説明

工作機械におけるワーク位置決め装置

【課題】部品点数を低減し、製造及び組付作業を容易に行い、コストを低減することができる工作機械におけるワーク位置決め装置を提供する。
【解決手段】ベッドに旋回可能に装着されたワークテーブル14の上面に、第1ワークW1を位置決めするための第1及び第2ロケートピン21,22及び第1〜第4シートパッド31〜34を装着する。又、ワークテーブル14の上面に第2ワークを位置決めするための第3及び第4ロケートピン23,24及び第5〜第8シートパッド35〜38を装着する。前記ワークテーブル14を180°旋回させて、仕様の異なる第1ワークW1又は第2ワークを一つのワークテーブル14上に選択して装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械におけるワーク位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンのシリンダブロック、シリンダヘッドあるいはその他の各種の部品の製造には、生産ラインが用いられる。これらの部品は自動車の車種によって仕様が異なり、仕様の異なる部品の加工作業を行う際には、ワークを支持するワークテーブルに装着した一対のロケートピンの配置を相違させた仕様の異なるワークテーブルを装着した工作機械を生産ラインに沿って複数箇所に配設するようになっていた。
【0003】
ところが、上記従来の工作機械は、仕様の異なる複数のワークの加工を行うために、工作機械の設置台数を増やさなければならないという問題があった。
上記の問題を解消することが可能なワーク位置決め装置が特許文献1に開示されている。このワーク位置決め装置は、リフタテーブルと、そのテーブル上に設けられた一対のロケートピンを備えるとともに、複数の穴を有するワークについていずれかの二つの穴に上記ロケートピンを係合させることによりそのワークを位置決めするようになっている。前記一対のロケートピンは、位置調整用アクチュエータの作動によって相互に接近又は離間するように個別に位置調整できるようになっている。そして、各ロケートピンをワーク側の穴にそれぞれ係合させて位置決めを行うようになっている。
【特許文献1】特開2006−082225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来のワーク位置決め装置は、リフタテーブルの上面に設けたロケートピンを位置調整用アクチュエータによって位置調整するように構成されていたので、部品点数が多くなって、製造及び組付作業が面倒で、コストの低減を図ることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、部品点数を低減し、製造及び組付作業を容易に行い、コストを低減することができる工作機械におけるワーク位置決め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ベッドに対しワークを支持するワークテーブルを旋回装置により旋回可能に装着するとともに、ワークを加工する加工ユニットを装着した工作機械において、前記ワークテーブルの上面に対し、仕様の異なる複数のワークの位置決めをそれぞれ行う複数対のロケートピンを配設するとともに、前記各ワークのうちいずれか一つのワークの下面をそれぞれ着座する複数のシートパッドを設け、前記ワークテーブルを旋回させることにより各ワークのいずれか一つのワークを選択的に位置決めするように構成したことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記ロケートピンはワークテーブルの上面に対し第1ワーク用の第1及び第2ロケートピンとして二箇所に設けられるとともに、第2ワーク用の第3及び第4ロケートピンとして二箇所に設けられ、シートパッドは第1ワーク用に複数箇所に設けられるとともに、第2ワーク用に複数箇所に設けられていることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記ワークテーブルは180°旋回されるように構成されていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記ワークテーブル上へのワークの搬入及びワークの搬出は、リンクフィーダによって行われるように構成されていることを要旨とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記各シートパッドの高さは、全て同じ高さに設定されていることを要旨とする。
(作用)
この発明は、複数対のロケートピンのうち一対のロケートピン及びシートパッドを用いてワークテーブルに対するワークの位置決めが行われる。又、ワークテーブルを旋回させることにより複数対のロケートピンのうち他の一対のロケートピン及びシートパッドにより前記ワークと仕様の異なるワークの位置決めが行われる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ワークテーブルの所定位置に設けた複数対のロケートピンにより、仕様の異なる複数のワークを選択して位置決めすることができ、部品点数を低減し、製造及び組付作業を容易に行い、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した生産ラインにおける工作機械のワーク位置決め装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図3に示すようにベッド11の上面には、旋回装置12が装着され、この旋回装置12の上部には、旋回テーブル13が装着され、該旋回テーブル13は垂直軸線の周りで水平方向に360°の範囲で往復旋回されるようになっている。この旋回テーブル13の上面には、ワークを支持するワークテーブル14が取り付けられ、ワークを装着することができるようになっている。前記ベッド11と旋回装置12との間には図示しないが旋回装置12を水平(X軸:図3の左右)方向及び水平(Y軸:図3の紙面直交)方向にそれぞれ往復動させるX軸駆動機構及びY軸駆動機構が設けられている。
【0012】
図3に示すように、前記ベッド11の上面の後部には、コラム15が立設され、このコラム15の前面には、ワークを加工するための複数の例えばドリル等の工具を備えた加工ユニット16が装着されている。この加工ユニット16は、図示しないZ軸駆動機構により上下(Z軸)方向に往復動されるようになっている。
【0013】
図4に示すように、前記ワークテーブル14の上面には、第1ワークW1の位置決めを行うための第1及び第2ロケートピン21,22が取り付けられている。又、前記ワークテーブル14の上面には、第2ワークW2の位置決めを行うための第3及び第4ロケートピン23,24が取り付けられている。前記第1〜第4ロケートピン21〜24は、図5に示すように台座25の下面に一体に突出形成された係合ピン26をワークテーブル14の上面に形成された取付孔14aに係合することにより位置決めされている。そして、ワークテーブル14のネジ孔14bにボルト27を螺合することによって前記台座25をワークテーブル14に締め付け固定している。前記台座25の中央部上面にはピン28が一体に形成され、そのピン28の上端部は、円錐台形状に形成されている。このピン28は第1ワークW1又は第2ワークW2に形成された例えばボルト挿通用の貫通孔Whに係合されるようになっている。
【0014】
さらに、前記ワークテーブル14の上面には、第1ワークW1の下面を支持して位置決めするための第1〜第4シートパッド31〜34が設けられている。同じく前記ワークテーブル14の上面には、第2ワークW2の下面を支持して位置決めするための第5〜第8シートパッド35〜38が設けられている。前記第1〜第8シートパッド31〜38は、図6に示すように台座40の下面に一体に突出形成された係合ピン41をワークテーブル14の上面に形成された取付孔14aに係合することにより位置決めされている。そして、ボルト42をワークテーブル14のネジ孔14bに螺合することにより台座40をワークテーブル14に締め付け固定している。前記台座40の中央部上面にはパッド部43が一体に形成されている。このパッド部43により第1ワークW1又は第2ワークW2の下面が支持され、第1及び第2ワークW1,W2の下方への位置が規制されるようになっている。
【0015】
次に、前記のように構成した工作機械のワーク位置決め装置の動作について、以下に説明する。
最初に、第1ワークW1の加工を行う場合について説明する。図1は、ワークテーブル14の第1及び第2ロケートピン21,22がY軸方向の後側に、第3及び第4ロケートピン23,24がY軸方向の前側にある状態を示す。この状態において、図示しないリンクフィーダにより第1ワークW1がX軸方向右方からワークテーブル14の上方に搬入される。その後、第1ワークW1が下方に移動されて、第1ワークW1に形成された二つの貫通孔Whに、前記第1及び第2ロケートピン21,22が挿入係止されるとともに、第1ワークW1の下面が図1に示す四つの第1〜第4シートパッド31〜34によって支持され、第1ワークW1がワークテーブル14の所定位置に位置決めされる。この状態で図示しないクランプ機構によって、第1ワークW1の上面が下方に押圧されて第1ワークW1が前記ワークテーブル14の上面に締め付け固定される。なお、この状態では、第3及び第4ロケートピン23,24は第1ワークW1に接触しないように配置されているので使用されない。
【0016】
前記ワークテーブル14に対する第1ワークW1の搬入動作と、第1ワークW1のクランプ動作が終了すると、ワークテーブル14がX軸方向及びY軸方向に移動されて、ワークテーブル14の上面の第1ワークW1の水平方向の位置が設定されるとともに、加工ユニット16が作動されて、第1ワークW1に対する穿孔作業等の加工作業が行われる。そして、第1ワークW1の加工作業が終了すると、図示しないクランプ機構のクランプ状態が解除され、加工済みの第1ワークW1が図示しないリンクフィーダによってワークテーブル14の上面から搬出される。
【0017】
その後、図1において、前記旋回装置12が作動されて、前記ワークテーブル14が旋回中心Oを中心として180°旋回動作されて、図2に示すように、前記第1及び第2ロケートピン21,22がY軸方向前側に、かつ第3及び第4ロケートピン23,24がY軸方向後側に切り換えられる。この状態において、第1ワークW1と仕様の異なる第2ワークW2が図示しないリンクフィーダによってワークテーブル14の上方に搬入された後、下降動作されて、第2ワークW2に形成された二つの貫通孔Whに、前記第3及び第4ロケートピン23,24が挿入係止されるとともに、第2ワークW2の下面が四つの前記第5〜第8シートパッド35〜38によって支持され、第2ワークW2がワークテーブル14の所定位置に位置決めされる。この状態で図示しないクランプ機構によって、第2ワークW2の上面が下方に押圧されて第2ワークW2が前記ワークテーブル14の上面に締め付け固定される。
【0018】
前記ワークテーブル14に対する第2ワークW2の搬入動作と、第2ワークW2のクランプ動作が終了すると、ワークテーブル14がX軸方向及びY軸方向に移動されて、ワークテーブル14の上面の第2ワークW2の水平方向の位置が設定されるとともに、加工ユニット16が作動されて、第2ワークW2に対する穿孔作業等の加工作業が行われる。そして、この第2ワークW2の加工作業が終了すると、図示しないクランプ機構のクランプ状態が解除され、加工済みの第2ワークW2が図示しないリンクフィーダによってワークテーブル14の上面から搬出される。
【0019】
上記実施形態の工作機械におけるワーク位置決め装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、前記旋回装置12によって旋回可能に装着されたワークテーブル14の上面に第1ワークW1を位置決めする第1及び第2ロケートピン21,22及び第1〜第4シートパッド31〜34設けるとともに、第2ワークW2を位置決めする第3及び第4ロケートピン23,24及び第5〜第8シートパッド35〜38を設けた。そして、前記ワークテーブル14を旋回装置12によって180°旋回することにより、仕様の異なる第1ワークW1又は第2ワークW2をワークテーブル14の上面に装着することができるようにした。このため、1台の工作機械によって仕様の異なる第1及び第2ワークW1,W2を選択して加工することができる。
【0020】
(2)上記実施形態では、ワークテーブル14の上面に第1〜第4ロケートピン21〜24を設ける構成のため、ロケートピンを位置調整用アクチュエータによって位置切り換えする構成と比較して、部品点数を低減し、製造及び組付作業を容易に行い、コストを低減することができる。
【0021】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では、ワークテーブル14を180°旋回させて、第1及び第2ワークW1,W2を装着するようにしたが、ロケートピンを三対以上配設し、ワークテーブル14を例えば90〜360°の範囲で任意の角度だけ旋回させて、仕様の異なる三種類以上のワークを選択して位置決めするように構成してもよい。
【0022】
・前記実施形態では、前記第1〜第4シートパッド31〜34及び第5〜第8シートパッド35〜38の高さを同じに設定したが、これらの高さをワークの仕様に応じて相違するようにしもよい。
【0023】
・前記実施形態では、ワークテーブル14を垂直軸線の周りで旋回可能に構成したが、これに代えてワークテーブル14を水平軸線の周りで旋回可能に構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明を具体化した工作機械のワーク位置決め装置を示すワークテーブルの平面図。
【図2】図1のワークテーブルを180度旋回した状態を示す平面図。
【図3】工作機械の略体正面図。
【図4】ワークテーブルの斜視図。
【図5】ロケートピンの取付状態を示す断面図。
【図6】シートパッドの取付状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0025】
W1…第1ワーク、W2…第2ワーク、11…ベッド、12…旋回装置、14…ワークテーブル、16…加工ユニット、21〜24…第1〜第4ロケートピン、31〜38…第1〜第8シートパッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに対しワークを支持するワークテーブルを旋回装置により旋回可能に装着するとともに、ワークを加工する加工ユニットを装着した工作機械において、
前記ワークテーブルの上面に対し、仕様の異なる複数のワークの位置決めをそれぞれ行う複数対のロケートピンを配設するとともに、前記各ワークのうちいずれか一つのワークの下面をそれぞれ着座する複数のシートパッドを設け、前記ワークテーブルを旋回させることにより各ワークのいずれか一つのワークを選択的に位置決めするように構成したことを特徴とする工作機械におけるワーク位置決め装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ロケートピンはワークテーブルの上面に対し第1ワーク用の第1及び第2ロケートピンとして二箇所に設けられるとともに、第2ワーク用の第3及び第4ロケートピンとして二箇所に設けられ、シートパッドは第1ワーク用に複数箇所に設けられるとともに、第2ワーク用に複数箇所に設けられていることを特徴とする工作機械におけるワーク位置決め装置。
【請求項3】
請求項2において、前記ワークテーブルは180°旋回されるように構成されていることを特徴とする工作機械におけるワーク位置決め装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、前記ワークテーブル上へのワークの搬入及びワークの搬出は、リンクフィーダによって行われるように構成されていることを特徴とする工作機械におけるワーク位置決め装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記各シートパッドの高さは、全て同じ高さに設定されていることを特徴とする工作機械におけるワーク位置決め装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−23071(P2009−23071A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191252(P2007−191252)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000152675)コマツNTC株式会社 (218)
【Fターム(参考)】