説明

工作機械

【課題】スラント面の低所部分に配置されたタレットを、機械全体の大型化を招くことなくY軸方向に移動可能に構成できる工作機械を提供する。
【解決手段】タレット5は、上記ベッド2上に上記Z軸方向に移動可能に配置されたベース部材8と、該ベース部材8上に上記X軸方向に移動可能に配置されたスライド台9と、該スライド台9に上記X軸及びZ軸を含む平面に直交するY軸方向に移動可能に配置されたラム11と、該ラム11に取り付けられたタレット本体12とを備え、上記スライド台9にメンテナンス開口9fを形成し、上記ラム11をY軸方向に駆動するY軸駆動ユニット14を、上記スライド台9側から上記メンテナンス開口9fを通して該スライド台9及びラム11に着脱可能に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッド上に、被加工物(以下ワークと記す)を把持して回転させる主軸台と、多数の工具が放射状に配置されたタレットとを搭載した工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタレットを備えた工作機械として、機械正面から見て手前側が低くなるよう傾斜したスラント面を有するスラント型ベッドと、該ベッドの一側部に配置された主軸台と、上記スラント面の手前側に位置する低所部分に配置された第1タレットと、上記スラント面の奥側に位置する高所部分に配置された第2タレットとを備えたものがある。
【特許文献1】EP0538515B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記スラント型ベッドを備えている工作機械において、タレットをX軸及びZ軸を含む平面(スラント面に平行な平面)に直交するY軸方向に移動可能に構成する場合、タレットをY軸方向に駆動するY軸駆動ユニットを配設することとなる。上記従来公報に記載されているもののように、スラント面の高所部分に配置された第2タレットについては、ベッドの背面側にY軸駆動ユニットを配置するためのスペースを容易に確保することができる。しかしスラント面の低所部分に配置された第1タレットについては、上記Y軸駆動ユニットの配設スペースの確保が困難であり、該駆動ユニットの配設構造の如何によっては機械全体が大型化するおそれがある。
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、スラント面の低所部分に配置されたタレットを、機械全体の大型化を招くことなくY軸方向に移動可能に構成できる工作機械を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、ベッドと、該ベッド上に配置された主軸台と、上記ベッド上に、上記主軸の軸線と直交するX軸方向及び該軸線に平行なZ軸方向に移動可能に配置されたタレットとを備えた工作機械において、上記タレットは、上記ベッド上に上記Z軸方向に移動可能に配置されたベース部材と、該ベース部材上に上記X軸方向に移動可能に配置されたスライド台と、該スライド台に上記X軸及びZ軸を含む平面に直交するY軸方向に移動可能に配置されたラムと、該ラムに取り付けられたタレット本体とを備え、上記スライド台にメンテナンス開口を形成し、上記ラムをY軸方向に駆動するY軸駆動ユニットを、上記スライド台側から上記メンテナンス開口を通して該スライド台及びラムに着脱可能に取り付けたことを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1において、上記Y軸駆動ユニットは、上記ラムの下端部に固定されたナット部材と、該ナット部材に螺挿されたボールねじと、該ボールねじに連結されたY軸送りモータとを有し、該Y軸送りモータ及びボールねじは、上記ラムと並列に配置され、該ボールねじ及びY軸送りモータは上記メンテナンス開口を通して上記スライド台側から見えるように配置されていることを特徴としている。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2において、Y軸直角方向に見たとき、上記ラムの下端部と、上記ボールねじ及びY軸送りモータの大部分とは、上記ベース部材に形成された逃げ開口内に、かつ互いにラップしていることを特徴としている。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1において、上記ベッドに、上記Y軸駆動ユニットを上記スライド台及びラムから取り外したとき収納可能の収納凹部が形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4において、上記収納凹部は、上記Y軸駆動ユニットを上記スライド台及びラムから取り外したときに一旦載置する仮受部と、該仮受部に隣接するように、かつ上記Y軸駆動ユニットを収納可能に形成された主収納凹部とを有することを特徴としている。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1において、上記ベッドは、機械正面から見て手前側が低くなるように傾斜したスラント型ベッドであり、上記タレットは、上記ベッドの手前側に位置する低所部分に上記X軸,Y軸及びZ軸方向に移動可能に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、スライド台にメンテナンス開口を形成し、ラムをY軸方向に駆動するY軸駆動ユニットを、上記スライド台側から上記メンテナンス開口を通して該スライド台及びラムに着脱可能に取り付けたので、スライド台の裏面側にスペースの余裕がない場合でもY軸駆動ユニットを配置できる。従って、特に請求項6の発明のように、スラント型ベッドの、背面側にスペースの余裕のない低所部分にタレットを配置する場合に特に有効である。
【0012】
請求項2の発明によれば、Y軸駆動ユニットを構成するY軸送りモータ及びボールねじをラムと並列に配置し、該ボールねじ及びY軸送りモータを上記メンテナンス開口を通して上記スライド台側から見えるように配置したので、Y軸駆動ユニットのスライド台及びラムへの取付作業を容易に行うことができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、上記ラムの下端部と、上記ボールねじ及びY軸送りモータの大部分とを、上記ベース部材に形成された逃げ開口内に位置させ、かつ互いにラップさせたので、ベース部材のY軸方向寸法を利用してY軸駆動ユニットを配置でき、それだけ機械全体のY軸方向寸法をコンパクトにできる。
【0014】
請求項4の発明によれば、上記Y軸駆動ユニットを上記スライド台及びラムから取り外したとき収納可能の大きさの収納凹部を上記ベッドに形成したので、ベッドの背面側のスペースに余裕がない場合のY軸駆動ユニットの着脱を容易に行うことができる。
【0015】
即ち、Y軸駆動ユニットを取り外す場合、該ユニットを上記スライド台及びラムから外して収納凹部内に一旦位置させ、タレットを軸方向に移動させて上記Y軸駆動ユニットを上方に露出させ、この状態で駆動ユニットを機械外方に取り出すことにより、上記取り外し作業を容易に行うことができる。なお、取付作業は上記と逆の手順になる。
【0016】
請求項5の発明によれば、上記収納凹部を、上記Y軸駆動ユニットを一旦載置する仮受部と、該仮受部のY軸駆動ユニットを収納する主収納凹部とを有するものとしたので、上記Y軸駆動ユニットが凹部内に落下して損傷するのを防止でき、上記取外し作業をより一層容易確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1〜図8は、本発明の一実施形態に係るタレット旋盤を説明するための図である。
【0018】
図において、1は本発明の一実施形態に係るタレット旋盤であり、該タレット旋盤1は、機械正面から見て手前側が低くなるよう傾斜したスラント型ベッド2と、該ベッド2の左側部に配置された第1主軸台3と、右側部に、該第1主軸台3と同軸をなすように、かつZ軸方向に移動可能に配置された第2主軸台4と、上記ベッド2の手前側に位置する低所部分にX軸,Y軸,Z軸方向に移動可能に配置された第1タレット5と、上記ベッド2の奥側に位置する高所部分に上記X軸,Y軸,Z軸方向に移動可能に配置された第2,第3タレット6,7とを備えている。
【0019】
ここで上記X軸は、上記第1,第2主軸台3,4の軸線Aと直交し、かつ後述する第1スラント面2aに平行な方向であり、機械正面から見て前後方向を意味する。また上記Z軸は上記軸線Aに平行な方向であり、機械正面から見て左右方向を意味する。さらにまた上記Y軸は、上記X軸,Y軸を含む平面に垂直な方向であり、上記第1スラント面2aに垂直な方向を意味する。
【0020】
上記ベッド2は、左,右側方からZ軸方向に見たとき、略直角三角形状をなしており、機械正面に立ったとき手前側に位置する第1スラント面2aと、背面側に位置し、第1スラント面2aと直交する第2スラント面2bとを有する。上記第1タレット5は、上記第1スラント面2a上に、該第1スラント面2aと平行に及び面垂直方向に移動可能に配設されている。また上記第2,第3タレット6,7は上記第2スラント面2b上に、該第2スラント面2bと平行に及び面垂直方向に移動可能に配設されている。
【0021】
上記第2タレット6,第3タレット7は、略同様の構造を有しているので、同一又は相当部分には同一の符号を付し、主として第2タレット6の構造について説明する。
【0022】
第2タレット6は、上記ベッド2の第2スラント面2b上にZ軸方向に移動可能に配置されたベース部材18と、該ベース部材18の上記第2スラント面2bと平行なスライド面18a上にY軸方向に移動可能に配置されたスライド台19と、該スライド台19の上記第1スラント面2aと平行なスライド面19a上にX軸方向に移動可能に配置されたタレット本体20と、該タレット本体20に回転割り出し可能に配置され、多数の工具Tを有するタレットヘッド21とを備えている。
【0023】
上記ベース部材18は、これに固定されたリニアガイド18bを上記第2スラント面2b上に固定され、Z軸方向に延びるリニアガイドレール18c,18cに摺動自在に嵌合させるとともに、上記ベース部材18に固定されたナット部材18dにボールねじ18eを螺挿し、これを第2スラント面2b側に固定された第2Z軸送りモータ18fで回転駆動することによりZ軸方向に進退する。
【0024】
上記スライド台19は上記ベース部材18側に固定された第2Y軸送りモータ19bによりY軸方向に進退駆動される。また上記タレット本体20は上記スライド台19側に固定された第2X軸送りモータ20aにより進退駆動される。
【0025】
上記第1タレット5は、上記ベッド2の第1スラント面2a上にZ軸方向に移動可能に配置されたベース部材8と、該ベース部材8上にX軸方向に移動可能に配置されたスライド台9と、該スライド台9をX軸方向に移動させる左,右一対の第1X軸送り機構10,10と、上記スライド台9の上記一対の送り機構10,10間部分にY軸方向に移動可能に配置されたラム11と、該ラム11に取り付けられたタレット本体12と、該タレット本体12に取り付けられたタレットヘッド13とを備えている。
【0026】
上記タレットヘッド13は、多角形厚板状をなし、外周辺部に各種の工具Tが取り付けられている。上記タレット本体12には、上記タレットヘッド13を所定の工具が加工位置に位置するように割り出し位置決めする割り出し機構及び各工具を駆動する駆動機構を内蔵している。従って、後述するように、上記タレット本体12には、電源供給用のケーブルやクーラントや油圧等の供給用のホース等からなる供給ホース束15が接続されている。
【0027】
上記第1タレット5の構造をさらに詳細に説明する。上記ベッド2の第1スラント面2aの手前側に位置する低所部分にZ軸方向に延びる一対のリニアガイドレール8a,8aが配置固定されており、該リニアガイドレール8a,8aには上記ベース部材8の底面に固定されたリニアガイド8b,8bが摺動自在に嵌合している。また上記ベース部材8の底面に固定されたナット部材8cには上記Z軸方向に延びるボールねじ8dが螺挿されている。このボールねじ8dの右端部には第1Z軸送りモータ8eが接続されており、該モータ8eは上記ベッド2の第1スラント面2a側に固定されている。上記第1Z軸送りモータ8eの回転により上記ベース部材8がZ軸方向に進退移動する。
【0028】
上記ベース部材8上には、X軸方向に延びる一対のリニアガイドレール9a,9aが配置固定されており、該リニアガイドレール9a,9aには上記スライド台9の底面に固定された左,右のリニアガイド9b,9bが摺動自在に嵌合している。また上記スライド台9の左,右側部には左,右のナット部材9c,9cが形成されており、該ナット部材9c,9cにはX軸方向に延びるボールねじ9d,9dが螺挿されている。このボールねじ9d ,9dの手前側端部には第1X軸送りモータ9e,9eが接続されており、該モータ9e,9eは上記ベース部材8側に固定されている。上記左,右のリニアガイドレール9a,9a,リニアガイド9b,9b,ナット部材9c,9c,ボールねじ9d,9d及び第1X軸送りモータ9e,9eによって上述の左,右一対の第1X軸送り機構10,10が構成されている。上記第1X軸送りモータ9e,9eの回転により上記スライド台9がX軸方向に進退移動する。
【0029】
上記スライド台9の左,右の第1X軸送り機構10,10間部分にラムガイド11aが上方に突出するように立設されている。このラムガイド11aは横断面円形の外周面を有する筒状をなしており、また上記ラム11は横断面八角形の外周面を有する筒状をなしている。このラム11の外周面をなす各辺部と上記ラムガイド11aの内周面との間には軸方向に延びる複数の軸受部材であるスライダ11bが介在されており、このようにして上記ラム11はスライド台9によってY軸方向に摺動可能に支持されており、該スライド台9と共にX軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0030】
上記ラム11の上端部に上述のタレット本体12が固定されている。また上記ラムガイド11aには円筒状のガイドカバー11cがY軸方向に摺動自在に装着されており、該カバー11cの上端部は上記タレット本体12の下面に固定されている。このようにして切削粉やクーラントの該ラム11と上記ラムガイド11aとの摺動面への進入が防止されている。
【0031】
また上記ラムガイド11aの外周面が円形であることから、該ラムガイド11aが傾斜したスラント面2aから突出しているにも関わらず、切削粉等は該ラムガイド11aの外周面の上側縁から滑り落ち易く、該上側縁付近への切削粉等の堆積が回避されている。
【0032】
上記ラムの下端部11dには第1Y軸駆動ユニット14が連結されている。詳細には、上記下端部11dにはブラケット11gがボルト11hで締め付け固定されており、該ブラケット11gのZ軸方向に突出するフランジ部11g′に第1Y軸駆動ユニット14のナット部材14aを保持するナットホルダ11eが取付ボルト11iによって着脱可能に固定されている。また上記ナット部材14aにはY軸方向に延びるボールねじ14bが螺挿されている。このボールねじ14bの下端部には回転力伝達用の伝達ギヤ14cが固定され、該伝達ギヤ14cには第1Y軸送りモータ14eの出力軸に固定された駆動ギヤ14dが噛合している。上記ボールねじ14bは軸受14gを介してケーシング14fによって相対回転可能にかつ軸方向移動不能に支持されている。また上記第1Y軸送りモータ14eは上記ケーシング14fに固定支持されている。そして上記ケーシング14fは上記スライド台9に形成されたボス部9gに取付ボルト9hによって着脱可能に取り付けられている。
【0033】
ここで上記ラム11,ボールねじ14b及びY軸送りモータ14eは互いに並列に、かつ上記ベース部材8に形成された逃げ開口8f内に挿入された状態に配置されている。換言すれば、Y軸直角方向に見たとき、ラム11の下端部11dと、上記ボールねじ14b及びY軸送りモータ14eの大部分とは互いにラップしており、さらに上記逃げ開口8fの周縁ともラップしている。
【0034】
また、上記ナットホルダ11eを含むナット部材14aと、上記ケーシング14fを含むボールねじ14b,各ギヤ14c,14d及びY軸送りモータ14eによって、上記ラム11ひいてはタレット本体12及びタレットヘッド13をY軸方向に進退させる上記第1Y軸駆動ユニット14が構成されている。
【0035】
ここで上記ベース部材8に形成された逃げ開口8fは、平面視で概ね四角形状をなし、かつ上記ラム11の下端部11d及び上記第1Y軸駆動ユニット14が上記スライド台9のX軸最大ストロークだけ移動しても該Y軸駆動ユニット14等に干渉することのない大きさに設定されている。また上記逃げ開口8fは上記第1Y軸駆動ユニット14の着脱時に、後述する主収納凹部2c内で該ユニット14を起立させたり倒したりする際に干渉することのない大きさ,形状に設定されている。
【0036】
また上記第1Y軸駆動ユニット14は、上記スライド台9に形成されたメンテナンス開口9f内に、上方から見えるように配置されており、該スライド台9の上方から工具を挿入して上記第1Y軸駆動ユニット14のスライド台9への取付ボルト9h及び上記ナットホルダ11eのブラケット11gへの取付ボルト11iを着脱可能となっている。
【0037】
そして上記ベッド2の第1スラント面2aの右側部分には、上記主収納凹部2cが形成されている。この主収納凹部2cは、上記第1Y軸駆動ユニット14の着脱作業時に一次的に収納するためのものであり、該ユニット14を起立状態に収納したとき、該第1タレット5をZ軸方向に移動可能の形状,深さ等を有するように形成されている。また上記主収納凹部2cに隣接するように仮受部2dが形成されており、第1駆動ユニット14を取り外した際に一旦この仮受部2dに載置する。
【0038】
即ち、上記第1Y軸駆動ユニット14を取り外す場合は、上記取付ボルト9hや取付ボルト11iを取り外してこの第1Y軸駆動ユニット14を一旦上記仮受2d上に斜めの状態に載置し、続いて該第1Y軸駆動ユニット14を主収納凹部2c内で起立させ、この状態で第1タレット5をZ軸方向に移動させる。これにより上記主収納凹部2c及び該主収納凹部2c内に収納されている上記第1Y軸駆動ユニット14が外方に露出する。この状態で第1Y軸駆動ユニット14を機械外方に取り出し、必要なメンテナンスを施すことができる。なお、上記Y軸駆動ユニット14の取付作業は上記取外し作業と逆の順序で行われる。
【0039】
上記タレット本体12には、内蔵する割り出し機構や工具駆動機構に必要な電源やクーラントあるいは油圧等を供給するための多数の供給ホース15a・・からなる供給ホース束15が接続されている。この供給ホース束15は、上記ラム11の貫通穴11f内を通り、該ラム11の下方に延び、ここでZ軸方向に屈曲され、さらにベース部材8とベッド2との間を通ってZ軸方向に延び、ベース部材8の側方で上方にUターンして上記スライド台9にクランプ部材15bによって固定されている。
【0040】
また上記ラム11の下方には、上記供給ホース束15をの屈曲部15gをY軸方向からZ軸方向に屈曲させる際のガイドとなるガイドプレート15cが配置されている。また上記供給ホース束15の上記Uターン部15hの下方及び側方には該Uターン部15hを上方にUターンさせる際のガイドとなるガイドプレート15d及びU字形状のガイドプレート15eが配置されている。これらのガイドプレート15c〜15eは上記スライド台9に支持されており、該スライド台9と共に移動する。なお、上記ガイドプレート15dについては、供給ホース束15dの曲げアールに沿った形状とすることもできる。
【0041】
本実施形態におけるY軸駆動ユニット14の着脱作業は以下の手順で行われる。まず、上記主収納凹部2cの仮受部2d上にY軸駆動ユニット14が位置するように上記第1タレット5がX軸方向,Z軸方向に位置決めされる。そしてスライド台9側から上記メンテナンス開口9fを利用して上記取付ボルト11i及び9hが取り外されると、上記Y軸駆動ユニット14は、そのまま軸方向に斜めの状態で上記仮受部2d上に一旦載置され、続いて起立されつつ隣接する主収納凹部2e内に収納される。そして上記収納されたY軸駆動ユニット14が上方に露出するよう上記第1タレット5がZ軸方向に移動される。この状態で上記Y軸駆動ユニット14は機械外方に取り出され、必要なメンテナンスが施される。
【0042】
このように本実施形態では、スライド台9にメンテナンス開口9fを形成し、上記スライド台9側から該メンテナンス開口9fを通して上記Y軸駆動ユニット14をスライド9台及びラム11に着脱可能に取り付けるように構成したので、スラント型ベッドの低所部分のようにスライド台9の裏面側にスペースの余裕がない場合でもY軸駆動ユニット14を支障なく配置できる。
【0043】
また、Y軸駆動ユニット14を構成するY軸送りモータ14e及びボールねじ14bをラム11と並列に配置したので、該ボールねじ14b及びY軸送りモータ14eを上記メンテナンス開口9fを通して上記スライド台9側から見えるよう容易に配置でき、Y軸駆動ユニット14のスライド台9及びラム11への取付作業を容易に行うことができる。
【0044】
また、上記ラム11の下端部11dと、上記ボールねじ14b及びY軸送りモータ14eの大部分とを、上記ベース部材8に形成された逃げ開口8f内に位置させ、かつ互いにラップさせたので、ベース部材8のY軸方向寸法を利用してY軸駆動ユニット14を配置でき、それだけ機械全体のY軸方向寸法をコンパクトにできる。
【0045】
さらにまたラム11をY軸方向に移動可能に配置する場合に、該ラム11を、比較的大きなY軸方向の配置スペース必要とする左,右のX軸送り機構10,10の間に配置したので、該X軸送り機構10,10のY軸方向寸法を利用してラム11を背面側に突出しないように配置でき、この点からも機械全体の大型化を回避できる。
【0046】
上記Y軸駆動ユニット14を上記スライド台9及びラム11から取り外したとき収納可能の大きさの収納凹部2cを形成したので、ベッド2の背面側のスペースに余裕がない場合のY軸駆動ユニット14の着脱を容易に行うことができる。 より詳細には、Y軸駆動ユニット14を取り外す場合、該ユニット14を上記スライド台9及びラム11から外して主収納凹部内2c内に位置させ、続いてタレット5をZ軸方向に移動させて上記Y軸駆動ユニット14を上方に露出させたので、駆動ユニット14を容易に機械外方に取り出すことができる。
【0047】
さらにまた、上記主収納凹部2cに隣接するように仮受部2dを形成し、上記Y軸駆動ユニット14を傾斜状態のままこの仮受部2dに一旦載置し、続いて主収容凹部2d内で起立させるするようにしたので、上記Y軸駆動ユニット14が取外し時に落下するのを防止でき、取外し作業時をより一層容易確実に行うことができる。
【0048】
なお、上記実施形態では、スラント型ベッドを有する旋盤の場合を説明したが、本発明の適用範囲はスラント型旋盤に限定されるものではなく、要は、ラムをベッド面と直交する方向に移動可能に構成されたタレットを備えた工作機械であれば何れにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係るタレット旋盤の正面斜視図である。
【図2】上記旋盤の左側面図である。
【図3】上記旋盤の右側面図である。
【図4】上記旋盤の第1タレット部分の平面図である。
【図5】上記旋盤の第1タレット部分の断面正面図(図4のV-V 線断面図) である。
【図6】上記旋盤の第1タレットの第1Y軸駆動ユニットの着脱作業を説明するための断面側面図である。
【図7】上記旋盤の第1タレットの第1Y軸駆動ユニットの取付状態を示す断面正面図である。
【図8】上記旋盤の第1タレットの第1Y軸駆動ユニットの取付状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 タレット旋盤(工作機械)
2 ベッド
2c 収納凹部
2d 仮受部
2e 主収納凹部
3 主軸台
5 タレット
8 ベース部材
8f 逃げ開口
9 スライド台
9f メンテナンス開口
11 ラム
12 タレット本体
14 Y軸駆動ユニット
14a ナット部材
14b ボールねじ
11d ラムの下端部
14e Y軸送りモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、該ベッド上に配置された主軸台と、上記ベッド上に、上記主軸の軸線と直交するX軸方向及び該軸線に平行なZ軸方向に移動可能に配置されたタレットとを備えた工作機械において、
上記タレットは、上記ベッド上に上記Z軸方向に移動可能に配置されたベース部材と、該ベース部材上に上記X軸方向に移動可能に配置されたスライド台と、該スライド台に上記X軸及びZ軸を含む平面に直交するY軸方向に移動可能に配置されたラムと、該ラムに取り付けられたタレット本体とを備え、
上記スライド台にメンテナンス開口を形成し、上記ラムをY軸方向に駆動するY軸駆動ユニットを、上記スライド台側から上記メンテナンス開口を通して該スライド台及びラムに着脱可能に取り付けたことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項1において、 上記Y軸駆動ユニットは、上記ラムの下端部に固定されたナット部材と、該ナット部材に螺挿されたボールねじと、該ボールねじに連結されたY軸送りモータとを有し、 該Y軸送りモータ及びボールねじは、上記ラムと並列に配置され、該ボールねじ及びY軸送りモータは上記メンテナンス開口を通して上記スライド台側から見えるように配置されていることを特徴とする工作機械。
【請求項3】
請求項2において、 Y軸直角方向に見たとき、上記ラムの下端部と、上記ボールねじ及びY軸送りモータの大部分とは、上記ベース部材に形成された逃げ開口内に、かつ互いにラップするように配置されていることを特徴とする工作機械。
【請求項4】
請求項1において、 上記ベッドに、上記Y軸駆動ユニットを上記スライド台及びラムから取り外したとき収納可能の収納凹部が形成されていることを特徴とする工作機械。
【請求項5】
請求項4において上記収納凹部は、上記Y軸駆動ユニットを上記スライド台及びラムから取り外したときに一旦載置する仮受部と、該仮受部に隣接するように、かつ上記Y軸駆動ユニットを収納可能に形成された主収納凹部とを有することを特徴とする工作機械。
【請求項6】
請求項1において、 上記ベッドは、機械正面から見て手前側が低くなるように傾斜したスラント型ベッドであり、 上記タレットは、上記ベッドの手前側に位置する低所部分に上記X軸,Y軸及びZ軸方向に移動可能に配置されていることを特徴とする工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−62358(P2008−62358A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244671(P2006−244671)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】