他の構成部に干渉しない領域(非干渉領域)内に納まっていればタレット刃物台107の回転動作に何ら影響を与えない。
【0082】
つまり、支柱122が縮んだ状態の長さは、支柱122及びセンサ124が非干渉領域内に収まる長さであればよい。
【0083】
言い換えると、センサ距離を縮めた場合の支柱122の長さは、タレット刃物台107の回転を妨げることのない長さであればよい。
【0084】
ここで、タレット刃物台107は、R1が主軸102の回転軸に至る程度までX軸方向に移動することができる。そのため、支柱122が縮んだ状態でも、ワーク112の直径の両端のうち、タレット刃物台107に近いP1の位置を計測することはできる。
【0085】
しかし、当該両端のうち、タレット刃物台107から遠いP2の位置を計測することはできない。
【0086】
そこで、本実施の形態のタレット旋盤100は、支柱122を伸長させることでセンサ124によるP2の位置計測を可能としている。
【0087】
図6は、実施の形態におけるセンサモジュール120が伸びた状態の外観を示す拡大正面図である。
【0088】
図6に示すように、支柱122が伸びることでセンサモジュール120が径方向に伸びた場合、センサ124はR1の外に位置することになる。
【0089】
このようにセンサモジュール120が伸びている状態であり、かつ、タレット刃物台107が主軸102方向に接近することにより、センサ124を、主軸102の回転軸よりも向こう側、つまり当該回転軸についてタレット刃物台107とは反対側に位置させることができる。
【0090】
これにより、ワーク112の直径の両端のうち、タレット刃物台107から遠いP2の位置を計測することが可能となる。
【0091】
例えば、主軸102が把持可能なワークの最大直径が100mm程度である場合を想定する。この場合、支柱122が伸びた状態でセンサ124がR1から外に60mm程度外に位置すれば、センサ124によりP2の位置を計測することが可能である。
【0092】
つまり、支柱122の径方向の長さは、センサ距離を伸ばした状態状態では、主軸102が把持可能な最大直径のワークを主軸102が把持した場合に、当該ワークを挟んでタレット刃物台107とは反対側にセンサ124を位置させる長さである。
【0093】
支柱122が伸びた状態の長さがこのような長さであれば、例えば、様々な大きさのワークを順次加工するような場合でも、それらワークの直径の計測が可能である。
【0094】
次に、図7を用いてタレット旋盤100がワークの直径を計測する際の動作の流れについて説明する。
【0095】
図7は、実施の形態のタレット旋盤100がワーク112の直径を計測する際の動作の流れの一例を示す動作概要図である。なお、同図に示す一連の動作は、上述の制御部141によって制御されている。
【0096】
まず、[1]タレット刃物台107が回転することにより、センサモジュール120がワーク112側に割り出される。
【0097】
このときのタレット刃物台107の回転位置は、主軸102の回転軸とタレット刃物台107の回転軸とを通る直線上にセンサ124が位置する回転位置である(図5参照)。
【0098】
次に、[2]センサ距離を伸ばした状態でタレット刃物台107がX軸に平行に主軸102の方向に移動する。この移動の結果、センサ124がワーク112との接触を検出することによりP1の位置が計測される。
【0099】
次に、[3]タレット刃物台107は、Z軸に平行に前方向(図7において下方向)に移動する。さらに、X軸に平行に、主軸102の回転軸を挟んでP1とは逆の方向(図7において左方向)に移動する。この移動により、センサ124はワーク112を越えた位置に来る。
【0100】
次に、[4]タレット刃物台107は、Z軸に平行に後ろ方向(図7において上方向)に移動する。さらに、X軸に平行に、主軸102の方向(図7において右方向)に移動する。この移動の結果、センサ124がワーク112との接触を検出することによりP2の位置が計測される。
【0101】
本実施の形態のタレット旋盤100はこのような動作により、主軸に把持されたワークの直径を計測することができる。
【0102】
具体的には、ワークの直径の両端の位置を直接計測することにより直径を計測することができる。これにより、経時変化や温度変化によるワーク112やタレット旋盤100の変位をキャンセルでき、正確なワーク112の直径の値を機内で得ることができる。
【0103】
また、このような計測を行うセンサモジュール120は、バイト等の工具と同じく、タレット刃物台107の工具取り付け面110に取り付けられている。
【0104】
つまり、センサモジュール120は、タレット旋盤100内の空間を不要に消費することなく、ワークの直径の正確な計測を可能とする態様でタレット旋盤100に備えられている。
【0105】
また、センサモジュール120は、ワークの直径を計測するとき以外は縮んだ状態であり、タレット刃物台107の回転を妨げることはない。
【0106】
さらには、センサモジュール120は独立して開発が可能であり、基台121の形状または大きさ等を変更すれば、様々なタレット旋盤でワーク寸法の機内計測に用いることができる。
【0107】
このように、本実施の形態のタレット旋盤100は、ワークの直径を正確に計測でき、かつ、小型化が可能な工作機械である。また、本実施の形態のセンサモジュール120は、このような効果を工作機械にもたらすことのできるセンサモジュールである。
【0108】
以上、本発明の工作機械の一例であるタレット旋盤100について説明した。しかしながら、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0109】
本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【0110】
例えば、本実施の形態において、センサモジュール120が計測するワークの寸法は、ワークの直径であるとし、具体的には図7に示すようにワークの外径であるとした。
【0111】
しかしながら、センサモジュール120を用いてワークの他の寸法を計測してもよい。例えば、中ぐり加工により形成される穴の直径である穴の内径を計測してもよい。
【0112】
センサモジュール120は、上述のように、センサ124を主軸に把持されたワークの外径の両端に位置させることができる。つまり、ワークの外径よりも短い長さである内径の両端にセンサ124を位置させることは可能であり、これにより内径の値を正確に得ることができる。
【0113】
また、本実施の形態においては、駆動機構をエアシリンダ123として採用している。しかしながら、ソレノイドや電気モータを駆動機構として採用してもよい。
【0114】
また、回転式の工具選択機構としてのタレット刃物台を備える工作機械には、タレット旋盤以外にも、マシニングセンタなどがあり得る。従って、タレット旋盤以外の工作機械においても、本発明のセンサモジュールを用いて加工対象物の寸法を計測することができる。
【0115】
次に、センサ124を詳細に説明する。
図8は、センサ124の外観を示す斜視図である。
【0116】
同図に示すように、センサ124は、ワーク112との接触を電気接点の離接に変換し、当該接点の離接を電気的に読み出すことで、センサ124とワーク112との接触を検知するセンサであって、プローブ144と、ハウジング142と、解除手段146とを備えている。
【0117】
プローブ144は、直接ワーク112と接触する部材であって、円柱状の部材の先端に部分真球が一体に取り付けられた部材である。プローブ144は、ハウジング142の内部からハウジング142の一端部を通過してハウジング142の外部に至るまで突出状に配置されている。
【0118】
ハウジング142は、支柱頭部122bに直接取り付けられ、センサ124位置が決定されると共に、電気的な接点(接続子と端子)やその他機構を保護するための部材であり、両端部の一部が覆われた円筒形状となっている。
【0119】
解除手段146は、後述するプローブ付勢手段152による端子と接続子との当接を解除可能な部材であって、プローブ144をハウジング142に対し往復動させ、プローブ144をセンシング位置と解除位置に転換可能な部材である。解除手段146は、ハウジング142の内部からハウジング142の他端部を通過してハウジング142の外部に至るまで突出状に配置されている。解除手段146は、ハウジング142の外部に、位置決めフランジ147と、第1係合フランジ153とを備えている。
【0120】
位置決めフランジ147は、ハウジング142他端部と当接することで、ハウジング142に対する解除手段146の位置を決定する部材である。
【0121】
第1係合フランジ153は、外部の機構(後述)と係合することで、駆動力を解除手段146に伝達し、解除手段146を往復動させるための部材である。
【0122】
図9は、センサ124の内部を模式的に示す断面図である。
図10は、センサ124の一部を切り欠いて内部を示す斜視図である。
【0123】
同図に示すように、プローブ144は、ハウジング142の内部に、接続子149と、第2係合フランジ151とを備えている。また、プローブ144は、ハウジング142の外部に、保持部材160を備えている。ハウジング142は、自身の内部に、端子148を備え、一端部に保持孔162を備えている。解除手段146は、ハウジング142の内部に、基板150と、係合爪154と、プローブ付勢手段152と、位置決めフランジ付勢手段158とを備えている。
【0124】
接続子149は、端子148と接触することによって導通を確保する電気的接点として機能する円柱形状の金属部材であり、プローブ144の中間部に3個固定されている。全ての接続子149は、プローブ144の軸に対し垂直に固定されている。接続子149は、同一の円周上で均等に配置されており、各接続子149が相互になす角は120度である。つまり、接続子149は、プローブ144の軸に対し放射状均等となるようにプローブ144に固定されている。
【0125】
第2係合フランジ151は、解除手段146の係合爪154と係合し、プローブ144がハウジング142に没入する方向の駆動力をプローブ144に伝達する部材であり、プローブ144の基端に固定される円盤状の部材である。
【0126】
保持部材160は、プローブ144が解除位置に位置する際に、ハウジング142に設けられる保持孔162と嵌り合い、ハウジング142に対してプローブ144が固定されるようにする部材である。保持部材160は、ハウジング142に向かって縮径する円錐台形状をしており、プローブ144の中間部に固定されている。
【0127】
端子148は、接続子149と接触することによって導通を確保する電気的接点として機能する部材であって、V字状に配置された二つの円柱状の電極148a、電極148bで構成されている。二つの電極148a、148bは、相互に絶縁状態で、かつ、ハウジング142とも絶縁状態となされ、開放部をプローブ144の往復動方向の内側に向けて、ハウジング142の内側端面に取り付けられている。端子148は、接続子149に対応する位置に3個配置されている。
【0128】
保持孔162は、ハウジング142の一端面の中央に設けられた孔であり、外方に向けて拡径するテーパー形状となっている。保持孔162は、保持部材160と嵌り合う。
【0129】
基板150は、解除手段146をハウジング142に対しスムーズに滑りながら往復動させるための部材であり、ハウジング142の内部の断面形状に合致した円板部と、位置決めフランジ147と接続するための接続棒部とを備えている。
【0130】
係合爪154は、プローブ144の基端部にある第2係合フランジ151と係合し、解除手段146の駆動力をプローブ144に伝える部材であり、基板150の周縁部から基板150の往復動方向に一体に突設される鍵状の部材である。係合爪154は、基板150の円板部の周縁部に均等に3個一体に設けられており、それぞれが第2係合フランジ151と係合して、プローブ144をハウジング142の軸に沿ってまっすぐ引っ張れるものとなっている。係合爪154は、位置決めフランジ147がハウジング142と当接した状態(センシング位置)では、第2係合フランジ151係合せず、プローブ144の傾動を邪魔しないものとなっている。
【0131】
プローブ付勢手段152は、位置決めフランジ147がハウジング142と当接した状態(センシング位置)において、接続子149を端子148に緩やかに押接する弦巻ばねである。プローブ付勢手段152は、基板150に対し、プローブ144が遠ざかる方向に付勢力を備えている。また、前記付勢力は、接続子149が端子148に押接されているが、プローブ144の先端がワーク112に僅かに触れただけで、三つある接続子149と端子148との押接状態の少なくとも一つが解除される程度の付勢力である。
【0132】
位置決めフランジ付勢手段158は、位置決めフランジ147がハウジング142と当接した状態(センシング位置)を維持するためのものであり、ハウジング142の他端部内側と、対向する基板150との間を相互に遠ざかる方向の付勢力を備えている。位置決めフランジ付勢手段158の付勢力はプローブ付勢手段152の付勢力よりも強く、センサ124に多少の振動が加えられても、センシング位置を維持し得る付勢力を備えている。
【0133】
次に、センサ124のセンシング方法を説明する。
センサ124の解除手段146がセンシング位置にある場合は、従来のセンサと変わりがない。図11に示すように三つの端子148が導線131により結線されている。そして、接続子149が端子148に押接されているため、図12に示すように、二つの電極148a、148bは、接続子149により電気的に接続されている。以上から、二つの引出線131a、131b間は、導通状態となっている。なお、端子148は、絶縁体133によりV字状に保持されている。
【0134】
次に、プローブ144がワーク112に接触すると、プローブ144がハウジング142に対して傾動する。プローブ144に固定されている接続子149の少なくともいずれか一つは、他の接続子149を軸として端子148から浮き上がる。これにより二つの電極148a、148b間が絶縁状態となり、二つの引出線131a、131b間は絶縁状態となる。
【0135】
従って、二つの引出線間が絶縁状態か否かを観測しておくことで、プローブ144とワーク112との接触を検知することができる。
【0136】
次に、センサ124の保護状態を説明する。
図13は、センサ124のセンシング状態と、保護状態とを対比して示す図である。同図(1)はセンシング状態を示し、同図(2)は、保護状態を示している。
【0137】
同図(1)に示すように、解除手段146がセンシング位置にある場合、基板150等の解除手段146は、ハウジング142に対し所定の位置に配置され、位置決めフランジ付勢手段158により前記位置が固定されている。この状態では、解除手段146の係合爪154と第2係合フランジ151とは離隔しており、プローブ144はプローブ付勢手段152により接続子149が端子148に押接されている。
【0138】
従って、上述したように、プローブ144とワーク112との僅かな接触を検出することができるものの、タレット刃物台107が回転するたびに、遠心力や加速度によりプローブ144がハウジング142に対して大きく振り回されるため、接続子149と端子148とが激突することが繰り返される。また、タレット刃物台107に取り付けられている他の刃物でワーク112を切削している際の振動などが支柱122等により増幅されセンサ124に伝わると、接続子149と端子148とが振動により擦り合わされる。
【0139】
以上により、接続子149や端子148が摩耗して静摩擦係数が大きくなり、プローブ144がワーク112に僅かに接触しただけではセンサ124が反応しないなどの不具合が生じることになる。
【0140】
そこで、センサ124を使用しない状態においては、同図(2)に示すように、解除手段146を解除位置にする。つまり、解除手段146をハウジング142に対し引き出した状態とする。これにより、解除手段146の係合爪154が第2係合フランジ151と係合して、プローブ144をハウジング142に対して没入させ、接続子149と端子148との接続を強制的に解除する。
【0141】
これにより、センサ124に多少の振動が加えられたとしても、接続子149と端子148とが擦り合わされることが無いため、接続子149と端子148とが摩耗することが無くなる。さらに、プローブ144の保持部材160と、ハウジング142の保持孔162とが嵌り合うため、ハウジング142に対しプローブ144が固定され、タレット刃物台107が回転し、遠心力や加速度がセンサ124に加わったとしても、ハウジング142に対しプローブ144が揺れ動かないため、接続子149と端子148とが激しく衝突することもなくなる。
【0142】
以上により、センサ124を保護し、センサ124の長寿命化を図ることが可能となる。
【0143】
なお、図14は、保護状態のセンサをハウジングの一部を切り欠いて示す斜視図である。
【0144】
次に、センサ124を保護状態にするための駆動力の伝達について説明する。
図15は、伸長状態のセンサモジュールを示す側面図である。
【0145】
図16は、縮退状態のセンサモジュールを示す側面図である。
これらの図に示すように、センサ124は、支柱頭部122bに、伸縮方向に対して垂直に取り付けられている。また、センサ124が備える第1係合フランジ153に対応する支柱頭部122bの部分にはレバー部材181が軸支されている。このレバー部材181の一端部は第1係合フランジ153とハウジング142側から当接することができるものとなっている。
【0146】
一方、支柱脚部122aには、板状のカム部材182が取り付けられている。カム部材182は、支柱頭部122bが縮退するにつれて近づいてくるレバー部材181の他端部と当接し、当該他端部をハウジング142側に押し出すことができる形状と剛性を備えた部材である(図16参照)。
【0147】
以上のようにレバー部材181とカム部材182とを備えることで、センサモジュール120が伸長状態、すなわちセンサ124によるセンシングが必要な場合は、解除手段146に外部から駆動力が伝達されていないため、位置決めフランジ付勢手段158の付勢力により、解除手段146はセンシング位置で固定され、センサ124はセンシング状態となる。
【0148】
一方、センサモジュール120が縮退状態、すなわち、センサ124を振動などから保護する必要がある場合は、エアシリンダ123の駆動力がレバー部材181を介して解除手段146に伝達され、解除手段146は、ハウジング142に対して引き出される。すなわち解除手段146はセンサモジュール120の縮退に連動して解除位置に配置される。つまり、レバー部材181とカム部材182とは、エアシリンダ123の往復の駆動力をセンサ124の接続子149と端子148との離接動作に変換する第2変換手段として機能している。
【0149】
以上のような構成を採用することで、一つのエアシリンダにより、センサモジュール120が備える距離伸縮機構によるセンサ距離の伸縮と、センサ124のセンシング状態と保護状態との転換とを同時に行うことが可能となる。
【0150】
次に、さらにカバーを備えたセンサモジュール120を説明する。
図17は、タレット刃物台107に取り付けられたセンサモジュールを示す斜視図である。
【0151】
同図に示すセンサモジュール120は、上述のセンサモジュール120に加え、カバーを構成する第1カバー片225と、第2カバー片226とを備えている。なお、第1カバー片225と第2カバー片226とを総称するときはカバー220と記す。
【0152】
第1カバー片225及び第2カバー片226は、支柱122及びセンサ124をそれぞれ約半分覆うことのできる箱形状の部材であり、第1カバー片225と第2カバー片226とが合わさることで、支柱122及びセンサ124を覆い隠すカバーとして機能することができるものとなっている。第1カバー片225及び第2カバー片226は、基台121の支柱122を挟む両側に設けられる支持軸239(図19参照)で、タレット刃物台107の周方向に開閉可能に軸支される。
【0153】
センサモジュール120は、さらに、エアシリンダ123の駆動力を前記カバー220の開閉動作に変換する第3変換手段として、ブラケット235と、第1アーム233と、第2アーム234とを備えている。
【0154】
ブラケット235は、支柱頭部122bに固定され支柱頭部122bと共に移動するL字形状の板状の部材である。
【0155】
第1アーム233は、第1リンク機構の構成要素であり、第1アーム233の一端は、ブラケットと235を介して支柱頭部122bと回動自在に接続され、他端は、第1カバー片225と回動自在に接続されている。第1アーム233と第1カバー片225との接続部分が、第1リンク機構の構成要素である第1関節241として機能している。また、第1カバー片225は、基台121に回動自在に支持軸239により軸支されており、第1リンク機構の構成要素としても機能している。以上のように、各構成要素が接続されることで第1リンク機構が構成されている。
【0156】
同様に、第2アーム234は、第2リンク機構の構成要素であり、第2アーム234の一端は、ブラケットと235を介して支柱頭部122bと回動自在に接続され、他端は、第2カバー片226と回動自在に接続されている。第2アーム234と第2カバー片226との接続部分が、第2リンク機構の構成要素である第2関節242として機能している。また、第2カバー片226は、基台121に回動自在に支持軸239により軸支されており、第2リンク機構の構成要素としても機能している。以上のように、各構成要素が接続されることで第2リンク機構が構成されている。
【0157】
さらに、センサモジュール120は、弾性体としてのばね236を備える。ばね236は、第1関節241と第2関節とが近づく方向に付勢する弦巻ばねである。このように、第1関節241と第2関節との間を付勢していると、第1アーム233と第2アーム234との死点を越えて支柱頭部122bが伸長状態にあれば、ばね236の付勢力は支柱頭部122bを伸長させる方向に作用する。また、第1アーム233と第2アーム234との死点を越えて支柱頭部122bが縮退状態にあれば、ばね236の付勢力は支柱頭部122bを縮退させる方向に作用する。
【0158】
図18は、カバー220が閉じた状態(つまり、第1カバー片225及び第2カバー片226が接した状態)のセンサモジュール120を示す外観斜視図である。
【0159】
このカバーが閉じた状態は、支柱頭部122bがタレット内周側端部へ退入した状態に対応する。
【0160】
第1カバー片225及び第2カバー片226は、この閉じた位置において、支柱122及びセンサ124を覆うとともに、タレット刃物台107が回転した場合に他の構成部と干渉しない刃物の旋回半径内に収容される。
【0161】
第1カバー片225及び第2カバー片226は、支柱頭部122bが動くに連れて、第1リンク機構、および、第2リンク機構により、開いた位置と閉じた位置との間を移動する。つまり、第1リンク機構と第2リンク機構とが協働することにより、第1リンク機構と第2リンク機構とがエアシリンダ123の駆動力をカバーの開閉動作に転換する第3変換手段として機能している。
【0162】
次に、カバー220の開状態及び閉状態を安定的に保持する機構について説明する。
図19は、カバーの開閉状態を同時に示す概念図である。
【0163】
支柱頭部122bがタレット内周側端部にある場合の位置を実線及び点線で示し、支柱頭部122bがタレット外周側端部にある場合の位置を二点鎖線で示す。
【0164】
支柱頭部122bの移動範囲の両端部は、ばね236の付勢力によって支柱頭部122bが各端部に押止される位置に設けられる。
【0165】
支柱頭部122bがタレット内周側(図面右方)の端部にある場合には、第1アーム233のブラケット235側の接続点が第1カバー片225側の接続点よりも右方にあり、また第2アーム234のブラケット235側の接続点が第2カバー片226側の接続点よりも右方にある。
【0166】
この位置において、ばね236の付勢力はブラケット235を右方へ押し出す方向に働くので、支柱頭部122bは移動範囲のタレット内周側の端部に押止される。
【0167】
支柱頭部122bがタレット外周側(図面左方)へ移動するに連れて、第1カバー片225及び第2カバー片226の開き角は増していく。そして、第1アーム233及び第2アーム234が支柱頭部122bの移動方向に対して垂直になる位置で、第1カバー片225及び第2カバー片226の開き角が最大となる。支柱頭部122bがその位置を通過するとカバー片は閉じ始め、移動範囲のタレット外周側の端部に到達するまで、第1カバー片225及び第2カバー片226の開き角は減っていく。
【0168】
支柱頭部122bがタレット外周側の端部にある場合には、第1アーム233のブラケット235側の接続点が第1カバー片225側の接続点よりも左方にあり、また第2アーム234のブラケット235側の接続点が第2カバー片226側の接続点よりも左方にある。
【0169】
この位置において、ばね236の付勢力はブラケット235を左方へ押し出す方向に働くので、支柱頭部122bは移動範囲のタレット外周側の端部に押止される。
【0170】
この構成により、エアシリンダ123に供給されるエアーが途絶え、駆動力が発生しなくなった場合、つまり、駆動機構からの駆動力が途切れた場合でも、ばね236の付勢力によって、カバー220の開状態及び閉状態が安定して保たれるので、不時の停電などにおけるフェイルセーフに役立つ。
【0171】
さらに、本実施の形態におけるセンサモジュール120は、支柱122の伸縮と、センサ124の解除手段146の解除位置とセンシング位置との転換と、カバー220の開閉とは連動しているため、ばね236の付勢力により、エアー途切れなど駆動力が発生しない状況下でも、支柱122が縮み、センサ124が保護状態にあり、カバー220が閉ざされている状況が維持される。また、支柱頭部122bが伸長し、センサ124がセンシング状態にあり、カバー220が開かれている状況が維持される。
【0172】
次に、上記のように構成されたタレット旋盤100の動作について説明する。
ワーク112の計測を行う際、タレット旋盤100の制御部141(図4参照)は、インデックス機構108を制御することによって、タレット刃物台107のセンサモジュールが取り付けられた刃物取り付け面をワーク112の方向へ位置付ける。
【0173】
そして、エアシリンダ123へエアーを供給することにより、支柱頭部122bをタレット外周側端部へ進出する。この動きに伴い、カバー220が開き、センサ124がセンシング状態となる。
【0174】
この状態で、ワーク112の計測が行われる。すなわち、制御部141は、タレットスライド109を移動させ、ワーク112の直径上の2点のX座標をセンサ124の接触により特定することにより、ワーク112の直径を計測する。
【0175】
第1カバー片225及び第2カバー片226は、タレット刃物台107の周方向に、工具の旋回半径から大きく逸脱することなく開閉するので、第1カバー片225及び第2カバー片226を退避させるための空間をわざわざ取る必要がなく、タレット旋盤の小型化の点で有利である。
【0176】
また、第1カバー片225及び第2カバー片226は、ワーク112から遠ざかる方向に開くので、第1カバー片225及び第2カバー片226とワーク112との干渉が起こりにくい。第1カバー片225及び第2カバー片226は、ワーク112との干渉回避の点から、隣接する工具との干渉が生じない限り広く開くことが望ましい。
【0177】
さらに、支柱頭部122bと共にセンサ124がワーク方向へ進出することで、第1カバー片225及び第2カバー片226とセンサ124とのクリアランスが増大することも、第1カバー片225及び第2カバー片226と大型のワーク112との干渉を回避する上で有利である。
【0178】
ワーク112の計測が終わると、制御部141は、再びエアシリンダ123へエアーを供給することにより、支柱頭部122bを移動範囲のタレット内周側端部へ移動させる。これにより、支柱頭部122bと共にセンサ124がタレット内周側に引き込まれ、カバー220が閉じ、センサ124が保護状態となる。
【0179】
この状態で、支柱脚部122a、センサ124、支柱頭部122bは、第1カバー片225及び第2カバー片226で覆われ、切粉やクーラントの飛来及び接触から保護される。また、第1カバー片225及び第2カバー片226は刃物の旋回半径内に収容され、タレット刃物台107が回転した場合でも他の構成部と干渉しない。
【0180】
このような保護が得られた状態で、制御部141は、タレット刃物台107を回転させることによって好適な工具をワーク112の方向へと位置付け、ワーク112の加工を続行する。
【0181】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2として、端部にセンサ124を備えるアーム322が回動することにより、センサ距離を伸縮させることのできるセンサモジュール120を備えるタレット旋盤100について説明する。タレット旋盤100は、本発明の工作機械の別の一例である。
【0182】
なお、実施の形態2のタレット旋盤100の基本的な構成は、実施の形態1のタレット旋盤100と同じである。そこで、実施の形態2において特徴的な構成部であるセンサモジュール120を中心に説明する。
【0183】
まず、図20〜図23を用いて、実施の形態2におけるセンサモジュール120の基本的な構成について説明する。
【0184】
図20は、本発明の実施の形態2におけるセンサモジュール120の外観を示す拡大斜視図である。
【0185】
センサモジュール120は、基台121と、基台121に取り付けられ回動するアーム322と、アーム322と一体に回動するギアボックス323と、アーム322の回動を駆動する駆動部324と、センサ124(図20に図示せず)を覆う第1カバー片225と第2カバー片226と、アーム322の先端部に取り付けられた後部カバー327とを有する。
【0186】
図20は、アーム322を内側に収めてセンサ距離を縮めた状態のセンサモジュール120を示している。この状態から駆動部324は、アーム322を180度回動させることができる。
【0187】
アーム322の端部に保持されているセンサ124は、アーム322が回動することにより、工具取り付け面110との距離(センサ距離)が伸ばされることになる。
【0188】
図21は、図20に示す状態からアーム322が90度回動した状態のセンサモジュール120の外観を示す拡大斜視図である。
【0189】
図22は、図20に示す状態からアーム322がさらに90度回動した状態のセンサモジュール120の外観を示す拡大斜視図である。
【0190】
図21に示すように、アーム322の回動に伴い、第1カバー片225と第2カバー片226とが開く。詳細は後述する。
【0191】
また、図22に示すように、アーム322が図20に示す状態から180度回転すると、センサ距離が伸ばされた状態となり、第1カバー片225と第2カバー片226とが完全に開く。
【0192】
このように、センサモジュール120は、アーム322を回動させることにより、センサ124の径方向の位置を、工具取り付け面110から遠い位置へ持っていくことができる。つまり、センサ距離を伸ばすことができる。
【0193】
このようにセンサ距離を伸ばすことにより、センサ124によりワークの直径の両端の位置を直接計測することが可能となる。
【0194】
なお、駆動部324は、例えば、エアシリンダとラック・アンド・ピニオンとで構成されており、エアシリンダを駆動源としてアーム322を回動させることができる。
【0195】
また、駆動部324にエアシリンダを用いた場合は、上述のように、切粉のブロー等のためにタレット刃物台107に供給されるエアーを利用することができる。
【0196】
また、アーム322と駆動部324とにより本発明の工作機械およびセンサモジュールにおける距離伸縮機構が実現される。
【0197】
また、図22に示す状態から、アーム322が逆に180度回動すると、図20に示す状態、つまり、センサ距離を縮め、かつ、第1カバー片225と第2カバー片226とが閉じた状態となる。
【0198】
このような第1カバー片225および第2カバー片226の開閉動作は、本実施の形態においてはギアボックス323およびリンク機構により実現されている。リンク機構の詳細については後述する。
【0199】
なお、センサモジュール120がセンサ距離を縮めた状態にある場合、センサモジュール120の径方向の長さは、工作機械の他の構成部に干渉しない長さである。
【0200】
図23は、実施の形態2におけるセンサモジュール120がセンサ距離を縮めた状態の外観を示す拡大正面図である。
【0201】
同図に示すように、センサモジュール120がセンサ距離を縮めた状態にある場合、本実施の形態においては、センサモジュール120の一部が、上述の最大回転半径であるR1を越えている。
【0202】
しかしながら、センサモジュール120は、非干渉領域(同図のR2に示される円内)に収まっているため、センサモジュール120がタレット刃物台107の回転動作の妨げとなることはない。
【0203】
このように、実施の形態2のセンサモジュール120も、実施の形態1のセンサモジュール120同じく、タレット刃物台107の回転の妨げとならない態様でタレット刃物台107に取り付けられている。
【0204】
また、センサモジュール120がワーク側の切削位置にあるときにアーム322が回動することでセンサ距離が伸長される。これにより、ワークの直径の直接的な計測を可能としている。
【0205】
次に、図24〜図30を用いて、実施の形態2のセンサモジュール120の構成および動作の詳細を説明する。
【0206】
図24は、実施の形態2のセンサモジュール120の構成を示す平面図である。
同図に示すように、センサモジュール120は、上述のアーム322等の構成部の他に、カム328とスライド部材329とを備えている。
【0207】
また、駆動部324は、タレット刃物台107の回転軸と平行、つまりZ軸に平行な方向の駆動軸324aを有する。
【0208】
アーム322は駆動軸324aと連結されており、駆動部324は駆動軸324aを介してアーム322を回動させることができる。
【0209】
このとき、アーム322に取り付けられているギアボックス323は、アーム322とともに回動する。この回動に伴いギアボックス323内のギアが回転し、カム328をZ軸方向に平行な方向に移動させる。
【0210】
このようにカム328が移動することにより、カム328に連結されたスライド部材329が同じ方向に移動する。
【0211】
なお、スライド部材329は、アーム322およびギアボックス323に対してZ軸方向に平行な方向にのみスライド可能である。これにより、スライド部材329に連結されたカム328は、アーム322およびギアボックス323に対して回転しない。
【0212】
図25は、カム328の外観を示す斜視図である。
カム328は、ギアボックス323内のギアの内周の突起が係合し摺動するカム溝328aと、スライド部材取付部328bが取り付けられる部位であるスライド部材取付部328bとを有する。
【0213】
図25は、ギアボックス323の内部構造の概要を示す図である。
図25に示すように、ギアボックス323は、ギアケース323aと、第1ギア323bと、第2ギア323cと、第3ギア323dとを有する。
【0214】
これら3つのギアのうち、第1ギア323bのみが、基台121に対して回転しない。具体的には、基台121の円筒部121a(図24参照)に固定さている。
【0215】
そのため、ギアボックス323が駆動軸324aを中心に回動すると、第1ギア323bは、ギアケース323aに対して相対的に回転することになる。
【0216】
また、第3ギア323dの内周には突起323eが設けられており、第3ギア323dの内側の孔に挿入されたカム328のカム溝328aと係合している。また、カム溝328aの方向は、第3ギア323dの回転面に対して斜めの方向である。
【0217】
この構造において、第3ギア323dが回転することにより、ギアボックス323に対して回転しないカム328は、Z軸に平行な方向、つまり、図26の奥方向または手前方向に移動する。
【0218】
例えば、駆動軸324aが図26に示すように時計回りに回動すると、それに伴い、ギアボックス323が同じ方向に回動する。
【0219】
このとき、基台121に固定された第1ギア323bは、ギアケース323aに対しては反時計回りに回転する。
【0220】
この第1ギア323bの回転力は第2ギア323cを介して、第3ギア323dに伝わり、第3ギア323dは反時計回りに回転する。これにより、カム328はZ軸に平行な方向に移動する。
【0221】
図27は、カム328が移動する様子を示す模式図である。
同図に示すように、突起323eは、カム溝328aをなぞりながらZ軸に垂直な方向に移動する。これにより、カム328はZ軸に平行な方向へ移動する。
【0222】
例えば、図27の左方向が、図26の奥方向である場合、ギアボックス323が時計回りに回動することで、第3ギア323dは反時計回りに回転する。これにより、カム328は、図26の手前方向(図27の右方向)に移動する。
【0223】
また、ギアボックス323が反時計回りに回動すると、カム328は、図26の奥方向(図27の左方向)に移動する。
【0224】
このようなカム328の移動に伴ってスライド部材329が移動し、第3変換手段としてのリンク機構により第1カバー片225および第2カバー片226が開閉し、また、第2変換手段によりセンサ124をセンシング状態と、保護状態とに変換する。
【0225】
図28は、第1カバー片225および第2カバー片226が閉じた状態を示す図である。
【0226】
同図に示すように、第1カバー片225は、後部カバー327と第1ピン225aで回動可能に連結されており、第1ピン225aを回動軸として回動することができる。
【0227】
また、第2カバー片226は、後部カバー327と第2ピン226aで回動可能に連結されており、第2ピン226aを回動軸として回動することができる。
【0228】
また、第1カバー片225および第2カバー片226のそれぞれはスライド部材329と第3変換手段リンクで連結されている。
【0229】
同図に示す状態から、カム328が、センサ124が存在する方向、つまり同図における右方向に移動すると、スライド部材329も右方向に移動する。
【0230】
スライド部材329が右方向に移動すると、リンク機構により、第1カバー片225が同図の上方向に回動する。また、第2カバー片226が下方向に回動する。つまり、第1カバー片225および第2カバー片226が開くように回動する。
【0231】
このようにカム328の右方向への移動に伴い、次第に第1カバー片225および第2カバー片226が次第に開いていき、図29に示す状態を経て図30に示す状態になる。
【0232】
図29は、第1カバー片225および第2カバー片226が完全に開く前の状態を示す図であり、図30はこれらが完全に開いた状態を示す図である。
【0233】
図30に示すように、第1カバー片225および第2カバー片226のそれぞれが略90度だけ回動することにより、センサ124によるワークの寸法の計測時にこれらカバー片が邪魔になることがない。
【0234】
また、これらカバー片内に切粉等のごみが存在する場合でも、そのごみをカバー片内から外部に排出することができる。つまり、これらカバー片内にごみが堆積することを防ぐことが出来る。
【0235】
なお、図30に示す状態から、カム328の左方向へ移動することにより、第1カバー片125および第2カバー片226は図28に示す位置まで戻る。
【0236】
図31は、第1カバー片225および第2カバー片226が開く際のセンサモジュール120の動作の流れを示す図である。
【0237】
なお、同図の上段は、図28に対応する図であり、同図の中段は、図29に対応する図であり、同図の下段は、図30に対応する図である。
【0238】
同図の上段は、センサ距離が最も短い状態であり、この状態からアーム322が90度回動すると同図の中段に示す状態になる。さらにアーム322が90度回動すると同図の下段に示す状態になる。
【0239】
このように、アーム322が回動することにより、上述のリンク機構により第1カバー片225および第2カバー片226が次第に開いていく。
【0240】
また、同図の下段に示すように、センサ距離が伸ばされた状態になると、アーム322は回動を停止し、センサ124はセンシング状態となりワーク112の寸法の計測が開始される。
【0241】
図32は、センサ距離を縮めた状態のセンサモジュールを示す断面図である。
図33は、センサ距離を伸ばした状態のセンサモジュールを示す断面図である。
【0242】
なお、実施の形態2で使用されるセンサ124は、実施の形態1で使用されるセンサ124とまったく同じであるため、構成や機能の説明を省略し、同じ構成要素については同じ番号を付して説明する。
【0243】
これらの図に示すように、センサ124は、アーム322先端に、固定状態で取り付けられている。センサ124は、アーム322の回転軸と平行に配置されている。また、一端部が閉塞される円筒形状のカム328の内部に挿通される第1係合フランジ153は、カム328の内部に取り付けられる係合鉤341と係合するものとなっている。また、第1係合フランジ153と係合鉤341との係合は、位置決めフランジ付勢手段158に抗し第1係合フランジ153を係合鉤341とが引っ張れる方向に係合する関係となっている。
【0244】
以上のように、第1係合フランジ153とカム328とが連動して動作するため、センサ距離が伸びた状態、すなわち、センサ124によるセンシングが必要な場合は、アーム322に対しカム328が近づき第1係合フランジ153を係合鉤341との係合状態が解除されるため、位置決めフランジ付勢手段158の付勢力により、解除手段146はセンシング位置で固定され、センサ124はセンシング状態となる。
【0245】
一方、センサ距離が縮んだ状態、すなわち、センサ124を振動などから保護する必要がある場合は、アーム322に対しカム328が遠ざかるため、係合鉤341が第1係合フランジ153を引っ張り、解除手段146に伝達される。従って、解除手段146は、ハウジング142に対して引き出され、センサ124は保護状態となる。
【0246】
つまり、アーム322の回転力は、アーム322に対するカム328の往復の駆動力に変換され、当該カム328の往復の駆動力は、センサ124の接続子149と端子148との離接動作に変換されており、これらの機構が第2変換手段として機能している。
【0247】
図34は、ワーク112の直径を計測する際の、センサモジュール120とワーク112との位置関係の一例を示す図である。
【0248】
同図に示すように、アーム322が回動し、センサ距離を伸ばすことにより、タレット刃物台107から近いP1の位置のみならずタレット刃物台107から遠いP2の位置の計測も可能となる。つまり、ワーク112の直径を直接計測することができる。
【0249】
ワーク112の直径の計測の際のタレット刃物台107の動きは図7に示すものと同じである。
【0250】
すなわち、センサ距離を伸ばした状態で、タレット刃物台107がX軸に平行な方向への移動およびZ軸に平行な方向への移動を繰り返すことにより、P1とP2の位置を計測する。
【0251】
なお、このようなアーム322の回動およびタレット刃物台107の移動は、実施の形態1における支柱122の伸縮等と同じく、制御部141よって制御される。
【0252】
実施の形態2のタレット旋盤100はこのような動作により、実施の形態1のタレット旋盤100と同じく、主軸102に把持されたワークの直径を直接計測することができる。これにより、正確な直径の値を得ることができる。
【0253】
また、実施の形態2におけるセンサモジュール120は、実施の形態1におけるセンサモジュール120と同じく、タレット旋盤100内の空間を不要に消費することなく、かつ、タレット刃物台107の回転を妨げることはない。
【0254】
また、必要なときにのみ、アーム322を回動させてセンサ距離を伸ばすことで、ワークの寸法を直接計測することができる。
【0255】
また、センサモジュール120も独立して開発が可能であり、基台121の形状または大きさ等を変更すれば、様々なタレット旋盤でワーク寸法の機内計測に用いることができる。
【0256】
このように、実施の形態2のタレット旋盤100は、ワークの直径を正確に計測でき、かつ、小型化が可能な工作機械である。また、本実施の形態のセンサモジュール120は、このような効果を工作機械にもたらすことのできるセンサモジュールである。
【0257】
なお、本実施の形態において、センサモジュール120のアーム322の回動軸となる駆動軸324aは、タレット刃物台107の回転軸と平行であるとした。しかしながら、駆動軸324aは別の方向を向いていてもよい。
【0258】
要するに、駆動軸324aの方向は、アーム322を回動させることで、タレット刃物台107の回転の妨げとならず、計測対象のワークの直径を直接計測できるようにセンサ距離を伸縮させることが可能な方向であればよい。
【0259】
また、センサモジュール120を用いてワークの直径以外の寸法を計測してもよい。例えば、中ぐり加工により形成される穴の直径である穴の内径を計測してもよい。
【0260】
また、駆動部324の駆動源としてエアシリンダに換えてソレノイドや電気モータを駆動源として採用してもよい。
【0261】
また、センサ124はタッチ式のセンサでなくてもよく、光学的にワークの形状及び位置等を計測するセンサでもよい。さらには、寸法以外の温度等の物性値を計測するセンサであってもよい。
【0262】
また、タレット旋盤以外の工作機械においても、実施の形態2のセンサモジュールを用いて加工対象物の寸法を計測することができる。
【0263】
以上、本発明の工作機械の一例としてのタレット旋盤について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【0264】
例えば、駆動機構を、エアシリンダに代えて、オイルシリンダ、電磁ソレノイド、又は電気モータで実現することも、もちろん可能である。
【0265】
また、第1カバー片225と第2カバー片226とを閉じる方向に付勢する弾性体は、ばね236に限定されない。例えば、第1カバー片225及び第2カバー片226のそれぞれと基台121とに掛け渡されるねじりばねであってもよい。
【0266】
また、第1カバー片225及び第2カバー片226の支持軸をタレットの前面側に向かって狭まる非平行に配置してもよい。そうすれば、第1カバー片225及び第2カバー片226それぞれのセンサ124側の先端部が開きながらタレットの前面側に移動するので、ワーク112からより遠ざかることができる。このことは、第1カバー片225及び第2カバー片226と大型のワーク112との干渉を回避する上で有利である。
【0267】
また、回転式の工具選択機構としてのタレットを備える工作機械には、タレット旋盤以外にも、マシニングセンタなどがあり得る。
【0268】
本発明の工作機械の一例としてのタレット旋盤によれば、支柱122とセンサ124とが第1カバー片225及び第2カバー片226で覆われ、少なくともセンサ124はカバーされることにより切粉やクーラントから保護され、センサ124の長寿命化が図られるとともに、タレット旋盤の小型化に役立つ次のような多くの特徴が得られる。
【0269】
すなわち、伸縮機構とセンサとカバーとがタレットの工具取り付け面に設けられるので、従来のようにセンサを取り付けるためのアームをタレット刃物台と別体に設ける構成とは異なり、機内の空間が無駄に占有されることがない。また、他の工具取り付け面への刃物着脱の邪魔になりにくい。
【0270】
さらには、基台121から上部の構造は、工具取り付け面に取り付けられるセンサモジュールとして、タレット103とは独立して設計でき、また、タレット103には従来のアームのような複雑な機構を付け加えない。そのため、タレット旋盤の合理的な設計開発が可能となり、タレット旋盤の信頼性の向上にも役立つ。
【産業上の利用可能性】
【0271】
本発明の工作機械は、例えばタレット旋盤やマシニングセンタといった、工具選択機構としてのタレットを有する工作機械として広く利用できる。
【0272】
また、本発明のセンサモジュールは、工具選択機構としてのタレットを有する工作機械におけるワークの寸法の計測機構として広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0273】
【図1】本実施の形態にかかるタレット旋盤の外観を示す斜視図である。
【図2】センサモジュールが縮んだ状態の外観を示す斜視図である。
【図3】センサモジュールが伸びた状態の外観を示す斜視図である。
【図4】タレット旋盤の主要な機能構成を示すブロック図である。
【図5】主軸およびタレットを示す正面図である。
【図6】センサモジュールが伸びた状態を示す正面図である。
【図7】タレット旋盤のワーク直径を計測する動作の流れを説明する図である。
【図8】センサの外観を示す斜視図である。
【図9】センサの内部を模式的に示す断面図である。
【図10】センサの一部を切り欠いて内部を示す斜視図である。
【図11】端子の結線状態を示す平面図である。
【図12】端子と接続子の状態を示す側面図である。
【図13】センサのセンシング状態と、保護状態とを対比して示す図である。
【図14】保護状態のセンサをハウジングの一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図15】伸長状態のセンサモジュールを示す側面図である。
【図16】縮退状態のセンサモジュールを示す側面図である。
【図17】タレット刃物台に取り付けられたセンサモジュールを示す斜視図である。
【図18】カバーが閉じた状態のセンサモジュールを示す斜視図である。
【図19】カバーの開閉状態を同時に示す概念図である。
【図20】本発明の実施の形態2におけるセンサモジュールの外観を示す拡大斜視図である。
【図21】アームが90度回動した状態のセンサモジュールの外観を示す拡大斜視図である。
【図22】アームがさらに90度回動した状態のセンサモジュールの外観を示す拡大斜視図である。
【図23】センサモジュールがセンサ距離を縮めた状態の外観を示す拡大正面図である。
【図24】センサモジュールの構成を示す平面図である。
【図25】カムの外観を示す斜視図である。
【図26】ギアボックスの内部構造の概要を示す図である。
【図27】カムが移動する様子を示す模式図である。
【図28】第1カバー片および第2カバー片が閉じた状態を示す図である。
【図29】第1カバー片および第2カバー片が完全に開く前の状態を示す図である。
【図30】第1カバー片および第2カバー片が完全に開いた状態を示す図である。
【図31】第1カバー片および第2カバー片が開く際のセンサモジュールの動作の流れを示す図である。
【図32】保護状態のセンサを示す断面図である。
【図33】センシング状態のセンサを示す断面図である
【図34】ワークの直径を計測する際の、センサモジュールとワークとの位置関係の一例を示す図である。
【図35】一般的なタレット旋盤の主要部の一例を示す外観斜視図である。
【図36】一般的なタレット旋盤におけるタレット刃物台と主軸との位置関係を示す正面図である。
【図37】一般的なタレット旋盤におけるタレット刃物台の最大回転半径と可動範囲とを示す図である。
【図38】ワークの直径を計測するための機構を備えた従来のタレット刃物台の一例を示す概要図である。
【符号の説明】
【0274】
32 検出器(従来)
100 タレット旋盤
102 主軸
103 タレット
104 ベッド
105 主軸台
106 チャック
107 タレット刃物台
108 インデックス機構
109 タレットスライド
110 工具取り付け面
111 工具
111a 工具ステーション
112 ワーク
120 センサモジュール
121 基台
122 支柱
122a 支柱脚部
122b 支柱頭部
123 エアシリンダ
124 センサ
132 接続部材
140 機構部
141 制御部
142 ハウジング
144 プローブ
146 解除手段
147 位置決めフランジ
148 端子
148a、148b 電極
149 接続子
150 基板
151 第2係合フランジ
152 プローブ付勢手段
153 第1係合フランジ
154 係合爪
158 位置決めフランジ付勢手段
160 保持部材
162 保持孔
181 レバー部材
182 カム部材
220 カバー
225 第1カバー片
226 第2カバー片
233 第1アーム
234 第2アーム
235 ブラケット
239 支持軸
241 第1関節
242 第2関節
322 アーム
323 ギアボックス
323a ギアケース
323b ギア
323c ギア
323d ギア
323e 突起
324 駆動部
324a 駆動軸
327 カバー
328 カム
328a 溝
328b 部材取付部
329 部材
341 係合鉤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に把持されたワークを加工する工作機械であって、
複数の工具取り付け面を有するタレット刃物台と、
棒状のプローブの基端に設けられた接続子と前記基端を収容するハウジングに設けられる端子との離隔を電気的に検出することにより前記ワークと前記プローブとの接触を検知するセンサと、
前記センサを保持し、前記工具取り付け面に取り付けられ、当該工具取り付け面と前記センサとの間の前記タレット刃物台の径方向の距離であるセンサ距離を伸縮させる距離伸縮機構とを備え、
前記距離伸縮機構の前記径方向の長さは、前記センサ距離を縮めた状態では、前記タレット刃物台が回転した場合に、前記距離伸縮機構及び前記センサが前記工作機械の他の構成部に干渉しない長さであり、
前記センサは、前記距離伸縮機構により前記センサ距離を縮めた状態において、前記接続子と前記端子との接続状態を解除可能な解除手段を備える
工作機械。
【請求項2】
さらに、
前記距離伸縮機構によりセンサ距離が縮んだ状態では、前記センサを覆い、前記距離伸縮機構によりセンサ距離が伸びる際には、前記センサを開放するカバーを備える
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
さらに、
駆動機構と、
前記駆動機構の駆動力を前記距離伸縮機構によるセンサ距離の伸縮に変換する第1変換手段と、
前記駆動機構の駆動力を前記センサの前記接続子と前記端子との離接動作に変換する第2変換手段と
を備える請求項1に記載の工作機械。
【請求項4】
さらに、
駆動機構と、
前記駆動機構の駆動力を前記距離伸縮機構によるセンサ距離の伸縮に変換する第1変換手段と、
前記駆動機構の駆動力を前記センサの前記接続子と前記端子との離接動作に変換する第2変換手段と、
前記駆動機構の駆動力を前記カバーの開閉動作に変換する第3変換手段と
を備える請求項2に記載の工作機械。
【請求項5】
前記工具取り付け面に取り付けられる基台と、
先端部に前記センサを有し、前記基台に回動可能に取り付けられ、センサ距離を変更自在な可動部とを備え、
前記可動部を前記工具取り付け面に垂直な平面内で回転させる回転駆動機構と、
前記可動部の前記基台に対する回転運動を、前記回転運動の回転軸方向の並進運動に変換する変換機構と、
前記並進運動によって前記カバーを開閉させるリンク機構と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項6】
前記距離伸縮機構は、
前記工具取り付け面に取り付けられる基台と、
先端部に前記センサを有し、前記基台に直動可能に取り付けられ、センサ距離を変更自在な可動部とを備え、
前記工作機械は、さらに、
前記可動部と一端部とが回動自在に接続され、前記基台と他端部とが回動自在に接続され、中間部に回動自在な第1関節を有する第1リンク機構と、
前記可動部と一端部とが回動自在に接続され、前記基台と他端部とが回動自在に接続され、中間部に回動自在な第2関節を有する第2リンク機構と、
前記第1関節と前記第2関節とが近づく方向に付勢する弾性体とを備える
請求項1に記載の工作機械。
【請求項7】
複数の工具取り付け面を有するタレット刃物台に取り付けられた刃物によって主軸に把持されたワークを加工する工作機械に備えられるセンサモジュールであって、
棒状のプローブの基端に設けられた接続子と前記基端を収容するハウジングに設けられる端子との離隔を電気的に検出することにより前記ワークと前記プローブとの接触を検知する、前記距離伸縮機構の先端に取り付けられるセンサと、
前記工具取り付け面に取り付けられ、センサ距離を伸縮させる距離伸縮機構とを備え、
前記距離伸縮機構の前記径方向の長さは、前記センサ距離を縮めた状態では、前記タレット刃物台が回転した場合に、前記距離伸縮機構及び前記センサが前記工作機械の他の構成部に干渉しない長さであり、
前記距離伸縮機構によりセンサ距離が縮んだ状態では、前記接続子と前記端子との接続状態が解除される
センサモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2009−125855(P2009−125855A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303136(P2007−303136)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】